説明

パーメチルポリシランの分析方法および製造方法

【課題】パーメチルポリシランの物性を少量試料で正確に且つ迅速に予測するための分析方法、およびその分析結果に基づいてジメチルジクロロシランの反応条件を調整することを含むパーメチルポリシランの製造方法。
【解決手段】ジメチルジクロロシランを反応させて得られたパーメチルポリシランをフラスコに入れ、フラスコを加熱することによって、パーメチルポリシランを熱分解し、熱分解による留出物をガスクロマトグラフィーで測定し、環状カルボシラン化合物に由来するピークの面積Aと、デカメチルシクロペンタシランに由来するピークの面積Bとの比(A/B)を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーメチルポリシラン(別名:ポリジメチルシラン)の分析方法および製造方法に関する。より詳細に、本発明は、パーメチルポリシランの物性を少量試料で正確に且つ迅速に予測するための分析方法、およびその分析結果に基づいてジメチルジクロロシランの反応条件を調整することを含むパーメチルポリシランの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシラン類は、炭化ケイ素材料の前駆体、光・電子機能材料として種々な応用が検討され、例えば、有機感光体、光導波路、光メモリーなどへの利用が提案されている。
ポリシラン類の合成法として、オルガノクロロシラン類を有機溶媒中でアルカリ金属に接触反応させるウルツカップリング法が知られている(非特許文献1および非特許文献2)。また、このウルツカップリング法を適用したパーメチルポリシランの製造法として、例えば、特許文献1および特許文献2には、キシレン中で金属ナトリウムを溶融・分散させ、そこにジメチルジクロロシランを滴下し、10時間の加熱還流を行う方法が開示されている。
【0003】
しかし、ジメチルジクロロシランを反応させて得られるパーメチルポリシランは、通常の有機溶媒に不溶の結晶であり、分析が困難である。パーメチルポリシランを熱分解することによって環状カルボシラン化合物を含んだものが得られる。また、この熱分解反応においては副生成物としてデカメチルシクロペンタシランなどが得られる。この熱分解生成物をガスクロマトグラフィーで測定すると、環状カルボシラン化合物に由来するピークと、デカメチルシクロペンタシランに由来するピークとがあらわれる。環状カルボシラン化合物に由来するピークの面積Aと、デカメチルシクロペンタシランに由来するピークの面積Bとの比(A/B)は、パーメチルポリシランの製造条件によって大きくばらつくことがある。また、A/Bの分析には、従来、パーメチルポリシラン試料を多量に用い、しかも複雑で大掛かりな装置を必要とし、分析結果を得るまでに長い時間を要した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許1362553号公報
【特許文献2】特開昭54−65799号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Chem.Soc.,Vol.125(1924),p.2291
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.,Vol.71(1949),p.963
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、パーメチルポリシランの物性を少量試料で正確に且つ迅速に予測するための分析方法、およびその分析結果に基づいてジメチルジクロロシランの反応条件を調整することを含むパーメチルポリシランの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の加熱手段を用いることによって、パーメチルポリシランの物性を少量試料で正確に且つ迅速に予測することができることを見出し、また、その予測結果に基づいてジメチルジクロロシランの反応条件を調整することによってパーメチルポリシランの製造ロット毎のA/Bの値のバラツキを小さくできることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいてさらに検討した結果、完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のものである。
〈1〉 ジメチルジクロロシランを反応させて得られたパーメチルポリシランをフラスコに入れ、
フラスコの外径よりも小さい内径を有し且つ一端が塞がれ他端が開口した円筒形で、塞がれた端を下にして縦置され、側面下部に熱風吹き込み口が在り、上端開口の内周縁に半円状の凹みを複数有するブランケットIの上端開口に前記フラスコを嵌め載せ、
フラスコの外径より大きい内径を有し且つ両端が開口した円筒形のブランケットIIをブランケットIの上端に縦置で載せて、前記フラスコを囲み、
