説明

パッシブ型燃料電池及び液体燃料供給部材

【課題】本発明は、発電特性及び液体燃料を再充填した場合の発電特性を向上させることが可能なパッシブ型燃料電池及び液体燃料供給部材を提供することを目的とする。
【解決手段】パッシブ型燃料電池100は、アノード111及びカソード112により電解質膜113が挟持されている膜電極接合体110と、アノード111に液体燃料Fを供給する液体燃料供給タンク140を有し、液体燃料供給タンク140は、アノード111と対向するように設けられている多孔質膜141を有し、液体燃料Fは、燃料成分及びイオン性ミクロゲルを含み、イオン性ミクロゲルは、イオン性モノマー由来の構成単位及びノニオン性モノマー由来の構成単位を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッシブ型燃料電池及び液体燃料供給部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発電効率が高く、環境負荷の小さいエネルギー発電装置として、燃料電池が注目されている。燃料電池の基本原理は、水の電気分解の逆反応であり、燃焼を伴わない。このため、窒素酸化物等の有害物質が発生せず、水素以外の燃料からエネルギーを取り出す際に、二酸化炭素は発生するが、内燃機関に比べると、発生量が抑えられる。また、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換するため、変換過程におけるエネルギー損失が小さく、発電効率が高い。燃料電池は、アノード、カソード及び電解質膜の組み合わせによる単純な装置構成であるため、特殊な動力源を必要とせず、コンパクト化が可能であり、定置用分散電源だけでなく、車両用等の電源、また、最近では、モバイル機器用電源としても広く実用化の研究が行われている。
【0003】
メタノール水溶液等の液体燃料をアノードに供給して酸化させると共に、カソードに酸素を供給して還元させる燃料電池として、直接メタノール型燃料電池(DMFC)が知られている。直接メタノール型燃料電池は、アノードで、反応式
CHOH+HO→CO+6H+6e・・・(1)
で示されるように、メタノールが水と反応して水素イオンと電子が得られる。一方、カソードで、反応式
+4H+4e→2HO・・・(2)
で示されるように、プロトンと電子が消費される。このとき、プロトンが電解質膜を透過し、電子が外部回路を移動することによって、電気エネルギーを得ることができる。
【0004】
しかしながら、直接メタノール型燃料電池では、メタノールが電解質膜を透過してカソードに移動するメタノールクロスオーバーが発生するという問題がある。
【0005】
特許文献1には、燃料成分及びイオン性ミクロゲルを含有する燃料電池用液体燃料が開示されている。このとき、イオン性ミクロゲルは、イオン性モノマー由来の構成単位及びノニオン性モノマー由来の構成単位を有する。
【0006】
しかしながら、液体燃料をパッシブ型燃料電池に適用した場合の発電特性及びパッシブ型燃料電池に液体燃料を再充填した場合の発電特性をさらに向上させることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4541277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、発電特性及び液体燃料を再充填した場合の発電特性を向上させることが可能なパッシブ型燃料電池及び液体燃料供給部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のパッシブ型燃料電池は、アノード及びカソードにより電解質膜が挟持されている膜電極接合体と、前記アノードに液体燃料を供給する液体燃料供給部材を有し、前記液体燃料供給部材は、前記アノードと対向するように設けられている多孔質膜を有し、前記液体燃料は、燃料成分及びイオン性ミクロゲルを含み、前記イオン性ミクロゲルは、イオン性モノマー由来の構成単位及びノニオン性モノマー由来の構成単位を有する。
【0010】
本発明の液体燃料供給部材は、パッシブ型燃料電池のアノードに液体燃料を供給する液体燃料供給部材であって、前記アノードと対向するように設けられている多孔質膜を有し、前記液体燃料は、燃料成分及びイオン性ミクロゲルを含み、前記イオン性ミクロゲルは、イオン性モノマー由来の構成単位及びノニオン性モノマー由来の構成単位を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発電特性及び液体燃料を再充填した場合の発電特性を向上させることが可能なパッシブ型燃料電池及び液体燃料供給部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のパッシブ型燃料電池の一例を示す図である。
【図2】実施例のパッシブ型燃料電池の発電特性を示す図である。
【図3】実施例のメタノールを再充填したパッシブ型燃料電池の発電特性を示す図である。
【図4】実施例のパッシブ型燃料電池のメタノールクロスオーバーの評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0014】
