説明

パンツ型吸収性物品

【課題】装着状態の吸収性本体の形態安定性が向上し、排泄物の漏れを効果的に防止することができるパンツ型吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明のおむつ1は、腹側部A、背側部B及び股下部Cを有し、外装体2と吸収体31を含む吸収性本体3とを具備するパンツ型おむつである。吸収体31は、中央吸収体311と、一対のサイド吸収体312と、中央吸収体311及びサイド吸収体312の間に切離部313を有している。外装体2及び吸収性本体3は、股下部Cにおいて、一対の縦固定接合部51にて固定されている。一対の縦固定接合部51は、切離部313に対応する位置に配されており、断面視して、中央吸収体311の側縁部311d及びサイド吸収体312の横方向内方側縁部312dと重なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等のパンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパンツ型吸収性物品として、外装体の内側に吸収体を含む吸収性本体を固定し、外装体の腹側部及び背側部に位置する両側縁部を接合して、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部を形成したパンツ型吸収性物品が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、吸収体コアを有する吸収体とバックシートとの固定に関し、横方向に延びる複数個の貼付領域と非貼付領域とが設けられて形成されたパンツ型使い捨ておむつが記載されている。
また、特許文献2には、吸収材を有する吸収性本体と外装シートとの固定に関し、吸収性本体の前後端部は、外装シートに横方向で全面接合することにより取付けられており、この前後端部の間の中間部分は、吸収性本体の最両側縁部から内入りした位置において横方向に部分接合することにより取付けられて形成されたパンツ型使い捨ておむつが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−298395号公報
【特許文献2】特許第4025101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載のパンツ型使い捨ておむつともに、備える吸収体の形状が、一般的ないわゆる砂時計型の形状であり、吸収体に吸収性コアの配されていない切離部を有する形態ではない。
【0006】
したがって、本発明の課題は、切離部を有する吸収体を備えたパンツ型着用物品において、装着状態の吸収性本体の形態安定性を向上させ、漏れを防止できるパンツ型吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外装体と、該外装体の内側に固定された、吸収体を含む吸収性本体とを具備し、該外装体は、装着時に装着者の腹側に配される腹側部、背側に配される背側部、前記腹側部及び前記背側部の間に配される股下部を有し、前記腹側部及び前記背側部に位置するそれぞれの両側縁部が接合されて、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されたパンツ型吸収性物品であって、前記吸収体は、中央吸収体と、該中央吸収体の両側縁部に沿って対称的に配された一対のサイド吸収体と、該中央吸収体と一対のサイド吸収体それぞれとの間に配された切離部とを有しており、前記外装体及び前記吸収性本体は、少なくとも前記股下部において、該吸収性本体の両側部に沿って延びる一対の縦固定接合部にて固定されており、一対の前記縦固定接合部は、それぞれ、前記切離部に対応する位置に配されており、断面視して、前記中央吸収体の側縁部及び前記サイド吸収体の横方向内方側縁部と重なっているパンツ型吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパンツ型吸収性物品によれば、装着状態の吸収性本体の形態安定性が向上し、排泄物の漏れを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつの斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すパンツ型使い捨ておむつを伸長させて拡げた状態を表面シート側から見た一部破断平面図である。
