説明

バージン樹脂ペレットの微片・微粉除去方法及び装置

【課題】バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片や微粉を、水を使って分離除去する方法及びその方法に用いられる装置を提供する。
【解決手段】バージン樹脂ペレットを水と混合撹拌して当該バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片又は微粉を分離除去せしめる。また、多孔状の円筒体と、該円筒体内部に配置され搬送スクリューが軸着された回転軸とを備え、当該回転軸の回転により、多孔状の円筒体内部に供給されるバージン樹脂ペレットと水を混合撹拌しながら搬送し、同時に円筒体の複数の孔から水を排出する洗浄脱水部を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片や微粉を分離除去する方法、及びその方法に用いられる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、樹脂製品は日常生活に欠かせないものとなっており、各種の工業製品に極めて広く使用されている。その中にあって、品質の向上と不良品の発生防止は品質管理とコストダウンの観点から最も重要な課題の一つとなっている。そして、高度な品質が要求される樹脂製品の加工において、樹脂ペレットに付帯する微片及び付着する微粉は、品質劣化の直接的な原因であり、その有効な分離除去対策が求められている。
【0003】
樹脂材料は、コンパウンド加工あるいは成形加工の原料とするため作業性等の面からペレット状に加工される。ところが、ペレット加工は刃物で切断する工程を含むものであり、微細な切り残しがヒゲ状の微片となって残ったり、あるいは微粉が発生し樹脂ペレット表面に付着したりすることが避けらない。
【0004】
ところで、水分が樹脂ペレット内に含有されていたり、樹脂ペレット表面に付着していたりすると、成形加工の段階で不良品発生の原因となる。そのため、樹脂加工の業界では、成形加工の前工程として樹脂ペレットの乾燥工程を設けたり、そもそも樹脂ペレットへ水分が付着・吸着しないようにする等の対策を施すことが、長年常識的に行われている。
【0005】
リサイクル樹脂は、再利用に当たって、粉砕後に水で洗浄することを前提とするものであり、不良品が数多く発生する原因となっている。
一方、非リサイクル樹脂、即ちバージン樹脂の場合は、品質重視及び不良品発生の完全防止の観点から、樹脂ペレットの生成から、後工程であるコンパウンド加工・成形加工を経て、最終樹脂製品の完成に至る全ての工程において、いかなる水分の混入も厳禁とされてきた。
【0006】
そこで、従来、樹脂ペレットに付着する微粉を乾式で除去することが行われている(特許文献1,2参照。)。
特許文献1に記載のものは、樹脂ペレットに付着する微粉を、静電気除去装置と分離装置を用いて除去するものであり、特許文献2に記載のものは、樹脂ペレットに付着する微粉を、空気により除去するものである。
【特許文献1】特開平8−39550号公報
【特許文献2】特開2007−30359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の各技術は、樹脂ペレットに付着する微粉を除去する上で一定の効果のあるものであるが、品質劣化の要因を取り除けるとまでいえるものではない。
また、樹脂ペレットに付帯するヒゲ状の微片の分離除去については考慮されておらず、依然として、製造工程および搬送工程での微片や微粉の発生率を低く抑えたり、樹脂ペレットの使用現場で微片や微粉の発生・混入度合いを目視で観察し、原料ロット毎に選別して、微片・微粉の混入が多いロットを排除する等し、品質劣化の要因を取り除く必要があった。
【0008】
本発明は、長年にわたる業界の常識に反し、バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片や微粉を、水を使って分離除去する方法及びその方法に用いられる装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片又は微粉を分離除去せしめる方法であって、バージン樹脂ペレットを水と混合撹拌して前記微片又は微粉を分離除去せしめることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の方法において、バージン樹脂ペレットと水を、内部に撹拌搬送手段が配置される円筒体内を通過させることで、当該バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片又は微粉を分離除去せしめることを特徴とするものである。
【0011】
