説明

バンパーステイ

【課題】車両衝突時に横倒れが生じ難いバンパーステイであって、点検や交換等を容易に行うことができ、かつ、ステイ本体の設計の自由度が高いバンパーステイを提供すること。
【解決手段】上下が開口したステイ本体10と、ステイ本体10を上下に仕切るように配置された補強部材20と、を備えるバンパーステイS1であって、補強部材20は、ステイ本体10に形成された横向きスリット2a〜6aに差し込まれており、ステイ本体10の側壁13,14に変形が生じた際に、側壁13,14を支持する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパーステイに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、バンパーリインフォースメントと、これを支持する左右一対のバンパーステイとを備えるバンパー構造が開示されている。このバンパー構造は、バンパーリインフォースメントに曲げ変形や圧潰を生じさせることで衝突エネルギーを吸収し、さらには、バンパーステイに圧潰を生じさせることで、衝突エネルギーを吸収する。このようなバンパー構造によれば、圧潰荷重のピークを低く抑えつつ衝突エネルギーの吸収量を大きくすることができるので、軽衝突時における安全装置(例えば、エアーバックなど)の誤作動を防ぎつつ車体に与えるダメージを緩和することができる。
【0003】
ところで、上下が開口した形材でバンパーステイの本体を構成すると、その圧潰過程において、ステイ本体の側壁に左右何れか一方への「横倒れ」が発生する場合がある。ステイ本体の側壁に「横倒れ」が発生しても、衝突エネルギーを吸収することはできるが、横倒れ自体を抑制するか、あるいは、横倒れの発生時期を遅らせた方が、衝突エネルギーの吸収量が大きくなる。
【0004】
「横倒れ」に対処するための技術として、特許文献3には、角筒状を呈するステイ本体の上下の開口を一対の蓋板で塞ぐ技術が開示されており、特許文献4には、ステイ本体の内側にブレースを配置する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/110938号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2009/110461号パンフレット
【特許文献3】特許第4232328号公報
【特許文献4】特許第3981791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2には、車体固定用のボルトをバンパーステイの内部空間に配置する形態が例示されているが、このような形態のバンパーステイに特許文献3の技術を適用すると、バンパーステイの開口が塞がれてしまい、点検や交換等を行い難くなる虞がある。
【0007】
また、特許文献4の技術では、ブレースを配置する関係でステイ本体の断面形状をハット形にする必要があるので、ステイ本体の断面形状を自由に設計できないという問題がある。
【0008】
このような観点から、本発明は、車両衝突時に横倒れが生じ難いバンパーステイであって、点検や交換等を容易に行うことができ、かつ、ステイ本体の設計の自由度が高いバンパーステイを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決する第一の発明は、上下が開口したステイ本体と、前記ステイ本体を上下に仕切るように配置された補強部材と、を備えるバンパーステイであって、前記補強部材は、前記ステイ本体に形成された横向きスリットに差し込まれており、前記ステイ本体の側壁に変形が生じた際に、前記側壁を支持する、ことを特徴とする。
【0010】
なお、通常時に補強部材が側壁に接触していないような場合であっても、ステイ本体の側壁に或る程度の変形が生じた時点で側壁に当接するような場合は、「ステイ本体の側壁に変形が生じた際に、側壁を支持する」に含まれる。
【0011】
本発明によれば、車両の衝突に伴ってステイ本体の側壁に生じる曲げ変形や座屈変形を抑制することが可能になるので、側壁の横倒れを抑制することが可能になり、あるいは、横倒れの発生時期を遅らせることが可能になる。
【0012】
また、本発明によれば、ステイ本体に補強部材を配置していながらも、ステイ本体の上下は開口したままとなるので、バンパーステイの点検や交換等を容易に行うことができる。
【0013】
さらに、本発明では、ステイ本体に横向きスリットを形成し、当該横向きスリットに補強部材を差し込む、という構成を採用したので、ステイ本体の断面形状にかかわらず、補強部材を配置することができる。すなわち、本発明によれば、ステイ本体の設計の自由度が高いものとなり、ステイ本体の断面形状を決定した後であっても、バンパーステイの圧潰強度や潰れ具合を容易に調整することができる。
【0014】
なお、前記ステイ本体の断面形状に制限はないが、前記ステイ本体が、車体への取付部となる後壁と、バンパーリインフォースメントへの取付部となる前壁と、前記後壁と前記前壁とを繋ぐ左右一対の側壁とを有している場合には、前記側壁に横向きスリットを形成し、当該横向きスリットに前記補強部材を差し込んだ状態で、前記補強部材を前記側壁に接合するとよい。このようにすると、ステイ本体の側壁と補強部材とが一体的になるので、側壁の変形を効果的に抑制することができる。なお、ステイ本体と補強部材との接合方法に制限はなく、例えば、接着、溶接、摩擦攪拌接合、機械的接合法(ビス止めやリベット止め)などの接合方法を適用することができる。
【0015】
ステイ本体の側壁に横向きスリットを形成した場合には、側壁の外面に補強部材を溶接するとよい。このようにすると、ステイ本体の外面側からの溶接作業により補強部材をステイ本体に接合することが可能になるので、製作時の作業効率が高いものとなる。
【0016】
ステイ本体が仕切壁(ステイ本体の内部空間を左右または前後に仕切るもの)を有している場合には、仕切壁に横向きスリットを形成し、当該横向きスリットに補強部材を差し込むとよい。このようにすると、補強部材の面外変形を抑制することが可能になるで、補強部材の薄肉化を図ることが可能になる。
【0017】
