説明

パターン又はFPの特徴量作成方法、作成プログラム、及び作成装置

【課題】多成分物質の評価の精度及び効率を向上させることを可能とする。
【解決手段】対象FP作成工程173と、対象FPピーク帰属工程149と、対象FPピ
ーク特徴量作成工程151と、対象FPタイプ2作成工程153と、対象FP領域分割特
徴量作成工程155と、対象FP特徴量統合工程157と、評価工程171とを備え、対
象FPピーク特徴量及び対象FP領域分割特徴量を統合して対象FP統合特徴量を作成し
、対象FP統合特徴量とこの対象FP統合特徴量に対応し評価基準となる多成分物質の複
数の基準FPに基づく基準FP統合特徴量とを比較評価することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンの特徴量作成方法、多成分物質、例えば多成分薬剤である漢方薬の
品質評価を行うための多成分物質のFPの特徴量作成方法、作成プログラム、及び作成装
置に関する。
【背景技術】
【0002】
多成分物質として、例えば多成分で構成される薬剤(以下、多成分薬剤)である漢方薬
などの天然物由来の薬剤がある。これら薬剤の定量的、定性的プロフィールは、使用する
原料生薬の、地質学的要因、生態学的要因、収集時期、収集場所、収集年代、生育期の天
候等が原因で変化する。
【0003】
そのため、これら多成分薬剤などについては、その安全性および有効性を担保するため
の品質として一定の基準を規定し、その基準に基づいて、国家の監督機関、化学的組織、
製造業者等が品質評価を行っている。
【0004】
しかしながら、多成分薬剤の品質等の判定基準は、多成分薬剤中のある特徴的な1ない
しは数成分を選択して、その含有量などに基づいて設定することが一般的であった。
【0005】
例えば、非特許文献1では、多成分薬剤において有効成分の同定ができていない場合、
定量分析が可能、水に溶けやすい、熱水中で分解しない、他の成分と化学反応をしない等
の物性を持った複数の成分を選択し、化学分析により得られるそれら成分の含有量を評価
の基準としている。
【0006】
また、多成分薬剤にクロマトグラフィーを適用し、保持時間ごとに紫外可視吸収スペク
トルを得て、その中の一部の成分情報から評価の基準を設定することも知られている。
【0007】
例えば、特許文献1では、HPLCクロマトグラム・データ中の一部のピークを選択し
、バーコード化することによって多成分薬剤を評価している。
【0008】
しかしながら、これらの方法は、評価の対象が「特定成分の含有量」又は「特定成分の
クロマト・ピーク」に限定されており、多成分薬剤が含有する成分の一部が評価対象にな
っているに過ぎない。このため、多成分薬剤については、評価の対象外となっている成分
が多数存在することから、多成分薬剤の評価方法として精度的に不十分である。
【0009】
多成分薬剤の品質を正確に評価するには、全ピーク情報或いは数%の細かい情報を除外した全ピーク情報に近いピーク情報を網羅した評価が必要であり、そのため、多成分薬剤間で全ピーク或いはこれに近い個数のピークを対応させる必要がある。
【0010】
ところが、複数のピークを高精度で効率的に対応させることが困難であり、このことが
多成分薬剤の高精度で効率的な評価の妨げとなっていた。
【0011】
さらに説明すると、同じ製品名の多成分薬剤であっても生薬は天然物であるがために構
成成分が僅かに異なる場合がある。このため、同じ品質の薬剤であっても構成成分の含量
比率が異なったり、ある薬剤に存在する成分が他の薬剤には存在しないこと(以下、薬剤
間誤差)がある。さらに、クロマトにおけるピーク強度やピークの溶出時間には厳密な再
現性がない(以下、分析誤差)などの要因もある。これらにより、多成分薬剤間の全ピー
ク或いはこれに近い個数のピークについて同じ成分に由来するピークに対応させること(以下、ピーク帰属)ができない
ことが原因となって高精度で効率的な評価の妨げとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−214215号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】月刊薬事 vol.28, No.3, 67-71 (1986)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
解決しようとする問題点は、既存の評価方法では多成分物質の品質等を高精度で効率的
に評価することに限界があった点である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、評価の精度及び効率を向上させることに寄与可能とするために、時系列でピ
ークが変化するパターンを複数の領域に分割し各領域に存在するピークの存在率又は存在
量からパターン領域分割特徴量を作成するパターン領域分割特徴量作成工程を備えたこと
をパターンの特徴量作成方法の特徴とする。
【0016】
本発明は、多成分物質のクロマトから検出されたピークとそのリテンション・タイムと
で構成されるFPを複数の領域に分割し各領域に存在するピークの存在率又は存在量から
FP領域分割特徴量を作成するFP領域分割特徴量作成工程を備えたことをFPの特徴量
作成方法の特徴とする。
【0017】
本発明は、時系列でピークが変化するパターンを複数の領域に分割し各領域に存在する
ピークの存在率又は存在量からパターン領域分割特徴量を作成するパターン領域分割特徴
量作成機能をコンピュータに実現させることをパターンの特徴量作成プログラムの特徴と
する。
【0018】
本発明は、多成分物質のクロマトから検出されたピークとそのリテンション・タイムと
で構成されるFPを複数の領域に分割し各領域に存在するピークの存在率又は存在量から
FP領域分割特徴量を作成するFP領域分割特徴量作成機能を備えたことをFPの特徴量
作成プログラムの特徴とする。
【0019】
本発明は、時系列でピークが変化するパターンを複数の領域に分割し各領域に存在する
ピークの存在率又は存在量からパターン領域分割特徴量を作成するパターン領域分割特徴
量作成部を備えたことをパターンの特徴量作成装置の特徴とする。
本発明は、多成分物質のクロマトから検出されたピークとそのリテンション・タイムとで
構成されるFPを複数の領域に分割し各領域に存在するピークの存在率又は存在量からF
P領域分割特徴量を作成するFP領域分割特徴量作成部を備えたことをFPの特徴量作成
装置の特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のパターン又はFPの特徴量作成方法は、上記構成であるから、パターン又はF
Pの特徴量を領域分割により簡単に得ることが可能となる。したがって、例えば細かいピ
ークをも捉えて特徴量を作成することができる。
【0021】
本発明のパターン又はFPの特徴量作成プログラムは、上記構成であるから、各機能を
コンピュータに実現させ、パターン又はFPの特徴量を簡単に得ることが可能となる。本
発明のパターン又はFPの特徴量作成装置は、上記構成であるから、各部を作用させ、パ
ターン又はFPの特徴量を簡単に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】多成分薬剤の評価装置のブロック図である。(実施例1)
【図2】多成分薬剤の評価手順を示すブロック図である。(実施例1)
【図3】三次元クロマトグラム・データ(以下、3Dクロマト)から作成したFPの説明図である。(実施例1)
【図4】(A)は、薬剤A、(B)は、薬剤B、(C)は、薬剤CのFPである。(実施例1)
【図5】対象FP及び基準FPのリテンション・タイムを示す図である。(実施例1)
【図6】対象FPのリテンション・タイム・出現パターンを示す図である。(実施例1)
【図7】基準FPのリテンション・タイム・出現パターンを示す図である。(実施例1)
【図8】対象FPと基準FPのリテンション・タイム・出現距離の一致数を示す図である。(実施例1)
【図9】対象FPと基準FPのリテンション・タイム・出現パターンの一致度を示す図である。(実施例1)
【図10】対象FPの帰属対象ピークを示す図である。(実施例1)
【図11】帰属対象ピークを含めたピーク3本によるピーク・パターン図である。(実施例1)
【図12】帰属対象ピークを含めたピーク5本によるピーク・パターン図である。(実施例1)
【図13】帰属対象ピークの許容幅を示す図である。(実施例1)
【図14】帰属対象ピークに対する基準FPの帰属候補ピークを示す図である。(実施例1)
【図15】帰属対象ピークと帰属候補ピークのピーク3本によるピーク・パターン図である。(実施例1)
【図16】帰属対象ピークと別な帰属候補ピークのピーク3本によるピーク・パターン図である。(実施例1)
【図17】帰属対象ピークと別な帰属候補ピークのピーク3本によるピーク・パターン図である。(実施例1))
【図18】帰属対象ピークと別な帰属候補ピークのピーク3本によるピーク・パターン図である。(実施例1)
【図19】帰属対象ピークと帰属候補ピークのピーク5本によるピーク・パターン図である。(実施例1)
【図20】帰属対象ピークと別な帰属候補ピークのピーク5本によるピーク・パターン図である。(実施例1)
【図21】帰属対象ピークと別な帰属候補ピークのピーク5本によるピーク・パターン図である。(実施例1))
【図22】帰属対象ピークと別な帰属候補ピークのピーク5本によるピーク・パターン図である。(実施例1)
【図23】帰属対象ピークと帰属候補ピークのピーク・パターン構成候補ピークを示す図である。(実施例1)
【図24】ピーク・パターン構成候補ピークを4本とした場合の帰属対象ピークの全ピーク・パターン数を示す図である。(実施例1)
【図25】ピーク・パターン構成候補ピークを4本とした場合の帰属候補ピークの全ピーク・パターン数を示す図である。(実施例1)
【図26】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図27】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図28】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図29】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図30】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図31】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図32】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図33】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図34】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図35】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図36】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図37】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図38】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図39】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図40】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図41】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図42】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図43】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図44】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図45】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図46】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図47】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図48】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図49】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図50】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図51】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図52】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図53】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図54】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図55】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図56】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図57】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図58】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図59】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図60】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図61】帰属対象ピークのピーク・パターンに対する帰属候補ピークのピーク・パターンの網羅的比較の説明図である。(実施例1)
【図62】帰属対象ピークと帰属候補ピークのピーク3本によるピーク・パターンの一致度の算出方法を示す図である。(実施例1)
【図63】帰属対象ピークと帰属候補ピークのピーク3本によるピーク・パターンの一致度の算出方法を示す図である。(実施例1)
【図64】帰属対象ピークと帰属候補ピークのピーク5本によるピーク・パターンの一致度の算出方法を示す図である。(実施例1)
【図65】帰属対象ピーク及び帰属候補ピークのUVスペクトルを示す図である。(実施例1)
【図66】帰属対象ピークと帰属候補ピークのUVスペクトルの一致度の説明図である。(実施例1)
【図67】ピーク・パターンとUVスペクトルの両方の比較による帰属候補ピークの一致度計算の説明図である。(実施例1)
【図68】対象FPの基準群FPへの帰属を示す説明図である。(実施例1)
【図69】対象FPが基準群FPへ帰属された状況を示す図である。(実施例1)
【図70】領域分割による数量化を示す説明図である。(実施例1)
【図71】リテンション・タイム等の変動との関係を示す説明図である。(実施例1)
【図72】領域の位置を変更して数量化する説明図である。(実施例1)
【図73】FPタイプ2のデータを示す図表である。(実施例1)
【図74】FPタイプ2のパターンを示す説明図である。(実施例1)
【図75】縦・横分割線での領域分割による領域ごとの特徴量化を示す説明図である。(実施例1)
【図76】縦分割線(1本目)の設定を示す説明図である。(実施例1)
【図77】横分割線(1本目)の設定を示す説明図である。(実施例1)
【図78】縦・横分割線による領域分割を示す説明図である。(実施例1)
【図79】特徴量化する領域の数を示す説明図である。(実施例1)
【図80】領域1の特定を示す説明図である。(実施例1)
【図81】全ピークの高さ及び合計を示す図表である。(実施例1)
【図82】領域1のピーク高さの合計を示す説明図である。(実施例1)
【図83】全領域の特徴量を示す図表である。(実施例1)
【図84】縦1本目の位置を順次変更してできた各領域での特徴量を示す図表である。(実施例1)
【図85】横1本目の位置を順次変更してできた各領域での特徴量を示す図表である。(実施例1)
【図86】各縦・横分割線の位置を変更しない1通りでの特徴量を示す図表である。(実施例1)
【図87】各種対象FPとその評価値(MD値)を示す図である。(実施例1)
【図88】各種対象FPとその評価値(MD値)を示す図である。(実施例1)
【図89】各種対象FPとその評価値(MD値)を示す図である。(実施例1)
【図90】各種対象FPとその評価値(MD値)を示す図である。(実施例1)
【図91】各種対象FPとその評価値(MD値)を示す図である。(実施例1)
【図92】多成分薬剤の評価方法を示す工程図である。(実施例1)
【図93】多成分薬剤の品質評価フロー図である。(実施例1)
【図94】多成分薬剤の品質評価フロー図である。(実施例1)
【図95】単波長によるFP作成機能におけるデータ処理フローチャートである。(実施例1)
【図96】複数波長によるFP作成機能におけるデータ処理フローチャートである。(実施例1)
【図97】複数波長によるFP作成機能におけるデータ処理フローチャートである。(実施例1)
【図98】ピーク帰属処理1(基準FPの選定)におけるデータ処理フローチャートである。(実施例1)
【図99】ピーク帰属処理2(帰属スコアの算出)におけるデータ処理フローチャートである。(実施例1)
【図100】ピーク帰属処理3(対応ピークの特定)におけるデータ処理フローチャートである。(実施例1)
【図101】ピーク帰属処理4(基準群FPへの帰属)におけるデータ処理フローチャートである。(実施例1)
【図102】ピーク帰属処理4(基準群FPへの帰属)におけるデータ処理フローチャートである。(実施例1)
【図103】ピーク帰属処理1(基準FPの選定)におけるリテンション・タイム・出現パターンの一致度計算処理のフローチャートである。(実施例1)
【図104】ピーク帰属処理2(帰属スコアの算出)におけるUVスペクトルの一致度計算処理のフローチャートである。(実施例1)
【図105】ピーク帰属処理2(帰属スコアの算出)におけるピーク・パターンの一致度計算処理のフローチャートである。(実施例1)
【図106】「FP_type2作成」の詳細を示すフローチャートである。(実施例1)
【図107】「領域分割による対象FP_type2の特徴量化処理」の詳細を示すフローチャートである。(実施例1)
【図108】「対象FPのピーク特徴量と領域分割特徴量の統合」の詳細を示すフローチャートである。(実施例1)
【図109】基準FP特徴量統合ファイルを作成するためのフローチャートである。(実施例1)
【図110】基準FP特徴量統合ファイルを作成するためのフローチャートである。(実施例1)
【図111】「基準FP帰属結果統合処理(基準FP対応表の作成)」の詳細を示すフローチャートである。(実施例1)
【図112】「基準FP帰属結果統合処理(基準FP対応表の作成)」の詳細を示すフローチャートである。(実施例1)
【図113】「ピーク特徴量化処理(基準群FPの作成)」の詳細を示すフローチャートである。(実施例1)
【図114】「基準FP_type2の作成処理」の詳細を示すフローチャートである。(実施例1)
【図115】「領域分割による基準FPの特徴量化処理」の詳細を示すフローチャートである。(実施例1)
【図116】基準FPの特徴量統合処理に係るフローチャートである。(実施例1)
【図117】3Dクロマトのデータ例を示す図表である。(実施例1)
【図118】ピーク情報のデータ例を示す図表である。(実施例1)
【図119】FPのデータ例を示す図表である。(実施例1)
【図120】対象FPの基準FPへの帰属スコア計算結果(判定結果ファイル例)を示す図表である。(実施例1)
【図121】対象FPと基準FPで対応するピークの照合過程を示す図表である。(実施例1)
【図122】対象FPと基準FPで対応するピークを特定した結果(照合結果ファイル)例を示す図表である。(実施例1)
【図123】基準群FPのデータ例を示す図表である。(実施例1)
【図124】対象FPピーク特徴量ファイル例を示す図表である。(実施例1)
【図125】対象及び基準FPタイプ2のデータ例を示す図表である。(実施例1)
【図126】対象FP領域分割特徴量ファイル例を示す図表である。(実施例1)
【図127】対象FP統合特徴量ファイル例を示す図表である。(実施例1)
【図128】基準type2群FP例を示す図表である。(実施例1)
【図129】基準群統合データ例を示す図表である。(実施例1)
【図130】図104に代えて適用するサブルーチン2の変形例の詳細を示すフローチャートである。(実施例1)
【図131】移動平均及び移動傾きの計算例を示す図表である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0023】
評価の精度及び効率を向上させることに寄与可能にするという目的を、多成分物質のク
ロマトから検出されたピークとそのリテンション・タイムとで構成されるFPを複数の領
域に分割し各領域に存在するピークの存在率又は存在量からFP領域分割特徴量を作成す
ることにより実現した。
【実施例1】
【0024】
本発明の実施例1は、多成分物質、例えば多成分薬剤を評価する多成分薬剤の評価方法
、評価プログラム、パターンであるFPの特徴量作成方法、作成プログラム、作成装置で
ある。
【0025】
多成分薬剤は、複数の有効化学成分を含有する薬剤と定義され、限定はされないが、生
薬、生薬の組合せ、それらの抽出物、漢方薬等が含まれる。また剤形も特に限定されず、
例えば、第15改正日本薬局方の製剤総則で規定されている液剤、エキス剤、カプセル剤
、顆粒剤、丸剤、懸濁剤・乳剤、散剤、酒精剤、錠剤、浸剤・煎剤、チンキ剤、トローチ
剤、芳香水剤、流エキス剤等が含まれる。多成分物質としては、薬剤以外のものも含まれ
る。
【0026】
漢方薬の具体例は、医療用漢方製剤148処方「使用上の注意」の業界統一と自主改訂
、一般用漢方処方の手引き(1978年)に記載されている。
【0027】
多成分薬剤の評価では、評価対象薬剤が正常品と定めた複数の薬剤と同等であるかどう
かを評価するため、まず、評価対象薬剤の三次元クロマトグラム・データ(以下、3Dク
ロマト)からその薬剤特有の情報を抽出した対象FPを作成する。
【0028】
次に、対象FPの各ピークを、全基準FPをピーク帰属処理し作成した全基準FPのピーク対応データ(以下、基準群FP)に帰属し、ピーク特徴量を得る。
【0029】
さらに、対象FPから帰属されたピークを除き、残ったピークでFPタイプ2を作成し
、このFPタイプ2を領域分割し領域分割特徴量を得る。
【0030】
これら2つの特徴量を統合し、対象FP統合特徴量を得る。
【0031】
この対象FP統合特徴量と全基準FPから得た基準FP統合特徴量により、基準群FP
と対象FPの同等性をMT法で評価する。最後に、得られた評価値(以下、MD値)と予
め設定しておいた判定値(MD値の上限値)を比較し、評価対象薬剤が正常品と同等であ
るかどうかを判定する。
[多成分薬剤の評価装置]
図1は、多成分薬剤の評価装置のブロック図、図2は、多成分薬剤の評価手順を示すブ
ロック図、図3は、3Dクロマトから作成したFPの説明図、図4(A)は、薬剤A、(
B)は、薬剤B、(C)は、薬剤CのFPである。
【0032】
図1のように、多成分薬剤の評価装置1は、FP作成部3と、対象FPピーク帰属部5
と、対象FPピーク特徴量作成部7と、対象FPタイプ2作成部9と、対象FP領域分割
特徴量作成部11と、対象FP特徴量統合部13と、基準FPピーク帰属部15と、基準
FP帰属結果統合部17と、基準FPピーク特徴量作成部19と、基準FPタイプ2作成
部21と、基準FP領域分割特徴量作成部23と、基準FP特徴量統合部25と、評価部
27とを備えている。多成分薬剤の評価装置1は、パターンであるFPの特徴量作成装置
を含む。
【0033】
FP作成部3は、対象FP作成部29と、基準FP作成部31とを備えている。
【0034】
対象FPピーク帰属部5は、基準FP選定部33と、ピーク・パターン作成部35と、
ピーク帰属部37とを備えている。
【0035】
この多成分薬剤の評価装置1は、例えば、一つのコンピュータで構成され、図示はしな
いが、CPU、ROM、RAMなどを備えている。多成分薬剤の評価装置1は、コンピュータにインストールされたパターンの特徴量作成プログラムとしてFPの特徴量作成プログラムを実現させ、FPの特徴量を得ることができる。但し、FPの特徴量作成プログラムは、これを記録したFPの特徴量作成プログラム記録媒体を用い、コンピュータで構成された多成分薬剤の評価装置1にこれを読み取らせることで、FPの特徴量を得ることを実現させることもできる。
【0036】
多成分薬剤の評価装置1は、各部をそれぞれ別々のコンピュータで構成することができ、例えば対象FPピーク帰属部5と、対象FPピーク特徴量作成部7と、対象FPタイプ2作成部9と、対象FP領域分割特徴量作成部11と、対象FP特徴量統合部13と、評価部27とを一つのコンピュータで構成し、基準FP作成部31と、基準FPピーク帰属部15と、基準FP帰属結果統合部17と、基準FPピーク特徴量作成部19と、基準FPタイプ2作成部21と、基準FP領域分割特徴量作成部23と、基準FP特徴量統合部25を他のコンピュータで構成することなどもできる。
【0037】
この場合、基準FP統合特徴量は、他のコンピュータで作成し、評価装置1の評価部2
7に入力されることになる。
【0038】
そして、対象FP作成部29と、対象FPピーク帰属部5と、対象FPピーク特徴量作
成部7と、対象FPタイプ2作成部9と、対象FP領域分割特徴量作成部11と、対象F
P特徴量統合部13とにより対象FP統合特徴量が作成され、基準FP作成部31と、基
準FPピーク帰属部15と、基準FP帰属結果統合部17と、基準FPピーク特徴量作成
部19と、基準FPタイプ2作成部21と、基準FP領域分割特徴量作成部23と、基準
FP特徴量統合部25とにより基準FP統合特徴量が作成され、これらが比較評価されて
対象FP43と基準群FP45との同等性を評価する。
【0039】
FP作成部3の対象FP作成部29は、例えば、図2、図3のように、漢方薬39のク
ロマトとして三次元クロマトグラム・データである3Dクロマト41から、特定の検出波
長における複数のピークとそのリテンション・タイムならびにUVスペクトルを抽出した
対象FP43(以下単に、「FP43」ということもある。)を作成する機能部である。
【0040】
このFP43は、3Dクロマト41と同様に三次元の情報(ピーク、リテンション・タ
イム及びUVスペクトル)で構成している。
【0041】
このため、FP43は、その薬剤特有の情報をそのまま継承したデータである。それに
も係らず、データ容量は約1/70に圧縮されているため、3Dクロマト41に比較して
、処理すべき情報量を大幅に減少させることができ処理速度を速めることができる。
【0042】
3Dクロマト41は、漢方薬39に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を適用し
た結果である。この3Dクロマト41は、各成分の移動速度として現れ、それを特定時間
における移動距離として表し、或いはカラム末端から時系列に現れる様をチャートに表し
たものである。HPLCにおいては、時間軸に対する検出器応答をプロットしたもので、
ピークの出現時間を保持時間(リテンション・タイム)と呼んでいる。
【0043】
検出器としては、特に限定されないが、光学的性質を利用した吸光度検出器(Absorbanc
e Detector) が使用され、ピークは、紫外線(UV)の検出波長に応じたシグナル強度として三次元的に得られたものである。光学的性質を利用したものとしては、透過率検出器(Transmittance Detector)を用いることもできる。
【0044】
検出波長に限定はなく、好ましくは150nm〜900nmの範囲であり、特に好まし
くは200nm〜400nmの紫外可視吸領域、更に好ましくは200nm〜300nm
から選ばれた複数の波長である。
【0045】
そして、3Dクロマト41は、少なくとも、漢方薬の番号(ロット番号)、リテンショ
ン・タイム、検出波長、及びピークをデータとして有するものである。
【0046】
なお、3Dクロマト41は、市販の装置によっても得ることができ、かかる市販の装置
としては、Agilent1100システム等が挙げられる。また、クロマトグラフィー
は、HPLCに限定されず、種々のものを採用することができる。
【0047】
3Dクロマト41は、図2、図3のようにx軸をリテンション・タイム、y軸を検出波
長、z軸をシグナル強度として表示する。
【0048】
FP43は、少なくとも、漢方薬の番号(ロット番号)、リテンション・タイム、特定
の波長におけるピーク、及びUVスペクトルをデータとして有するものである。
【0049】
FP43は、図2、図3のようにx軸をリテンション・タイム、y軸を特定の検出波長
におけるピークとした二次元で表示するが、図3のように1ピークで示すUVスペクトル
42と同様なUVスペクトル情報をピークごとに有したデータである。 FP43を作成
する特定の検出波長は、特に限定されず種々選択できる。但し、FP43には3Dクロマ
ト中の全てのピークを含めることが情報を継承するという点において重要である。このた
め、本実施例1では検出波長を3Dクロマト中の全てのピークを含んでいる203nmと
した。
【0050】
一方、単独の波長では全てのピークを含めることができないことがある。そのような場
合は検出波長を複数とし、後述のように複数の波長を組み合わせて全てのピークを含んだ
FPを作成する。
【0051】
本実施例1では、ピークをシグナル強度(ピーク高さ)の極大値としたが、ピークとし
て面積値を採用することもできる。また、FPにUVスペクトルを含めず、x軸をリテン
ション・タイム、y軸を特定の検出波長におけるピークとした二次元の情報のみにするこ
とも可能である。この場合は、FPを漢方薬の番号(ロット番号)、リテンション・タイ
ムをデータとして有するクロマトとしての2Dクロマトから作成することもできる。
【0052】
図4の(A)は、薬剤A、(B)は、薬剤B、(C)は、薬剤CのFP55、57、5
9である。
【0053】
対象FPピーク帰属部5は、前記対象FPとこの対象FPに対応し評価基準となる多成
分物質の基準FPとのピークを比較し対応するピークを特定する機能部である。この対象
FPピーク帰属部5は、基準FP選定部33と、ピーク・パターン作成部35と、ピーク
帰属部37とからなっている。
【0054】
基準FP選定部33は、対象FPのピーク帰属に適した多成分物質のFPを複数の基準
FPから選定する機能部である。すなわち、対象FPの各ピークのピーク帰属を高い精度
で行うため、図5〜図9(後述)のように対象FPと基準FP間でピークのリテンション
・タイム・出現パターンの一致度を算出し、この一致度が最小となる基準FPを全基準F
Pから選定する。
【0055】
ピーク・パターン作成部35は、図10〜図12(後述)のように対象FP61におけ
る帰属の対象となるピーク(以下、帰属対象ピーク)に対し、時間軸方向前後の少なくと
も一方に存在するn本のピークを含めた計n+1本のピークで構成されるピーク・パター
ンを帰属対象ピークのピーク・パターンとして作成する機能部である。nは、自然数であ
る。
【0056】
なお、図11(後述)では時間軸方向前後の少なくとも一方に存在する2本のピークを
含めた計3本のピークで構成されるピーク・パターンを、図12(後述)では時間軸方向
前後の少なくとも一方に存在する4本のピークを含めた計5本のピークで構成されるピー
ク・パターンを示す。
【0057】
また、ピーク・パターン作成部35は、図13〜図22(後述)のように基準FP83
において帰属対象ピークのリテンション・タイムとの差が設定した範囲(許容幅)内の全
てのピーク(以下、帰属候補ピーク)に対し、時間軸方向前後の少なくとも一方に存在す
るn本のピークを含めた計n+1本のピークで構成されるピーク・パターンを帰属候補ピ
ークのピーク・パターンとして作成する機能部である。なお、図15〜図18(後述)で
は時間軸方向前後の少なくとも一方に存在する2本のピークを含めた計3本のピークで構
成されるピーク・パターンを示す。図19〜図22(後述)では時間軸方向前後の少なく
とも一方に存在する4本のピークを含めた計5本のピークで構成されるピーク・パターン
を示す。
【0058】
許容幅に限定はなく、精度と効率の点から0.5分〜2分が好ましい。実施例1では、
1分とした。
【0059】
さらに、ピーク・パターン作成部35では、対象FP61と基準FP83のピーク数に
違いがある(つまり、どちらか一方に存在しないピークがある)場合に対しても柔軟に対
応できるようにする。このため、図23〜図61(後述)のように、帰属対象ピークなら
びに帰属候補ピークの両方でピーク・パターンを構成するピーク(以下、ピーク・パター
ン構成ピーク)を変化させて網羅的にピーク・パターンを作成する。なお、図23〜図6
1では時間軸方向前後の少なくとも一方に存在する2本のピークを含めた計3本のピーク
で構成されるピーク・パターンの場合について示す。
【0060】
ピーク帰属部37は、対象FP、基準FPそれぞれのピーク・パターンを比較し対応す
るピークを特定する機能部である。実施例では、帰属対象ピークのピーク・パターンと帰
属候補ピークのピーク・パターンとの一致度及びUVスペクトルの一致度を算出して対応
するピークを特定する。
【0061】
また、この2つの一致度を統合した帰属候補ピークの一致度を算出し、この一致度に基
づき、対象FP61の各ピークを基準FP83の各ピークに帰属する機能部である。
【0062】
ピーク帰属部37において、ピーク・パターンの一致度は、図62〜図64(後述)の
ように帰属対象ピークと帰属候補ピークのピーク・パターン間の対応するピーク及びリテ
ンション・タイムの差をもとに算出する。また、UVスペクトルの一致度は、図65、図
66(後述)のように帰属対象ピーク73のUVスペクトル135と帰属候補ピーク95
のUVスペクトル139の各波長における吸光度の差をもとに算出する。さらに、図67
(後述)のようにこれら2つの一致度を乗じて帰属候補ピーク95の一致度を算出する。
【0063】
対象FPピーク特徴量作成部7は、対象FPピーク帰属部5で特定されて帰属したピー
クと複数の基準FPである基準群FP45のピークとを比較評価して特徴量化された対象
FPピーク特徴量として作成する機能部である。複数の基準FPは、評価基準となる多成
分物質である複数の漢方薬に対応して作成されており、この複数の漢方薬は、正常品とさ
れているものである。
【0064】
すなわち、対象FPピーク特徴量作成部7は、対象FP61と基準FP83の帰属結果
に基づき、最終的に図2、図68、図69(後述)のように対象FP43の各ピークを基
準群FP45の各ピークに帰属して特徴量化された対象FPピーク特徴量47を作成する
機能部である。
【0065】
対象FPタイプ2作成部9は、対象パターンから特徴量化されたピークを除いて残った
ピークで構成されるパターンを対象パターン・タイプ2として作成する。例えば、対象F
Pピーク特徴量作成部7において特定されたピーク47を元の対象FP43から除いて残
ったピークとそのリテンション・タイムとで構成されるFPを図2の対象FPタイプ2(
49)をパターンとして作成する機能部である。
【0066】
この対象FPタイプ2(49)は、対象FPピーク特徴量作成部7において特徴量化さ
れなかったピークを集めてFPとしたものである。この対象FPタイプ2(49)を特徴
量化し評価に加えることで、より正確な評価を行わせることができる。
【0067】
対象FP領域分割特徴量作成部11は、対象パターン・タイプ2を複数の領域に分割し
各領域に存在するピークの存在率から対象パターン領域分割特徴量を作成するFP領域分
割特徴量作成部を構成し、対象FPタイプ2(49)を複数の領域に分割し各領域に存在
するピークの存在率から対象FP領域分割特徴量を対象パターン領域分割特徴量として作
成する機能部である。
【0068】
なお、対象FP領域分割特徴量作成部11は、存在率に代えて存在量を用いることもで
きる。存在率は、後述のように各領域のピーク高さの存在量を全体のピーク高さの合計(
つまり全体のピーク高さの存在量)で割った値である。したがって、各領域のピーク高さ
の存在量そのものを用いて領域分割特徴量を作成する構成にすることもできる。
【0069】
この対象FP領域分割特徴量作成部11は、例えば図70(後述)のように、対象FP
タイプ2(49)を、シグナル強度軸に平行な複数の縦分割線と時間軸に平行な複数の
横分割線とにより格子状の領域に分割し、図2の対象FP領域分割特徴量51を作成する