前記目的を達成するため、請求項3に係る発明は、バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片又は微粉を分離除去する装置であって、多孔状の円筒体と、該円筒体内部に配置され搬送スクリューが軸着された回転軸とを備え、当該回転軸の回転により、多孔状の円筒体内部に供給されるバージン樹脂ペレットと水を混合撹拌しながら搬送し、同時に円筒体の複数の孔から水を排出する洗浄脱水部を具備することを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の装置において、前記多孔状の円筒体は回転円筒体であって、前記回転軸と同方向でかつ回転軸よりも高速で回転させながら、バージン樹脂ペレットと水を混合撹拌しながら搬送し、同時に円筒体の複数の孔から水を排出することを特徴とするものである。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項3又は4に係る発明の装置において、前記搬送スクリューは逆送スクリューであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項3乃至5のいずれかに係る発明の装置において、円筒体と、該円筒体内部に配置され搬送スクリュー及び撹拌羽根が軸着された回転軸とを備え、当該回転軸の回転により、円筒体内部に供給されるバージン樹脂ペレットと水を搬送しつつ混合撹拌する混合撹拌部を、前記洗浄脱水部の前工程として設けたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項6に係る発明の装置において、前記混合撹拌部の回転軸に軸着された撹拌羽根の搬送方向下流側に逆送スクリューを軸着したことを特徴とするものである。
【0016】
請求項8に係る発明は、請求項3乃至7のいずれかに係る発明の装置において、前記洗浄脱水部の後工程として、当該洗浄脱水部から排出されたバージン樹脂ペレットを乾燥させる乾燥部を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明の方法によれは、バージン樹脂ペレットと水を混合撹拌するので、バージン樹脂ペレットに付帯する微片や付着する微粉を確実に分離除去することができる。また、水は水道水等を用いることができるので、コストが安く有機溶剤等による樹脂の劣化や排水処理の問題等も生じない。
【0018】
請求項2に係る発明の方法によれは、バージン樹脂ペレットと水を、内部に撹拌搬送手段が配置される円筒体内を通過させることで混合撹拌するので、バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片や微粉をより確実に分離除去することができる。
【0019】
請求項3に係る発明の装置によれば、多孔状の円筒体と、該円筒体内部に配置され搬送スクリューが軸着された回転軸とを備え、当該回転軸の回転により、多孔状の円筒体内部に供給されるバージン樹脂ペレットと水を混合撹拌しながら搬送し、同時に円筒体の複数の孔から水を排出する洗浄脱水部を具備するので、バージン樹脂ペレットと水を混合撹拌することにより、バージン樹脂ペレットに付帯する微片や付着する微粉を確実に分離除去することができるとともに、前記回転軸の回転による遠心力によりバージン樹脂ペレットから分離除去された微片や微粉を水とともに勢いよく外部に排出することができる。そして、このとき、バージン樹脂ペレット自体も前記遠心力の作用により脱水されるため、後の工程において効率よく乾燥させることができる。また、水は水道水等を用いることができるので、コストが安く有機溶剤等による樹脂の劣化や排水処理の問題等も生じない。
【0020】
請求項4に係る発明の装置によれば、多孔状の円筒体は回転円筒体であって、前記回転軸と同方向でかつ回転軸よりも高速で回転させながら、バージン樹脂ペレットと水を混合撹拌しながら搬送し、同時に円筒体の複数の孔から水を排出するので、円筒体の回転と回転軸の回転の相乗効果により、バージン樹脂ペレットと水は複雑に混合撹拌され、バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片や微粉をより確実に分離除去することができるとともに、より大きな遠心力によりバージン樹脂ペレットから分離除去された微片や微粉を水とともに一層勢いよく外部に排出することができる。また、バージン樹脂ペレット自体も前記遠心力の作用により効果的に脱水され、後の工程においてより効率よく乾燥させることができる。
【0021】
請求項5に係る発明の装置によれば、搬送スクリューは逆送スクリューであるので、バージン樹脂ペレットと水はより一層複雑に混合撹拌され、当該バージン樹脂ペレットは複雑な軌跡を描きながら時間を掛けて回転円筒体内を搬送されることとなり、バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片や微粉をより一層確実に分離除去することができる。