なお、ステイ本体の側壁に横向きスリットを形成しない場合には、仕切壁の横向きスリットに補強部材を差し込み、補強部材の側縁をステイ本体の側壁の内面に当接、もしくは近接させればよい。
【0018】
補強部材に切込みを形成し、当該切込みに仕切壁を差し込んでもよい。このようにすると、仕切壁の座屈変形等を抑制することが可能になるので、仕切壁の薄肉化を図ることが可能になる。
【0019】
ステイ本体は、押出形材を利用して形成するとよい。この場合には、ステイ本体の素となる押出形材の一部分に切れ込みを入れることで、前記した横向きスリットを形成すればよい。このようにすると、ステイ本体を容易且つ安価に製造することが可能になる。
【0020】
上記の第一の発明は、ステイ本体に横向きスリットを形成することで、ステイ本体の上部と下部との間に隙間を形成し、当該隙間を利用して補強部材を配置する、というものであるが、ステイ本体の上部と下部を別体とすることで、ステイ本体の上部と下部との間に隙間を確保し、当該隙間を利用して補強部材を配置してもよい。
【0021】
すなわち、前記課題を解決する第二の発明は、上下が開口したステイ本体と、前記ステイ本体を上下に仕切るように配置された補強部材と、を備えるバンパーステイであって、前記ステイ本体は、第一押出形材からなるステイ上部と、第二押出形材からなるステイ下部とを有し、前記補強部材は、前記ステイ上部と前記ステイ下部とに挟まれた状態で、前記ステイ上部および前記ステイ下部に接合されている、ことを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、車両衝突時にステイ本体の側壁に生じる曲げ変形や座屈変形を抑制することが可能になるので、側壁の横倒れを抑制することが可能になり、あるいは、横倒れの発生時期を遅らせることが可能になる。
【0023】
また、本発明によれば、ステイ本体に補強部材を配置していながらも、ステイ本体の上下は開口したままとなるので、バンパーステイの点検や交換等を容易に行うことができる。
【0024】
さらに、本発明では、ステイ上部とステイ下部とで補強部材を挟む、という構成を採用したので、ステイ上部およびステイ下部の断面形状にかかわらず、補強部材を配置することができる。すなわち、本発明によれば、ステイ本体の設計の自由度が高いものとなり、ステイ本体の断面形状を決定した後であっても、バンパーステイの圧潰強度や潰れ具合を容易に調整することができる。
【0025】
前記第一押出形材および前記第二押出形材は、同じ断面形状であることが好ましい。このようにすると、一種類の押出形材を利用してステイ本体を形成することが可能になるので、製作コストを下げることが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るバンパーステイによれば、車両衝突時に横倒れが生じ難くなる。また、点検や交換等を容易に行うことができ、かつ、ステイ本体の設計の自由度が高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るバンパーステイを備えたバンパー構造の分解斜視図である。
【図2】(a)はステイ本体を示す拡大平面図、(b)は車幅方向内側の側壁の構成を説明するための拡大平面図である。
【図3】(a)は本発明の第一の実施形態に係るバンパーステイを示す分解斜視図、(b)は一部を破断させたステイ本体を示す斜視図である。
【図4】(a)は本発明の第一の実施形態に係るバンパーステイをバンパーリインフォースメントに接合した状態を示す斜視図、(b)は補強部材をステイ本体に接合した状態を示す斜視図である。
【図5】(a)は衝突荷重が作用する前のバンパー構造を示す平面図、(b)は伸長過程を示す平面図、(c)は断面圧潰過程を示す平面図、(d)はステイ圧潰過程を示す平面図である。
【図6】本発明の第一の実施形態に係るバンパーステイの変形例を示す斜視図である。
【図7】バンパー構造の変形例を示す平面図である。
【図8】(a)は本発明の第二の実施形態に係るバンパーステイを示す分解斜視図、(b)は一部を破断させたステイ本体の斜視図である。
【図9】(a)は本発明の第三の実施形態に係るバンパーステイを示す分解斜視図、(b)は同じく斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態に係るバンパーステイS1は、図1に示すように、サイドメンバ(車体)MとバンパーリインフォースメントRとの間に介設されるものである。バンパーステイS1は、左右に一つずつ配置されており、バンパーリインフォースメントRとともにバンパー構造B1を構成している。
【0029】
なお、バンパー構造B1は、フロントバンパーを構成するものであるが、本発明の適用範囲を限定する趣旨ではない。本発明に係るバンパーステイをリアバンパーに適用しても勿論差し支えない。
【0030】
本実施形態における「前後」、「右左」、「上下」は、バンパー構造B1を車体に取り付けた状態を基準にする。また、「車幅方向」とは「左右方向」と同義である。
【0031】
バンパーステイS1は、上下が開口したステイ本体10と、ステイ本体10を上下に仕切るように配置された補強部材20とを備えている。
【0032】
ステイ本体10は、アルミニウム合金製の中空押出形材(ホロー形材)からなり、押出方向が上下方向となるように配置されている。ステイ本体10には、横向きスリット2a〜6aが形成されている。横向きスリット2a〜6aは、上下方向を法線とする平面とステイ本体10との交線に沿って形成されている。横向きスリット2a〜6aの加工方法に制限はないが、例えば、ステイ本体10の素となる中空押出形材に対して、上下方向を法線とする平面に沿って丸鋸を挿入し、切れ込みを形成すればよい。
【0033】
補強部材20は、アルミニウム合金製の板材からなり、横向きスリット2a〜6aに差し込まれる。補強部材20は、ステイ本体10の押出方向(上下方向)と交差する平面に沿って配置されていて、ステイ本体10の側壁13,14に変形が生じた際に、側壁13,14を支持する。
【0034】
図2を参照してステイ本体10の構成をより詳細に説明する。
