説明

ヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する抽出物及び乳化物、並びにこれらの製造方法

【課題】飲食品、化粧品等に使用可能な溶媒のみを用いるため、飲食品、化粧品等の用途に好適であり、安全性に優れ日常的に摂取することができ、かつ、生産性に優れ高収率及び高純度で安価に製造可能なヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する抽出物及び乳化物、並びにこれらの製造方法の提供。
【解決手段】本発明のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造方法は、植物材料を80体積%〜100体積%のエタノール水溶液で抽出して抽出液を得る抽出工程と、前記抽出液を25体積%〜35体積%のエタノール濃度となるまで希釈して濾過し、析出したヒドロキシ脂肪酸誘導体を残渣として得る析出濾過工程と、前記残渣を70体積%〜100体積%のエタノール水溶液に再溶解して再溶解液を得る再溶解工程と、前記再溶解液を合成吸着剤に吸着させた後、90体積%〜100体積%のエタノール水溶液で溶出して精製する精製工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物材料を原料とするヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する抽出物及び乳化物の製造方法に関する。また、飲食品、化粧品等に使用可能な溶媒のみを用いた、飲食品、化粧品等に好適なヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する抽出物及び乳化物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、例えば、大麦由来原料から2−プロパノール、ヘキサンなどの非ハロゲン系の溶媒を用いて8質量%のヒドロキシ脂肪酸誘導体を含む油を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ビール粕からメタノール、クロロホルム、n−ヘキサンなどの極性有機溶媒を用いて11質量%のヒドロキシ脂肪酸誘導体関連物質を含む粉末を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、クロロホルムは食品用には使用できず、また、天然物から有効成分を取り出すための抽出溶媒として、アセトン、2−プロパノール、ヘキサン、メタノールなどの使用が認められているものの、これらの溶媒は、得られる抽出物における残存量が規定されるという制約があり、取り扱いが煩雑となり、安全性が不十分であるという問題がある。
【0003】
一方、食品用、化粧品用に使用可能なエタノールのみを用いたヒドロキシ脂肪酸誘導体の抽出方法としては、チャノキの生葉又は加工した茶葉を水抽出し、その残渣からエタノール抽出によりヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する組成物を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、得られた組成物中のヒドロキシ脂肪酸誘導体の含有量は、0.06質量%程度であり、十分な収率及び純度が得られていないという問題がある。
【0004】
したがって、飲食品、化粧品等に使用可能な溶媒のみを用いて、飲食品、化粧品等の用途に好適であり、安全性に優れ日常的に摂取することができ、かつ、生産性に優れ高収率及び高純度で安価に製造することができるヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する抽出物及び乳化物、並びにこれらの製造方法に対する需要者の要望は極めて強く、未だ十分満足し得るものが提供されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−096961号公報
【特許文献2】特開平11−193238号公報
【特許文献3】特開2008−208284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、飲食品、化粧品等に使用可能な溶媒のみを用いるため、飲食品、化粧品等の用途に好適であり、安全性に優れ日常的に摂取することができ、かつ、生産性に優れ高収率及び高純度で安価に製造することができるヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する抽出物及び乳化物、並びにこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 植物材料からヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する抽出物を製造する方法であって、前記植物材料を、80体積%〜100体積%のエタノール水溶液で抽出して抽出液を得る抽出工程と、前記抽出液を、25体積%〜35体積%のエタノール濃度となるまで希釈して濾過し、析出したヒドロキシ脂肪酸誘導体を残渣として得る析出濾過工程と、前記残渣を、70体積%〜100体積%のエタノール水溶液に再溶解して再溶解液を得る再溶解工程と、前記再溶解液を、合成吸着剤に吸着させた後、90体積%〜100体積%のエタノール水溶液で溶出して精製する精製工程とを含むことを特徴とするヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造方法である。
<2> 植物材料が、パイナップル可食部である前記<1>に記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造方法である。
<3> 植物材料が、パイナップル可食部の圧搾後の残渣である前記<1>に記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造方法である。
<4> 抽出工程におけるエタノール水溶液が、85体積%〜100体積%のエタノール水溶液である前記<1>から<3>のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造方法である。
<5> 精製工程が、再溶解液を、合成吸着剤に通液した後、90体積%〜100体積%のエタノール水溶液で溶出してカラム精製する工程である前記<1>から<4>のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造方法である。
<6> 合成吸着剤が、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤である前記<1>から<5>のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造方法である。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造方法により製造されることを特徴とするヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物である。
<8> 前記<7>に記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物からヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する乳化物を製造する方法であって、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンを70体積%〜95体積%のエタノール水溶液に加熱溶解して加熱溶解液を得る加熱溶解工程と、前記加熱溶解液を濃縮して濃縮物を得る濃縮工程と、前記濃縮物を乳化する乳化工程とを含むことを特徴とするヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造方法である。
<9> ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンの質量比(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物:界面活性剤:グリセリン)が、1:1:10〜1:20:40である前記<8>に記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造方法である。