前記熱風吹き込む口から熱風を吹き込み、該熱風がブランケットIの内側、ブランケットIの上端開口に嵌め載せられたフラスコと半円状凹みとの間、およびブランケットIIの内側を通り抜けるようにして、フラスコを加熱することによって、前記パーメチルポリシランを熱分解させ、
前記熱分解による留出物を採取して、該留出物をガスクロマトグラフィーで測定し、環状カルボシラン化合物に由来するピークの面積Aと、デカメチルシクロペンタシランに由来するピークの面積Bとの比(A/B)を算出することを含む、パーメチルポリシランの分析方法。
【0009】
〈2〉 前記〈1〉に記載のパーメチルポリシランの分析方法で算出されたA/Bの値と、目的とするA/Bの値との差を求め、
その差が小さくなるように反応条件を変更してジメチルジクロロシランを反応させることを含む、パーメチルポリシランの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の分析方法によってパーメチルポリシランの物性を少量試料で正確に且つ迅速に予測することができる。また、その分析方法で得られた予測結果に基づいてジメチルジクロロシランの反応条件を調整することによってパーメチルポリシランの製造ロット毎のA/Bの値のバラツキを小さくできる。得られたパーメチルポリシランは、炭化ケイ素材料の前駆体、有機感光体、光導波路、光メモリーなどの光・電子機能材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)はブランケットIを示す図。(b)はブランケットIに二口梨型フラスコを載せた状態を示す図。
【図2】ブランケットIIをブランケットIの上に載せフラスコを囲った状態を示す図。
【図3】本発明に係る分析方法に用いられる装置を示す図。
【図4】比較例1における加熱方法を示す図。
【図5】比較例2における加熱方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るパーメチルポリシランの分析方法は、ジメチルジクロロシランを反応させて得られたパーメチルポリシランをフラスコに入れ、 フラスコの外径よりも小さい内径を有し且つ一端が塞がれ他端が開口した円筒形で、塞がれた端を下にして縦置され、側面下部に熱風吹き込み口が在り、上端開口の内周縁に半円状の凹みを複数有するブランケットIの上端開口に前記フラスコを嵌め載せ、 フラスコの外径より大きい内径を有し且つ両端が開口した円筒形のブランケットIIをブランケットIの上端に縦置で載せて、前記フラスコを囲み、 前記熱風吹き込む口から熱風を吹き込み、該熱風がブランケットIの内側、ブランケットIの上端開口に嵌め載せられたフラスコと半円状凹みとの間、およびブランケットIIの内側を通り抜けるようにして、フラスコを加熱することによって、前記パーメチルポリシランを熱分解させ、 前記熱分解による留出物を採取して、該留出物をガスクロマトグラフィーで測定し、環状カルボシラン化合物に由来するピークの面積Aと、デカメチルシクロペンタシランに由来するピークの面積Bとの比(A/B)を算出することを含むものである。
【0013】
本発明の分析方法が適用される、パーメチルポリシランは、ジメチルジクロロシランを反応させることによって得られる。該反応は、通常、アルカリ金属の存在下で有機溶媒中で行われる。
該反応に用いられるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、またはそれらの合金が挙げられる。これらのうち特にナトリウムが好ましい。アルカリ金属の使用量は、ジメチルジクロロシランに対して若干過剰量、具体的には1.0〜1.2当量が好ましく、1.05〜1.1当量が特に好ましい。アルカリ金属の使用量が1.0当量より少ない場合には、反応速度が低下し、反応に必要な時間が増大傾向になる。また、アルカリ金属の使用量が1.2当量よりも多い場合には、反応生成物中に残るアルカリ金属が多くなり、除去工程が長くなる傾向になる。
【0014】
該反応に用いられる有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アニソール、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカリンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらのうち、芳香族炭化水素系溶媒が好ましい。
【0015】
アルカリ金属存在下におけるジメチルジクロロシランの反応は、通常、98℃〜溶媒還流温度で行われる。反応は窒素などの不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
該反応では、まず前記有機溶媒にアルカリ金属を分散させる。そして、これにジメチルジクロロシランを滴下して、反応を行わせることが好ましい。
反応を完結させるために、ジメチルジクロロシランの滴下終了後、前記反応温度で1〜24時間撹拌を継続することが好ましく、1〜12時間撹拌を継続することがより好ましい。
【0016】
