説明

パネル、パネル固定具、パネル取付構造及び冷却塔

【課題】パネル取付作業を容易かつ短時間で行うことができるとともに、ビビリ音の発生を防止することのできるパネル、パネル固定具及びパネル取付構造、並びに該パネル取付構造を備えた冷却塔を提供すること。
【解決手段】複数のパネル11の取付基部21同士を突き合わせた突き合わせ部30をパネル取付面15に固定するパネル固定具31を用いてそれらパネル11をパネル取付フレーム12に取り付けるようにし、パネル固定具31は、パネル固定具本体32からパネル取付フレーム12を貫通して延び、互いに突き合わされた取付基部21を挟持する一対のアーム33と、これらアーム33のそれぞれに形成され、各取付基部21に設けられた掛止部22に係合する係止爪36とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、冷却塔の外装壁を構築するのに用いられて好適なパネル、パネル固定具及びパネル取付構造、並びに該パネル取付構造を備えた冷却塔に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場設備やビル等の空調設備から送出される温水を冷却する冷却塔として、例えば、温水と冷却用気流との流れ方向が直交する直交流方式の冷却塔が広く実用に供されている。
【0003】
従来、この種の冷却塔の外装壁構造として、図9(a)(b)に示すように、上下に延びる短冊形状のパネル100を複数枚連設しているものがある。
また、その他の外装壁構造として、図10(a)(b)に示すように、断面波形状のパネル150を複数枚張り合わせるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図9(a)(b)に示す冷却塔外装壁構造において、各パネル100は、冷却塔の骨組を構成する図示されない支柱間に横架される所要のパネル取付フレーム101によって支持されている。
パネル取付フレーム101には、パネル取付面102と平行を成す舌状の係止部103を有する所要の係止折曲部材104が設けられている。
各パネル100は、パネル取付フレーム101のパネル取付面102と向き合うパネル本体105を備え、パネル本体105の図において右側部には取付基部106が形成される一方、パネル本体105の図において左側部には別体のパネル100′に設けられた係止凹部と係合する係止突条部107が形成されている。
取付基部106には、パネル取付フレーム101に設けられた係止折曲部材104の係止部103によって掛け止められる掛止部108が形成されるとともに、別体のパネル100″における係止突条部と係合する係止凹部109が形成されている。
そして、この冷却塔外装壁構造においては、パネル取付面102と係止部103との間への掛止部108の差込みとともに、隣接するパネル間の係止凹部109と係止突条部107との嵌合によって、各パネル100がパネル取付フレーム101に取り付けられるようになっている。
【0005】
ところで、図9(a)(b)に示す冷却塔外装壁構造においては、パネル取付面102と係止部103との間の隙間寸法と、掛止部108の厚み寸法との差分が小さすぎると、パネル取付作業が困難になることから、パネル取付面102と係止部103との間で掛止部108がある程度動き得る遊びが設けられている。
【0006】
このため、図9(a)(b)に示す冷却塔外装壁構造では、機器等の振動や風の影響などによってパネル100が振動し、パネル取付フレーム101に対しパネル100が触れたり離れたりして異音(所謂「ビビリ音」)が発生するという問題があった。
【0007】
一方、図10(a)(b)に示す冷却塔外装壁構造において、各パネル150は、冷却塔の骨組を構成する図示されない支柱、梁等によって支持されている。
各パネル150において、一方の端部には突条151が形成されており、他方の端部には別体のパネル150′の突条と嵌合可能な凹部を有する略U字状部152が形成されている。
そして、この冷却塔外装壁構造においては、各パネル150の端部同士を順次嵌合させて張り合わせることにより、冷却塔外装壁が構築されるようになっている。
【0008】
ところで、図10(a)(b)に示す冷却塔外装壁構造においては、冷却塔の骨組を構成する支柱、梁等にパネル150を固定する固定手段として、多数のフックボルト153をパネル150の谷部を貫通させて冷却塔の骨組を構成する支柱、梁等に係止するといった固定手段が採用されている。