<10> 界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル及びリゾホスファチジルグリセロールの少なくともいずれかである前記<8>から<9>のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造方法である。
<11> 界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル及びリゾホスファチジルグリセロールの少なくともいずれかと、ショ糖脂肪酸エステルとの組合せである前記<8>から<9>のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造方法である。
<12> 前記<8>から<11>のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造方法により製造されることを特徴とするヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、飲食品、化粧品等に使用可能な溶媒のみを用いるため、飲食品、化粧品等の用途に好適であり、安全性に優れ日常的に摂取することができ、かつ、生産性に優れ高収率及び高純度で安価に製造することができるヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する抽出物及び乳化物、並びにこれらの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物及びその製造方法)
本発明のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造方法は、植物材料からヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する抽出物を製造する方法であって、抽出工程と、析出濾過工程と、再溶解工程と、精製工程とを含み、更に必要に応じて、濾過工程、濃縮工程等のその他の工程を含む。本発明のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物は、本発明のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造方法により得られる。
【0010】
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体>
前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体としては、ヒドロキシ基を有する脂肪酸誘導体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(1)〜(2)で表される化合物の混合物が好ましく、下記構造式(1)〜(5)で表される化合物の混合物がより好ましい。
【化1】

ただし、前記一般式(1)中、mは、繰返し単位数であり、10〜20の整数を表す。
【化2】

ただし、前記一般式(2)中、nは、繰返し単位数であり、20〜30の整数を表す。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0011】
前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体の分析方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析法(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization−Time of Flight Mass Spectrometry;MALDI−TOFMS)により分析する方法などが挙げられる。
【0012】
<植物材料>
前記植物材料としては、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する植物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パイナップル、コメ、コンニャクイモ、トウモロコシ、小麦などが挙げられる。これらの中でも、季節を問わず一年を通して栽培され、原料の保管による劣化の少ない、新鮮な原料を常に入手できる点で、パイナップルが好ましい。
【0013】
前記植物材料であるパイナップルは、熱帯アメリカを原産地とする常緑多年草であり、学名は、Ananas comosusである。前記パイナップルの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、果実部、果芯部(芯部)、果皮部、果汁部、繊維部等のパイナップル可食部;葉部、茎部、花部、根部等のパイナップル不可食部などが挙げられる。これらの中でも、食経験が豊富な点で、パイナップル可食部が好ましく、パイナップル可食部の圧搾後の残渣、即ち、パイナップルの果汁部を採取した後に残留した繊維部(パイナップルパルプ部)がより好ましい。
【0014】
前記植物材料の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、植物を採取後、洗浄して乾燥し、粉砕して圧搾し、調製する方法が好ましい。前記乾燥は、天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機等を使用して行ってもよい。
【0015】
<抽出工程>
前記抽出工程は、前記植物材料を、80体積%〜100体積%のエタノール水溶液で抽出して抽出液を得る工程である。前記抽出工程により、前記植物材料に含まれる脂溶性成分を、前記エタノール水溶液に溶出させ、脂溶性成分を含む抽出液を得ることができる。前記エタノール水溶液は、飲食品、化粧品等に使用可能な溶媒であり、安全性に優れる点で、好ましい。
【0016】
−抽出方法−
前記抽出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、85体積%〜95体積%のエタノール水溶液を満たした処理槽に、前記植物材料を投入し、必要に応じて適宜攪拌しながら、還流抽出器で加熱抽出し、熱時濾過して脂溶性成分を前記エタノール水溶液に溶出させる方法が好ましい。
【0017】
−抽出条件−
前記抽出条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記植物材料に対する前記エタノール水溶液量としては、5倍量〜20倍量(質量比)が好ましく、抽出時間としては、1時間〜3時間が好ましく、抽出温度としては、20℃〜95℃が好ましく、前記エタノール水溶液(抽出溶媒)に用いる水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水などの他、これらに各種処理(例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等)を施した水などが好ましい。
【0018】
−抽出時におけるエタノール水溶液の条件−
前記抽出時におけるエタノール水溶液(抽出溶媒)のエタノール濃度としては、80体積%〜100体積%であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、85体積%〜100体積%が好ましい。前記濃度が、80体積%未満であると、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が効率よく抽出されないことがある。一方、前記好ましい範囲であると、ヒドロキシ脂肪酸誘導体を抽出しやすい点で有利である。
【0019】
<析出濾過工程>
前記析出濾過工程は、前記抽出液を、25体積%〜35体積%のエタノール濃度となるまで希釈して濾過し、析出したヒドロキシ脂肪酸誘導体を残渣として得る工程である。前記析出濾過工程において、前記抽出液を希釈(25体積%〜35体積%のエタノール水溶液となるよう希釈)して濾過することにより、残渣(濾物)中にはヒドロキシ脂肪酸誘導体が析出され、濾液中には糖類等が溶解される。
【0020】
−希釈方法−
前記希釈方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記抽出液に水(希釈溶媒)を加えて希釈する方法などが挙げられる。
【0021】
−希釈条件−
前記希釈条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記水の温度としては、30℃〜60℃が好ましく、前記水(希釈溶媒)としては、前記エタノール水溶液(抽出溶媒)で用いられる水と同様のものが好ましい。
