説明

パワーアシストロボット装置およびその制御方法

【課題】 装着者の動作を拘束することなく補助することができるパワーアシストロボット装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】 肩の動きを補助するための電動モータ1は、左右の肩関節の両サイドに配置され、受動回転軸2〜4を介して背面フレーム5に連結される。腰の動きを補助するための電動モータ11は、左右の腰関節の両サイドに配置され、受動回転軸12〜14を介して背面フレーム15に連結される。制御部132は、電動モータ1,11に含まれるロータリエンコーダ等から取得する関節角度、回転の有無、回転方向、スイッチの状態、および腰の傾きに基づいて、装着者の腕および大腿に作用する静止トルクを算出する。そして、制御部132は、電動モータ1,11に付加される減速機の減速比を1/50程度の低減速比にして、電動モータ1,11を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者が行う力作業を支援するパワーアシストロボット装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の農業において、少子高齢化が進んでいる。すなわち、全国の農業従事者の数が減少しつつある中で、60歳以上の農業従事者が220万人まで増加している。また、食料自給率向上が叫ばれており、農作業支援の必要性が高まっている。このような状況の中で、従来の米国型の大型の農業機械化ではなく、狭い日本の農地に適し、さらに山間部農業の活性化や地域再生化に役立つ農作業支援機器として、パワーアシストスーツなどのパワーアシストロボット装置が利用される。
【0003】
パワーアシストスーツには、軽作業用パワーアシストスーツと重作業用パワーアシストスーツとがある。軽作業用パワーアシストスーツは、軽作業支援として、果物、たとえば桃、柿、みかん、ぶどうおよびキュウイなどの受粉、摘花、摘果、袋掛けおよび収穫などの上向き作業、および、いちごなどの収穫時の中腰作業など、10kg程度以下の軽量物の持ち上げ、持ちおろしおよび運搬などの作業支援、さらに、平地や傾斜地および階段での歩行や走行支援に用いられる。
【0004】
重作業用パワーアシストスーツは、重作業支援として、大根やキャベツなど大型野菜の中腰姿勢での収穫作業、ならびに、米袋・収穫物コンテナなど30kg程度の重量物の持ち上げ、積み込み、積み下ろしおよび運搬作業の支援に用いられる。
【0005】
また、パワーアシストスーツは、農業用以外に工場用として、重量物の運搬作業や長時間継続する一定姿勢での作業などに使用される。さらに、パワーアシストスーツは、介護用として、ベッドから車椅子への人の移乗作業などに使用され、また、リハビリ用として、歩行リハビリ支援用などにも使用することができる。
【0006】
パワーアシストスーツを駆動する駆動方式には、パッシブ方式およびアクティブ方式がある。パッシブ方式には、バネ式およびゴム式などの方式がある。アクティブ方式には、電動モータ方式、空気圧駆動方式および油圧駆動方式などの方式がある。空気圧駆動方式には、空気圧ゴム人工筋肉、空気圧シリンダ、および空気圧ロータリアクチュエータを用いる方式(たとえば特許文献1,2参照)がある。
【0007】
また、パワーアシストスーツを制御するアシスト制御方式には、音声入力やスイッチ入力による動作パターン再生方式、表面筋電位信号より筋肉が出そうとするトルクを推定する方式(たとえば特許文献3参照)、表面筋電位信号をトリガ信号として動作パターンを再生する動作パターン再生方式(たとえば特許文献4参照)、パワーアシストスーツを取りつけている装着者の手首部や足首部に作用する力を、センサを用いて計測してフィードバック制御することによって、装着者の動きにパワーアシストスーツを追従させるマスタスレーブ制御方式(たとえば特許文献2,5,6参照)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3771056号公報
【特許文献2】特開2007−97636号公報
【特許文献3】特許第4200492号公報
【特許文献4】特許第4178185号公報
【特許文献5】特開2007−130234号公報
【特許文献6】特開2006−75456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
バネ式やゴム式のパッシブ方式は、一方向にしかパワーアシストすることができない。高減速比の減速機付き電動モータ方式は、安全性に問題がある。空気圧方式は、空気圧縮用コンプレッサを搭載すると重くなる。油圧方式でも同様に重くなる。動作パターン再生方式は、再生することができるパターンに限界があり、動作の切り換わり時に不連続になる恐れがある。表面筋電位からトルクを推定する方式は、事前の学習時間を必要とする。マスタスレーブ制御は、装着者が動いてからフィードバックがかかるので遅れが生じ、どうしても、装着者がパワーアシストロボット装置を引っ張っているという感覚を覚えてしまう。
【0010】
本発明の目的は、装着者の動作を拘束することなく補助することができるパワーアシストロボット装置およびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、装着者の両肩部の近傍にそれぞれ配置され、装着者の上腕部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する2つの腕用駆動部と、
装着者の胴体上部に装着され、前記2つの腕用駆動部を保持する腕用保持部と、
装着者の腰部の近傍にそれぞれ配置され、装着者の大腿部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する2つの大腿用駆動部と、
装着者の腰部に装着され、前記2つの大腿用駆動部を保持する腰用保持部と
を含むことを特徴とするパワーアシストロボット装置である。
【0012】
また本発明は、前記腕用保持部は、両肩部にわたって延びるフレームを含み、
前記2つの腕用駆動部は、前記フレームに連桔されることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記腕用保持部は、装着者の両肩部に上方から装着される2つの肩フレーム、ならびに該2つの肩フレームから左右方向外方に前記腕用連結部を介して両肩部まで延びる2つの横フレームを含み、
前記2つの腕用駆動部は、前記2つの横フレームに連桔されることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記2つの腕用駆動部に設けられ、上腕部の肩関節まわりの回転角度を検出する第1の角度検出部と、
前記2つの大腿用駆動部に設けられ、大腿部の股関節まわりの回転角度を検出する第2の角度検出部と、
装着者が装着する靴の靴底部における爪先部分および踵部分にそれぞれ設けられ、予め定める値以上の重量が爪先部および踵部に作用しているか否かを検出する床反力検出部と、
前記腰用保持部に設けられ、装着者の上半身の傾きを検出する3次元加速度センサとをさらに含むことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、第1の角度検出部によって検出される両上腕部の回転角度、第2の角度検出部によって検出される両大腿部の回転角度、床反力検出部によって検出される検出結果、および3次元加速度センサによって検出される上半身の傾きに基づいて、両上腕部および両大腿部に作用する静的トルク、回転方向および回転に要する回転トルクを算出し、
さらに、算出した静的トルク、回転方向および回転トルクに基づいて、前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を駆動する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクを発生するように、前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を駆動させる駆動制御部をさらに含むことを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記駆動制御部は、前記算出した駆動トルクを、装着者が前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を逆方向に駆動することができる減速比以下の減速比に減速して、前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を駆動することを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部は、電動モータを含むことを特徴とする。
【0018】
また本発明は、装着者の各大腿部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する2つの大腿用駆動部と、
装着者の各下腿部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する2つの下腿部用駆動部と、
装着者の背中に装着される背中装着部、大腿部に装着される2つの大腿部装着部、下腿部に装着される2つの下腿部装着部、および靴底に装着される2つの靴底装着部を含み、前記2つの大腿用駆動部および前記下腿部用駆動部を保持する保持部と、
背中装着部によって保持され、上半身の動作を補助する上半身補助部とを含み、
前記保持部は、
腰部の左右方向外方近傍にそれぞれ配置され、大腿部装着部を背中装着部に対して前後軸線まわりに回転自在に連結する2つの腰用連結部と、
両膝部の左右方向外方近傍にそれぞれ配置され、下腿部装着部を大腿部装着部に対して前後軸線まわりに回転自在に連結する2つの膝用連結部と、
両足の踝の左右方向外方近傍にそれぞれ配置され、靴底装着部を下腿部装着部に対して前後軸線まわりに回転自在に連結する2つの踝用連結部と、
大腿用駆動部の一端を、腰用連結部の上方で、前後軸線まわりに回転自在に背中装着部に連結する第1の連結部と、
大腿用駆動部の他端を、大腿部装着部の膝用連結部側の一端から前方向上方に延伸するアームの先端部に、前後軸線まわりに回転自在に連結する第2の連結部と、
下腿部用駆動部の一端を、大腿部装着部の背面側に膝用連結部寄りの中間の位置で、前後軸線まわりに回転自在に連結する第3の連結部と、
下腿部用駆動部の他端を、膝用連結部の背面側に踝用連結部の後方で、前後軸線まわりに回転自在に保持部に連結する第4の連結部とを含むことを特徴とするパワーアシストロボット装置である。
【0019】
また本発明は、前記保持部は、前記背中装着部の上方から両肩上方を跨ぐように前方向に延伸するガイド部を含み、
前記上半身補助部は、先端にフック部を有するワイヤと、前記ワイヤをガイド部に沿って巻上げおよび巻下げ、前記背中装着部の背面側に設けられる駆動部とを含むことを特徴とする。
【0020】
また本発明は、両肩部の近傍にそれぞれ配置されて前記背中装着部によって保持され、装着者の各上腕部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する2つの腕用駆動部と、
両肘部の近傍にそれぞれ配置されて前記背中装着部によって保持され、装着者の各前腕部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する2つの肘用駆動部とをさらに含むことを特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記2つの腕用駆動部に設けられ、上腕部が回転している回転角度を検出する第3の角度検出部と、
前記2つの肘用駆動部に設けられ、前腕部が回転している回転角度を検出する第4の角度検出部と、
前記2つの腰用連結部に設けられ、大腿部が回転している回転角度を検出する第5の角度検出部と、
前記2つの膝用連結部に設けられ、下腿部が回転している回転角度を検出する第6の角度検出部と、
前記2つの踝用連結部に設けられ、足が回転している回転角度を検出する第7の角度検出部と、
装着者が装着する靴の靴底部における爪先部分および踵部分にそれぞれ設けられ、爪先部および踵部に作用する重量を検出する重量検出部と、
前記背中装着部に設けられ、上半身の傾きを検出する3次元加速度センサと、
第3〜7の角度検出部によって検出される回転角度、重量検出部によって検出される重量、および3次元加速度センサによって検出される上半身の傾きに基づいて、両上腕部、両前腕部、両大腿部、両下腿部、および両足に作用する静的トルク、回転方向およびに回転に要する回転トルクを算出し、さらに、算出した静的トルク、回転方向および回転トルクに基づいて、前記2つの腕用駆動部、前記2つの肘用駆動部、前記2つの大腿用駆動部および前記2つの下腿部用駆動部を駆動する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクで、前記2つの腕用駆動部、前記2つの肘用駆動部、前記2つの大腿用駆動部および前記2つの下腿部用駆動部を駆動する駆動制御部とをさらに含むことを特徴とする。
【0022】
また本発明は、前記2つの大腿用駆動部および前記下腿部用駆動部は、空気圧シリンダであり、
前記駆動部は、人工ゴム筋肉であることを特徴とする。
【0023】
また本発明は、前記2つの大腿用駆動部および前記下腿部用駆動部は、空気圧シリンダであり、
前記2つの腕用駆動部および前記2つの肘用駆動部は、空気圧ロータリアクチュエータであることを特徴とする。
【0024】
また本発明は、装着者の個体差を表すパラメータを入力するパラメータ入力部をさらに含み、
前記駆動制御部は、パラメータ入力部によって入力されたパラメータに基づいて、前記駆動トルクを算出することを特徴とする。
【0025】
また本発明は、前記パワーアシストロボット装置で実行される制御方法であって、
第1の角度検出部によって検出される両上腕部の回転角度、第2の角度検出部によって検出される両大腿部の回転角度、床反力検出部によって検出される検出結果、および3次元加速度センサによって検出される上半身の傾きに基づいて、両上腕部および両大腿部に作用する静的トルク、回転方向およびに回転に要する回転トルクを算出する算出ステップと、
さらに、算出した静的トルク、回転方向および回転トルクに基づいて、前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を駆動する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクを、装着者が前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を逆方向に駆動することができる減速比以下の減速比に減速して、前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を駆動する駆動ステップとを含むことを特徴とする制御方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、2つの腕用駆動部は、装着者の両肩部の近傍にそれぞれ配置され、装着者の上腕部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する。腕用保持部は、装着者の胴体上部に装着され、前記2つの腕用駆動部を保持する。2つの大腿用駆動部は、装着者の腰部の近傍にそれぞれ配置され、装着者の大腿部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する。そして、腰用保持部は、装着者の腰部に装着され、前記2つの大腿用駆動部を保持する。したがって、パワーアシストロボット装置は、アシスト方向以外の装着者の動作を妨げないように、上下軸線および前後軸線まわりに回転自在な腕用連結部および腰用連結部、たとえば駆動機器が取りつけられていない受動回転軸を、装着者の関節の外側周囲に配置しているので、装着者の動作を拘束することなく補助することができる。
【0027】
また本発明によれば、前記腕用保持部は、両肩部にわたって延びるフレームを含む。そして、前記2つの腕用駆動部は、前記フレームに連桔される。したがって、2つの大腿用駆動部を保持する腕用保持部を軽量化することができ、装着者の負担を軽減することができる。
【0028】
また本発明によれば、前記腕用保持部は、装着者の両肩部に上方から装着される2つの肩フレームと、該2つの肩フレームから左右方向外方に前記腕用連結部を介して両肩部まで延びる2つの横フレームを含む。そして、前記2つの腕用駆動部は、前記2つの横フレームに連桔される。したがって、パワーアシストロボット装置は、2つの大腿用駆動部の位置が安定し、装着者の動作が容易になる。
【0029】