【0070】
対象FP特徴量統合部13は、対象FPピーク特徴量作成部7で作成された対象FPピ
ーク特徴量47と対象FP領域分割特徴量作成工程11で作成された対象FP領域分割特
徴量51とを統合して対象FP統合特徴量を作成する機能部である。
【0071】
一方、FP作成部3の基準FP作成部31は、対象FP作成部29と同様にして複数の
基準FPを作成する機能部である。例えば、正常品と判定されている複数の漢方薬(基準
漢方薬)の三次元クロマトグラム・データである各3Dクロマトから、特定の検出波長に
おける複数のピークとそのリテンション・タイムならびにUVスペクトルを抽出した基準
FPを基準漢方薬ごとに作成する。
【0072】
基準FPピーク帰属部15も、対象ピーク帰属部5と同様にパターン認識により帰属す
べきピークを特定する機能部である。但し、この基準FPピーク帰属部15では、全基準
FPを対象とし、選択した組み合わせ且つ順番で帰属スコアを算出することでピークを特
定する。
【0073】
基準FP帰属結果統合部17は、基準ピーク帰属部15で特定されて帰属したピークを
統合して基準ピーク対応表(後述)を作成する機能部である。
【0074】
基準FPピーク特徴量作成部19は、基準FP帰属結果統合部17で作成された基準ピ
ーク対応表に基づき前記複数の基準FPを特徴量化した基準FPピーク特徴量を作成する
機能部である。
【0075】
基準FPタイプ2作成部21は、対象FPタイプ2作成部9と同様に機能し、複数の各
基準FPから前記特徴量化されたピークを除いて残ったピークとそのリテンション・タイ
ムとで構成されるFPを基準FPタイプ2をパターンとして作成する機能部である。
【0076】
基準FP領域分割特徴量作成部23は、対象FP領域分割特徴量作成部11と同様に機
能し、FP領域分割特徴量作成部として基準FPタイプ2を複数の領域に分割し各領域に
存在するピークの存在率から基準FP領域分割特徴量を作成する機能部である。
【0077】
但し、基準FP領域分割特徴量作成部23では、分割された各領域の位置を変更し変更
前後で基準FP領域分割特徴量を作成する。すなわち、各縦・横分割線を設定範囲内で平
行移動させるように位置を変更設定することで前記各領域の位置を変更する。
【0078】
基準FP特徴量統合部25は、対象FP特徴量統合部13と同様に機能し、基準FPピ
ーク特徴量と基準FP領域分割特徴量とを統合して基準FP統合特徴量を作成する機能部
である。
【0079】
評価部27は、対象パターン統合特徴量とこの対象パターン統合特徴量に対応し評価基
準となる複数の基準パターンに基づく基準パターン統合特徴量とを比較評価する。すなわ
ち、評価部27は、対象パターン統合特徴量としての対象FP統合特徴量と基準パターン
統合特徴量としての基準FP統合特徴量とを比較評価する機能部である。実施例では、M
T法で対象FP統合特徴量と基準FP統合特徴量との同等性を評価する。
【0080】
MT法は、品質工学で一般に知られている計算手法を意味する。例えば、「品質工学の
数理」日本規格協会発行(2000)第136−138頁、品質工学応用講座「化学・薬
学・生物学の技術開発」日本規格協会編(1999)第454−456頁及び品質工学
11(5),78−84(2003)、入門 MTシステム(2008)に記載がある。
【0081】
また一般に市販されているMT法プログラムソフトも使用できる。市販のMT法プログ
ラムソフトとしては、アングルトライ(株)のATMTS; (財)日本規格協会のTM
−ANOVA;(株)オーケンのMT法 for windows等が挙げられる。
【0082】
評価部27は、対象FP43のうち、漢方薬のロット番号と、リテンション・タイム又
はUV検出波長の一方とに対して、MT法における変数軸を割り振り、ピークをMT法に
おける特徴量とする。
【0083】
変数軸の割り振りには特に限定はないが、MT法におけるいわゆる項目軸にリテンショ
ン・タイムを割り振り、いわゆる番号列軸に多成分系薬剤の番号を割り振り、MT法にお
けるいわゆる特徴量にピークを割り振ることが好ましい。
【0084】
ここで、上記項目軸と番号列軸は、以下のように定義される。すなわちMT法において
は、データセットXijについて、平均値mjと標準偏差σjを求め、Xijを規準化した値で
あるxij=(Xij−mj)/σjから、iとjの相関係数rを求めて、単位空間やマハラノビ
スの距離を得る。この時、「平均値mjと標準偏差σjは、項目軸の値ごとに、番号列軸の
値を変化させて求める」というように項目軸と番号列軸とは定義される。
【0085】
軸が割り振られたデータと特徴量とから、MT法を用いて、基準点と単位量(以下、「
単位空間」と略記することがある)を得る。ここで、基準点、単位量及び単位空間は、上
記MT法の文献の記載に従い定義される。
【0086】
MT法により、評価すべき薬剤の単位空間との相違の程度を表す値としてMD値を得る
。ここでMD値は、MT法の文献の説明と同様に定義され、またMD値は、文献に記載の
方法で求められる。
【0087】
このようにして得られたMD値を用いて、評価すべき薬剤は、正常品として定めた複数
の薬剤からの相違の程度を判定し評価することができる。
【0088】
例えば、図87〜図91の各対象FPを前記のように帰属処理することで、上記MT法
によりMD値(MD値:0.26、2.20等)を求めることができる。
【0089】
このMD値を正常品のMD値に対して評価する場合、正常品と定めた複数の薬剤で同様
にMD値を求める。この正常品のMD値から閾値を設定し、図2の評価部27の評価結果
53に示すように評価対象薬剤のMD値をプロットし、正常品か非正常品かの判定を行う
ことができる。図2の評価部27の評価結果53では、例えばMD値10以下を正常品と
している。
【0090】
なお、評価部27は、対象FP統合特徴量と基準FP統合特徴量との同等性を比較評価
できれば良いため、MT法以外のパターン認識手法等を適用することも可能である。
[ピーク・パターン処理の動作原理]
図5〜図69は、前記基準FP選定部33、ピーク・パターン作成部35、ピーク帰属
部37、及び対象FPピーク特徴量作成部7の動作原理を説明するものである。
【0091】
図5〜図9は、基準FP選定部33に係る対象FPと基準FPとのリテンション・タイ
ム・出現パターンの一致度について説明した図である。図5は、対象FP及び基準FPの
リテンション・タイムを示す図、図6は、対象FPのリテンション・タイム・出現パター
ンを示す図、図7は、基準FPのリテンション・タイム・出現パターンを示す図である。
図8は、対象FPと基準FPのリテンション・タイム・出現距離の一致数を示す図、図9
は、対象FPと基準FPのリテンション・タイム・出現パターンの一致度を示す図である