図1に、本発明のパッシブ型燃料電池の一例を示す。パッシブ型燃料電池100は、液体燃料Fに含まれる燃料成分を酸化するアノード111及び酸素等の酸化剤(不図示)を還元するカソード112により電解質膜113が挟持されている膜電極接合体110を有する。このとき、アノード111は、拡散層111a上に、触媒層111bが形成されており、カソード112は、拡散層112a上に、触媒層112bが形成されている。また、アノード111上に、セパレータ120が設置されており、セパレータ120は、液体燃料Fに含まれる燃料成分が流れる流路121を有する。さらに、カソード112上に、セパレータ130が設置されており、セパレータ130は、酸化剤が流れる流路131を有する。
【0015】
拡散層111a、112aを構成する材料としては、特に限定されないが、炭素繊維不織布等が挙げられる。
【0016】
触媒層111bに含まれる触媒としては、特に限定されないが、白金−ルテニウム触媒等が挙げられる。
【0017】
触媒層112bに含まれる触媒としては、特に限定されないが、白金触媒等が挙げられる。
【0018】
電解質膜113を構成する材料としては、特に限定されないが、Nafion(登録商標)等が挙げられる。
【0019】
セパレータ120、130を構成する材料としては、特に限定されないが、ステンレス鋼等の金属、カーボン等が挙げられる。
【0020】
また、セパレータ120上に、アノード111に液体燃料Fを供給する液体燃料供給タンク140が着脱自在に設置されている。このとき、液体燃料Fは、イオン性モノマー由来の構成単位及びノニオン性モノマー由来の構成単位を有するイオン性ミクロゲルをさらに含む。このため、液体燃料供給タンク140内に貯蔵されている液体燃料Fは、イオン性ミクロゲルにより燃料成分が保持されており、燃料成分が電解質膜113を透過してカソード112に移動することを抑制することができる。その結果、燃料成分のクロスオーバーの発生を抑制することができる。また、液体燃料供給タンク140は、アノード111と対向するように、セパレータ120上に設置されている多孔質膜141を有する。このため、イオン性ミクロゲルの拡散層111aへの付着を抑制することができる。その結果、パッシブ型燃料電池100の発電特性を向上させることができる。
【0021】
液体燃料供給タンク140の本体を構成する材料としては、特に限定されないが、フッ素樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。
【0022】
多孔質膜141の平均孔径は、通常、0.01〜10μmであり、0.05〜0.2μmが好ましい。多孔質膜141の平均孔径が0.01μm未満であると、パッシブ型燃料電池100の液体燃料を再充填した場合の発電特性が低下することがあり、10μmを超えると、パッシブ型燃料電池100の発電特性が低下することがある。
【0023】
多孔質膜141を構成する材料としては、特に限定されないが、フッ素樹脂、ポリイミド、フェノール樹脂、ガラス、カーボン等が挙げられる。中でも、イオン性ミクロゲルが付着しにくいことから、フッ素樹脂が好ましい。
【0024】
液体燃料F中のイオン性ミクロゲルの含有量は、通常、0.1〜50質量%であり、0.1〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。液体燃料Fのイオン性ミクロゲルの含有量が0.1質量%未満であると、燃料成分のクロスオーバーが発生することがあり、50質量%を超えると、パッシブ型燃料電池100の液体燃料を再充填した場合の発電特性が低下することがある。
【0025】
液体燃料F中の燃料成分の含有量は、通常、10〜99.9質量%であるが、64質量%以上が好ましい。液体燃料F中の燃料成分の含有量が64質量%未満であると、パッシブ型燃料電池100の発電効率が低下することがある。
【0026】
燃料成分としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル等が挙げられる。中でも、メタノールが好ましい。
【0027】
液体燃料Fは、水をさらに含んでいてもよい。
【0028】
イオン性ミクロゲルを製造する方法としては、特に限定されないが、逆相乳化重合法等が挙げられる。このとき、逆相乳化重合法とは、イオン性モノマー及びノニオン性モノマーを含む水相が油相中に分散している状態で、イオン性モノマー及びノニオン性モノマーをラジカル重合する方法である。これにより、粉砕せずに、粉末状のイオン性ミクロゲルを分離することができる。さらに、イオン性ミクロゲルは、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル等の燃料成分中に分散させると、膨潤するため、燃料成分のクロスオーバーを抑制することができる。
【0029】
油相としては、特に限定されないが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン等のアルカン類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、ナフタレン等の芳香族炭化水素及び環状炭化水素;パラフィン油等の非極性油分等が挙げられる。
【0030】
水相を油相中に分散させる際に、界面活性剤を用いることが好ましい。
【0031】
界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリントリ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンイソステアリン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリントリイソステアリン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンジステアリン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリントリステアリン酸エステル等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0032】