また本発明によれば、第1の角度検出部は、前記2つの腕用駆動部に設けられ、上腕部が回転している回転角度を検出する。第2の角度検出部は、前記2つの大腿用駆動部に設けられ、大腿部が回転している回転角度を検出する。床反力検出部は、装着者が装着する靴の靴底部における爪先部分および踵部分にそれぞれ設けられ、予め定める値以上の重量が爪先部および踵部に作用しているか否かを検出する。そして、3次元加速度センサは、前記腰用保持部に設けられ、装着者の上半身の傾きを検出する。したがって、パワーアシストロボット装置は、第1,第2の角度検出部、床反力検出部、3次元加速度センサを用いているので、表面筋電位センサを装着する煩わしさがなく、実用的である。
【0030】
また本発明によれば、駆動制御部は、第1の角度検出部によって検出される両上腕部の回転角度、第2の角度検出部によって検出される両大腿部の回転角度、床反力検出部によって検出される検出結果、および3次元加速度センサによって検出される上半身の傾きに基づいて、両上腕部および両大腿部に作用する静的トルク、回転方向およびに回転に要する回転トルクを算出し、さらに、算出した静的トルク、回転方向および回転トルクに基づいて、前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を駆動する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクを発生するように、前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を駆動させる。したがって、パワーアシストロボット装置は、回転角度等に基づいて駆動トルクを算出するので、数多くの動作パターンをデータベース化しておく必要がなく、動作の切り換わり時に不連続になることがない。
【0031】
また本発明によれば、前記駆動制御部は、前記算出した駆動トルクを、装着者が前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を逆方向に駆動することができる減速比以下の減速比に減速して、前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を駆動する。したがって、パワーアシストロボット装置は、装着者が2つの腕用駆動部および2つの大腿用駆動部を逆方向に駆動することができる減速比以下の減速比、たとえば1/50程度の低減速比にして、装着者が出せる以上の力を出せないように、2つの腕用駆動部および2つの大腿用駆動部の出力を制限しているので、装着者の安全を確保することができる。
【0032】
また本発明によれば、前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部は、電動モータを含む。したがって、電動モータは、バックドライアブルであるので、パワーアシストロボット装置は、装着者の安全を確保することができる。
【0033】
また本発明によれば、2つの大腿用駆動部は、装着者の各大腿部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する。2つの下腿部用駆動部は、装着者の各下腿部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する。保持部は、装着者の背中に装着される背中装着部、大腿部に装着される2つの大腿部装着部、下腿部に装着される2つの下腿部装着部、および靴底に装着される2つの靴底装着部を含み、前記2つの大腿用駆動部および前記下腿部用駆動部を保持する。そして、上半身補助部は、背中装着部によって保持され、上半身の動作を補助する。また、前記保持部は、腰部の左右方向外方近傍にそれぞれ配置され、大腿部装着部を背中装着部に対して前後軸線まわりに回転自在に連結する2つの腰用連結部と、両膝部の左右方向外方近傍にそれぞれ配置され、下腿部装着部を大腿部装着部に対して前後軸線まわりに回転自在に連結する2つの膝用連結部と、両足の踝の左右方向外方近傍にそれぞれ配置され、靴底装着部を下腿部装着部に対して前後軸線まわりに回転自在に連結する2つの踝用連結部と、大腿用駆動部の一端を、腰用連結部の上方で、前後軸線まわりに回転自在に背中装着部に連結する第1の連結部と、大腿用駆動部の他端を、大腿部装着部の膝用連結部側の一端から前方向上方に延伸するアームの先端部に、前後軸線まわりに回転自在に連結する第2の連結部と、下腿部用駆動部の一端を、大腿部装着部の背面側に膝用連結部寄りの中間の位置で、前後軸線まわりに回転自在に連結する第3の連結部と、下腿部用駆動部の他端を、膝用連結部の背面側に踝用連結部の後方で、前後軸線まわりに回転自在に保持部に連結する第4の連結部とを含む。したがって、パワーアシストロボット装置は、荷物等の重量を靴底装着部から地面や床に逃すことができ、装着者にかかる負担を軽減しつつ、装着者の動作を補助することができる。
【0034】
また本発明によれば、前記保持部は、前記背中装着部の上方から両肩上方を跨ぐように前方向に延伸するガイド部を含む。そして、前記上半身補助部は、先端にフック部を有するワイヤと、前記ワイヤをガイド部に沿って巻上げおよび巻下げ、前記背中装着部の背面側に設けられる駆動部とを含む。したがって、パワーアシストロボット装置は、ベルトのフック部に荷物を掛けることによって、荷物の持ち上げおよび持ち下げを補助することができる。
【0035】
また本発明によれば、2つの腕用駆動部は、両肩部の近傍にそれぞれ配置されて前記背中装着部によって保持され、装着者の各上腕部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する。そして、2つの肘用駆動部は、両肘部の近傍にそれぞれ配置されて前記背中装着部によって保持され、装着者の各前腕部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する。したがって、パワーアシストロボット装置は、両手による荷物の持ち上げおよび持ち下げを補助することができる。
【0036】
また本発明によれば、第3の角度検出部は、前記2つの腕用駆動部に設けられ、上腕部が回転している回転角度を検出する。第4の角度検出部は、前記2つの肘用駆動部に設けられ、前腕部が回転している回転角度を検出する。第5の角度検出部は、前記2つの腰用連結部に設けられ、大腿部が回転している回転角度を検出する。第6の角度検出部は、前記2つの膝用連結部に設けられ、下腿部が回転している回転角度を検出する。第7の角度検出部は、前記2つの踝用連結部に設けられ、足が回転している回転角度を検出する。重量検出部は、装着者が装着する靴の靴底部における爪先部分および踵部分にそれぞれ設けられ、爪先部および踵部に作用する重量を検出する。3次元加速度センサは、前記背中装着部に設けられ、上半身の傾きを検出する。そして、駆動制御部は、第3〜7の角度検出部によって検出される回転角度、重量検出部によって検出される重量、および3次元加速度センサによって検出される上半身の傾きに基づいて、両上腕部、両前腕部、両大腿部、両下腿部、および両足に作用する静的トルク、回転方向およびに回転に要する回転トルクを算出し、さらに、算出した静的トルク、回転方向および回転トルクに基づいて、前記2つの腕用駆動部、前記2つの肘用駆動部、前記2つの大腿用駆動部および前記2つの下腿部用駆動部を駆動する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクで、前記2つの腕用駆動部、前記2つの肘用駆動部、前記2つの大腿用駆動部および前記2つの下腿部用駆動部を駆動する。したがって、パワーアシストロボット装置は、第3〜第7の角度検出部、重量検出部、3次元加速度センサを用いているので、表面筋電位センサを装着する煩わしさがなく、実用的である。また、パワーアシストロボット装置は、回転角度等に基づいて駆動トルクを算出するので、数多くの動作パターンをデータベース化しておく必要がなく、動作の切り換わり時に不連続になることがない。
【0037】
また本発明によれば、前記2つの大腿用駆動部および前記下腿部用駆動部は、空気圧シリンダである。そして、前記駆動部は、人工ゴム筋肉である。したがって、空気圧シリンダや人工ゴム筋肉は、バックドライアブルであり、空気の圧縮性によりクッションになり、また装着者が出せる以上の力や速度を出せないように供給圧力や流量を制限することで、パワーアシストロボット装置は、装着者の安全を確保することができる。
【0038】
また本発明によれば、前記2つの大腿用駆動部および前記下腿部用駆動部は、空気圧シリンダである。そして、前記2つの腕用駆動部および前記2つの肘用駆動部は、空気圧ロータリアクチュエータである。したがって、空気圧シリンダや空気圧ロータリアクチュエータは、バックドライアブルであり、空気の圧縮性によりクッションになり、また装着者が出せる以上の力や速度を出せないように供給圧力や流量を制限することで、パワーアシストロボット装置は、装着者の安全を確保することができる。
【0039】
また本発明によれば、パラメータ入力部は、装着者の個体差を表すパラメータを入力する。そして、前記駆動制御部は、パラメータ入力部によって入力されたパラメータに基づいて、前記駆動トルクを算出する。したがって、パワーアシストロボット装置は、装着者の個体差を表すパラメータを入力することができるので、誰にでも装着可能である。
【0040】
また本発明によれば、前記パワーアシストロボット装置を制御するにあたって、算出ステップでは、第1の角度検出部によって検出される両上腕部の回転角度、第2の角度検出部によって検出される両大腿部の回転角度、床反力検出部によって検出される検出結果、および3次元加速度センサによって検出される上半身の傾きに基づいて、両上腕部および両大腿部に作用する静的トルク、回転方向およびに回転に要する回転トルクを算出する。そして、駆動ステップでは、算出した静的トルク、回転方向および回転トルクに基づいて、前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を駆動する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクを、装着者が前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を逆方向に駆動することができる減速比以下の減速比で減速して、前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を駆動する。したがって、パワーアシストロボット装置は、角度検出部、床反力検出部、3次元加速度センサを用いているので、表面筋電位センサを装着する煩わしさがなく、実用的である。また、パワーアシストロボット装置は、回転角度等に基づいて駆動トルクを算出するので、数多くの動作パターンをデータベース化しておく必要がなく、動作の切り換わり時に不連続になることがない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態である第1の軽作業用アシストスーツ100の外観を示す図である。
【図2】第1の軽作業用アシストスーツ100に含まれる制御機器の構成を示す図である。
【図3】ハンディ端末50の外観を示す図である。
【図4】回転トルクTの算出を説明するための図である。
【図5】第1の軽作業用アシストスーツ100で実行される第1のアシストスーツ制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】第1の軽作業用アシストスーツ100で実行される第1のアシストスーツ制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態である第2の軽作業用アシストスーツ200の外観を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態である第1の重作業用アシストスーツ300の外観を示す図である。
【図9】第1の重作業用アシストスーツ300に含まれる空気圧駆動機器の構成を示す図である。
【図10】第1の重作業用アシストスーツ300に含まれる制御機器の構成を示す図である。
【図11】第1の重作業用アシストスーツ300で実行される第3のアシストスーツ制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】第1の重作業用アシストスーツ300で実行される第3のアシストスーツ制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第4の実施形態である第2の重作業用アシストスーツ500の外観を示す図である。
【図14】第2の重作業用アシストスーツ500に含まれる空気圧駆動機器の構成を示す図である。
【図15】第2の重作業用アシストスーツ500に含まれる制御機器の構成を示す図である。
【図16】各関節でのトルクTの算出を説明するための図である。
【図17】第2の重作業用アシストスーツ500で実行される第4のアシストスーツ制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図18】第2の重作業用アシストスーツ500で実行される第4のアシストスーツ制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、本発明の第1の実施形態である第1の軽作業用アシストスーツ100の外観を示す図である。図1(a)は、装着者によって装着された状態の第1の軽作業用アシストスーツ100の外観を示す正面図である。図1(b)は、装着者によって装着された状態の第1の軽作業用アシストスーツ100の外観を示す側面図である。本発明に係る制御方法は、第1の軽作業用アシストスーツ100で実行される。
【0043】
パワーアシストロボット装置である第1の軽作業用アシストスーツ100は、電動モータ1,11、受動回転軸2〜4,12〜14、背面フレーム5,15、アーム9,19、肩用ベルト7、胸用ベルト8、腕用ベルト10、股用ベルト18、大腿用ベルト20、爪先床反力検出スイッチ21、踵床反力検出スイッチ22および中央制御ユニット23を含んで構成される。第1の軽作業用アシストスーツ100は、アクチュエータである電動モータ1を背面から支持する軽作業用のアシストスーツである。
【0044】
電動モータ1は、肩のパワーアシスト用、つまり肩の動きを補助するための動力源として用いられる電動モータであり、肩関節を支点とする腕の回転をアシストするための動力を発生する。電動モータ1は、左右の肩関節の両サイドに、次のようにして取り付けられている。第1の軽作業用アシストスーツ100の各部位と装着者との位置関係は、装着者が第1の軽作業用アシストスーツ100を装着したときの装着者に対する位置である。
【0045】
電動モータ1の固定端側には、肩関節の上下軸線まわりの回転の自由度に対応するための受動回転軸2が取り付けられている。受動回転軸2に連結されるフレームは、肩関節の前後軸線まわりの回転の自由度に対応するための受動回転軸3、および肩関節の上下軸線まわりの回転の自由度に対応するための受動回転軸4を介して、装着者の背面中央付近に配置される背面フレーム5の上端に左右から取り付けられている。受動回転軸3および受動回転軸4は、肩関節中心の背面側に設けられる。受動回転軸2、受動回転軸3および受動回転軸4は、腕用連結部である。
【0046】
腕用保持部である背面フレーム5は、たとえば四角形状である。背面フレーム5には、装着者の背中の形状に沿うようにクッション用パッド6が取り付けられている。また、背面フレーム5には、肩用ベルト7および胸用ベルト8が取り付けられている。肩用ベルト7は、背面フレーム5の上方から左右の肩の上を経て、また、胸用ベルト8は、背面フレーム5の下方から左右方向に脇を経て、胸部の前面にわたり、背面フレーム5が装着者に密着するように取り付けられる構造になっている。
【0047】
電動モータ1の回転端側には、装着者の上腕に沿って延びるアーム9が取り付けられている。アーム9には、腕用ベルト10が取り付けられており、アーム9が上腕に固定されるようになっている。腕用連結部と、前記電動モータ1と、アーム9とを含んで、腕用駆動部が構成される。
【0048】
電動モータ11は、腰のパワーアシスト用、つまり腰の動きを補助するための動力源として用いられる電動モータであり、股関節を支点とする大腿部の回転をアシストするための動力を発生する。電動モータ11は、左右の股関節の両サイドに、左右軸線まわりに回転するように、次のようにして取り付けられている。
【0049】
電動モータ11の固定端側には、股関節の上下軸線まわりの回転の自由度に対応するための受動回転軸12が取り付けられている。受動回転軸12に連結されるフレームは、股関節の上下軸線まわりの回転の自由度に対応するための受動回転軸13、および股関節の前後軸まわりの回転の自由度に対応するための受動回転軸14を介して、装着者の背面中央付近に配置される背面フレーム15の下端に左右から取り付けられている。受動回転軸13および受動回転軸14は、股関節中心の背面に設けられる。受動回転軸12、受動回転軸13および受動回転軸14は、腰用連結部である。この腰用連結部と前記電動モータ11とを含んで、大腿用駆動部が構成される。
