説明

パネル用機器の取付構造

【課題】複数の電気機器を互いに近接した状態でパネルに配置できるとともに、薄型の電気機器にも適用できるようにする。
【解決手段】本体1、表示灯2、取付金具3、取付ネジ4、雌ネジ部材5を設けた。本体1をパネル100の開口部101に前面側から貫通させ、パネル100の背面側で本体1の背面に取付金具3を配置した状態で2本の取付ネジ4のそれぞれのネジ部41を、取付金具3の貫通孔34,35、及び本体1の貫通孔13にこの順に貫通させ、雌ネジ部材5のネジ孔53に螺合させる。2本の取付ネジ4をパネル100の背面側から前面側に向けて締め込んでいくと、取付ネジ4の頭部42が取付金具3をパネル100に向けて押圧し、延出部32,33の前端がパネル100の背面に当接する。延出部32,33の前端と、本体1のフランジ14,15との間にパネル100を挟持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示灯等の電気機器をパネルに取り付けるためのパネル用機器の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
表示灯等の電気機器は、工場設備としての制御盤等のパネルに取り付けられる場合がある。パネルに電気機器を取り付ける構造として、パネルに形成された孔部に電気機器の背面側の一部を前面側から貫通させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来のパネル用機器の取付構造では、電気機器におけるパネルの背面側に露出した部分に金具を装着し、金具に螺合する取付ネジの先端と電気機器の前面側に形成されているフランジ部との間でパネルを挟持することで、電気機器をパネルに固定している。
【特許文献1】特開2002−150912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のパネル用機器の取付構造では、取付ネジが電気機器の背面側におけるパネルの背面側に露出した部分の周囲から外側に露出する。このため、複数の電気機器を互いに近接した状態でパネルに配置することができない問題がある。
【0005】
また、従来のパネル用機器の取付構造では、金具は電気機器の一部でパネルの厚さ方向における所定範囲内を移動自在に装着されており、取付ネジを締め込むことで所定範囲の最も背面側に当接した状態で電気機器に位置決めされる。このため、パネルの厚さ方向について薄型化された電気機器では金具を移動させるための十分な範囲を設けることができず、薄型の電気機器に適用することができない問題がある。
【0006】
この発明の目的は、金具及び電気機器の背面を貫通した後に電気機器の内部に螺合する取付ネジを介して電気機器のフランジ部と金具の前端とにパネルを挟持させることで、複数の電気機器を互いに近接した状態でパネルに配置できるとともに、薄型の電気機器にも適用できるパネル用機器の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のパネル用機器の取付構造は、機器の背面側の一部をパネルに形成された孔部に前記パネルの前面側から背面側に向かって貫通させた状態で、前記機器を前記パネルに取り付けるパネル用機器の取付構造であって、取付金具、取付ネジ、雌ネジ部材を備えている。取付金具は、支持部と延出部とを有する。支持部は、パネルの背面側で機器の背面に対向する。延出部は、支持部からパネルの厚さ方向に沿ってパネルの背面に向かって延出する。取付ネジは、頭部がパネルの厚さ方向に沿って支持部に当接し、ネジ部が支持部及び機器の背面をこの順に貫通する。雌ネジ部材は、機器の内部でネジ部が螺合する。
【0008】
この構成では、背面側の一部をパネルに形成された孔部にパネルの前面側から背面側に向かって貫通させた機器の背面に、取付金具の支持部が対向する。取付ネジのネジ部を、支持部及び機器の背面にこの順に貫通させた後、機器の内部で雌ネジ部材に螺合させる。取付ネジの頭部と支持部との当接によって取付金具がパネルの厚さ方向に沿ってパネルに向かって移動し、機器の前面に形成されたフランジ部と取付金具の延出部の前端との間にパネルが挟持される。取付ネジは、機器の背面を貫通するため、機器の周囲から外側に露出することがない。また、取付金具は、機器に直接装着する必要がなく、機器の大きさに影響を与えない。
【0009】
この構成において、取付金具に支持部の両端から互いに平行に延出する2個の延出部を備えてもよい。2個の延出部が、パネルの厚さ方向に直交する面内で機器の背面側を挟んで配置される。パネルは、機器の前面に形成されたフランジ部と取付金具の2個の延出部の前端との間で挟持される。機器をパネルに確実に固定できる。
【0010】