ステイ本体10は、図2の(a)に示すように、サイドメンバMからバンパーリインフォースメントRに向かうにしたがって幅寸法が漸増する形状(末広がり形状)を具備している。ステイ本体10は、三つの中空空間a,b,cを備えている。なお、車幅方向外側の中空空間aおよび車幅方向内側の中空空間cは、平面視三角形状を呈しており、中空空間a,cの間に位置する中空空間bは、平面視五角形状を呈している。
【0035】
本実施形態のステイ本体10は、サイドメンバMへの取付部となる後壁11と、バンパーリインフォースメントRへの取付部となる前壁12と、後壁11と前壁12とを繋ぐ左右一対の側壁13,14と、ステイ本体10の内部空間を左右に仕切る仕切壁15,16とを備えて構成されている。
【0036】
後壁11は、サイドメンバMの前端面に固定される部位であり、平板状を呈している。後壁11には、ボルト挿通孔が形成されている。このボルト挿通孔には、後壁11をサイドメンバMの前端面に締着するためのボルトが挿通される。
【0037】
前壁12は、バンパーリインフォースメントRに固定される部位であり、バンパーリインフォースメントRの後面(車体側の面)に当接する当接面12a,12bと、バンパーリインフォースメントRの後面に間隔をあけて対向する対向面12cとを備えている。当接面12a,12bは、バンパーリインフォースメントRの後面と同じ曲率の曲面(円弧面)に成形されており、バンパーリインフォースメントRの後面に面接触する。
【0038】
図3の(a)に示すように、前壁12の高さ方向中央部には、横向きスリット2aが形成されている。横向きスリット2aは、前壁12の全幅に亘って連続している。
【0039】
左右の側壁13,14は、車幅方向に間隔をあけて配置されている。図2の(a)に示すように、両側壁13,14の離隔距離は、サイドメンバMからバンパーリインフォースメントRに向かうにしたがって漸増する。なお、以下の説明において側壁13,14を区別する場合には、車幅方向外側の側壁13を「外壁13」と称し、車幅方向内側の側壁14を「内壁14」と称する。
【0040】
外壁13は、後壁11の車幅方向外側の側縁から前壁12の車幅方向外側の側縁に至る部位であり、前壁12を車体側から支持している。
【0041】
外壁13は、後壁11に斜交している。後壁11と外壁13とで形成される内角は、鈍角になっている。また、外壁13は、その全体が平面視円弧状を呈していて、ステイ本体10の内空側(中空空間a側)に湾曲している。すなわち、外壁13は、後壁11の車幅方向外側の側縁と前壁12の車幅方向外側の側縁とを通る平面s1よりも中空空間a側に位置している。なお、本実施形態では、平面視円弧状を呈する外壁13を例示したが、外壁13の構成を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、複数の円弧状部を連ねた形態の外壁に変更してもよいし、平板状を呈する外壁に変更してもよい。
【0042】
図3の(a)に示すように、外壁13の高さ方向中央部には、横向きスリット3aが形成されている。横向きスリット3aの前端部は、前壁12の横向きスリット2aに通じており、横向きスリット3aの後端部は、後壁11の直前まで達している。
【0043】
内壁14は、後壁11の車幅方向内側の側縁から前壁12の車幅方向内側の側縁に至る部位であり、前壁12を車体側から支持している。
【0044】
内壁14の高さ方向中央部には、図3の(b)にも示すように、横向きスリット4aが形成されている。横向きスリット4aの前端部は、前壁12の横向きスリット2aに通じており、横向きスリット4aの後端部は、後壁11の直前まで達している。
【0045】
図2の(a)に示すように、内壁14は、後壁11に斜交している。後壁11と内壁14とで形成される内角は、鈍角になっている。内壁14は、ステイ本体10の内空側(中空空間b,c側)に湾曲している。すなわち、内壁14の全体が、後壁11の車幅方向内側の側縁と前壁12の車幅方向内側の側縁とを通る平面s2よりも中空空間b,c側に位置している。
【0046】
図2の(b)に示すように、内壁14は、複数の円弧状部14A,14B,14Cを有する。以下の説明においては、後壁11に繋がる円弧状部14Aを「第一円弧状部14A」と称し、前壁12に繋がる円弧状部14Cを「第三円弧状部14C」と称し、第一円弧状部14Aと第三円弧状部14Cとを繋ぐ円弧状部14Bを「第二円弧状部14B」と称する。なお、図2の(b)の図面に付したハッチングは、第一円弧状部14Aと第三円弧状部14Cの範囲を明瞭にするために付したものである。
【0047】
第一円弧状部14Aは、後壁11の車幅方向内側の側縁から仕切壁16との接続部に至る部位である。第一円弧状部14Aは、平面視円弧状を呈していて、中空空間b側に湾曲している。
【0048】
第二円弧状部14Bは、第一円弧状部14Aの前端部から第三円弧状部14Cの後端部に至る部位である。第二円弧状部14Bは、平面視円弧状を呈していて、中空空間c側に湾曲している。なお、第二円弧状部14Bと第三円弧状部14Cとは滑らかに連続しているが、第一円弧状部14Aと第二円弧状部14Bとは屈折した状態(接線が共通しない状態)で連続している。
【0049】
第三円弧状部14Cは、第二円弧状部14Bの前端部から前壁12の車幅方向内側の側縁に至る部位である。第三円弧状部14Cは、平面視円弧状を呈していて、中空空間c側に湾曲している。
【0050】
なお、第一円弧状部14Aの半径Ra、第二円弧状部14Bの半径Rb、第三円弧状部14Cの半径Rcは、Ra>Rb>Rcという大小関係になっているが、適宜変更しても差し支えない。また、本実施形態では、三つの円弧状部14A,14B,14Cを連ねた形態の内壁14を例示したが、内壁14の構成を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、一の円弧状部を有する内壁に変更してもよいし、平板状を呈する内壁に変更してもよい。
【0051】
図2の(a)に示すように、仕切壁15,16は、ステイ本体10の内部空間を左右に仕切るとともに、前壁12を車体側から支持している。仕切壁15,16は、それぞれ平板状を呈している。