【0050】
腰用保持部である背面フレーム15は、たとえば四角形状である。背面フレーム15には、装着者の背中の形状に沿うようにクッション用パッド16が取り付けられている。また、背面フレーム15には、腰用ベルト17および股用ベルト18が取り付けられている。腰用ベルト17は、背面フレーム15の上方から左右方向に脇腹を経て、また、股用ベルト18は、背面フレーム15の下方から股間を経て、胸部の左右前面にわたって、装着者に密着するように取り付けられる構造になっている。
【0051】
電動モータ11の回転端側は、装着者の大腿部に沿って延びるアーム19が取り付けられている。アーム19には、大腿用ベルト20が取り付けられており、アーム19は、大腿部に固定されるようになっている。
【0052】
爪先床反力検出スイッチ21は、各靴底の爪先側に設けられる。踵床反力検出スイッチ22は、各靴底の踵側に設けられる。爪先床反力検出スイッチ21は、予め定める重量値、たとえば3kg以上の重量が爪先部にかかったか否かを検出するセンサである。踵床反力検出スイッチ22は、予め定める重量値、たとえば3kg以上の重量が踵部にかかったか否かを検出するセンサである。爪先床反力検出スイッチ21および踵床反力検出スイッチ22は、検出結果、つまり3kg以上の重量が爪先部にかかったか否かを示す情報を、中央制御ユニット23に送る。爪先床反力検出スイッチ21および踵床反力検出スイッチ22は、床反力検出部である。
【0053】
電動モータ1,11は、関節角度を計測するためのロータリエンコーダをそれぞれ含んで構成される。各ロータリエンコーダは、計測した関節角度を中央制御ユニット23に送る。電動モータ1に含まれるロータリエンコーダは、第1の角度検出部である。電動モータ11に含まれるロータリエンコーダは、第2の角度検出部である。
【0054】
中央制御ユニット23は、背面フレーム15の背面側に設けられる。中央制御ユニット23は、3軸加速度センサを含んで構成される。3軸加速度センサは、腰の傾きを3軸で計測するための3次元加速度センサである。
【0055】
図2は、第1の軽作業用アシストスーツ100に含まれる制御機器の構成を示す図である。第1の軽作業用アシストスーツ100に含まれる制御機器は、下肢ユニット130、上肢ユニット140、右足ユニット150、左足ユニット160、およびパラメータ設定用ハンディ端末装置(以下「ハンディ端末」という)50を含んで構成される。
【0056】
下肢ユニット130は、中央制御ユニット23であり、無線通信部131、制御部132、電池133、およびモータドライバ135を含んで構成される。無線通信部131は、たとえば通信装置によって構成され、右足ユニット150、左足ユニット160、およびハンディ端末50と無線通信によって情報の送受信を行う。無線通信は、たとえばノルウェーのNORDIC社製の2.4GHz帯トランシーバ集積回路(Integrated Circuit:以下「IC」という)を使用している。このICは、独自プロトコルであるが、1個のICで、4つの周波数を切換えて使用することができるので、3ヶ所との個別通信が可能である。
【0057】
駆動制御部である制御部132は、たとえば中央処理装置(Central Processing Unit:略称「CPU」)によって構成される。モータドライバ135は、電動モータ11に内蔵され、電動モータ11を駆動制御する。制御部132とモータドライバ135とは、有線による通信で接続されている。制御部132は、アシストに必要な出力トルク指令をモータドライバ135へ送る。モータドライバ135は、ロータリエンコーダによって計測される関節角度を制御部132へ送る。電池133は、充電可能な蓄電池であり、下肢ユニット130および上肢ユニット140の各部位、ならびに電動モータ1,11に電力を供給する。
【0058】
上肢ユニット140は、モータドライバ141を含んで構成される。モータドライバ141は、電動モータ1に内蔵され、電動モータ1を駆動制御する。モータドライバ141は、有線の通信で制御部11と接続されている。有線の通信は、たとえば自動車関係で使用されているCAN(Controller Area Network)通信を用いている。制御部132は、アシストに必要な出力トルク指令をモータドライバ141に送る。モータドライバ141は、ロータリエンコーダによって計測される関節角度を制御部132へ送る。
【0059】
右足ユニット150は、無線通信部151および電池152を含んで構成される。無線通信部151は、爪先床反力検出スイッチ21および踵床反力検出スイッチ22に接続され、爪先床反力検出スイッチ21および踵床反力検出スイッチ22による検出結果を、無線通信で制御部132に送る。電池152は、無線通信部151、爪先床反力検出スイッチ21および踵床反力検出スイッチ22に電力を供給する。左足ユニット160は、無線通信部161および電池162を含み、右足ユニット150と同じ構成であり、重複を避けるために説明を省略する。
【0060】
図3は、ハンディ端末50の外観を示す図である。パラメータ入力部であるハンディ端末50は、第1の軽作業用アシストスーツ100の動作に必要なパラメータを設定するために使用される端末装置である。ハンディ端末50は、パラメータ番号選択スイッチ51、上昇スイッチ52、下降スイッチ53、エントリスイッチ54、モードスイッチ55、パラメータ表示部56および発光ダイオード(Light Emitting Diode:以下「LED」という)57を含んで構成される。
【0061】
パラメータ番号選択スイッチ51は、パラメータ番号(以下「パラメータNo」または「P_No」ともいう)を入力するためのスイッチであり、スイッチを押下するたびに、パラメータNoが「0」から「1」ずつカウントアップされる。上昇スイッチ52は、設定するためのパラメータ値をカウントアップするためのスイッチであり、押下するたびにパラメータ値が「1」ずつカウントアップされる。下降スイッチ53は、設定するためのパラメータ値をカウントダウンするためのスイッチであり、押下するたびにパラメータ値が「1」ずつカウントダウンされる。
【0062】
エントリスイッチ54は、選択されたパラメータNoおよび更新されたパラメータ値を、図示しない記憶部に記憶して設定するためのスイッチである。モードスイッチ55は、後述する動作モードを切り換えるスイッチであり、スイッチを押下するたびに、モード値が「0」、「1」および「2」の順序で変化する。「2」の次は、「0」に戻る。モード値「0」は、アシストなしであり、モード値「1」は、保持モードであり、モード値「2」は、歩行モードである。
【0063】
パラメータ表示部56は、たとえば数字、記号および文字を表示する表示装置によって構成される。図3に示したパラメータ表示部56は、8桁の数字、記号および文字を表示することができる。上位3桁がパラメータNoを表示し、第4桁目が記号「−」を表示し、第5桁目〜第7桁目の3桁がパラメータ値を表示し、第8桁目がモード値を表示する。LED57は、選択されたパラメータNoおよび更新されたパラメータ値が、図示しない記憶部に記憶されて設定されたことを示すランプである。ハンディ端末50に設定可能なパラメータを表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
図4は、回転トルクTの算出を説明するための図である。制御部132は、装着者の様々な作業姿勢にて体を動かすのに必要な回転トルクTを、肩関節および股関節の計測角度、および靴の爪先および踵に作用する床反力スイッチの状態に基づいて、力学的に算出することによって、アシストトルクを算出する。床反力スイッチは、爪先床反力検出スイッチ21および踵床反力検出スイッチ22である。
【0066】
制御部132は、まず動作角度θを求める。動作角度θは、鉛直方向を基準とする角度である。動作角度θは、たとえば肩関節の場合は、電動モータ1に含まれるロータリエンコーダによって計測される関節角度であり、股関節の場合は、電動モータ11に含まれるロータリエンコーダによって計測される関節角度である。
【0067】
腕または腿の質量をm[kg]とし、電動モータ1の回転軸から腕用ベルト10までの距離、または電動モータ11の回転軸から大腿用ベルト20までの距離をL[m]とすると、重量mをアシストするのに必要な回転トルクTは、計算式T=Lm・sinθ[N・m]によって計算することができる。「Lm」は、装着者によって決まる定数である。制御部132は、この値をパラメータとして設定することによって、アシストトルクを算出している。パラメータは、ハンディ端末50を使用して、装着者によって設定される。また、パラメータは、固定値であるとは限らず、後述する第1のアシストスーツ制御処理の処理手順に従って推定される動作に応じて切り換えられる。
【0068】
図5および図6は、第1の軽作業用アシストスーツ100で実行される第1のアシストスーツ制御処理の処理手順を示すフローチャートである。制御部132は、第1の軽作業用アシストスーツ100の電源が投入されて電動モータ1,11を除く部位への電力の供給が開始され、動作可能状態になると、ステップA1に移る。
【0069】
第1のアシストスーツ制御処理は、大きく5つのシーケンスによって構成される。ステップA1〜A3が電源起動シーケンスであり、ステップA4,A5がパラメータ書換えシーケンスであり、ステップA6,A7が姿勢情報入力シーケンスであり、ステップA8〜A12が肩関節制御シーケンスであり、ステップA13〜A23が股関節制御シーケンスである。制御部132は、肩関節制御シーケンスおよび股関節制御シーケンスによって、各関節に必要なアシストトルクを出力している。
【0070】
ステップA1では、制御部132は、ハンディ端末50からのパラメータの受信が完了したか否かを判定する。制御部132は、ハンディ端末50からのパラメータの受信が完了すると、受信したパラメータを図示しない記憶部に記憶して、ステップA2に進み、ハンディ端末50からのパラメータの受信が完了しないと、ステップA1に戻る。
【0071】
ステップA2では、制御部132は、関節角度の初期化を行う。具体的には、制御部132は、直立状態で、腕を鉛直方向に下げた姿勢での関節角度を初期値である0度とする。すなわち、制御部132は、直立状態で、腕を鉛直方向に下げた姿勢での各関節角度を、電動モータ1,11に含まれるロータリエンコーダから取得し、取得した各関節角度の位置を、各関節角度の0度の位置とする。
【0072】
ステップA3では、制御部132は、電動モータ1,11を駆動するための駆動電源をオン(図では「ON」という)とする。すなわち、制御部132は、電池133から電動モータ1,11への電力の供給を開始するように、電池133に指示する。
【0073】
ステップA4では、制御部132は、ハンディ端末50からのパラメータの更新を待つ。制御部132は、ハンディ端末50からのパラメータの更新がないと、ステップA6に進み、ハンディ端末50からのパラメータの更新があると、ステップA5に進む。ステップA5では、制御部132は、ハンディ端末50から更新されたパラメータを受信すると、受信した更新されたパラメータを、図示しない記憶部に記憶してパラメータを更新する。
【0074】
アシストに必要なパラメータは、装着者の持っているハンディ端末50から適宜送られてくる。したがって、このパラメータの書換えを常時実行できるように、ステップA4,A5での書換え処理をメインループ内で行っている。メインループは、ステップA4からステップA23までループする処理である。
【0075】
ステップA6では、制御部132は、各関節角度を計測する。具体的には、制御部132は、電動モータ1,11に含まれるロータリエンコーダによって計測された関節角度、回転の有無および回転方向を、各ロータリエンコーダから取得する。ステップA7では、制御部132は、床反力スイッチからスイッチの状態を読み込む。具体的には、制御部132は、爪先床反力検出スイッチ21および踵床反力検出スイッチ22から、それぞれの検出結果、つまりスイッチの状態を取得する。このとき、制御部132は、中央制御ユニット23に含まれる3軸加速度センサで計測された腰の傾きを、3軸加速度センサから取得する。
【0076】
そして、制御部132は、取得した関節角度、回転の有無、回転方向、スイッチの状態、および腰の傾きに基づいて、装着者の腕および腿に作用する静止トルクを算出するとともに、肩制御、腰制御および歩行制御の状態を判断する。肩制御は、肩関節の制御であり、腰制御は、股関節の制御である。肩制御には、振下の状態および保持の状態がある。腰制御には、保持の状態、歩行の状態、およびそのいずれでもない状態がある。歩行制御は、腰制御が歩行の状態であるとき、振上開始の状態、振上中の状態、振下開始の状態、振下中の状態および振完了の状態がある。振上は、肩関節を支点として腕を、または股関節を支点として腿を振り上げることであり、振下は、肩関節を支点として腕を、または股関節を支点として腿を振り下げることである。保持の状態は、腕または腿の動作が停止している状態である。振完了の状態は、振上または振下の動作が完了した状態である。制御部132は、取得した回転の有無および回転方向に基づいて、これらの状態を判断する。
【0077】
肩関節の制御には、「振下」と「保持」との2つのモードがある。通常は、肩関節を「保持」するアシストを実行するために、ステップA11で、肩関節の関節角度に比例したアシストトルクを出力する。
【0078】
ステップA8では、制御部132は、肩制御が「振下」であるか否かを判定する。「振下」であるか否かの判断基準は、ハンディ端末50から受信したパラメータによる。制御部132は、肩制御が「振下」であると、ステップA9に進み、肩制御が「振下」でないと、ステップA11に進む。ステップA9では、制御部132は、「振下」完了であるか否かを判定する。制御部132は、肩制御の「振下」が完了すると、ステップA10に進み、肩制御の「振下」が完了しないと、ステップA12に進む。
【0079】
ステップA10では、制御部132は、肩制御を「保持」に戻して、ステップA11に進む。ステップA11では、制御部132は、肩トルクを「比例」として、ステップA13に進む。制御部132は、肩トルクを「比例」としたとき、静止トルクおよび回転トルクに比例したトルクを腕に与えるために、電動モータ1によって駆動する駆動トルク、つまりアシストトルクを算出し、算出した駆動トルクで駆動するように電動モータ1を制御する。
【0080】
ステップA12では、制御部132は、肩トルクを「オフ(図では「OFF」という)」として、振下が完了するまで肩のアシストをオフにし、ステップA13に進む。制御部132は、肩トルクを「オフ」としたとき、電動モータ1の駆動を停止する。
【0081】
股関節の制御には、大きく「保持」と「歩行」との動作モードがあり、この動作モードは、ハンディ端末50から送られてきた情報によって指定される。動作モードが「保持」の場合は、すなわち、ハンディ端末50からモード値「1」が送られてきた場合は、直立姿勢を保持するために、ステップA19で、股関節の関節角度に比例したアシストトルクが出力される。動作モードが「歩行」の場合は、すなわち、ハンディ端末50からモード値「2」が送られてきた場合は、「振上開始」、「振上中」、「振下開始」および「振下中」のうちのいずれかの歩行シーケンスが実行される。歩行シーケンスは、「振上開始」、「振上中」、「振下開始」および「振下中」の順序で順次実行され、「振下完了」で終了する。遊脚となっていない方の足は、振上げられず、保持脚として、ステップA19で、股関節の関節角度に比例した保持トルクが出力される。
【0082】
ステップA13では、制御部132は、腰制御が「保持」であるか否かを判定する。制御部132は、腰制御が「保持」であるとき、ステップA19に進み、腰制御が「保持」でないとき、ステップA14に進む。ステップA14では、制御部132は、腰制御が「歩行」であるか否かを判定する。制御部132は、腰制御が「歩行」であるとき、ステップA15に進み、腰制御が「歩行」でないとき、ステップA19に進む。
【0083】
ステップA15では、制御部132は、歩行制御が「振上開始」であるか否かを判定する。制御部132は、踵床反力検出スイッチ22がオフで、股関節の角度が小さい場合、「振上開始」と判断する。制御部132は、歩行制御が「振上開始」であるとき、ステップA20に進み、歩行制御が「振上開始」でないとき、ステップA16に進む。ステップA16では、制御部132は、歩行制御が「振上中」であるか否かを判定する。制御部132は、歩行制御が「振上中」であるとき、ステップA21に進み、歩行制御が「振上中」でないとき、ステップA17に進む。
【0084】
ステップA17では、制御部132は、歩行制御が「振下開始」であるか否かを判定する。制御部132は、股関節の関節角度が一定値以上の角度に到達すると、「振下開始」と判断する。制御部132は、歩行制御が「振下開始」であるとき、ステップA22に進み、歩行制御が「振下開始」でないとき、ステップA18に進む。ステップA18では、制御部132は、歩行制御が「振下中」であるか否かを判定する。制御部132は、歩行制御が「振下中」であるとき、ステップA22に進み、歩行制御が「振下中」でないとき、ステップA23に進む。