【0092】
図5では、対象FP61及び基準FP83それぞれのリテンション・タイムを示す。図
6、図7では、対象FP61及び基準FP83それぞれのリテンション・タイムから全て
のリテンション・タイム間距離を算出し、それら距離を表形式にまとめたリテンション・
タイム・出現パターンを示す。図8では、これらの出現パターンからリテンション・タイ
ム・出現距離の一致数を算出し、それら一致数を表形式にまとめたリテンション・タイム
・出現距離の一致数を示す。図9では、この一致数をもとにリテンション・タイム・出現
パターンの一致度を算出し、それら一致度を表形式にまとめたリテンション・タイム・出
現パターンの一致度を示す。
【0093】
図10〜図12は、ピーク・パターン作成部35に係る帰属対象ピークとその周辺ピー
クで作成したピーク・パターンについて説明した図である。図10は、対象FPの帰属対
象ピークを示す図、図11は、周辺ピーク2本を含めたピーク3本で作成したピーク・パ
ターンについて、図12は、周辺ピーク4本を含めたピーク5本で作成したピーク・パタ
ーンについて説明した図である。
【0094】
図13、図14は、ピーク・パターン作成部35に係る帰属対象ピークと帰属候補ピー
クの関係について説明し、図13は、帰属対象ピークの許容幅を示す図、図14は、帰属
対象ピークに対する基準FPの帰属候補ピークを示す図である。
【0095】
図15〜図18は、ピーク・パターン作成部35に係るピーク3本で作成した帰属対象
ピーク及び帰属候補ピークのピーク・パターン例である。図15は、帰属対象ピークと帰
属候補ピークのピーク3本によるピーク・パターン図、図16は、帰属対象ピークと別な
帰属候補ピークのピーク3本によるピーク・パターン図、図17は、帰属対象ピークと別
な帰属候補ピークのピーク3本によるピーク・パターン図、図18は、帰属対象ピークと
別な帰属候補ピークのピーク3本によるピーク・パターン図である。
【0096】
図19〜図22は、ピーク・パターン作成部35に係るピーク5本で作成した帰属対象
ピーク及び帰属候補ピークのピーク・パターン図である。
【0097】
図23〜図61は、ピーク・パターン作成部35に係る帰属対象ピーク及び帰属候補ピ
ークのピーク・パターンを網羅的に作成し、比較する網羅的比較の原理を説明した図であ
る。
【0098】
図62、図63は、ピーク帰属部37に係るピーク3本で作成したピーク・パターンの
一致度の算出方法について説明した図である。
【0099】
図64は、ピーク帰属部37に係るピーク5本で作成したピーク・パターンの一致度の
算出方法について説明した図である。
【0100】
図65は、ピーク帰属部37に係る帰属対象ピーク73及び帰属候補ピーク95のUV
スペクトル135及び139を示した図である。
【0101】
図66は、ピーク帰属部37に係る帰属対象ピーク73のUVスペクトル135と帰属
候補ピーク95のUVスペクトル139の一致度について説明した図である。
【0102】
図67は、ピーク帰属部37に係る帰属対象ピーク73と帰属候補ピーク95のピーク
・パターンの一致度とUVスペクトルの一致度から算出する帰属候補ピークの一致度につ
いて説明した図である。
【0103】
図68は、ピーク帰属部37に係る対象FP43における各ピークの基準群FP45へ
の帰属を説明した図である。
【0104】
図69は、ピーク帰属部37に係る対象FP43の各ピークが基準群FP45に帰属さ
れた状況を示す対象FPピーク特徴量47を説明した図である。
【0105】
(基準FPの選定)
前記基準FP選定部33の機能を、図5〜図9を用いてさらに説明する。
【0106】
図5は、対象FP及び基準FPのリテンション・タイムを示す図、図6は、対象FPの
リテンション・タイム・出現パターンを示す図、図7は、基準FPのリテンション・タイ
ム・出現パターンを示す図である。図8は、対象FPと基準FPのリテンション・タイム
・出現距離の一致数を示す図、図9は、対象FPと基準FPのリテンション・タイム・出
現パターンの一致度を示す図である。
【0107】
図5では、対象FP61及び基準FP83それぞれのリテンション・タイムを示す。図
6、図7では、対象FP61及び基準FP83それぞれのリテンション・タイムから全て
のリテンション・タイム間距離を算出し、それら距離を表形式にまとめたリテンション・
タイム・出現パターンを示す。図8では、これらの出現パターンからリテンション・タイ
ム・出現距離の一致数を算出し、それら一致数を表形式にまとめたリテンション・タイム
・出現距離の一致数を示す。図9では、この一致数をもとにリテンション・タイム・出現
パターンの一致度を算出し、それら一致度を表形式にまとめたリテンション・タイム・出
現パターンの一致度を示す。
【0108】
対象FP61のピーク帰属処理において、対象FP61とできるだけFPパターンが類
似した基準FPで対象FP61の各ピークを帰属する。この対象FP61に類似した基準
FPを複数の基準FPから選定することが精度の高い帰属を行う上で重要なポイントであ
る。
【0109】
そこで、対象FP61のFPパターンとの類似性を客観的かつ簡易的に評価する方法と
して、リテンション・タイム・出現パターンの一致度によりFPパターンの類似性を評価
する。
【0110】
例えば、対象FP61及び基準FP83のリテンション・タイムが図5のような場合、
対象FP61及び基準FP83それぞれのリテンション・タイム・出現パターンは、図6
、図7のようになる。図6、図7では、上段の対象FP61及び基準FP83に対し、下
段の図表のように、各セルの値がリテンション・タイム間距離で構成された表形式のパタ
ーンとして作成している。
【0111】
図6において、対象FP61の各ピーク(63、65、67、69、71、73、75
、77、79、81)のリテンション・タイムは、(10.2)、(10.5)、(10
.8)、(11.1)、(11.6)、(12.1)、(12.8)、(13.1)、(
13.6)、(14.0)となっている。
【0112】
したがって、ピーク63及びピーク65間のリテンション・タイム間距離は、(10.
5)−(10.2)=(0.3)となる。同様に、ピーク63及びピーク67間は、(0
.6)、ピーク65及びピーク67間は、(0.3)などとなる。以下、同様であり、図
6の下段図表の対象FP出現パターンとなる。
【0113】
図7において、基準FP83の各ピーク(85、87、89、91、93、95、97
、99、101、103、105)のリテンション・タイムは、(10.1)、(10.
4)、(10.7)、(11.1)、(11.7)、(12.3)、(12.7)、(1
3.1)、(13.6)、(14.1)、(14.4)となっている。
【0114】
したがって、同様にリテンション・タイム間距離は、図7の下段図表の基準FP出現パ
ターンとなる。
【0115】
この図6、図7ようにパターン化した各ピークを総当たりで比較し一致数を求める。例
えば、図6下段図表の対象FP出現パターンの各セルの値と図7下段図表の基準FP出現
パターンの各セルの値とを比較し、図8のように一致数を得る。
【0116】
すなわち、対象FP61と基準FP83のリテンション・タイム・出現パターンの全て
のリテンション・タイム間距離を行単位で順番に総当たりで比較し、設定した範囲内で距
離が一致した数を算出した。
【0117】
例えば、図6、図7の対象及び基準FPリテンション・タイム・出現パターンの1行を
比較すると、一致数は7個である。この7個の一致数が、図8の対象及び基準FPリテン
ション・タイム・出現パターンの1行目に書き込まれる。図6、図7中のその他の行につ
いても同様であり、対象FPリテンション・タイム・出現パターンの1行〜9行までと、
基準FPリテンション・タイム・出現パターンの1行〜10行までとを総当たりで比較し
、それぞれ一致数が得られる。
【0118】
図8に結果を示した。この図8において、丸で囲まれた左端の7の数値は、対象及び基
準FPリテンション・タイム・出現パターンの1行目を比較した結果であり、その隣の7
の数値は、対象FPリテンション・タイム・出現パターンの1行目と基準FPリテンショ
ン・タイム・出現パターンの2行目とを比較した結果である。設定の範囲に限定はなく、
好ましくは0.05分〜0.2分の範囲である。実施例1は、0.1分とした。
【0119】
リテンション・タイム・出現パターンの一致度をRPとすると、対象FP61のf行目
のリテンション・タイム・出現パターンと基準FP83のg行目のリテンション・タイム
・出現パターンの一致度(RPfg)は、Tanimoto係数を用いて、
RPfg = {1−(m/(a+b−m))}×(a−m+1)
として算出する。
【0120】
なお、式中aは対象FP61のピーク数(対象FPピーク数)、bは基準FP83のピ
ーク数(基準FPピーク数)、mはリテンション・タイム・出現パターンの一致数(出現
距離の一致数)である(図8参照)。図8の一致数をもとに前記式により各リテンション
・タイム・出現パターンの一致度(RP)を算出した(図9参照)。
【0121】
これらRPの最小値であるRP_minを対象FP61と基準FP83とのリテンショ
ン・タイム・出現パターンの一致度とする。図9では、(0.50)が対象FP61の基
準FPに対する一致度となる。
【0122】
この一致度を全ての基準FPについて算出し、最も小さい一致度の基準FPが選定され
、この基準FPに対して対象FPのピーク帰属を行わせる。
【0123】
基準FP選定部5は、対象FP61及び基準FP83を、ピーク高さ比でパターン化す
ることもできる。
【0124】
ピーク高さ比でパターン化した各ピークを総当たりで比較し、設定した範囲内で高さ比
が一致した数を算出する。この算出により図8と同様に一致数を得ることができる。
【0125】
なお、ピーク高さ比でパターン化する場合は、1行中に、同じような値が複数存在する
ケースがあり、これらを複数回カウントしないようにしなければならない。
【0126】
一致度は、Tanimoto係数を、「高さ比の一致数/(対象FPピーク数+基準FPピーク
数−高さ比の一致数)」とし、(1−Tanimoto係数)が零に近いことで前記一致度を求め
ることができる。
【0127】
また、(1−Tanimoto係数)に、(対象FPピーク数−出現パターン又は高さ比の一致
数+1)の重み付けをし、「(1−Tanimoto係数)×(対象FPピーク数−出現パターン
又は高さ比の一致数+1」とし、重み付けにより対象FP61のピーク(63、65、・
・・)がより多く一致している基準FPを選ぶことができる。
【0128】
(ピーク・パターンによる特徴量化)
前記ピーク・パターン作成部35の機能を、図10〜図67を用いてさらに説明する。
【0129】
図10のように帰属対象ピーク73を基準FP83のいずれかのピークに帰属するとき
、何れのピークに帰属すべきか、ということになる。仮に、このピーク帰属を、ピーク、
リテンション・タイム又はUVスペクトルのいずれかの情報のみで行ったとすると、これ
ら3つの情報のいずれもが前記薬剤間誤差と分析誤差に起因する誤差を含んでいるため、
単独情報によるピーク帰属の精度には限界がある。
【0130】
また、図13、図14のように帰属対象ピーク73と基準FP83の各ピーク間でリテ
ンション・タイムのズレの許容幅を設定し、その許容幅内に存在する基準FP83のピー
ク(以下、帰属候補ピーク)とUVスペクトル情報の2つの情報によるピーク帰属では、
すべての情報を総合して帰属先を判定しているため、上記単独情報によるピーク帰属に比
べ精度は向上する。
【0131】
しかし、3つの情報を使ったピーク帰属であったとしても、UVスペクトルの特性とし
て、類似成分のUVスペクトルはほとんど同じとなってしまうため、帰属候補ピークに複
数の類似成分が含まれている場合は、結局ピーク情報のみでの帰属となってしまい、十分
な精度は得られない。そのため、より精度の高いピーク帰属を行うためには、これら3つ
の情報にプラスする情報が必要である。
【0132】
そこで、図11、図12のような周辺ピークの情報を含めたピーク・パターンを作成し
、このピーク・パターンの比較によってピークを帰属することにした。
【0133】
周辺のピークを含めたピーク・パターンとすると、これまでの3つの情報に周辺情報が
プラスされ、4つの情報によるピーク帰属が可能となり、より高い帰属精度が得られる。
【0134】
その結果として、一度の帰属処理で大量のピークを高精度かつ効率的に一斉帰属するこ
とができる。
【0135】
さらに、ピーク帰属で使用するデータを周辺情報を含めた4つの情報にすることで、既
存のピーク帰属の際に設定する制約条件(ピーク定義など)も必要なくなった。
【0136】
図11では、帰属対象ピーク73に対し、時間軸方向の双方に存在するピーク71、7
5を含めたピーク・パターン115を作成した。
【0137】
図12では、帰属対象ピーク73に対し、時間軸方向の双方に存在するピーク69、7
1、75、77を含めたピーク・パターン125を作成した。
【0138】
図13、図14では、帰属対象ピーク73と基準FP83の各ピーク間でリテンション
・タイムのズレの許容幅を設定し、その許容幅内に存在する基準FP83のピークを帰属
対象ピーク73に対応する候補ピーク(以下、帰属候補ピーク)とした。
【0139】
図15では、帰属対象ピーク73のピーク・パターン115と比較するピーク・パター
ンとして、帰属候補ピーク93に対し、時間軸方向前後の双方に存在するピーク91、9
5を含めたピーク・パターン117を作成した。
【0140】
図16〜図18では、帰属対象ピーク73のピーク・パターン115と比較するピーク
・パターンとして、別な帰属候補ピーク95、97、99に対し、それぞれ時間軸方向前
後の双方に存在するピークを含めたピーク・パターン119、121、123を作成した

【0141】
このピーク・パターンの比較をより高い精度で行わせるには、図19〜図22のように
、対象FPならびに基準FPの両方で周辺のピーク数を増加させたピーク・パターンを作
成することが肝要である。
【0142】
例えば、周辺のピーク4本を含めた計5本のピークによるピーク・パターンの比較にす
ると、より高い帰属精度が得られる。
【0143】
図19では、帰属対象ピーク73のピーク・パターン125と比較するピーク・パター
ンとして、帰属候補ピーク93に対し、時間軸方向の双方に存在するピーク89、91、
95、97を含めたピーク・パターン127を作成した。
【0144】
図20〜図22では、帰属対象ピーク73のピーク・パターン125と比較するピーク
・パターンとして、別な帰属候補ピーク95、97、99に対し、それぞれ時間軸方向前
後の双方に存在するピークを含めたピーク・パターン129、131、133を作成した

【0145】
さらに、このピーク・パターンによる帰属をより高い精度で行わせるには、対象FPと
基準FPのピーク数に違いがある(つまり、どちらか一方に存在しないピークがある)場
合の対応が必要である。そのためには図23〜図25のように帰属対象ピークならびに帰
属候補ピークの両方でピーク・パターン構成ピークを網羅的に変化させたピーク・パター
ンを作成することが肝要である。
【0146】
具体的には、対象FPの帰属対象ピークの周辺ピークの中から予めピーク・パターン構
成ピークの候補となるピーク(以下、ピーク・パターン構成候補ピーク)を設定し、この
ピーク・パターン構成候補ピークを順番にピーク・パターン構成ピークとしてピーク・パ
ターンを作成する。基準FPの帰属候補ピークについても同様にピーク・パターン構成候
補ピークを設定し、このピーク・パターン構成候補ピークを順番にピーク・パターン構成
ピークとしてピーク・パターンを作成する。
【0147】
例えば、図23のように帰属対象ピーク73のピーク・パターン構成候補ピークとして
時間軸方向周辺4本(69、71、75、77)、帰属候補ピーク93のピーク・パター
ン構成候補ピークとして時間軸方向周辺4本(89、91、95、97)とし、ピーク・
パターン構成ピークを任意の2本にそれぞれ設定する。この場合、図24、図25のよう
に帰属対象ピーク73及び帰属候補ピーク93それぞれでピーク・パターンが4C2(=6
)パターン作成される。
【0148】
さらに、ピーク・パターン構成候補ピークを10本とし、ピーク・パターン構成ピーク
を任意の2本に設定すると、帰属対象ピーク及び帰属候補ピークそれぞれで、10C2(=
45)パターンのピーク・パターンが作成される。ピーク・パターン構成ピークを任意の
4本に設定すると、帰属対象ピーク及び帰属候補ピークそれぞれで、10C4(=210)
パターンのピーク・パターンが作成される。
【0149】
前記ピーク帰属部37の機能を、図26〜図69を用いてさらに説明する。
【0150】
ピーク帰属部37では、ピーク・パターン作成部35で作成した帰属対象ピークと帰属
候補ピークの全ピーク・パターン間で、対応するピーク及びリテンション・タイムの差を
もとにピーク・パターンの一致度(以下、P_Sim)を算出する。ピーク帰属部37は
、P_Simの最小値(以下、P_Sim_min)を帰属対象ピークと帰属候補ピーク
のピーク・パターンの一致度とする。
【0151】
例えば、図26〜図61のように帰属対象ピーク73及び帰属候補ピーク93のそれぞ
れでピーク・パターン構成候補ピークを時間軸方向前後周辺4本とし、ピーク・パターン
構成ピークを任意の2本に設定する。この設定では、帰属対象ピーク及び帰属候補ピーク
それぞれで、4C2(=6)パターンのピーク・パターンが作成される。したがって、帰属
対象ピーク73及び帰属候補ピーク93のP_Simは、6パターン×6パターン(=3
6)通りで算出され、これらP_Simの最小値であるP_Sim_minを帰属対象ピ
ーク73と帰属候補ピーク93の一致度とする。
【0152】
ちなみに、帰属対象ピーク73及び帰属候補ピーク93のそれぞれでピーク・パターン
構成候補ピークを時間軸方向前後周辺10本とし、ピーク・パターン構成ピークを任意の
2本に設定すると、帰属対象ピーク及び帰属候補ピークそれぞれで、10C2(=45)パ
ターンのピーク・パターンが作成される。したがって、帰属対象ピーク73及び帰属候補
ピーク93のP_Simは、45パターン×45パターン(=2025)通りで算出され
、これらP_Simの最小値であるP_Sim_minを帰属対象ピーク73と帰属候補
ピーク93の一致度とする。また、ピーク・パターン構成ピークを任意の4本に設定する
と、帰属対象ピーク及び帰属候補ピークそれぞれで、10C4(=210)パターンのピー
ク・パターンが作成される。したがって、帰属対象ピーク73及び帰属候補ピーク93の
P_Simは、210パターン×210パターン(=44100)通りで算出され、これ
らP_Simの最小値であるP_Sim_minを帰属対象ピーク73と帰属候補ピーク
93の一致度とする。
【0153】
このP_Simは、帰属対象ピーク73の全ての帰属候補ピークについて同様に算出す
る。
【0154】
図62、図63で、3本のピークで構成されたピーク・パターンを比較するためのピー
ク・パターンの一致度の算出方法を説明する。この場合、帰属対象ピーク73のピーク・
パターン115と帰属候補ピーク95のピーク・パターン119を例にする。
【0155】
帰属対象ピーク73のピーク・パターン115において、帰属対象ピーク73のピーク
及びリテンション・タイムをp1及びr1、ピーク・パターン構成ピーク71のピーク及
びリテンション・タイムをdn1及びcn1、ピーク・パターン構成ピーク75のピーク
及びリテンション・タイムをdn2及びcn2とする。
【0156】
帰属候補ピーク95のピーク・パターン119において、帰属候補ピーク95のピーク
及びリテンション・タイムをp2及びr2、ピーク・パターン構成ピーク93のピーク及
びリテンション・タイムをfn1及びen1、ピーク・パターン構成ピーク97のピーク
及びリテンション・タイムをfn2及びen2とする。
【0157】
ピーク・パターンの一致度をP_Simとすると、帰属対象ピーク73と帰属候補ピー
ク95の3本のピークで構成するピーク・パターンの一致度(P_Sim(73−95)
)は、
P_Sim(73−95) = (|p1−p2|+1)×(|(r1−(r2+d)|+1)
+(|dn1−fn1|+1)×(|(cn1−r1)−(en1−r2)|+1)
+(|dn2−fn2|+1)×(|(cn2−r1)−(en2−r2)|+1)
として算出する。
【0158】
なお、式中のdは、リテンション・タイムのずれを補正する値である。
【0159】
図64で、5本のピークで構成されたピーク・パターンを比較するためのピーク・パタ
ーンの一致度の算出方法を説明する。この場合、帰属対象ピーク73のピーク・パターン
125と帰属候補ピーク95のピーク・パターン129を例にする。
【0160】
帰属対象ピーク73のピーク・パターン125において、帰属対象ピーク73のピーク
及びリテンション・タイムをp1及びr1、ピーク・パターン構成ピーク69、71、7
5、77のピーク及びリテンション・タイムをそれぞれdn1及びcn1、dn2及びc
n2、dn3及びcn3、dn4及びcn4とする。
【0161】
帰属候補ピーク95のピーク・パターン129において、帰属候補ピーク95のピーク
及びリテンション・タイムをp2及びr2、ピーク・パターン構成ピーク91、93、9
7、99のピーク及びリテンション・タイムをそれぞれfn1及びen1、fn2及びe
n2、fn3及びen3、fn4及びen4とする。
【0162】
帰属対象ピーク73と帰属候補ピーク95の5本のピークで構成するピーク・パターン
の一致度(P_Sim(73−95))は、
P_Sim(73−95) = (|p1−p2|+1)×(|(r1−(r2+d)|+1)
+(|dn1−fn1|+1)×(|(cn1−r1)−(en1−r2)|+1)
+(|dn2−fn2|+1)×(|(cn2−r1)−(en2−r2)|+1)
+(|dn3−fn3|+1)×(|(cn3−r1)−(en3−r2)|+1)
+(|dn4−fn4|+1)×(|(cn4−r1)−(en4−r2)|+1)
として算出する。
【0163】
なお、式中のdは、リテンション・タイムのずれを補正する値である。
【0164】
ピーク帰属部37では、図67、図68のように帰属対象ピークと帰属候補ピークでU
Vスペクトルの一致度を算出する。
【0165】
図65は、帰属対象ピーク73及び帰属候補ピーク95のUVスペクトル(135と1
39)図であり、図66のようにこれら2つのUVスペクトルの一致度(UV_Sim(
73−95))は、
UV_Sim(73−95)= RMSD(135 vs 139)
として算出する。
【0166】
RMSDは、平均二乗偏差のことで、対応する2点の距離(dis)をそれぞれ二乗し
、その相加平均の平方根として定義される。つまり、
RMSD = √{ Σdis2 / n }
として算出する。
【0167】
nは、disの数である。
【0168】
ここで、UVスペクトルの波形は極大波長及び極小波長を含んでおり、この極大波長及び極小波長或いは何れかを比較することで一致度を算出することも可能である。しかし、吸収特性のない化合物あるいは吸収特性が類似した化合物等では、極大波長、極小波長は同じであるが、全体の波形がかなり異なる場合もあり、極大波長、極小波長の比較では、波形の一致度を算出できない恐れがある。
【0169】
これに対し、UVスペクトルの波形によりRMSDを利用した場合には、波形全体の比較となるため、UVスペクトルの波形の一致度の算出をより正確に行わせ、吸収特性のない化合物あるいは吸収特性が類似した化合物でも正確に識別できることになる。
【0170】
このUVスペクトルの一致度は、帰属対象ピーク73の全ての帰属候補ピークについて
同様に算出する。
【0171】
さらに、ピーク帰属部37では、図67のように上記2つの一致度を統合した帰属候補
ピークの一致度を算出する。
【0172】
図67のように帰属候補ピークの一致度(SCORE(73−95))はピーク・パタ
ーンとUVスペクトルのそれぞれの一致度を乗じて算出する。ピーク・パターン73、9
5の一致度を示すスコアが、P_Sim_min(73−95)であり、対応するUV波形
データ135、139の一致度を示すスコアが、UV_Sim(73−95)であるとす
る。このとき、帰属候補ピークの一致度 SCORE(73−95)は、
SCORE(73−95)
= P_Sim_min(73−95)×UV_Sim(73−95)
として算出する。
【0173】
この帰属候補ピークの一致度を帰属対象ピーク73の全ての帰属候補ピークについて同
様に計算する。
【0174】
そして、全帰属候補ピーク間でこのSCOREを比較し、SCOREが最小となる帰属
候補ピークを帰属対象ピーク73の帰属ピークとして判定する。
【0175】
ピーク帰属部37では、帰属対象ピークの帰属すべきピークを2つの観点を総合して判
定するため、正確なピーク帰属を実現することができる。
【0176】
また、対象ピーク特徴量作成部7では、対象FPの基準FPへの帰属結果をもとに、図
68のように、対象FP43の各ピークを基準群FP45へ帰属する。
【0177】
対象FP43の各ピークは、前記帰属処理により基準群FP45を構成する基準FPに
帰属される。この帰属結果をもとに最終的に基準群FP45のピークに帰属する。
【0178】
尚、基準群FP45は、正常品と定めた複数の基準FP全てを前記のように帰属処理し
作成したものであり、その各ピークは帰属されたピークの平均値(黒点)±標準偏差(縦
分割線)で表している。
【0179】
図69は、対象FP43を基準群FP45に帰属した結果であり、この結果が対象FP
43の対象FPピーク特徴量47である。
[FP領域分割特徴量作成の動作原理]
図70〜図86は、FP領域分割特徴量作成の動作原理を示し、図70は、領域分割に
よる数量化を示す説明図、図71は、リテンション・タイム等の変動との関係を示す説明
図、図72は、領域の位置を変更して数量化する説明図、図73は、FPタイプ2のデー
タを示す図表、図74は、FPタイプ2のパターンを示す説明図、図75は、縦・横分割
線での領域分割による領域ごとの特徴量化を示す説明図、図76は、縦分割線(1本目)
の設定を示す説明図、図77は、横分割線(1本目)の設定を示す説明図、図78は、縦
・横分割線による領域分割を示す説明図、図79は、特徴量化する領域の数を示す説明図
、図80は、領域1の特定を示す説明図、図81は、全ピークの高さ及び合計を示す図表
、図82は、領域1のピーク高さの合計を示す説明図、図83は、最初の1パターンによ
る全領域の特徴量を示す図表、図84は、縦1本目の位置を順次変更してできた各領域で
の特徴量を示す図表、図85は、横1本目の位置を順次変更してできた各領域での特徴量
を示す図表、図86は、各縦・横分割線の位置を変更しない1通りでの特徴量を示す図表
である。
【0180】
前記対象FP領域分割特徴量作成部11又は基準FP領域分割特徴量作成部23は、前
記のように対象FPタイプ2又は基準FPタイプ2を分割した各領域に存在するピークの
存在率から対象FP領域分割特徴量又は基準FP領域分割特徴量を作成する。
【0181】
領域の分割は、例えば図70のように行う。図70では、例えば薬剤AのFP55につ
いて分割している。シグナル強度軸に平行な複数の縦分割線141と時間軸に平行な複
数の横分割線143とにより分割し、複数の領域である複数の格子145を作成する。
【0182】
複数の横分割線143は、本実施例では、シグナル強度が増大する方向へ等比間隔で
設定される。この設定により、ピークの密集する部分での領域分割を細分化し、ピークの
存在率をより正確に把握することが可能となる。但し、複数の横分割線143の本数を増
加するなどして等差間隔で設定することも可能である。
【0183】
この各格子145内に存在するピーク高さの割合で数量化し、特徴量とする。
【0184】
一方、図71のように、分析条件の僅かなバラツキ等により、リテンション・タイムや
ピーク高さがFP55A、55Bのように変動する。この変動により各格子145内の値
が大きく変動する恐れがある。
【0185】
(基準FPタイプ2の場合)
そこで、基準FPタイプ2の場合には、図72のように、各格子145の位置を変更(
シフト)し変更前後で数量化する。この操作により基準FP領域分割特徴量を正確に作成
することが可能となる。各縦・横分割線141、143を設定範囲内で平行移動させるよ
うに位置を変更設定することで前記各格子145の位置を変更する、
ここで、各格子145の位置を変更した数量化について、さらに説明する。
【0186】
図73は、基準FPタイプ2のデータd202、d207、d208を一例として示す
。このデータは、リテンション・タイム(RT)及びピーク高さ(Height)の情報
のみの構成となっている。このデータは、前記基準FPタイプ2作成部21において、複
数の各基準FPから特徴量化されたピークを除いて残ったピークとそのリテンション・タ
イムとで構成される基準FPタイプ2に対応し、全ピークの各UVスペクトルは除いてい
る。
【0187】
基準FPタイプ2のデータd202、d207、d208のパターンは、図74のよう
になっている。
【0188】
これらのFPパターンを縦・横分割線141、143により領域分割し、その領域ごと
に特徴量化する。
【0189】
(縦分割線(1本目)の設定)
縦分割線(1本目)の位置を設定するため、図76のように、1本目のリテンション・タ
イム(RT)、振幅、刻みを指定する。
【0190】
この3つのパラメータをもとに、次の条件で縦1本目の位置が複数箇所設定される。
【0191】
縦分割線(1本目)=RT−振幅+(振幅×2/刻み)×i
(i=0、1、2、・・・・、刻み−1)
例えば、RT=1、振幅=1、刻み回数=10 に指定すると、
縦分割線(1本目)= 0.0、 0.2、 0.4、 0.6、 0.8、 1.0、 1.2、 1.4、 1.6、 1.8
が設定される。
【0192】
(横分割線(1本目)の設定)
横(1本目)の位置を設定するため、図77のように、1本目の高さ、振幅、刻みを指定
する。
【0193】
この3つのパラメータをもとに、次の条件で横1本目の位置が複数箇所設定される。
【0194】
例えば、高さ=1、振幅=0.5、刻み回数=10 に指定すると、
横分割線(1本目)=高さ−振幅+(振幅×2/刻み)×i
(i=0、1、2、・・・・、刻み−1)
例えば、高さ=1、振幅=0.5、刻み回数=10 に指定すると、
横分割線(1本目)= 0.5、 0.6、 0.7、 0.8、 0.9、 1.0、 1.1、 1.2、 1.3、 1.4
が設定される。
【0195】
(縦・横分割線(1本目)の組み合わせ)
設定された縦・横分割線(1本目)の全ての組み合わせで、順次2本目以降の標本線を
設定し、領域分割する。
【0196】
前記の例では次のようになる。
【0197】
縦分割線(1本目)×横分割線(1本目)=
(0.0、 0.2、 0.4、 0.6、 0.8、 1.0、 1.2、 1.4、 1.6、 1.8)
×(0.5、 0.6、 0.7、 0.8、 0.9、 1.0、 1.1、 1.2、 1.3、 1.4)=100通り
この100通り全て組み合わせで順次2本目以降の分割線を設定し、領域を分割する。
【0198】
(縦・横分割線(2本目以降)の設定)
縦分割線2本目以降は指定した間隔(等差)で指定した本数になるまで設定する。
【0199】
縦分割線i本目=縦分割線(i−1)本目+間隔
(i=2、・・・・、指定した本数)
横分割線2本目以降は指定した間隔(等比)で指定した本数になるまで設定する。
【0200】
横分割線i本目=横分割線(i−1)本目+間隔×2÷(i−2)
(i=2、・・・・、指定した本数)
例えば、縦1本目=0.0、縦間隔=10、縦本数=7、横分割線1本目=0.5、横
間隔=1、横本数=6 の場合、
縦分割線=0、10、20、30、40、50、60
横分割線=0.5、1.5、3.5、7.5、15.5、31.5
に設定される。
【0201】
(分割線による領域分割)
設定された縦と横の分割線を先程の例をもとFP上に表記すると、図78のようになる

