説明

パルスレーダ送信機

【課題】送信パルスの波形変動やレーダ装置の装置特性の変動を伴うことなく、送信パルス信号のパルス幅や出力電力を良好に変更することが可能なパルスレーダ送信機を実現する。
【解決手段】パルスレーダ送信機2を、送信パルス信号を増幅するための多段接続された増幅器から成る増幅器群50a〜50nを設け、さらに増幅器群の各段の少なくとも最終段を複数の増幅器50m、50nを並列に接続して構成し、並列接続された複数の増幅器50m、50nのうちの一部を、送信パルス信号の送信レベルに応じて停止させる切替回路70と、増幅器50m、50nに供給する電源電圧を可変制御する電圧変更回路30とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、航空機や船舶に搭載され、又は陸上に設置されてパルス状の電波を放射し、ターゲットで反射した反射波を捉えて対象物との相対距離及び相対速度を求めるパルスレーダ装置やパルス圧縮レーダ装置においてレーダ波を送信する、パルスレーダ送信機に関する。より詳しくは、このようなパルスレーダ送信機において送出信号を増幅するために用いられる増幅器の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
現在レーダとして用いられているものの多くはパルスレーダである。一般にパルスレーダは距離の遠いターゲットを検出し、ターゲットまでの距離を測定することができる。図1は、従来のパルスレーダ装置1におけるパルスレーダ送信機2の概略構成を示すブロック図である。
パルスレーダ送信機2は、発振器11において高周波信号(CW)を発生させ、この高周波信号をスイッチ22へ入力し、制御部3に設けられた制御回路16が所望のパルス幅に対応する間隔でスイッチ22を開閉することによって、連続する高周波信号をパルス状のパルス信号に成形する。
【0003】
成形されたパルス信号は、アンテナ14によって送出される前に、直列に多段接続された複数の増幅器50a〜50nによって増幅される。このとき、各増幅器50a〜50nには、パルス部分を入力している期間(すなわち入力信号に信号レベルがある期間)の間だけ電源が供給され、パルス部分とパルス部分の間の信号レベルがない期間には各増幅器50a〜50nへの電源の供給を停止することによって消費電力を節約している。
このため各増幅器50a〜50nにそれぞれ電源を供給するドライバ回路60a〜60nは、各増幅器がパルス部分を入力する期間に前後に100ns程度のマージンを持たせた期間だけ、安定化電源回路90から供給される電源電圧を各増幅器50a〜50nに供給する。この様子を図2に示す。
なお以下の説明において、各増幅器50a〜50nを総称する場合には増幅器50と記すことがあり、ドライバ回路60a〜60nを総称する場合にはドライバ回路60と記すことがある。
【0004】
図2は、スイッチ22の開閉並びに増幅器50への電源供給及び停止(オンオフ動作)によるパルス成形の様子の説明図である。図示の信号a及び信号bは、図1のa部分及びb部分に現れる信号であり、それぞれスイッチ22を開閉する制御回路16からの制御信号、及びドライバ回路60a〜60nによる増幅器50a〜50nへの電源供給を開始及び停止する制御回路16からの制御信号を示す。
また、図2に示す信号A及び信号Bは図1のA部分及びB部分に現れる信号であり、それぞれ高周波の連続波をスイッチ22によりパルス成形した信号、及びパルス成形された信号を増幅器50によって増幅した後の信号を示す。
【0005】
図示する通り、制御回路16からの制御信号aにより、スイッチ22は所定の繰り返し周期Tで所望のパルス幅Wの間だけ閉じ、その他の期間において開放される。これによってスイッチ22は発振器11で発生した高周波信号を信号Aに示すようなパルス状に成形する。
一方で、制御回路16からの制御信号bによって、ドライバ回路60は、成形されたパルス信号に同期するタイミングで、かつこのパルス信号の前後に所定のマージンを持たせた時間だけ増幅器50へ電源を供給することによって、成形されたパルス信号を信号Bに示すような所定の送信電力値Pの信号に増幅する。
【0006】
また、パルスレーダ送信機2では、パルスレーダの方式及び用途によって、送信するパルス信号の種類を切り替える。例えば測定範囲を広げ遠距離までパルス信号を送出する必要がある場合には大きい出力電力のパルス信号を用い、また測定範囲が狭くパルス信号の送出距離が近距離までで足りる場合には小さい出力電力のパルス信号を用いる。
また、高い分解能を必要とする場合にはパルス幅が短いパルス信号を用い、そうでない場合にはパルス幅が長いパルス信号を用いる。
【0007】
したがって、パルスレーダ送信機2が送信するパルス信号を分類すると、高出力及び長パルスのパルス信号と、高出力及び短パルスのパルス信号と、低出力及び長パルスのパルス信号と、低出力及び短パルスのパルス信号とに分類される。
この分類分けを図3に示す。送信機2を、それぞれ第1モードで使用する場合には高出力及び長パルスのパルス信号が、第2モードで使用する場合には高出力及び短パルスのパルス信号が、それぞれ第3モードで使用する場合には低出力及び長パルスのパルス信号が、第4モードで使用する場合には低出力及び短パルスのパルス信号が送信される。
【0008】
送信パルス信号のパルス幅Wの長短の切り換えは、制御回路16が、スイッチ22を開閉する制御信号a、及び増幅器50a〜50nへの電源の供給及び停止を制御する制御信号bの、各々パルス幅を変更することによって行う。
送信パルス信号の出力電力の切り換えは、図1に示す可変減衰器21により行う。制御回路16は、可変減衰器21の減衰量を調整することによって発振器11で発生した高周波信号を所定量だけ減衰させることによって、所定の信号レベルに調整する。
【0009】