【0085】
ステップA19では、制御部132は、腰トルクを「保持比例」として、ステップA4に戻る。ステップA20では、制御部132は、腰トルクを「最大」として、振上側の電動モータ11に、短時間最大のアシストトルクを出力し、ステップA4に戻る。ステップA21では、制御部132は、腰トルクを「歩行比例」として、振上側の電動モータ11に、股関節の関節角度に比例したアシストトルクを出力し、ステップA4に戻る。ステップA22では、制御部132は、腰トルクを「オフ」として、ステップA4に戻る。ステップA23では、制御部132は、歩行制御を「振完了」として、ステップA4に戻る。
【0086】
ステップA4〜A7は、算出ステップである。ステップA8〜A23は、駆動ステップである。制御部132は、ステップA4〜ステップA23の一連のシーケンス、つまりメインループを、10m秒間隔で実行しており、装着者へのスムーズなアシストを実現している。制御部132は、表1に示したパラメータのうち、ステップA9で、パラメータNo「3」,「4」を使用し、ステップA11で、パラメータNo「5」,「6」を使用し、ステップA12で、パラメータNo「7」を使用し、ステップA19で、パラメータNo「8」,「9」を使用し、ステップA20で、パラメータNo「10」,「11」を使用し、ステップA21で、パラメータNo「12」,「13」を使用し、ステップA22で、パラメータNo「14」を使用する。
【0087】
図7は、本発明の第2の実施形態である第2の軽作業用アシストスーツ200の外観を示す図である。図7(a)は、装着者によって装着された状態の第2の軽作業用アシストスーツ200の外観を示す正面図である。図7(b)は、装着者によって装着された状態の第2の軽作業用アシストスーツ200の外観を示す側面図である。本発明に係る制御方法は、第2の軽作業用アシストスーツ200で実行される。
【0088】
パワーアシストロボット装置である第2の軽作業用アシストスーツ200は、電動モータ201,212、フレーム202,204,213,215、背面フレーム206,216、受動回転軸203,205,209,214、ヒンジ207、受け面210,222、アーム208,221、ベルト211,223、腰用ベルト217、股用ベルト218、前面ベルト219、背面ベルト220、爪先床反力検出スイッチ21、踵床反力検出スイッチ22および中央制御ユニット23を含んで構成される。第2の軽作業用アシストスーツ200は、アクチュエータである電動モータ201を両肩の上側から支持する軽作業用のアシストスーツである。受動回転軸203,205は、腕用連結部である。受動回転軸214は、腰用連結部である。
【0089】
電動モータ201は、肩のパワーアシスト用、つまり肩の動きを補助するための動力源として用いられる電動モータであり、肩関節を支点とする腕の回転をアシストする動力を発生する。電動モータ201は、左右の肩関節の両側に、左右軸線まわりに回転するように、次のようにして取り付けられている。
【0090】
電動モータ201の固定端側には、上方に伸びるフレーム202を介して、肩関節の前後軸線まわりの回転の自由度に対応するための受動回転軸203が取り付けられている。受動回転軸203に連結されるフレーム204は、肩関節の上下軸線まわりの回転の自由度に対応するための受動回転軸205を介して、肩関節中心の上面で、装着者の左右の肩の上面中央付近に配置される背面フレーム206の上端に左右から取り付けられている。背面フレーム206は、たとえば装着者の前方から見て逆π字形状で、後方から見てY字型のフレームである。背面フレーム206には、装着者の体の形状に沿うようにヒンジ207が取り付けられている。
【0091】
電動モータ201の回転端側は、装着者の上腕に沿うように出されたアーム208が取り付けられている。アーム208の先端には、左右軸線まわりの受動回転軸209を介して、半円筒状の受け面210が取り付けられている。受け面210には、ベルト211が取り付けられている。ベルト211によって、装着者の上腕が受け面210に固定されるようになっている。
【0092】
電動モータ212は、腰のパワーアシスト用、つまり腰の動きを補助するための電動モータであり、股関節を支点とする腿の回転をアシストする。電動モータ212は、左右の股関節の両サイドに、左右軸線まわりに回転するように、次のようにして取り付けられている。
【0093】
電動モータ212の固定端側には、上方に伸びるフレーム213を介して、股関節の前後軸線まわりの回転の自由度に対応するための受動回転軸214が取り付けられている。受動回転軸214は、フレーム215を介して、装着者の腰部側面にて、背面フレーム216の左右に取り付けられている。
【0094】
背面フレーム216には、腰用ベルト217と股用ベルト218とが取り付けられている。腰用ベルト217は、背面フレーム216の側面から左右方向にわき腹を通して、また股用ベルト218は、背面フレーム216の下方から股間を通して左右の前面に回されて、装着者に密着するように取り付けられる構造になっている。背面フレーム216と背面フレーム206とは、装着者の前面ベルト219と背面ベルト220によって結合することができる構造になっている。
【0095】
電動モータ212の回転端側は、装着者の大腿部に沿うように出されたアーム221が取り付けられている。アーム221の先端には、半円筒状の受け面222が取り付けられている。受け面222には、ベルト223が取り付けられている。ベルト223によって、装着者の大腿部が受け面222に固定されるようになっている。
【0096】
第2の軽作業用アシストスーツ200に含まれる制御機器の構成は、図2に示した第1の軽作業用アシストスーツ100に含まれる制御機器の構成と同じであり、第2の軽作業用アシストスーツ200で実行される第2のアシストスーツ制御処理の処理手順は、図5および図6に示した第1の軽作業用アシストスーツ100で実行される第1のアシストスーツ制御処理の処理手順と同じであり、重複を避けるために説明を省略する。
【0097】
図8は、本発明の第3の実施形態である第1の重作業用アシストスーツ300の外観を示す図である。図8(a)は、装着者によって装着された状態の第1の重作業用アシストスーツ300の外観を示す正面図である。図8(b)は、装着者によって装着された状態の第1の重作業用アシストスーツ300の外観を示す側面図である。本発明に係る制御方法は、第1の重作業用アシストスーツ300で実行される。
【0098】
図8に示した第1の重作業用アシストスーツ300は、肢部の股関節および膝関節のパワーアシストに、空気圧シリンダを用い、上肢部のパワーアシストに、空気圧人工ゴム筋肉を用いたリフタ方式の実施例である。
【0099】
パワーアシストロボット装置である第1の重作業用アシストスーツ300は、空気圧シリンダ301,315、受動回転軸302,304,305,308,309,311,316,318,320,321、フレーム303,306,307,310,317,322、背面フレーム312、腰用ベルト314、上肢背面ボックス324、人工ゴム筋肉325、移動フレーム326、リニアガイド327,328、ラックギア329、ピニオンギア630〜632、ワイヤ巻き取りシーブ633、ワイヤ634,639,640、バランスプレート635、、プーリ637,638、ワイヤ634,639,640、フック641、スイッチ642、手袋643およびベルト645、を含んで構成される。
【0100】
第1の重作業用アシストスーツ300は、股関節および膝関節をパワーアシストするために、空気圧シリンダ301を左右の股関節の両サイドに、そして、空気圧シリンダ315を左右の膝関節の両サイドに配置している。
【0101】
空気圧シリンダ301は、腰のパワーアシスト用、つまり腰の動きを補助するための動力源として用いられる空気圧シリンダであり、股関節を支点とする大腿部の回転をアシストする動力を発生する。空気圧シリンダ301は、左右の股関節の両サイドに、左右軸線まわりに回転トルクを発生するように、次のようにして取り付けられている。
【0102】
空気圧シリンダ301の固定端側は、左右軸線まわりの受動回転軸302を介して、フレーム303に取り付けられている。フレーム303は、膝関節中心の左右軸線まわりの受動回転軸304に連結されている。受動回転軸304には、股関節中心の左右軸線まわりの受動回転軸305の一方の回転軸に連結されるフレーム306が取り付けられている。受動回転軸305の他方の回転端には、上側へ伸びるフレーム307が取り付けられている。フレーム307の上端には、左右軸線まわりの受動回転軸308を介して、空気圧シリンダ301の移動端が連結されている。
【0103】
受動回転軸305の他方の回転端には、上側へ伸びるフレーム307以外に、股関節の上下軸線まわりの回転の自由度に対応するための受動回転軸309が取り付けられている。股関節中心の背面には、フレーム310が、股関節の前後軸線まわりの回転の自由度に対応するための受動回転軸311を介して、装着者の背面中央付近に配置される背面フレーム312の下端に左右から取り付けられている。
【0104】
背中装着部である背面フレーム312は、たとえば四角形状である。背面フレーム312には、装着者の背中の形状に沿うようにクッション用パッド313が取り付けられている。また、背面フレーム312には、腰用ベルト314が取り付けられている。腰用ベルト314は、背面フレーム312の上方から左右方向にわき腹を通して、装着者に密着するように取り付けられる構造になっている。
【0105】
空気圧シリンダ315は、膝のパワーアシスト用、つまり膝の動きを補助するための動力源として用いられる空気圧シリンダであり、膝関節を支点とする下腿部の回転をアシストする動力を発生する。空気圧シリンダ315は、左右の膝の両サイドに、左右軸線まわりに回転トルクを発生するように、次のようにして取り付けられている。
【0106】
空気圧シリンダ315の固定端側は、左右軸線まわりの受動回転軸316を介してフレーム317に取り付けられている。フレーム317は、足首関節中心の左右軸線まわりの受動回転軸318の一方の回転軸に連結されるとともに、膝関節中心の左右軸線まわりの受動回転軸304の一方の回転軸に連結されるフレーム319が取り付けられている。受動回転軸304の他方の回転端には、受動回転軸305に連結されるフレーム306がある。フレーム306の膝関節中心より上部には、左右軸線まわりの受動回転軸320を介して、空気圧シリンダ315の移動端が連結されている。
【0107】
受動回転軸318の他方の回転端には、足首関節の前後軸線まわりの回転の自由度に対応するための受動回転軸321の一方の回転端が取り付けられている。受動回転軸321の他方の回転端は、フレーム322を介して靴底へ取り付けられている。
【0108】
また、第1の重作業用アシストスーツ300は、重量物持ち上げをパワーアシストするためのリフタ装置を含む。このリフタ装置(以下「リフタ」ともいう)は、上下軸線まわりの回転軸を介して、装着者の下肢の背面フレーム312に取り付けられている上肢背面ボックス324に配置されている。
【0109】
上肢背面ボックス324の上部には、人工ゴム筋肉325の固定端が連結されている。人工ゴム筋肉325は、空気圧人工ゴム筋肉である。人工ゴム筋肉325の移動端には、移動フレーム326が接続されている。移動フレーム326の両端には、リニアガイド327とリニアガイド328とが取り付けられている。リニアガイド327およびリニアガイド328は、人工ゴム筋肉325の伸縮動作の補助を行う。リニアガイド328には、ラックギア329が取り付けられている。
【0110】
ラックギア329は、ピニオンギア630と噛み合っている。人工ゴム筋肉325の伸縮動作がラックギア329を介して、ピニオンギア630に伝達されることによって、伸縮動作が回転動作に変換される。ピニオンギア630は、ピニオンギア631とピニオンギア632とに噛み合っている。人工ゴム筋肉325のストロークを5倍に増加させるために、ピニオンギア630が1回転すると、ピニオンギア632は、ピニオンギア631を介して、ピニオンギア630と同方向に5回転するように速比と回転方向とが設定されている。
【0111】
ピニオンギア632には、ワイヤ巻き取りシーブ633が接続されている。ワイヤ巻き取りシーブ633は、ワイヤ634を巻き取る構造になっている。ワイヤ634の移動端には、バランスプレート635が取り付けられている。バランスプレート635の右端には、右手用ワイヤ639が、そして、バランスプレート635の左端には、左手用ワイヤ640が取り付けられている。
【0112】
右手用ワイヤ639および左手用ワイヤ640は、フレーム636に設けられたプーリ637およびプーリ638を介して、装着者の背面から前面へ通される。右手用ワイヤ639および左手用ワイヤ640には、フック641および起動スイッチ642が取り付けられた手袋643がそれぞれ取り付けられている。装着者は、手袋643を装着し、荷物をフック641に引っかけて、起動スイッチ642を操作することによって、人工ゴム筋肉625が動作を開始して、ワイヤ巻き取りシーブ633が回転し、ワイヤ634を巻き取ることによって、荷物の持ち上げ・持ち下ろし動作を行うことができる。
【0113】
上肢背面ボックス324は、背面フレーム644に接続されている。背面フレーム644には、装着者の背中の形状に沿うようクッション646が取り付けられている。また、背面フレーム644には、ベルト645が取り付けられており、背面フレーム644の左右から脇を通して装着者に密着するように取り付けられる構造になっている。
【0114】
このように、上肢背面ボックス324の上部には、人工ゴム筋肉325の固定端がつながっている。人工ゴム筋肉325の移動端には、ラックギア329とピニオンギア630〜632とを介して、人工ゴム筋肉325の伸縮動作を回転動作に変換する構造になっている。ピニオンギア630〜632の入力側と出力側との速度比は、5倍に設定され、人工ゴム筋肉329のストロークを5倍に増加させている。上肢背面ボックス324の上部から左右の肩の上部のガイド部を通って、装着者の前面へワイヤ639,640を通している。ガイド部は、フレーム636、プーリ637およびプーリ638によって構成される。ワイヤ639,640の端には、重量物を把持するためのフック641とスイッチ642とが取り付けられている。装着者は、フック641に荷物を引っかけ、スイッチ642を押すことによって、荷物の上げ下ろしを行うことができる構造になっている。
【0115】
図9は、第1の重作業用アシストスーツ300に含まれる空気圧駆動機器の構成を示す図である。第1の重作業用アシストスーツ300に含まれる空気圧駆動機器は、コンプレッサ401、開閉バルブ402、レギュレータ403、エアフィルタ404、ミストセパレータ405、主流路406、下肢側流路407、上肢側流路408、下肢左側流路409、下肢右側流路410、上肢空圧回路部420、下肢左腰関節空圧回路430a、下肢右腰関節空圧回路430b、下肢左膝関節空圧回路430c、および下肢右膝関節空圧回路430dをさらに含んで構成される。
【0116】
据え置き型のコンプレッサ401で圧縮された空気(以下「圧縮空気」という)は、開閉バルブ402を開放することによって、レギュレータ403へ流され、レギュレータ403によって適正な圧力に調整された後に、エアフィルタ404とミストセパレータ405とによって清浄化されて、主流路406へ送られる。主流路406は、上肢側流路408と下肢側流路407とに分岐する。
【0117】
上肢側流路408に送られた圧縮空気は、上肢空圧回路部420へ流れ込む。上肢空圧回路部420は、上肢側電空レギュレータ421、上肢側電磁弁422、上肢側流量制御弁423および上肢側アクチュエータ424,425を含む。上肢側アクチュエータ424,425は、それぞれ、たとえば人工ゴム筋肉325によって構成される。
【0118】
上肢側流路408から上肢空圧回路部420へ流れ込んだ圧縮空気は、上肢側電空レギュレータ421によって持ち上げる荷重に必要な推力に見合った空気圧力に調整される。圧力を調整された圧縮空気は、上肢側電磁弁422によって持ち上げ側もしくは持ち下ろし側に流路が切り換えられる。流路が切り替えられた圧縮空気は、上肢側流量制御弁423によって、流量制御が行われた後に、上肢側アクチュエータ424,425に送られ、上肢側アクチュエータ424,425、つまり人工ゴム筋肉325を駆動する。
【0119】