【0202】
この縦と横の線で囲まれた領域ごとにFPを特徴量化する。
【0203】
領域は全部で30個あるので、図79のように30特徴量が得られる。
【0204】
(領域ごとの特徴量化)
各領域は、次の式により特徴量化する。
【0205】
特徴量=領域内ピーク高さ合計/全ピーク高さ合計
(特徴量化の方法)
以下に、上の式により、図80に示すd202の領域1の特徴量を求める。
【0206】
まず、全ピークの高さ合計を算出すると、図81のように、15.545472となる

【0207】
次に、領域1のピーク高さ合計を、図82のように算出する。
【0208】
従って、領域1の特徴量は、
特徴量 = 2 / 15.545472=0.128655
となる。
【0209】
(全領域の特徴量化)
上記特徴量化方法により、最初の1パターンによる全領域の特徴量を算出する。図83
に算出結果を示す。
(縦分割線1本目を順次変更して特徴量化)
縦分割線1本目の位置を順次変更してできた各領域を上記方法で特徴量化する。図84
に結果を示す。
【0210】
(横1本目を順次変更して特徴量化)
横分割線1本目の位置を変更するたびに縦1本目を1通り変更。できた各領域を上記方
法で特徴量化する。図85に結果を示す。
【0211】
この処理により、縦・横分割線1本目が10箇所ずつあった場合では、
100行(100通り)×31列(ファイル名+30特徴量)
のデータとなる。
【0212】
(全基準データの特徴量化(基準type2群FP))
これまでの処理を全基準データで実施する。例えば、基準データがd202、 d20
7、 d208の3データであった場合は、
300行(100通り×3データ)×31列(ファイル名+30特徴量)
となる。
【0213】
(対象FPタイプ2の場合)
対象FPタイプ2では、縦・横分割線(1本目)の組み合わせは、1通り(縦(RT)
=1、横(高さ)=1)となるので、この1通りでの特徴量を算出する。
[MD値]
図87〜図91は、前記のように、評価部27に係る各種対象FPとその評価値(MD
値)を示した図であり、前記のように各対象FPを前記のように帰属処理することで、評
価部27にて、上記MT法によりMD値(MD値:0.26、2.20等)を求めること
ができる。
[多成分薬剤の評価方法]
図92は、本発明実施例1のFPの特徴量作成方法を含む本発明実施例1の多成分薬剤
の評価方法を示す工程図である。
【0214】
図92のように、多成分薬剤の評価方法は、FP作成工程148と、対象FPピーク帰
属工程149と、対象FPピーク特徴量作成工程151と、対象FPタイプ2作成工程1
53と、対象FP領域分割特徴量作成工程155と、対象FP特徴量統合工程157と、
基準FPピーク帰属工程159と、基準FP帰属結果統合工程161と、基準FPピーク
特徴量作成工程163と、基準FPタイプ2作成工程165と、基準FP領域分割特徴量
作成工程167と、基準FP特徴量統合工程169と、評価工程171とを備えている。
【0215】
FP作成工程148は、対象FP作成工程173と、基準FP作成工程175とを備え
ている。
【0216】
対象FPピーク帰属工程149は、基準FP選定工程177と、ピーク・パターン作成
工程179と、ピーク帰属工程181とを備えている。
【0217】
これら、FP作成工程148、対象FPピーク帰属工程149、対象FPピーク特徴量
作成工程151、対象FPタイプ2作成工程153、対象FP領域分割特徴量作成工程1
55、対象FP特徴量統合工程157、基準FPピーク帰属工程159、基準FP帰属結
果統合工程161、基準FPピーク特徴量作成工程163、基準FPタイプ2作成工程1
65、基準FP領域分割特徴量作成工程167、基準FP特徴量統合工程169、評価工
程171は、本実施例において前記多成分薬剤の評価装置1を用いて行われる。
【0218】
FP作成工程148は、図1のFP作成部3の機能により行わせ、同様に対象FPピー
ク帰属工程149、対象FPピーク特徴量作成工程151、対象FPタイプ2作成工程1
53、対象FP領域分割特徴量作成工程155、対象FP特徴量統合工程157、基準F
Pピーク帰属工程159、基準FP帰属結果統合工程161、基準FPピーク特徴量作成
工程163、基準FPタイプ2作成工程165、基準FP領域分割特徴量作成工程167
、基準FP特徴量統合工程169、評価工程171を、対象FPピーク帰属部5、対象F
Pピーク特徴量作成部7、対象FPタイプ2作成部9、対象FP領域分割特徴量作成部1
1、対象FP特徴量統合部13、基準FPピーク帰属部15、基準FP帰属結果統合部1
7、基準FPピーク特徴量作成部19、基準FPタイプ2作成部21、基準FP領域分割
特徴量作成部23、基準FP特徴量統合部25、評価部27の各機能により行わせる。
【0219】
但し、各工程を、それぞれ別々のコンピュータで機能させることができ、例えば対象F
P作成工程173と、対象FPピーク帰属工程149と、対象FPピーク特徴量作成工程
151と、対象FPタイプ2作成工程153と、対象FP領域分割特徴量作成工程155
と、対象FP特徴量統合工程157と、評価工程171とを一つのコンピュータで機能さ
せ、基準FP作成工程175と、基準FPピーク帰属工程159と、基準FP帰属結果統
合工程161と、基準FPピーク特徴量作成工程163と、基準FPタイプ2作成工程1
65と、基準FP領域分割特徴量作成工程167と、基準FP特徴量統合工程169とを
他のコンピュータで機能させることなどもできる。
【0220】
この場合、基準FP統合特徴量は、他のコンピュータで作成し、評価工程171に供給
されることになる。
【0221】
こうして、対象FPタイプ2作成工程153は、時系列でピークが変化するパターンと
して対象FPタイプ2を作成する。
対象FP領域分割特徴量作成工程155は、前記対象パターン・タイプ2を複数の領域に
分割し各領域に存在するピークの存在率から対象パターン領域分割特徴量を作成するパタ
ーン領域分割特徴量作成工程であるFP領域分割特徴量作成工程を構成する。[多成分薬
剤の評価プログラム]
図93〜図108は、多成分薬剤の評価プログラムに係るフローチャート、図109〜
図116は、基準データの作成に係るフローチャート、図117は、3Dクロマトのデー
タ例を示す図表、図118は、ピーク情報のデータ例を示す図表、図119は、FPのデ
ータ例を示す図表、図120は、対象FPの基準FPへの帰属スコア計算結果(判定結果
ファイル)例を示す図表、図121は、対象FPと基準FPで対応するピークの照合過程
で作成する2つの中間ファイル(帰属候補ピークスコア表、帰属候補ピーク番号表)例を
示す図表、図122は、対象FPと基準FPで対応するピークを特定した結果である照合
結果ファイル例を示す図表、図123は、基準群FPのデータ例を示す図表、図124は
、基準群FPに帰属した対象FPのピーク特徴量データのファイル例を示す図表、図12
5は、対象及び基準FPタイプ2のデータ例を示す図表、図126は、対象FP領域分割
特徴量ファイル例を示す図表、図127は、対象FP特徴量統合ファイル例を示す図表、
図128は、基準type2群FP例を示す図表、図129は、基準群統合データ例を示
す図表である。
【0222】
図93、図94は、評価対象薬剤を評価するための処理全体のステップを示すフローチ
ャートであり、システム起動によりスタートし、FP作成部3のFP作成機能と、対象F
Pピーク帰属部5の対象FPピーク帰属機能と、対象FPピーク特徴量作成部7の対象F
Pピーク特徴量作成機能と、対象FPタイプ2作成部9の対象FPタイプ2作成機能と、
対象FP領域分割特徴量作成部11の対象FP領域分割特徴量作成機能と、対象FP特徴
量統合部13の対象FP特徴量統合機能と、基準FPピーク帰属部15の基準FPピーク
帰属機能と、基準FP帰属結果統合部17の基準FP帰属結果統合機能と、基準FPピー
ク特徴量作成部19の基準FPピーク特徴量作成機能と、基準FPタイプ2作成部21の
基準FPタイプ2作成機能と、基準FP領域分割特徴量作成部23の基準FP領域分割特
徴量作成機能と、基準FP特徴量統合部25の基準FP特徴量統合機能と、評価部27の
評価機能とをコンピュータに実現させる。
【0223】
FP作成機能は、ステップS1で実現される。対象FPピーク帰属機能は、ステップS
2、S3、S4で実現される。対象FPピーク特徴量作成機能は、ステップS5で実現さ
れる。対象FPタイプ2作成機能は、ステップS6で実現される。対象FP領域分割特徴
量作成機能は、ステップS7で実現される。対象FP特徴量統合機能は、ステップS8で
実現される。評価機能は、ステップS9、S10で実現される。
【0224】
ステップS1は、3Dクロマト及び特定の検出波長におけるピーク情報を入力データと
して「FP作成処理」が実行される。
【0225】
3Dクロマトは、評価対象薬剤をHPLCで分析することにより得られるデータであり
、図117の3Dクロマトのデータ例183で示すように、リテンション・タイム、検出
波長、ピーク(シグナル強度)の三次元情報で構成されたデータである。ピーク情報は、
同HPLC分析により得られる特定波長におけるクロマト・データをHPLCデータ解析
ツール(例えば、ChemStation等)で処理することで得られるデータであり、
図118のピーク情報例185で示すように、ピークとして検出された全ピークの極大値
及び面積値とその時点のリテンション・タイム等で構成されたデータである。
【0226】
ステップS1では、コンピュータのFP作成部3の対象FP作成部29(図1)が機能
し、3Dクロマト及びピーク情報から前記対象FP43(図2)を作成し、そのデータを
ファイルとして出力する。この対象FP43は、図119のFPのデータ例187で示す
ように、リテンション・タイムとピーク高さとピーク高さごとのUVスペクトルで構成さ
れたデータである。
【0227】
ステップS2は、ステップS1で出力した対象FP及び全基準FPを入力として、「対
象FP帰属処理1」が実行される。
【0228】
ステップS2では、コンピュータの基準FP選定部33が機能し、全基準FPに対して
対象FP43とのリテンション・タイム・出現パターンの一致度を算出し、対象FP43
の帰属に適した基準FPを選定する。
【0229】
基準FPは、正常品と定めた薬剤の3Dクロマトとピーク情報から前記ステップS1と
同様の処理により作成されたFPである。なお、正常品は、安全性、有効性が確認された
薬剤(基準漢方薬)と定義され、製品ロットの異なる複数の薬剤が該当する。 基準FP
も、図119のFPのデータ例187と同様に構成されたデータである。
【0230】
ステップS3は、対象FP43とステップS2で選定した基準FPを入力とし、「対象
FP帰属処理2」が実行される。
【0231】
ステップS3では、コンピュータのピーク・パターン作成部35(図1)及びピーク帰
属部37(図1)が機能する。この機能により、対象FP43とステップS2で選定した
基準FPの全ピークで、図23〜図61のように網羅的にピーク・パターンを作成し、次
にそれらピーク・パターンの一致度(図63または図64のP_Sim)を算出する。ま
た、対象FPと基準FPのピーク間でUVスペクトルの一致度(図66のUV_Sim)
を算出する。さらにこれら2つの一致度から帰属候補ピークの一致度(図67のSCOR
E)を算出する。その算出結果は、図120の判定結果ファイル例189と同様なファイ
ルに出力される。
【0232】
ステップS4は、ステップS3で出力した判定結果ファイル189を入力とし、「対象
FP帰属処理3」が実行される。
【0233】
ステップS4では、コンピュータのピーク帰属部37が機能し、対象FP43と基準F
P間で、帰属候補ピークの一致度(SCORE)をもとに対象FPの各ピークに対応する
基準FPのピークを特定する。その結果は、図122の照合結果ファイル例195と同様
な照合結果ファイルに出力される。
【0234】
ステップS5は、ステップS4で出力した照合結果ファイルと基準群FP197とを入
力とし、「対象FP帰属処理4」が実行される。
【0235】
基準群FP197は、全基準FPから前記ステップS2からステップS4と同様の処理
により作成された全基準FP間のピーク対応データである。
【0236】
ステップS5では、コンピュータの対象FPピーク特徴量作成部7が機能し、対象FP
43の照合結果ファイルをもとに、図68、図69のように、対象FP43の各ピークを
基準群FP197のピークに帰属する。その結果は、図124のピーク・データ特徴量の
ファイル例199と同様なファイルに出力される。
【0237】
ステップS6は、ステップS5で出力したピーク・データ特徴量ファイルと対象FPと
を入力とし、「FP_type2の作成」の処理が実行される。
【0238】
ステップS6では、コンピュータの対象FPタイプ2作成部9が機能し、対象FPピー
ク特徴量作成部7において特定されたピーク47を元の対象FP43から除いて残ったピ
ークとそのリテンション・タイムとで構成されるFPを対象FPタイプ2(49)として
作成する。その結果は、FPタイプ2ファイル(図125のFPタイプ2ファイル例20
1参照)に出力される。
【0239】
ステップS7では、「領域分割による対象FP_type2の特徴量化処理」が実行される
。この処理では、コンピュータの対象FP領域分割特徴量作成部11が機能し、図70の
領域分割により、対象FP領域分割特徴量が作成される。その結果は、対象FP領域分割
特徴量ファイル(図126の対象FP領域分割特徴量ファイル例203参照)に出力され
る。
【0240】
ステップS8では、「ピーク・データ特徴量と領域分割特徴量の統合」の処理が実行さ
れる。
【0241】
この処理では、コンピュータの対象FP特徴量統合部13が機能し、対象FPピーク特
徴量作成部7で作成された対象FPピーク特徴量47と対象FP領域分割特徴量作成部1
1で作成された対象FP領域分割特徴量51とを統合して対象FP統合特徴量を作成する
。その結果は、対象FP特徴量統合ファイル(図127の対象FP特徴量統合ファイル例
205参照)に出力される。
【0242】
ステップS9では、コンピュータの評価部27が機能し、ステップS8で出力した対象
FP統合特徴量と基準FP統合特徴量との同等性をMT法により評価し、その評価結果を
図87〜図91のようなMD値として出力する(図87〜図91)。
【0243】
ステップS10は、ステップS9で出力したMD値を入力として、「合否判定」が実行
される。
【0244】
ステップS10では、コンピュータの評価部27が機能し、ステップS9で出力したM
D値と予め設定した閾値(MD値の上限値)を比較し、合否を判定する(図2の評価結果
53)。
[S1:FP作成処理(単一波長のみ利用)]
図95は、図93ステップS1「FP作成処理」の単一波長のピーク情報を利用した場
合のフローチャートである。
【0245】
図95は、波長を単一波長、例えば203nmとして評価対象のFPを作成するステッ
プの詳細である。この処理では、3Dクロマトと検出波長が203nmにおけるピーク情
報から、203nmで検出されたピークにおけるリテンション・タイムとピークならびに
それらピークのUVスペクトルで構成するFPを作成する。
【0246】
ステップS101では、「ピーク情報を読み込む」の処理が実行される。この処理では
、FPの作成に必要な2つのデータのうちの1つ目としてピーク情報が読み込まれ、ステ
ップS102へ移行する。
【0247】
ステップS102では、「ピークのリテンション・タイム(R1)と対応するピーク・
データ(P1)を順番に取得」の処理が実行される。この処理では、ピーク情報から、ピ
ークのリテンション・タイム(R1)及びピーク・データ(P1)を1ピークずつ順番に
取得し、ステップS103へ移行する。
【0248】
ステップS103では、「3Dクロマトを読み込む」の処理が実行される。この処理で
は、FPの作成に必要な2つのデータのうちの2つ目として3Dクロマトが読み込まれ、
ステップS104へ移行する。
【0249】
ステップS104では、「ピークのリテンション・タイム(R2)と対応するUVスペ
クトル(U1)を順番に取得」の処理が実行される。この処理では、3Dクロマトから、
リテンション・タイム(R2)及びUVスペクトル(U1)をHPLC分析時のサンプリ
ング・レートごとに取得し、ステップS105へ移行する。
【0250】
ステップS105では、「|R1−R2|<=閾値?」の判断処理が実行される。この
処理では、ステップS102及びS104で読み込まれたR1とR2が閾値の範囲で対応
したものであるか否かが判断される。対応している(YES)場合は、2つのリテンショ
ン・タイムは同じであり、リテンション・タイムがR1のピークのUVスペクトルはU1
であると判断し、ステップS106へ移行する。対応していない(NO)場合は、2つの
リテンション・タイムは同じではなく、リテンション・タイムがR1のピークのUVスペ
クトルはU1ではないと判断し、3Dクロマトの次のデータとの比較のため、ステップS
104へ移行する。なお、この判断処理での閾値は、3Dクロマトにおける“サンプリン
グ・レート/2”とする。
【0251】
ステップS106では、「U1を最大値1で規格化」の処理が実行される。この処理で
は、S105でR1のUVスペクトルと判断したU1を最大値1で規格化し、ステップS
107へ移行する。
【0252】
ステップS107では、「R1とP1ならびに規格化したU1を出力(対象FP)」の
処理が実行される。この処理では、ピーク情報から取得したR1とP1ならびにS106
で規格化したU1を対象FPに出力し、ステップS108へ移行する。
【0253】
ステップS108では、「全ピークの処理終了?」の判断処理が実行される。この処理
では、ピーク情報中の全てのピークに対して処理が行われたか否かが判断され、全ピーク
に対して処理が終了していなければ(NO)、未処理のピークを処理するため、ステップ
S102へ移行する。S102からS108までの処理は全ピークの処理が終了するまで
繰り返され、全ピークの処理が終了すると(YES)、FP作成処理を終了する。
[S1:FP作成処理(複数波長利用)]
図96、図97は、図93のステップS1「FP作成処理」において、前記単一波長の
ピーク情報に代え、複数波長のピーク情報を利用した場合のフローチャートである。例え
ば203nmを含めて、検出波長軸方向に複数(n個)の波長を選択し、FPを作成する
場合である。
【0254】
このFP作成処理は、図95のような単一波長では3Dクロマトで検出されている全ピ
ークを網羅できない場合に複数波長のピーク情報を利用し、3Dクロマトの全ピークを網
羅したFPを作成するためのものである。
【0255】
なお、図96、図97は、上記単一波長のみを利用したFP作成処理で波長ごとのFP
をn個作成後、それらFPから複数波長によるFPを作成するステップの詳細である。
【0256】
ステップS110では、「波長ごとにFPを作成」の処理が実行される。この処理では
、波長ごとに上記単一波長のみを利用したFP作成処理が行われ、n個のFPを作成し、
ステップS111へ移行する。
【0257】
ステップS111では、「FPをピーク数(降順)でリスト化」の処理が実行される。
この処理では、n個のFPをピーク数が多い順にリスト化し、ステップS112へ移行す
る。
【0258】
ステップS112では、n個のFPを順番に処理するためのカウンタの初期化としてn
に1が代入(n←1)され、ステップS113へ移行する。
【0259】
ステップS113では、「リストn番目のFPを読み込む」の処理が実行される。この
処理では、リストn番目のFPを読み込み、ステップS114へ移行する。
【0260】
ステップS114では、「全リテンション・タイム(X)を取得」の処理が実行される
。この処理では、S113で読み込んだFPのリテンション・タイム情報を全て取得し、
ステップS115へ移行する。
【0261】
ステップS115では、「nの更新(n←n+1)」の処理が実行される。この処理で
は、処理を次のFPへ移行するため、nの更新としてnにn+1を代入し、ステップS1
16へ移行する。
【0262】
ステップS116では、「リストn番目のFPを読み込む」の処理が実行される。この
処理では、リストn番目のFPを読み込み、ステップS117へ移行する。
【0263】
ステップS117では、「全リテンション・タイム(Y)を取得」の処理が実行される
。この処理では、S116で読み込んだFPのリテンション・タイム情報を全て取得し、
ステップS118へ移行する。
【0264】
ステップS118では、「XとYを重複なしで統合(Z)」の処理が実行される。この
処理では、S114で取得したリテンション・タイム情報XとS117で取得したリテン
ション・タイム情報Yを重複なしで統合した後、Zに保存し、ステップS119へ移行す
る。
【0265】
ステップS119では、「Xの更新(X←Z)」の処理が実行される。この処理では、
Xの更新としてXにS118で保存したZを代入し、ステップS120へ移行する。
【0266】
ステップS120では、「全FP処理終了?」の判断処理が実行される。この処理では
、S110で作成したn個のFP全てが処理されたか否かが判断され、処理済み(YES
)の場合は、ステップS121へ移行する。未処理のFPがある(NO)の場合は、未処
理のFPに対してS115〜S120の処理を実行するため、S115へ移行する。全F
Pの処理が終了するまでS115〜S120の処理を繰り返す。
【0267】
ステップS121では、n個のFPを再度順番に処理するためのカウンタの初期化とし
てnに1が代入(n←1)され、ステップS122へ移行する。
【0268】
ステップS122では、「リストn番目のFPを読み込む」の処理が実行される。この
処理では、リストn番目のFPを読み込み、ステップS123へ移行する。
【0269】
ステップS123では、「各ピークのリテンション・タイム(R1)、ピーク・データ
(P1)ならびにUVスペクトル(U1)を順番に取得」の処理が実行される。この処理
では、S122で読み込んだFPからリテンション・タイム(R1)、ピーク・データ(
P1)ならびにUVスペクトル(U1)を1ピークずつ順番に取得し、ステップS124
へ移行する。
【0270】
ステップS124では、「Xからリテンション・タイム(R2)を順番に取得」の処理
が実行される。この処理では、全FPのリテンション・タイムが重複なしで保存されてい
るXから1リテンション・タイム(R2)ずつ順番に取得し、ステップS125へ移行す
る。
【0271】
ステップS125では、「R1=R2?」の判断処理が実行される。この処理では、S
123で取得したR1とS124で取得したR2が等しいか否かが判断され、等しい(Y
ES)場合は、ステップS127へ移行する。等しくない(NO)場合は、ステップS1
26へ移行する。
【0272】
ステップS126では、「Xの全リテンション・タイム比較終了?」の判断処理が実行
される。この処理では、S123で取得したR1に対して、Xの全リテンション・タイム
との比較が終了しているか否かが判断される。終了している(YES)場合は、リテンシ
ョン・タイムがR1のピークは処理済みであると判断し、次のピークへ処理を移行するた
め、ステップS123へ移行する。終了していない(NO)場合は、Xの次のリテンショ
ン。タイムに移行するため、ステップS124へ移行する。
【0273】
ステップS127では、「R1に(n−1)×分析時間(T)を加算(R1←R1+(
n−1)×T)」の処理が実行される。この処理では、一番ピーク数の多いリスト1番目
のFPに存在するピークのリテンション・タイムはそのままで、リスト1番目のFPには
存在せず、リスト2番目のFPに存在するピークのリテンション・タイムはR1に分析時

