説明

パワー回路実装ユニット

【課題】 高放熱性を確保した上で基板サイズを小型化し、製造工程を簡略化するとともに搭載回路の動作信頼性を高める。
【解決手段】 ケース16に一体成型されたコネクタ11のリードフレーム23にベアチップのままパワー回路部品13を搭載する構成であるため、パワー回路部品13に特別な放熱用ヒートシンク等は不要であり、このためパワー回路部品13が基板12上で大面積を占有することはなく、基板12自体の小型化が可能であり、またコネクタ11がケース16に一体成型されるため、従来のように基板上の貫通スルーホールにコネクタのリード端子を通し、半田槽に流すことにより半田付けする必要はなく、コネクタ11の取り付けが非常に簡単であり、またコネクタ11にもリード間ピッチがさほど要求されないため、基板12上にデッドスペースが生ずることはない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野]本発明は、高放熱性を確保した上で基板サイズを小型化し、製造工程が簡単で高信頼性を有するパワー回路実装ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】パワーFET等のパワー回路部品を搭載した電子機器は、パワー回路部品が発する大量の熱を如何に放熱するかが非常に重要な課題であり、放熱特性に優れた大型パッケージのパワー回路部品を採用したり、放熱特性を改善するため放熱用ヒートシンクをパワー回路部品に組み付けるなどの対策を講ずることが多い。図4は、従来のパワー回路実装ユニットの一例を示す平面図であり、図5は、図4に示したパワー回路実装ユニットの一部切截正面図、図6は、図4に示したパワー回路実装ユニットの側面図である。
【0003】図4ないし図6に図示したパワー回路実装ユニット10は、リード端子1aが櫛歯状に延びるリードタイプのコネクタ1を基板2に組み付けたものであり、基板2上には、コネクタ1の外にパワー回路部品3や放熱用のヒートシンク4、さらには小電流用の電子部品5等が配設される。基板2はケース6内に収容され、基板固定用の螺子7により四隅をケース6の底面に固定される。すなわち、上記パワー回路実装ユニット10を組み立てる場合、まず、ガラスエポキシ基板等からなる部品実装用の基板2上に大電流用の幅広の導電パターン8を配線し、一方また放熱性に優れた大型パッケージからなるFET等のパワー回路部品3に、放熱用のヒートシンク4を取り付ける。次に、予めリフロー工程により電子部品5を半田付けしておいた基板2に、外部接続用のコネクタ1を搭載し、これを半田槽に流して半田付けする。こうして電子部品5とコネクタ1を実装した基板2を、基板固定用の螺子7により四隅をケース6の底面に固定し、最後にケース6の開口部に蓋(図示せず)をして基板2を密閉する。こうして完成したパワー回路実装ユニット10は、コネクタ1の外面に二列に配列されたピンコンタクト9を介して外部の電子回路部品等に接続される。すなわち、コネクタ1に外部ハーネスのメス側コネクタを挿入することで、パワー回路実装ユニット10と外部の電子回路部品とが電気的に接続される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来のパワー回路実装ユニット10は、以下に列挙するような課題を抱えるものであった。まず、使用するパワー回路部品3として放熱特性を考慮した大型パッケージのものを採用するだけでなく、より放熱特性を高めるため、基板2に搭載する前に放熱用のヒートシンク4を取り付けて基板2に実装しており、このため基板2の大型化が避けられず、当然のことながらパワー回路部品3に放熱用ヒートシンク4を取り付ける前工程が必要になるなど、製造工程が複雑化するといった課題があった。また、基板2を貫通するスルーホールにコネクタ1のリード端子1aを通し、半田槽に流すことにより半田付けしていたため、ある程度のリード間ピッチが不可欠であり、しかもスルーホールは2列配置であるため、基板2上にデッドスペースが生じてしまい、基板2自体も大型化せざるを得ない等の課題があった。さらにまた、基板2上に大電流用の幅広の導電パターン8を配線するため、基板2のサイズはさらに大型化してしまい、またこうした大電流通電用の導電パターン8からの熱的なストレスが基板2に加わりやすく、回路動作の信頼性を損ないやすい等の課題があった。