下肢側流路407へ送られた圧縮空気は、さらに下肢左側流路409と下肢右側流路410とに分岐される。下肢左側流路409に送られた圧縮空気は、下肢左腰関節空圧回路430aおよび下肢左膝関節空圧回路430cに送られる。下肢左腰関節空圧回路430aは、左腰関節の動きを補助するため、すなわち、左大腿部の左側側方に配置される空気圧シリンダ301を駆動するための空圧回路である。下肢左腰関節空圧回路430aは、下肢関節用電空レギュレータ431、下肢関節用電磁弁432、下肢関節伸展側流量制御弁433、下肢関節屈曲側流量制御弁434および下肢関節用アクチュエータ435を含んで構成される。
【0120】
下肢左腰関節空圧回路430aに送られた圧縮空気は、下肢関節用電空レギュレータ431によって関節の動作に必要な推力に見合った空気圧力に調整される。圧力を調整された圧縮空気は、下肢関節用電磁弁432によって関節の屈伸側もしくは伸展側に流路が切り換えられる。流路が切り替えられた圧縮空気は、下肢関節伸展側流量制御弁433、または下肢関節屈曲側流量制御弁434によって流量制御が行われた後に、下肢関節用アクチュエータ435に送られ、下肢関節用アクチュエータ435、つまり空気圧シリンダ301を駆動する。
【0121】
下肢左膝関節空圧回路430cは、左膝関節の動きを補助するため、すなわち、左下腿部の左側側方に配置される空気圧シリンダ315を駆動するための空圧回路である。下肢左膝関節空圧回路430cの構成は、下肢左腰関節空圧回路430aの構成と同じであり、重複を避けるために説明は省略する。
【0122】
下肢右側流路410に送られた圧縮空気は、下肢右腰関節空圧回路430bおよび下肢右膝関節空圧回路430dに送られる。下肢右腰関節空圧回路430bは、右腰関節の動きを補助するため、すなわち、右大腿部の左側側方に配置される空気圧シリンダ301を駆動するための空圧回路である。下肢右膝関節空圧回路430dは、右膝関節の動きを補助するため、すなわち、右下腿部の右側側方に配置される空気圧シリンダ315を駆動するための空圧回路である。下肢右腰関節空圧回路430bおよび下肢右膝関節空圧回路430dの構成は、それぞれ下肢左腰関節空圧回路430aの構成と同じであり、重複を避けるために説明は省略する。
【0123】
下肢左腰関節空圧回路430aに含まれる下肢関節用アクチュエータ435は、左大腿部の左側側方に配置される空気圧シリンダ301である。下肢左膝関節空圧回路430cに含まれる下肢関節用アクチュエータ435は、左下腿部の左側側方に配置される空気圧シリンダ301である。下肢右腰関節空圧回路430bに含まれる下肢関節用アクチュエータ435は、右大腿部の右側側方に配置される空気圧シリンダ301である。下肢右膝関節空圧回路430dに含まれる下肢関節用アクチュエータ435は、右下腿部の右側側方に配置される空気圧シリンダ301である。
【0124】
図10は、第1の重作業用アシストスーツ300に含まれる制御機器の構成を示す図である。第1の重作業用アシストスーツ300に含まれる制御機器は、中央制御ユニット330、右足底ユニット350、左足底ユニット360、関節ユニット340a〜340d、リフタユニット370およびハンディ端末50を含んで構成される。
【0125】
中央制御ユニット330は、制御部332、電池333、RS422通信部334、電空ドライブ335および無線通信部336を含んで構成される。電池333は、充電可能な蓄電池であり、すべてのユニットへ電力を供給している。制御部332は、たとえばCPUによって構成され、RS422通信部334、電空ドライブ335および無線通信部336を制御する。電空ドライブ335と各関節ユニット340a〜340dおよびリフタユニット370とは有線で接続されている。制御部332は、アシストに必要な出力トルク指令を各関節ユニット340a〜340dおよびリフタユニット370に送る。各関節ユニット340a〜340dは、各関節ユニット340a〜340dの出力トルク情報をそれぞれ制御部332に送る。
【0126】
関節ユニット340aは、左大腿部の左側側方に配置される空気圧シリンダ301を制御する。関節ユニット340bは、右大腿部の右側側方に配置される空気圧シリンダ301を制御する。関節ユニット340cは、左下腿部の左側側方に配置される空気圧シリンダ315を制御する。関節ユニット340dは、右下腿部の左側側方に配置される空気圧シリンダ315を制御する。
【0127】
各関節ユニット340a〜340dは、電空レギュレータ341、ソレノイドバルブ342、およびポテンショメータ343を含んで構成される。ポテンショメータ343は、それぞれの関節の関節角度を計測する。電空レギュレータ41は、アシストに応じた空気圧を制御し、出力方向、すなわち、曲げる方向であるか伸ばす方向であるかをソレノイドバルブ42で決めて、空気圧アクチュエータ、つまり空気圧シリンダ301,315に出力する。
【0128】
右足底ユニット350は、それぞれ爪先フォースプレート351、踵フォースプレート352およびポテンショメータ353を含んで構成される。爪先フォースプレート351は、爪先に作用する床反力、具体的には重量を測定する。踵フォースプレート352は、踵に作用する床反力を測定する。爪先フォースプレート351および踵フォースプレート352は、測定した重量を、RS422通信で制御部332に送信する。ポテンショメータ353は、足関節の関節角度を測定し、制御部332に直接送る。
【0129】
左足底ユニット360は、右足底ユニット350と同じ構成である。爪先フォースプレート361、踵フォースプレート362およびポテンショメータ363は、それぞれ爪先フォースプレート351、踵フォースプレート352およびポテンショメータ353と同じであり、重複を避けるために説明を省略する。
【0130】
ハンディ端末50は、図3に示したハンディ端末50と同じ構成である。ただし、第3の実施形態でのハンディ端末50は、リフタの上昇操作および下降操作を行うために用いられる。具体的には、装着者は、ハンディ端末50のパラメータNoを「1」に設定することによって、リフタの手動操作が可能となる。上昇スイッチ52を押下すると、リフタが上昇し、下降スイッチ53を押下すると、リフタが下降する。
第3の実施形態のハンディ端末50に設定可能なパラメータを表2に示す。
【0131】
【表2】

【0132】
リフタユニット370は、ソレノイドバルブ371を含んで構成される。ソレノイドバルブ371は、上昇であるか下降であるかに応じて、アシストに応じた空気圧を、空気圧アクチュエータ、つまり人工ゴム筋肉325に出力する。
【0133】
図11および図12は、第1の重作業用アシストスーツ300で実行される第3のアシストスーツ制御処理の処理手順を示すフローチャートである。制御部332は、第1の重作業用アシストスーツ300の電源が投入されて空気圧シリンダ301,315および人工ゴム筋肉325を除く部位への電力の供給が開始され、動作可能状態になると、ステップB1に移る。
【0134】
第3のアシストスーツ制御処理は、大きく4つのシーケンスによって構成される。ステップB1〜B5が電源起動シーケンスであり、ステップB6,B7がパラメータ書換えシーケンスであり、ステップB8,B9が姿勢情報入力シーケンスであり、ステップB15〜B25が股関節・膝関節制御シーケンスである。制御部332は、股関節・膝関節制御シーケンスによって、各関節に必要なアシストトルクを出力している。
【0135】
ステップB1では、制御部332は、右足の風袋の消去が完了したか否かを判定する。右足の風袋は、装着者が荷物を持たないで直立した状態で、装着者の体重および第1の重作業用アシストスーツ300の重量のうち右足にかかっている重量である。左足の風袋は、装着者が荷物を持たないで直立した状態で、装着者の体重および第1の重作業用アシストスーツ300の重量のうち左足にかかっている重量である。制御部332は、装着者が荷物を持たないで直立した状態で、右足底ユニット350および左足底ユニット360で計測される重量を、荷物の重量が「0」であるとして設定することによって、風袋を消去する。風袋の消去は、ハンディ端末50でパラメータNo「0」とすることによって実行することができる。
【0136】
制御部332は、右足の風袋の消去が完了したとき、ステップB2に進み、右足の風袋の消去が完了しなかったとき、ステップB1に戻る。ステップB2では、制御部332は、左足の風袋の消去が完了したか否かを判定する。制御部332は、左足の風袋の消去が完了したとき、ステップB3に進み、左足の風袋の消去が完了しなかったとき、ステップB2に戻る。ステップB3,B6は、図5に示したステップA1,A4と同じであり、重複を避けるために説明を省略する。
【0137】
ステップB4では、制御部332は、制御の初期化を行う。具体的には、図5に示したステップA2と同様に、制御部332は、直立状態で、腕を鉛直方向に下げた姿勢での関節角度を初期値である0度とする。すなわち、制御部132は、直立状態で、腕を鉛直方向に下げた姿勢での各関節角度を、各関節ユニット340a〜340dに含まれるポテンショメータ343、右足底ユニット350に含まれるポテンショメータ353、および左足底ユニット360に含まれるポテンショメータ363から取得し、取得した各関節角度の位置を、各関節角度の0度の位置とする。
【0138】
ステップB5では、制御部332は、空気圧シリンダ301,315および人工ゴム筋肉325を駆動するための駆動電源をオンとする。すなわち、制御部332は、電池333から空気圧シリンダ301,315および人工ゴム筋肉325への電力の供給を開始するように、電池333に指示する。
【0139】
ステップB7では、制御部332は、ハンディ端末50から更新されたパラメータを受信すると、受信した更新されたパラメータを、図示しない記憶部に記憶してパラメータを更新する。または、風袋消去を行う。または、リフタ操作を行う。すなわち、ハンディ端末50からの指示に応じて、リフタを制御する。
【0140】
ステップB8では、制御部332は、各関節角度を計測する。具体的には、制御部332は、各関節ユニット340a〜340dに含まれるポテンショメータ343、右足底ユニット350に含まれるポテンショメータ353、および左足底ユニット360に含まれるポテンショメータ363によって計測された関節角度、回転の有無および回転方向を、各ポテンショメータ343,353,363から取得する。ステップB9では、制御部332は、床反力スイッチからスイッチの状態を読み込む。具体的には、制御部332は、爪先床反力検出スイッチ348および踵床反力検出スイッチ349から、それぞれの検出結果、つまり計測された重量を取得する。このとき、制御部332は、中央制御ユニットに含まれる3軸加速度センサで計測された腰の傾きを、3軸加速度センサから取得する。
【0141】
そして、制御部332は、取得した関節角度、回転の有無、回転方向、重量、および腰の傾きに基づいて、装着者の大腿部および下腿部に係る静止トルクを算出するとともに、腰・膝制御および歩行制御の状態を判断する。
【0142】
ステップB15〜B25は、図6に示したステップA13〜A23の腰制御および腰トルクを、それぞれ腰・膝制御および腰・膝トルクに置き換えたものと同じであり、重複を避けるために説明を省略する。制御部332は、ステップB6〜ステップB25の一連のシーケンス、つまりメインループを、10m秒間隔で実行しており、装着者へのスムーズなアシストを実現している。
【0143】
制御部332は、表1に示したパラメータのうち、ステップB21で、パラメータNo「8」,「9」を使用し、ステップB22で、パラメータNo「10」,「11」を使用し、ステップB23で、パラメータNo「12」,「13」を使用し、ステップB24で、パラメータNo「14」を使用する。
【0144】
図13は、本発明の第4の実施形態である第2の重作業用アシストスーツ500の外観を示す図である。図13(a)は、装着者によって装着された状態の第2の重作業用アシストスーツ500の外観を示す正面図である。図13(b)は、装着者によって装着された状態の第2の重作業用アシストスーツ500の外観を示す側面図である。本発明に係る制御方法は、第2の重作業用アシストスーツ500で実行される。
【0145】
図13に示した第2の重作業用アシストスーツ500は、下肢部の股関節および膝関節のパワーアシストに、空気圧シリンダを用い、上肢部の肩関節および肘関節のパワーアシストに、空気圧ロータリアクチュエータを用いた実施例である。
【0146】
パワーアシストロボット装置である第2の重作業用アシストスーツ500は、空気圧シリンダ501,516、受動回転軸502,504,505,508,509,511,517,519,521,522,526,528,532、フレーム503,506,507,510,518,520,523,527、背面フレーム512,529、腰用ベルト514、大腿用ベルト515、下腿部用ベルト524、空気圧ロータリアクチュエータ525,535、胸用ベルト531、アーム533,536、上腕部用ベルト534および前腕部用ベルト537を含んで構成される。
【0147】
背面フレーム512,529は、背中装着部である。フレーム506は、大腿部装着部である。フレーム520は、下腿部装着部である。フレーム523は、靴底装着部である。受動回転軸505は、腰用連結部である。受動回転軸504は、膝用連結部である。受動回転軸519は、踝用連結部である。受動回転軸508は、第1の連結部である。受動回転軸502は、第2の連結部である。受動回転軸521は、第3の連結部である。受動回転軸517は、第4の連結部である。
【0148】
第2の重作業用アシストスーツ500は、股関節および膝関節をパワーアシストするために、空気圧シリンダ501を左右の股関節の両サイドに、そして空気圧シリンダ516を左右の膝関節の両サイドに配置している。
【0149】
空気圧シリンダ501は、腰のパワーアシスト用、つまり腰の動きを補助するための空気圧シリンダであり、股関節を支点とする大腿部の回転をアシストする。空気圧シリンダ501は、左右の股関節の両サイドに、左右軸線まわりに回転トルクを発生するように、次のようにして取り付けられている。
【0150】
空気圧シリンダ501の固定端側は、左右軸線まわりの受動回転軸502を介して、フレーム503に取り付けられている。フレーム503は、膝関節中心の左右軸線まわりの受動回転軸504に連結されている。受動回転軸504には、股関節中心の左右軸線まわりの受動回転軸505の一方の回転軸に連結されるフレーム506が取り付けられている。受動回転軸505の他方の回転端には、上側へ伸びるフレーム507が取り付けられている。フレーム507上端には、左右軸線まわりの受動回転軸508を介して、空気圧シリンダ501の移動端が連結される。
【0151】
受動回転軸505の他方の回転端には、上側へ伸びるフレーム507以外に、股関節の上下軸線まわりの回転の自由度に対応するための受動回転軸509が取り付けられている。股関節中心の背面には、フレーム510が、股関節の前後軸線まわりの回転の自由度に対応するための受動回転軸511を介して、装着者の背面中央付近に配置される背面フレーム512の下端に左右から取り付けられている。
【0152】
背面フレーム512は、たとえば四角形状である。背面フレーム512には、装着者の背中の形状に沿うようにクッション用パッド513が取り付けられている。また、背面フレーム512には、腰用ベルト514が取り付けられている。腰用ベルト514は、背面フレーム512の上方から左右方向にわき腹を通して、装着者に密着するように取り付けられる構造になっている。フレーム506には、大腿用ベルト515が取り付けられて、装着者の大腿部に固定されるようになっている。
【0153】
空気圧シリンダ516は、膝のパワーアシスト用、つまり膝の動きを補助するための空気圧シリンダであり、膝関節を支点とする下腿部の回転をアシストする。空気圧シリンダ516は、左右の膝の両サイドに、左右軸線まわりに回転トルクを発生するように、次のようにして取り付けられている。
【0154】
空気圧シリンダ516の固定端側は、左右軸線まわりの受動回転軸517を介してフレーム518に取り付けられている。フレーム518は、足首関節中心の左右軸線まわりの受動回転軸519の一方の回転軸に連結されるとともに、受動回転軸504の一方の回転軸に連結されるフレーム520が取り付けられている。受動回転軸504の他方の回転端には、受動回転軸505に連結されるフレーム506がある。フレーム506の膝関節中心より上部には、左右軸線まわりの受動回転軸521を介して、空気圧シリンダ516の移動端が連結されている。
【0155】
受動回転軸519の他方の回転端には、足首関節の前後軸線まわりの回転の自由度に対応するための受動回転軸522の一方の回転軸が取り付けられている。受動回転軸522の他方の回転端は、フレーム523を介して靴底へ取り付けられている。フレーム520には、下腿部用ベルト524が取り付けられて、装着者の下腿部に固定されるようになっている。
【0156】
第2の重作業用アシストスーツ500は、さらに、肩関節および肘関節をパワーアシストするために、空気圧ロータリアクチュエータ525,535を、左右の肩関節および肘関節の両サイドに配置している。
【0157】