また、雌ネジ部材は、機器の内部に着脱自在にしてもよい。機器の内部にネジ孔を形成する必要がなく、機器を容易に製造することができる。
【0011】
さらに、雌ネジ部材は、機器の内部に一体に形成してもよい。部品点数の削減により、機器の組立作業を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、金具及び機器の背面を貫通した後に機器の内部に螺合する取付ネジを介して機器のフランジ部と金具の前端とにパネルを挟持させることができ、複数の機器を互いに近接した状態でパネルに配置することができる。また、金具を機器に直接装着する必要をなくし、金具の移動が機器の大きさに影響を与えないようにすることができ、薄型の電気機器にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、この発明の実施形態に係るパネル用機器の取付構造の一例を示す分解斜視図である。図1に示す取付構造は、制御盤等のパネルに表示灯装置10等の電気機器を取り付ける際に使用される。図1中のX軸方向は、この発明のパネルの厚さ方向であり、表示灯装置10の前後方向である。図1中のY軸方向は、水平面内でX軸方向に直交する表示灯装置10の左右方向である。図1中のZ軸方向は、X軸方向及びY軸方向に直交する表示灯装置10の上下方向である。
【0014】
表示灯装置10は、本体1、表示灯2、取付金具3、取付ネジ4、雌ネジ部材5、中間部材6、端部部材7を備えている。
【0015】
本体1は、一例としてアルミニウムを素材として押出加工によって長尺状に形成された後、適宜必要な長さに切断される。図1に示す例では、3個の表示灯2を収納できる長さに切断されている。本体1には、3個の開口部11、12個の取付孔12、6個の貫通孔13が打ち抜き加工等によって設けられる。本体1は、充分な強度を備えることを条件として、樹脂を素材として形成することもできる。本体1の上下の前端部には、上方及び下方に延出したフランジ部14,15が形成されている。
【0016】
3個の表示灯2のそれぞれは、一例として内部に光源としての単一または複数のLEDを収納している。表示灯2の背面には、上端部及び下端部のそれぞれ2箇所の合計4箇所に、上下方向に弾性変形する爪21が形成されている。各表示灯3は、本体1の前面側から本体1内に収納され、各爪21が各取付孔12に弾性的に係合することで本体1に固定される。
【0017】
中間部材6は、3個の表示灯2のそれぞれの間に配置され、隣接する2個の表示灯2を連結する。2個の中間部材6は、3個の表示灯2とともに、本体1内に収納される。
【0018】
端部部材7は、3個の表示灯2及び2個の中間部材6を収納した本体1の左右の端部に装着される。端部部材7は、上下対称形状に成型されている。同一形状の2個の端部部材7のそれぞれが、本体1の両端のそれぞれに装着される。
【0019】
取付金具3は、一例としてSUS310等の金属板を素材とするプレス加工により、支持部31の上下端から延出部32,33が延出した形状に成型されている。支持部31には、上下2箇所に貫通孔34,35が形成されている。
【0020】
雌ネジ部材5は、一例としてSUS310等の金属板を素材とするプレス加工により、左右端から取付片51,52が背面側に突出した矩形の平板状に形成されている。雌ネジ部材5には、中央部にネジ孔53が形成されている。2個の雌ネジ部材5のそれぞれが、取付片51,52のそれぞれを貫通孔13を挟む2個の取付孔12に挿入された状態で、本体1の内部に装着される。このとき、ネジ孔53が、貫通孔13に対向する。本体1に表示灯2を収納した状態で、本体1における雌ネジ部材5の移動が規制される。
【0021】
2個の取付ネジ4は、ネジ部41と頭部42とからなる。ネジ部41は、表示灯装置10の背面側から、それぞれ取付金具3の貫通孔34,35、本体1の貫通孔13をこの順に貫通し、雌ネジ部材5のネジ孔53に螺合する。頭部42は、貫通孔34,35を貫通することはなく、取付金具3の支持部31の背面に当接する。
【0022】
図2(A)〜(C)は、上記取付構造による電気機器のパネルへの取付状態を示す断面図である。表示灯装置10をパネル100に取り付ける際には、図2(A)に示すように、先ず、本体1の背面側をパネル100の開口部(孔部)101に、パネル100の前面側から貫通させる。次いで、パネル100の背面側で、本体1の背面に取付金具3を配置した状態で、2本の取付ネジ4のそれぞれのネジ部41を、取付金具3の貫通孔34,35、及び本体1の貫通孔13にこの順に貫通させる。本体1には、予め2個の雌ネジ部材5を装着しておく。貫通孔12を貫通したネジ部41を、雌ネジ部材5のネジ孔53に螺合させる。
【0023】