【特許文献1】特開平11−183612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の従来のパルスレーダ送信機には、以下に説明するいくつかの欠点がある。
第1に、パルスレーダ送信機2がパルス信号を高出力で送信するか低出力で送信するかによって、増幅器50a〜50nの動作領域が変わるという問題がある。
図4に一般的な増幅器の入出力電力特性を示す。一般にレーダ装置では、出力電力を安定化させかつ増幅器の増幅効率を高めるために、増幅器を飽和領域A1(非線形動作領域)で使用する場合が多い。しかし、上記の通り送信パルス信号の出力電力の切り換えを増幅器の前段の減衰器21で行うと、低出力時に入力レベルが低下して増幅器が線形領域A2内で動作する。
【0011】
このため、まず低出力時においてパルス高さの変動が大きくなるという問題がある。この様子を図5の(A)及び図5の(B)を参照して説明する。すなわち高出力時においては増幅器が飽和動作を行うために、発振器11の出力レベルの変動や増幅器自体の温度変動による出力波形への影響が緩和されていたところ、低出力時には線形動作を行うためこのようなパルス高さの変動が大きくなる。
【0012】
またレーダ装置の装置特性を変えないためには、送信パルスの位相変動を抑えることが望ましい。しかし従来のパルスレータ送信機では、高出力時と低出力時で増幅器の動作領域が異なることにより、増幅器による位相ずれ量に差が生じ位相変動が生じていた。
さらに、高出力時は飽和動作のため効率が高いが、低出力時は線形動作のため効率が低下するといった問題があった。
【0013】
第2に、送信機の動作モードによって増幅器へ供給される電源電圧が変動するため、送信パルス信号の出力電力値の設定が煩雑になるという問題があった。この理由を図6及び図7を参照して説明する。
図6は、レーダ送信機のような高周波回路に用いられる増幅器50の構成例を示す図である。図示するとおり増幅器50は、増幅素子としての電界効果トランジスタ(以下「FET」と記す)51を備える。FET51のゲート端子は、直流成分除去用のキャパシタC1を介して入力端子に接続され、また直流ゲートバイアス電圧VGGが高周波信号帯では十分高いインピーダンスのチョークインダクタL1を介して印加される。
一方でソース端子は接地され、ドレイン端子には高周波信号帯では十分高いインピーダンスのチョークインダクタL2を介して電源電圧VDDが印加される。そして、ドレインソース間電圧VDSからキャパシタC2によって直流成分を除去した増幅信号を、出力信号として取り出す。
ここで、ドレイン端子から取り出す増幅信号に、直流成分として電源電圧VDDを含み、電圧VDDを中心として振動する交流信号(高周波信号)となるため、ドレイン端子に印加される電源電圧VDDは「ドレインバイアス電圧」と呼ばれることがある。
【0014】
図7は、増幅器50にドレインバイアス電圧を供給するドライバ回路60の構成図である。ドライバ回路60は、電源を供給する安定化電源回路90と増幅器50のドレイン端子との間を開閉するMOS型電界効果トランジスタ(以下「MOS−FET」と記す)62と、図2に示した制御回路16からのパルス信号bに従ってMOS−FET62を駆動するドライバIC61と、安定化電源回路90から供給される電源電圧を平滑するための平滑用コンデンサC3と、ドレインバイアス電圧VDDを所定の電圧値に調整するための抵抗R1とを備えて構成される。
【0015】
まず、ドレインバイアス電圧VDDの変動は、送信パルス信号のパルス幅の違いによって生じる。動作モードに応じて送信パルス信号のパルス幅Wは変化するが、繰り返し周期Tには変化がないためMOS−FET62のソース端子に流れ込むパルス電流のデューティー比が変化する。
すると、安定化電源回路90から流れる直流電流値IDCに変化が生じるため、安定化電源回路90とMOS−FET62との間に存在する抵抗成分rに生じる電圧降下のためにMOS−FET62のドレイン端子の電位が変わり、その結果としてドライバ回路60のドレインバイアス電圧VDDの変動を招く。
【0016】
また、ドレインバイアス電圧VDDは、電圧値調整用の抵抗R1を流れる増幅器50の消費電流Ipの変化によっても変動する。特に、多段接続された増幅器50a〜50nの最終段に使用される高出力の増幅器50nでは、出力電力の相違による消費電流の変化が大きい。このためパルスレータ送信機2が高出力時で動作する際(動作モード1及び2のとき)のドレインバイアス電圧VDDが、低出力時(動作モード3及び4のとき)におけるそれよりもかなり低くなるため、高出力時と低出力時とでパルスレータ送信機2の出力電力差を大きくとることに関して障害となっていた。
【0017】
上記問題点に鑑み、本発明は、送信パルスの波形変動やレーダ装置の装置特性の変動を伴うことなく、送信パルス信号のパルス幅や出力電力を良好に変更することが可能なパルスレーダ送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明では、送信パルス信号を増幅するために設けられた多段接続された増幅器から成る増幅器群の各段のうち、少なくとも最終段を複数の増幅器を並列に接続して構成し、並列接続された複数の増幅器の一部を送信パルス信号の送信レベルに応じて停止させる。また、送信パルス信号の送信レベルに応じて、増幅器に供給する電源電圧を可変制御する。
並列接続された複数の増幅器の一部を停止させて、または増幅器に供給する電源電圧を可変制御させて送信パルス信号の送信レベル(すなわち出力電力)を変更することによって、増幅器を飽和領域で動作させたまま送信パルス信号の送信レベルを変更することが可能になるので、増幅器の動作領域が変わることにより生じる上記問題点が解消される。また、送信レベルを下げるときに最終段の増幅器の一部を停止することによって、可変減衰器を使用する従来の送信機と比べて消費電力が小さくなる。