【0009】
このため、図10(a)(b)に示す冷却塔外装壁構造では、パネル取付作業に際して、多数のフックボルト153の締付操作を行わなければならず、パネル取付作業に多大な時間を要するという問題があった。
【特許文献1】特開平11−152849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑み、パネル取付作業を容易かつ短時間で行うことができるとともに、ビビリ音の発生を防止することのできるパネル、パネル固定具及びパネル取付構造、並びに該パネル取付構造を備えた冷却塔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のパネルは、パネルを取り付けるパネル取付フレームのパネル取付面と向き合うパネル本体と、このパネル本体の両側部に形成され、パネル取付面に押し当てられる取付基部とを備え、各取付基部に掛止部を形成し、該掛止部をパネル取付面の背面側に形成したパネル固定具装着面に押し当てられるパネル固定具の本体部分からパネル取付フレームを貫通して延びるアームに設けられた係止爪によって掛け止めるようにしたことを特徴とする(第1発明)。
【0012】
この場合において、各取付基部には、該取付基部に突き合わされる別体のパネルの取付基部に設けられた係止凸部又は係止凹部と係合する係止凹部又は係止凸部が形成されているものとすることができる(第2発明)。
【0013】
また、各取付基部には、該取付基部に突き合わされる別体のパネルの取付基部に設けられた嵌合凹部又は嵌合凸部と嵌合する嵌合凸部又は嵌合凹部が形成されているものとすることができる(第3発明)。
【0014】
次に、上記目的を達成するため、本発明のパネル固定具は、互いに隣接するパネルの一方のパネルにおけるパネル本体の側部に形成された取付基部と、他方のパネルにおけるパネル本体の側部に形成された取付基部とが突き合わされた突き合わせ部をパネル取付フレームのパネル取付面に固定するパネル固定具であって、パネル取付面の背面側に形成したパネル固定具装着面に押し当てられるパネル固定具本体と、このパネル固定具本体からパネル取付フレームを貫通して延び、互いに突き合わされた取付基部を挟持する一対のアームと、これらアームのそれぞれに形成され、各取付基部に設けられた掛止部に係合する係止爪とを備えたことを特徴とする(第4発明)。
【0015】
この場合において、パネル固定具本体には、一対のアームの中間位置においてアーム先端側に開放された溝が形成されているものとすることができる(第5発明)。
【0016】
また、パネル固定具本体には、人の手指で摘むことのできる摘み部が形成されているものとすることができる(第6発明)。
【0017】
次に、上記目的を達成するため、本発明のパネル取付構造は、パネルを取り付けるパネル取付フレームのパネル取付面と向き合うパネル本体の両側部に設けられた取付基部のそれぞれに掛止部が形成されてなる複数のパネルの取付基部同士を突き合わせ、この突き合わせ部をパネル取付面に固定するパネル固定具を用いてそれらパネルをパネル取付フレームに取り付けるパネル取付構造であって、パネル固定具は、パネル取付面の背面側に形成したパネル固定具装着面に押し当てられるパネル固定具本体と、このパネル固定具本体からパネル取付フレームを貫通して延び、互いに突き合わされた取付基部を挟持する一対のアームと、これらアームのそれぞれに形成され、各取付基部に設けられた掛止部に係合する係止爪とを備えてなるものとしたことを特徴とする(第7発明)。
【0018】
この場合において、取付基部同士が突き合わされる突き合わせ部にはそれら取付基部を連結する連結手段が設けられ、この連結手段は、一方の取付基部に形成される一側の係止凹部又は係止凸部と、他方の取付基部に形成され、一側の係止凹部又は係止凸部に係合する他側の係止凸部又は係止凹部とよりなるものとすることができる(第8発明)。
【0019】
また、取付基部同士が突き合わされる突き合わせ部にはそれら取付基部間をシールするシール手段が設けられ、このシール手段は、一方の取付基部に形成される一側の嵌合凸部又は嵌合凹部と、他方の取付基部に形成され、一側の嵌合凸部又は嵌合凹部に嵌合する他側の嵌合凹部又は嵌合凸部とよりなるものとすることができる(第9発明)。
【0020】