【0005】本発明は、上記課題を解決したものであり、高放熱性を確保した上で基板サイズを小型化し、製造工程を簡略化するとともに高信頼性を有するパワー回路実装ユニットを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段]上記目的を達成するため、本発明は、コネクタが一体成型されたケースと、該ケース内に組み付けた基板と、該基板を前記コネクタに接続するコネクタ接続線と、前記基板に搭載した電子部品と、前記コネクタのリードフレームにベアチップのまま実装したパワー回路部品と、該パワー回路部品を前記基板と前記リードフレームにそれぞれ接続するパワー回路部品接続線とを具備することを特徴とするものである。
【0007】また、本発明は、前記コネクタが、パワー回路実装用のリードフレームとコネクタ接続用端子をモールド材にてインサートモールドし、前記ケースに一体成型してなること、前記リードフレームが、電流容量が大きく放熱性に優れる金属導体からなること、前記基板が、予め電子部品がリフロー半田付けにより実装されており、接着樹脂材により前記ケース内に接着固定した後、前記パワー回路部品と前記コネクタとに接続すること、前記コネクタ接続線と前記パワー回路部品接続線が、ともに同一工程において接続されるボンディングワイヤであること等を特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。図1は、本発明のパワー回路実装ユニットの一実施形態を示す平面図、図2は、図1に示したパワー回路実装ユニットの一部切截正面図、図3は、図1に示したパワー回路実装ユニットの側面図である。
【0009】図1ないし図3に示すパワー回路実装ユニット20は、コネクタ11が一体成型されたケース16と、ケース16内に組み付けたガラスエポキシ基板等の基板12と、基板12をコネクタ11に接続するコネクタ接続線21と、基板12に搭載した電子部品15と、コネクタ11のリードフレーム23にベアチップのまま実装したパワー回路部品13と、パワー回路部品13を基板12とリードフレーム23にそれぞれ接続するパワー回路部品接続線22等から構成される。コネクタ11は、パワー回路実装用のリードフレーム23とコネクタ接続用端子24をモールド用樹脂材でインサートモールドし、ケース16に一体成型したものである。なお、リードフレーム23は、電流容量が大きく放熱性に優れる金属導体等からなり、ヒートシンクに頼らず十分な放熱効果を挙げるため、パワー回路部品13はベアチップのままAgペースト等の熱伝導性に優れる接着樹脂材によりリードフレーム23上に接着固定される。
【0010】パワー回路実装ユニット20の組み立てにさいしては、まず、パワーFET等のパワー回路部品13をベアチップのままリードフレーム23上に搭載する。次に、予め小電流用の電子部品15がリフロー半田付けにより実装済みの基板12を、シリコンゴム材等からなる接着樹脂材によりケース16内の所定位置に接着固定する。さらに、基板12とコネクタ11をアルミニウム製ボンディングワイヤからなるコネクタ接続線21で電気的に接続し、かつまた基板12とパワー回路部品13との間及びパワー回路部品13とリードフレーム23をそれぞれアルミニウム製ボンディングワイヤからなるパワー回路部品接続線22で電気的に接続する。最後に、ケース16の上面開口部を蓋(図示せず)で覆い、パワー回路実装ユニット20からなる電子機器の組み立てを終える。かくして電子機器として完成したパワー回路実装ユニット20は、コネクタ11のピンコンタクト19に外部ハーネスのメス側コネクタを挿入することで、外部の電子回路部品等に接続される。
【0011】このように、上記パワー回路実装ユニット20は、ケース16に一体成型されたコネクタ11のリードフレーム23にベアチップのままパワー回路部品13を搭載する構成であるため、リードフレーム23がパワー回路部品13のための放熱手段として機能し、従ってパワー回路部品13に特別な放熱用ヒートシンク等は不要であり、このためパワー回路部品13が基板12上で大面積を占有することはなく、基板12自体の小型化が可能であり、またコネクタ11がケース16に一体成型されるため、従来のように基板2を貫通するスルーホールにコネクタ1のリード端子1aを通し、半田槽に流すことにより半田付けする必要はなく、コネクタ11の取り付けが非常に簡単であり、またコネクタ11にもリード間ピッチがさほど要求されないため、基板12上にデッドスペースが生ずることはない。また、基板12とコネクタ11との接続ならびに基板12とパワー回路部品13及びリードフレーム23との接続が、例えばアルミワイヤ等によるワイヤボンディングにより行えるため、このワイヤボンディングを同一工程において実施し、基板12の小型化及び工程単純化が可能である。さらにまた、パワー回路部品13を放熱性に優れたリードフレーム23に実装するため、その他の電子回路部品を実装する部分の基板12を小型化することができ、従来のパワー回路実装ユニット10のように、基板2上に大電流通電用の幅広の導電パターン8を配線する必要がなく、大電流通電用の導電パターン8が基板2に熱的なストレスを及ぼすこともないため、搭載回路の動作信頼性を確実に保証することができる。