【0052】
車幅方向外側の仕切壁15は、後壁11と外壁13との交差部から当接面12aの車幅方向内側の側縁に向って立ち上がり、前壁12に達している。
【0053】
車幅方向内側の仕切壁16は、図2の(b)に示すように、第一円弧状部14Aと第二円弧状部14Bとの境界部分から当接面12bの車幅方向外側の側縁に向って立ち上がり、前壁12に達している。
【0054】
図3の(b)に示すように、一方の仕切壁15の高さ方向中央部には、横向きスリット5aが形成されている。横向きスリット5aの前端部は、前壁12の横向きスリット2aに通じており、横向きスリット5aの後端部は、後壁11の手前まで達している。
【0055】
他方の仕切壁16の高さ方向中央部には、横向きスリット6aが形成されている。横向きスリット6aの前端部は、前壁12の横向きスリット2aに通じており、横向きスリット6aの後端部は、内壁14の横向きスリット4aに通じている。
【0056】
なお、図2の(a)に示す中空空間aの潰れ易さは、中空空間aを取り囲む前壁12、外壁13、仕切壁15の肉厚、長さなどのほか、外壁13の曲率(半径)の大小にも依存している。例えば、外壁13の曲率を小さく(半径を大きく)すると、外壁13の座屈荷重が大きくなるので、中空空間aが潰れ難くなり、外壁13の曲率を大きく(半径を小さく)すると、外壁13の座屈荷重が小さくなるので、中空空間aが潰れ易くなる。
【0057】
中空空間bの潰れ易さは、中空空間bを取り囲む後壁11、前壁12、第一円弧状部14A(図2の(b)参照)、仕切壁15,16の肉厚や長さなどのほか、第一円弧状部14Aの半径の大小にも依存している。例えば、第一円弧状部14Aの半径を大きくすると、第一円弧状部14Aの座屈荷重が大きくなるので、中空空間bが潰れ難くなり、第一円弧状部14Aの半径を小さくすると、第一円弧状部14Aの座屈荷重が小さくなるので、中空空間bが潰れ易くなる。
【0058】
中空空間cの潰れ易さは、中空空間cを取り囲む前壁12、第二円弧状部14B、第三円弧状部14C、および仕切壁16の肉厚や長さなどのほか、第二円弧状部14Bおよび第三円弧状部14Cの半径の大小にも依存している。例えば、第二円弧状部14Bまたは第三円弧状部14Cの半径を大きくすると、中空空間cが潰れ難くなり、第二円弧状部14Bまたは第三円弧状部14Cの半径を小さくすると、中空空間cが潰れ易くなる。
【0059】
補強部材20は、図3の(a)に示すように、横向きスリット2a〜6aに挿入される。補強部材20の前後方向への抜け出しは、ステイ本体10の後壁11およびバンパーリインフォースメントR(図1参照)によって阻止される。補強部材20の平面形状は、ステイ本体10の輪郭(外形)と略同じ形状であり、補強部材20の厚さ寸法は、横向きスリット2a〜6aの開口幅と同等である。なお、補強部材20を配置することにより、ステイ本体10の圧潰強度が高まるが、その程度は、補強部材20の肉厚の大きさや溶接長によって調整することができる。
【0060】
補強部材20の後端縁部21は、横向きスリット3a〜5a(図3の(b)参照)の後端まで入り込み、ステイ本体10の後壁11に接触もしくは近接する。
【0061】
補強部材20の前端縁部22は、ステイ本体10の当接面12a,12bよりも前側に突出しないように成形されている(図1参照)。本実施形態では、横向きスリット2aに前端縁部22が入り込み、ステイ本体10の前面(当接面12a,12bおよび対向面12c)と前端縁部22とが面一になる。
【0062】
補強部材20の側縁部23,24は、それぞれ横向きスリット3a,4aに入り込み、かつ、ステイ本体10の側面と面一になるように成形されている。
【0063】
補強部材20は、ステイ本体10の側壁13,14のみに接合する。本実施形態では、図4の(b)に示すように、ステイ本体10の外面側から、補強部材20の側縁部23,24(図3の(a)参照)の全長に亘って連続して溶接W3、W4を行う。なお、バンパーステイS1の圧潰強度を高めたい場合には、補強部材20を仕切壁15,16に溶接してもよい。
【0064】
図1に示すバンパーリインフォースメントRは、バンパーステイS1,S1に架設されるものであり、溶接等の手段によりバンパーステイS1に固着される。図示のバンパーリインフォースメントRは、その全体が円弧状(単一の円弧で形成されている場合だけでなく、複数の円弧や直線により構成された略円弧状に形成されている場合も含む)に湾曲しており、両端部が車体側(後方)に傾斜している。すなわち、バンパーリインフォースメントRは、車外方向(前方)に凸となるように湾曲している。ちなみに、このようなバンパーリインフォースメントRは、アルミニウム合金製の中空押出形材に曲げ加工を施すことにより得ることができる。
【0065】
バンパーリインフォースメントRは、図4の(a)に示すように、その外殻となる角筒状の本体部R1と、この本体部R1の内部に配置された中壁R2とを備えている。中壁R2は、バンパーリインフォースメントRの断面剛性を向上させる目的で配置されたものであり、本実施形態では、本体部R1の内部空間を上下二つに分割するように配置されている。
【0066】
バンパーリインフォースメントRは、バンパーステイS1,S1間において湾曲部分が直線状に伸ばされる過程(伸長過程)で衝突エネルギーを吸収するとともに、バンパーステイS1に隣接した領域において本体部R1の上壁、下壁および中壁R2に座屈や塑性曲げ変形が発生する過程(断面圧潰過程)で衝突エネルギーを吸収する。本実施形態では、伸長過程が進行した後に断面圧潰過程が進行するように、バンパーリインフォースメントR全体の曲げ剛性が設定されている。
【0067】
ちなみに、伸長過程の開始・終了のタイミングに影響を及ぼすのは、主としてバンパーリインフォースメントR全体の曲げ剛性である。当該曲げ剛性は、断面2次モーメントを増減させることで調整される。バンパーリインフォースメントRの断面2次モーメントの大小に影響を及ぼすのは、主に、本体部R1の前壁および後壁の肉厚の大きさと、本体部R1の前壁と後壁との離間距離の大きさであるから、これらを増減させることで、伸長過程の開始・終了のタイミングを調整することができる。一方、断面圧潰過程の開始・終了のタイミングに影響を及ぼすのは、主に、本体部R1の上壁、下壁および中壁R2の肉厚と、本体部R1の前壁と後壁との離間距離の大きさであるから、これらを増減させることで、断面圧潰過程の開始・終了の時期を調整することができる。