また、パネル固定具本体には、一対のアームの中間位置においてアーム先端側に開放された溝が形成され、パネル取付フレームに一対のアームを貫通させるために一対のアームに対応させてパネル取付フレームに形成された一対の挿通孔の間のパネル取付フレーム部分には、パネル固定具本体における溝と係合可能な第1係合部と、パネル固定具本体における溝の両側のパネル固定具本体部分と係合可能な第2係合部とが形成され、パネル固定具本体における溝と第1係合部とを係合させる第1係合状態と、パネル固定具本体における溝の両側のパネル固定具本体部分と第2係合部とを係合させる第2係合状態とを切換可能とされているものとすることができる(第10発明)。
【0021】
また、パネル固定具本体には、人の手指で摘むことのできる摘み部が形成されているものとすることができる(第11発明)。
【0022】
次に、上記目的を達成するため、本発明の冷却塔は、第7発明、第8発明、第9発明、第10発明又は第11発明のパネル取付構造を備えたことを特徴とする(第12発明)。
【発明の効果】
【0023】
本発明のパネル、パネル固定具及びパネル取付構造によれば、パネルの取付基部に形成された掛止部がパネル固定具のアームに形成された係止爪によって掛け止められると、該取付基部がパネル取付フレームのパネル取付面に押し当てられた状態で固定されるので、機器等の振動や風の影響等によるパネルの振動を抑えることができ、ビビリ音の発生を防止することができる。
また、取付基部の掛止部にパネル固定具の係止爪を掛け止めるといった極めて簡易な操作によって、取付基部がパネル取付面に固定されるので、パネル取付作業を容易かつ短時間で行うことができる。
【0024】
また、各取付基部には、該取付基部に突き合わされる別体のパネルの取付基部に設けられた係止凸部又は係止凹部と係合する係止凹部又は係止凸部が形成されているものとすることにより、取付基部同士が突き合わされる突き合わせ部にそれら取付基部を連結する連結手段を構成することができ、この連結手段により、互いに隣接するパネル間をより強固に連結することができる。
【0025】
また、各取付基部には、該取付基部に突き合わされる別体のパネルの取付基部に設けられた嵌合凹部又は嵌合凸部と嵌合する嵌合凸部又は嵌合凹部が形成されているものとすることにより、取付基部同士が突き合わされる突き合わせ部にそれら取付基部間をシールするシール手段を構成することができ、このシール手段により、例えば、冷却塔の外装壁を構成するパネルに適用された態様例では、冷却塔内の水がパネル間から冷却塔外へ漏洩するのを確実に防ぐことができる。
【0026】
ここで、パネル固定具本体には、一対のアームの中間位置においてアーム先端側に開放された溝が形成されているものとし、パネル取付フレームに一対のアームを貫通させるために一対のアームに対応させてパネル取付フレームに形成された一対の挿通孔の間のパネル取付フレーム部分には、パネル固定具本体における溝と係合可能な第1係合部と、パネル固定具本体における溝の両側のパネル固定具本体部分と係合可能な第2係合部とが形成されているものとし、パネル固定具本体における溝と第1係合部とを係合させる第1係合状態と、パネル固定具本体における溝の両側のパネル固定具本体部分と第2係合部とを係合させる第2係合状態とを切換可能とされているものとすることにより、パネル固定具本体における溝と第1係合部とを係合させる第1係合状態とすることで、各掛止部からパネル固定具押込方向にパネル取付フレームの板厚寸法に相当する距離だけ離れた位置に各係止爪を配することができ、その後、パネル固定具本体における溝の両側のパネル固定具本体部分と第2係合部とを係合させる第2係合状態とすることで、各係止爪を各掛止部に確実に掛け止めることができる。
【0027】
また、パネル固定具本体には、人の手指で摘むことのできる摘み部が形成されているものとすることにより、パネル固定具の装着操作や、第1係合状態と第2係合状態との切換操作などをより容易に行うことができる。
【0028】
次に、本発明の冷却塔によれば、本発明のパネル取付構造を備える構成とされているので、外装壁を容易かつ短時間で構築することができるとともに、機器等の振動や風の影響等による外装壁の振動を抑えてビビリ音の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明のパネル、パネル固定具、パネル取付構造及び冷却塔の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0030】