(T)が加算され、さらに、リスト1〜n−1番目のFPには存在せず、リストn番目の
FPに存在するピークのリテンション・タイムはR1に(n−1)×Tが加算され、ステ
ップS128へ移行する。
【0274】
ステップS128では、「R1、P1ならびにU1を出力(対象FP)」の処理が実行
される。この処理では、S127で処理したR1とS123で取得したP1ならびにU1
を対象FPに出力し、ステップS129へ移行する。
【0275】
ステップS129では、「XからR2を削除」の処理が実行される。この処理では、リ
テンション・タイムがR1(=R2)における処理がS127、S128で終了したため
、Xから処理済みリテンション・タイム(R2)を削除し、S130へ移行する。
【0276】
ステップS130では、「全ピーク処理終了?」の判断処理が実行される。この処理で
は、リストn番目のFPの全ピークに対して処理が終了しているか否かが判断され、処理
済み(YES)の場合は、リストn番目のFPにおけるFP作成処理を終了し、ステップ
S131へ移行する。未処理のピークがある(NO)場合は、未処理のピークを処理する
ため、ステップS123へ移行する。全ピークの処理が終了するまでS123〜S130
の処理を繰り返す。
【0277】
ステップS131では、「nの更新(n←n+1)」の処理が実行される。この処理で
は、処理を次のFPへ移行するため、nの更新としてnにn+1を代入し、ステップS1
32へ移行する。
【0278】
ステップS132では、「全FP処理終了?」の判断処理が実行される。この処理では
、S110で作成したn個のFP全てが処理されたか否かが判断され、処理済み(YES
)の場合は、FP作成処理を終了する。未処理のFPがある(NO)場合は、未処理のF
Pに対してS122〜S132の処理を実行するため、S122へ移行する。全FPの処
理が終了するまでS122〜S132の処理を繰り返す。
[S2:対象FP帰属処理1]
図98は、図93ステップS2の「対象FP帰属処理1」の詳細を示すフローチャート
である。この処理は、帰属の前処理であり、正常品とされた複数の基準FPから対象FP
43の帰属に適した基準FPを選定する。
【0279】
ステップS201では、「対象FPを読み込む」の処理が実行される。この処理では、
帰属対象のFPを読み込み、ステップS202へ移行する。
【0280】
ステップS202では、「全リテンション・タイム(R1)を取得」の処理が実行され
る。この処理では、S201で読み込んだ対象FPのリテンション・タイム情報を全て取
得し、ステップS203へ移行する。
【0281】
ステップS203では、「全基準FPのファイル名をリスト化」の処理が実行される。
この処理では、後で全基準FPを順番に処理するために予め全基準FPのファイル名をリ
スト化し、ステップS204へ移行する。
【0282】
ステップS204では、全基準FPを順番に処理するためのカウンタの初期値としてn
に1を代入(n←1)し、ステップS205へ移行する。
【0283】
ステップS205では、「リストn番目の基準FP(基準FP)を読み込む」の処理
が実行される。この処理では、S203でリスト化した全基準FPのファイル名リストの
n番目のFPを読み込み、ステップS206へ移行する。
【0284】
ステップS206では、「全リテンション・タイム(R2)を取得」の処理が実行され
る。この処理では、S205で読み込んだ基準FPのリテンション・タイム情報を全て取
得し、ステップS207へ移行する。
【0285】
ステップS207では、「R1とR2のリテンション・タイム・出現パターンの一致度
を算出(RP_min)」の処理が実行される。この処理では、S202で取得した対
象FPのリテンション・タイムとS206で取得した基準FPのリテンション・タイムか
らRP_minを算出し、ステップS208へ移行する。なお、RP_minの詳細
な計算フローは、図103のサブルーチン1により別途説明する。
【0286】
ステップS208では、「RP_minの保存(RPall_min」の処理が実行
される。この処理では、S207で算出したRP_minをRPall_minに保存
し、ステップS209へ移行する。
【0287】
ステップS209では、「nの更新(n←n+1)」の処理が実行される。この処理で
は、処理を次のFPへ移行するためnの更新としてnにn+1を代入し、ステップS21
0へ移行する。
【0288】
ステップS210では、「全基準FP処理終了?」の判断処理が実行される。この処理
では、基準FP全てが処理されたか否かが判断され、処理済み(YES)の場合は、ステ
ップS211へ移行する。未処理の基準FPがある(NO)場合は、未処理のFPに対し
てS205〜S210の処理を実行するため、S205へ移行する。全基準FPの処理が
終了するまでS205〜S210の処理を繰り返す。
【0289】
ステップS211では、「RPall_minから一致度が最小となる基準FPを選定
」の処理が実行される。この処理では、全基準FPに対して算出したRP_minから
RP_minを比較し、対象FPとのリテンション・タイム・出現パターンの一致度が
最小となる基準FPを選定し、対象FP帰属処理1を終了する。
[S3:対象FP帰属処理2]
図99は、図93ステップS3の「対象FP帰属処理2」の詳細を示すフローチャート
である。この処理は、帰属の本処理であり、対象FP43とステップS2で選定した基準
FPとの間で、前記のようなピーク・パターン及びUVスペクトルの一致度から各帰属候
補ピークの一致度(SCORE)を算出する。
【0290】
ステップS301では、「対象FPを読み込む」の処理が実行される。この処理では、
帰属対象のFPを読み込み、ステップS302へ移行する。
【0291】
ステップS302では、「帰属対象ピークのリテンション・タイム(R1)とピーク・
データ(P1)ならびにUVスペクトル(U1)を順番に取得」の処理が実行される。こ
の処理では、S301で読み込んだ対象FPの各ピークを順番に帰属対象ピークとし、R
1とP1ならびにU1を取得し、ステップS303へ移行する。
【0292】
ステップS303では、「基準FPを読み込む」の処理が実行される。この処理では、
図98の[対象FP帰属処理1]で選定された基準FPを読み込み、ステップS304へ
移行する。
【0293】
ステップS304では、「基準FPのピークのリテンション・タイム(R2)とピーク
・データ(P2)ならびにUVスペクトル(U2)を順番に取得」の処理が実行される。
この処理では、S303で読み込んだ基準FPからR2とP2ならびにU2を1ピークず
つ取得し、ステップS305へ移行する。
【0294】
ステップS305では、「|R1−(R2+d)|<閾値?」の判断処理が実行される
。この処理では、ステップS302及びS304で読み込まれたR1とR2が閾値の範囲
内で対応したものであるか否かが判断される。対応している(YES)場合は、リテンシ
ョン・タイムがR2のピークはリテンション・タイムがR1のピークの帰属候補ピークで
あると判断し、帰属候補ピークの一致度(SCORE)を算出するためステップS306
へ移行する。対応していない(NO)場合は、リテンション・タイムがR2のピークとリ
テンション・タイムがR1のピークではリテンション・タイムが違いすぎるため、帰属候
補ピークにはならないと判断し、ステップS309へ移行する。なお、この判断処理での
dは、対象FPと基準FPのピークのリテンション・タイムを補正する値で、初期値は0
とし、処理を進める中で随時帰属したピーク間のリテンション・タイムの差を求め、その
値でdを更新する。また、閾値は、帰属候補ピークとすべきかどうかを判断するためのリ
テンション・タイムの許容幅である。
【0295】
ステップS306では、「UVスペクトルの一致度を算出(UV_Sim)」の処理が
実行される。この処理では、S302で取得した帰属対象ピークのU1とS304で取得
した帰属候補ピークのU2から、UV_Simを算出し、ステップS307へ移行する。
なお、UV_Simの詳細な計算フローは、図86のサブルーチン2に別途記載する。
【0296】
ステップS307では、「ピーク・パターンの一致度を算出(P_Sim_min)」
の処理が実行される。この処理では、S302で取得した帰属対象ピークのR1及びP1
とS304で取得した帰属候補ピークのR2及びP2から、これらピークに対して網羅的
にピーク・パターンを作成する。これらピーク・パターンのP_Sim_minを算出し
、ステップS308へ移行する。なお、P_Sim_minの詳細な計算フローは、図8
7のサブルーチン3に別途記載する。
【0297】
ステップS308では、「帰属候補ピークの一致度を算出(SCORE)」の処理が実
行される。この処理では、S306で算出したUV_SimとS307で算出したP_S
im_minから、帰属対象ピークと帰属候補ピークのSCOREを、
SCORE = UV_Sim × P_Sim_min
として算出し、ステップS310へ移行する。
【0298】
ステップS309では、「SCOREに888888を代入(SCORE←88888
8)」の処理が実行される。この処理では、帰属対象ピークの帰属候補ピークに該当しな
いピークのSCOREを888888とし、ステップS310へ移行する。
【0299】
ステップS310では、「SCOREの保存(SCORE_all)」の処理が実行さ
れる。この処理では、S308あるいはS309で得られたSCOREをSCORE_a
llに保存し、ステップS311へ移行する。
【0300】
ステップS311では、「基準全ピークの処理終了?」の判断処理が実行される。この
処理では、基準FPの全ピークが処理されたか否かが判断され、処理済み(YES)の場
合は、ステップS312へ移行する。未処理のピークがある(NO)場合は、未処理のピ
ークに対してS304〜S311の処理を実行するため、S304へ移行する。全ピーク
の処理が終了するまでS304〜S311の処理を繰り返す。
【0301】
ステップS312では、「判定結果ファイルにSCORE_allを出力し、SCOR
E_allを初期化(空にする)」の処理が実行される。この処理では、判定結果ファイ
ルにSCORE_allを出力後、SCORE_allを初期化(空にする)し、ステッ
プS313へ移行する。
【0302】
ステップS313では、「対象全ピークの処理終了?」の判断処理が実行される。この
処理では、対象FPの全ピークが処理されたか否かが判断され、処理済み(YES)の場
合は、対象FP帰属処理2を終了する。未処理のピークがある(NO)場合は、未処理の
ピークに対してS302〜S313の処理を実行するため、S302へ移行する。全ピー
クの処理が終了するまでS302〜S313の処理を繰り返す。
【0303】
図120で出力した判定結果ファイル例189を示す。
[S4:対象FP帰属処理3]
図100は、図93ステップS4の「対象FP帰属処理3」の詳細を示すフローチャー
トである。この処理は、帰属の後処理であり、前記のように算出した帰属候補ピークの一
致度(SCORE)から対象FPの各ピークに対応する基準FPのピークを特定する。
【0304】
ステップS401では、「判定結果ファイルを読み込む」の処理が実行される。この処
理では、図81の「対象FP帰属処理2」で作成した判定結果ファイルを読み込み、ステ
ップS402へ移行する。
【0305】
ステップS402では、「「SCORE<閾値」の条件を満たしたデータで帰属候補ピ
ークスコア表を作成」の処理が実行される。この処理では、判定結果ファイルのSCOR
Eをもとに帰属候補スコア表(図121上図の帰属候補スコア表191参照)を作成し、
ステップS403へ移行する。この帰属候補ピークスコア表は、基準FPのピークごとに
、対象FP全ピークに対して算出されたSCOREから、閾値より小さいSCOREだけ
を昇順に並べた表である。ちなにみ、このSCOREは値が小さいほど帰属すべきピーク
の可能性が高い。なお、閾値は、帰属候補とすべきかどうかを判断するためのSCORE
の上限値である。
【0306】
ステップS403では、「帰属候補ピーク番号表を作成」の処理が実行される。この処
理では、帰属候補ピークスコア表をもとに帰属候補ピーク番号表(図121下図の帰属候
補ピーク番号表193参照)を作成し、ステップS404へ移行する。この帰属候補ピー
ク番号表は、帰属候補ピークスコア表の各スコアをそのスコアに対応する対象FPのピー
ク番号に置き換えた表である。このことから、この表は、基準FPのピークごとに対応さ
せるべき対象FPのピーク番号が順番に並んだ表となっている。
【0307】
ステップS404では、「帰属すべき対象FPのピーク番号を取得」の処理が実行され
る。この処理では、S403で作成した帰属候補ピーク番号表から、基準FPのピークご
とに一番上位に位置する対象FPのピーク番号を取得し、ステップS405へ移行する。
【0308】
ステップS405では、「取得したピーク番号が降順(重複なし)に並んでいる?」の
判断処理が実行される。この処理では、S404で取得した対象FPのピーク番号が重複
なしで降順に並んでいるか否かが判断される。並んでいる(YES)場合は、基準FPの
各ピークに対応する対象FPのピークが確定できたと判断し、ステップS408へ移行す
る。並んでいない(NO)場合は、問題のあった基準FPのピークに帰属すべき対象FP
のピークを見直すため、ステップS406へ移行する。
【0309】
ステップS406では、「問題のあったピーク間でSCOREを比較し、帰属候補ピー
ク番号表を更新」の処理が実行される。この処理では、問題のあった対象FPのピーク番
号に対応するSCOREを帰属候補スコア表で比較し、SCOREが大きい方のピーク番
号を2番目に位置するピーク番号に置き換えた帰属候補ピーク番号表に更新し、ステップ
S407へ移行する。
【0310】
ステップS407では、「帰属候補ピークスコア表を更新」の処理が実行される。この
処理では、S406での帰属候補ピーク番号表の更新内容に沿って、帰属候補ピークスコ
ア表を更新し、ステップS404へ移行する。対象FPのピーク番号に問題(重複あり、
降順に並んでいない)がなくなるまで、S404からS407の処理を繰り返す。
【0311】
ステップS408では、「帰属結果を保存(TEMP)」の処理が実行される。この処
理では、基準FPの全ピークのピーク番号、リテンション・タイム、及びピークとこれら
ピークに対応するピークとして特定した対象FPのピーク・データをTEMPに保存し、
ステップS409へ移行する。
【0312】
ステップS409では、「TEMPに対象FPの全ピークが入っている?」の判断処理
が実行される。この処理では、S408で保存したTEMP中に対象FPの全ピークのピ
ーク・データが入っているか否かが判断される。全て入っている(YES)場合は、対象
FPの全てのピークで処理が終了したと判断し、S412へ移行する。入っていないピー
クがある(NO)場合は、入っていないピークのピーク・データをTEMPに追加するた
め、ステップS410へ移行する。
【0313】
ステップS410では、「TEMPに入っていない対象FPのピークのリテンション・
タイムを補正」の処理が実行される。この処理では、TEMPに入っていない対象FPの
ピーク(補正が必要な対象FPのピーク)のリテンション・タイムは、
補正値 = k1+(k2−k1)*(t0−t1)/(t2−t1)
k1:補正が必要な対象FPのピーク近傍で帰属された2つの基準FP側のピ
ークのうちのリテンション・タイムが小さいピークのリテンション・タイム
k2:補正が必要な対象FPのピーク近傍で帰属された2つの基準FP側のピ
ークのうちのリテンション・タイムが大きいピークのリテンション・タイム
t0:補正が必要な対象FPのピークのリテンション・タイム
t1:補正が必要な対象FPのピーク近傍で帰属された2つの対象FP側のピ
ークのうちのリテンション・タイムが小さいピークのリテンション・タイム
t2:補正が必要な対象FPのピーク近傍で帰属された2つの対象FP側のピ
ークのうちのリテンション・タイムが大きいピークのリテンション・タイム
として基準FPにおけるリテンション・タイムに補正し、ステップS411へ移行する。

【0314】
ステップS411では、「補正したリテンション・タイムとそのピークのピーク・デー
タをTEMPに追加し、TEMPを更新」の処理が実行される。この処理では、S410
で補正したTEMPに入っていない対象FPのピークのリテンション・タイムとTEMP
中の基準FPのリテンション・タイムとを比較し、TEMP中の妥当な位置にTEMPに
入っていない対象FPのピークの補正したリテンション・タイムならびにピーク・データ
を追加し、TEMPを更新し、S409へ移行する。対象FPの全ピークが追加されるま
で、S409からS411の処理を繰り返す。
【0315】
ステップS412では、「TEMPを照合結果ファイルに出力」の処理が実行される。
この処理では、基準FPの全ピークと対象FPの全ピークの対応関係を特定したTEMP
を照合結果ファイルとして出力し、対象FP帰属処理3を終了する。
[S5:対象FP帰属処理4]
図101、図102は、図93ステップS5の「対象FP帰属処理4」の詳細を示すフ
ローチャートである。この処理は、帰属の最終処理であり、図93ステップS4で作成し
た照合結果ファイル(図122の照合結果ファイル例195参照)をもとに対象FPの各
ピークを基準群FP(図123の基準群FPのデータ例197参照)のピークに帰属する