上記反応によってジメチルジクロロシランが重縮合して、粗パーメチルポリシランが有機溶媒に分散した液が得られる。この分散液を冷却する。通常40〜80℃に冷却する。冷却後、アルカリ金属を失活させる。アルカリ金属を失活させるために、通常、アルコールが用いられる。例えば、前記粗パーメチルポリシラン分散液にアルコールを添加することによって、または前記粗パーメチルポリシラン分散液をアルコールに添加することによって、アルカリ金属を失活させることができる。このアルコールとアルカリ金属の反応によってアルコキシドが生成し、アルカリ金属が失活する。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、2−メチルプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール等が挙げられ、これらのうちメタノールが好ましい。次いで、失活後の液に水を添加して加水分解することができる。
【0017】
このアルカリ金属の失活および加水分解の工程では、アルカリ金属の失活に用いるアルコールに界面活性剤を溶解させておくことおよび/または加水分解に用いる水に界面活性剤を溶解させておくことが好ましい。この界面活性剤によって、粗パーメチルポリシランの分散性が高まり、後述する水洗浄における水との接触効率が高まる。
【0018】
前記加水分解によって反応生成物が固化しスラリーになる。該スラリーを水で洗浄する。水の添加は、有機溶媒を除去した後に行ってもよいし、有機溶媒を除去している最中に行ってもよいし、または有機溶媒を除去する前に行ってもよい。反応生成物の粘度が低く撹拌動力が低くすむという観点から、有機溶媒を除去している最中または有機溶媒を除去する前に水の添加を行うのが好ましい。なお、有機溶媒の除去法は特に限定されず、例えば、蒸留、蒸発などが挙げられる。水洗浄においては、常温の水を添加して加温するか、温水を添加することが好ましい。洗浄時の水温は好ましくは25℃以上、より好ましくは40〜80℃である。なお、水洗浄に用いた水は、デカンテーション、ろ過などの公知の固液分離操作によって除くことができる。水洗浄の回数は特に制限されず、アルカリ金属塩等の副生成物の除去状況に応じて適宜選択できる。
水洗浄の完了したパーメチルポリシランをろ過等によって液から分離し、乾燥する。分離後のパーメチルポリシランを乾燥する前にアルコールや芳香族炭化水素などの有機溶媒を用いて、添加した界面活性剤を溶出除去することができる。
【0019】
本発明に係る分析方法について、図を参照しながら説明する。図1(a)はブランケットIを示す図である。図1(b)はブランケットIに二口梨型フラスコを載せた状態を示す図である。図2はブランケットIIをブランケットIの上に載せフラスコを囲った状態を示す図である。図3は本発明に係る分析方法に用いられる装置を示す図である。
本発明に係る分析方法では、まず、上記のような反応で得られたパーメチルポリシランをフラスコに入れる。また、熱分解を促進させるために、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属元素若しくは周期律表第12〜15族元素の金属単体または金属化合物などをフラスコに入れることができる。本発明ではフラスコに入れるパーメチルポリシランの量が数グラム程度でも分析が可能であるが、より安定的な分析を行うために、フラスコにガラスビーズを入れることが好ましい。
【0020】
本発明に用いられるフラスコは、その容量によって特に限定されないが、数グラム程度のパーメチルポリシランで正確な分析を行うために、10〜100mlであることが好ましい。フラスコの形状は梨型が好ましい。またフラスコはガラス製であることが好ましい。熱分解生成物を取り出すために、二口フラスコが好ましい。二口フラスコにおいて、一方の口から窒素などの不活性ガスをフラスコに一定流量で供給し、もう一方の口から生成物を含んだガスを排出することができる。排出されたガスは、水または空気によって冷やされ、高沸点物質が留出物として別のフラスコ等に溜めることができる。また、高沸点物質が除かれたガスは流動パラフィン等の入ったガス洗浄瓶に送られ、そこで低沸点物質を捕捉することができる(図3参照)。
【0021】
次に、パーメチルポリシランの入ったフラスコを加熱する。加熱温度は、通常、350〜450℃である。
本発明においては、パーメチルポリシランの加熱を、次のようにして行う。
先ず、フラスコの外径よりも小さい内径を有し且つ一端が塞がれ他端が開口した円筒形で、塞がれた端を下にして縦置され、側面下部に熱風吹き込み口が在り、上端開口の内周縁に半円状の凹みを複数有するブランケットIを用意する(図1(a))。このブランケットIの上端開口に前記フラスコを嵌め載せる(図1(b))。ブランケットIはシリカなどの耐熱性材料製である。
【0022】
次に、フラスコの外径より大きい内径を有し且つ両端が開口した円筒形のブランケットIIを用意する。このブランケットIIをブランケットIの上端に縦置で載せて、前記フラスコを囲む(図2)。