【0022】
−希釈後におけるエタノール水溶液の条件−
前記希釈後におけるエタノール水溶液(希釈液)のエタノール濃度としては、25体積%〜35体積%であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記濃度が、25体積%未満であると、ろ過性が悪くなることがあり、35体積%を超えると、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が溶解することがある。一方、前記好ましい範囲であると、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が析出した状態でろ過性も良好となる点で有利である。前記エタノール水溶液(希釈液)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記エタノール水溶液(希釈液)を均一化できる点で、攪拌することが好ましい。
【0023】
−析出方法−
前記析出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0024】
−析出条件−
前記析出条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記析出時における溶液温度としては、30℃〜60℃が好ましく、前記析出時間としては、30分間以上が好ましい。
【0025】
−濾過方法−
前記濾過方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、自然濾過、減圧濾過、加圧濾過、遠心分離濾過等による濾過方法などが挙げられる。
【0026】
−濾過条件−
前記濾過条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記濾過に用いる濾材としては、セルロース、ガラス繊維フィルター、メンブレンフィルター、珪藻土などが好ましく、前記濾過で得られた残渣としては、糖質類が除去でき、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が溶解しない点で、35体積%以下のエタノール水溶液で洗浄することが好ましい。
【0027】
<再溶解工程>
前記再溶解工程は、前記残渣を、70体積%〜100体積%のエタノール水溶液に再溶解して再溶解液を得る工程である。前記再溶解工程により、前記残渣に含有される不純物を除去する。
【0028】
−再溶解方法−
前記再溶解方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記残渣を前記エタノール水溶液(再溶解するための溶媒)に懸濁し、攪拌しながら再溶解する方法などが挙げられる。
【0029】
−再溶解条件−
前記再溶解条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記エタノール水溶液量としては、前記残渣に対して5倍量〜20倍量(質量比)が好ましく、再溶解時間としては、1時間〜3時間が好ましく、再溶解温度としては、20℃〜95℃が好ましい。前記再溶解により得られた再溶解液としては、濾過して得られた濾液及び洗浄液の濾液を併せたものを再溶解液としてもよい。前記再溶解液を濾過する方法としては、前記希釈液を濾過する方法と同様の方法を用いることができる。
【0030】
−再溶解時におけるエタノール水溶液の条件−
前記再溶解時におけるエタノール水溶液(再溶解するための溶媒)のエタノール濃度としては、70体積%〜100体積%であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、75体積%〜100体積%が好ましい。前記濃度が、70体積%未満であると、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が溶解しないことがある。一方、前記好ましい範囲であると、ヒドロキシ脂肪酸誘導体の溶解性が良い点で有利である。前記エタノール水溶液(再溶解するための溶媒)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1mol/L〜1.0mol/Lのアルカリ(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)を含むことが好ましい。
【0031】
<精製工程>
前記精製工程は、前記再溶解工程において得られた再溶解液を、合成吸着剤に吸着させた後、90体積%〜100体積%のエタノール水溶液で溶出して精製する工程である。前記精製工程により、ヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する抽出物を精製することができる。
【0032】
−精製方法−
前記精製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記再溶解液をバッチ法により合成吸着剤に通液した後、90体積%〜100体積%のエタノール水溶液で溶出して精製する方法、前記再溶解液をカラム法により合成吸着剤に通液した後、90体積%〜100体積%のエタノール水溶液で溶出して精製する方法などが挙げられる。これらの中でも、カラム法を用いた精製が好ましい。
【0033】
−精製条件−
前記精製条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記合成吸着剤量としては、前記再溶解液に対して1/10倍量〜1/2倍量(体積比)が好ましく、カラム法における前記再溶解液の流速としては、合成吸着剤量の1倍量/時間〜3倍量/時間が好ましく、前記再溶解液の温度としては、5℃〜40℃が好ましい。前記再溶解液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記合成吸着剤に吸着していない成分を除去するために、通液後かつ溶出前に、前記合成吸着剤量の2倍量〜10倍量(体積比)の75体積%〜85体積%のエタノール水溶液で洗浄することが好ましい。前記合成吸着剤としては、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤、メタクリル系合成吸着剤などが挙げられる。これらの中でも、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤が好ましい。前記スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、ダイヤイオンHP20、ダイヤイオンSP825(いずれも三菱化学株式会社製)などが挙げられる。
【0034】
−精製時におけるエタノール水溶液の条件−
前記精製時におけるエタノール水溶液(溶出剤)のエタノール濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ヒドロキシ脂肪酸誘導体を溶出しやすい点で、前記合成吸着剤の5倍量〜10倍量(体積比)の90体積%〜100体積%が好ましい。
【0035】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、濾過工程、濃縮工程などが挙げられる。
【0036】
<<濾過工程>>
前記濾過工程は、前記抽出工程において得られた前記脂溶性成分を含む抽出液を、析出濾過工程において前記抽出液を希釈する前に、濾過する工程である。前記濾過工程により、抽出後の植物材料や不溶成分などを取り除くことができる。前記濾過する方法としては、例えば、布などで濾し取る濾過、自然濾過、減圧濾過、加圧濾過、遠心分離濾過等による方法などが挙げられる。
【0037】
<<濃縮工程>>
前記濃縮工程は、前記抽出工程において得られた抽出液、前記再溶解工程において得られた再溶解液、前記精製工程において得られた精製液等の溶液を濃縮する工程である。前記濃縮工程により、目的とするヒドロキシ脂肪酸誘導体の濃度を高めることができると共に、ハンドリングする溶液量や廃液量を減らすことができる。前記濃縮する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の濃縮方法を選択することができ、例えば、大気下で蒸留する常圧濃縮、エバポレーター等を用いた減圧濃縮などが挙げられる。
【0038】
(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物及びその製造方法)