空気圧ロータリアクチュエータ525は、肩のパワーアシスト用、つまり肩の動きを補助するための動力源として用いられる空気圧シリンダであり、肩関節を支点とする上腕の回転をアシストする動力を発生する。空気圧ロータリアクチュエータ525は、左右の肩関節の両サイドに、次のようにして取り付けられている。
【0158】
空気圧ロータリアクチュエータ525の固定端側には、肩関節の上下軸線まわりの回転の自由度に対応するための受動回転軸526が取り付けられている。受動回転軸526に連結されるフレーム527は、肩関節中心の背面には、肩関節の前後軸線まわりの回転の自由度に対応するための受動回転軸528を介して、装着者の背面中央付近に配置される背面フレーム529の上端に左右から取り付けられている。
【0159】
背面フレーム529は、たとえば四角形状である。背面フレーム529には、装着者の背中の形状に沿うようにクッション用パッド530が取り付けられている。背面フレーム529には、胸用ベルト531が取り付けられている。胸用ベルト531は、背面フレーム529の上下中央から左右方向にわきを通して前面に回されて、装着者に密着するように取り付けられる構造になっている。上半部である背面フレーム529の下部は、上下軸線まわりの受動回転軸532を介して、下肢部である背面フレーム512の上部と連結されている。
【0160】
空気圧ロータリアクチュエータ525の回転端側は、装着者の上腕に沿うように出されたアーム533が取り付けられている。アーム533には、上腕部用ベルト534が取り付けられて、上腕に固定されるようになっている。アーム533の先端には、肘のパワーアシスト用の空気圧ロータリアクチュエータ535の固定端部が取り付けられている。空気圧ロータリアクチュエータ535の回転端部には、装着者の前腕に沿うように出されたアーム536が取り付けられている。アーム536には、前腕部用ベルト537が取り付けられて、前腕に固定されるようになっている。
【0161】
図14は、第2の重作業用アシストスーツ500に含まれる空気圧駆動機器の構成を示す図である。第2の重作業用アシストスーツ500に含まれる空気圧駆動機器は、コンプレッサ401、開閉バルブ402、レギュレータ403、エアフィルタ404、ミストセパレータ405、主流路406、左半身側流路607、右半身側流路608、上肢左肩関節空圧回路部630a、上肢右肩関節空圧回路部630b、上肢左肘関節空圧回路部630c、上肢右肘関節空圧回路部630d、下肢左腰関節空圧回路430a、下肢右腰関節空圧回路430b、下肢左膝関節空圧回路430c、および下肢右膝関節空圧回路430dをさらに含んで構成される。
【0162】
据え置き型のコンプレッサ401で圧縮された圧縮空気は、開閉バルブ402を開放することによって、レギュレータ403へ流され、レギュレータ403によって適正な圧力に調整した後に、エアフィルタ404とミストセパレータ405とによって清浄化されて、主流路406へ送られる。主流路406は、左半身側流路607と右半身側流路608とに分岐する。
【0163】
左半身側流路607に送られた圧縮空気は、まず上肢左肩関節空圧回路部630aおよび上肢左肘関節空圧回路部630cに送られる。上肢左肩関節空圧回路部630aは、左肩関節の動きを補助するため、すなわち、左肩の左側側方に配置される空気圧ロータリアクチュエータ525を駆動するための空圧回路である。上肢左肩関節空圧回路部630aは、上肢関節用電空レギュレータ631、上肢関節電磁弁632、上肢関節屈曲側流量制御弁633、上肢関節伸展側流量制御弁634および上肢関節用ロータリアクチュエータ635を含んで構成される。
【0164】
上肢左肩関節空圧回路部630aに送られた圧縮空気は、上肢関節用電空レギュレータ631によって持ち上げる荷重に必要なトルクに見合った空気圧力に調整される。圧力を調整された圧縮空気は、上肢関節電磁弁632によって、肩関節または肘関節の伸展側および屈曲側に流路が切り換えられる。流路が切り換えられた圧縮空気は、上肢関節屈曲側流量制御弁633または上肢関節伸展側流量制御弁634によって流量制御が行われた後に、上肢関節用ロータリアクチュエータ635に送られ、上肢関節用ロータリアクチュエータ635、つまり空気圧ロータリアクチュエータ525を駆動する。
【0165】
上肢左肘関節空圧回路部630cは、左肘関節の動きを補助するため、すなわち、左肘付近に配置される空気圧ロータリアクチュエータ535を駆動するための空圧回路である。上肢左肘関節空圧回路部630cの構成は、上肢左肩関節空圧回路部630aの構成と同じであり、重複を避けるために説明は省略する。
【0166】
右半身側流路608に送られた圧縮空気は、上肢右肩関節空圧回路部630bおよび上肢右肘関節空圧回路部630dに送られる。上肢右肩関節空圧回路部630bは、右肩関節の動きを補助するため、すなわち、左肩の右側側方に配置される空気圧ロータリアクチュエータ525を駆動するための空圧回路である。上肢右肘関節空圧回路部630dは、右肘関節の動きを補助するため、すなわち、右肘付近に配置される空気圧ロータリアクチュエータ535を駆動するための空圧回路である。
【0167】
上肢右肩関節空圧回路部630bおよび上肢右肘関節空圧回路部630dの構成は、いずれも上肢左肩関節空圧回路部630aの構成と同じであり、重複を避けるために説明は省略する。また、下肢左腰関節空圧回路430a、下肢右腰関節空圧回路430b、下肢左膝関節空圧回路430cおよび下肢右膝関節空圧回路430dは、図9に示した下肢左腰関節空圧回路430a、下肢右腰関節空圧回路430b、下肢左膝関節空圧回路430cおよび下肢右膝関節空圧回路430dと同じであり、重複を避けるために説明は省略する。
【0168】
上肢左肩関節空圧回路部630aに含まれる上肢関節用ロータリアクチュエータ635は、左肩の左側側方に配置される空気圧ロータリアクチュエータ525である。上肢左肘関節空圧回路部630cに含まれる上肢関節用ロータリアクチュエータ635は、左肘付近に配置される空気圧ロータリアクチュエータ535である。上肢右肩関節空圧回路部630bに含まれる上肢関節用ロータリアクチュエータ635は、右肩の右側側方に配置される空気圧ロータリアクチュエータ525である。上肢右肘関節空圧回路部630dに含まれる上肢関節用ロータリアクチュエータ635は、右肘付近に配置される空気圧ロータリアクチュエータ535である。
【0169】
図15は、第2の重作業用アシストスーツ500に含まれる制御機器の構成を示す図である。第2の重作業用アシストスーツ500に含まれる制御機器は、中央制御ユニット330、右足底ユニット350、左足底ユニット360、各関節ユニット340a〜340d,560a〜560d、およびハンディ端末50を含んで構成される。中央制御ユニット330、右足底ユニット350、左足底ユニット360、および各関節ユニット340a〜340dは、図10に示した中央制御ユニット330、右足底ユニット350、左足底ユニット360、各関節ユニット340a〜340d、およびハンディ端末50と同じであり、重複を避けるために説明は省略する。
【0170】
関節ユニット560aは、左肩の左側側方に配置される空気圧ロータリアクチュエータ525を制御する。関節ユニット560bは、右肩の右側側方に配置される空気圧ロータリアクチュエータ525を制御する。関節ユニット560cは、左肘付近に配置される空気圧ロータリアクチュエータ535を制御する。関節ユニット560dは、右肘付近に配置される空気圧ロータリアクチュエータ535を制御する。
【0171】
各関節ユニット560a〜560dは、電空レギュレータ341、ソレノイドバルブ342、およびポテンショメータ343を含んで構成される。電空レギュレータ341、ソレノイドバルブ342、およびポテンショメータ343は、図10に示した電空レギュレータ341、ソレノイドバルブ342、およびポテンショメータ343と同じであり、重複を避けるために説明は省略する。
【0172】
関節ユニット560a,560bのポテンショメータ343は、第3の角度検出部である。関節ユニット560c,560dのポテンショメータ343は、第4の角度検出部である。関節ユニット340a,340bのポテンショメータ343は、第5の角度検出部である。関節ユニット340c,340dのポテンショメータ343は、第6の角度検出部である。ポテンショメータ353,363は、第7の角度検出部である。
【0173】
ハンディ端末50は、図3に示したハンディ端末50と同じ構成である。第4の実施形態のハンディ端末50に設定可能なパラメータを表3に示す。
【0174】
【表3】

【0175】
図16は、各関節での回転トルクTの算出を説明するための図である。制御部332は、装着者の様々な作業姿勢にて体を動かすのに必要な回転トルクTを、肩関節、肘関節、腰関節および膝関節の計測角度、および靴の爪先および踵に作用する床反力スイッチの状態に基づいて、力学的に算出することによって、アシストトルクを算出する。床反力スイッチは、爪先床反力検出スイッチ538および踵床反力検出スイッチ539である。爪先床反力検出スイッチ538および踵床反力検出スイッチ539は、重量検出部である。
【0176】
制御部332は、装着者を両脚部がそれぞれ独立した平面上にあると仮定した多関節剛体リンク機構としてモデル化し、上肢と下肢とに分けて、それぞれ荷重と床反力とから、左右の関節トルクを両腕両足別々に算出することができる計算式を用いる。上肢と下肢とに分けたことによって、胴体の多関節な構造からなる背骨の婉曲を無視することができる。
【0177】
制御部332は、様々な荷物の重量を検出する必要があるため、第2の重作業用アシストスーツ500を装着した状態で、まず、装着者の体重を検知し、荷物を持たない状態で、姿勢を保持することができる保持トルクを算出する。また、制御部332は、装着者が荷物を持った際、荷物の重量を検知し、荷物を保持するための保持トルクを算出する。
【0178】
図16は、装着者を両脚部がそれぞれ独立した平面上にあると仮定した多関節剛体リンク機構としてモデル化した図である。リンク11は足であり、リンク12は下腿部であり、リンク13は大腿部であり、リンク14は胴体であり、リンク15は上腕であり、リンク16は前腕である。
【0179】
各リンクの重心位置での重さ、各リンクの長さおよび重心までの長さを、それぞれ、リンク11は、M11、L11およびLg11とし、リンク12は、M12、L12およびLg12とし、リンク13は、M13、L13およびLg13とし、リンク14は、M14、L14およびLg14とし、リンク15は、M15、L15およびLg15とし、リンク16は、M16、L16およびLg16とする。また、各関節の角度を、足関節はθ11とし、膝関節はθ12とし、股関節はθ13とし、肩関節はθ14とし、肘関節はθ15とする。また、踵の重心からの距離をRh1とし、爪先の重心からの距離をRt1とする。さらに、踵の床反力をNh1とし、爪先の床反力をNt1とする。各関節の関節トルクは、算出式(1)〜(5)によって算出することができる。ここに、τreは肘関節の関節トルクであり、τrsは肘関節の関節トルクであり、τrhは肘関節の関節トルクであり、τrkは肘関節の関節トルクであり、τraは肘関節の関節トルクである。
τre=(mL16+M16g16)cos(θ11+θ12+θ13
+θ14+θ15) …(1)
τrs={(m++M16)L16+M15g15)gcos(θ11
+θ12+θ13+θ14)+τre …(2)
τrh={M1113+M1213+M13(L13−Lg13)}
gcos(θ11+θ12)−(Nt1+Nh1
13cos(θ11+θ12)+τrk …(3)
τrk={M1112+M12(L12−Lg12)}gcosθ11
−(Nt1+Nh1)L12cosθ11+τra …(4)
τra=−M11g11g+Nt1t1−Nh1h1
+(Nt1+Nh1)Lg11 …(5)
【0180】
制御部332は、関節トルクを算出した後、各空気圧シリンダ501,516および各空気圧ロータリアクチュエータ525,535に供給する空気圧と回転トルクTとの関係を近似式によって求め、空気圧指令の形で指示する。
【0181】
計算式(1)〜(5)の内、関節角度θ11〜θ15、荷重の重量m、および床反力Nt1,Nh1以外は定数であるので、事前に、適切なパラメータ値に変換した後、装着者によってハンディ端末50から入力される。
【0182】
図17および図18は、第2の重作業用アシストスーツ500で実行される第4のアシストスーツ制御処理の処理手順を示すフローチャートである。制御部332は、第2の重作業用アシストスーツ500の電源が投入されて空気圧シリンダ501,516および空気圧ロータリアクチュエータ525,535を除く部位への電力の供給が開始され、動作可能状態になると、ステップC1に移る。
【0183】
第4のアシストスーツ制御処理は、大きく5つのシーケンスによって構成される。ステップC1〜C5が電源起動シーケンスであり、ステップC6,C7がパラメータ書換えシーケンスであり、ステップC8,C9が姿勢情報入力シーケンスであり、ステップC10〜C14が肩関節・肘関節制御シーケンスであり、ステップC15〜C25が股関節・膝関節制御シーケンスである。制御部332は、肩関節・肘関節制御シーケンスおよび股関節・膝関節制御シーケンスによって、各関節に必要なアシストトルクを出力する。ステップC1〜C3,C6は、図11に示したステップB1〜B3,B6と同じであり、重複を避けるために説明を省略する。
【0184】
ステップC4では、制御部332は、制御の初期化を行う。具体的には、図5に示したステップA2と同様に、制御部332は、直立状態で、腕を鉛直方向に下げた姿勢での関節角度を初期値である0度とする。すなわち、制御部132は、直立状態で、腕を鉛直方向に下げた姿勢での各関節角度を、各関節ユニット340a〜340d,560a〜560dに含まれるポテンショメータ343、右足底ユニット350に含まれるポテンショメータ353、および左足底ユニット360に含まれるポテンショメータ363から取得し、取得した各関節角度の位置を、各関節角度の0度の位置とする。
【0185】
ステップC5では、制御部332は、空気圧シリンダ501,516および空気圧ロータリアクチュエータ525,535を駆動するための駆動電源をオンとする。すなわち、制御部332は、電池333から空気圧シリンダ501,516および空気圧ロータリアクチュエータ525,535への電力の供給を開始するように、電池333に指示する。
【0186】
ステップC7では、制御部332は、ハンディ端末50から更新されたパラメータを受信すると、受信した更新されたパラメータを、図示しない記憶部に記憶してパラメータを更新する。または、風袋消去を行う。
【0187】
ステップC8では、制御部332は、各関節角度を計測する。具体的には、制御部332は、各関節ユニット340a〜340d,560a〜560dに含まれるポテンショメータ343、右足底ユニット350に含まれるポテンショメータ353、および左足底ユニット360に含まれるポテンショメータ363によって計測された関節角度および回転方向を、各ポテンショメータ343,353,363から取得する。ステップC9では、制御部332は、床反力スイッチからスイッチの状態を読み込む。具体的には、制御部332は、爪先床反力検出スイッチ538および踵床反力検出スイッチ539から、それぞれの検出結果、つまり計測された重量を取得する。このとき、制御部332は、中央制御ユニットに含まれる3軸加速度センサで計測された腰の傾きを、3軸加速度センサから取得する。
【0188】
そして、制御部332は、取得した関節角度、回転の有無、回転方向、重量、および腰の傾きに基づいて、装着者の上腕、前腕、大腿部および下腿部に係る静止トルクを算出するとともに、肩・肘制御、腰・膝制御および歩行制御の状態を判断する。肩・肘制御は、肩関節および肘関節の制御であり、腰・膝制御は、股関節および膝関節の制御である。
【0189】
ステップC10〜C14は、図5に示したステップA8〜A12の肩制御および肩トルクをそれぞれ肩・肘制御および肩・肘トルクに置き換えたものと同じであり、また、ステップC15〜C25は、図12に示したステップC13〜C23の腰制御および腰トルクを、それぞれ腰・膝制御および腰・膝トルクに置き換えたものと同じであり、重複を避けるために説明を省略する。制御部332は、ステップC6〜ステップC25の一連のシーケンス、つまりメインループを、10m秒間隔で実行しており、装着者へのスムーズなアシストを実現している。
【0190】
制御部132は、表1に示したパラメータのうち、ステップC11で、パラメータNo「4」を使用し、ステップC13で、パラメータNo「5」,「6」を使用し、ステップC14で、パラメータNo「7」を使用し、ステップC21で、パラメータNo「8」,「9」を使用し、ステップC22で、パラメータNo「10」,「11」を使用し、ステップC23で、パラメータNo「12」,「13」を使用し、ステップC24で、パラメータNo「14」を使用する。
【0191】
