説明

パノラマ機能付きカメラ

【目的】 遮光枠の左右方向の寸法を小さく形成でき、カメラのコンパクト化を可能としたパノラマ機能付きカメラを提供すること。
【構成】 切り換えスィッチ17の操作により互いに上下逆向きに動き撮影レンズ3とフィルム11の間の光路の上下部分を遮光、開放して画面サイズを標準モードからパノラマモードへ、パノラマモードから標準モードへ切り換える二つの遮光部材21,23を備えたパノラマ機能付きカメラ1において、各遮光部材21,23を板状に形成して前後に重ね合わせ、一方の遮光部材21を、透明な部材により前記光路を覆う大きさでかつ光路の上下高さよりも大きな高さで形成し、他方の遮光部材23を一方の遮光部材21の上部に配置し、一方の遮光部材21の下部に所定の幅で左右方向に延在する遮光部21Aを設けると共に、他方の遮光部材23の下部に所定の幅で左右方向に延在する遮光部23Aを設けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はパノラマ機能を備えたカメラに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、画面サイズを標準モードからパノラマモードへ、パノラマモードから標準モードへ切換えるパノラマ機能付きカメラでは、アパーチャグリルの前方に遮光枠が配設されている。図8、9に示すように、この遮光枠51は、L字型の二つの遮光部材53,55を四角い枠状になるように組合わせて用いられ、各遮光部材53,55はそれぞれ縦部53A,55Aと、横部53B,55Bとで構成され、黒い表面処理が施された金属や黒い樹脂等により形成されている。前記第1遮光部材53の横部53Bの上部と、第2遮光部材55の縦部55Aの上部にはそれぞれ連結部53C,55Cが突設されている。
【0003】前記第1遮光部材53の連結部53Cは、標準モードからパノラマモードへ、パノラマモードから標準モードへ切り換える切換えスイッチ(図示省略)に連結されている。両連結部53C,55Cはピン59を介してリンク57の両端にそれぞれ連結され、前記リンク57はその中央部がピン61によってカメラボディ側に揺動可能に枢支され、これにより第1,第2遮光部材53,55が互いに上下逆向きに動くように連結されている。前記第1,第2遮光部材53,55の縦部53A,55Aには、それぞれ上下に長い長孔63が形成され、これらの長孔63にカメラボディ側から突設された各々一組のピン65,65が挿入され、これらの長孔63とピン65,65とにより第1,第2遮光部材53,55の上下方向の移動が案内される。
【0004】そして、切換えスイッチの操作により第1遮光部材53を上方に移動させると、同時に、リンク57を介して第2遮光部材55が下方に移動し、図8に実線で示すように、第1,第2遮光部材53,55の横部53B,55Bがそれぞれアパーチャグリルの内側開口の上下外側に位置し、標準モードが設定される。また、切換えスイッチの操作により第1遮光部材53を下方に移動させると、、同時に、リンク57を介して第2遮光部材55が上方に移動し、図6中の二点鎖線で示すように、第1,第2遮光部材53,55の横部53B,55Bがそれぞれアパーチャグリルの内側開口の上下部分に位置し、パノラマモードが設定される。
【0005】このような遮光枠51によれば、縦部53A,55Aには横部53B,55Bを保持しつつ横部53B,55Bを上下に動かすに足る剛性が必要であり、縦部53A,55Aには所定の左右幅が要求されている。また、左右にスペースを取ることなく縦部53A,55Aを上下に案内するため、長孔63とピン65,65が用いられているが、長孔63を形成するためにも縦部53A,55Aには所定の左右幅が要求されている。このようなことから二つの遮光部材53,55の縦部53A,55Aは所定の左右幅を持って形成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そのため、従来の遮光枠51では左右方向の寸法が大きくなり、これに伴いアパーチャグリルの内側開口や鏡胴の内側開口の左右外側に縦部53A,55A専用のスペースをそれぞれ確保する必要があり、カメラのコンパクト化を阻げる要因となっていた。