このとき、界面活性剤の親水疎水バランス(HLB)を適宜調整することにより、一相マイクロエマルション又は微細W/Oエマルションを形成することができる。
【0033】
一相マイクロエマルションとは、熱力学的に安定に油相と水相が共存しており、油相及び水相の間の界面張力が極小となっている状態である。また、微細W/Oエマルションとは、熱力学的には不安定であるが、速度論的に安定に油相及び水相が存在している状態である。一般的に、微細W/Oエマルションの水相の粒子径は、数10〜100nm程度である。
【0034】
以下、イオン性ミクロゲルの製造方法について、具体的に説明する。まず、イオン性モノマー及びノニオン性モノマーを水中に溶解させて水相を調製した後、油相と混合する。次に、所定の温度まで昇温した後、水相に重合開始剤を添加して重合する。このとき、熱力学的に安定な一相マイクロエマルション又は速度論的に安定な微細W/Oエマルションが形成されている状態で重合する。具体的には、熱重合用又はレドックス重合用の重合開始剤の最適重合温度の近傍で、一相マイクロエマルション又は微細W/Oエマルションを形成した後、イオン性モノマー及びノニオン性モノマーを重合することにより、イオン性ミクロゲルを安定に製造することができる。
【0035】
このとき、界面活性剤の親水性疎水性バランス(HLB)を、熱重合用又はレドックス重合用の重合開始剤の最適重合温度の近傍で曇点を示すように調整することにより、最適重合温度の近傍で、一相マイクロエマルション又は微細W/Oエマルションを形成することができる。
【0036】
ノニオン性モノマーとしては、特に限定されないが、一般式
【0037】
【化1】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、R及びRは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基である。)
で表されるN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。中でも、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0038】
イオン性モノマーとしては、特に限定されないが、一般式
【0039】
【化2】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、Rは、炭素原子数が1〜6の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、Xは、プロトン、1価の金属カチオン又はアンモニウムイオンである。)
で表されるアニオン性(メタ)アクリルアミド誘導体、一般式
【0040】
【化3】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子又は炭素原子数が1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基であり、Rは、炭素原子数が1〜6の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、R10、R11及びR12は、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基であり、Yは、ハロゲン化物イオンである。)
で表されるカチオン性アクリルアミド誘導体等が挙げられる。中でも、アニオン性(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましく、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩がさらに好ましい。
【0041】
イオン性モノマーに対するノニオン性モノマーの物質量比は、通常、0.5/9.5〜9.5/0.5であり、1/9〜9/1が好ましく、7/3〜9/1がさらに好ましく、8/2が特に好ましい。
【0042】
イオン性ミクロゲルは、N,N−ジメチルアクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の共重合体を含むことが好ましい。これにより、クロスオーバーをさらに抑制することができる。
【0043】
水相は、架橋剤をさらに含んでいてもよい。
【0044】
架橋剤としては、特に限定されないが、一般式
【0045】
【化4】

(R13及びR17は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R14及びR16は、それぞれ独立に、オキシ基又はイミノ基であり、R15は、炭素原子数が1〜6の直鎖若しくは分岐のアルキレン基又は炭素原子数が8〜200のポリオキシエチレン基である。)
で表される(メタ)アクリルアミド誘導体又は(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
【0046】
なお、架橋剤は、重合性官能基を3個以上有していてもよい。
【0047】
架橋剤の具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、イソシアヌル酸トリアリル、ペンタエリスリトールジメタクリレート等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、N,N’−メチレンビスアクリルアミドが好ましい。