【図3】図3は、図2に示すパンツ型使い捨ておむつの具備する吸収性本体の吸収体と外装体とを固定する接合部の配置関係を説明する要部拡大平面図である。
【図4】図4(a)は、図2のX1−X1線断面図であり、図4(b)は、図1に示すパンツ型使い捨ておむつの装着状態における図2のX1−X1線断面図である。
【図5】図5(a)は、本発明の他の実施形態のパンツ型使い捨ておむつの備える吸収体の平面図であり、図5(b)は、本発明の更に他の実施形態のパンツ型使い捨ておむつの備える吸収体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のパンツ型吸収性物品を、その好ましい実施形態に基づき、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0011】
本実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1(以下、「おむつ1」ともいう。)は、図1,図2に示すように、外装体2と、外装体2の内側に固定された、吸収体31を含む吸収性本体3とを具備している。おむつ1の外装体2は、図1,図2に示すように、装着時に装着者の腹側に配される腹側部A、装着時に装着者の背側に配される背側部B、腹側部A及び背側部Bの間に配される股下部Cを有している。おむつ1は、図1に示すように、ウエスト開口部WO及び一対のレッグ開口部LO,LOを有するパンツ型使い捨ておむつであるとなる。以下、おむつ1について、詳述する。
【0012】
おむつ1は、図1〜図4に示すように、中心線CLに対して左右対称に形成されている。従って以下の説明では、左右対称な部分については、主に、右側について説明する。
また、本明細書において、「肌当接面」とは、吸収性本体3などの各部材の表裏両面のうち、装着時に装着者の肌側に配される面であり、「非肌当接面」とは、吸収性本体などの各部材の表裏両面のうち、装着時に装着者の肌側とは反対側に向けられる面である。
おむつ1は、図1〜図4に示すように、腹側部Aから股下部Cを介して背側部Bに亘る方向の縦方向(以下「Y方向」ともいう。Y方向:中心線CLに平行な方向をいう。)と、縦方向(Y方向)に直交する横方向(以下「X方向」ともいう。)とを備えている。
【0013】
おむつ1の備える外装体2は、図1に示すように、おむつ1の外観を構成しており、図2に示すように、伸長状態において、おむつ1の縦方向(Y方向)に、腹側部A、股下部C、背側部Bを有している。腹側部A、背側部B及び股下部Cは、図2に示す展開状態のおむつ1において、その縦方向(Y方向)の全長を略3等分に区分したときの各領域である。
【0014】
外装体2は、図2に示すように、縦方向(Y方向)中央部の両側部において内方に括れている。本実施形態のおむつ1においては、外装体2の腹側部A側の両側縁部2d,2dの内面と外装体2の背側部B側の両側縁部2e,2eの内面同士を互いに重ね合わせ、合掌状に固定することにより、図1に示すように、一対のサイドシール部5,5が形成されるとともに、ウエスト開口部WO及び一対のレッグ開口部LO,LOが形成される。
【0015】
おむつ1は、図2に示すように、外装体2における腹側部A及び背側部Bそれぞれに、横方向(X方向)に伸長した複数本の弾性部材4を有している。詳述すると、本実施形態のおむつ1の有する弾性部材4は、複数本のウエスト弾性部材41、複数本の胴回り弾性部材42及び複数本のレッグ弾性部材43からなる。外装体2は、本実施形態においては、図2に示すように、非肌当接面側にパンツ型使い捨ておむつ1の最外表面となる外層シート21と、外層シート21の内面側(肌当接面側)に配され、ホットメルト等の接着剤やヒートシール等の融着により固定される内層シート22とから形成されている。本実施形態の外層シート21は、内層シート22の縦方向(Y方向)の両外方縁よりそれぞれ延出しており、延出した部分が吸収性本体3側に折り返され、折り返された外層シート21が、吸収性本体3の縦方向(Y方向)の両外方端部上を被覆している。外装体2を構成する外層シート21及び内層シート22の間に、図1,図2に示すように、弾性部材4であるウエスト弾性部材41、胴回り弾性部材42及びレッグ弾性部材43が配されていることにより、おむつ1の外装体2には、ウエスト弾性領域(ウエストギャザー)、胴回り弾性領域(胴回りギャザー)及び環状の一対のレッグ弾性領域(レッグギャザー)が形成される。