【0019】
すなわち、本発明によるパルスレーダ送信機は、多段接続された増幅器から成る増幅器群によって送出するべき送信パルス信号を増幅するパルスレーダ送信機であって、増幅器群の各段の少なくとも最終段を複数の増幅器を並列に接続して構成し、並列接続された複数の増幅器のうちの一部を送信パルス信号の送信レベルに応じて停止させる切替回路と、少なくとも送信レベルに応じて増幅器に供給する電源電圧を可変制御する電圧変更回路と、を備えて構成される。
【0020】
ここで、電圧変更回路を、並列接続された複数の増幅器のうち切替回路により停止された増幅器以外へ供給する電源電圧を低減するように構成してよい。このように並列接続された複数の増幅器の一部を停止し、残りの増幅器へ供給する電源電圧を低減することにより、高い送信レベルで信号を送信する場合と低い送信レベルで信号を送信する場合との間の送信レベル差を広げることが可能となる。
【0021】
増幅器を電界効果トランジスタで実現することとしてよい。この場合、そのゲート端子に信号を入力し、ソース端子を接地し、ドレイン端子には負荷インダクタンスを介してドレインバイアス電圧を印加する。そしてドレインバイアス電圧をオン及びオフするによって増幅器を作動及び停止させる。パルスレーダ送信機には、ドレインバイアス電圧をオン及びオフするための駆動回路を設けてよい。また、電圧変更回路はドレインバイアス電圧を変更することとしてよい。
【0022】
この駆動回路は、送信パルスに同期してドレインバイアス電圧を間欠制御するMOS型電界効果トランジスタを備えて構成してよい。本構成により高速に大電流をオンオフ切替が可能となる。また増幅器を間欠動作させることによって消費電力を節約する。
一方で、増幅器群のうち最終段以外の段では、増幅器の消費電力がもともと小さいので、これらの段ではドレインバイアス電圧の間欠制御を行わなくともよい。これにより駆動回路数を節減することが可能となる。
【0023】
電圧変更回路は、一方の端子が定電圧電源に各々接続される異なる抵抗値の複数の抵抗と、複数の抵抗の他方の端子をドレイン端子との間をそれぞれ開閉する複数のMOS型電界効果トランジスタと、を備えて構成してよい。このように構成すれば、高速及び大電流の電源電圧の切替が可能となる。
そしてパルスレーダ送信機は、送信パルス信号の送信レベルまたはパルス幅に応じて、複数のMOS型電界効果トランジスタのうちのいずれを駆動するかを選択する選択信号を生成する制御回路を備える。
パルス幅に応じて定電圧電源とドレイン端子との間に接続される抵抗を切り替えることによって、パルス幅に応じたデューティー比の変化によるドレインバイアス電圧の変動を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、送信パルスの波形変動やレーダ装置の装置特性の変動を伴うことなく、送信パルス信号のパルス幅や出力電力を良好に変更することが可能なパルスレーダ送信機が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施例を説明する前に、本発明の基本原理を説明する。図8は本発明によるパルスレーダ送信機の基本構成図である。
パルスレーダ装置1において、レーダ波を送信するパルスレーダ送信機2は、発振器11において高周波信号(CW)を発生させ、この高周波信号をスイッチ22へ入力する。所望のパルス幅に対応する間隔でスイッチ22を開閉することによって、連続する高周波信号をパルス状の送信パルス信号に成形する。
スイッチ22は制御部3に設けられた制御回路16からの制御信号に従って開閉動作を行う。このとき制御回路16は、スイッチ22を閉じる時間を変更することによって、送信パルス信号のパルス幅を切り替える。
【0026】
成形された送信パルス信号はアンテナ14によって送出される前に、直列に多段接続された複数の増幅器50a〜50m、50nによって増幅される。
各増幅器50a〜50m、50nにそれぞれ電源を供給するドライバ回路60a〜60m、60nは、各増幅器50に送信パルス信号のパルス部分が入力される間(すなわち入力信号に信号レベルがある期間)だけ、各増幅器50a〜50m、50nに電源電圧を供給する。実際にはパルス部分の前後に所定の余裕(例えば100ns程度)を持たせた期間だけ電源電圧を供給する。
このように各増幅器50へ電源を供給することによって、パルス部分とパルス部分の間の信号レベルがない期間に電源供給を停止して消費電力を節約すると共に、各増幅器50の立ち上がり/立ち下がりに生じる出力信号のダレを防止する。
【0027】
各ドライバ回路60は、各増幅器50へ電源を供給及び停止するタイミングを、制御回路16からの制御信号に従って決定する。制御回路16は、スイッチ22の開閉タイミングに同期してスイッチ22を閉じる期間の前後に余裕を持たせた期間だけ各ドライバ回路60が電源電圧を供給するように、電源の供給及び停止タイミングを決定する。
各ドライバ回路60は、制御回路16により指示されたタイミングで、後述する電圧変更回路30を経由して安定化電源回路90から供給される電源を各増幅器50へ供給する。
【0028】
パルスレーダ送信機2が送信するパルス信号を分類すると、図9に示すようになる。すわなち、第1モードで送信機2を使用する場合には高い出力電力及び長パルスのパルス信号を、第2モードで使用する場合には高出力電力及び短パルスのパルス信号を、それぞれ第3モードで使用する場合には低出力電力及び長パルスのパルス信号を、第4モードで使用する場合には低出力電力及び短パルスのパルス信号を送信する。
【0029】
図8に戻り、本発明では多段接続された増幅器群50a〜50m、50nのうちの最終段を、並列接続した増幅器50m及び50nで構成する。そして、低い出力電力で送信パルス信号を送信する場合には、並列接続した最終段の増幅器50m及び50nのうち一方への電源供給を停止する。このために、最終段の増幅器50m及び50nへそれぞれ電源を供給するドライバ回路60m及び60nと、制御回路16との間に切替回路70を備える。
