説明

パリソンのガイド装置

【課題】平断面半円形のパリソンを平板状にする際の均し性に優れ、パリソンの付着が低減されるパリソンのガイド装置を提供する。
【解決手段】押出し装置1から押し出され、カッター2によって2つに分断された平断面半円形のパリソンPを平板状に均すガイド装置3であって、軸心回りに回転しながらパリソンPに接し、パリソンPを左右に拡げるように中央部4Cを境として左右の各旋回方向が逆向きに形成された螺旋ガイド体4を備える。螺旋ガイド体4は、駆動モータMの駆動により回転するシャフト5の外周に突状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パリソンのガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロー成形等に用いられ、押出し装置から垂下される平断面半円形のパリソンを平板状に均す装置の従来例として特許文献1、2に記載のものが挙げられる。両文献には、パリソンに円柱形状のガイド部材を当接させてその周面によってパリソンを平板状に均す技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平4−2087号公報
【特許文献2】特許第4295213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載の技術によれば、パリソンはガイド部材の周面により一旦は平板状に均されるものの、元の形状は平断面半円形の曲面であることから、ガイド部材を通過した後にパリソン自体の弾性復元力により再び曲面形状に戻りやすいという問題がある。
【0005】
また、押出し装置から押し出された直後のパリソンは未だ流動性の高い溶融状態にあるため、パリソンの一部がガイド部材の周面に付着しやすいという問題がある。この問題については、ガイド部材をパイプ材から構成し、その内部に冷却水を流して周面の温度を冷やすことによりパリソンの付着を抑制する方法が考えられる。しかしこの方法は冷却水の配管やポンプ等を要するために部材点数および組み付け工数が増加してガイド装置の製作コストが高くなりやすい。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するために創案されたものであり、平断面半円形のパリソンを平板状にする際の均し性に優れ、さらにパリソンの付着が低減されるパリソンのガイド装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、垂下される平断面半円形のパリソンを平板状に均すガイド装置であって、軸心回りに回転しながらパリソンに接し、パリソンを左右に拡げるように中央部を境として左右の各旋回方向が逆向きに形成された螺旋ガイド体を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、パリソンは、螺旋ガイド体の回転によって生ずる軸心方向の並進成分の力により、パリソンの幅方向中央を境にパリソンの幅方向外方に拡がりつつ下方に送られる。したがって、前記並進成分の力が加えられた分、パリソンの元の曲面形状に戻ろうとする弾性復元力が低減され、パリソンはより平坦な平板状に均される。
また、パリソンとの接触部位は軸心方向に間隔を空けて形成される螺旋ガイド体となるため、接触面積が小さくなり、その分、パリソンの付着が低減される。
【0009】
また、本発明は、前記螺旋ガイド体はシャフトの外周に突状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、螺旋ガイド体の剛性をシャフトによって高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、平断面半円形のパリソンを平板状にする際の均し性に優れ、かつパリソンの付着が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るパリソンのガイド装置の側面図である。
【図2】本発明に係るパリソンのガイド装置の平面図である。
【図3】本発明の螺旋ガイド体の側面図である。
【図4】本発明の螺旋ガイド体の側断面図である。
【図5】本発明の螺旋ガイド体の変形例を示す側断面図である。
【図6】本発明の螺旋ガイド体の他の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、パリソンPは押出し装置1の下端から押し出される。押出し装置1は、例えば溶融樹脂を中央のマンドレルと外側のダイとの間に形成される環状の樹脂通路からパリソンPとして円筒状に押し出す汎用構造の押出し装置である。押出し装置1の下方にはカッター2が設けられ、円筒状に押し出されたパリソンPはカッター2によりそれぞれ平断面半円形を呈する一対の切片に分断される。なお、パリソンPが既に平断面半円形を呈した一対の切片の状態で押出し装置1から押し出される態様であっても差し支えない。
【0014】
垂下された平断面半円形の各パリソンPはガイド装置3によって平板状に均される。図2(押出し装置1およびパリソンPは仮想線にて示す)も参照して、ガイド装置3は、軸心回りに回転しながらパリソンPに接し、パリソンPを左右に、つまりパリソンPの幅方向外方に拡げるように中央部4Cを境として左右の各旋回方向が互いに逆向きに形成された螺旋ガイド体4を備える。螺旋ガイド体4の材質は、金属材、合成樹脂材、ゴム材等であり、特に限定されるものではない。
【0015】