本発明のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造方法は、上述の製造方法により製造された本発明のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物からヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する乳化物を製造する方法であって、加熱溶解工程と、濃縮工程と、乳化工程とを含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。本発明のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物は、本発明のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造方法により得られる。
【0039】
<加熱溶解工程>
前記加熱溶解工程は、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンを70体積%〜95体積%のエタノール水溶液に加熱溶解する工程である。前記加熱溶解工程により、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、前記界面活性剤、及び前記グリセリンをエタノール水溶液に加熱溶解した加熱溶解液を得ることができる。
【0040】
−加熱溶解方法−
前記加熱溶解方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、前記界面活性剤、及び前記グリセリンを70体積%〜95体積%のエタノール水溶液に添加して加熱し、完全に溶解するまで攪拌することにより加熱溶解する方法などが挙げられる。
【0041】
−−加熱溶解液−−
前記加熱溶解液は、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、前記界面活性剤、及び前記グリセリンを70体積%〜95体積%ののエタノール水溶液に加熱溶解して得られた溶液であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0042】
前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上述の製造方法により製造された本発明のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物などが挙げられる。
【0043】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、リゾホスファチジルグリセロール、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、pHの低い溶液にも溶解できる乳化物を製造することができる点で、グリセリン脂肪酸エステル及びリゾホスファチジルグリセロールの少なくともいずれかの界面活性剤;グリセリン脂肪酸エステル及びリゾホスファチジルグリセロールの少なくともいずれかと、ショ糖脂肪酸エステルとの組合せである界面活性剤が好ましい。
前記界面活性剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、サンソフトQ−14S(太陽化学株式会社製)、SYグリスターMM−750(阪本薬品工業株式会社製)等のグリセリン脂肪酸エステル;リゾリン脂質ナガセL(ナガセケムテックス(株)製)等のリゾホスファチジルグリセロール;DK−エステルSS、DK−エステルF−140(いずれも第一工業製薬(株)製)等のショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0044】
前記グリセリンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、食品添加物グリセリン(阪本薬品工業株式会社社製)などが挙げられる。
【0045】
前記加熱溶解液における、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、前記界面活性剤、及び前記グリセリンの質量比(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物:界面活性剤:グリセリン)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1:1:10〜1:20:40が好ましく、1:6:20〜1:15:30がより好ましい。
【0046】
−加熱溶解条件−
前記加熱溶解条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加熱温度としては、50℃〜90℃が好ましく、加熱乃至攪拌時間としては、30分間〜120分間が好ましく、攪拌方法としては、ボルテックスミキサ、ボールミル等を用いて攪拌する方法などが挙げられる。
【0047】
−加熱溶解時におけるエタノール水溶液の条件−
前記加熱溶解時におけるエタノール水溶液のエタノール濃度としては、70体積%〜95体積%であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、85体積%〜95体積%が好ましい。前記濃度が、70体積%未満であると、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が溶解しにくいことがある。一方、前記好ましい範囲であると、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が溶解したままとなる点で有利である。前記エタノール水溶液(希釈液)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記エタノール水溶液(希釈液)を均一化できる点で、攪拌することが好ましい。前記濃度のエタノールを用いることにより、ホモジナイザー等の高速攪拌を用いなくとも、加熱溶解液を得ることができる。
【0048】
<濃縮工程>
前記濃縮工程は、前記加熱溶解液を濃縮して濃縮物を得る工程である。
前記濃縮方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、減圧加熱濃縮、常圧加熱濃縮等の方法により濃縮する方法などが挙げられる、
前記濃縮条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濃縮温度としては、40℃〜70℃が好ましい。
【0049】
<乳化工程>
前記乳化工程は、得られた濃縮物を乳化する工程である。
前記乳化方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、撹拌乳化機、ホモジナイザー、超音波乳化機、ウルトラミキサー、コロイドミルなどを用いて微細にすることにより乳化する方法などが挙げられる。なお、本発明の乳化物の製造は、70体積%〜95体積%のエタノールを用いているため、ホモジナイザー等の高速攪拌を用いなくても乳化させることができるが、ホモジナイザー等の高速攪拌を用いることにより、前記加熱溶解液の流動性が良好となる。
前記乳化条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乳化温度としては、20℃〜60℃が好ましく、乳化時間としては、30分間〜240分間が好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び配合例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0051】
(実施例1)
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造>
−抽出工程−
パイナップル可食部の圧搾後の残渣(パイナップルパルプ)100gを90体積%エタノール水溶液1,000mLに加え、還流抽出器で80℃にて2時間加熱抽出し、室温に冷却した。その後、吸引濾過を行い、90体積%エタノール水溶液200mLで洗浄した。得られた濾過液を常圧濃縮して約100gとしたものを、次いで、減圧濃縮して約10gの濃縮液を得た。この濃縮処理を更に2回繰り返し、約30gの濃縮液を得た。
【0052】
−析出濾過工程−
得られた約30gの濃縮液のエタノール濃度が30体積%となるように水を加えて150mLに調整(希釈)し、室温で攪拌溶解した溶液を、吸引濾過し、30体積%エタノール水溶液20mLで洗浄した。ここで、30体積%エタノール水溶液に不溶化し、析出したヒドロキシ脂肪酸誘導体が残渣として得られ、溶解したままの糖類などと分離することができた。