【0316】
なお、基準群FP197は、前記のように全基準FP間でピークの対応関係を特定した
FPであり、図123の基準群FPのデータ例197のように、基準群FPピーク番号と
基準群リテンション・タイムとピーク高さとで構成されたデータである。図2の基準群F
P45で示すように各ピークは平均値(黒点)±標準偏差(縦分割線)で表すことができ
る。
【0317】
ステップS501では、「照合結果ファイルを読み込む」の処理が実行される。この処
理では、図100のS412で出力した照合結果ファイルを読み込み、ステップS502
へ移行する。
【0318】
ステップS502では、「基準群FPを読み込む」の処理が実行される。この処理では
、対象FPの各ピークの最終的な帰属相手である基準群FP197を読み込み、ステップ
S503へ移行する。
【0319】
ステップS503では、「対象FPと基準群FPを統合し保存(TEMP)」の処理が
実行される。この処理では、照合結果ファイルと基準群FP197で共通に存在する基準
FPのピーク・データをもとに2つのファイルを統合し、その結果をTEMPとして保存
し、ステップS504へ移行する。
【0320】
ステップS504では、「基準FPに対応するピークがない対象FPの全ピークのリテ
ンション・タイムを補正」の処理が実行される。この処理では、照合結果ファイルで基準
FPに対応するピークがない対象FPの全ピークのリテンション・タイムをS503で保
存したTEMPのリテンション・タイムに補正し、ステップS505へ移行する。なお、
リテンション・タイムの補正は、前記ステップS4の「対象FP帰属処理3」のステップ
S410と同様の方法で補正する。
【0321】
ステップS505では、「補正したリテンション・タイム(R1、R3)と対応するピ
ーク・データ(P1)を順番に取得」の処理が実行される。この処理では、S504で補
正したリテンション・タイムをR1ならびにR3として、対応するピークのピーク・デー
タをP1として順番に取得し、ステップS506へ移行する。
【0322】
ステップS506では、「TEMPから対象FPの帰属候補ピークのリテンション・タ
イム(R2)と対応するピーク・データ(P2)を順番に取得」の処理が実行される。こ
の処理では、S503で保存したTEMPから対象FPのピークが帰属されていないリテ
ンション・タイムをR2として、対応するピーク・データをP2として順番に取得し、ス
テップS507へ移行する。
【0323】
ステップS507では、「|R1−R2|<閾値1?」の判断処理が実行される。この
処理では、S505とS506で取得したR1とR2の差が閾値1より小さいか否かが判
断される。小さい(YES)場合は、対象FPのリテンション・タイムがR1のピークと
基準FPのリテンション・タイムがR2のピークが対応する可能性があると判断し、ステ
ップS508へ移行する。R1とR2の差が閾値1以上(NO)の場合は、対応する可能
性なしと判断し、ステップS512へ移行する。
【0324】
ステップS508では、「R1、R2に対応するUVスペクトルを取得(U1、U2)
」の処理が実行される。この処理では、S507で対応する可能性ありと判断されたリテ
ンション・タイムがR1とR2のピークに対応するUVスペクトルをそれぞれのFPから
取得し、ステップS509へ移行する。
【0325】
ステップS509では、「UVスペクトルの一致度を算出(UV_Sim)」の処理が
実行される。この処理では、S508で取得したUVスペクトルU1及びU2からステッ
プS3の「対象FP帰属処理2」のステップS306と同様な方法でUV_Simを算出
し、ステップS510へ移行する。なお、UV_Simの詳細な計算フローは図104の
サブルーチン2で別途説明する。
【0326】
ステップS510では、「UV_Sim<閾値2?」の判断処理が実行される。この処
理では、S509で算出したUV_Simが閾値2より小さいか否かが判断される。小さ
い(YES)場合は、UVスペクトルがU1のピークとU2のピークが対応していると判
断し、ステップS511へ移行する。UV_Simが閾値2以上(NO)の場合は、対応
していないと判断し、ステップS507へ移行する。
【0327】
ステップS511では、「R3 ← R2、閾値2 ← UV_Sim」の処理が実行
される。この処理では、S510で対応すると判断したリテンション・タイムがR3(つ
まり、R1)を対応相手のリテンション・タイムであるR2に更新したのち、閾値2をU
V_Simの値に更新し、S507に移行する。
【0328】
ステップS512では、「全ての帰属候補ピークのリテンション・タイムを比較終了?
」の判断処理が実行される。この処理では、R1と全ての帰属候補ピークのリテンション
・タイムの比較が終了したか否かが判断され、終了している(YES)場合は、ステップ
S513へ移行する。終了していない(NO)場合は、ステップS507へ移行する。
【0329】
ステップS513では、「R1、R3とP1ならびに閾値2を保存(TEMP2)」の
処理が実行される。この処理では、S510で対応すると判断したリテンション・タイム
(R1)と対応相手のリテンション・タイム(R2)に更新したR3と対応するピーク(
P1)ならびに現時点の閾値2を保存(TEMP2)し、S507に移行する。
【0330】
ステップS514では、「全ての非対応ピークのリテンション・タイムを比較終了?」
の判断処理が実行される。この処理では、全ての非対応ピークのリテンション・タイムで
帰属候補ピークのリテンション・タイムとの比較が終了したか否かが判断される。終了し
ている(YES)場合は、全ての非対応ピークの帰属処理が終了したと判断し、ステップ
S516へ移行する。終了していない(NO)場合は、未処理の非対応ピークが残ってい
ると判断し、ステップS515へ移行する。
【0331】
ステップS515では、「閾値2 ← 初期値」の処理が実行される。この処理では、
S511でUV_Simに更新されている閾値2を初期値に戻し、ステップS505へ移
行する。
【0332】
ステップS516では、「TEMP2にR3の値が同じピークが存在する?」の判断処
理が実行される。この処理では、TEMP中の同じピークに複数の非対応ピークが帰属さ
れているか否かが判断される。同じピークに帰属された非対応ピークが存在する(YES
)場合は、ステップS517へ移行する。存在しない(NO)場合は、ステップS518
へ移行する。
【0333】
ステップS517では、「R3の値が同じピークの閾値2を比較し、値が大きいピーク
のR3を元の値(R1)に戻す」の処理が実行される。この処理では、TEMP2中のR
3の値が同じピークの閾値2を比較し、値が大きいピークのR3の値を元の値(つまり、
R1)に戻し、ステップS518へ移行する。
【0334】
ステップS518では、「TEMPにTEMP2のピークを追加(TEMPのリテンシ
ョン・タイムとR3が一致したピークのみ)」の処理が実行される。この処理では、TE
MPのリテンション・タイムとR3が一致したピークのみTEMPにR3に対応するピー
クを追加し、ステップS519へ移行する。R3がTEMPのリテンション・タイムと一
致しないピークは、基準群FPに帰属相手となるピークが存在しないため、追加しない。
【0335】
ステップS519では、「TEMP中の対象FPのピークを出力(ピーク特徴量ファイ
ル)」の処理が実行される。この処理では、基準群FP197に帰属された対象FPのピ
ーク・データをピーク・データ特徴量ファイルとして出力し、対象FP帰属処理4を終了
する。
【0336】
図124に前記のように出力するピーク・データ特徴量のファイル例199を示す。
【0337】
[サブルーチン1]
図103は、図98の「基準FP選定処理」における「サブルーチン1」の詳細を示す
フローチャートである。この処理は、FP間(例えば、対象FPと基準FP)のリテンシ
ョン・タイム・出現パターンの一致度を計算する。
【0338】
ステップS1001では、「x←R1、y←R2」の処理が実行される。この処理では
、図98のS202とS206で取得したR1及びR2をそれぞれxとyに代入し、ステ
ップS1002へ移行する。
【0339】
ステップS1002では、「x、yのデータ数を取得(a、b)」の処理が実行される
。この処理では、x、yのデータ数をそれぞれa、bとして取得し、ステップS1003
へ移行する。
【0340】
ステップS1003では、xのリテンション・タイムを順番に呼び出すためのカウンタ
の初期値としてiに1を代入(i←1)し、ステップS1004へ移行する。
【0341】
ステップS1004では、「xi番目のリテンション・タイムからの全距離を取得(f
)」の処理が実行される。この処理では、xi番目のリテンション・タイムとそれ以降の
全リテンション・タイム間距離をfとして取得し、ステップS1005へ移行する。
【0342】
ステップS1005では、yのリテンション・タイムを順番に呼び出すためのカウンタ
の初期値としてjに1を代入(j←1)し、ステップS1006へ移行する。
【0343】
ステップS1006では、「yj番目のリテンション・タイムからの全距離を取得(g
)」の処理が実行される。この処理では、yj番目のリテンション・タイムとそれ以降の
全リテンション・タイム間距離をgとして取得し、ステップS1007へ移行する。
【0344】
ステップS1007では「”|fの各リテンション・タイム間距離−gの各リテンショ
ン・タイム間距離|<閾値”の条件を満たしたデータ数を取得(m)」の処理が実行され
る。この処理では、S1004及びS1006で取得したリテンション・タイム間距離f
とgを総当りで比較し、”|fの各リテンション・タイム間距離−gの各リテンション・
タイム間距離|<閾値”の条件を満たしたデータ数をmとして取得し、ステップS100
8へ移行する。
【0345】
ステップS1008では、「fとgのリテンション・タイム・出現パターンの一致度を
算出(RPfg)」の処理が実行される。この処理では、S1002で取得したa、bと
S1007で取得したmからRPfgを、
RPfg = (1−(m/(a+b−m)))×(a−m+1)
として算出し、ステップS1009へ移行する。
【0346】
ステップS1009では、「RPfgを保存(RP_all)」の処理が実行される。
この処理では、S1008で算出した一致度をRP_allに保存し、ステップS101
0へ移行する。
【0347】
ステップS1010では、「jの更新(j←j+1)」の処理が実行される。この処理
では、yの処理を次のリテンション・タイムへ移行するためjの更新としてjにj+1を
代入し、ステップS1011へ移行する。
【0348】
ステップS1011では、「yの全リテンション・タイムで処理終了?」の判断処理が
実行される。この処理では、yの全てのリテンション・タイムの処理が終了したか否かが
判断される。終了している(YES)場合は、yの全リテンション・タイムの処理が終了
したと判断し、ステップS1012へ移行する。終了していない(NO)場合は、y中に
未処理のリテンション・タイムが残っていると判断し、ステップS1006へ移行する。
つまり、S1006〜S1011までの処理はyの全てのリテンション・タイムが処理さ
れるまで繰り返す。
【0349】
ステップS1012では、「iの更新(i←i+1)」の処理が実行される。この処理
では、xの処理を次のリテンション・タイムへ移行するためiの更新としてiにi+1を
代入し、ステップS1013へ移行する。
【0350】
ステップS1013では、「xの全リテンション・タイムで処理終了?」の判断処理が
実行される。この処理では、xの全てのリテンション・タイムの処理が終了したか否かが
判断される。終了している(YES)場合は、xの全リテンション・タイムの処理が終了
したと判断し、ステップS1014へ移行する。終了していない(NO)場合は、x中に
未処理のリテンション・タイムが残っていると判断し、ステップS1004へ移行する。
つまり、S1004〜S1013までの処理はxの全てのリテンション・タイムが処理さ
れるまで繰り返す。
【0351】
ステップS1014では、「RP_allから最小値を取得(RP_min)」の処理
が実行される。この処理では、対象FPと基準FPとのリテンション・タイム・出現パタ
ーンの全組み合わせでのRPが保存されたRP_all中の最小値を、RP_minとし
て取得し、そのRP_minを図98のS207に渡し、リテンション・タイム・出現パ
ターンの一致度計算処理を終了する。
[サブルーチン2]
図104は、図99の「対象FP帰属処理2」における「サブルーチン2」の詳細を示
すフローチャートである。この処理は、UVスペクトルの一致度を計算する。
【0352】
ステップS2001では、「x←U1、y←U2、z←0」の処理が実行される。この
処理では、図99のS302とS304で取得したUVスペクトルU1及びU2をそれぞ
れxとyに代入し、さらにUVスペクトル間の距離の二乗和(z)の初期値として0を代
入し、ステップS2002へ移行する。
【0353】
ステップS2002では、「xデータ数を取得(a)」の処理が実行される。この処理
では、xのデータ数をaとして取得し、ステップS2003へ移行する。
【0354】
ステップS2003では、UVスペクトルU1を構成する各検出波長における吸光度を
xから順番に呼び出すための初期値としてiに1を代入し、ステップS2004へ移行す
る。
【0355】
ステップS2004では、「xi番目のデータを取得(b)」の処理が実行される。こ
の処理では、UVスペクトルU1を代入したxのi番目の吸光度データをbとして取得し
、ステップS2005へ移行する。
【0356】
ステップS2005では、「yi番目のデータを取得(c)」の処理が実行される。こ
の処理では、UVスペクトルU2を代入したyのi番目の吸光度データをcとして取得し
、ステップS2006へ移行する。
【0357】
ステップS2006では、「UVスペクトル間距離(d)とUVスペクトル間距離の二
乗和(z)を算出」の処理が実行される。この処理では、UVスペクトル間距離dとUV
スペクトル間距離の二乗和zを、
d = b−c
z = z+d2
として算出し、ステップS2007へ移行する。
【0358】
ステップS2007では、「iの更新(i←i+1)」の処理が実行される。この処理
では、iの更新としてiにi+1を代入し、ステップS2008へ移行する。
【0359】
ステップS2008では、「xの全データで処理終了?」の判断処理が実行される。こ
の処理では、xとyの全てのデータの処理が終了したか否かが判断される。終了している
(YES)場合は、xとyの全データの処理が終了したと判断し、ステップS2009へ
移行する。終了していない(NO)場合は、xとyに未処理のデータが残っていると判断
し、ステップS2004へ移行する。つまり、S2004〜S2008までの処理はxと
yの全ての吸光度データが処理されるまで繰り返す。
【0360】
ステップS2009では、「xとyのUVスペクトルの一致度を計算(UV_Sim)
」の処理が実行される。この処理では、UV_Simを、前記UVスペクトル間距離の二
乗和zとxのデータ数aから、
UV_Sim = √(z/a)
として算出し、このUV_Simを図99のステップS306に渡し、UVスペクトルの
一致度計算処理を終了する。
[サブルーチン3]
図105は、図99の「対象FP帰属処理2」における「サブルーチン3」の詳細を示
すフローチャートである。この処理は、ピーク・パターンの一致度を計算する。
【0361】
ステップS3001では、「ピーク・パターン構成候補数(m)とピーク・パターン構
成ピーク数(n)を設定」の処理が実行される。この処理では、ピーク・パターンを網羅
的に作成するための設定として、ピーク・パターン構成候補数(m)とピーク・パターン
構成ピーク数(n)をそれぞれ設定し、ステップS3002へ移行する。
【0362】
ステップS3002では、「x←対象FP名、r1←R1、p1←P1、y←基準FP
名、r2←R2、p2←P2」の処理が実行される。この処理では、処理に必要とする対
象FP及び基準FPのファイル名ならびに図99のS302とS304で取得したリテン
ション・タイム及びピーク・データをそれぞれx、r1、p1とy、r2、p2に代入し
、ステップS3003へ移行する。
【0363】
ステップS3003では、「xの全リテンション・タイムを取得(a)」の処理が実行
される。この処理では、S3002でxに代入した名前のファイル(対象FP)を読み込
み、そのファイルの全リテンション・タイムをaとして取得し、ステップS3004へ移
行する。
【0364】
ステップS3004では、「yの全リテンション・タイムを取得(b)」の処理が実行
される。この処理では、S3002でyに代入した名前のファイル(基準FP)を読み込
み、そのファイルの全リテンション・タイムをbとして取得し、ステップS3005へ移
行する。
【0365】
ステップS3005では、「aからr1のピーク・パターン構成候補ピークm本のリテ
ンション・タイム(cm)及びピーク・データ(dm)を取得」の処理が実行される。こ
の処理では、aから帰属対象ピークのリテンション・タイムであるr1のピーク・パター
ン構成候補ピークm本のリテンション・タイムをcm、ピーク・データをdmとしてそれ
ぞれ取得し、ステップS3006へ移行する。なお、ピーク・パターン構成候補ピークm
本は、r1とリテンション・タイムが近いm本である。
【0366】
ステップS3006では、「bからr2のピーク・パターン構成候補ピークm本のリテ
ンション・タイム(em)及びピーク・データ(fm)を取得」の処理が実行される。こ
の処理では、bから帰属候補ピークのリテンション・タイムであるr2のピーク・パター
ン構成候補ピークm本のリテンション・タイムをem、ピーク・データをfmとしてそれ
ぞれ取得し、ステップS3007へ移行する。なお、ピーク・パターン構成候補ピークm
本は、r2とリテンション・タイムが近いm本である。
【0367】
ステップS3007では、「cm、dmをリテンション・タイム順(昇順)に並べる」
の処理が実行される。この処理では、S3005で取得したcmとdmをリテンション・
タイムが昇順になるように並び替え、ステップS3008へ移行する。
【0368】
ステップS3008では、「em、fmをリテンション・タイム順(昇順)に並べる」
の処理が実行される。この処理では、S3006で取得したemとfmをリテンション・
タイムが昇順になるように並び替え、ステップS3009へ移行する。
【0369】
ステップS3009では、「cm、dmからピーク・パターン構成ピークn本のリテン
ション・タイム(cn)及びピーク・データ(dn)を順番に取得」の処理が実行される
。この処理では、ピーク・パターン構成候補ピークm本のcm及びdmからピーク・パタ
ーン構成ピークn本のリテンション・タイムをcn、ピーク・データをdnとして順番に
取得し、ステップS3010へ移行する。
【0370】
ステップS3010では、「em、fmからピーク・パターン構成ピークn本のリテン
ション・タイム(en)及びピーク・データ(fn)を順番に取得」の処理が実行される
。この処理では、ピーク・パターン構成候補ピークm本のem及びfmからピーク・パタ
ーン構成ピークn本のリテンション・タイムをen、ピーク・データをfnとして順番に
取得し、ステップS3011へ移行する。
【0371】
ステップS3011では、「ピーク・パターンの一致度を計算(P_Sim)」の処理
が実行される。この処理では、これまでに取得した帰属対象ピークのr1とp1及びその
ピーク・パターン構成ピークn本のcnとdn、ならびに帰属候補ピークのr2とp2及
びそのピーク・パターン構成ピークn本のenとfnから、ピーク・パターンの一致度(
P_Sim)を、n=4の場合を例とすると、図66中のように
P_Sim= (|p1−p2|+1)×(|(r1−(r2+d)|+1)
+(|dn1−fn1|+1)×(|(cn1−r1)−(en1−r2)|+1)
+(|dn2−fn2|+1)×(|(cn2−r1)−(en2−r2)|+1)
+(|dn3−fn3|+1)×(|(cn3−r1)−(en3−r2)|+1)
+(|dn4−fn4|+1)×(|(cn4−r1)−(en4−r2)|+1)
として算出し、ステップS3012へ移行する。
【0372】
ステップS3012では、「P_Simを保存(P_Sim_all)」の処理が実行
される。この処理では、S3011で算出されたP_Simを順次P_Sim_allに
保存し、ステップS3013へ移行する。
【0373】
ステップS3013では、「em中のm本からn本を取り出す全組み合わせ終了?」の
判断処理が実行される。この処理では、帰属候補ピークのピーク・パターン構成候補ピー
クm本からピーク・パターン構成ピークn本を取り出す全組み合わせで処理が終了したか
否かが判断される。終了した(YES)場合は、帰属候補ピークにおいて、網羅的なピー
ク・パターンの作成とそのパターンにおける一致度の計算が終了したと判断し、ステップ
S3014へ移行する。終了していない(NO)場合は、m本からn本を取り出す組み合
わせが終了していないと判断し、ステップS3010へ移行する。つまり、S3010〜
S3013までの処理はm本からn本を取り出す全組み合わせで処理が終了するまで繰り
返す。
【0374】
ステップS3014では、「cm中のm本からn本を取り出す全組み合わせ終了?」の
判断処理が実行される。この処理では、帰属対象ピークのピーク・パターン構成候補ピー
クm本からピーク・パターン構成ピークn本を取り出す全組み合わせで処理が終了したか
否かが判断される。終了した(YES)場合は、帰属対象ピークにおいて、網羅的なピー
ク・パターンの作成とそのパターンにおける一致度の計算が終了したと判断し、ステップ
S3015へ移行する。終了していない(NO)場合は、m本からn本を取り出す組み合
わせが終了していないと判断し、ステップS3009へ移行する。つまり、S3009〜
S3014までの処理はm本からn本を取り出す全組み合わせで処理が終了するまで繰り
返す。
【0375】
ステップS3015では、「P_Sim_allから最小値を取得(P_Sim_mi
n)」の処理が実行される。この処理では、S3012で保存したP_Sim_allの
最小値をP_Sim_minとして取得し、このP_Sim_minを図99のステップ
S307に渡し、ピーク・パターンの一致度計算処理を終了する。
[S6:対象FPタイプ2の作成処理]
図106は、図93ステップS6の「FP_type2作成」の詳細を示すフローチャート
である。
【0376】
ステップS601では、「対象FPを読み込む」の処理が実行される。この処理では、
前記対象FP43(図119のFPのデータ例187参照)のファイルを読み込み、ステ
ップS602へ移行する。
【0377】
ステップS602では、「ピーク・データ特徴量ファイルを読み込む」の処理が実行さ
れる。この処理では、前記対象FP43に関し、ピーク・データ特徴量のファイル(図1
24のピーク・データ特徴量のファイル例199参照)を読み込み、ステップS603へ
移行する。ピーク・データ特徴量ファイル例は、前記対象FPピーク特徴量作成部7によ
り、基準群FP45のピークに帰属された対象FP43のピーク情報を含んでいる。
【0378】
ステップS603では、「対象FPとピーク・データ特徴量ファイルを比較」の処理が
実行される。この処理では、対象FP43のファイルとピーク・データ特徴量ファイルと
が比較される。この比較により、基準群FP45のピークに帰属されなかった対象FP4
3の残存ピークが特定され、ステップS604へ移行する。
【0379】
ステップS604では、「対象FPのみに存在するピークのリテンション・タイムとピ
ーク・データを出力」の処理が実行される。この処理では、対象FP43の残存ピークの
リテンション・タイムとピーク・データとが、対象FPタイプ2のデータ・ファイル(図
125の基準及び対象FPタイプ2のデータ例201参照)に出力される。
[S7:領域分割による対象FP_type2の特徴量化処理]
図107は、図94ステップS7の「領域分割による対象FP_type2の特徴量化処理
」の詳細を示すフローチャートである。
【0380】
ステップS701では、「FP空間の領域分割条件の設定」の処理が実行される。この
処理では、対象FPタイプ2の領域を分割するため、縦・横の線(分割線)1本目の位置
がそれぞれ1個設定される。この設定により、FP空間に対し、例えば図76、図77の
ように、縦・横分割線(1本目)が分割線として設定される。但し、対象FPタイプ2の
場合、領域の位置変更はないので、振幅は関係しない。ステップS701で縦・横分割線
(1本目)が設定されるとステップS702へ移行する。
【0381】
ステップS702では、「FP空間の領域分割パターンの作成」の処理が実行される。
この処理では、縦・横分割線1本目の全組み合わせで2本目以降の分割線の位置が設定さ
れ、分割パターン(1個)が作成される。この処理により、FP空間に対し、例えば図7
8のように、縦・横分割線による領域分割が行われる。領域分割が行われるとステップS
703へ移行する。
【0382】
ステップS703では、「対象FP_type2のファイルを読み込む」の処理が実行され
る。この処理により、対象FPタイプ2のファイルが読み込まれ、ステップS704へ移
行する。
【0383】
ステップS704では、「FP空間全体の総ピーク・データを算出」の処理が実行され
る。この処理では、例えば、図79のように分割された各格子145全てに存在するピー
クの高さ合計が算出され(図81)、ステップS705へ移行する。
【0384】
ステップS705では、「FP空間を分割パターンで分割」の処理が実行される。、こ
の処理では、S702で設定された領域分割パターンによりS703で読み込まれた対象
FPタイプ2を図79のように領域分割し、ステップS706へ移行する。
【0385】
ステップS706では、「分割された領域内でのピーク・データの存在割合を算出」の
処理が実行される。この処理では、各格子145内でのピーク存在割合が前記特徴量=領
域内ピーク高さ合計/全ピーク高さ合計として算出される。算出結果は、図86のように
なる。算出が終了するとステップS707へ移行する。
【0386】
ステップS707では、「各領域の存在割合を特徴量として出力」の処理が実行される
。この処理では、1通りでの対象FP領域分割特徴量ファイル(図126で示す1通りで
の対象FP領域分割特徴量ファイル例203参照)が出力される。
[S8:ピーク・データ特徴量と領域分割特徴量の統合]
図108は、図94ステップS8の「ピーク・データ特徴量と領域分割特徴量の統合」
の詳細を示すフローチャートである。
【0387】
ステップS801では、「ピーク・データ特徴量ファイルを読み込む」の処理が実行さ
れる。この処理により、図124で示すピーク・データ特徴量のファイル例199と同様
のファイルが読み込まれ、ステップS802へ移行する。
【0388】
ステップS802では、「領域分割特徴量ファイルを読み込む」の処理が実行される。
この処理により、図126で示す対象FP領域分割特徴量ファイル203が読み込まれ、
ステップS803へ移行する。 ステップS803では、「2つの特徴量データを横1行
のデータとして統合」の処理が実行される。この処理により、ピーク・データ特徴量のフ
ァイル(図124で示
すピーク・データ特徴量のファイル例199参照)及び対象FP領域分割特徴量ファイル
(図126で示す対象FP領域分割特徴量ファイル例203参照)が一行のである対象F
P特徴量統合ファイル(図127の対象FP特徴量統合ファイル例205参照)として統
合され、ステップS804へ移行する。
【0389】
ステップS804では、「統合したデータを出力」の処理が実行される。この処理では
、図127の対象FP特徴量統合ファイル205が出力される。
[基準FP帰属結果特徴量統合ファイルの作成]
対象FP特徴量統合データを基準FP特徴量統合データと比較するための基準FP特徴
量統合ファイルは、図109〜図116のように作成される。
【0390】
図109、図110は、基準FP特徴量統合ファイルを作成するためのフローチャート
であり、基準FP作成部31のFP作成機能と、基準FPピーク帰属部15の基準FPピ
ーク帰属機能と、基準FP帰属結果統合部17の基準FP帰属結果統合機能と、基準FP
ピーク特徴量作成部19の基準FPピーク特徴量作成機能と、基準FPタイプ2作成部2
1の基準FPタイプ2作成機能と、基準FP領域分割特徴量作成部23の基準FP領域分
割特徴量作成機能と、基準FP特徴量統合部25の基準FP特徴量統合機能とをコンピュ
ータに実現させる。
【0391】
基準FP作成機能は、ステップS10001で実現される。基準FPピーク帰属機能は
、ステップS10002、S10003、S10004で実現される。基準FP帰属結果
統合機能は、ステップS10005で実現される。基準FPピーク特徴量作成機能は、ス
テップS10006で実現される。基準FPタイプ2作成機能は、ステップS10007
で実現される。基準FP領域分割特徴量作成機能は、ステップS10008で実現される
。基準FP特徴量統合機能は、ステップS10009で実現される。
【0392】
S10001〜S10004は、図93、94の対象FP特徴量統合ファイルの作成に
係るS1〜S4に対応し、S1007〜S10009は、同S6〜S8に対応している。
【0393】
ステップS10001は、3Dクロマト及び特定の検出波長におけるピーク情報を入力
データとして「FP作成処理」が実行される。
【0394】
3Dクロマト及びピーク・データ共に、評価基準となる複数の評価基準薬剤(基準漢方
薬)ごとに備えられている。
【0395】
ステップS10001では、コンピュータのFP作成部3の基準FP作成部31(図1
)が機能し、3Dクロマト及びピーク情報から基準FPが対象FP43(図2)と同様に
作成され、基準FPのデータがファイルとして出力される。
【0396】
ステップS10002は、ステップS10001で出力した全基準FPを入力として、
「基準FP帰属処理1」が実行される。
【0397】
ステップS10002では、コンピュータの基準FPピーク帰属部15が機能し、全基
準FPを対象とし、選択した組み合わせ且つ順番で帰属スコアを算出するために全基準F
Pから組み合わせを選択してステップS10003へ移行する。
【0398】
ステップS10003は、選択した基準FPの組み合わせを入力とし、「基準FP帰属
処理2」が実行される。
【0399】
ステップS10003では、ステップS2で選定した基準FPの組み合わせの全ピーク
で、図23〜図61のように網羅的にピーク・パターンを作成し、次にそれらピーク・パ
ターンの一致度(図63または図64のP_Sim)を算出する。また、選定した基準F
Pの組み合わせのピーク間でUVスペクトルの一致度(図66のUV_Sim)を算出す
る。さらにこれら2つの一致度から帰属候補ピークの一致度(図67のSCORE)を算
出する。その算出結果は、判定結果ファイル(図120の判定結果ファイル例189参照
)として出力される。
【0400】
ステップS10004は、ステップS10003で出力した判定結果ファイルを入力と
し、「基準FP帰属処理3」が実行される。
【0401】
ステップS10004では、選定した基準FPの組み合わせ間で、帰属候補ピークの一
致度(SCORE)をもとに選定した基準FPの組み合わせ間で対応するピークを特定す
る。その結果は、基準FPごとに基準FP帰属データとして出力される。
【0402】
ステップS10005は、ステップS10004で出力した全基準FP帰属データを入
力とし、「基準FP帰属結果統合処理」が実行される。
【0403】
ステップS10005では、コンピュータの基準FP帰属結果統合部17が機能し、、
基準FPピーク帰属部15で特定した各基準FPのピーク対応関係を参照し、全基準FP
帰属データを統合して基準FP対応表を作成し、ステップS10006へ移行する。
ステップS10006では、コンピュータの基準FPピーク特徴量作成部19が機能し、
基準FP帰属結果統合部17で作成された基準FP対応表を基に全基準FPによるピーク
特徴量(基準群FP)を作成する。この基準FPピーク特徴量作成部19での処理は、基
準FP対応表の各ピーク(列)で統計量(最大値、最小値、中央値、平均値、etc)を
算出し、その情報を基にピーク(列)を選定する。選定したピーク(列)は、基準群FP
(図123の基準群FP例197参照)として出力される。
【0404】
ステップS10007は、ステップS10006で出力した基準群FPと全基準FPと
を入力とし、「FP_type2の作成」の処理が実行される。
【0405】
ステップS10007では、コンピュータの基準FPタイプ2作成部21が対象FPタ
イプ2作成部9と同様に機能し、図93のステップS6と同様にして、複数の各基準FP
から前記特徴量化されたピークをそれぞれ除いて残ったピークとそのリテンション・タイ
ムとで構成されるFPを基準FPタイプ2としてそれぞれ作成する(図125のFPタイ
プ2ファイル例201参照)。
【0406】
ステップS10008では、「基準FP_type2の特徴量化処理」が実行される。
この処理では、コンピュータの基準FP領域分割特徴量作成部23が機能し、図73〜図
85の領域分割により、基準FP領域分割特徴量が作成される。その結果は、基準typ
e2群FP(図128の基準type2群FP例207参照)として出力される。
【0407】
ステップS10009では、「基準データ作成処理」の処理が実行される。この処理で
は、コンピュータの基準FP特徴量統合部25が機能し、基準FPピーク特徴量作成部1
9で作成された基準群FPと基準FP領域分割特徴量作成部23で作成された基準typ
e2群FPとを統合して全基準FPの特徴量データを作成する。その結果は、基準群統合
データ(図129の基準群統合データ例209参照)として出力される。
[S10005:基準FP対応表の作成]
図111、図112は、図110ステップS10005の「基準FP帰属結果統合処理
(基準FP対応表の作成)」の詳細を示すフローチャートである。
【0408】
ステップS10101では、「帰属順番1番の帰属データを統合データとして読み込む
」の処理が実行される。この処理では、S10004で1番目に帰属処理しピークの対応
関係を特定した基準FP帰属データを統合データとして読み込み、ステップS10102
へ移行する。
【0409】
ステップS10102では、「帰属データ2番目以降を順番に読み込む」の処理が実行
される。この処理では、まずS10004で2番目に帰属処理しピークの対応関係を特定
した基準FP帰属データを統合データのとして読み込み、ステップS10103へ移行す
る。
【0410】
ステップS10103では、「統合データと帰属データを共通するピーク・データで統
合」の処理が実行される。この処理では、統合データと帰属データで共通に存在する基準
FPのピーク・データをもとに2つのファイルを統合し、その結果で統合データを更新し
、ステップS10104へ移行する。
【0411】
ステップS10104では、「帰属データ中の全てのピークを統合データに追加?」の
判断処理が実行される。この処理では、帰属データの全てのピークが統合データに追加さ
れたか否かが判断される。追加された(YES)場合は、ステップS10105へ移行す
る。追加されていないピーク(欠落ピーク)がある(NO)場合は、この欠落ピークを統
合データに追加処理するため、ステップS10107へ移行する。尚、欠落ピークの統合
データへの追加処理(S10107−S10120)は、前記S5(対象FP帰属処理4
)におけるステップS504−S517と同様の処理が行われる。
【0412】
ステップS10121では、「統合データにTEMP2のデータを追加(全てのリテン
ション・タイムとピーク)」の処理が実行される。この処理では、TEMP2の全てのリ
テンション・タイム(R3)とピーク(P1)を統合データの該当箇所に追加し、ステッ
プS10122へ移行する。
【0413】
ステップS10122では、「閾値2 ← 初期値、TEMP2内のデータを全て削除
」の処理が実行される。この処理では、UV_Simに更新されている閾値2を初期値に
戻し、全欠落ピークのリテンション・タイムやピークなどのデータが入ったTEMP2か
ら全てのデータを削除し、ステップS10104へ戻る。
【0414】
ステップS10104から移行するステップS10105では、「全ての帰属データの
処理終了?」の判断処理が実行される。この処理では、全基準データの処理が終了したか
否かが判断される。処理が終了(YES)の場合は、全帰属データの統合結果である基準
FP対応表を出力するため、ステップS10106へ移行する。全ての処理が終了してい
ない(NO)の場合は、ステップS10102へ戻り、残りの帰属データを順次処理する