【0016】
ウエスト弾性領域(ウエストギャザー)は、図1,図2に示すように、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおいて、横方向(X方向)に伸長した状態で、複数本のウエスト弾性部材41を、ウエスト開口部WOの開口縁から股下部Cに向かって60mmまでの領域、好ましくは2〜40mmの領域に間欠的に配し、外装体2の外層シート21及び/又は内層シート22に固定することにより形成されている。胴回り弾性領域(胴回りギャザー)も同様に、図1,図2に示すように、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおいて、横方向(X方向)に伸長した状態で、複数本の胴回り弾性部材42を、ウエスト弾性部材41より股下部C寄り(内方側)に間欠的に配し、外装体2の外層シート21又は内層シート22に固定することにより形成されている。レッグ弾性領域(レッグギャザー)は、図1,図2に示すように、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおいて、外装体2の括れに沿って伸長した状態で、複数本のレッグ弾性部材43を、互いに間隔を空けて配し、外装体2の外層シート21又は内層シート22に固定することにより形成されている。
【0017】
本実施形態では、おむつ1の有する胴回り弾性部材42は、外装体2と吸収性本体3とが重なる領域においては伸縮性を発現する状態で配されていない。ここで、「伸縮性を発現する状態で配されていない」とは、弾性部材42が前記重なる領域に配されていない形態を意味するのみならず、前記重なる領域に配されていたとしても、複数本の弾性部材42が個々細かく分断されていたり過剰の熱を付与されていたりして、もはや伸縮性を失ってしまった状態で配されている場合も含む意味である。具体的には、本実施形態のおむつ1においては、複数本の胴回り弾性部材42の内、外装体2と吸収性本体3とが重なる領域に位置する腹側部A側の胴回り弾性部材42は、吸収性本体3の両側縁それぞれと一対のサイドシール部5それぞれとの間においては横方向(X方向)に伸長した状態で配されているが、該重なる領域においては、各胴回り弾性部材42が細かく分断され伸縮性を失ってしまった状態で配されている。背側部B側の胴回り弾性部材42についても、腹側部A側の胴回り弾性部材42と同様に、外装体2と吸収性本体3とが重なる領域においては、各胴回り弾性部材42が細かく分断され伸縮性を失ってしまった状態で配されている。
【0018】
外装体2の内側に固定された吸収性本体3は、図2に示すように、実質的に縦長の長方形状であり、液透過性の表面シート32、液不透過性(撥水性も含む)の裏面シート33、両シート32,33間に介在する吸収体31を備えている。また、吸収性本体3は、図2に示すように、吸収性本体3の縦方向(Y方向)の両側部3d,3dに、液抵抗性又は撥水性で且つ通気性の素材から構成された側方カフス34,34を備えている。各側方カフス34の自由端部近傍には、図2に示すように、立体ギャザー形成用弾性部材35が縦方向(Y方向)に伸長した状態で配されている。側方カフス34は、おむつの装着時に自由端部側が起立し、所謂立体ギャザーとなり横方向(X方向)への体液の流出が阻止される。
【0019】
吸収性本体3の備える吸収体31は、図2,図3に示すように、中央吸収部としての中央吸収体311と、中央吸収体311の両側縁部311d,311dに沿って対称的に配された一対のサイド吸収部としてのサイド吸収体312,312と、中央吸収体311と一対のサイド吸収体312,312それぞれとの間に配された切離部313とを有している。本実施形態のおむつ1においては、中央吸収体311は腹側部Aから背側部Bに亘って配されており、サイド吸収体31は股下部Cに配されており、中央吸収体311と一対のサイド吸収体312,312それぞれとは、切離部313を介在させてそれぞれが分離している。尚、切離部313には、全く吸収体が存在しないことが好ましいが、若干(10g/m2程度)存在する場合も本願発明の効果を同様に奏するため含む。
【0020】
中央吸収体311は、本実施形態のおむつ1においては、縦方向(Y方向)の腹側部A側の端部311aに、股下部Cに向かって凸状に切り欠かれた腹側切欠部314を有し、更に背側部B側の端部311bに、股下部Cに向かって凸状に切り欠かれた背側切欠部315を有している。