制御回路16は、パルスレーダ送信機2が動作する動作モードに応じて、送信出力電力を表す出力電力指示信号を生成しこれを切替回路70に出力する。制御回路16は、パルスレーダ送信機2の動作モードを表す動作モード指示信号を生成して、動作モード指示信号に応じて出力電力指示信号を生成してよく、動作モード指示信号を出力電力指示信号として使用してもよい。
【0030】
切替回路70は、パルス信号を低い出力電力で送信することを示す出力電力指示信号に応答して、最終段の増幅器50m及び50nのいずれか一方への電源供給を停止する。例えば、切替回路70は、ドライバ回路60m及び60nのうちいずれか一方に対して、制御回路16からの制御信号を遮断することによって、最終段の増幅器50m及び50nのいずれか一方への電源供給を停止することとしてよい。
図9に示す例では、パルス信号を低い出力電力で送信するモード3及び4において、増幅器50nへの電源供給を停止する。
【0031】
本発明では、送信パルス信号の出力電力を下げる手段として、並列接続した増幅器のうち一方への電源供給を停止する手法を採るため、増幅器への入力電力を下げる必要がない。このため、従来のように送信パルス信号の出力電力を変えても、動作領域を変えることなく増幅器を使用することが可能である。
そこで本発明では、増幅器50を、図10に示す非線形領域A1内に動作領域を留めたまま使用する。好適には出力レベルがP2dB〜P5dBとなる領域において増幅器50を使用する。このように増幅器50の動作領域を非線形領域A1内に留めたまま使用することによって、出力レベルの相違によるパルスレーダ送信機2の装置特性の変化を小さくして、安定したレーダ波を送信する。
【0032】
上述の通り、パルス信号を低い出力電力で送信するモード3及び4では、最終段の増幅器50m及び50nのうちの一方の増幅器50mの電源供給が停止するが、さらに本発明では図9に示すように残りの他の増幅器50nに対して供給される電源電圧を低減する。このためパルスレーダ送信機2は、図8に示すように、動作モードに応じて各増幅器50へ供給される電源の電圧を変更する電圧変更回路30を備える。
【0033】
図11は、安定化電源回路90との間に電圧変更回路30が挿入された場合の各ドライバ回路60の構成図である。ここで、各ドライバ回路60が電源を供給する各増幅器50は、図6を参照して説明した上記の増幅器と同様に構成されるものとして以下説明する。
ドライバ回路60は、電源を供給する安定化電源回路90と増幅器50のドレイン端子との間を開閉するMOS−FET62と、電源供給タイミング及び停止タイミングを指示する制御回路16からの制御信号に従ってMOS−FET62を駆動するドライバIC61と、安定化電源回路90から供給される電源電圧を平滑するための平滑用コンデンサC3と、ドレインバイアス電圧VDDを所定の電圧値に調整するための抵抗R1とを備えて構成される。
【0034】
図示するように、電圧変更回路30は、ドライバ回路60と安定化電源回路90との間に設けられる。そして、パルスレーダ送信機2の動作モードを表す動作モード指示信号を制御回路16から入力して、動作モードに応じて、例えばドライバ回路60と安定化電源回路90との間の抵抗値を変更することによって、ドライバ回路60が出力するドレインバイアス電圧VDDを変更する。
図6に示すように、増幅器50は、増幅素子であるFET51のドレイン端子にインダクタンス負荷Lを介してドレインバイアス電圧VDDを印加し、接地されたソース端子とドレイン端子との間のドレインソース間電圧VDSを出力信号として取り出す。
電圧変更回路30は、ドレインバイアス電圧VDDを変更することによってドレインソース間に現れる出力信号の電圧振幅を変化させて、増幅器50の出力電力を変更する。
【0035】
図12の(A)〜図12の(D)を参照して、電圧変更回路30によるドレインバイアス電圧VDDの調整例を示す。
図7を参照して上記説明した通り、ドレインバイアス電圧VDDは、電圧値調整用の抵抗R1を流れる増幅器50の消費電流Ipの変化によって変動しパルスレータ送信機2が高出力時で動作する際(動作モード1及び2のとき)のドレインバイアス電圧VDDが、低出力時(動作モード3及び4のとき)におけるそれよりもかなり低くなる。この様子を図12の(A)に示す。このため、高出力時と低出力時におけるパルスレータ送信機2の出力電力差を大きくとることに関して障害となっていた。
そこで電圧変更回路30は、パルスレータ送信機2がパルス信号を送信する出力電力が高出力であるか低出力であるかに応じて、ドレインバイアス電圧VDDを変更する。たとえば電圧変更回路30は、高出力であるか低出力であるかに応じて、ドライバ回路60と安定化電源回路90との間の抵抗値を変えることによって、ドレインバイアス電圧VDDを変更する。
このようにして、図12の(B)に示すように低出力時に供給されるドレインバイアス電圧VDDを高出力時におけるそれよりも低くする。送信パルス信号を低出力で送信する場合の出力電力を低くし、高出力時と低出力時における出力電力差を大きくとることが可能となる。
【0036】
また電圧変更回路30は、従来、図12の(C)に示すように送信パルス信号のパルス幅の違いによるデューティー比変化のために変動していたドレインバイアス電圧VDDを、図12の(D)に示すように一定に保つために使用してよい。
このため電圧変更回路30は、パルスレータ送信機2が送信するパルス信号のパルス幅に応じて、例えばドライバ回路60と安定化電源回路90との間の抵抗値を変えることによって、パルス幅の変動にかかわらずドレインバイアス電圧VDDを一定に保ってもよい。
【0037】