【0022】
請求項6に係る発明の装置によれば、円筒体と、該円筒体内部に配置され搬送スクリュー及び撹拌羽根が軸着された回転軸とを備え、当該回転軸の回転により、円筒体内部に供給されるバージン樹脂ペレットと水を搬送しつつ混合撹拌する混合撹拌部を、前記洗浄脱水部の前工程として設けたので、バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片や微粉は、当該混合撹拌部において一定程度分離除去せしめられ、その結果、洗浄脱水部におけるバージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片や微粉の分離除去、及び該バージン樹脂ペレットから分離除去された微片や微粉の外部への排出をさらに確実なものとすることができる。
【0023】
請求項7に係る発明の装置によれば、前記混合撹拌部の回転軸に軸着された撹拌羽根の搬送方向下流側に逆送スクリューを軸着したので、バージン樹脂ペレットと水は、逆送スクリューにより搬送方向とは逆方向に向かう力を受けながら混合撹拌されることとなり、バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片や微粉は、当該混合撹拌部においてより一層分離除去されることとなる。
【0024】
請求項8係る発明の装置によれば、前記洗浄脱水部の後工程として、当該洗浄脱水部から排出されたバージン樹脂ペレットを乾燥させる乾燥部を設けたので、洗浄脱水部において脱水されたバージン樹脂ペレットを効率よく乾燥させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態におけるバージン樹脂ペレットの微片・微粉除去装置の概略正面図を示すものである。
ここで、本明細書における「微粉」は、樹脂材料をペレット状に切断する工程において発生する当該樹脂材料の微粉に加え、その他のゴミ等も含むものとする。
図1に示すように、バージン樹脂ペレット微片・微粉除去装置1は、主に、基台2の上方であって図示しない支持枠に固定される投入タンク3と、基台2の上面に設置される洗浄機4と、基台2内部に配置される乾燥機5と、同じく基台2内部に配置されるブロワ6及び加熱ヒータ7とから構成されている。
【0026】
投入タンク3は、出口にロータリーバルブ11を有するものであり、当該投入タンク3に投入されたバージン樹脂ペレットを配管12及び漏斗状配管13を介して下方に配置された洗浄機4に供給するものである。また、前記漏斗状配管13には、後述する複数の水供給口が形成されており、洗浄機4には、バージン樹脂ペレットとともに図示しない水供給装置から水道水が供給されるものとなっている。
洗浄機4は、前記バージン樹脂ペレットを洗浄・脱水し、当該バージン樹脂ペレットを配管14を介して乾燥機5に供給するものである。また、基台2内部であって洗浄機4の直下にはドレン15が配置され、洗浄機4から排出される水を配管16を介して機外に排水するよう構成されている。
乾燥機5は、前記洗浄機4において洗浄・脱水されたバージン樹脂ペレットを乾燥させるものであり、ブロワ6により吸引され加熱ヒータ7により加熱された空気が供給されるようになっている。そして、乾燥機5において乾燥させられたバージン樹脂ペレットは排出部17から機外に排出されるよう構成されている。
【0027】
図2は、図1のバージン樹脂ペレット微片・微粉除去装置における洗浄機4の内部構造を示すものである。
図2に示すように、洗浄機4は混合撹拌部20と洗浄脱水部30から構成されている。
【0028】
混合撹拌部20は、バージン樹脂ペレット及び水道水が供給される供給口21が設けられる円筒体22と、該円筒体22内に回転可能に配置される回転軸23を備えるものであり、該回転軸23には、前記供給口21側から順に搬送スクリュー24、複数の撹拌羽根25,26、及び逆送スクリュー27が軸着されている。また、前記供給口21には、配管12から供給される樹脂ペレットを受ける漏斗状配管13が接続されており、該漏斗状配管13の管壁には図示しない水供給装置から供給される水道水の供給口18が円周方向に1つ又は複数形成されている。
【0029】
洗浄脱水部30は、前記混合撹拌部20の円筒体22と同軸上に配置され混合撹拌部20からバージン樹脂ペレットが連続して搬入される回転円筒体31と、該回転円筒体31内に回転可能に配置され前記混合撹拌部20の回転軸23と一体とされる回転軸32を備えるものである。前記回転円筒体31は、多孔壁を有するものであり、当該回転円筒体31の外周を覆うカバー35には、当該多孔壁の孔から流出する水を前記ドレン15に排出するための開口部36が形成されている。そして、回転軸32には、逆送スクリュー33が軸着されており、前記回転円筒体31を回転軸32と同方向でかつ当該回転軸32よりも高速で回転させることで、バージン樹脂ペレットと水を混合撹拌しながら排出口34に向けて搬送し、該排出口34に接続される配管14を介してバージン樹脂ペレットを乾燥機5に供給するものとなっている。