【0068】
また、本実施形態では、バンパーリインフォースメントRの伸長過程および断面圧潰過程が進行した後に、ステイ圧潰過程が進行するようにバンパーステイS1およびバンパーリインフォースメントRの剛性(各部の肉厚や断面寸法など)が設定されている。
【0069】
ここで、バンパー構造B1の組立方法を説明する。
図3の(a)に示すように、まず、ステイ本体10の横向きスリット2a〜6aに補強部材20を差し込む。次に、図4の(a)に示すように、ステイ本体10の前壁12をバンパーリインフォースメントRの後面に当接させた状態で、当接箇所の上縁、下縁および側縁に沿って溶接W1,W2を施し、ステイ本体10をバンパーリインフォースメントRに接合する。また、図4の(b)に示すように、補強部材20の側縁部に沿って溶接W3,W4を施し、補強部材20をステイ本体10に接合する。なお、補強部材20の側端縁は、横向きスリット3a,4a(図3の(a)参照)を介してステイ本体10の外面に露出するので、溶接W3,W4は、ステイ本体10の外面側から行うとよい。
【0070】
なお、図示は省略するが、摩擦攪拌接合やボルトやリベット等の機械的接合手段により、バンパーステイS1をバンパーリインフォースメントRに接合してもよい。
【0071】
次に、図5を参照して、正面衝突時における衝突エネルギーの吸収過程を説明する。
図5の(a)に示すバンパー構造に対して、正面側(車体前方)から車体前後方向の衝突荷重が作用すると、図5の(b)に示すように、まず、バンパーステイS1,S1間においてバンパーリインフォースメントRの湾曲部分が直線状に伸ばされることで、衝突エネルギーが吸収される(伸長過程)。
【0072】
バンパーリインフォースメントRの湾曲部分が直線状に伸ばされる際には、ステイ本体10の中空空間cの外殻(図2の(b)に示す前壁12、第二円弧状部14B、第三円弧状部14Cおよび仕切壁16)を車体側に押圧するような力Fが作用するが、中空空間cの外殻が力学的に安定した平面視三角形状を呈しており、かつ、補強部材20により内壁14の「横倒れ」が抑制されるので、バンパーステイS1は、伸長過程中のバンパーリインフォースメントRを安定して支持する。なお、伸長過程中に、前壁12や内壁14には曲げ変形が発生するので、中空空間cの外殻の初期形状が堅固に維持される訳ではないが、伸長過程中における中空空間cの外殻は、概ね平面視三角形の状態に維持される。すなわち、中空空間cの外殻は、伸長過程中のバンパーリインフォースメントRを安定して支持しつつも、バンパーリインフォースメントRの曲げ伸ばしを阻害することがないように適度に変形する。
【0073】
伸長過程だけで衝突エネルギーを吸収できない場合には、図5の(c)に示すように、バンパーステイS1がバンパーリインフォースメントRに減り込み、バンパーステイS1に隣接した領域においてバンパーリインフォースメントRの断面変形が進行する(すなわち、バンパーリインフォースメントRの内部空間が潰れる)ことで、衝突エネルギーが吸収される(断面圧潰過程)。すなわち、伸長過程が終盤に差し掛かるか、もしくは伸長過程が終了すると、断面圧潰過程が進行し始める。バンパーリインフォースメントRの湾曲部分を直線状に伸ばした後に、バンパーステイS1をバンパーリインフォースメントRに減り込ませれば、伸長過程中にサイドメンバMに伝わる衝突荷重のピークと断面圧潰過程(バンパーリインフォースメントRが前後方向へ圧潰する過程)中にサイドメンバMに伝わる衝突荷重のピークとが時間差をもって現れるようになる。
【0074】
なお、バンパーステイS1がバンパーリインフォースメントRに減り込む際に、バンパーステイS1のエッジ部分でバンパーリインフォースメントRが引き裂かれてしまうと、断面圧潰過程におけるエネルギー吸収量が小さくなってしまうが、バンパー構造B1によれば、中空空間cの外殻が適度に変形するので、バンパーリインフォースメントRが引き裂かれ難くなる。すなわち、中空空間cの外殻は、概ね平面視三角形の状態を維持しつつバンパーリインフォースメントRに減り込むが、前壁12や内壁14には適度な曲げ変形が発生するので、前壁12の車幅方向内側の端縁での「引裂き」が発生し難くなり、バンパーリインフォースメントRが広範囲に亘って潰れるようになる。
【0075】
内壁14と仕切壁16とのなす角度θ2(図2の(b)参照)を小さくすると、バンパーリインフォースメントRを安定的に支持できるようになる一方で、中空空間cの外殻が堅固になり過ぎる虞があるので、θ2の大きさは、前壁12の車幅方向内側の端縁での「引裂き」が懸念されない程度に設定することが望ましい。図2の(b)に示すように、本実施形態では、前壁12と仕切壁16とのなす角度θ1、内壁14と仕切壁16とのなす角度θ2、前壁12と内壁14とのなす角度θ3が、θ1>θ2>θ3という関係になっているが、このような大小関係にしておけば、引裂き現象の発生を防ぎつつ、バンパーリインフォースメントRを安定的に支持することが可能になる。
【0076】
断面圧潰過程が進行してもなお衝突エネルギーを吸収しきれない場合には、ステイ本体10および補強部材20が前後方向に圧潰することで衝突エネルギーが吸収される(ステイ圧潰過程)。すなわち、断面圧潰過程が終盤に差し掛かるか、もしくは断面圧潰過程が終了すると、図5の(d)に示すように、ステイ圧潰過程が進行し始める。バンパーステイS1をバンパーリインフォースメントRに減り込ませた後に、バンパーステイS1を圧潰させると、断面圧潰過程中にサイドメンバMに伝わる衝突荷重のピークとステイ圧潰過程中にサイドメンバMに伝わる衝突荷重のピークとが時間差をもって現れるようになる。なお、ステイ圧潰過程では、ステイ本体10の外壁13、内壁14、仕切壁15,16(図2の(a)参照)などに座屈や塑性曲げ変形等が発生するとともに、補強部材20に座屈や塑性変形等が発生し、中空空間a,b,c(図2の(a)参照)が潰れる。