【0012】また、コネクタ11は、パワー回路実装用のリードフレーム23とコネクタ接続用端子24をモールド材にてインサートモールドしたから、パワー回路実装用のリードフレーム23とコネクタ接続用端子24とをコネクタに内挿した状態でケース16に一体化することができ、これにより基板2を貫通するスルーホールにコネクタ1のリード端子1aを通し、半田槽に流すことにより半田付けするといった面倒な工程は不要であり、コネクタ11とケース16の一体化とパワー回路実装用リードフレーム23とコネクタ接続用端子24の固定とを同時に図り、製造工程の削減が可能である。
【0013】また、リードフレーム23は、電流容量が大きく放熱性に優れる金属導体からなるため、基板12に熱的なストレスを与えたり周囲の回路を動作不安定にすることなく、金属導体からなるリードフレーム23を介してパワー回路部品13に大電流を流すことができ、幅広の導電パターン8を必要とした従来装置と異なり、基板12自体を小型化することができる。
【0014】さらに、基板12は、予め電子部品15がリフロー半田付けにより実装されており、接着樹脂材によりケース16内に接着固定した後、パワー回路部品13とコネクタ11とに接続するため、電子部品15をリフロー半田付けにより実装した基板12とリードフレーム23にベアチップのままパワー回路部品13を実装したケース16とを用意し、ケース16内に接着樹脂材により基板12を接着固定する第1工程と、ワイヤボンディング等によりパワー回路部品13とコネクタ11をそれぞれ基板12に接続する第2工程を踏むことで、パワー回路実装ユニット20を簡単かつ効率よく製造することができる。
【0015】さらにまた、コネクタ接続線21とパワー回路部品接続線22は、ともに同一工程において接続されるボンディングワイヤであるため、基板12とコネクタ11との接続ならびに基板12とパワー回路部品13との接続が、同じ一回のボンディング工程におけるワイヤボンディングにより可能であり、製造工程の短縮が可能である
【0016】
【発明の効果]以上説明した通り、本発明のパワー回路実装ユニットは、コネクタが一体成型されたケースと、該ケース内に組み付けた基板と、該基板を前記コネクタに接続するコネクタ接続線と、前記基板に搭載した電子部品と、前記コネクタのリードフレームにベアチップのまま実装したパワー回路部品と、該パワー回路部品を前記基板と前記リードフレームにそれぞれ接続するパワー回路部品接続線とを具備する構成であるから、ケースに一体成型されたコネクタのリードフレームにベアチップのままパワー回路部品を搭載したことで、リードフレームがパワー回路部品のための放熱手段として機能し、従ってパワー回路部品に特別な放熱用ヒートシンクは不要であり、このためパワー回路部品が基板上で大面積を占有することはなく、基板自体の小型化が可能であり、またコネクタがケースに一体成型されるため、従来のように基板を貫通するスルーホールにコネクタのリード端子を通し、半田槽に流すことにより半田付けする必要はなく、コネクタの取り付けが非常に簡単であり、またコネクタにもリード間ピッチがさほど要求されないため、基板上にデッドスペースが生ずることはなく、さらにまた、基板とコネクタとの接続ならびに基板とパワー回路部品との接続が、例えばアルミワイヤ等によるワイヤボンディングにより行えるため、このワイヤボンディングを同一工程において実施し、基板の小型化及び工程単純化が可能であり、さらにまたパワー回路部品を放熱性に優れたリードフレームに実装するため、その他の電子回路部品を実装する部分の基板を小型化することができ、従来のパワー回路実装ユニットのように、基板上に大電流通電用の幅広の導電パターンを配線する必要がなく、大電流通電用の導電パターンが基板に熱的なストレスを及ぼすこともないため、搭載回路の動作信頼性を確実に保証することができる等の優れた効果を奏する。