そして、ブランケットIの熱風吹き込む口から熱風を吹き込み、該熱風がブランケットIの内側、ブランケットIの上端開口に嵌め載せられたフラスコと半円状凹みとの間、およびブランケットIIの内側を通り抜けるようにして、フラスコを加熱する。熱風は、ヒートガンや熱風加工機などで吹き込むことができる。本発明おいては熱風加工機が好ましく用いられる。熱風加工機はヒーターが断線しにくく、ノズル先端部分の最高温度が約500℃になる。熱風加工機の具体例としてはシュアー熱風溶接機PJ−215Aなどが挙げられる。
【0023】
この加熱によって、パーメチルポリシランが熱分解される。この加熱方法によれば、数グラム程度のパーメチルポリシランを試料とした場合でも、熱分解反応を安定的に行うことができるので、A/Bの分析値のばらつきが小さくなる。
【0024】
前記熱分解による留出物を採取して、該留出物をガスクロマトグラフィーで測定し、環状カルボシラン化合物に由来するピークの面積Aと、デカメチルシクロペンタシランに由来するピークの面積Bとの比(A/B)を算出する。
A/Bの値は、例えば、次のようにして求めることができる。
GC装置(GC−14A;島津製作所社製)に、ジーエルサイエンス社製の充填剤(Silicone OV-17 2% Chromosorb WAW DMCS 60/80mesh)が充填された島津製作所社製のガラスカラム7G(3.2mmφ×2.1m)を取り付ける。
注入口温度を200℃に設定し;カラム温度の履歴を、100℃で10分間維持、20℃/分で加温、250℃で5分間維持に設定し;検出部温度を220℃に設定し;TCD検出器の電流を125mAに設定する。キャリアガスとして、ヘリウムを100ml/分で流す。そして、試料を0.6μL注入する。この測定で、保持時間約4.8分に環状カルボシラン化合物に由来するピークが表れ、保持時間約4.0分にデカメチルシクロペンタシランに由来するピークが表れる。得られたデータをデータ処理装置(クロマトパック C−R6A 島津製作所社製)で解析し、環状カルボシラン化合物に由来するピークの面積Aと、デカメチルシクロペンタシランに由来するピークの面積Bとの比を求める。
【0025】
本発明に係るパーメチルポリシランの製造方法は、本発明に係るパーメチルポリシランの分析方法で算出されたA/Bの値と、目的とするA/Bの値との差を求め、その差が小さくなるように反応条件を変更してジメチルジクロロシランを反応させることを含む。
反応条件としては、既に上記で述べた、アルカリ金属の使用量、有機溶媒の種類および温度、アルカリ金属分散液へのジメチルジクロロシランの滴下速度、攪拌時間、冷却温度および冷却速度、失活用のアルコールの種類、加水分解時の水の温度などが挙げられる。本発明では、これらの条件を、プロセス制御理論などに基づいて、前記分析方法で算出されたA/Bの値と、目的とするA/Bの値との差が小さくなるように制御する。反応条件の変更は、手動で行ってもよいし、自動で行ってもよい。
【0026】
本発明の製造方法によって得られたパーメチルポリシランは、炭化ケイ素材料の前駆体、有機感光体、光導波路、光メモリーなどの光・電子機能材料として好適である。また、本発明の製造方法よって得られたパーメチルポリシランは、セラミックス原料、導電材料、光関連材料(レジスト材料)にも利用できる。
【0027】
例えば、本発明の製造方法によって得られたパーメチルポリシランを、溶融紡糸、不融化、熱処理(焼成)を経ることによって、または本発明の製造方法によって得られたパーメチルポリシランと熱分解消失性樹脂とをブレンドし、そのブレンド物を溶融紡糸、不融化、熱処理(焼成)を経ることによって、低温から高温まで引張強さや弾性率に変化がなく、耐酸化性に優れており、また金属との反応性も極めて低い、細径の炭化ケイ素繊維を得ることができる。この炭化ケイ素繊維は、樹脂やセラミックスや金属などと複合して耐熱性や機械的強度に優れた複合材料に、ディゼルエンジンの排気ガスフィルターなどに用いられる触媒担体に、利用することができる。
【実施例】
【0028】
次に、実施例を示して本発明をより詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0029】
(A/B値の求め方)
GC装置(GC−14A;島津製作所社製)に、ジーエルサイエンス社製の充填剤(Silicone OV-17 2% Chromosorb WAW DMCS 60/80mesh)が充填された島津製作所社製のガラスカラム7G(3.2mmφ×2.1m)を取り付けた。
注入口温度を200℃に設定し;カラム温度の履歴を、100℃で10分間維持、20℃/分で加温、250℃で5分間維持に設定し;検出部温度を220℃に設定し;TCD検出器の電流を125mAに設定した。キャリアガスとして、ヘリウムを100ml/分で流した。そして、試料を0.6μL注入した。この測定で、保持時間約4.8分に環状カルボシラン化合物に由来するピークが表れ、保持時間約4.0分にデカメチルシクロペンタシランに由来するピークが表れた。得られたデータをデータ処理装置(クロマトパック C−R6A 島津製作所社製)で解析し、環状カルボシラン化合物に由来するピークの面積Aと、デカメチルシクロペンタシランに由来するピークの面積Bとの比を求めた。