【0053】
−再溶解工程−
得られた残渣を、0.4mol/Lの水酸化カリウムを含む80体積%エタノール水溶液50mLと共に調整タンクに移し、50℃±2℃、2時間で溶解させた。得られた溶液を吸引濾過し、80体積%エタノール水溶液50mLで洗浄し、再溶解液として、濾液及び洗浄液を併せたものを得た。
【0054】
−精製工程−
得られた再溶解液を、合成吸着剤(ダイヤイオンHP20、三菱化学株式会社製、樹脂量:20mL)を充填した内径15mm、長さ200mmのカラムに通液し、80体積%エタノール水溶液100mLで洗浄した後、95体積%エタノール水溶液140mLで溶出した。得られた溶出液を減圧濃縮し、固形量約0.6gの濃縮物を得た。
【0055】
−ヒドロキシ脂肪酸誘導体の含有量の測定−
前記濃縮物100mgを100体積%エタノール1mLに溶解したものを被験試料として用い、市販のスフィンゴ糖脂質標準品エタノール水溶液(0.25mg/mL、0.5mg/mL、1、2mg/mL、5mg/mL)とともにシリカゲル薄層クロマトグラフィープレートにアプライし、クロロホルム:メタノール混合溶液(9:1(体積比))で展開した。展開後、硫酸を噴霧し、加熱を行い、スフィンゴ糖脂質標準品と同じRf値となるスポットをスフィンゴ糖脂質のスポットとした。薄層クロマトグラフィーの発色強度を、デンシトメーター(島津製作所製 CS−9300PC)により測定し、得られた標準品の発色強度に基づいて検量線を作成し、試料の発色強度よりスフィンゴ糖脂質量を求めた。測定の結果、前記濃縮物は、20質量%のヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有することがわかった。
【0056】
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体の同定>
下記の手順により、被験試料として前記濃縮物を用い、得られた濃縮物に含まれるヒドロキシ脂肪酸誘導体の成分を同定した。
【0057】
−TLC分析による分子骨格の推定−
下記のTLC分析条件において、下記標準試料と共に被験試料を展開した結果、被験試料が単糖をもった糖脂質であるモノヘキソシルセラミド(CMH)を含むと推定された。
[TLC分析条件]
プレート:HPTLC silica gel 60(Merck社製)
使用直前に120℃、30分間の活性化を行う
展開溶媒:クロロホルム:メタノール:水=65:25:4(体積比)
発色 :オルシノール硫酸試薬
標準試料:モノヘキソシルセラミド(CMH)及びステリルグリコシド
【0058】
−MALDI−TOFMS分析による分子構造の推定−
マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析法(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization−Time of Flight Mass Spectrometry;MALDI−TOFMS)により、以下の手順で、得られた濃縮物に含まれるヒドロキシ脂肪酸誘導体の分子構造を推定した。
【0059】
まず、マトリックス(試料分子イオン化補助剤)としての2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を、10体積%エタノール水溶液で10mg/mLの濃度に調製した溶液をマトリックス溶液として用いた。次いで、被験試料を1mg/mL濃度となるようにクロロホルム:メタノール=1:1(体積比)溶液に溶解して糖脂質溶液を調製し、該糖脂質溶液0.2μLとマトリックス溶液1.0μLとをサンプルプレート上で混合した後、風乾して結晶化させた。このサンプルプレートをMALDI−TOFMS分析装置であるVoyager DE−STR(Applied Biosystems)にセットし、質量分析を行った。
【0060】
その結果、C4483NOの分子式を持つ下記構造式(1)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体を主成分とし、該ヒドロキシ脂肪酸誘導体とは脂肪酸部分及びスフィンゴイド塩基部分が異なる下記構造式(2)〜(5)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体を含む混合物であると推定された。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【0061】
−GC−MS分析による脂肪酸部分の構造同定−
ガス・クロマトグラフを直結した質量分析計(Gas Chromatography−Mass Spectrometer;GC−MS)により、以下の手順で、ヒドロキシ脂肪酸誘導体の脂肪酸部分の構造同定を行った。
【0062】
まず、被験試料中の糖脂質100μg〜200μg当たり2.5体積%無水塩酸メタノール0.3mLを加えて80℃で12時間加水分解した(メタノリシス)。反応液に等量のヘキサンを加え、生成した脂肪酸メチルエステルをヘキサンで抽出した。ヘキサン抽出を3回繰り返し、得られたヘキサン層を一度窒素気流下で乾固した後、残渣にトリメチルシリル(TMS)化試薬(ピリジン:1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDS):トリメチルクロロシラン(TMCS)=1:1.3:0.8(体積比))200μLを加え、60℃で10分間加熱した。反応液を遠心分離し、得られた上清0.2μLをGC−MSにて分析した。GC−MS分析のカラムには、J&W Scientific社のDB−5M(0.25mm×30m)を用い、カラム温度は試料注入後、最初の1分間は60℃に保ち、その後、毎分8℃で300℃まで昇温させ、300℃で9分間保つ条件で行った。
【0063】
GC−MSによる脂肪酸部分解析の結果、主成分のヒドロキシ脂肪酸誘導体を構成する脂肪酸部分が、炭素数20の直鎖α−ヒドロキシ酸であることが同定できた。また、被験試料に由来する脂肪酸部分としては、炭素数がそれぞれ18、19、20、21、22、23、24、25、26の直鎖α−ヒドロキシ酸が同定できた。
【0064】
−GC−MS分析によるスフィンゴイド塩基部分の構造同定−
被験試料中の糖脂質200μg当たり水性塩酸メタノール(濃塩酸8.6mL、水0.4mL、メタノール41.0mLを混合して調製)0.3mLを加えて75℃で16時間加水分解した。反応液に等量のヘキサンを加え、脂肪酸メチルエステルをヘキサンで抽出除去した。酸性メタノール層を窒素気流下で乾固した後、0.1N水酸化ナトリウム溶液0.6mLとメタノール1.0mLを加え、次いでクロロホルム2.0mLを加えて混合し、遠心分離して上層を除去した。下層のクロロホルム層をFolchの上層(クロロホルム:メタノール:水=1:50:49(体積比))で2回洗浄した。得られたクロロホルム層を窒素気流下で乾固した後、残渣にTMS化試薬(ピリジン:HMDS:TMCS=1:1.3:0.8(体積比))100μLを加え、60℃で10分間加熱した。反応液を遠心分離し、得られた上清0.2μLをGC−MSにて分析した。GC−MSの分析は、脂肪酸分析と同じ条件で行った。
【0065】
GC−MSによるヒドロキシ脂肪酸誘導体のスフィンゴイド塩基部分解析の結果、主成分のヒドロキシ脂肪酸誘導体を構成するスフィンゴイド塩基部分が、2−アミノ−4,8−オクタデシジエン−1,3−ジオールであることが同定できた。また、被験試料に由来するスフィンゴイド塩基部分としては、2−アミノ−4,8−オクタデシジエン−1,3−ジオール及び2−アミノ−4−オクタデセン−1,3,4−トリオールが同定できた。
【0066】
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体の同定結果>
以上の分析結果から、上記MALDI−TOFMS分析で推定した通り、前記濃縮物に含まれるヒドロキシ脂肪酸誘導体の主成分は、グルコシル基と、脂肪酸として炭素数20の直鎖α−ヒドロキシ酸と、スフィンゴイド塩基として2−アミノ−4,8−オクタデシジエン−1,3−ジオールからなる、化学式C4483NOの前記構造式(1)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体であることが確認できた。また、前記濃縮物は、前記構造式(1)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体を主成分として、更にその脂肪酸部分の炭素数及びスフィンゴイド塩基が異なる前記構造式(2)〜(5)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体を含む混合物であることが確認できた。