図1〜図8に、本発明のパネル、パネル固定具、パネル取付構造及び冷却塔の一実施例を示す。
図1に示す冷却塔1は、工場設備やビル等の空調設備から送出される温水を冷却する直交流方式の冷却塔であり、この冷却塔1においては、塔内の中央部に通風空間2が設けられ、塔上に送風機3が設置され、送風機3の作動にて側方のルーバ4から通風空間2を経て送風機3の直上に至る空気の流れが生じ、この気流によってルーバ4の内側に設置された充填材5を流下する温水が冷却されるようになっている。
【0031】
この冷却塔1の外装壁10は、上下に延びる短冊形状のパネル11が複数枚連設されて構成されており、冷却塔1の骨組を構成する図示されない支柱間に横架される所要のパネル取付フレーム12に各パネル11が支持されている。
【0032】
パネル取付フレーム12は、山形鋼よりなり、一方の辺部の表面13及び裏面14がそれぞれ上方及び下方に向けられている。
また、パネル取付フレーム12の他方の辺部において、その表面はパネル取付面15とされて冷却塔1の外側に向けられ、その裏面はパネル固定具装着面16とされて冷却塔1の内側に向けられている。
【0033】
各パネル11は、樹脂製で、図2(a)に示すように、パネル取付フレーム12のパネル取付面15と向き合うパネル本体20を備えている。
パネル本体20は、その断面形状が冷却塔1の外側に膨出する湾曲形状とされており、このパネル本体20の両側部には、パネル取付面15に押し当てられる取付基部21が形成されている。
【0034】
図3に示すように、各取付基部21には、パネル11の幅方向内向きに張り出され、パネル11の一端と他端の間の全長方向に延設される掛止部22が形成されている。
各掛止部22における張出し方向先端部には、パネル取付面15から離れる方向に突出される突条部23がパネル全長方向の全域に亘って形成されている。
この突条部23はパネル11を補強するリブとして機能し、この突条部23によってパネル変形を抑えることができ、パネル11のパネル取付フレーム12への適正な取付状態の保持に貢献する。
【0035】
各パネル11の図3において右側の取付基部21には、該取付基部21に突き合わされる別体のパネル11の取付基部21に設けられた係止凸部26と係合する係止凹部24が形成されるとともに、該取付基部21に突き合わされる別体のパネル11の取付基部21に設けられた嵌合凹部27と嵌合する嵌合凸部25が形成されている。
各パネル11の図3において左側の取付基部21には、該取付基部21に突き合わされる別体のパネル11の取付基部21に設けられた係止凹部24と係合する係止凸部26が形成されるとともに、該取付基部21に突き合わされる別体のパネル11の取付基部21に設けられた嵌合凸部25と嵌合する嵌合凹部27が形成されている。
【0036】
図2(a)に示すように、互いに隣接するパネル11,11の一方のパネル11における取付基部21と他方のパネル11における取付基部21とが突き合わされた突き合わせ部30をパネル取付フレーム12のパネル取付面15に固定するために、パネル固定具31がパネル取付フレーム12の一部をパネル11の掛止部22と共に挟み込むようにして該突き合わせ部30に装着されている。
【0037】
パネル固定具31は、樹脂製で、図4に示すように、パネル固定具装着面16に押し当てられるパネル固定具本体32と、このパネル固定具本体32からパネル取付フレーム12を貫通して延び、互いに突き合わされた取付基部21,21を挟持する一対のアーム33,33とを備えている。
【0038】
パネル固定具31のパネル固定具本体32には、一対のアーム33,33の間の真中位置においてアーム先端側に開放された溝34がパネル全長方向に延びるように形成されている。
また、パネル固定具本体32には、人の手指で摘むことのできる摘み部35が形成されている。
【0039】
パネル固定具31の一対のアーム33,33の先端部の対向面には、内向きに突出する係止爪36を形成し、互いに隣接するパネル11,11の各取付基部21に設けられた掛止部22に係合するようにしている。
各係止爪36において、パネル固定具押込時に最初に掛止部22に接触される部位には、アーム先端側に進むにつれて外向きに広がるような傾斜が付された傾斜面37が設けられている。
【0040】