このようにパルス信号を低い出力電力で送信するモード3及び4において、最終段の増幅器50m及び50nのうちの一方の電源供給を停止すると共に、他方に対して供給される電源電圧を低減することによって、図13に示すように、高電力時(モード1及び2)と低出力時(モード3及び4)との間における、飽和動作時における出力電力の差ΔLを大きくすることが可能となる。
【0038】
図14に、本発明の実施例によるパルスレーダ装置の概略構成図を示す。
パルスレーダ装置1は、ターゲットに向けてパルスレーダ波を送出するとともに、ターゲットから反射した反射波を受信するアンテナ14と、パルスレーダ波を生じるパルス信号をアンテナ14に供給する送信機2と、アンテナ14が受信した受信波を所定の中間周波数まで復調する受信機4と、送信機2が生成したパルス信号をアンテナ14に供給するとともにアンテナ14が受信した受信信号を受信機4に供給するサーキュレータ13を備える。
また、パルスレーダ装置1は、送信機2により生成されるパルス信号の元となる高周波の連続波信号、及び受信機4が受信波を周波数変換する際に使用する局部交流信号Loを発生させる電圧制御発振器(VCO)11と、VCO11が発生させたこれら高周波信号及び局部交流信号Loをそれぞれ送信機2及び受信機4に分配する分配器12と、オペレータがパルスレーダ装置1に動作モードを指定する操作パネル15と、設定された動作モードに応じた制御信号を生成して送信機2の各部へ出力することにより送信機2によるパルス波の生成動作を制御する制御回路16と、受信機4により所定の中間周波数まで復調された受信信号を処理してターゲットまでの相対距離及び相対速度などの検出結果を導出する信号処理回路17と、導出された検出結果を表示する表示器18とを備える。
【0039】
受信機4は、アンテナ14による受信電波RFを増幅する低雑音増幅器41と、VCO11が発生させた局部交流信号Loによって受信電波RFを、信号処理回路が扱える周波数帯の中間周波数信号IFへ変換する周波数変換器43と、中間周波数増幅器45と、各帯域濾過フィルタ42及び44とを備えて構成される。
【0040】
送信機2は、図8を参照して説明した本発明によるパルスレーダ送信機の基本構成と同様の構成を有する。したがって同じ構成要素には同じ参照番号を付すこととし、これら同じ参照番号を有する構成要素同士は、以下に詳細に説明するもののほか、同様の機能を有する。
以上、本実施例によるパルスレーダ装置1の概略構成を説明したが、本発明の特徴は送信機2の構成及び動作にあり、以下、送信機2の構成及び各構成要素の動作を説明する。
【0041】
いま、送信機2の動作モードの種類及び各モードにおいて生成されるパルス信号の種類は、図3及び図9を参照して説明した通りであるとする。オペレータが操作パネル15から送信機2の動作モードを指定すると、制御回路16は、送信機2が指定されたモードに対応した送信パルス信号を生成するように、送信機2の各部に対する各制御信号を生成する。
【0042】
図15は、パルスレーダ装置1の各部分a〜kに現れる信号a〜kのタイムチャートである。
制御回路16は、制御信号aをVCO11に出力することにより、レーダ装置1が送信状態であるか受信状態であるかに応じて、送信機2により生成されるパルス信号の元となる周波数f1の連続波信号、及び受信機4が受信波を周波数変換する際に使用する周波数f2の局部交流信号Loの何れを発生するかを指定する。VCO11は、制御信号aに応答して、図示bに示す信号のようにその発振信号の周波数を切り替える。VCO11が発信した信号は分配器12を介してスイッチ22に入力される。
【0043】
制御回路16は、所定の繰り返し周期Tでスイッチ22を間欠動作させて、指定された動作モードに対応するパルス幅Wの間だけスイッチ22を閉じることによって、VCO11が発信した高周波の連続波信号をパルス状の送信パルス信号dに成形する。
成形されたパルス信号は、アンテナ14によって送出される前に、直列に多段接続された複数の増幅器50a、50b、50m及び50nによって増幅される。ここで多段構成された増幅器群50のうち最終段は、2つの増幅器50m及び50nを並列に接続して構成している。
【0044】
制御回路16は、スイッチ22を間欠動作させてパルス信号dを成形したタイミングと同期して、かつスイッチ22を閉じた期間の前後に100ns程度のマージンを持たせた幅のパルス幅を有するパルス状の制御信号eを、各ドライバ回路60に向けて出力する。
また制御回路16は、指定された動作モードに応じて、送信機2の出力電力のモードが高出力モードであるのか低出力モードであるのかを示す出力電力指示信号fを、切替回路70に出力する。図15に示す信号fの例では、パルス信号dの1つ目のパルスPL1が高出力で送信されるべきであることを示し、2つ目のパルスPL2が低出力で出力されるべきであることを示す。
【0045】
制御回路16から制御信号eを受信した前段のドライバ回路60a及び60bは、制御信号eに含まれるパルスの期間だけ、電圧変更回路30から供給される電源電圧を、増幅器50a及び50bへそれぞれ供給する(図15の信号g)。
このとき電圧変更回路30は、制御回路16から現在の動作モードを示す動作モード指示信号を受信して、この動作モードに応じて各ドライバ回路60が各増幅器50に供給する電圧を変更する。この点については後に詳述する。
図15に示す電源電圧gの例では、低出力モード時は、高出力モード時に比べて電圧差ΔVだけ低い電源電圧がドライバ回路60a及び60bから供給され、高出力時と低出力時との間で送信機2の出力電力に差を設けている。
【0046】
各ドライバ回路60による電源開始及び停止タイミングを定める上記のタイミング制御信号eは切替回路70にも入力される。また、切替回路70には出力電力指示信号fも入力される。