吸収体31は、図2,図3に示すように、腹側切欠部314及び背側切欠部315を有する中央吸収体311と、一対のサイド吸収体312,312と、一対の切離部313,313と、ティッシュペーパーや透水性の不織布からなる透水性の被覆シート(図示せず)とを有し、中央吸収体311及び一対のサイド吸収体312,312の全体が、透水性の被覆シート(図示せず)で被覆されて形成されている。
【0021】
中央吸収体311は、図2に示すように、吸収性本体3の縦方向(Y方向)両外方縁それぞれから間隔L(図2参照)を空けて、吸収性本体3の縦方向(Y方向)に、腹側部Aから背側部Bに亘って配されている。各間隔Lは、製造中の中央吸収体311の吸収性本体3の縦方向(Y方向)への蛇行による吸収性本体3のカット不良防止の観点から、10mm以上あることが好ましい。一方で、製造中の吸収性本体3の搬送時の吸収性本体間隔Lに相当する領域の捲れを防止するために110mm以下の間隔が好ましい。吸収性本体3を安定した形状で得る観点から、間隔Lは10〜80mmであることが好ましい。
【0022】
中央吸収体311の背側切欠部315は、本実施形態においては、図3に示すように、中央吸収体311の背側部B側の端部311bの横方向(X方向)中央部を、股下部Cに向かって三角形状に切り欠いて形成されている。従って、中央吸収体311は、本実施形態においては、図2,図3に示すように、背側部B側において、Y字状に形成されている。切り欠かれた部分の面積は、装着中の観美性と吸収性能の両立の観点から、1500〜2800mm2、特に1900〜2400mm2であることが好ましい。尚、背側切欠部315の形状は、三角形状が好ましいが、このような面積を有するように切り欠かれていれば半円形状、半楕円形状、四角形状、多角形状等であってもよい。本実施形態においては、中央吸収体311の腹側切欠部314についても同様である。尚、防漏性の観点から、腹側部分の吸収材は多いほうが良く、特に男性の座位姿勢の場合は、前モレ頻度が高いため、腹側切欠部314の面積の方が背側切欠部315の面積より小さいことが好ましい。
【0023】
各サイド吸収体312は、少なくとも股下部Cに配されていればよく、その縦方向(Y方向)の長さは、中央吸収体311の縦方向(Y方向)の長さの20%〜95%好ましくは60%〜80%であることが好ましい。尚、各サイド吸収体312及び中央吸収体311の縦方向(Y方向)の長さは、縦方向(Y方向)に最も長い位置での長さである。
【0024】
各サイド吸収体312と中央吸収体311とを分離する切離部313の幅は、5〜40mmであることが好ましく、10〜30mmであることが防漏性の観点から更に好ましい。尚、切離部313の幅(各サイド吸収体312と中央吸収体311との間隔)は、最も狭い位置での長さである。
【0025】
吸収性本体3は、中央吸収体311及び一対のサイド吸収体312,312を被覆シート(図示せず)で被覆して形成される吸収体31を挟持するように、表面シート32と裏面シート33とがホットメルト等の接着手段等により固定されて形成されており、一対のサイド吸収体312,312と中央吸収体311との間の切離部313、腹側切欠部314及び背側切欠部315においては、被覆シート(図示せず)を介して表面シート32及び裏面シート33が固定されて形成されている。
【0026】
外装体2及び吸収性本体3は、図2,図3に示すように、少なくとも股下部Cにおいて、吸収性本体3の両側部3d,3dに沿って延びる一対の縦固定接合部51,51にて固定されていればよいが、本実施形態のおむつ1においては、後述する背側部B側の横固定接合部52と腹側部A側の横固定接合部52との間に亘って延在する一対の縦固定接合部51,51にて固定されている。縦固定接合部51も後述する横固定接合部52も、ホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール、高周波シール等の融着手段により形成される。