【0017】また、コネクタは、パワー回路実装用のリードフレームとコネクタ接続用端子をモールド材にてインサートモールドしたから、パワー回路実装用のリードフレームとコネクタ接続用端子とをコネクタに内挿した状態でケースに一体化することができ、これにより基板を貫通するスルーホールにコネクタのリード端子を通し、半田槽に流すことにより半田付けするといった面倒な工程は不要であり、コネクタとケースの一体化とパワー回路実装用リードフレームとコネクタ接続用端子の固定とを同時に図り、製造工程の削減が可能である等の効果を奏する。
【0018】また、リードフレームは、電流容量が大きく放熱性に優れる金属導体からなるため、基板に熱的なストレスを与えたり周囲の回路を動作不安定にすることなく、金属導体からなるリードフレームを介してパワー回路部品に大電流を流すことができ、幅広の導電パターンを必要とした従来装置と異なり、基板自体を小型化することができる等の効果を奏する。
【0019】さらに、基板は、予め電子部品がリフロー半田付けにより実装されており、接着樹脂材により前記ケース内に接着固定した後、前記パワー回路部品と前記コネクタとに接続するため、電子部品をリフロー半田付けにより実装した基板とリードフレームにベアチップのままパワー回路部品を実装したケースとを用意し、ケース内に接着樹脂材により基板を接着固定する第1工程と、ワイヤボンディング等によりパワー回路部品と前記コネクタをそれぞれ基板に接続する第2工程を踏むことで、パワー回路実装ユニットを簡単かつ効率よく製造することができる等の効果を奏する。
【0020】さらにまた、コネクタ接続線とパワー回路部品接続線は、ともに同一工程において接続されるボンディングワイヤであるため、基板とコネクタとの接続ならびに基板とパワー回路部品との接続が、同じ一回のボンディング工程におけるワイヤボンディングにより可能であり、製造工程の短縮が可能である等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパワー回路実装ユニットの一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示したパワー回路実装ユニットの一部切截正面図である。
【図3】図1に示したパワー回路実装ユニットの側面図である。
【図4】従来のパワー回路実装ユニットの一例を示す平面図である。
【図5】図4に示したパワー回路実装ユニットの一部切截正面図である。
【図6】図4に示したパワー回路実装ユニットの側面図である。
【符号の説明】
11 コネクタ
12 基板
13 パワー回路部品
15 電子部品
16 ケース
19 ピンコンタクト
20 パワー回路実装ユニット
21 コネクタ接続線
22 パワー回路部品接続線
23 リードフレーム
24 コネクタ接続用端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 コネクタが一体成型されたケースと、該ケース内に組み付けた基板と、該基板を前記コネクタに接続するコネクタ接続線と、前記基板に搭載した電子部品と、前記コネクタのリードフレームにベアチップのまま実装したパワー回路部品と、該パワー回路部品を前記基板と前記リードフレームにそれぞれ接続するパワー回路部品接続線とを具備することを特徴とするパワー回路実装ユニット。
【請求項2】 前記コネクタは、パワー回路実装用のリードフレームとコネクタ接続用端子をモールド材にてインサートモールドし、前記ケースに一体成型してなることを特徴とする請求項1記載のパワー回路実装ユニット。
【請求項3】 前記リードフレームは、電流容量が大きく放熱性に優れる金属導体からなることを特徴とする請求項1記載のパワー回路実装ユニット。
【請求項4】 前記基板は、予め電子部品がリフロー半田付けにより実装されており、接着樹脂材により前記ケース内に接着固定した後、前記パワー回路部品と前記コネクタとに接続することを特徴とする請求項1記載のパワー回路実装ユニット。
【請求項5】 前記コネクタ接続線と前記パワー回路部品接続線は、ともに同一工程において接続されるボンディングワイヤであることを特徴とする請求項1記載のパワー回路実装ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平10−303537
【公開日】平成10年(1998)11月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−108992
【出願日】平成9年(1997)4月25日
【出願人】(000001937)日本電気ホームエレクトロニクス株式会社 (8)