【0067】
(比較例1)
実施例1において、析出濾過工程及び再溶解工程を行わないこと以外は、実施例1と同様にして、ヒドロキシ脂肪酸誘導体を精製した。得られた比較例1の濃縮物におけるヒドロキシ脂肪酸誘導体含有量を測定した結果、前記濃縮物は、8質量%のヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有することがわかった。
【0068】
(比較例2)
実施例1において、精製工程を行わないこと以外は、実施例1と同様にして、ヒドロキシ脂肪酸誘導体を精製した。得られた比較例2の濃縮物におけるヒドロキシ脂肪酸誘導体含有量を測定した結果、前記濃縮物は、1質量%のヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有することがわかった。
【0069】
以上より、実施例1で製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物は、飲食品、化粧品等に使用可能な溶媒のみを用いて製造しているため、安全性に優れ日常的に摂取することができ、かつ、実施例1で製造した濃縮物には、20質量%のヒドロキシ脂肪酸誘導体が含有されていたことから、本発明の製造方法を用いることにより、生産性に優れ高収率及び高純度で安価に製造することができることがわかった。
【0070】
(実施例2)
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造>
実施例1の精製工程までの工程と同様の工程により得られた95体積%エタノール水溶液でのヒドロキシ脂肪酸誘導体溶出液500mLに、グリセリン(食品添加物グリセリン、阪本薬品工業(株)製)64g、界面活性剤(モノミリスチン酸デカグリセリン(グリセリン脂肪酸エステル)、サンソフトQ−14S、太陽化学株式会社製)13g、界面活性剤(リゾホスファチジルグリセロール、リゾリン脂質ナガセL、ナガセケムテックス(株)製)2g、及び界面活性剤(ショ糖モノステアレート、HLB14〜15、DK−エステルSS、第一工業製薬(株)製)2gを投入し80℃で30分間攪拌し、加熱溶解させた。次いで、この加熱溶解液を60℃にて減圧濃縮し、濃縮終了後30℃以下となるよう冷却して、[乳化物1]83gを得た。なお、[乳化物1](ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物)における、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンの質量比(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物:界面活性剤:グリセリン)は、1:6:20〜1:15:30であった。
その結果、[乳化物1]がクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)の両方に溶解することが確認され、酸性溶液にも溶解することができる乳化物を得ることができた。
【0071】
(実施例3)
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造>
実施例1の精製工程までの工程と同様の工程により得られた95体積%エタノール水溶液でのヒドロキシ脂肪酸誘導体溶出液250mLに、グリセリン(食品添加物グリセリン、阪本薬品工業(株)製)32g、及び界面活性剤(モノミリスチン酸デカグリセリン(グリセリン脂肪酸エステル)、サンソフトQ−14S、太陽化学株式会社製)6.4gを添加し、80℃で30分間攪拌し、加熱溶解させた。次いで、この加熱溶解液を60℃にて減圧濃縮し、濃縮終了後30℃以下となるよう冷却して[乳化物2]39.5gを得た。そして、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が200ppmとなるように得られた[乳化物2]をクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)に添加し、溶解性を確認した。なお、[乳化物2](ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物)における、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンの質量比(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物:界面活性剤:グリセリン)は、1:6:20〜1:15:30であった。
その結果、[乳化物2]がクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)の両方に溶解することが確認され、酸性溶液にも溶解することができる乳化物を得ることができた。
【0072】
(実施例4)
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造>
実施例1の精製工程までの工程と同様の工程により得られた95体積%エタノール水溶液でのヒドロキシ脂肪酸誘導体溶出液250mLに、グリセリン(食品添加物グリセリン、阪本薬品工業(株)製)32g、界面活性剤(モノミリスチン酸デカグリセリン(グリセリン脂肪酸エステル)、サンソフトQ−14S、太陽化学株式会社製)6.4g、及び界面活性剤(リゾホスファチジルグリセロール、リゾリン脂質ナガセL、ナガセケムテックス(株)製)1gを添加し、80℃で30分間攪拌し、加熱溶解させた。次いで、この加熱溶解液を60℃にて減圧濃縮し、濃縮終了後30℃以下となるよう冷却して[乳化物3]40.5gを得た。そして、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が200ppmとなるように得られた[乳化物3]をクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)に添加し、溶解性を確認した。なお、[乳化物3](ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物)における、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンの質量比(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物:界面活性剤:グリセリン)は、1:6:20〜1:15:30であった。
その結果、[乳化物3]がクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)の両方に溶解することが確認され、酸性溶液にも溶解することができる乳化物を得ることができた。
【0073】
(実施例5)
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造>
実施例1の精製工程までの工程と同様の工程により得られた95体積%エタノール水溶液でのヒドロキシ脂肪酸誘導体溶出液250mLに、グリセリン(食品添加物グリセリン、阪本薬品工業(株)製)32g、界面活性剤(モノミリスチン酸デカグリセリン(グリセリン脂肪酸エステル)、サンソフトQ−14S、太陽化学株式会社製)6.4g、界面活性剤(リゾホスファチジルグリセロール、リゾリン脂質ナガセL、ナガセケムテックス(株)製)1.1g、及び界面活性剤(ショ糖モノステアレート、HLB14〜15、DK−エステルSS、第一工業製薬(株)製)1.1gを添加し、80℃で30分間攪拌し、加熱溶解させた。次いで、この加熱溶解液を60℃にて減圧濃縮し、濃縮終了後30℃以下となるよう冷却して[乳化物4]41.6gを得た。そして、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が200ppmとなるように得られた[乳化物4]をクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)に添加し、溶解性を確認した。なお、[乳化物4](ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物)における、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンの質量比(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物:界面活性剤:グリセリン)は、1:6:20〜1:15:30であった。