【0077】
このように、バンパー構造B1によれば、少なくとも正面衝突の場合においては、伸長過程、断面圧潰過程およびステイ圧潰過程が順次進行するようになるので、衝突荷重のピークも時間差をもって順次現れるようになる。したがって、バンパー構造B1によれば、衝突荷重が増大した後に衝突荷重が大きく減少することを防いで荷重値を維持することが可能となる。
【0078】
また、バンパー構造B1によれば、少なくとも正面衝突の場合においては、伸長過程中にバンパーステイS1,S1が前後方向に圧潰するようなことがない。つまり、バンパー構造では、バンパーリインフォースメントRの支点間距離が、見た目だけでなく実質的にも狭まることになる。
【0079】
なお、何らの対策を施すことなく、バンパーリインフォースメントRの前壁および後壁の肉厚を小さくすると、バンパーリインフォースメントRの軽量化が図られる一方で、バンパーリインフォースメントRの曲げ剛性が小さくなってしまい、バンパーリインフォースメントRの変形抵抗が低下するとともに、伸長過程において吸収される衝突エネルギーの吸収量が減少してしまう。これに対し、本実施形態のバンパー構造B1によれば、末広がり形状のバンパーステイS1によってバンパーリインフォースメントRの支点間距離を狭めているので、バンパーリインフォースメントRの前壁および後壁の肉厚を小さくして軽量化を図ったとしても、バンパーリインフォースメントRの変形抵抗が大きく低下するようなことはなく、したがって、伸長過程において吸収される衝突エネルギーの吸収量が大きく減少するようなこともない。つまり、バンパー構造B1によれば、バンパーステイS1,S1間におけるバンパーリインフォースメントRの変形抵抗を低下させることなくバンパーリインフォースメントRの肉厚(特に、本体部R1の前壁および後壁の肉厚)を小さくすることが可能となり、したがって、伸長過程において吸収される衝突エネルギーの吸収量を減少させることなく軽量化を図ることが可能となる。
【0080】
さらに、バンパー構造B1によれば、末広がり形状のバンパーステイS1を使用しているので、末広がり形状ではないバンパーステイを使用した場合に比べて、バンパーリインフォースメントRの圧潰範囲を増大させることが可能となり、ひいては、衝突エネルギーの吸収量を増大さることが可能となる。
【0081】
加えて、バンパー構造B1によれば、バンパーステイS1およびバンパーリインフォースメントRの両方をアルミニウム合金製の押出形材で形成しているので、バンパー構造B1の軽量化・低コスト化を図ることが可能となり、さらには、製造が容易になるとともに、品質が安定する。
【0082】
而して本実施形態に係るバンパーステイS1によれば、補強部材20による補強効果により、車両衝突時においてステイ本体10の側壁13,14に生じる曲げ変形や座屈変形を抑制することが可能になるので、側壁13,14の「横倒れ」を抑制することが可能になり、あるいは、横倒れの発生時期を遅らせることが可能になる。
【0083】
また、バンパーステイS1によれば、ステイ本体10に補強部材20を配置していながらも、ステイ本体10の上下は開口したままとなるので、バンパーステイS1の点検や交換等を容易に行うことができる。
【0084】
バンパーステイS1においては、図2の(a)に示すように、ステイ本体10の外壁13および内壁14がステイ本体10の内空側に湾曲しているので、外壁13および内壁14の座屈モードは、多くの場合、ステイ本体10の内空側に入り込むような座屈モードとなる。つまり、バンパーステイS1によれば、その圧潰過程や圧潰後の形態にばらつきが生じ難くなるので、ステイ圧潰過程において吸収される衝突エネルギー量にばらつきが生じ難くなる。
【0085】
さらに、図3の(a)および(b)に示すように、ステイ本体10に横向きスリット2a〜6aを形成し、この横向きスリット2a〜6aに補強部材20を差し込む、という構成を採用したので、ステイ本体10の断面形状にかかわらず、補強部材20を配置することができる。すなわち、バンパーステイS1によれば、ステイ本体10の設計の自由度が高いものとなり、ステイ本体10の断面形状を決定した後であっても、バンパーステイS1の圧潰強度や潰れ具合を容易に調整することができる。
【0086】
また、側壁13,14に横向きスリット3a,4aを形成し、横向きスリット3a,4aに補強部材20の側縁部23,24を差し込んだ状態で、補強部材20を側壁13,14に溶接しているので(図4の(b)参照)、側壁13,14と補強部材20とが一体的に結合し、その結果、側壁13,14の変形を効果的に抑制することができる。
【0087】
しかも、バンパーステイS1では、ステイ本体10の外側からの溶接作業により補強部材20をステイ本体10に接合しているので、製作時の作業効率が高いものとなる。
【0088】
さらに、仕切壁15,16の横向きスリット5a,6aに補強部材20を差し込んでいるので、補強部材20の面外変形を抑制することが可能になり、ひいては、補強部材20の薄肉化を図ることが可能になる。
【0089】
なお、補強部材20の溶接箇所(溶接長)を増加させるか、あるいは、補強部材20の厚さを増大させると、バンパーステイS1の圧潰強度が高まる一方で、ステイ圧潰過程におけるピーク荷重も大きくなり、滑らかな衝撃吸収の妨げとなる場合がある。圧潰強度の高まり過ぎが懸念されるような場合には、図示は省略するが、補強部材20の側縁部23,24を部分的にステイ本体10に溶接し、側壁13,14の拘束度合いを低減するか、あるいは、補強部材20の厚さを小さくすればよい。なお、側縁部23の一部を外壁13に溶接する場合には、後壁11と外壁13との交差部分および前壁12と外壁13との交差部分の少なくとも一方に対して溶接することが望ましい。また、側縁部24の一部を内壁14に溶接する場合には、後壁11と内壁14との交差部分、前壁12と内壁14との交差部分および内壁14と仕切壁16との交差部分のうちの少なくとも一箇所において溶接することが望ましい。
【0090】