図2(B)に示すように、ネジ孔53に螺合した2本の取付ネジ4をパネル100の背面側から前面側に向けて締め込んでいくと、取付ネジ4の頭部42が取付金具3をパネル100に向けて押圧する。取付金具3は、パネル100に向かって移動し、延出部32,33の前端がパネル100の背面に当接する。
【0024】
雌ネジ部材5のネジ孔53に対する取付ネジ4の締結力は、本体1をパネル100の背面側に向けて付勢するとともに、取付金具3をパネル100の前面側に向けて付勢する。この締結力によって延出部32,33の前端は、本体1のフランジ14,15との間にパネル100における開口部101の周縁部を挟持し、本体1がパネル100に固定される。
【0025】
この後、図2(C)に示すように、本体1の内部に前面側から3個の表示灯2を2個の中間部材6とともに収納し、本体1の左右の端部に端部部材を装着することで、パネル100への表示灯装置10の取付作業が完了する。
【0026】
本体1の3個の開口部11のそれぞれからは、表示灯2の背面に設けられた電気接続用の端子が露出する。本体1に収納された表示灯2には、開口部11を介して信号線や電源線を接続される。
【0027】
2本の取付ネジ4は、本体1の背面から内部に挿入されるため、パネル100の背面側で本体1の周囲から外側に露出することがない。取付金具3内で延出部32,33を、本体1のフランジ14,15の上下端の範囲内に形成することで、フランジ14,15と延出部32,33との間にパネル100を確実に挟持できる。また、複数の表示灯装置10をフランジ15とフランジ14とが上下方向に当接するまで近接させて配置することができる。
【0028】
また、取付金具3は本体1に直接装着されないため、取付金具3のX軸方向の移動範囲が本体1の形状に影響を与えることがない。薄型の電気機器にもこの発明の構成を適用できる。
【0029】
なお、本体1のY軸方向の長さに応じて任意の数の取付金具3を備えることができる。本体1の表示灯2の収納数は3個に限るものではなく、Y軸方向について本体1を収納すべき表示灯2の数に応じた長さに切断することで、1個を含む任意の数の表示灯2を収納することができる。
【0030】
また、雌ネジ部材5は、本体1に一体的に形成することもできる。表示灯装置10の部品点数を削減し、組立作業を簡略化できる。
【0031】
さらに、本体1に収納する電気機器は、表示灯12に限るものではなく、本体1に収納可能な形状であることを条件に、押しボタンスイッチ等の任意の電気機器を本体1に収納することができる。
【0032】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の実施形態に係るパネル用機器の取付構造の一例を示す分解斜視図である。
【図2】(A)〜(C)は、上記取付構造による電気機器のパネルへの取付状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 本体
2 表示灯
3 取付金具
4 取付ネジ
5 雌ネジ部材
10 表示灯装置
11 開口部
12 取付孔
13 貫通孔
31 支持部
32,33 延出部
34,35 貫通孔
41 ネジ部
42 頭部
53 ネジ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の背面側の一部をパネルに形成された孔部に前記パネルの前面側から背面側に向かって貫通させた状態で、前記機器を前記パネルに取り付けるパネル用機器の取付構造であって、
前記パネルの背面側で前記機器の背面に対向する支持部、及び前記支持部から前記パネルの厚さ方向に沿って前記パネルの背面に向かって延出する延出部を有する取付金具と、
頭部が前記パネルの厚さ方向に沿って前記支持部に当接し、ネジ部が前記支持部及び前記機器の背面をこの順に貫通する取付ネジと、
前記機器の内部で前記ネジ部が螺合する雌ネジ部材と、を備え、
前記機器の前面に形成されたフランジ部と前記延出部の前端との間に前記パネルを挟持するパネル用機器の取付構造。
【請求項2】
前記取付金具は、前記支持部の両端から互いに平行に延出する2個の延出部を備えた請求項1に記載のパネル用機器の取付構造。
【請求項3】
前記雌ネジ部材は、前記ネジ部が螺合するネジ孔を有し、前記機器の内部に着脱自在にされている請求項1又は2に記載のパネル用機器の取付構造。
【請求項4】
前記雌ネジ部材は、前記ネジ部が螺合するネジ孔を有し、前記機器の内部に一体的に形成されている請求項1又は2に記載のパネル用機器の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−289263(P2008−289263A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131061(P2007−131061)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】