一対の縦固定接合部51,51は、それぞれ、図2に示すように、少なくとも股下部Cにおいて、切離部313に対応する位置に配されており、図4(a)に示すように、断面視して、中央吸収体311の側縁部311d及びサイド吸収体312の横方向内方側縁部312dと横方向に関して重なっている。言い換えれば、縦固定接合部51は、本実施形態においては、縦方向(Y方向)においては、吸収性本体3の全長に亘って配されており、横方向(X方向)においては、切離部313の幅よりも幅広であり、中央吸収体311の側縁部311dからサイド吸収体312の横方向内方側縁部312dに亘って配されている。
【0027】
また、外装体2及び吸収性本体3は、本実施形態のおむつ1においては、図2,図3に示すように、一対の縦固定接合部51,51のみならず、吸収性本体3の縦方向(Y方向)の背側部B側の端部3b及び腹側部A側の端部3aそれぞれにおいて、横方向(X方向)に延びる横固定接合部52にて固定されている。
背側部B側の横固定接合部52及び腹側部A側の横固定接合部52は、横方向(X方向)においては、図2,図3に示すように、吸収性本体3の両側縁間に亘って配されている。また、背側部B側の横固定接合部52及び腹側部A側の横固定接合部52は、縦方向(Y方向)においては、吸収性本体3の縦方向(Y方向)の端縁から60mmの範囲に配されていることが好ましく、特に45mmの範囲に配されていることが好ましい。具体的には、吸収性本体3の縦方向(Y方向)の端縁と中央吸収体311の腹側切欠部314の頂点又は背側切欠部315の頂点との間に亘って配されていることが好ましく、図2,図3に示すように、吸収性本体3の縦方向(Y方向)の端縁と中央吸収体311の縦方向(Y方向)端縁との間に亘って配されていることが更に好ましい。
【0028】
背側部B側の横固定接合部52は、本実施形態のおむつ1においては、図3に示すように、背側部B側の背側切欠部315に対応する切欠対応位置52fの接合強度が相対的に低く、切欠対応位置52fの両サイド部52g,52gの接合強度が相対的に高くなっている。このように、両サイド部52g、52gの接合強度が切欠対応位置52fの接合強度に対して相対的に高いことによって、吸収体31の長手方向端部位置がずれ難く、サイド吸収体312の起立位置が定まり易くなる。しかも切欠対応位置52fの接合強度がその両側に位置する両サイド部52g、52gに対して相対的に低いので、切欠対応位置52fが低剛性となり、おむつ1の装着時に柔らかい風合いとなる。腹側部A側の横固定接合部52についても、背側部B側の横固定接合部52と同様である。また、切り欠き対応位置52fの両サイド部52g、52gの接合強度が高いことで、切り欠き対応位置52fにテンションをかけることができ、吸収体31の皺の形成を抑制することが可能となる。これによって、皺による排泄物漏れの経路形成を抑制できるとともに、高齢者に多い褥瘡の予防が可能となる。
【0029】
背側部B側の横固定接合部52は、本実施形態のおむつ1においては、その両端部52h,52hの接合強度が相対的に低くなっている。即ち、おむつ1の背側部B側の横固定接合部52は、横方向(X方向)中央の切欠対応位置52fの接合強度が相対的に低く、切欠対応位置52fの両サイド部52g,52gの接合強度が相対的に高く、各サイド部52gの横方向(X方向)外方の端部52hの接合強度が相対的に低くなっており、横方向(X方向)に接合強度の高い部分と接合強度の低い部分とが交互に配置されている。このように、横固定接合部52の両サイド部52g、52g各々が両端部52h、切欠対応位置52f、両端部52hというように接合強度が相対的に低い領域で挟まれるので、相対的に弱い接合部が外力の緩衝領域として働くことにより、接合が良好に維持され易くなる。これによって、高剛性領域の配置面積を最小限に抑えることができ、低剛性領域を広く配することが可能となるので、風合いの面で好ましい。また、このような構成であると、外装体2に胴回り弾性部材42による胴回りギャザーが形成されていても、両端部52h,52hが低剛性となり、おむつ1の装着時に柔らかい風合いとなる。更に、両端部52h、52hの横方向内方に存在する両サイド部52g、52gは高剛性となることから、サイド吸収体312の立ち上がりの起点である切離部313を効果的に働かせるためには、横固定接合部52のサイド部52gにおける端部52h側の接合ライン(境界)とサイド部52gにおける切欠対応位置52f側の接合ライン(境界)が切離部313に対して、作用点として働く。よって、結果的に切離部313が屈曲点として働きやすくなる。
【0030】
本実施形態のおむつ1においては、縦固定接合部51及び横固定接合部52が、ホットメルトの塗布により形成されている。