【0415】
ステップS10106では、「統合データを出力(基準FP対応表)」の処理が実行さ
れる。この処理では、全帰属データを統合した結果を基準FP対応表として出力し、基準
FP対応表の作成処理を終了する。
[S10006:ピーク特徴量化処理]
図113は、図109ステップS10006の「ピーク特徴量化処理(基準群FPの作
成)」の詳細を示すフローチャートである。
【0416】
ステップS10201では、「基準FP対応表を読み込む」の処理が実行される。この
処理では、S10005で作成した基準FP対応表を読み込み、ステップS10202へ
移行する。
【0417】
ステップS10202では、「各ピーク(列)で統計量を算出」の処理が実行される。
この処理では、基準FP対応表の各ピーク(列)で統計量(最大値、最小値、中央値、平均
値、分散、標準偏差、存在数、存在率)を算出し、ステップS10203へ移行する。
【0418】
ステップS10203では、「算出した統計量を参考にピーク(列)を選定」の処理が
実行される。この処理では、S10102で算出した統計量を参考にピークを選定し、ス
テップS10204へ移行する。
【0419】
ステップS10204では、「選定したピーク(列)を出力(基準群FP)」の処理が
実行される。この処理では、統計量によりピーク(列)の選定結果を基準群FPとして出
力し、基準群FPの作成処理を終了する。
【0420】
図123に前記のように出力する基準FP対応表例197を示す。
[S10007:基準FPタイプ2の作成処理]
図114は、図110ステップS10007の「基準FP編集処理(基準FP_type2
の作成)」の詳細を示すフローチャートである。
【0421】
ステップS10301では、「基準FPを順番に読み込む」の処理が実行される。この
処理では、複数の基準FPのファイル(図119のFPのデータ例187参照)を読み込
み、ステップS10302へ移行する。
【0422】
ステップS10302では、「基準群FPを読み込む」の処理が実行される。この処理
では、基準群FPのデータ・ファイル(図123の基準群FPのデータ例197参照)が
読み込まれ、ステップS10303へ移行する。
【0423】
ステップS10303では、「基準群FPから基準FPのピーク・データ特徴量を取り
出す」の処理が実行される。この処理では、基準群FP45のファイルから基準FPの帰
属処理されたピーク・データ特徴量を取り出し、ステップS10304へ移行する。
【0424】
ステップS10304では、「基準FPと取り出したピーク・データ特徴量ファイルを
比較」の処理が実行され、基準FPがピーク・データ特徴量ファイルと比較され、ステッ
プS10305へ移行する。
【0425】
ステップS10305では、「基準FPのみに存在するピークのリテンション・タイム
とピーク・データを出力」の処理が実行され、基準FPからピーク・データ特徴量ファイ
ルのピークが除かれて、ステップS10306へ移行する。
【0426】
ステップS10306では、「全基準FPで処理終了?」の判断処理が実行される。こ
の処理では、全基準FPで処理終了したときは(YES)、S10007は終了し、全基
準FPで処理終了していなければ(NO)、S10301−S10305が繰り返される
。したがって、複数の基準FPが順に処理され、各基準FPからピーク・データ特徴量フ
ァイルのピークが除かれて基準FPタイプ2のファイル(図125に示す対象及び基準F
Pタイプ2のデータ例201参照)が作成される。
[S10008:領域分割による基準FP_type2の特徴量化処理]
図115は、図110ステップS10008の「領域分割による基準FP_type2の特
徴量化処理」の詳細を示すフローチャートである。
【0427】
ステップS10401では、「FP空間の領域分割条件の設定」の処理が実行される。
この処理では、基準FPタイプ2の領域を分割するため、縦・横の線(分割線)1本目の
位置がそれぞれ複数個設定される。この設定により、FP空間に対し、例えば図76、図
77のように、縦・横分割線(1本目)141、143が分割線として複数個設定される
。縦・横分割線(1本目)141、143が複数個設定されるとステップS10402へ
移行する。
【0428】
ステップS10402では、「FP空間の領域分割パターンの設定」の処理が実行され
る。この処理では、縦・横分割線1本目の全組み合わせで各2本目以降の分割線の位置が
設定され、分割パターン(m×n個)が作成される。この設定により、FP空間に対し、
例えば図78のように、縦・横分割線141、143による領域分割のパターンが複数設
定される。領域分割が行われるとステップS10403へ移行する。
【0429】
ステップS10403では、「基準FP_type2のファイルを順番に読み込む」の処理
が実行される。この処理により、基準FPタイプ2のファイルが読み込まれ、ステップS
10404へ移行する。
【0430】
ステップS10404では、「FP空間全体の総ピーク・データを算出」の処理が実行
される。この処理では、例えば、図79のように分割された各格子145全てに存在する
ピークの高さ合計が算出され(図81)、ステップS10405へ移行する。
【0431】
ステップS10405では、「FP空間を各分割パターンで順番に分割」の処理が実行
される。この処理では、S10402で設定された複数の領域分割パターンでFP空間が
順次分割され、ステップS10406へ移行する。
【0432】
ステップS10406では、「分割された領域内でのピーク・データの存在割合を算出
」の処理が実行される。この処理では、例えば、図79のように分割された各格子145
全てに存在するピークの高さ合計が算出され(図81)、図79の各格子145内でのピ
ーク存在割合が前記特徴量=領域内ピーク高さ合計/全ピーク高さ合計としてされる。算
出結果は、例えば図83〜図85のようになる。算出が終了するとステップS10408
へ移行する。
【0433】
ステップS10408では、「全分割パターンで分割終了」の処理が実行される。この
処理では、S10402で設定された複数の全領域分割パターンでの特徴量処理が終了し
たか否かの判断が行われる。特徴量処理が終了すれば(YES)、ステップS10409
へ移行し、特徴量処理が終了していなければ(NO)、ステップS10405へ移行する
。S10405〜S10408は、全領域分割パターンでの特徴量処理が終了するまで繰
り返される。
【0434】
ステップS10409では、「全基準FP_type2で処理終了?」の判断処理が実行さ
れる。この処理では、複数の基準FPごとに作成された複数の基準FPタイプ2の全てに
おいて特徴量処理が終了したか否かの判断が行われる。全基準FPタイプ2が終了すれば
(YES)、S10008は終了し、全基準FPタイプ2が終了していなければ(NO)
、ステップS10403へ移行する。S10403〜S10409は、基準FPタイプ2
での特徴量処理が終了するまで繰り返される。
【0435】
図128に、基準type2群FP例207を示す。
[S10009:基準データ作成処理]
図116は、図110ステップS10009の「基準データの作成処理」の詳細を示す
フローチャートである。
【0436】
ステップS10501では、「領域分割特徴量ファイルを読み込む」の処理が実行され
る。この処理により、基準FP領域分割特徴量ファイル(図128で示す基準type2
群FP例207参照)が読み込まれ、ステップS10502へ移行する。
【0437】
ステップS10502では、「領域分割した際の分割パターン数を算出」の処理が実行
される。この処理により、領域分割の分割パターン数が算出される。分割パターン数は、
図70〜図80での説明のように、例えば100通りと算出される。この算出後にステッ
プS10503へ移行する。
【0438】
ステップS10503では、「基準群FPを読み込む」の処理が実行され、基準群FP
が読み込まれてステップS10504へ移行する。
【0439】
ステップS10504では、「基準群FPの各行を分割パターン数分複製したファイル
(基準群FP2)を作成」の処理が実行される。この処理では、基準群FPと領域分割特
徴量ファイルとを統合するために基準群FPの行を分割パターン数に合わせて複製し、基
準群FP2を作成する。例えば、図123の基準群FPのファイル例197を、図129
の基準群統合データ例209のピーク・データ特徴量(基準群FP2)と対応するように
複製する。この複製後に、ステップS10505へ移行する。
【0440】
ステップS10505では、「基準群FP2と領域分割特徴量ファイルを行ごとに統合
」の処理が実行される。この処理では、S10504で複製された基準群FP2のデータ
と領域分割特徴量ファイルのデータとが行ごとに統合され、ステップS10506へ移行
する。
【0441】
ステップS10506では、「統合したデータを出力」の処理が実行される。この処理
では、統合結果による基準FP特徴量統合ファイル(図129の基準群統合データ例20
9参照)が出力される。
[実施例1の効果]
本発明実施例1の多成分物質の評価方法では、前記FP作成工程148と、対象FPピ
ーク帰属工程149と、対象FPピーク特徴量作成工程151と、対象FPタイプ2作成
工程153と、対象FP領域分割特徴量作成工程155と、対象FP特徴量統合工程15
7と、基準FPピーク帰属工程159と、基準FP帰属結果統合工程161と、基準FP
ピーク特徴量作成工程163と、基準FPタイプ2作成工程165と、基準FP領域分割
特徴量作成工程167と、基準FP特徴量統合工程169と、評価工程171とを備えて
いる。
【0442】
前記FP作成工程148は、前記対象FP作成工程173と、基準FP作成工程175
とを備えている。
【0443】
前記対象FPピーク帰属工程149は、前記基準FP選定工程177と、ピーク・パタ
ーン作成工程179と、ピーク帰属工程181とを備えている。
【0444】
評価対象となる多成分薬剤の3Dクロマト41をこれら7工程(178、149、15
1、153、155、157、171)で処理することで、評価対象薬剤の品質評価の精
度及び効率をより向上させることができる。
【0445】
特に、対象FP43と複数の基準FPとに基づき特徴量化された対象FPピーク特徴量
を作成し、この特徴量化から漏れた対象FP43の残存ピークとして対象FPタイプ2を
作成し、この対象FPタイプ2を複数の領域に分割し各領域に存在するピークの存在率か
ら対象FP領域分割特徴量を作成し、対象FPピーク特徴量及び対象FP領域分割特徴量
を統合して対象FP統合特徴量を作成し、対象FP統合特徴量とこの対象FP統合特徴量
に対応し評価基準となる多成分物質の複数の基準FPに基づく基準FP統合特徴量とを比
較評価するため、対象FPピーク特徴量に含まれなかった対象ピークのピークをも含めて
評価することができ、評価対象薬剤の品質評価の精度を確実に向上させることができる。
【0446】
対象FP作成工程173で作成された対象FP43は、3Dクロマト41と同様に三次
元の情報(ピーク、リテンション・タイム及びUVスペクトル)で構成している。そのた
め、その薬剤特有の情報をそのまま継承したデータである。それにも係らず、データ容量
は約1/70に圧縮されているため、3Dクロマト41に比較して、処理すべき情報量を
大幅に減少させることができ処理速度を速めることができる。
【0447】
対象FP作成工程173は、検出波長の異なる複数のFPを合成したFPを作成する。
これにより、1つの波長で全ての成分を検出できない成分が組み合わさった多成分薬剤で
あっても、複数の検出波長のFPを合成することで、全ての成分を含んだ品質評価が可能
となる。
【0448】
対象FP作成工程173は、3Dクロマトで検出された全ピークを含んだFPを作成す
る。このため、多成分薬剤である漢方薬の品質評価に適している。
【0449】
基準FP選定工程177では、対象FPの帰属に適した基準FPをFP間のリテンショ
ン・タイム・出現パターンを比較し、パターンの一致度が良い基準FP選定する。これに
より、ピーク帰属工程181において、パターンが類似したFP間で帰属処理ができるた
め、精度の高い帰属が可能となる。
【0450】
ピーク・パターン作成工程179では、帰属対象ピーク及び帰属候補ピークそれぞれで
複数の周辺ピークを使って網羅的にピーク・パターンを作成する。これにより、対象FP
と基準FPでFP全体のパターンが多少異なっていても、ピーク帰属工程181で精度の
高い帰属が可能となる。
【0451】
ピーク帰属工程181では、ピーク・パターン作成工程179で作成されたピーク・パ
ターンの一致度に加え、帰属対象ピークと帰属候補ピークのUVスペクトルの一致度も加
味して、帰属すべきピークを特定している。そのため、精度の高い帰属が可能となる。
【0452】
ピーク帰属工程181では、対象FPの全ピークを基準FPのピークへ一斉帰属する。
そのため、効率のよい帰属処理が可能となる。
【0453】
評価工程171では、多次元データである多成分で構成されたFPをMT法でMD値と
して1次元に集約し、複数の評価対象ロットを簡単に比較評価する。このため、複数の成
分で構成される多成分系薬剤の評価に適している。
【0454】
対象FP領域分割特徴量作成工程155は、シグナル強度軸に平行な複数の縦分割線
141と時間軸に平行な複数の横分割線143とにより前記領域の分割を行う。
【0455】
このため、領域分割を簡素化し、処理速度を速めることができる。
【0456】
複数の横分割線143は、シグナル強度が増大する方向へ等比間隔で設定された。
【0457】
このため、ピーク密度の高い部分で領域を細分化することができ、領域分割によるピー
ク存在率の算出を効率的に行わせることができる。
【0458】
多成分物質の評価方法は、さらに前記基準FP作成工程175と、基準FPピーク帰属
工程159と、基準FP帰属結果統合工程161と、基準FPピーク特徴量作成工程16
3と、基準FPタイプ2作成工程165と、基準FP領域分割特徴量作成工程167と、
基準FP特徴量統合工程169とを備えた。
【0459】
このため、基準FPピーク特徴量と基準FP領域分割特徴量とを統合した基準FP統合
特徴量を作成し、評価工程171です対象FP統合特徴量と比較することができ、評価対
象薬剤の品質評価の精度及び効率をより向上させることができる。
【0460】
基準FP領域分割特徴量作成工程167は、各領域の位置を変更し変更前後で基準FP
領域分割特徴量を作成することができる。
【0461】
このため、分析条件の僅かなバラツキ等により、リテンション・タイムやピーク高さが
変動し、単一パターンでは各格子145内の値が大きく変動する場合でも、この変動に係
わらず各格子145内のピークの存在量を捉えることができ、評価対象薬剤の品質評価の
精度及び効率をより向上させることができる。
【0462】
基準FP領域分割特徴量作成工程167は、シグナル強度軸に平行な複数の縦分割線
141と時間軸に平行な複数の横分割線143とにより前記領域の分割を行う。
【0463】
このため、領域分割を簡素化し、処理速度を速めることができる。
【0464】
複数の横分割線143は、シグナル強度が増大する方向へ等比間隔で設定された。
【0465】
このため、ピーク密度の高い部分で領域を細分化することができ、領域分割によるピー
ク存在率の算出を効率的に行わせることができる。
【0466】
基準FP領域分割特徴量作成工程167は、各縦・横分割線141、143を設定範囲
内で平行移動させるように位置を変更設定することで各領域145の位置を変更する。
【0467】
このため、各領域145の位置変更を簡単な処理で効率的に行わせることができる。
【0468】
本発明実施例の多成分薬剤の評価プログラムは、各機能をコンピュータに実現させ、評
価の精度及び効率をより向上させることができる。
【0469】
本発明実施例の多成分薬剤の評価装置は、各部3、5、7、9、11、13、15、1
7、19、21、23、25、27を作用させ、評価の精度及び効率をより向上させるこ
とができる。
[ピーク・パターンの一致度計算(P_Sim)の変形例]
図63、図64、図105でのピーク・パターンの一致度計算(P_Sim)は、FPをピーク高さで作成した上記実施例の場合について適用し、比較対象のピーク高さの差に基づいて計算した。
【0470】
一方、本発明のパターン又はFPの特徴量作成方法、作成プログラム、及び作成装置おけるピークについては、上記のようにシグナル強度(高さ)の極大値を意味する場合と、シグナル強度の面積値(ピーク面積)を高さで表現したものを意味する場合の何れも含めることができる。
この場合、FPをピーク面積で作成するときも、面積値を高さで表現してFPを作成するため、FPとしては上記実施例のピーク高さで作成する場合と同様の表現となる。このため、FPをピーク高さで作成した場合と同様の上記実施例の処理により同様に評価することができる。
【0471】
但し、FPをピーク面積で作成したときは、比較対象のピーク値の差が大きくなるため、比に基づいた計算とし、取り扱いを容易とするのが適している。
【0472】
以下に、比に基づいて計算するピーク・パターンの一致度(P_Sim)を、n=2、n=4の場合を例として示す。
n=2の場合
P_Sim= (p1/p2♯1)×(|(r1−(r2+d)|+1)
+(dn1/fn1♯1)×(|(cn1−r1)−(en1−r2)|+1)
+(dn2/fn2♯1)×(|(cn2−r1)−(en2−r2)|+1)
n=4の場合
P_Sim= (p1/p2♯1)×(|(r1−(r2+d)|+1)
+(dn1/fn1♯1)×(|(cn1−r1)−(en1−r2)|+1)
+(dn2/fn2♯1)×(|(cn2−r1)−(en2−r2)|+1)
+(dn3/fn3♯1)×(|(cn3−r1)−(en3−r2)|+1)
+(dn4/fn4♯1)×(|(cn4−r1)−(en4−r2)|+1)
ここに、#1は、比較対象の2つの値の比(大きい値/小さい値) であることを示している。
【0473】
なお、FPをピーク高さで作成した場合にも、比に基づいてピーク・パターンの一致度(P_Sim)を計算することができ、FPをピーク面積で作成した場合にも、上記ピーク高さの差同様に、ピーク面積値の差に基づいてピーク・パターンの一致度(P_Sim)を得ることができる。
[サブルーチン2の変形例]
図130は、図104に代えて適用するサブルーチン2の変形例に係り、図99の「対象FP帰属処理2」における「サブルーチン2」の変形例の詳細を示すフローチャートである。この変形例に係る処理により、UVスペクトルの一致度を計算する。
【0474】
本サブルーチン2の変形例では、図104のサブルーチン2でのRMSDにUVパターンの移動平均の傾き情報(DNS)を加味する処理ができるようにした。DNSは、後述の式で表わされ、UVパターンにおける移動平均値の移動傾きを2つのパターンで比較した時の傾き符号( +/− )の不一致数として定義される。すなわち、DNSは、UVパターンの極大、極小値の位置の一致具合を評価する値である。
このDNSの情報を前記RMSDに加味することで、UVスペクトルの波形の一致度をより正確に算出することができる。
【0475】
図130の変形例に係るサブルーチン2において、ステップS2001〜S2008までは、図104のサブルーチン2とほぼ同一である。但し、ステップS2001では、区間1←w1、区間2←w2の初期設定が追加して行われ、後述する移動平均、移動傾きの計算の区間に用いられる。
【0476】
本変形例のサブルーチン2では、DNS加味のためにステップS2010〜S2013を追加し、ステップS2009AでDNSを加味した一致度の計算を可能とした。
【0477】
ステップS2010では、「DNSを加味する?」の判断処理が実行され、DNSを加味すると判断されたときは(YES)、ステップS2011へ移行し、DNSを加味しないと判断されたときは(NO)、ステップS2009Aへ移行する。DNSを加味するか否かの起因は、例えば初期の設定による。例えば、FPを、ピーク面積で作成したときはDNS加味、FPをピーク高さで作成したときは、DNS非加味に設定する。
但し、FPをピーク高さで作成した上記実施例の場合にも、DNSを加味する処理でUVパターン一致度を計算することができ、FPをピーク面積で作成した場合にも、DNSを加味しない上記実施例の処理でUVパターン一致度を計算することができる。
【0478】
ステップS2011では、「区間1(w1)でxとyの移動平均を計算」の処理が実行され、区間1(w1)における移動平均が求められる。区間1(w1)は、UVデータの波長に関する区間であり、ステップS2001の初期設定においてw1=3であれば区間1(3)となり、3個の波長におけるUV強度の平均が求められる。具体的には図131の図表で後述する。
ステップS2012では、「区間2(w2)でxとyの移動傾きを計算」の処理が実行され、区間2(w2)における移動傾きが求められる。区間2(w2)は、ステップS2011で求めた移動平均に関する区間であり、ステップS2001の初期設定においてw2=3であれば区間2(3)となり、ステップS2011で計算した移動平均に基づき、3個の移動平均に渡る傾きの(±)が求められる。具体的には図101の図表で後述する。
【0479】
ステップS2013では、「xとyの移動傾きの符号の不一致数を算出(DNS)」の処理が実行され、ステップS2012で計算された移動傾きから傾きの(±)の一致数が計算される。移動傾きの+は、図66において右肩上がりを表し、移動傾きの−は、同右肩下がりを表す。
【0480】
ステップS2013からステップS2009Aへ移行すると、このステップS2009Aの処理においてDNSを加味した一致度の計算が行われる。
【0481】
ステップS2009Aでは、「xとyのUVスペクトルの一致度を計算(UV_Sim)
」の処理が実行され、DNSを加味した一致度の計算では、UV_Simを、前記UVスペクトル間距離の二乗和zとxのデータ数aとDNSとから、
UV_Sim = √(z/a)×1.1DNS
として算出し、このUV_Simを図81のステップS306に渡し、UVスペクトルの
一致度計算処理を終了する。
【0482】
なお、ステップS2010からステップS2009Aへ移行した場合の処理は、図86のステップS2009と同一である。
【0483】
図131は、移動平均及び移動傾きの計算例を示す図表である。
【0484】
図131の上段は、UVデータ例、中段は、移動平均の計算例、下段は、移動傾きの計算例を示す。UVデータ例は、具体的な数値に代え、UV強度をa1〜a7で表記している。例えば、220nmのUV強度がa1、221nmのUV強度がa2等となる。移動平均の計算例及び移動傾きの計算例も具体的数値に代え、UV強度a1〜a7を使用している。
【0485】
移動平均は、区間1(w1=3)を例とし、ステップS2012(図130)において、区間(a1、a2、a3)、区間(a2、a3、a4)、・・・毎に計算した値としてm1、m2、・・・が計算される。移動傾きも区間2(3)を例とし、ステップS2013(図130)において、区間(m1、m2、m3)、区間(m2、m3、m4)、・・・毎に計算した値としてs1、・・・が計算される。例えば、移動平均の差m3−m1が移動傾きとなり、その(±)を取り出す。
【0486】
こうして、FPをピーク面積で作成したときは、基準群FPへの帰属処理ならびに基準FP帰属結果統合処理において、DNSを加味した処理でUVパターン一致度を計算することができる。この計算により、図66で示す対応する2点の距離(dis)がピーク高さで作成したFPに比較して大きくなっても、取り扱いを容易とし、UVパターン一致度を正確に計算することができる。
[その他]
本発明実施例のパターン又はFPの特徴量作成方法、作成プログラム、及び作成装置では、FPをピーク面積で作成するときは、シグナル強度軸を面積値軸、シグナル強度を面積値として同様に適用することができる。
【0487】
本発明実施例は、多成分薬剤として漢方薬の評価について適用したが、その他の多成分
物質の評価にも適用することができる。
【0488】
本実施例では、対象FPタイプ2又は基準FPタイプ2について領域分割特徴量を作成
したが、対象FP、基準FPについて領域分割特徴量を作成することも可能である。
【0489】
また、時系列でピークが変化するパターンを複数の領域に分割し各領域に存在するピー
クの存在率又は存在量からパターン領域分割特徴量を作成する対象パターン領域分割特徴
量作成工程を備えるものであれば、広く適用することができる。
【0490】
上記実施例のFPは、3Dクロマト上での全ピークを対象としたが、細かいデータ、例えば3Dクロマト上でピーク面積が5%未満のピークを除いてFPを作成することもできる。
【0491】
上記実施例のFPは、ピーク高さに基づいて作成し、図87〜図91の評価を得たが、ピーク面積に基づいてFPを作成した場合についても、ピーク高さに基づいて作成した上記実施例同様の手順によりMT法によりMD値を求め、図87〜図91と同様に評価を得ることができる。
【0492】
クロマトは、3Dクロマトに限らず、FPとしてUVスペクトルを除いたピークとそのリテンション・タイムとで構成されたものを用いることもできる。この場合、UVスペクトルの一致度を除き、上記実施例と同様に行わせることができる。
【符号の説明】
【0493】
1 多成分薬剤の評価装置(パターンの特徴量作成装置、FPの特徴量作成装置)
3 FP作成部
5 対象FPピーク帰属部
7 対象FPピーク特徴量作成部
9 対象FPタイプ2作成部
11 対象FP領域分割特徴量作成部
13 対象FP特徴量統合部
15 基準FPピーク帰属部
17 基準FP帰属結果統合部
19 基準FPピーク特徴量作成部
21 基準FPタイプ2作成部
23 基準FP領域分割特徴量作成部
25 基準FP特徴量統合部
27 評価部
31 基準FP作成部
33 基準FP選定部
35 ピーク・パターン作成部
37 ピーク帰属部
39 漢方薬
41 3Dクロマト
42 対象FPに含まれるピークのUVスペクトル
43 対象FP
45 基準群FP
47 基準群FPに帰属した対象FP
49 対象FPタイプ2(FP)
51 対象FP領域分割特徴量
53 対象FPの評価結果
55 薬剤AのFP
57 薬剤BのFP
59 薬剤CのFP
61 対象FP(リテンション・タイム10.0−14.5分)
63、65、67、69、71、73、75、77、79、81 対象FP(リテンショ
ン・タイム10.0−14.5分)中の各ピーク
83 基準FP(リテンション・タイム10.0−14.5分)
85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105 基準FP
(リテンション・タイム10.0−14.5分)中の各ピーク
107 対象FPリテンション・タイム・出現パターン
109 基準FPリテンション・タイム・出現パターン
111 リテンション・タイム・出現距離の一致数
113 リテンション・タイム・出現パターンの一致度
115 対象FP帰属対象ピークのピーク・パターン(3本)
117、119、121、123 基準FP帰属候補ピークのピーク・パターン(3本)
125 対象FP帰属対象ピークのピーク・パターン(5本)
127、129、131、133 基準FP帰属候補ピークのピーク・パターン(5本)
135 帰属対象ピークのUVスペクトル
139 帰属候補ピークのUVスペクトル
141 縦領域分割線
143 横領域分割線
145 縦・横領域分割線により分割した各領域(格子)
147 各領域をピーク高さ
148 FP作成工程
149 対象FPピーク帰属工程
151 対象FPピーク特徴量作成工程
153 対象FPタイプ2作成工程
155 対象FP領域分割特徴量作成工程(パターン領域分割特徴量作成工程
、FP領域分割特徴量作成工程)
157 対象FP特徴量統合工程
159 基準FPピーク帰属工程
161 基準FP帰属結果統合工程
163 基準FPピーク特徴量作成工程
165 基準FPタイプ2作成工程
167 基準FP領域分割特徴量作成工程(パターン領域分割特徴量作成工程
、FP領域分割特徴量作成工程)
169 基準FP特徴量統合工程
171 評価工程
173 対象FP作成工程
175 基準FP作成工程
177 基準FP選定工程
179 ピーク・パターン作成工程
181 ピーク帰属工程
183 3Dクロマト・データ例
185 ピーク情報データ例
187 FPデータ例
189 判定結果ファイル例
191 帰属候補ピークスコア表例
193 帰属候補ピーク番号表例
195 照合結果ファイル例
197 基準群FPデータ例
199 対象FPピーク特徴量ファイル例
201 FPタイプ2データ例
203 対象FP領域分割特徴量ファイル例
205 対象FP統合特徴量ファイル例
207 基準type2群FPデータ例
209 基準群統合データ例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列でピークが変化するパターンを複数の領域に分割し各領域に存在するピークの存
在率又は存在量からパターン領域分割特徴量を作成するパターン領域分割特徴量作成工程、
を備えたことを特徴とするパターンの特徴量作成方法。
【請求項2】
多成分物質のクロマトから検出されたピークとそのリテンション・タイムとで構成され
るFPを複数の領域に分割し各領域に存在するピークの存在率又は存在量からFP領域分
割特徴量を作成するFP領域分割特徴量作成工程、
を備えたことを特徴とするFPの特徴量作成方法。
【請求項3】
請求項2記載のFPの特徴量作成方法であって、
前記多成分物質は、多成分薬剤である、
ことを特徴とするFPの特徴量作成方法。
【請求項4】
請求項3記載のFPの特徴量作成方法であって、
前記多成分薬剤は、生薬、生薬の組合せ、それらの抽出物、漢方薬の何れかである、
ことを特徴とするFPの特徴量作成方法。
【請求項5】
請求項2〜4の何れかに記載のFPの特徴量作成方法であって、
前記FP領域分割特徴量作成工程は、シグナル強度軸又は面積値軸に平行な複数の縦分割線と時間軸に平行な複数の横分割線とにより前記領域の分割を行う、
ことを特徴とするFPの特徴量作成方法。
【請求項6】
請求項5記載のFPの特徴量作成方法であって、
前記複数の横分割線は、シグナル強度又は面積値が増大する方向へ等比間隔で設定された、
ことを特徴とするFPの特徴量作成方法。
【請求項7】
請求項2〜6の何れかに記載のFPの特徴量作成方法であって、
前記FP領域分割特徴量作成工程は、前記各領域の位置を変更し変更前後で前記FP領
域分割特徴量を作成する、
ことを特徴とするFPの特徴量作成方法。
【請求項8】
請求項7記載のFPの特徴量作成方法であって、
前記FP領域分割特徴量作成工程は、前記各縦・横分割線を設定範囲内で平行移動させ
るように位置を変更設定することで前記各領域の位置を変更する、
ことを特徴とするFPの特徴量作成方法。
【請求項9】
時系列でピークが変化するパターンを複数の領域に分割し各領域に存在するピークの存
在率又は存在量からパターン領域分割特徴量を作成するパターン領域分割特徴量作成機能