その結果、[乳化物4]がクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)の両方に溶解することが確認され、酸性溶液にも溶解することができる乳化物を得ることができた。
【0074】
(実施例6)
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造>
実施例1の精製工程までの工程と同様の工程により得られた95体積%エタノール水溶液でのヒドロキシ脂肪酸誘導体溶出液250mLに、グリセリン(食品添加物グリセリン、阪本薬品工業(株)製)32g、及び界面活性剤(ショ糖モノステアレート、HLB14〜15、DK−エステルSS、第一工業製薬(株)製)6.4gを添加し、80℃で30分間攪拌し、溶解させた。次いで、この加熱溶解液を60℃にて減圧濃縮し、濃縮終了後30℃以下となるよう冷却して[乳化物5]39.5gを得た。そして、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が200ppmとなるように得られた[乳化物5]をクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)に添加し、溶解性を確認した。なお、[乳化物5](ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物)における、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンの質量比(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物:界面活性剤:グリセリン)は、1:6:20〜1:15:30であった。
その結果、[乳化物5]がクエン酸緩衝液(pH6.0)に溶解することが確認されたが、クエン酸緩衝液(pH3.5)には溶解せず、沈殿が発生することを確認した。
【0075】
(実施例7)
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造>
実施例1の精製工程までの工程と同様の工程により得られた95体積%エタノール水溶液でのヒドロキシ脂肪酸誘導体溶出液250mLに、グリセリン(食品添加物グリセリン、阪本薬品工業(株)製)21g、及び界面活性剤(モノミリスチン酸デカグリセリン(グリセリン脂肪酸エステル)、サンソフトQ−14S、太陽化学株式会社製)6.4gを添加し、80℃で30分間攪拌し、加熱溶解させた。次いで、この加熱溶解液を60℃にて減圧濃縮し、濃縮終了後30℃以下となるよう冷却して[乳化物6]28.8gを得た。そして、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が200ppmとなるように得られた[乳化物6]をクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)に添加し、溶解性を確認した。なお、[乳化物6](ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物)における、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンの質量比(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物:界面活性剤:グリセリン)は、1:6:20〜1:15:30であった。
その結果、[乳化物6]がクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)の両方に溶解することが確認され、酸性溶液にも溶解することができる乳化物を得ることができた。
【0076】
(実施例8)
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造>
実施例1の精製工程までの工程と同様の工程により得られた95体積%エタノール水溶液でのヒドロキシ脂肪酸誘導体溶出液250mLに、グリセリン(食品添加物グリセリン、阪本薬品工業(株)製)32g、及び界面活性剤(モノミリスチン酸デカグリセリン(グリセリン脂肪酸エステル)、サンソフトQ−14S、太陽化学株式会社製)13gを添加し、80℃で30分間攪拌し、加熱溶解させた。次いで、この加熱溶解液を60℃にて減圧濃縮し、濃縮終了後30℃以下となるよう冷却して[乳化物7]46.0gを得た。そして、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が200ppmとなるように得られた[乳化物7]をクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)に添加し、溶解性を確認した。なお、[乳化物7](ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物)における、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンの質量比(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物:界面活性剤:グリセリン)は、1:6:20〜1:15:30であった。
その結果、[乳化物7]がクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)の両方に溶解することが確認され、酸性溶液にも溶解することができる乳化物を得ることができた。
【0077】
(実施例9)
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造>
実施例1の精製工程までの工程と同様の工程により得られた95体積%エタノール水溶液でのヒドロキシ脂肪酸誘導体溶出液250mLに、グリセリン(食品添加物グリセリン、阪本薬品工業(株)製)32g、及び界面活性剤(デカグリセリンモノミリステート、SYグリスターMM−750、阪本薬品工業株式会社製)6.4gを添加し、80℃で30分間攪拌し、加熱溶解させた。次いで、この加熱溶解液を60℃にて減圧濃縮し、濃縮終了後30℃以下となるよう冷却して[乳化物8]39.4gを得た。そして、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が200ppmとなるように得られた[乳化物8]をクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)に添加し、溶解性を確認した。なお、[乳化物8](ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物)における、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンの質量比(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物:界面活性剤:グリセリン)は、1:6:20〜1:15:30であった。
その結果、[乳化物8]がクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)の両方に溶解することが確認され、酸性溶液にも溶解することができる乳化物を得ることができた。
【0078】
(実施例10)
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造>
実施例1の精製工程までの工程と同様の工程により得られた95体積%エタノール水溶液でのヒドロキシ脂肪酸誘導体溶出液250mLに、グリセリン(食品添加物グリセリン、阪本薬品工業(株)製)32g、及び界面活性剤(リゾホスファチジルグリセロール、リゾリン脂質ナガセL、ナガセケムテックス(株)製)6.4gを添加し、80℃で30分間攪拌し、加熱溶解させた。次いで、この加熱溶解液を60℃にて減圧濃縮し、濃縮終了後30℃以下となるよう冷却して[乳化物9]39.5gを得た。そして、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が200ppmとなるように得られた[乳化物9]をクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)に添加し、溶解性を確認した。なお、[乳化物9](ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物)における、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンの質量比(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物:界面活性剤:グリセリン)は、1:6:20〜1:15:30であった。