【0048】
ノニオン性モノマー及びイオン性モノマーの総物質量に対する架橋剤の物質量の比は、通常、1×10−4〜2%である。ノニオン性モノマー及びイオン性モノマーの総物質量に対する架橋剤の物質量の比が1×10−4%未満であると、イオン性ミクロゲルの製造が困難になることがあり、2%を超えると、クロスオーバーの発生を抑制しにくくなることがある。
【0049】
なお、N,N−ジアルキルアクリルアミドとイオン性アクリルアミド誘導体を含む水相を用いると、架橋剤を用いなくても、イオン性ミクロゲルを製造することができる。
【0050】
イオン性ミクロゲルの重量平均分子量は、通常、1×10〜5×10である。
【0051】
なお、イオン性ミクロゲルの重量平均分子量は、PEG換算の分子量であり、GPCを用いて測定することができる。
【0052】
イオン性ミクロゲルの平均粒子径は、通常、0.01〜10μmであり、0.01〜1μmが好ましい。
【0053】
イオン性ミクロゲルの0.5質量%の水分散液の見かけ粘度は、ずり速度1.0s−1において、通常、1×10mPa・s以上である。また、イオン性ミクロゲルの0.5質量%のエタノール分散液の見かけ粘度は、ずり速度1.0s−1において、通常、5×10mPa・s以上である。さらに、イオン性ミクロゲルの0.5質量%の水分散液又はエタノール分散液における動的弾性率は、歪みが1%以下であり、周波数が0.01〜10Hzの範囲で、通常、貯蔵弾性率G’>損失弾性率G’’である。
【0054】
なお、見かけ粘度及び動的弾性率は、コーンプレート型レオメータMCR−300(Paar Physica社製)を用いて、25℃で測定することができる。
【実施例】
【0055】
さらに、本発明の実施例について説明する。
【0056】
(膜電極接合体110の作製)
拡散層111a、112aとしては、2.4cm×2.4cm×0.018cmのPTFE処理されたカーボンペーパーEC−TP1−060T(東陽テクニカ社製)を用いた。
【0057】
白金−ルテニウム触媒を担持しているカーボン4質量部、5質量%ナフィオン(登録商標)溶液EC−NS−05−AQ(東陽テクニカ社製)44質量部及びエタノール52部を混合して、触媒層111b用塗布液を得た。このとき、白金−ルテニウム触媒を担持しているカーボンは、白金の担持量が29.9質量%であり、ルテニウムの担持量が23.1質量%である。
【0058】
スプレーコート法を用いて、拡散層111a上に、触媒層111b用塗布液を塗布して、触媒層111bを形成し、アノード111を得た。このとき、触媒層111b中の白金の含有量が1.00mg/cmとなるように、触媒層111b用塗布液を塗布した。
【0059】
白金触媒を担持しているカーボン4質量部、5質量%ナフィオン(登録商標)溶液EC−NS−05−AQ(東陽テクニカ社製)27質量部及びエタノール69部を混合して、触媒層112b用塗布液を得た。このとき、白金触媒を担持しているカーボンは、白金の担持量が45.7質量%である。
【0060】
スプレーコート法を用いて、拡散層112a上に、触媒層112b用塗布液を塗布して、触媒層112bを形成し、カソード112を得た。このとき、触媒層112b中の白金の含有量が1.00mg/cmとなるように、触媒層112b用塗布液を塗布した。
【0061】
電解質膜113としては、3.4cm×3.4cm×0.0051cmのNafion212(デュポン社製)を用いた。
【0062】
アノード111及びカソード112の間に電解質膜113を挟持し、135℃、11.5MPaで180秒間ホットプレスし、膜電極接合体110を得た。
【0063】
(イオン性ミクロゲルの作製)
N,N−ジメチルアクリルアミド35g、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸17.5g及びメチレンビスアクリルアミド70mgを、イオン交換水260g中に溶解させた後、水酸化ナトリウムを用いてpHを7.0に調整して、モノマー水溶液を得た。
【0064】
還流装置を備えた1Lの三つ口フラスコに、n−ヘキサン260g、ポリオキシエチレン(3)オレイルエーテルのエマレックス503(日本エマルション社製)8.7g及びポリオキシエチレン(6)オレイルエーテルのエマレックス506(日本エマルション社製)17.6gを入れて、混合した後、窒素で置換した。次に、モノマー水溶液を加えて、窒素雰囲気下で攪拌しながら、オイルバスを用いて、重合系の温度が65〜70℃になるまで昇温した。このとき、半透明な一相マイクロエマルションが形成されていることを確認した。さらに、過硫酸アンモニウム2gを加えた後、重合系の温度を65〜70℃に維持しながら、3時間攪拌し、イオン性ミクロゲルを得た。次に、アセトンを加えて、イオン性ミクロゲルを沈殿させた後、アセトンで3回洗浄した。さらに、イオン性ミクロゲルを濾過した後、減圧乾燥させ、白色粉末状のイオン性ミクロゲルを得た。
【0065】
(実施例1)
イオン性ミクロゲル0.5質量部及び99.8質量%メタノール水溶液99.5質量部を混合して、液体燃料Fを得た。
【0066】
膜電極接合体110に、セパレータ120及び130を設置した後、2mLの液体燃料Fが貯蔵されている液体燃料供給タンク140を設置して、パッシブ型燃料電池100を得た。このとき、多孔質膜141としては、厚さが10μm、平均孔径が0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のオムニポアメンブレンJGWP04700(ミクロポア社製)を用いた。