図16に切替回路70の構成例を示す。切替回路70は、並列接続される最終段の増幅器50m及び50nに対してそれぞれ電源電圧を供給するドライバ回路60m及び60nに接続され、タイミング制御信号eを出力する2つの出力端子T1及びT2を備える。そして、その一方の端子にはタイミング制御信号eをそのまま出力し、その他方にはタイミング制御信号eと出力電力指示信号fとの間の論理積信号を出力する。そのために切替回路70は、タイミング制御信号eと出力電力指示信号fを生成するNAND素子71を備える。
【0047】
したがって、例えば図示の例では、ドライバ回路60m及び60nのうちの、ドライバ回路60mには、送信機2が高出力モードであるか低出力モードであるかに関係なく(すなわち動作モードに関係なく)、図15に示す信号hのようにタイミング制御信号eが供給される。
他方のドライバ回路60nには、図15に示す信号iのように高出力モードのときにだけタイミング制御信号eが供給され、低出力モードのときにはタイミング制御信号eが供給されない。
【0048】
この結果、図15において信号jに示すように、送信機2が高出力モードであるか低出力モードであるかに関係なく増幅器50mに電源電圧が供給され、図15において信号kに示すように、他方の増幅器50nには高出力モードのときにだけ電源電圧が供給され、低出力モードのときには供給されず動作を停止する。
なお、図16に示すように切替回路70にスイッチ72を設けて、低出力モードのときにタイミング制御信号eを遮断するドライバ回路を、ドライバ回路60m及び60nのいずれかから自由に選択できるように構成してもよい。
【0049】
また図15の信号jに示すように、切替回路70により低出力モードの動作が停止されない増幅器50mに供給される電源電圧もまた、電圧変更回路30によって、低出力モード時と高出力モード時とで切り替えられる。図15に示すの例では、低出力モード時は、高出力モード時に比べて電圧差ΔVだけ低い電源電圧がドライバ回路60mから供給され、高出力時と低出力時との間で送信機2の出力電力に差を設けている。
このように多段増幅器の最終段を、並列接続された2つの増幅器50m及び50nで構成し、低出力モード時において、これら増幅器50m及び50nの一方の増幅器50nを切替回路70によって停止し、残りの増幅器50nの供給電圧を電圧変更回路30によって低減することによって、低出力モード時と高出力モード時とで、送信機2が生成する送信パルス信号の出力電力差を拡大することが可能となる。
【0050】
図17は、ドライバ回路60の構成例を示すブロック図である。ここで、各ドライバ回路60が電源を供給する各増幅器50は、図6を参照して説明した上記の増幅器と同様に構成されるものとして以下説明する。
ドライバ回路60は、電圧切替回路30と増幅器50のドレイン端子との間を開閉するMOS−FET62と、MOS−FET62を駆動するドライバIC61と、安定化電源回路90から供給される電源電圧を平滑するための平滑用コンデンサC3と、ドレインバイアス電圧VDDを所定の電圧値に調整するための抵抗R1とを備えて構成される。
【0051】
前段増幅器50a及び50bに電源電圧を供給するドライバ回路60a及び60bの場合には、ドライバIC61は制御回路16から入力する制御信号eにしたがって、MOS−FET62を駆動し、それぞれ増幅器50a及び50bのオンオフ動作を行う。
最終段の増幅器50m及び50nに電源電圧を供給するドライバ回路60m及び60nの場合には、ドライバIC61は切替回路70からそれぞれ入力する制御信号h及びiにしたがってMOS−FET62を駆動し、それぞれ増幅器50m及び50nのオンオフ動作を行う。
【0052】
各増幅器50のドレイン端子に印加するドレインバイアス電圧VDDを調整するための抵抗R1の値は、各段の増幅器50の増幅率に応じて設定される。
図14に示す各ドライバ回路60と各増幅器50との接続例、及び図17に示す各ドライバ回路60の構成例では、各段の増幅器50にそれぞれドライバ回路60を設けて、各段の増幅率に応じてそれぞれの抵抗R1を変えて設定することとしている。
これに代えて又はこれに加えて、図18に示すように、多段増幅器のいくつかの段において、それぞれの段の増幅器50a〜50cに共通のドライバ回路60を設け、各段の増幅器50a〜50cを接続抵抗値を変えて、共通のドライバ回路60の出力端子に接続してもよい。
【0053】
図19は、電圧変更回路30の構成例を示すブロック図である。電圧変更回路30は、定電圧電源回路90と各ドライバ回路60との間に設けられ、一方の端子が定電圧電源回路90に各々接続される異なる抵抗値の複数の抵抗R31〜R34を備える。
さらに、電圧変更回路30は、これら抵抗R31〜R34の他方の端子とドライバ回路60との各々の間を開閉する複数のMOS−FET35〜38を備える。各抵抗R31〜R34の他方の端子が各MOS−FET35〜38のソース端子にそれぞれ接続され、各MOS−FET35〜38のドレイン端子の各々は、各ドライバ回路60の入力端子に接続される。
【0054】
各MOS−FET35〜38のゲート端子は、それぞれドライバIC31〜34を介して制御回路16に各々接続される。制御回路16は、送信機2が動作モード1〜4のいずれのモードに設定されているかにしたがって各MOS−FET35〜38のいずれか1つを駆動することにより、各抵抗R31〜R34のうちいずれか1つを選択して定電圧電源回路90と各ドライバ回路60との間に接続する。
【0055】
ここで、抵抗R31〜R34の値は、各モード1〜4におけるパルス幅や送信パルスの出力強度の切り替えに伴って生じる消費電力変化に起因する、ドライバ回路60における電圧降下量を考慮してそれぞれ異なる値に設定される。