をコンピュータに実現させることを特徴とするパターンの特徴量作成プログラム。
【請求項10】
多成分物質のクロマトから検出されたピークとそのリテンション・タイムとで構成され
るFPを複数の領域に分割し各領域に存在するピークの存在率又は存在量からFP領域分
割特徴量を作成するFP領域分割特徴量作成機能、
を備えたことを特徴とするFPの特徴量作成プログラム。
【請求項11】
請求項10記載のFPの特徴量作成プログラムであって、
前記多成分物質は、多成分薬剤である、
ことを特徴とするFPの特徴量作成プログラム。
【請求項12】
請求項11記載のFPの特徴量作成プログラムであって、
前記多成分薬剤は、生薬、生薬の組合せ、それらの抽出物、漢方薬の何れかである、
ことを特徴とするFPの特徴量作成プログラム。
【請求項13】
請求項10〜12の何れかに記載のFPの特徴量作成プログラムであって、
前記FP領域分割特徴量作成機能は、シグナル強度軸又は面積値軸に平行な複数の縦分割線と時間軸に平行な複数の横分割線とにより前記領域の分割を行う、
ことを特徴とするFPの特徴量作成プログラム。
【請求項14】
請求項13記載のFPの特徴量作成プログラムであって、
前記複数の横分割線は、シグナル強度又は面積値が増大する方向へ等比間隔で設定された、
ことを特徴とするFPの特徴量作成プログラム。
【請求項15】
請求項10〜14の何れかに記載のFPの特徴量作成プログラムであって、
前記FP領域分割特徴量作成機能は、前記各領域の位置を変更し変更前後で前記FP領
域分割特徴量を作成する、
ことを特徴とするFPの特徴量作成プログラム。
【請求項16】
請求項15記載のFPの特徴量作成プログラムであって、
前記FP領域分割特徴量作成機能は、前記各縦・横分割線を設定範囲内で平行移動させ
るように位置を変更設定することで前記各領域の位置を変更する、
ことを特徴とするFPの特徴量作成プログラム。
【請求項17】
時系列でピークが変化するパターンを複数の領域に分割し各領域に存在するピークの存
在率又は存在量からパターン領域分割特徴量を作成するパターン領域分割特徴量作成部、
を備えたことを特徴とするパターンの特徴量作成装置。
【請求項18】
多成分物質のクロマトから検出されたピークとそのリテンション・タイムとで構成され
るFPを複数の領域に分割し各領域に存在するピークの存在率又は存在量からFP領域分
割特徴量を作成するFP領域分割特徴量作成部、
を備えたことを特徴とするFPの特徴量作成装置。
【請求項19】
請求項18記載のFPの特徴量作成装置であって、
前記多成分物質は、多成分薬剤である、
ことを特徴とするFPの特徴量作成装置。
【請求項20】
請求項19記載のFPの特徴量作成装置であって、
前記多成分薬剤は、生薬、生薬の組合せ、それらの抽出物、漢方薬の何れかである、
ことを特徴とするFPの特徴量作成装置。
【請求項21】
請求項18〜20の何れかに記載のFPの特徴量作成装置であって、
前記FP領域分割特徴量作成部は、シグナル強度軸又は面積値軸に平行な複数の縦分割線と時間軸に平行な複数の横分割線とにより前記領域の分割を行う、
ことを特徴とするFPの特徴量作成装置。
【請求項22】
請求項21記載のFPの特徴量作成装置であって、
前記複数の横分割線は、シグナル強度又は面積値が増大する方向へ等比間隔で設定された、
ことを特徴とするFPの特徴量作成装置。
【請求項23】
請求項18〜22の何れかに記載のFPの特徴量作成装置であって、
前記FP領域分割特徴量作成部は、前記各領域の位置を変更し変更前後で前記FP領域
分割特徴量を作成する、
ことを特徴とするFPの特徴量作成装置。
【請求項24】
請求項23記載のFPの特徴量作成装置であって、
前記FP領域分割特徴量作成部は、前記各縦・横分割線を設定範囲内で平行移動させる
ように位置を変更設定することで前記各領域の位置を変更する、
ことを特徴とするFPの特徴量作成装置。

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate

【図46】
image rotate

【図47】
image rotate

【図48】
image rotate

【図49】
image rotate

【図50】
image rotate

【図51】
image rotate

【図52】
image rotate

【図53】
image rotate

【図54】
image rotate

【図55】
image rotate

【図56】
image rotate

【図57】
image rotate

【図58】
image rotate

【図59】
image rotate

【図60】
image rotate

【図61】
image rotate

【図62】
image rotate

【図63】
image rotate

【図64】
image rotate

【図65】
image rotate

【図66】
image rotate

【図67】
image rotate

【図70】
image rotate

【図71】
image rotate

【図72】
image rotate

【図73】
image rotate

【図74】
image rotate

【図75】
image rotate

【図76】
image rotate

【図77】
image rotate

【図78】
image rotate

【図79】
image rotate

【図80】
image rotate

【図81】
image rotate

【図82】
image rotate

【図83】
image rotate

【図84】
image rotate

【図85】
image rotate

【図86】
image rotate

【図87】
image rotate

【図88】
image rotate

【図89】
image rotate

【図90】
image rotate

【図91】
image rotate

【図92】
image rotate

【図93】
image rotate

【図94】
image rotate

【図95】
image rotate

【図96】
image rotate

【図97】
image rotate

【図98】
image rotate

【図99】
image rotate

【図100】
image rotate

【図101】
image rotate

【図102】
image rotate

【図103】
image rotate

【図104】
image rotate

【図105】
image rotate

【図106】
image rotate

【図107】
image rotate

【図108】
image rotate

【図109】
image rotate

【図110】
image rotate

【図111】
image rotate

【図112】
image rotate

【図113】
image rotate

【図114】
image rotate

【図115】
image rotate

【図116】
image rotate

【図117】
image rotate

【図118】
image rotate

【図119】
image rotate

【図120】
image rotate

【図121】
image rotate

【図122】
image rotate

【図123】
image rotate

【図124】
image rotate

【図125】
image rotate

【図126】
image rotate

【図127】
image rotate

【図128】
image rotate

【図129】
image rotate

【図130】
image rotate

【図131】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図68】
image rotate

【図69】
image rotate


【公開番号】特開2013−11598(P2013−11598A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−125382(P2012−125382)
【出願日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(505420541)アングルトライ株式会社 (6)
【出願人】(000003665)株式会社ツムラ (43)