【0067】
(実施例2)
イオン性ミクロゲル1.0質量部及び99.8質量%メタノール水溶液99.0質量部を混合した以外は、実施例1と同様にして、パッシブ型燃料電池100を得た。
【0068】
(実施例3)
イオン性ミクロゲル2.0質量部及び99.8質量%メタノール水溶液98.0質量部を混合した以外は、実施例1と同様にして、パッシブ型燃料電池100を得た。
【0069】
(発電特性)
燃料電池評価装置890B−100W/10A(東陽テクニカ社製)を用いて、25℃、50%RHの環境で、パッシブ型燃料電池100の電流密度50mA/cmにおける発電特性を測定した。
【0070】
図2に、パッシブ型燃料電池100の発電特性を示す。
【0071】
図2から、実施例1〜3のパッシブ型燃料電池100は、発電特性が優れることがわかる。
【0072】
パッシブ型燃料電池100の液体燃料供給タンク140に消費されたメタノールを再充填した後、100分間放置した。次に、電子負荷器PLZ70UA(KIKUSUI社製)を用いて、25℃、50%RHの環境で、パッシブ型燃料電池100の発電特性を測定した。
【0073】
図3に、メタノールを再充填したパッシブ型燃料電池100の発電特性を示す。なお、図3(a)、(b)及び(c)は、それぞれ実施例1、2及び3のパッシブ型燃料電池100の発電特性である。
【0074】
図3から、実施例1〜3のパッシブ型燃料電池100は、メタノールを再充填した後も、発電特性が優れることがわかる。
【0075】
(メタノールクロスオーバー)
電流密度50mA/cmにおける発電特性を測定する前後に、パッシブ型燃料電池100の液体燃料供給タンク140に、99.8質量%メタノール水溶液の代わりに、10質量%メタノール水溶液を充填した。次に、燃料電池評価装置890B−100W/10A(東陽テクニカ社製)を用いて、25℃、50%RHの環境で、パッシブ型燃料電池100のメタノールクロスオーバーを評価した。
【0076】
図4に、パッシブ型燃料電池100のメタノールクロスオーバーの評価結果を示す。なお、図4(a)、(b)及び(c)は、それぞれ実施例1、2及び3のパッシブ型燃料電池100の評価結果である。
【0077】
図4から、実施例1〜3のパッシブ型燃料電池100は、電流密度50mA/cmにおける発電特性を測定する前後の発電特性がほぼ同等であり、メタノールクロスオーバーの発生を抑制できることがわかる。
【符号の説明】
【0078】
100 パッシブ型燃料電池
110 膜電極接合体
111 アノード
111a 拡散層
111b 触媒層
112 カソード
112a 拡散層
112b 触媒層
113 電解質膜
120、130 セパレータ
121、131 流路
140 液体燃料供給タンク
141 多孔質膜
F 液体燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード及びカソードにより電解質膜が挟持されている膜電極接合体と、前記アノードに液体燃料を供給する液体燃料供給部材を有し、
前記液体燃料供給部材は、前記アノードと対向するように設けられている多孔質膜を有し、
前記液体燃料は、燃料成分及びイオン性ミクロゲルを含み、
前記イオン性ミクロゲルは、イオン性モノマー由来の構成単位及びノニオン性モノマー由来の構成単位を有することを特徴とするパッシブ型燃料電池。
【請求項2】
前記多孔質膜は、平均孔径が0.01μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のパッシブ型燃料電池。
【請求項3】
前記多孔質膜は、フッ素樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のパッシブ型燃料電池。
【請求項4】
前記液体燃料は、前記イオン性ミクロゲルの含有量が0.1質量%以上50質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパッシブ型燃料電池。
【請求項5】
前記液体燃料は、前記燃料成分の含有量が10質量%以上99.9質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のパッシブ型燃料電池。
【請求項6】
前記イオン性モノマーがアニオン性モノマーであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のパッシブ型燃料電池。
【請求項7】
前記燃料成分がメタノールであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のパッシブ型燃料電池。
【請求項8】
パッシブ型燃料電池のアノードに液体燃料を供給する液体燃料供給部材であって、
前記アノードと対向するように設けられている多孔質膜を有し、
前記液体燃料は、燃料成分及びイオン性ミクロゲルを含み、
前記イオン性ミクロゲルは、イオン性モノマー由来の構成単位及びノニオン性モノマー由来の構成単位を有することを特徴とする液体燃料供給部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−89404(P2013−89404A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227793(P2011−227793)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】