第1の軽作業用アシストスーツ100および第2の軽作業用アシストスーツ200は、肩関節および股関節についてパワーアシストするために、電動モータ1を左右の肩関節の両サイドに配置し、および電動モータ11を左右の股関節の両サイドに配置している。電動モータ1,11は、バックドライアブルとするため、すなわち、装着者側から駆動機器を動かすことができるようにするため、電動モータ1,11に付加される減速機の減速比を1/50程度の低減速比にして、装着者が出せる以上の力を出せないように電動モータ1,11の出力を制限し、抗重力方向に十分なアシスト力を確保している。第1の軽作業用アシストスーツ100および第2の軽作業用アシストスーツ200は、電動モータ1,11を取り付けているアシスト機構として、アシスト方向以外の装着者の動作を妨げないように受動回転軸、すなわち駆動機器を取りつけていない回転軸を、装着者の関節の外側周囲に配置している。
【0192】
このように、電動モータ1,11は、バックドライアブルとするため、電動モータ1,11に付加される減速機の減速比を1/50程度の低減速比にして、装着者が出せる以上の力を出せないように電動モータ1,11の出力を制限しているので、装着者の安全を確保することができる。また、アシスト方向以外の装着者の動作を妨げないように受動回転軸を、装着者の関節の外側周囲に配置しているので、第1の軽作業用アシストスーツ100および第2の軽作業用アシストスーツ200は、装着者の動作を拘束することがない。
【0193】
第1の軽作業用アシストスーツ100および第2の軽作業用アシストスーツ200の制御方法は、筋肉を動かそうとした時に筋肉に流れる微弱な表面筋電位信号を用いずに、装着者の様々な作業姿勢にて体を動かすのに必要な回転トルクを力学的に算出することによって、アシストトルクを算出するので、表面筋電位センサ装着の煩わしさがない。また、この制御方法は、動作パターンの再生方式ではなく、装着者の様々な作業姿勢にて体を動かすのに必要なトルクを力学的に算出することによって、アシストトルクを算出するので、動作の切り替わり時に不連続になることがない。
【0194】
したがって、第1の軽作業用アシストスーツ100および第2の軽作業用アシストスーツ200は、表面筋電位センサを装着する煩わしさがなく、実用的である。また、第1の軽作業用アシストスーツ100および第2の軽作業用アシストスーツ200は、数多くの動作パターンをデータベース化しておく必要がなく、動作の切り替わり時に不連続になることがない。
【0195】
第1の重作業用アシストスーツ300および第2の重作業用アシストスーツ500の下肢部については、股関節および膝関節をパワーアシストするために、空気圧シリンダ301,501を左右の股関節の両サイドに配置し、空気圧シリンダ315,516を左右の膝関節の両サイドに配置している。これらの空気圧シリンダ301,315,501,516は、バックドライアブルであり、空気の圧縮性によってクッションになり、また、装着者が出せる以上の力や速度を出せないように供給圧力や流量を制限することで、装着者の安全を確保することができ、抗重力方向に十分なアシスト力を確保している。空気圧シリンダ301,315,501,516を取り付けているアシスト機構については、アシスト方向以外の装着者の動作を妨げないように受動回転軸を、装着者の関節の外側周囲に配置している。
【0196】
第1の重作業用アシストスーツ300の上肢部については、重量物持ち上げをパワーアシストするためのリフタ装置が、装着者の下肢部の背面フレームに、上下軸線まわりの回転軸を介して取り付けられている上肢部の背面ボックス、つまり上肢背面ボックス324に配置されている。この背面ボックスの上部には、空気圧式の人工ゴム筋肉325の固定端が連結されている。人工ゴム筋肉325の移動端には、移動フレーム326が接続されて、ピニオンギア630〜632を介して約5倍に増速され、背面ボックス上部から左右の肩の上部のガイド部を通って、装着者の前面へワイヤ639,640が出てくる。ワイヤ639,640の端には、重量物を把持するためのフック641と、スイッチ642とが取り付けられている。装着者は、重量物をフック641に引っかけて、ワイヤ639,640と重量物とを結び付けることができる構造になっている。
【0197】
空気圧シリンダ301,315,501,516、空気圧の人工ゴム筋肉325、および空気圧ロータリアクチュエータ525,535は、バックドライアブルであり、空気の圧縮性によりクッションになり、また装着者が出せる以上の力や速度を出せないように供給圧力や流量を制限することで、装着者の安全を確保することができる。また、第1の重作業用アシストスーツ300および第2の重作業用アシストスーツ500は、アシスト方向以外の装着者の動作を妨げないように受動回転軸を、装着者の関節の外側周囲に配置しているので、装着者の動作を拘束しない。
【0198】
第1の重作業用アシストスーツ300および第2の重作業用アシストスーツ500の制御方法は、筋肉を動かそうとした時に筋肉に流れる微弱な表面筋電位信号を用いずに、装着者の様々な作業姿勢にて体を動かすのに必要な回転トルクを力学的に算出することによって、アシストトルクを算出するので、第1の重作業用アシストスーツ300および第2の重作業用アシストスーツ500は、表面筋電位センサ装着の煩わしさがない。また、この制御方法は、動作パターンの再生方式ではなく、装着者の様々な作業姿勢にて体を動かすのに必要な回転トルクを力学的に算出することにより、アシストトルクを算出するので、第1の重作業用アシストスーツ300および第2の重作業用アシストスーツ500は、動作の切り替わり時に不連続になることがない。
【0199】
したがって、第1の重作業用アシストスーツ300および第2の重作業用アシストスーツ500は、表面筋電位センサを装着する煩わしさがなく、実用的である。また、第1の重作業用アシストスーツ300および第2の重作業用アシストスーツ500は、数多くの動作パターンをデータベース化しておく必要がなく、動作の切り替わり時に不連続になることがない。
【0200】
このように、2つの電動モータ1,201は、装着者の両肩部の近傍にそれぞれ配置され、装着者の上腕部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する。背面フレーム5,206は、装着者の胴体上部に装着され、前記2つの電動モータ1,201を保持する。2つの電動モータ11,212は、装着者の腰部の近傍にそれぞれ配置され、装着者の大腿部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する。そして、背面フレーム15,216は、装着者の腰部に装着され、前記2つの電動モータ11,212を保持する。したがって、第1の軽作業用アシストスーツ100および第2の軽作業用アシストスーツ200は、アシスト方向以外の装着者の動作を妨げないように、上下軸線および前後軸線まわりに回転自在な受動回転軸2〜4,203,205および受動回転軸12〜14,214、たとえば駆動機器が取りつけられていない受動回転軸を、装着者の関節の外側周囲に配置しているので、装着者の動作を拘束することなく補助することができる。
【0201】
さらに、前記背面フレーム5から前記受動回転軸2〜4を介して両肩部にわたって延びるフレームを含む。そして、前記2つの電動モータ1は、前記フレームによって前記背面フレーム5に連桔される。したがって、2つの電動モータ11を保持する背面フレーム5を軽量化することができ、装着者の負担を軽減することができる。
【0202】
さらに、前記フレームは、装着者の両肩部に上方から装着される2つの肩フレームと、該2つの肩フレームから左右方向外方に前記受動回転軸203,205を介して両肩部まで延びる2つの横フレームを含む。そして、前記2つの電動モータ201は、前記2つの横フレームによって前記背面フレーム206に連桔される。したがって、第2の軽作業用アシストスーツ200は、2つの電動モータ212の位置が安定し、装着者の動作が容易になる。
【0203】
さらに、電動モータ1,201に含まれるロータリエンコーダは、前記2つの電動モータ1,201に設けられ、上腕部の肩関節まわりの回転角度を検出する。電動モータ11,212に含まれるロータリエンコーダは、前記2つの電動モータ11,212に設けられ、大腿部の股関節まわりの回転角度を検出する。爪先床反力検出スイッチ21および踵床反力検出スイッチ22は、装着者が装着する靴の靴底部における爪先部分および踵部分にそれぞれ設けられ、予め定める値以上の重量が爪先部および踵部に作用しているか否かを検出する。そして、3次元加速度センサは、前記背面フレーム15,216に設けられ、装着者の上半身の傾きを検出する。したがって、第1の軽作業用アシストスーツ100および第2の軽作業用アシストスーツ200は、電動モータ1,201,11に含まれるロータリエンコーダ、爪先床反力検出スイッチ21および踵床反力検出スイッチ22、3次元加速度センサを用いているので、表面筋電位センサを装着する煩わしさがなく、実用的である。
【0204】
さらに、制御部132は、電動モータ1,201に含まれるロータリエンコーダによって検出される両上腕部の回転角度、電動モータ11,212に含まれるロータリエンコーダによって検出される両大腿部の回転角度、爪先床反力検出スイッチ21および踵床反力検出スイッチ22によって検出される検出結果、および3次元加速度センサによって検出される上半身の傾きに基づいて、両上腕部および両大腿部に作用する静的トルク、回転方向および回転に要する回転トルクを算出し、さらに、算出した静的トルク、回転方向および回転トルクに基づいて、前記2つの電動モータ1,201および前記2つの電動モータ11,212を駆動する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクを発生するように、前記2つの電動モータ1,201および前記2つの電動モータ11,212を駆動させる。したがって、第1の軽作業用アシストスーツ100および第2の軽作業用アシストスーツ200は、回転角度等に基づいて駆動トルクを算出するので、数多くの動作パターンをデータベース化しておく必要がなく、動作の切り換わり時に不連続になることがない。
【0205】
さらに、前記制御部132は、前記算出した駆動トルクを、装着者が前記2つの電動モータ1,201および前記2つの電動モータ11,212を逆方向に駆動することができる減速比以下の減速比に減速して、前記2つの電動モータ1,201および前記2つの電動モータ11,212を駆動する。したがって、第1の軽作業用アシストスーツ100および第2の軽作業用アシストスーツ200は、装着者が2つの電動モータ1,201および2つの電動モータ11,212を逆方向に駆動することができる減速比以下の減速比、たとえば1/50程度の低減速比にして、装着者が出せる以上の力を出せないように、2つの電動モータ1,201および2つの電動モータ11,212の出力を制限しているので、装着者の安全を確保することができる。
【0206】
さらに、前記2つの電動モータ1,201および前記2つの電動モータ11,212は、電動モータである。したがって、電動モータは、バックドライアブルであるので、第1の軽作業用アシストスーツ100および第2の軽作業用アシストスーツ200は、装着者の安全を確保することができる。
【0207】
さらに、2つの空気圧シリンダ301,501は、装着者の各大腿部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する。2つの空気圧シリンダ315,516は、装着者の各下腿部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する。保持部は、装着者の背中に装着される背面フレーム512,529、大腿部に装着される2つのフレーム506、下腿部に装着される2つのフレーム520、および靴底に装着される2つのフレーム523を含み、前記2つの空気圧シリンダ301,501および前記空気圧シリンダ315,516を保持する。そして、上半身補助部は、背中装着部によって保持され、上半身の動作を補助する。また、前記保持部は、腰部の左右方向外方近傍にそれぞれ配置され、大腿部装着部を背中装着部に対して前後軸線まわりに回転自在に連結する2つの受動回転軸505と、両膝部の左右方向外方近傍にそれぞれ配置され、下腿部装着部を大腿部装着部に対して前後軸線まわりに回転自在に連結する2つの受動回転軸504と、両足の踝の左右方向外方近傍にそれぞれ配置され、靴底装着部を下腿部装着部に対して前後軸線まわりに回転自在に連結する2つの受動回転軸519と、空気圧シリンダ301,501の一端を、腰用連結部の上方で、前後軸線まわりに回転自在に背中装着部に連結する受動回転軸508と、空気圧シリンダ301,501の他端を、大腿部装着部の膝用連結部側の一端から前方向上方に延伸するアームの先端部に、前後軸線まわりに回転自在に連結する受動回転軸502と、空気圧シリンダ315,516の一端を、大腿部装着部の背面側に膝用連結部寄りの中間の位置で、前後軸線まわりに回転自在に連結する受動回転軸521と、空気圧シリンダ315,516の他端を、膝用連結部の背面側に踝用連結部の後方で、前後軸線まわりに回転自在に保持部に連結する受動回転軸517とを含む。したがって、第1の重作業用アシストスーツ300および第2の重作業用アシストスーツ500は、荷物等の重量を靴底装着部から地面や床に逃すことができ、装着者にかかる負担を軽減しつつ、装着者の動作を補助することができる。
【0208】
さらに、前記保持部は、前記背面フレーム512,529の上方から両肩上方を跨ぐように前方向に延伸するガイド部を含む。そして、前記上半身補助部は、先端にフック641を有するワイヤ639,640と、ワイヤ639,640をガイド部に沿って巻上げおよび巻下げ、前記背面フレーム644の背面側に設けられる人工ゴム筋肉325とを含む。したがって、第1の重作業用アシストスーツ300は、ワイヤ639,640のフック641に荷物を掛けることによって、荷物の持ち上げおよび持ち下げを補助することができる。
【0209】
さらに、2つの空気圧ロータリアクチュエータ525は、両肩部の近傍にそれぞれ配置されて前記背面フレーム512,529によって保持され、装着者の各上腕部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する。そして、2つの空気圧ロータリアクチュエータ525は、両肘部の近傍にそれぞれ配置されて前記背面フレーム512,529によって保持され、装着者の各前腕部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する。したがって、第2の重作業用アシストスーツ500は、両手による荷物の持ち上げおよび持ち下げを補助することができる。
【0210】
さらに、関節ユニット560a,560bのポテンショメータ343は、前記2つの空気圧ロータリアクチュエータ525に設けられ、上腕部が回転している回転角度を検出する。関節ユニット560c,560dのポテンショメータ343は、前記2つの空気圧ロータリアクチュエータ525に設けられ、前腕部が回転している回転角度を検出する。関節ユニット340a,340bのポテンショメータ343は、前記2つの受動回転軸505に設けられ、大腿部が回転している回転角度を検出する。関節ユニット340c,340dのポテンショメータ343は、前記2つの受動回転軸504に設けられ、下腿部が回転している回転角度を検出する。ポテンショメータ353,363は、前記2つの受動回転軸519に設けられ、足が回転している回転角度を検出する。爪先床反力検出スイッチ538および踵床反力検出スイッチ539は、装着者が装着する靴の靴底部における爪先部分および踵部分にそれぞれ設けられ、爪先部および踵部に作用する重量を検出する。3次元加速度センサは、前記背面フレーム512,529に設けられ、上半身の傾きを検出する。そして、制御部332は、ポテンショメータ343,353,363によって検出される回転角度、爪先床反力検出スイッチ538および踵床反力検出スイッチ539によって検出される重量、および3次元加速度センサによって検出される上半身の傾きに基づいて、両上腕部、両前腕部、両大腿部、両下腿部、および両足に作用する静的トルク、回転方向およびに回転に要する回転トルクを算出し、さらに、算出した静的トルク、回転方向および回転トルクに基づいて、前記2つの空気圧ロータリアクチュエータ525、前記2つの空気圧ロータリアクチュエータ535、前記2つの空気圧シリンダ301,501および前記2つの空気圧シリンダ315,516を駆動する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクで、前記2つの空気圧ロータリアクチュエータ525、前記2つの空気圧ロータリアクチュエータ535、前記2つの空気圧シリンダ301,501および前記2つの空気圧シリンダ315,516を駆動する。したがって、第2の重作業用アシストスーツ500は、ポテンショメータ343,353,363、爪先床反力検出スイッチ538および踵床反力検出スイッチ539、3次元加速度センサを用いているので、表面筋電位センサを装着する煩わしさがなく、実用的である。また、第2の重作業用アシストスーツ500は、回転角度等に基づいて駆動トルクを算出するので、数多くの動作パターンをデータベース化しておく必要がなく、動作の切り換わり時に不連続になることがない。