【0030】
図3は、図1のバージン樹脂ペレット微片・微粉除去装置における乾燥機5の正面図を示すものである。
乾燥機5は、内部に揺動体40を備えており、該揺動体40は上面が傾斜した状態とされている。そして、該揺動体40の傾斜した上面近くには、前記洗浄脱水部30からバージン樹脂ペレットが供給されるパンチングメタル等の網目状部材41が配置されており、当該揺動体40におけるその僅か上方には、図示しない、バージン樹脂ペレット飛散防止用の網目状部材が配置されている。当該飛散防止用の網目状部材は、前記網目状部材41と同様の構成からなるものでよく、後述する加熱空気によりバージン樹脂ペレットが吹き飛ばされることを防止するものである。また、揺動体40の内部であって網目状部材41の下方には、前述したブロワ6により吸引され加熱ヒータ7によって加熱された空気を網目状部材41に向けて送るファン42が配置されている。前記揺動体40は、図示しない周知のリンク機構等により乾燥機5外枠に対し揺動可能に支持されるものであり、当該揺動体40は前後上下に揺動するものとなっている。
ここで、前記加熱ヒータ7は、複数の発熱体を備えるものであり、周囲の湿度に応じオン・オフする発熱体の本数を切り替えて空気の加熱温度を調節するものである。
【0031】
次に、本発明の実施の形態におけるバージン樹脂ペレット微片・微粉除去装置の作動の様子を、図4のフロー図を参照しながら説明する。
投入タンク3に投入されたバージン樹脂ペレットは、ロータリーバルブ11を介して35〜50kg/hの割合で洗浄機4に向けて供給される。このとき、洗浄機4には同時に水供給装置から水供給口18を介して水道水が供給される。ここで、供給される水道水の量は、バージン樹脂ペレットの重量に対して少ないほど好ましいが、洗浄するバージン樹脂ペレットの種類又は性質によって適切な水量が異なるので、該水量は適宜設定すればよい。
【0032】
図2に示す洗浄機4の混合撹拌部20に供給されたバージン樹脂ペレットは、例えば1079〜1102rpmで回転する回転軸23に軸着された搬送スクリュー24によって洗浄脱水部30に向けて搬送される。このとき、バージン樹脂ペレットと水とは、搬送スクリュー24及び複数の撹拌羽根25,26により混合撹拌されるが、回転軸23の搬送方向下流側に軸着される逆送スクリュー27により前記搬送方向とは逆方向に向かう力を受けながら混合撹拌されることとなる。したがって、バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片や微粉は、後述する洗浄脱水部30に先立って当該混合撹拌部20において一定程度分離除去されることとなる。
【0033】
混合撹拌部20において微片や微粉が一定程度分離除去されたバージン樹脂ペレットは、水とともに当該混合撹拌部20に連続する洗浄脱水部30に搬送される。洗浄脱水部30において、バージン樹脂ペレットと水は、例えば1321〜1314rpmで回転する回転円筒体31内を、1079〜1102rpmで同方向に回転する前記回転軸32により排出口34に向けて混合撹拌されながら搬送されるが、回転軸32には逆送スクリュー33が軸着されていることから、当該バージン樹脂ペレットは複雑な軌跡を描きながら時間を掛けて回転円筒体31内を搬送されることとなる。したがって、当該洗浄脱水部30においてバージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片や微粉はほぼ完全に分離除去される。
また、当該洗浄脱水部30において、回転円筒体31の多孔壁の孔から水が流出し、当該水は回転円筒体31を覆うカバー35の開口部36を介してドレン15に排出されるが、このとき、回転軸32の回転と回転円筒体31の回転による遠心力により、バージン樹脂ペレットから分離除去された微片や微粉は水とともに勢いよくドレン15に排出されることとなる。ドレン15に排出された水は、配管16を通じて機外に排出されることとなるが、水は水道水を用いているため、コストが安い上、有機溶剤等を使用した場合のように樹脂の劣化や排水処理の問題を生じない。そして、排出される水に含まれる微片や微粉は、ろ過装置等によって簡単に水と分離回収することができる。
さらに、洗浄脱水部30においては、バージン樹脂ペレット自体も前記遠心力の作用により効果的に脱水され、後述する乾燥機において効率よく乾燥されることとなる。
【0034】