なお、本実施形態では、補強部材20の側縁部23,24をステイ本体10の側面(側壁13,14の外面)と面一にした形態を例示したが、本発明に係るバンパーステイの構成を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、補強部材20の側縁部23,24をステイ本体10の側壁13,14から突出させてもよいし、図6に示すバンパーステイS1’のように、補強部材20の一方の側縁に添設板部25を付設し、添設板部25をバンパー本体10の側面に接合してもよい。図6の添設板部25は、バンパー本体10の外壁13の外側面に沿って配置され、溶接により外壁13に接合される。このようにすると、外壁13に生じる曲げ変形や座屈変形を抑制することが可能になるので、外壁13の横倒れを抑制することが可能になり、あるいは、横倒れの発生時期を遅らせることが可能になる。図示は省略するが、外壁13に接合される添設板部25に代えて内壁14に接合される添設板部を設けてもよい。
【0091】
本実施形態においては、全体が円弧状に湾曲したバンパーリインフォースメントRにバンパーステイS1を組み合わせた場合を例示したが、図7に示すように、バンパーステイS1,S1の間に二箇所の屈曲部分Rs,Rsを備えるバンパーリインフォースメントRであっても差し支えない。この場合には、バンパーリインフォースメントRの屈曲部分Rs,Rsが直線状に伸ばされることで、衝突初期における衝突エネルギーが吸収されることになる。
【0092】
図示は省略するが、直線状を呈するバンパーリインフォースメントを使用しても差し支えない。この場合には、バンパーリインフォースメントのうち、左右のバンパーステイの間の部分が車体側に凸となるように湾曲(曲げ変形)することで、衝突初期における衝突エネルギーが吸収されることになる。
【0093】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態に係るバンパーステイS2は、図8の(a)に示すように、上下が開口したステイ本体30と、ステイ本体30を上下に仕切るように配置された補強部材40とを備えている。
【0094】
ステイ本体30は、アルミニウム合金製の中空押出形材(ホロー形材)からなり、押出方向が上下方向となるように配置されている。ステイ本体30には、横向きスリット2a,5a,6aが形成されている。横向きスリット2a,5a,6aは、上下方向を法線とする平面とステイ本体30との交線に沿って形成されている。
【0095】
ステイ本体30は、サイドメンバへの取付部となる後壁31と、バンパーリインフォースメントへの取付部となる前壁32と、後壁31と前壁32とを繋ぐ左右一対の側壁33,34と、ステイ本体10の内部空間を左右に仕切る仕切壁35,36とを備えて構成されている。ステイ本体30は、第一の実施形態におけるステイ本体10と同様の構成を備えているが、仕切壁35,36は、平行に配置されている。
【0096】
前壁32および仕切壁35,36には、横向きスリット2a,5a,6aが形成されている。側壁33,34には横向きスリットが形成されていない。
【0097】
前壁32の横向きスリット2aは、前壁32の略全幅に亘って連続している。図8の(b)に示すように、仕切壁35,36の横向きスリット5a,6aの前端部は、前壁12の横向きスリット2aに通じており、横向きスリット5a,6aの後端部は、仕切壁35,36の前後方向の中間部まで達している。
【0098】
補強部材40は、図8の(a)に示すように、アルミニウム合金製の板材からなり、横向きスリット2a,5a,6aに差し込まれる。補強部材40は、ステイ本体30の押出方向と交差する平面に沿って配置され、ステイ本体30の側壁33,34に変形が生じた際に、側壁33,34をステイ本体30の内部空間側から支持する。
【0099】
補強部材40には、切込み40a,40bが形成されている。切込み40a,40bには、ステイ本体30の仕切壁35,36が差し込まれる。
【0100】
補強部材40の後端縁部41は、ステイ本体10の後壁31に接触もしくは近接する。補強部材40の前端縁部42は、ステイ本体10の当接面42a,42bよりも前側(バンパーリインフォースメント側)に突出しないように成形されている。
【0101】
補強部材40の側縁部43,44は、ステイ本体30の側壁33,34の内面(内部空側の面)に当接する。なお、図示は省略するが、補強部材40の側縁部43,44を側壁33,34に当接させず、近接させてもよい。この場合、側縁部43,44は、側壁33,34の内面から離間し、通常時は側壁33,34に接触しないが、ステイ本体30の側壁33,34に或る程度の変形が生じた時点で側壁33,34に当接するようになる。
【0102】
補強部材40は、仕切壁35,36の横向きスリット5a,6aに入り込むことによって上下方向への移動が拘束されるとともに、切込み40a,40bに入り込んだ仕切壁35,36によって左右方向への移動が拘束され、加えて、ステイ本体30の後壁31およびバンパーリインフォースメントによって前後方向への抜け出しが阻止されるので、ステイ本体30への溶接を省略してもよい。
【0103】
而して本実施形態に係るバンパーステイS2によれば、補強部材40による補強効果により、車両衝突時においてステイ本体30の側壁33,34に生じる曲げ変形や座屈変形を抑制することが可能になるので、側壁33,34の横倒れを抑制することが可能になり、あるいは、横倒れの発生時期を遅らせることが可能になる。
【0104】
また、バンパーステイS2によれば、ステイ本体30に補強部材40を配置していながらも、ステイ本体30の上下は開口したままとなるので、バンパーステイS2の点検や交換等を容易に行うことができる。
【0105】
また、バンパーステイS2によれば、補強部材40の切込み40a,40bに仕切壁35,36を差し込んでいるので、仕切壁35,36の座屈変形等を抑制することも可能になる。仕切壁の薄肉化を図ることが可能になる。
【0106】
(第三の実施形態)
本発明の第三の実施形態に係るバンパーステイS3は、図9の(b)に示すように、上下が開口したステイ本体50と、ステイ本体50を上下に仕切るように配置された補強部材60と、を備えている。
【0107】