したがって送信機2が送信するパルス信号のパルス幅の長短の切り替えに起因して、各ドライバ回路60に生じる電圧降下量がパルス信号のデューティー比の変化のために変動しても、電圧変更回路30は、この切替に応じて定電圧電源回路90と各ドライバ回路60との間の抵抗値を切替えることによって、各ドライバ回路60がそれぞれの増幅器50に供給するドレインバイアス電圧VDDを一定に保つ。
【0056】
また送信パルスの出力強度の高低の切り替えに起因する各ドライバ回路60に流れる消費電力の変化のために、各ドライバ回路60に生じる電圧降下量が高出力時に大きくなり低出力時に小さくなっても、電圧変更回路30は、この切替に応じて定電圧電源回路90と各ドライバ回路60との間の抵抗値を切替えることによって、各ドライバ回路60が供給するドレインバイアス電圧VDDが、高出力時に比べて低出力時に小さくなるように調整する。
【0057】
なお本実施例では、多段増幅器の最終段において並列接続される増幅器50m及び50nの入力端及び出力端には、それぞれアイソレータ26及び27並びにアイソレータ28及び29が設けられる。これらアイソレータ26〜29を設けることによって、パルス信号を低い出力電力で送信するモード3及び4において、最終段の増幅器50m及び50nのうちの一方の電源供給を停止しても、そのインピーダンス変化の影響が送信機2の他の部分へ及ぶことを防止する。
【0058】
また、各増幅器50は温度変化に伴って利得が変動するため、本実施例では送信パルス信号を形成する信号経路のいずれかに温度補償用の可変減衰器23を設ける。さらに温度センサ91を送信機2に設け、制御回路16は温度センサ91による検出温度に応じて可変減衰器23の減衰量を可変制御し、温度変化に伴う各増幅器50の利得の変動分を補償する。
図14に示す構成例では可変減衰器23を多段増幅器の前段に設ける。また、温度センサ91による検出温度の変化と多段増幅器の利得変化を予め試験等で求めておき、この利得変化を補償する減衰量と検出温度との関係を図20に示すように決定しておく。そして、制御回路16は、決定した検出温度と減衰量との関係に従って、温度センサ91の検出信号に応じて多段増幅器へ入力する入力信号のレベルの減衰量を変更することによって、多段増幅器から出力される出力信号のレベルを一定に保つ。
【0059】
なお上記実施例では、簡単のため多段接続された増幅器から成る増幅器群50a〜50nのうち、最終段のみを複数の増幅器50m及び50nを並列接続して構成した例を示して説明したが、他の段においても同様に複数の増幅器を並列接続して構成し、上記説明した最終段の増幅器50m及び50nと同様に制御してもよい。
また上記実施例では、簡単のため2つの増幅器50m及び50nを並列接続して、その一方を、送信パルス信号の出力電力に応じて切替回路70により停止させる構成例を示したが、同時に並列接続される増幅器の数を3個以上として、送信パルス信号の出力電力に応じてその一部を停止させるように構成してもよい。このとき電圧変更回路は、同時に3個以上並列接続される増幅器のうち、停止した一部の増幅器以外の増幅器に供給する前記電源電圧を可変制御する。
【0060】
また本実施例では、最終段の増幅器50m及び50n以外の前段の増幅器50a及び50bについてもドライバ回路60a及び60bを設け、送信パルス信号に同期して間欠制御することとしたが、これら前段の増幅器50a及び50bでは消費電力が少ないため、ドライバ回路60a及び/又は60bを省いて、常にドレインバイアス電圧VDDを印加してもよい。また前段の増幅器50a及び/又は50bについては、電圧器変更回路30によるドレインバイアス電圧VDDを可変制御することなく、常に定電圧電源回路90からの電源を供給してもよい。
【0061】
以上、本発明を特にその好ましい実施の形態を参照して詳細に説明したが、本発明の容易な理解のために、本発明の具体的な形態を以下に付記する。
【0062】
(付記1)
多段接続された増幅器から成る増幅器群によって、送出するべき送信パルス信号を増幅するパルスレーダ送信機において、
前記増幅器群の各段の少なくとも最終段を、複数の前記増幅器を並列に接続して構成し、
並列接続された前記複数の増幅器のうちの一部を、前記送信パルス信号の送信レベルに応じて停止させる切替回路と、
少なくとも前記送信レベルに応じて、前記増幅器に供給する前記電源電圧を可変制御する電圧変更回路と、
を備えることを特徴とするパルスレーダ送信機。(1)
【0063】
(付記2)
前記電圧変更回路は、前記並列接続された複数の増幅器のうち前記切替回路により停止された増幅器以外へ供給する前記電源電圧を低減することを特徴とする付記1に記載のパルスレーダ送信機。
【0064】
(付記3)
前記増幅器として、ゲート端子に信号が入力され、ソース端子が接地され、負荷インダクタンスを介して前記電源電圧としてのドレインバイアス電圧が印加されるドレイン端子から増幅信号が取り出される電界効果トランジスタを備え、
前記ドレインバイアス電圧をオン及びオフするによって前記増幅器を作動及び停止させる駆動回路を、さらに備えることを特徴とする付記1又は2に記載のパルスレーダ送信機。(2)
【0065】
(付記4)
前記駆動回路は、前記送信パルスに同期して前記ドレインバイアス電圧を間欠制御するMOS型電界効果トランジスタを備えることを特徴とする付記3に記載のパルスレーダ送信機。(3)
【0066】
(付記5)
前記増幅器群のうち前記最終段以外の段のいずれかにおいて、前記送信パルスに同期した前記ドレインバイアス電圧を間欠制御を行わないことを特徴とする付記3に記載のパルスレーダ送信機。
【0067】
(付記6)
前記電圧変更回路は、前記ドレインバイアス電圧を変更することを特徴とする付記3に記載のパルスレーダ送信機。(4)
【0068】
(付記7)
前記電圧変更回路は、
一方の端子が定電圧電源に各々接続される異なる抵抗値の複数の抵抗と、
前記複数の抵抗の他方の端子を前記ドレイン端子との間をそれぞれ開閉する複数のMOS型電界効果トランジスタと、