本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、遮光枠の左右方向の寸法を小さくでき、カメラのコンパクト化を図る上で有利なパノラマ機能付きカメラを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため本発明は、パノラマモード切り換えスィッチの操作により互いに上下逆向きに動き撮影レンズとフィルムの間の光路の上下部分を遮光、開放して画面サイズを標準モードからパノラマモードへ、パノラマモードから標準モードへ切り換える二つの遮光部材を備えたパノラマ機能付きカメラにおいて、前記各遮光部材を板状に形成して前後に重ね合わせ、前記二つの遮光部材の一方を、透明な部材により前記光路を覆う大きさでかつ光路の上下高さよりも大きな高さで形成し、他方の遮光部材を前記一方の遮光部材の上部あるいは下部に配置し、他方の遮光部材に所定の幅で左右方向に延在する遮光部を設けると共に、他方の遮光部材が配設された側とは上下に反対側の前記一方の遮光部材部分に所定の幅で左右方向に延在する遮光部を設けたことを特徴とする。
【0008】また、本発明は、前記遮光部材がアパーチャグリルの近傍に配設されていることを特徴とする。また、本発明は、前記遮光部材がアパーチャグリルと鏡胴との間に配設されていることを特徴とする。また、本発明は、前記二つの遮光部材により、あるいは一方の遮光部材により鏡胴の内側開口が閉塞されていることを特徴とする。また、本発明は、前記一方の遮光部材の上下方向の動きが、該遮光部材の両側端面に摺動可能に接触するガイド面により案内されることを特徴とする。また、本発明は、前記一方の遮光部材の両面に反射防止コーティングが施されていることを特徴とする。また、本発明は、前記遮光部が黒色塗料が塗布されて、あるいは、遮光テープが貼着されて形成されていることを特徴とする。
【0009】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に従って説明する。図1はカメラの概略縦断面図、図2は遮光枠の正面図、図3は遮光枠の側面図、図4,図5はそれぞれ第1,第2遮光部材の正面図である。図1中、1はパノラマ機能付きカメラ、3はレンズ、5は鏡筒、7はカメラボディ、9はカメラボディの背面に開閉可能に設けられた裏蓋、11はフィルム、13は裏蓋に設けられたフィルムの圧板、15はアパーチャグリル、16はアパーチャグリルの背面に設けられたフィルムレール、17は切換えスイッチ、19は遮光枠を示している。
【0010】画面サイズを標準モードからパノラマモードへ、パノラマモードから標準モードへ切り換える遮光枠19は、鏡筒5とアパーチャグリル15との間に設けられている。遮光枠19は第1遮光部材21と第2遮光部材23からなり、各遮光部材21,23は、薄い厚みで面積の異なる二枚の四角い板状部材で形成されている。第1遮光部材21と第2遮光部材23の左右方向の寸法は、アパーチャグリル15の内側開口15A及び鏡胴5の内側開口5Aよりも若干大きな寸法で形成されている。また、第1遮光部材21の上下方向の寸法は、アパーチャグリル15の内側開口15A及び鏡胴5の内側開口5Aよりも大きな寸法で形成され、第2遮光部材23の上下方向の寸法は、後述の遮光部23Aよりも若干大きな寸法で形成されている。前記第1遮光部材21と第2遮光部材23は共に透明なアクリルにより形成され、第1遮光部材21の両面には反射防止用のコーティングが施されている。前記第1遮光部材21と第2遮光部材23のそれぞれの下部には所定幅の遮光部21A,23Aが左右方向に延設されている。前記遮光部21A,23Aは、例えば、黒色の塗料を塗布することで、あるいは、遮光テープを貼ることで形成されている。