縦固定接合部51におけるホットメルトの塗布量は、2〜7g/m2であることが好ましい。
横固定接合部52の切欠対応位置52f及び両端部52h,52hにおけるホットメルトの塗布量は、2〜7g/m2であることが好ましい。装着時の風合いの観点から、4〜6g/m2がより好ましい。横固定接合部52の切欠対応位置52fの両サイド部52g,52gにおけるホットメルトの塗布量は、4〜14g/m2であることが好ましい。装着時の風合いの観点から、8〜12g/m2がより好ましい。また、両サイド部52gのホットメルトの塗布量は、切欠対応位置52f、両端部52hのホットメルト塗布量の1.2〜5倍、特に1.5〜3倍の坪量であることがサイド吸収体312の立ち上がり位置の基点である切離部313を効率的に働かせる観点から好ましい。
上述したように、本実施形態のおむつ1においては、縦固定接合部51と横固定接合部52が重なり合うサイド部52gでは、高塗布量となしているが、これは、縦固定接合部51の塗布量と横固定接合部52の塗布量を足し合わせたものである。すなわち、縦固定接合部51と横固定接合部52が互いに重なりあうことで、高接合領域を形成することができる。一方で、別手段としては、ホットメルトの塗布量を部分的に制御し、変更することにより、特に横固定接合部52における高接合強度部分と低接合強度部分とを形成してもよい。また、それに限らず、例えば、ヒートシール、超音波シール、高周波シール等の融着手段と、ホットメルトとの併用により高接合強度部分を形成してもよい。
【0031】
本実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1の形成材料について説明する。
外装体2を構成する外層シート21と内層シート22としては、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、外層シート21及び内層シート22としては、撥水性の不織布等を用いることができる。
【0032】
吸収性本体3を構成する表面シート32、裏面シート33、吸収体31及び側方カフス34を形成するシートとしては、それぞれ、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート32としては、親水性且つ液透過性の不織布等を用いることができ、裏面シート33としては、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルムや樹脂フィルムと不織布の積層体等を用いることができる。側方カフス34を形成するシートとしては、伸縮性のフィルム、不織布、織物またはそれらの積層シート等を用いることができる。吸収体31の有する中央吸収体311及び一対のサイド吸収体312,312としては、吸収性ポリマーの粒子及び繊維材料から構成された吸収コア等を用いることができる。
【0033】
ウエスト弾性領域(ウエストギャザー)を形成するウエスト弾性部材41、胴回り弾性領域(胴回りギャザー)を形成する胴回り弾性部材42、レッグ弾性領域(レッグギャザー)を形成するレッグ弾性部材43、及び側方カフス34に配される立体ギャザー形成用弾性部材35としては、それぞれ、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができ、例えば、天然ゴム、ポリウレタン、ポリスチレン−ポリイソプレン共重合体、ポリスチレン−ポリブタジエン共重合体、アクリル酸エチル−エチレン等のポリエチレン−αオレフィン共重合体等からなる糸状の伸縮性材料を用いることができる。
【0034】
サイドシール部5の接合には、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられる接着剤や、ヒートシール、超音波シール、高周波シール等の融着手段が用いられる。表面シート32、裏面シート33、側方カフス35の固定も同様に、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール、高周波シール等の融着手段が用いられる。
【0035】
上述した本発明の実施形態であるパンツ型使い捨ておむつ1(以下、「おむつ1」ともいう。)を使用した際の作用効果について説明する。