各パリソンPに接する2つの螺旋ガイド体4を符号4A,4Bとして区別すると、螺旋ガイド体4Aと螺旋ガイド体4Bとは、各軸心が水平方向に沿い、かつ互いに平行となるようにレイアウトされる。螺旋ガイド体4A,4Bは各パリソンPの内面側(円筒状態であったときの内周面側)に接しており、図1に示すように螺旋ガイド体4A,4Bの軸心方向から見て、一方の螺旋ガイド体4Aは反時計回りであるQ方向に回転してパリソンPを下方に送り、他方の螺旋ガイド体4Bは時計回りであるR方向に回転してパリソンPを下方に送る。
【0016】
図2、図3に示すように、螺旋ガイド体4は、例えばシャフト5の外周に突状に形成される。図4に示すように、螺旋ガイド体4の断面は山形形状を呈しており、その頂上部は曲面状に形成されている。図4では、螺旋ガイド体4をシャフト5と一体成形した態様を示しているが、シャフト5と別体に成形したうえでシャフト5に一体に組み付ける態様としても差し支えない。
【0017】
図2に示すように、シャフト5は、平板状のパリソンPの幅寸法以上の長さ寸法を有し、水平方向に沿って延設される円柱形状の部材であり、その両端周りは、図示しないフレームに取り付けられた軸受6に支承される。シャフト5の一端に軸着された従動プーリ7と駆動モータMの出力軸に軸着された駆動プーリ8との間には伝達ベルト9が掛け回される。
【0018】
螺旋ガイド体4Aは、Q方向の回転に対して、図2における中央部4Cよりも右側の領域においてはパリソンPを右側に向けて並進させる並進成分を有するようにシャフト5に旋回形成され、中央部4Cよりも左側の領域においてはパリソンPを左側に向けて並進させる並進成分を有するようにシャフト5に旋回形成される。螺旋ガイド体4Bも同様であり、R方向の回転に対して、図2における中央部4Cよりも右側の領域においてはパリソンPを右側に向けて並進させる並進成分を有するようにシャフト5に旋回形成され、中央部4Cよりも左側の領域においてはパリソンPを左側に向けて並進させる並進成分を有するようにシャフト5に旋回形成される。
【0019】
以上により、各駆動モータMの駆動によりシャフト5が回転すると、各パリソンPは、螺旋ガイド体4A,4Bの頂上部から受ける前記並進成分の力によって、パリソンPの幅方向中央を境にパリソンPの幅方向外方に拡がりつつ下方に送られる。したがって、前記並進成分の力が加えられた分、パリソンPの元の曲面形状に戻ろうとする弾性復元力が低減され、パリソンPはより平坦な平板状に均される。
【0020】
また、押出し装置1から押し出された直後のパリソンPは未だ流動性の高い溶融状態にあるため、パリソンPとの接触部位にパリソンPの一部が付着しやすいという問題がある。これに対し本発明のガイド装置3によれば、パリソンPとの接触部位は軸心方向に間隔を空けて形成される螺旋ガイド体4の頂上部周りとなるため、接触面積が極めて小さくなり、その分、パリソンPの付着が低減される。したがって、パリソンPの付着防止のために冷却水を用いる等の措置も省くことができる。
【0021】
ここで、螺旋ガイド体4の回転速度については、例えば駆動モータMの回転速度を変えることにより、可変に構成することができる。本発明者が試験したところでは、押出し装置1のパリソンPの送り出し速度に対して、螺旋ガイド体4の回転速度(厳密には、パリソンPとの接点の速度(角速度×螺旋ガイド体4の半径))が遅い場合にはパリソンPに波状のしわが生じやすくなり、逆に速い場合にはパリソンPが上下に引っ張られて薄肉部が生じやすい傾向が確認された。螺旋ガイド体4の回転速度をパリソンPの送り出し速度と略同じに設定したところ、これらの問題も生ずることなくパリソンPをスムーズにガイドできることが確認された。
【0022】
本発明の変形例として、図5は、シャフト5を中空パイプ材から構成し、このシャフト5とは別体の螺旋ガイド体4をシャフト5の外周面に巻回形成した例を示している。パリソンPの付着を一層低減する目的で、このシャフト5の内部に冷却水を流してもよい。
【0023】
本発明の他の変形例として、図6は螺旋ガイド体4の内側を中空とした構造を示す。この場合、螺旋ガイド体4の両端は例えば回転自在な軸部材10に取り付ける。本変形例は螺旋ガイド体4のみで剛性を確保できる場合に好適であり、図1〜図5に示したシャフト5を省略することができる。
【0024】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は図面に記載したものに限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 押し出し装置
2 カッター
3 ガイド装置
4(4A,4B) 螺旋ガイド体
4C 中央部
5 シャフト
P パリソン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂下される平断面半円形のパリソンを平板状に均すガイド装置であって、
軸心回りに回転しながらパリソンに接し、パリソンを左右に拡げるように中央部を境として左右の各旋回方向が逆向きに形成された螺旋ガイド体を備えることを特徴とするパリソンのガイド装置。
【請求項2】
前記螺旋ガイド体はシャフトの外周に突状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパリソンのガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−240293(P2012−240293A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112147(P2011−112147)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(390023917)八千代工業株式会社 (186)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】