【0011】第1遮光部材21と第2遮光部材23は、図1に示すように、第1遮光部材21がアパーチャグリル15側に、第2遮光部材23が鏡胴5側に位置するようにカメラ1の前後方向に重ね合わされ、かつ、第2遮光部材23が第1遮光部材21の上部に位置するように配設されている。そして、第1遮光部材21は、その後面がアパーチャグリル15の前面15Bに接すると共に前面が鏡筒5の後面5Bに接するように配設されている。また、第2遮光部材23は、その後面が第1遮光部材21に接すると共に、左右端面23C及び前面が鏡筒5の後面5Bの上部に形成された後方に開放状の欠部5Cの左右端面及び後面に接するように配設されている。このように配設されることで、第1遮光部材21と第2遮光部材23の前後方向の位置が設定され、また、鏡胴5の内側開口5Aが第1遮光部材21と第2遮光部材23により閉塞される。また、第1遮光部材21の左右の端面21Cと第2遮光部材23の下部の左右端面23Cに接するガイド面27Aを備えた上下に細長いガイド部材27が第1遮光部材21と第2遮光部材23の両側に配設され、これらのガイド部材27、27はカメラボディ側に固設され、ガイド部材27、27により第1遮光部材21と第2遮光部材23の左右方向の位置が設定される。
【0012】前記第1遮光部材21の左上部に連結部29が上方に向けて突設され、前記第2遮光部材23の右上部に連結部31が上方に向けて突設されている。前記第2遮光部材23の連結部31の上端は、図1に示すように、接続ロッド33を介してパノラマモード切換え用の切換えスイッチ17に連結されている。また、前記第1,第2連結部29,31はリンク35の両端にそれぞれピン37と長孔38で連結され、リンク35の中央部がピン39によりカメラボディ7側に揺動可能に枢支され、これにより切換えスイッチ17の操作により第1遮光部材21と第2遮光部材23がガイド部材27、27に案内されつつ互いに上下逆向きに動くように配設されている。
【0013】すなわち、切換えスイッチ17を上方に移動すると、接続ロッド33、連結部31を介して第2遮光部材23が上方に移動し、遮光部23Aがアパーチャグリル15の内側開口15Aの上方に移動する。同時に、連結部31の動きがリンク35から連結部29に伝達され、第1遮光部材21が下方に移動し、遮光部21Aがアパーチャグリル15の内側開口15Aの下方に移動し、図2及び図6に示す標準モードに設定される。尚、この状態で、第1遮光部材21と第2遮光部材23により鏡胴5の内側開口5Aが閉塞された状態は維持されている。
【0014】また、切換えスイッチ17を下方に移動すると、今度は、接続ロッド33、連結部31を介して第2遮光部材23が下方に移動し、遮光部23Aがアパーチャグリル15の内側開口15A内の上部に位置する。同時に、連結部31の動きがリンク35から連結部29に伝達され、第1遮光部材21が上方に移動し、遮光部21Aがアパーチャグリル15の内側開口15内の下部に位置し、図7に示すパノラマモードに設定される。尚、この状態でも、第1遮光部材21と第2遮光部材23により鏡胴5の内側開口5Aが閉塞された状態は維持されている。
【0015】本実施例によれば、第1,第2遮光部材21,23を互いに上下逆向きに移動させることで、画面サイズを標準モードからパノラマモードへ、パノラマモードから標準モードへ切り換えられることは無論のこと、第1,第2遮光部材21,23は、アパーチャグリル15の内側開口15A及び鏡胴5の内側開口5Aよりも若干大きな左右幅で足り、しかも、切換えスイッチ17とは離れた側の遮光部21Aを有する第1遮光部材21は大きな面積を有しそれ自体剛性を有するため上下させるためにこれ以上の左右幅を加える必要もなく、遮光枠19の左右方向の寸法を小さくできる。従って、従来のようにアパーチャグリル15の内側開口15Aや鏡胴5の内側開口5Aの左右外側にそれぞれ確保していた遮光枠の縦部専用スペースを省略でき、カメラのコンパクト化を図る上で有利となる。また、第1遮光部材21を上下に案内するガイド部材27の構造も、第1遮光部材21の左右端面21Cに接するガイド面27Aを有すれば足り、更に、このガイド部材27は第2遮光部材21のガイドとして共用できるので、左右幅をとることなくガイド部材27を配設でき、カメラのコンパクト化を図る上で有利となる。