本実施形態のおむつ1は、図4(a)に示すように、吸収体31が、中央吸収体311と、一対のサイド吸収体312,312と、一対の切離部313,313とを有するパンツ型使い捨ておむつであり、外装体2と吸収性本体3とが、吸収性本体3の両側部3d,3dに沿って延びる一対の縦固定接合部51,51にて固定されており、縦固定接合部51は、切離部313に対応する位置に配されており、断面視して、中央吸収体311の側縁部311d及びサイド吸収体312の横方向内方側縁部312dと重なっている。このように形成されたおむつ1を装着すると、図4(b)に示すように、装着状態の吸収性本体3の形態安定性が向上し、排泄物の漏れを効果的に防止することができる。具体的には、おむつ1を装着すると、立体ギャザー形成用弾性部材35の収縮により立体ギャザーが起立するが、その際、切離部313が屈曲の起点となり、一対のサイド吸収体312,312が立ち上がり易く、立ち上がった一対のサイド吸収体312,312及び中央吸収体311により排泄物の漏れを効果的に防止することができる。
【0036】
本実施形態のおむつ1は、図2,図3に示すように、一対の縦固定接合部51,51のみならず、吸収性本体3の縦方向(Y方向)の端部3a,3bにおいて、横固定接合部52にて固定されており、一対の縦固定接合部51,51それぞれは、腹側部A側の横固定接合部52と背側部B側の横固定接合部52との間に亘っている。縦固定接合部51と横固定接合部52との間に亘ることで、縦固定接合部51は実質的に吸収性本体にホットメルトを連続して塗布される。そのように連続して塗布することで、製造時にホットメルトの塗工ムラを防ぐことができ、外層体2との接合に関しては、製造時及び装着時の両方において吸収性本体3の剥がれ、もしくは、脱落を防ぐことができる。特に、装着中においては、中央吸収体311と切離部313との間もしっかり固定されることで、サイド吸収体312の立ち上がりを積極的に助ける。
【0037】
また、サイド吸収体312の立ち上がりの起点である切離部313を効果的に働かせるためには、横固定接合部52のサイド部52gにおける端部52h側の接合ライン(境界)とサイド部52gにおける切欠対応位置52f側の接合ライン(境界)が切離部313に対して、作用点として働く。よって、結果的に切離部313が屈曲点として働きやすくなる。
【0038】
本発明のパンツ型吸収性物品であるパンツ型使い捨ておむつは、上述の実施形態のパンツ型使い捨ておむつに何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
【0039】
例えば、上述の実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1においては、図2に示すように、各サイド吸収体312は、切離部313を介在させることにより中央吸収体311と完全に独立しているが、各サイド吸収体312は、背側部B側の縦方向(Y方向)端部及び腹側部A側の縦方向(Y方向)端部のいずれか一方が中央吸収体311と連設されていてもよく、背側部B側の縦方向(Y方向)端部及び腹側部A側の縦方向(Y方向)端部のいずれもが中央吸収体311と連設されていてもよい。例えば、図5(a)に示す吸収体31における各サイド吸収体312は、背側部B側の縦方向(Y方向)端部が中央吸収体311と連設されており、腹側部A側の縦方向(Y方向)端部が中央吸収体311と連設されておらず、開放されている。また、図5(b)に示す吸収体31における各サイド吸収体312は、背側部B側の縦方向(Y方向)端部が中央吸収体311と連設されており、腹側部A側の縦方向(Y方向)端部も中央吸収体311と連設されており、切離部313が股下部Cにのみ形成されている。
【0040】
また、上述の実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1においては、図2に示すように、外層シート21は、内層シート22の縦方向(Y方向)の両外方縁よりそれぞれ延出しているが、延出していなくてもよい。
また、上述の実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1においては、図2に示すように、外装体2と吸収性本体3とが、吸収性本体3の全長に亘る一対の縦固定接合部51,51にて固定されて形成されているが、股下部Cにのみに亘る一対の縦固定接合部51,51にて固定されて形成されていてもよい。
【0041】