洗浄機4の洗浄脱水部30において微片や微粉がほぼ完全に分離除去されるとともに十分に脱水されたバージン樹脂ペレットは、次に乾燥機5において、揺動体40の傾斜した上面に配置された網目状部材41の高い側の位置に供給される。バージン樹脂ペレットは、前記揺動体40の前後上下の揺動により網目状部材41の上を低い側の位置に向けて移動するが、このとき、ブロワ6により吸引され加熱ヒータ7により周囲の湿度に応じて40〜60℃に加熱された空気が、ファン42によって網目状部材41の下方から供給される。その際、バージン樹脂ペレットは、円柱状であったり、楕円柱状であったりするその形状により、網目状部材41の上を刻々と姿勢を変化させながら移動するため、全体に万遍なく加熱空気を受けて十分に乾燥した状態で排出部43から外部に排出される。
【0035】
ここで、本発明者等は、本発明の実施の形態における装置の有効性を確認するため、以下に示す条件で実験を行った。なお、バージン樹脂ペレットの水分率(含有水分+付着水分)の測定は、Brabender社製AQUATRACを用いて行った。
【0036】
<実験条件(共通)>
混合撹拌部20における回転軸23の回転数 :1102rpm
洗浄脱水部30における回転軸32の回転数 :1102rpm
洗浄脱水部30における回転円筒体31の回転数:1304rpm
乾燥機5における加熱空気の温度 :40℃
乾燥機5における加熱空気の流量 :11m/min
乾燥機5における処理時間 :約5秒
【実施例1】
【0037】
樹脂名 :ナチュラルGP−PS(汎用ポリスチレン)
ペレット :ストランドカット、3.0mm長・4.0mm長径・2.5mm短径
テスト量 :50kg
処理時間 :約35分
処理水量 :約1リットル/分
使用水 :水道水
初期水分率 :330ppm
処理後水分率:340ppm
微片・微粉除去量: 処理量10kg当り約3g(約0.03%)
【実施例2】
【0038】
樹脂名 :ナチュラルABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)
ペレット :ストランドカット、3.0mm長・2.0mm長径・1.5mm短径
テスト量 :50kg
処理時間 :約10分
処理水量 :約1.3リットル/分
使用水 :水道水
初期水分率 :280ppm
処理後水分率:335ppm
微片・微粉除去量: 処理量10kg当り約4g(0.04%)
【0039】
なお、上記各実験例において、「樹脂名」はペレットの材料樹脂名、「ペレット」はペレットの大きさ等、「テスト量」は処理すべきペレットの量、「処理時間」は全てのペレットを洗浄及び乾燥処理し終えるまでの時間、「処理水量」はペレットとともに洗浄機に供給する水量、「初期水分率」は洗浄処理を行う前のペレットの水分率、「処理後水分率」は乾燥処理を終えた後のペレットの水分率、をそれぞれ示す。
【0040】
実験例1及び2によれば、バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片や微粉が、かなりの量除去されていることが分かる。そして、目視による結果、実験例1及び2のいずれの場合も、バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片や微粉は、ほぼ完全に除去されていることが確認できた。
【0041】
また、一般に、コンパウンド加工あるいは成形加工の原料として用いられるバージン樹脂ペレットの水分率は500ppmが上限とされているが、実験例1及び2のいずれの場合も、処理後の水分率は500ppmを下回っており、本実施の形態における装置により処理されたバージン樹脂ペレットがコンパウンド加工あるいは成形加工の原料として有効であることが確認できた。
【0042】
上記本発明の実施の形態において、洗浄機4の洗浄脱水部30には回転円筒体31を備えるものとしたが、円筒体は非回転とすることもできる。
【0043】
上記本発明の実施の形態において、洗浄機4の洗浄脱水部30に備えられる回転軸32には逆送スクリュー33を軸着するものとしたが、樹脂ペレットと水を混合撹拌できるものであれば順送スクリューを軸着するものとしてもよい。
【0044】
上記本発明の実施の形態において、乾燥機5は、バージン樹脂ペレットが網目状部材41の上を揺動体40の前後上下の揺動により移動するものとしたが、振動モータ等による振動により移動するものとしてもよい。
【0045】
上記本発明の実施の形態におけるバージン樹脂ペレット微片・微粉除去装置において、洗浄機4は、混合撹拌部20と洗浄脱水部30が一体化された装置として構成したが、混合撹拌部20と洗浄脱水部30をそれぞれ独立した装置として構成し、混合撹拌装置において混合撹拌されたバージン樹脂ペレットと水を、配管を介して洗浄脱水装置に供給するものとしてもよい。
【0046】