更に、第1,第2遮光部材21,23により鏡胴5の内側開口5Aを常時閉塞できるので、レンズ3部分への塵埃の侵入を防止することができ、レンズ3部分の保護を図る上でも有利となる。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、パノラマモード切り換えスィッチの操作により互いに上下逆向きに動き撮影レンズとフィルムの間の光路の上下部分を遮光、開放して画面サイズを標準モードからパノラマモードへ、パノラマモードから標準モードへ切り換える二つの遮光部材を備えたパノラマ機能付きカメラにおいて、前記各遮光部材を板状に形成して前後に重ね合わせ、前記二つの遮光部材の一方を、透明な部材により前記光路を覆う大きさでかつ光路の上下高さよりも大きな高さで形成し、他方の遮光部材を前記一方の遮光部材の上部あるいは下部に配置し、他方の遮光部材に所定の幅で横方向に延在する遮光部を設けると共に、他方の遮光部材が配設された側とは上下に反対側の前記一方の遮光部材部分に所定の幅で横方向に延在する遮光部を設けた。そのため、遮光枠の左右方向の寸法を小さくでき、カメラのコンパクト化を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】カメラの概略縦断面図である。
【図2】遮光枠の正面図である。
【図3】遮光枠の側面図である。
【図4】第1遮光部材の正面図である。
【図5】第2遮光部材の正面図である。
【図6】標準モード時のアパーチャグリル部分を示す正面図である。
【図7】パノラマモード時のアパーチャグリル部分を示す正面図である。
【図8】従来の遮光枠の正面図である。
【図9】従来の遮光枠の側面図である。
【符号の説明】
1 パノラマ機能付きカメラ
5 鏡筒
15 アパーチャグリル
19 遮光枠
21 第1遮光部材
21A 遮光部
23 第2遮光部材
23A 遮光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 パノラマモード切り換えスィッチの操作により互いに上下逆向きに動き撮影レンズとフィルムの間の光路の上下部分を遮光、開放して画面サイズを標準モードからパノラマモードへ、パノラマモードから標準モードへ切り換える二つの遮光部材を備えたパノラマ機能付きカメラにおいて、前記各遮光部材を板状に形成して前後に重ね合わせ、前記二つの遮光部材の一方を、透明な部材により前記光路を覆う大きさでかつ光路の上下高さよりも大きな高さで形成し、他方の遮光部材を前記一方の遮光部材の上部あるいは下部に配置し、他方の遮光部材に所定の幅で左右方向に延在する遮光部を設けると共に、他方の遮光部材が配設された側とは上下に反対側の前記一方の遮光部材部分に所定の幅で左右方向に延在する遮光部を設けた、ことを特徴とするパノラマ機能付きカメラ。
【請求項2】 前記遮光部材はアパーチャグリルの近傍に配設されている請求項1記載のパノラマ機能付きカメラ。
【請求項3】 前記遮光部材はアパーチャグリルと鏡胴との間に配設されている請求項1または2記載のパノラマ機能付きカメラ。
【請求項4】 前記二つの遮光部材により、あるいは一方の遮光部材により鏡胴の内側開口が閉塞されている請求項3記載のパノラマ機能付きカメラ。
【請求項5】 前記一方の遮光部材の上下方向の動きは、該遮光部材の両側端面に摺動可能に接触するガイド面により案内される請求項1,2,3または4記載のパノラマ機能付きカメラ。
【請求項6】 前記一方の遮光部材の両面には反射防止コーティングが施されている請求項1,2,3,4または5記載のパノラマ機能付きカメラ。
【請求項7】 前記遮光部は黒色塗料が塗布されて、あるいは、遮光テープが貼着されて形成されている請求項1,2,3,4,5または6記載のパノラマ機能付きカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図8】
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