ステイ本体50は、アルミニウム合金製の第一押出形材からなるステイ上部5Aと、アルミニウム合金製の第二押出形材からなるステイ下部5Bとによって構成されている。図9の(a)に示すように、ステイ上部5A(第一押出形材)およびステイ下部5B(第二押出形材)の断面形状は、第一の実施形態に係るステイ本体10の断面形状と同じである。
【0108】
補強部材60は、アルミニウム合金製の板材からなり、ステイ上部5Aとステイ下部5Bとに挟まれた状態で、ステイ上部5Aおよびステイ下部5Bに接合される。
【0109】
而してバンパーステイS3によれば、車両衝突時にステイ本体50の側壁に生じる曲げ変形や座屈変形を抑制することが可能になるので、側壁の横倒れを抑制することが可能になり、あるいは、横倒れの発生時期を遅らせることが可能になる。
【0110】
また、バンパーステイS3によれば、ステイ本体50に補強部材60を配置していながらも、ステイ本体50の上下は開口したままとなるので、バンパーステイS3の点検や交換等を容易に行うことができる。
【0111】
さらに、ステイ上部5Aとステイ下部5Bとで補強部材60を挟む、という構成を採用したので、ステイ上部5Aおよびステイ下部5Bの断面形状にかかわらず、補強部材60を配置することができる。すなわち、バンパーステイS3によれば、ステイ本体50の設計の自由度が高いものとなり、ステイ本体50の断面形状を決定した後であっても、バンパーステイS3の圧潰強度や潰れ具合を容易に調整することができる。
【0112】
また、ステイ上部5A(第一押出形材)およびステイ下部5B(第二押出形材)を同じ断面形状としているので、一種類の押出形材を利用してステイ本体50を形成することができ、したがって、製作コストを下げることが可能になる。
【0113】
なお、前記した各実施形態においては、末広がり形状のバンパーステイS1〜S3を例示したが、本発明に係るバンパーステイの形態を限定する趣旨ではない。また、前記した各実施形態においては、押出形材からなるステイ本体10,30,50を例示したが、鋳造品や鍛造品などにてステイ本体を形成してもよい。
【符号の説明】
【0114】
S1 バンパーステイ
10 ステイ本体
2a〜6a 横向きスリット
11 後壁
12 前壁
13,14 側壁
15,16 仕切壁
20 補強部材
S2 バンパーステイ
2a,5a,6a 横向きスリット
30 ステイ本体
40 補強部材
40a,40b 切込み
S3 バンパーステイ
50 ステイ本体
5A ステイ上部
5B ステイ下部
60 補強部材
R バンパーリインフォースメント
M サイドメンバ(車体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下が開口したステイ本体と、
前記ステイ本体を上下に仕切るように配置された補強部材と、を備えるバンパーステイであって、
前記ステイ本体は、車体への取付部となる後壁と、バンパーリインフォースメントへの取付部となる前壁と、前記後壁と前記前壁とを繋ぐ左右一対の側壁とを有し、
前記補強部材は、前記側壁に形成された横向きスリットに差し込まれた状態で、前記側壁に接合されている、ことを特徴とするバンパーステイ。
【請求項2】
前記補強部材は、前記側壁の外面に溶接されている、ことを特徴とする請求項1に記載のバンパーステイ。
【請求項3】
前記ステイ本体は、その内部空間を左右または前後に仕切る仕切壁を有し、
前記補強部材は、前記仕切壁に形成された横向きスリットに差し込まれている、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバンパーステイ。
【請求項4】
上下が開口したステイ本体と、
前記ステイ本体を上下に仕切るように配置された補強部材と、を備えるバンパーステイであって、
前記ステイ本体は、その内部空間を左右または前後に仕切る仕切壁を有し、
前記補強部材は、前記仕切壁に形成された横向きスリットに差し込まれており、
前記補強部材の側縁は、前記ステイ本体の側壁の内面に当接もしくは近接している、ことを特徴とするバンパーステイ。
【請求項5】
前記仕切壁が、前記補強部材に形成された切込みに差し込まれている、ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のバンパーステイ。
【請求項6】
上下が開口したステイ本体と、
前記ステイ本体を上下に仕切るように配置された補強部材と、を備えるバンパーステイであって、
前記補強部材は、前記ステイ本体に形成された横向きスリットに差し込まれており、前記ステイ本体の側壁に変形が生じた際に、前記側壁に支持する、ことを特徴とするバンパーステイ。
【請求項7】
前記横向きスリットは、前記ステイ本体の素となる押出形材の一部分に切れ込みを入れることにより形成されたものである、ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のバンパーステイ。
【請求項8】
上下が開口したステイ本体と、
前記ステイ本体を上下に仕切るように配置された補強部材と、を備えるバンパーステイであって、
前記ステイ本体は、第一押出形材からなるステイ上部と、第二押出形材からなるステイ下部とを有し、
前記補強部材は、前記ステイ上部と前記ステイ下部とに挟まれた状態で、前記ステイ上部および前記ステイ下部に接合されている、ことを特徴とするバンパーステイ。
【請求項9】
前記第一押出形材および前記第二押出形材は、同じ断面形状である、ことを特徴とする請求項8に記載のバンパーステイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−189915(P2011−189915A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60081(P2010−60081)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(502444733)日軽金アクト株式会社 (107)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)