【0030】
実施例1
図3に示した装置を用いて分析を行った。50ml梨型フラスコ(4)に3gのパーメチルポリシランを入れた。該パーメチルポリシランのA/B値は0.9である。該フラスコをシリカ製ブランケットIの上に嵌め載せ、シリカ製ブランケットIIで囲った。熱風加工機(6)〔シュアー熱風溶接機PJ−215A〕で、ブランケットIの側面に穿った穴(3)から熱風を吹き込んだ。熱風加工機のノズル先端部分の最高温度は約500℃であった。熱風は、ブランケットIの内側、ブランケットIの上端開口に嵌め載せられたフラスコと半円状凹み(2)との間、およびブランケットIIの内側を通り抜けた。約15分間で熱分解は完了した。
上記方法で熱分解を10回行い、各回で得られた留出物の分析を行った。その結果、各回のA/Bの分析値は、0.94、0.92、0.88、0.87、0.87、0.85、0.90、0.95、0.93、および0.93であった。A/Bの変動係数は3.8%であった。実施例1の分析値は、真値0.9をほぼ再現しており、正確な分析ができていることがわかる。また、各回のばらつきも小さい。
【0031】
比較例1
ブランケットIおよびIIからなるチェンバーを、図4に示すシリカ製チェンバー(11)に替えた以外は実施例1と同じ方法で分析を行った。図4に示すチェンバーの側胴部分にヒートガン(16)〔シュアー熱風機プラジェットPJ−214A〕の熱風吹き出しノズルが入る程度の穴を空け、その部分にヒートガンの熱風吹き出しノズルを差し込み加熱した。ヒートガンの熱風の最高温度は約600℃であった。梨型フラスコ(4)のほぼ中央部分がヒートガン先端の中央位となる高さであった。
上記方法で熱分解を9回行い、各回で得られた留出物の分析を行った。その結果、各回のA/Bの分析値は、0.76、0.75、0.69、0.69、0.74、0.53、0.63、0.56、および0.75であった。比較例1の分析値は、真値0.9よりも低く、ばらつきも大きいことがわかる。
【0032】
比較例2
図5に示すようにチェンバー(11)の底にシリカウール(12)を詰めて梨型フラスコ(4)の底の部分がヒートガン先端の中央位となるように高さを調節し、梨型フラスコの上部は保温しないようにした以外は比較例1と同じ方法で分析を行った。
上記方法で熱分解を7回行い、各回で得られた留出物の分析を行った。その結果、各回のA/Bの分析値は、0.98、1.09、1.05、1.14、0.86、1.09、および1.07であった。比較例2の分析値は真値0.9よりも高くなっていることがわかる。
【符号の説明】
【0033】
1:シリカ製ブランケットI
2:半円状凹み
3:熱風吹き込み口
4:二口梨型フラスコ
5:シリカ製ブランケットII
6:熱風加工機
7:ガス洗浄瓶
8:留出物容器
9:フローメーター
16:ヒートガン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルジクロロシランを反応させて得られたパーメチルポリシランをフラスコに入れ、
フラスコの外径よりも小さい内径を有し且つ一端が塞がれ他端が開口した円筒形で、塞がれた端を下にして縦置され、側面下部に熱風吹き込み口が在り、上端開口の内周縁に半円状の凹みを複数有するブランケットIの上端開口に前記フラスコを嵌め載せ、
フラスコの外径より大きい内径を有し且つ両端が開口した円筒形のブランケットIIをブランケットIの上端に縦置で載せて、前記フラスコを囲み、
前記熱風吹き込む口から熱風を吹き込み、該熱風がブランケットIの内側、ブランケットIの上端開口に嵌め載せられたフラスコと半円状凹みとの間、およびブランケットIIの内側を通り抜けるようにして、フラスコを加熱することによって、前記パーメチルポリシランを熱分解させ、
前記熱分解による留出物を採取して、該留出物をガスクロマトグラフィーで測定し、環状カルボシラン化合物に由来するピークの面積Aと、デカメチルシクロペンタシランに由来するピークの面積Bとの比(A/B)を算出することを含む、パーメチルポリシランの分析方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパーメチルポリシランの分析方法で算出されたA/Bの値と、目的とするA/Bの値との差を求め、
その差が小さくなるように反応条件を変更してジメチルジクロロシランを反応させることを含む、パーメチルポリシランの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−127967(P2011−127967A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285358(P2009−285358)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)