上記本発明の実施の形態におけるバージン樹脂ペレット微片・微粉除去装置において、洗浄機4は、横型であって混合撹拌部20と洗浄脱水部30の回転軸を同軸の1軸形式のものとしたが、回転軸は別軸としてもよい。また、洗浄機4は、混合撹拌部20を縦型、洗浄脱水部30を横型とし、両者の回転軸が互いに直交するような2軸形式のものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明におけるバージン樹脂ペレットの微片・微粉除去方法及び装置は、バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片や微粉を確実に除去することができるうえ、有機溶媒等の使用による樹脂の劣化や排水処理の問題を生じることがなく、非常に実用性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態におけるバージン樹脂ペレット微片・微粉除去装置の概略正面図。
【図2】図1のバージン樹脂ペレット微片・微粉除去装置の洗浄機の内部構造を示す図。
【図3】図1のバージン樹脂ペレット微片・微粉除去装置の乾燥機を示す図。
【図4】図1のバージン樹脂ペレット微片・微粉除去装置による微片・微粉除去フロー図。
【符号の説明】
【0049】
1・・・バージン樹脂ペレットの微片・微粉除去装置
2・・・基台
3・・・投入タンク
4・・・洗浄機
5・・・乾燥機
6・・・ブロワ
7・・・加熱ヒータ
15・・・ドレン
17・・・排出口
20・・・混合撹拌部
22・・・円筒体
23・・・回転軸
24・・・搬送スクリュー
25,26・・・撹拌羽根
27・・・逆送スクリュー
30・・・洗浄脱水部
31・・・回転円筒体
32・・・回転軸
33・・・逆送スクリュー
40・・・揺動体
41・・・網目状部材
42・・・ファン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片又は微粉を分離除去せしめる方法であって、バージン樹脂ペレットを水と混合撹拌して前記微片又は微粉を分離除去せしめることを特徴とするバージン樹脂ペレットの微片・微粉除去方法。
【請求項2】
バージン樹脂ペレットと水を、内部に撹拌搬送手段が配置される円筒体内を通過させることで、当該バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片又は微粉を分離除去せしめることを特徴とする請求項1記載のバージン樹脂ペレットの微片・微粉除去方法。
【請求項3】
バージン樹脂ペレットに付帯・付着する微片又は微粉を分離除去する装置であって、多孔状の円筒体と、該円筒体内部に配置され搬送スクリューが軸着された回転軸とを備え、当該回転軸の回転により、多孔状の円筒体内部に供給されるバージン樹脂ペレットと水を混合撹拌しながら搬送し、同時に円筒体の複数の孔から水を排出する洗浄脱水部を具備することを特徴とするバージン樹脂ペレットの微片・微粉除去装置。
【請求項4】
前記多孔状の円筒体は回転円筒体であって、前記回転軸と同方向でかつ回転軸よりも高速で回転させながら、バージン樹脂ペレットと水を混合撹拌しながら搬送し、同時に円筒体の複数の孔から水を排出することを特徴とする請求項3記載のバージン樹脂ペレットの微片・微粉除去装置。
【請求項5】
前記搬送スクリューは逆送スクリューであることを特徴とする請求項3又は4記載のバージン樹脂ペレットの微片・微粉除去装置。
【請求項6】
円筒体と、該円筒体内部に配置され搬送スクリュー及び撹拌羽根が軸着された回転軸とを備え、当該回転軸の回転により、円筒体内部に供給されるバージン樹脂ペレットと水を搬送しつつ混合撹拌する混合撹拌部を、前記洗浄脱水部の前工程として設けたことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項記載のバージン樹脂ペレットの微片・微粉除去装置。
【請求項7】
前記混合撹拌部の回転軸に軸着された撹拌羽根の搬送方向下流側に逆送スクリューを軸着したことを特徴とする請求項6記載のバージン樹脂ペレットの微片・微粉除去装置。
【請求項8】
前記洗浄脱水部の後工程として、当該洗浄脱水部から排出されたバージン樹脂ペレットを乾燥させる乾燥部を設けたことを特徴とする請求項3乃至7のいずれか一項記載のバージン樹脂ペレットの微片・微粉除去装置。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−110935(P2010−110935A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283816(P2008−283816)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】