を備えることを特徴とする付記6に記載のパルスレーダ送信機。
【0069】
(付記8)
前記送信パルス信号の送信レベルに応じて、前記複数のMOS型電界効果トランジスタのうちのいずれを駆動するかを選択する選択信号を生成する制御回路を、さらに備えることを特徴とする付記7に記載のパルスレーダ送信機。
【0070】
(付記9)
前記送信パルス信号のパルス幅に応じて、前記複数のMOS型電界効果トランジスタのうちのいずれを駆動するかを選択する選択信号を生成する制御回路を、さらに備えることを特徴とする付記7に記載のパルスレーダ送信機。
【0071】
(付記10)
前記増幅器群のうち前記最終段以外の段のいずれかにおいて、前記増幅器を飽和領域で作動させることを特徴とする付記1〜7のいずれか一項に記載のパルスレーダ送信機。(5)
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、自動車、航空機や船舶に搭載され、又は陸上に設置されてパルス状の電波を放射し、対象物で反射した反射波を捉えて対象物との相対距離及び相対速度を求めるパルスレーダやパルス圧縮レーダにおいて、パルス状のレーダ波を送信するパルスレーダ送信機に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】従来のパルスレーダ装置のパルスレーダ送信機の概略構成を示すブロック図である。
【図2】スイッチの開閉並びに増幅器への電源供給及び停止によるパルス成形の様子の説明図である。
【図3】パルス信号の種類を示す表である。
【図4】一般的な増幅器の入出力電力特性を示すグラフである。
【図5】高出力時及び低出力時におけるパルス高さの変動の差を説明する図である。
【図6】パルスレーダ送信機に使用される増幅器の構成図である。
【図7】図6の増幅器にドレインバイアス電圧を供給するドライバ回路の構成図である。
【図8】本発明によるパルスレーダ送信機の基本構成図である。
【図9】各動作モードにおける図8に示すパルスレーダ送信機の各部の動作を示す表である。
【図10】図8に示すパルスレーダ送信機における増幅器の動作領域を説明する図である。
【図11】安定化電源回路との間に電圧変更回路が挿入された場合の各ドライバ回路の構成図である。
【図12】(A)及び(B)はそれぞれ電圧変更回路を設けない従来の場合及び本発明により電圧変更回路を設けた場合における、高出力時及び低出力時におけるドレインバイアス電圧の変化を示すタイムチャートであり、(C)及び(D)はそれぞれ電圧変更回路を設けない従来の場合及び本発明により電圧変更回路を設けた場合における、パルス幅の長短によるドレインバイアス電圧の変化を示すタイムチャートである。
【図13】一部の増幅器への電源供給停止と他の増幅器への供給電源電圧の変更を併用した場合の入出力特性の変化を示す図である。
【図14】本発明の実施例によるパルスレーダ装置の概略構成図である。
【図15】図14に示すパルスレーダ装置の各部a〜kにおける信号を示す。
【図16】図14に示す切替回路の構成例を示すブロック図である。
【図17】図14に示すドライバ回路の構成例を示すブロック図である。
【図18】ドライバ回路の他の構成例を示すブロック図である。
【図19】図14に示す電圧変更回路の構成例を示すブロック図である。
【図20】図14に示す温度補償用の可変減衰器の減衰量と温度変化との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0074】
1 パルスレーダ装置
2 パルスレーダ送信機
3 制御部
4 受信機
14 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段接続された増幅器から成る増幅器群によって、送出するべき送信パルス信号を増幅するパルスレーダ送信機において、
前記増幅器群の各段の少なくとも最終段を、複数の前記増幅器を並列に接続して構成し、
並列接続された前記複数の増幅器のうちの一部を、前記送信パルス信号の送信レベルに応じて停止させる切替回路と、
少なくとも前記送信レベルに応じて、前記増幅器に供給する前記電源電圧を可変制御する電圧変更回路と、
を備えることを特徴とするパルスレーダ送信機。
【請求項2】
前記増幅器として、ゲート端子に信号が入力され、ソース端子が接地され、チョークインダクタンスを介して前記電源電圧としてのドレインバイアス電圧が印加されるドレイン端子から増幅信号が取り出される電界効果トランジスタを備え、
前記ドレインバイアス電圧をオン及びオフするによって前記増幅器を作動及び停止させる駆動回路を、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載のパルスレーダ送信機。
【請求項3】
前記駆動回路は、前記送信パルスに同期して前記ドレインバイアス電圧を間欠制御するMOS型電界効果トランジスタを備えることを特徴とする請求項2に記載のパルスレーダ送信機。
【請求項4】
前記電圧変更回路は、前記ドレインバイアス電圧を変更することを特徴とする請求項2に記載のパルスレーダ送信機。
【請求項5】
前記増幅器群のうち前記最終段以外の段のいずれかにおいて、前記増幅器を飽和領域で作動させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のパルスレーダ送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−255915(P2007−255915A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77095(P2006−77095)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】