また、上述の実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1においては、図2に示すように、外装体2と吸収性本体3とが、一対の縦固定接合部51,51のみならず、背側部B側の横固定接合部52及び腹側部A側の横固定接合部52においても固定されているが、一対の縦固定接合部51,51のみで固定されて形成されていてもよい。また、背側部B側の横固定接合部52及び腹側部A側の横固定接合部52においても固定する場合、接合強度が相対的に高い部位と接合強度が相対的に低い部位を設けなくてもよい。
【0042】
また、パンツ型吸収性物品は、幼児又は成人用のパンツ型使い捨ておむつの他、パンツ型の生理用ナプキン等であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 パンツ型使い捨ておむつ
2 外装体
2d 腹側部A側の側縁部
2e 背側部B側の側縁部
21 外層シート
22 内層シート
3 吸収性本体
3a 腹側部A側の端部
3b 背側部B側の端部
3d 縦方向(Y方向)の側部
31 吸収体
311 中央吸収体
311a 腹側部A側の端部
311b 背側部B側の端部
311d 側縁部
312 サイド吸収体
312d 側縁部
313 切離部
314 腹側切欠部
315 背側切欠部
32 表面シート
33 裏面シート
34 側方カフス
35 立体ギャザー形成用弾性部材
4 弾性部材
41 ウエスト弾性部材
42 胴回り弾性部材
43 レッグ弾性部材
5 サイドシール部
51 縦固定接合部
52 横固定接合部
52f 切欠対応位置、52g サイド部、52h 端部
A 腹側部,B 背側部,C 股下部
CL おむつの縦方向に延びる中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装体と、該外装体の内側に固定された、吸収体を含む吸収性本体とを具備し、該外装体は、装着時に装着者の腹側に配される腹側部、背側に配される背側部、前記腹側部及び前記背側部の間に配される股下部を有し、前記腹側部及び前記背側部に位置するそれぞれの両側縁部が接合されて、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されたパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収体は、中央吸収体と、該中央吸収体の両側縁部に沿って対称的に配された一対のサイド吸収体と、該中央吸収体と一対のサイド吸収体それぞれとの間に配された切離部とを有しており、
前記外装体及び前記吸収性本体は、少なくとも前記股下部において、該吸収性本体の両側部に沿って延びる一対の縦固定接合部にて固定されており、
一対の前記縦固定接合部は、それぞれ、前記切離部に対応する位置に配されており、断面視して、前記中央吸収体の側縁部及び前記サイド吸収体の横方向内方側縁部と重なっているパンツ型吸収性物品。
【請求項2】
前記外装体及び前記吸収性本体は、該吸収性本体の縦方向の前記背側部側の端部及び前記腹側部側の端部それぞれにおいて、横方向に延びる横固定接合部にて固定されており、
前記中央吸収体は、縦方向の前記背側部側の端部及び前記腹側部側の端部の少なくとも一方に、前記股下部に向かって凸状に切り欠かれた切欠部を有しており、
前記横固定接合部は、前記切欠部に対応する切欠対応位置の接合強度と該切欠対応位置の両サイド部の接合強度を比較した場合、該切欠対応位置の接合強度が相対的に低く、該切欠対応位置の両サイド部の接合強度が相対的に高い請求項1に記載のパンツ型吸収性物品
【請求項3】
前記横固定接合部は、その両端部の接合強度が前記切欠対応位置の両サイド部の接合強度より相対的に低い請求項2に記載のパンツ型吸収性物品
【請求項4】
一対の前記縦固定接合部は、それぞれ、前記背側部側の前記横固定接合部と前記腹側部側の前記横固定接合部との間に亘って延在している請求項2又は3に記載のパンツ型吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−102888(P2013−102888A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247917(P2011−247917)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】