図2(b)に示すように、パネル取付フレーム12には、一対のアーム33,33を貫通させるために、一対のアーム33,33に対応させて一対の挿通孔40,40が形成されている。
これら挿通孔40,40の間のパネル取付フレーム部分には、パネル固定具本体32における溝34と係合可能な第1係合部41と、パネル固定具本体32における溝34の両側のパネル固定具本体部分と係合可能な第2係合部42とが形成されている。
第1係合部41と第2係合部42は、パネル11の全長方向、つまり図2(b)において上下方向に連設されており、第1係合部41が上段に、第2係合部42が下段にそれぞれ配されている。
【0041】
次に、パネル取付作業について、図5〜図8を用いて以下に説明することとする。
なお、以下に述べるパネル取付作業の説明において、説明の都合上、パネル取付フレーム12に先に取り付けられているパネルを「先のパネル11′」と称し、パネル取付フレーム12にこれから取り付けようとするパネルを「後のパネル11」と称することとする。
【0042】
まず、図5(a)に示すように、先のパネル11′の右側の取付基部21における係止凹部24に対し、後のパネル11の左側の取付基部21における係止凸部26を位置決めし、位置決め完了後、係止凹部24に係止凸部26を押し込むとともに、後のパネル11の両側の取付基部21をパネル取付面15に押し当てる。
これにより、図5(b)に示すように、先のパネル11′の右側の取付基部21と後のパネル11の左側の取付基部21とが、パネル取付フレーム12における一対の挿通孔40,40に対応する位置で互いに突き合わされ、この突き合わせ部30において、係止凹部24と係止凸部26との係合による連結手段45が構成されるとともに、嵌合凸部25と嵌合凹部27との嵌合によるシール手段46が構成される。
【0043】
次いで、図6(a)に示すように、摘み部35を手指で摘んでパネル固定具31を一対の挿通孔40,40の近傍にまで持ち運び、第1係合部41と溝34とが向き合うようにパネル取付フレーム12に対しパネル固定具31を位置決めする。
位置決め完了後、一対の挿通孔40,40に一対のアーム33,33を挿入するようにしてパネル固定具31を押し込んでいく。
すると、図6(b)に示すように、最初に、各係止爪36の傾斜面37が各掛止部22に接触する。
【0044】
パネル固定具31を更に押し込んでいくと、各係止爪36の傾斜面37と各掛止部22との間でのくさび作用により、図7(a)に示すように、一対のアーム33,33が拡開される。
引き続きパネル固定具31を押し込んで溝34と第1係合部41とを係合させる第1係合状態としたときには、図7(b)に示すように、一対のアーム33,33が弾性復元力によって拡開前の元の形状となっており、また、各掛止部22の突条部23からパネル固定具押込方向にパネル取付フレーム12の板厚寸法に相当する距離だけ離れた位置に各係止爪36が配されることになる。
【0045】
一旦、第1係合状態とされた後に、パネル固定具31を引き戻すと、図8(a)に示すように、各掛止部22の突条部23と各係止爪36とが衝合され、これにより各掛止部22に各係止爪36が確実に掛け止められる。
【0046】
次いで、パネル固定具31を下方に移動させ、図8(b)に示すように、溝34の両側のパネル固定具本体部分と第2係合部42とを係合させる第2係合状態とする。
これにより、先のパネル11′の右側の取付基部21と後のパネル11の左側の取付基部21とが突き合わされた突き合わせ部30がパネル取付面15に押し当てられた状態で固定される。
【0047】
以上に述べた一連の作業を繰り返すことにより、複数のパネル11が順次にパネル取付フレーム12に取り付けられ、冷却塔1の外装壁10が構築される。
【0048】
本実施例によれば、以下のような作用効果を奏する。
(1)パネル11の取付基部21に形成された掛止部22がパネル固定具31のアーム33に形成された係止爪36によって掛け止められると、該取付基部21がパネル取付フレーム12のパネル取付面15に押し当てられた状態で固定されるので、機器等の振動や風の影響等によるパネル11の振動を抑えることができ、ビビリ音の発生を防止することができる。
(2)取付基部21の掛止部22にパネル固定具31の係止爪36を掛け止めるといった極めて簡易な操作によって、取付基部21がパネル取付面15に固定されるので、パネル取付作業を容易かつ短時間で行うことができる。