【0211】
さらに、前記2つの空気圧シリンダ301および前記空気圧シリンダ315は、空気圧シリンダである。そして、前記駆動部は、人工ゴム筋肉325である。したがって、空気圧シリンダや人工ゴム筋肉は、バックドライアブルであり、空気の圧縮性によりクッションになり、また装着者が出せる以上の力や速度を出せないように供給圧力や流量を制限することで、第1の重作業用アシストスーツ300は、装着者の安全を確保することができる。
【0212】
さらに、前記2つの空気圧シリンダ501および前記空気圧シリンダ516は、空気圧シリンダである。そして、前記2つの空気圧ロータリアクチュエータ525および前記2つの空気圧ロータリアクチュエータ535は、空気圧ロータリアクチュエータである。したがって、空気圧シリンダや空気圧ロータリアクチュエータは、バックドライアブルであり、空気の圧縮性によりクッションになり、また装着者が出せる以上の力や速度を出せないように供給圧力や流量を制限することで、第2の重作業用アシストスーツ500は、は、装着者の安全を確保することができる。
【0213】
さらに、ハンディ端末50は、装着者の個体差を表すパラメータを入力する。そして、前記制御部132,332は、ハンディ端末50によって入力されたパラメータに基づいて、前記駆動トルクを算出する。したがって、第1の軽作業用アシストスーツ100、第2の軽作業用アシストスーツ200、第1の重作業用アシストスーツ300および第2の重作業用アシストスーツ500は、は、装着者の個体差を表すパラメータを入力することができるので、誰にでも装着可能である。
【0214】
さらに、第1の軽作業用アシストスーツ100および第2の軽作業用アシストスーツ200を制御するにあたって、ステップA4〜A7では、電動モータ1に含まれるロータリエンコーダによって検出される両上腕部の回転角度、電動モータ11に含まれるロータリエンコーダによって検出される両大腿部の回転角度、爪先床反力検出スイッチ21および踵床反力検出スイッチ22によって検出される検出結果、および3次元加速度センサによって検出される上半身の傾きに基づいて、両上腕部および両大腿部に作用する静的トルク、回転方向およびに回転に要する回転トルクを算出する。そして、ステップA8〜A23では、算出した静的トルク、回転方向および回転トルクに基づいて、前記2つの電動モータ1,201および前記2つの電動モータ11,212を駆動する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクを、装着者が前記2つの電動モータ1,201および前記2つの電動モータ11,212を逆方向に駆動することができる減速比以下の減速比で減速して、前記2つの電動モータ1,201および前記2つの電動モータ11,212を駆動する。したがって、第1の軽作業用アシストスーツ100および第2の軽作業用アシストスーツ200は、角度検出部、床反力検出部、および3次元加速度センサを用いているので、表面筋電位センサを装着する煩わしさがなく、実用的である。また、第1の軽作業用アシストスーツ100および第2の軽作業用アシストスーツ200は、回転角度等に基づいて駆動トルクを算出するので、数多くの動作パターンをデータベース化しておく必要がなく、動作の切り換わり時に不連続になることがない。
【符号の説明】
【0215】
1,11,201,212 電動モータ
2〜4,12〜14,203,205,209,302,304 受動回転軸
5,15,216,312,344,512,529,644 背面フレーム
6,16,513,530 クッション用パッド
7 肩用ベルト
8,531 胸用ベルト
9,19,208,533,536 アーム
10,211 腕用ベルト
17,217,314,514 腰用ベルト
18,218 股用ベルト
20,223 大腿用ベルト
21,538 爪先床反力検出スイッチ
22,539 踵床反力検出スイッチ
23,540 中央制御ユニット
50 ハンディ端末
51 パラメータ番号選択スイッチ
52 上昇スイッチ
53 下降スイッチ
54 エントリスイッチ
55 モードスイッチ
56 パラメータ表示部
57 LED
100 第1の軽作業アシストスーツ
130 下肢ユニット
131,151,161 無線通信部
132 制御部
133,152,162 電池
140 上肢ユニット
150 右足床ユニット
160 左足床ユニット
200 第2の軽作業アシストスーツ
202,204,206,213 フレーム
207 ヒンジ
210,222 受け面
219 前面ベルト
220 背面ベルト
300 第1の重作業用アシストスーツ
301,315,501,516 空気圧シリンダ
305,308,309,311,316,318,320,321 受動回転軸
303,306,307,310,317,322 フレーム
324 上肢背面ボックス
325 人工ゴム筋肉
326 移動フレーム
327,328 リニアガイド
329 ラックギア
330 中央制御ユニット
340,560 関節ユニット
350 右足底ユニット
360 左足底ユニット
370 リフタユニット
500 第2の重作業用アシストスーツ
502,504,505,508,509,511,517,519 受動回転軸
503,506,507,510,518,520,523,527 フレーム
515 大腿用ベルト
521,522,526,528,532 受動回転軸
524 下腿部用ベルト
525,535 ロータリアクチュエータ
534 上腕用ベルト
537 前腕用ベルト
630〜632 ピニオンギア
633 ワイヤ巻き取りシーブ
634,639,640 ワイヤ
635 バランスプレート
636 フレーム
637,638 プーリ
641 フック
642 スイッチ
643 手袋
645 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の両肩部近傍にそれぞれ配置され、装着者の上腕部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する2つの腕用駆動部と、
装着者の胴体上部に装着され、前記2つの腕用駆動部を保持する腕用保持部と、
装着者の腰部近傍にそれぞれ配置され、装着者の大腿部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する2つの大腿用駆動部と、
装着者の腰部に装着され、前記2つの大腿用駆動部を保持する腰用保持部とを含むことを特徴とするパワーアシストロボット装置。
【請求項2】
前記腕用保持部は、両肩部にわたって延びるフレームを含み、
前記2つの腕用駆動部は、前記フレームに連桔されることを特徴とする請求項1に記載のパワーアシストロボット装置。
【請求項3】
前記腕用保持部は、装着者の両肩部に上方から装着される2つの肩フレームと、該2つの肩フレームから両肩部まで延びる2つの横フレームを含み、
前記2つの腕用駆動部は、前記2つの横フレームに連結されることを特徴とする請求項1に記載のパワーアシストロボット装置。
【請求項4】
前記2つの腕用駆動部に設けられ、上腕部の肩関節まわりの回転角度を検出する第1の角度検出部と、
前記2つの大腿用駆動部に設けられ、大腿部の股関節まわりの回転角度を検出する第2の角度検出部と、
装着者が装着する靴の靴底部における爪先部分および踵部分にそれぞれ設けられ、予め定める値以上の重量が爪先部および踵部に作用しているか否かを検出する床反力検出部と、
前記腰用保持部に設けられ、装着者の上半身の傾きを検出する3次元加速度センサとをさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のパワーアシストロボット装置。
【請求項5】
第1の角度検出部によって検出される両上腕部の回転角度、第2の角度検出部によって検出される両大腿部の回転角度、床反力検出部によって検出される検出結果、および3次元加速度センサによって検出される上半身の傾きに基づいて、両上腕部および両大腿部に作用する静的トルク、回転方向および回転に要する回転トルクを算出し、
さらに、算出した静的トルク、回転方向および回転トルクに基づいて、前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を駆動する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクを発生するように、前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を駆動させる駆動制御部をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載のパワーアシストロボット装置。
【請求項6】
前記駆動制御部は、前記算出した駆動トルクを、装着者が前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を逆方向に駆動することができる減速比以下の減速比に減少させて、前記2つの大腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部に発生させることを特徴とする請求項5に記載のパワーアシストロボット装置。
【請求項7】
前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部は、電動モータを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のパワーアシストロボット装置。
【請求項8】
装着者の各大腿部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する2つの大腿用駆動部と、
装着者の各下腿部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する2つの下腿部用駆動部と、
装着者の背中に装着される背中装着部、大腿部に装着される2つの大腿部装着部、下腿部に装着される2つの下腿部装着部、および靴底に装着される2つの靴底装着部を含み、前記2つの大腿用駆動部および前記下腿部用駆動部を保持する保持部であって、
腰部の左右方向外方近傍にそれぞれ配置され、大腿部装着部を背中装着部に対して前後軸線まわりに回転自在に連結する2つの腰用連結部と、
両膝部の左右方向外方近傍にそれぞれ配置され、下腿部装着部を大腿部装着部に対して前後軸線まわりに回転自在に連結する2つの膝用連結部と、
両足の踝の左右方向外方近傍にそれぞれ配置され、靴底装着部を下腿部装着部に対して前後軸線まわりに回転自在に連結する2つの踝用連結部と、
大腿用駆動部の一端を、腰用連結部の上方で、前後軸線まわりに回転自在に背中装着部に連結する第1の連結部と、
大腿用駆動部の他端を、大腿部装着部の膝用連結部側の一端から前方向上方に延伸するアームの先端部に、前後軸線まわりに回転自在に連結する第2の連結部と、
下腿部用駆動部の一端を、大腿部装着部の背面側に膝用連結部寄りの中間の位置で、前後軸線まわりに回転自在に連結する第3の連結部と、
下腿部用駆動部の他端を、膝用連結部の背面側に踝用連結部の後方で、前後方向に回転自在に保持部に連結する第4の連結部とを含む保持部と、
背中装着部によって保持され、上体の動作を補助する上半身補助部と、
を含むことを特徴とするパワーアシストロボット装置。
【請求項9】
前記保持部は、前記背中装着部の上方から両肩上方を跨ぐように前方向に延伸するガイド部を含み、
前記上半身補助部は、先端にフック部を有するワイヤと、前記ワイヤをガイド部に沿って巻上げおよび巻下げ、前記背中装着部の背面側に設けられる駆動部とを含むことを特徴とする請求項8に記載のパワーアシストロボット装置。
【請求項10】
両肩部近傍にそれぞれ配置されて前記背中装着部によって保持され、装着者の各上腕部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する2つの腕用駆動部と、
両肘部近傍にそれぞれ配置されて前記背中装着部によって保持され、装着者の各前腕部の動きに追従する方向に、その動きを補助する回転トルクを発生する2つの肘用駆動部とをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のパワーアシストロボット装置。
【請求項11】
前記2つの腕用駆動部に設けられ、上腕部の肩関節まわりの回転角度を検出する第3の角度検出部と、
前記2つの肘用駆動部に設けられ、前腕部の肘関節まわりの回転角度を検出する第4の角度検出部と、
前記2つの腰用連結部に設けられ、大腿部の股関節まわりの回転角度を検出する第5の角度検出部と、
前記2つの膝用連結部に設けられ、下腿部の膝関節まわりの回転角度を検出する第6の角度検出部と、
前記2つの踝用連結部に設けられ、足の足関節まわりの回転角度を検出する第7の角度検出部と、
装着者が装着する靴の靴底部における爪先部分および踵部分にそれぞれ設けられ、爪先部および踵部に作用する重量を検出する重量検出部と、
前記背中装着部に設けられ、上半身の傾きを検出する3次元加速度センサと、
第3〜7の角度検出部によって検出される回転角度、重量検出部によって検出される重量、および3次元加速度センサによって検出される上半身の傾きに基づいて、両上腕部、両前腕部、両大腿部、両下腿部、および両足に作用する静的トルク、回転方向およびに回転に要する回転トルクを算出し、さらに、算出した静的トルク、回転方向および回転トルクに基づいて、前記2つの腕用駆動部、前記2つの肘用駆動部、前記2つの大腿用駆動部および前記2つの下腿部用駆動部を駆動する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクで、前記2つの腕用駆動部、前記2つの肘用駆動部、前記2つの大腿用駆動部および前記2つの下腿部用駆動部を駆動する駆動制御部と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載のパワーアシストロボット装置。
【請求項12】
前記2つの大腿用駆動部および前記下腿部用駆動部は、空気圧シリンダであり、
前記駆動部は、人工ゴム筋肉であることを特徴とする請求項9に記載のパワーアシストロボット装置。
【請求項13】
前記2つの大腿用駆動部および前記下腿部用駆動部は、空気圧シリンダであり、
前記2つの腕用駆動部および前記2つの肘用駆動部は、空気圧ロータリアクチュエータであることを特徴とする請求項10または11に記載のパワーアシストロボット装置。
【請求項14】
装着者の個体差を表すパラメータを入力するパラメータ入力部をさらに含み、
前記駆動制御部は、パラメータ入力部によって入力されたパラメータに基づいて、前記駆動トルクを算出することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載のパワーアシストロボット装置。
【請求項15】
請求項4に記載のパワーアシストロボット装置で実行される制御方法であって、
第1の角度検出部によって検出される両上腕部の回転角度、第2の角度検出部によって検出される両大腿部の回転角度、床反力検出部によって検出される検出結果、および3次元加速度センサによって検出される上半身の傾きに基づいて、両上腕部および両大腿部に作用する静的トルク、回転方向およびに回転に要する回転トルクを算出する算出ステップと、
さらに、算出した静的トルク、回転方向および回転トルクに基づいて、前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を駆動する駆動トルクを算出し、算出した駆動トルクを、装着者が前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を逆方向に駆動することができる減速比以下の減速比に減速して、前記2つの腕用駆動部および前記2つの大腿用駆動部を駆動する駆動ステップとを含むことを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−52192(P2013−52192A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194319(P2011−194319)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、農林水産省、農業用アシストスーツの開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504145283)国立大学法人 和歌山大学 (62)
【Fターム(参考)】