(3)各取付基部21には、該取付基部21に突き合わされる別体のパネル11の取付基部21に設けられた係止凸部26又は係止凹部24と係合する係止凹部24又は係止凸部26が形成されているので、取付基部21同士が突き合わされる突き合わせ部30にそれら取付基部21を連結する連結手段45を構成することができ、この連結手段45により、互いに隣接するパネル11間をより強固に連結することができる。
(4)各取付基部21には、該取付基部21に突き合わされる別体のパネル11の取付基部21に設けられた嵌合凹部27又は嵌合凸部25と嵌合する嵌合凸部25又は嵌合凹部27が形成されているので、取付基部21同士が突き合わされる突き合わせ部30にそれら取付基部21間をシールするシール手段46を構成することができ、このシール手段46により、冷却塔1内の水がパネル11間から冷却塔1外へ漏洩するのを確実に防ぐことができる。
(5)パネル固定具本体32における溝34と第1係合部41とを係合させる第1係合状態とすることで、各掛止部22の突条部23からパネル固定具押込方向にパネル取付フレーム12の板厚寸法に相当する距離だけ離れた位置に各係止爪36を配することができ、その後、パネル固定具本体32における溝34の両側のパネル固定具本体部分と第2係合部42とを係合させる第2係合状態とすることで、各係止爪36を各掛止部22に確実に掛け止めることができる。
(6)パネル固定具本体32には、人の手指で摘むことのできる摘み部35が形成されているので、パネル固定具31の装着操作や、第1係合状態と第2係合状態との切換操作などをより容易に行うことができる。
(7)外装壁10を容易かつ短時間で構築することができるとともに、機器等の振動や風の影響等による外装壁10の振動を抑えてビビリ音の発生を防止することができる。
【0049】
以上、本発明のパネル、パネル固定具、パネル取付構造及び冷却塔について、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、例えば、パネル11やパネル固定具31をFRPやアルミニウム、鉄系材料等の金属材料で構成する等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のパネル、パネル固定具、パネル取付構造は、パネル取付作業を容易かつ短時間で行うことができるとともに、ビビリ音の発生を防止することができるという特性を有していることから、冷却塔の外装壁の構築の用途に好適に用いることができるほか、例えば、組立家屋や物置等の外装壁の構築の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の冷却塔の一実施例を示す斜視図である。
【図2】パネル取付構造を示し、(a)は要部平面断面図で、(b)は(a)のP矢視図である。
【図3】パネルの構造説明図である。
【図4】図2のA部拡大図である。
【図5】パネル取付作業説明図(1)である。
【図6】パネル取付作業説明図(2)である。
【図7】パネル取付作業説明図(3)である。
【図8】パネル取付作業説明図(4)である。
【図9】従来技術の説明図(1)である。
【図10】従来技術の説明図(2)である。
【符号の説明】
【0052】
1 冷却塔
10 外装壁
11 パネル
12 パネル取付フレーム
15 パネル取付面
16 パネル固定具装着面
20 パネル本体
21 取付基部
22 掛止部
24 係止凹部
25 嵌合凸部
26 係止凸部
27 嵌合凹部
30 突き合わせ部
31 パネル固定具
32 パネル固定具本体
33 アーム
34 溝
35 摘み部
36 係止爪
40 挿通孔
41 第1係合部
42 第2係合部
45 連結手段
46 シール手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルを取り付けるパネル取付フレームのパネル取付面と向き合うパネル本体と、このパネル本体の両側部に形成され、パネル取付面に押し当てられる取付基部とを備え、各取付基部に掛止部を形成し、該掛止部をパネル取付面の背面側に形成したパネル固定具装着面に押し当てられるパネル固定具の本体部分からパネル取付フレームを貫通して延びるアームに設けられた係止爪によって掛け止めるようにしたことを特徴とするパネル。
【請求項2】
各取付基部には、該取付基部に突き合わされる別体のパネルの取付基部に設けられた係止凸部又は係止凹部と係合する係止凹部又は係止凸部が形成されているものとしたことを特徴とする請求項1記載のパネル。
【請求項3】
各取付基部には、該取付基部に突き合わされる別体のパネルの取付基部に設けられた嵌合凹部又は嵌合凸部と嵌合する嵌合凸部又は嵌合凹部が形成されているものとしたことを特徴とする請求項1又は2記載のパネル。
【請求項4】
互いに隣接するパネルの一方のパネルにおけるパネル本体の側部に形成された取付基部と、他方のパネルにおけるパネル本体の側部に形成された取付基部とが突き合わされた突き合わせ部をパネル取付フレームのパネル取付面に固定するパネル固定具であって、パネル取付面の背面側に形成したパネル固定具装着面に押し当てられるパネル固定具本体と、このパネル固定具本体からパネル取付フレームを貫通して延び、互いに突き合わされた取付基部を挟持する一対のアームと、これらアームのそれぞれに形成され、各取付基部に設けられた掛止部に係合する係止爪とを備えたことを特徴とするパネル固定具。
【請求項5】
パネル固定具本体には、一対のアームの中間位置においてアーム先端側に開放された溝が形成されているものとしたことを特徴とする請求項4記載のパネル固定具。
【請求項6】
パネル固定具本体には、人の手指で摘むことのできる摘み部が形成されているものとしたことを特徴とする請求項4又は5記載のパネル固定具。
【請求項7】
パネルを取り付けるパネル取付フレームのパネル取付面と向き合うパネル本体の両側部に設けられた取付基部のそれぞれに掛止部が形成されてなる複数のパネルの取付基部同士を突き合わせ、この突き合わせ部をパネル取付面に固定するパネル固定具を用いてそれらパネルをパネル取付フレームに取り付けるパネル取付構造であって、パネル固定具は、パネル取付面の背面側に形成したパネル固定具装着面に押し当てられるパネル固定具本体と、このパネル固定具本体からパネル取付フレームを貫通して延び、互いに突き合わされた取付基部を挟持する一対のアームと、これらアームのそれぞれに形成され、各取付基部に設けられた掛止部に係合する係止爪とを備えてなるものとしたことを特徴とするパネル取付構造。
【請求項8】
取付基部同士が突き合わされる突き合わせ部にはそれら取付基部を連結する連結手段が設けられ、この連結手段は、一方の取付基部に形成される一側の係止凹部又は係止凸部と、他方の取付基部に形成され、一側の係止凹部又は係止凸部に係合する他側の係止凸部又は係止凹部とよりなるものとしたことを特徴とする請求項7記載のパネル取付構造。
【請求項9】
取付基部同士が突き合わされる突き合わせ部にはそれら取付基部間をシールするシール手段が設けられ、このシール手段は、一方の取付基部に形成される一側の嵌合凸部又は嵌合凹部と、他方の取付基部に形成され、一側の嵌合凸部又は嵌合凹部に嵌合する他側の嵌合凹部又は嵌合凸部とよりなるものとしたことを特徴とする請求項7又は8記載のパネル取付構造。
【請求項10】
パネル固定具本体には、一対のアームの中間位置においてアーム先端側に開放された溝が形成され、パネル取付フレームに一対のアームを貫通させるために一対のアームに対応させてパネル取付フレームに形成された一対の挿通孔の間のパネル取付フレーム部分には、パネル固定具本体における溝と係合可能な第1係合部と、パネル固定具本体における溝の両側のパネル固定具本体部分と係合可能な第2係合部とが形成され、パネル固定具本体における溝と第1係合部とを係合させる第1係合状態と、パネル固定具本体における溝の両側のパネル固定具本体部分と第2係合部とを係合させる第2係合状態とを切換可能とされているものとしたことを特徴とする請求項7、8又は9記載のパネル取付構造。
【請求項11】
パネル固定具本体には、人の手指で摘むことのできる摘み部が形成されているものとしたことを特徴とする請求項7、8、9又は10記載のパネル取付構造。
【請求項12】
請求項7、8、9、10又は11記載のパネル取付構造を備えたことを特徴とする冷却塔。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−2039(P2009−2039A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163627(P2007−163627)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】