その結果、[乳化物9]がクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)の両方に溶解することが確認され、酸性溶液にも溶解することができる乳化物を得ることができた。
【0079】
(実施例11)
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造>
実施例1の精製工程までの工程と同様の工程により得られた95体積%エタノール水溶液でのヒドロキシ脂肪酸誘導体溶出液250mLに、グリセリン(食品添加物グリセリン、阪本薬品工業(株)製)32g、及び界面活性剤(ショ糖脂肪酸エステル、DK−エステルF−140、第一工業製薬(株)製)6.4gを添加し、80℃で30分間攪拌し、加熱溶解させた。次いで、この加熱溶解液を60℃にて減圧濃縮し、濃縮終了後30℃以下となるよう冷却して[乳化物10]39.4gを得た。そして、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が200ppmとなるように得られた[乳化物10]をクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)に添加し、溶解性を確認した。なお、[乳化物10](ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物)における、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンの質量比(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物:界面活性剤:グリセリン)は、1:6:20〜1:15:30であった。
その結果、[乳化物10]がクエン酸緩衝液(pH6.0)に溶解することが確認されたが、クエン酸緩衝液(pH3.5)には溶解せず、沈殿が発生することを確認した。
【0080】
(実施例12)
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造>
実施例1の精製工程までの工程と同様の工程により得られた95体積%エタノール水溶液でのヒドロキシ脂肪酸誘導体溶出液250mLに、グリセリン(食品添加物グリセリン、阪本薬品工業(株)製)32g、界面活性剤(モノミリスチン酸デカグリセリン(グリセリン脂肪酸エステル)、サンソフトQ−14S、太陽化学株式会社製)4.3g、界面活性剤(リゾホスファチジルグリセロール、リゾリン脂質ナガセL、ナガセケムテックス(株)製)4.3g、及び界面活性剤(ショ糖モノステアレート、HLB14〜15、DK−エステルSS、第一工業製薬(株)製)2gを添加し、80℃で30分間攪拌し、加熱溶解させた。次いで、この加熱溶解液を60℃にて減圧濃縮し、濃縮終了後30℃以下となるよう冷却して[乳化物11]43.6gを得た。そして、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が200ppmとなるように得られた[乳化物11]をクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)に添加し、溶解性を確認した。なお、[乳化物11](ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物)における、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンの質量比(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物:界面活性剤:グリセリン)は、1:6:20〜1:15:30であった。
その結果、[乳化物11]がクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)の両方に溶解することが確認され、酸性溶液にも溶解することができる乳化物を得ることができた。
【0081】
(実施例13)
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造>
実施例1の精製工程までの工程と同様の工程により得られた95体積%エタノール水溶液でのヒドロキシ脂肪酸誘導体溶出液250mLに、グリセリン(食品添加物グリセリン、阪本薬品工業(株)製)12g、及び界面活性剤(モノミリスチン酸デカグリセリン(グリセリン脂肪酸エステル)、サンソフトQ−14S、太陽化学株式会社製)1.5gを添加し、80℃で30分間攪拌し、加熱溶解させた。次いで、この加熱溶解液を60℃にて減圧濃縮し、濃縮終了後30℃以下となるよう冷却して[乳化物12]14.6gを得た。そして、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が200ppmとなるように得られた[乳化物12]をクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)に添加し、溶解性を確認した。なお、[乳化物12](ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物)における、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンの質量比(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物:界面活性剤:グリセリン)は、1:1:10〜1:20:40であった。
その結果、[乳化物12]がクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)の両方に溶解することが確認され、酸性溶液にも溶解することができる乳化物を得ることができた。
【0082】
(実施例14)
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造>
実施例1の精製工程までの工程と同様の工程により得られた95体積%エタノール水溶液でのヒドロキシ脂肪酸誘導体溶出液250mLに、グリセリン(食品添加物グリセリン、阪本薬品工業(株)製)42g、及び界面活性剤(モノミリスチン酸デカグリセリン(グリセリン脂肪酸エステル)、サンソフトQ−14S、太陽化学株式会社製)21gを添加し、80℃で30分間攪拌し、加熱溶解させた。次いで、この加熱溶解液を60℃にて減圧濃縮し、濃縮終了後30℃以下となるよう冷却して[乳化物13]64.1gを得た。そして、ヒドロキシ脂肪酸誘導体が200ppmとなるように得られた[乳化物13]をクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)に添加し、溶解性を確認した。なお、[乳化物13](ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物)における、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンの質量比(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物:界面活性剤:グリセリン)は、1:1:10〜1:20:40であった。
その結果、[乳化物13]がクエン酸緩衝液(pH6.0)及びクエン酸緩衝液(pH3.5)の両方に溶解することが確認され、酸性溶液にも溶解することができる乳化物を得ることができた。
【0083】
以上より、実施例2〜14で製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物は、飲食品、化粧品等に使用可能な溶媒のみを用いて製造することができるため、安全性に優れ日常的に摂取することができ、かつ、生産性に優れ高収率及び高純度で安価に製造することができることがわかった。また、界面活性剤として、グリセリン脂肪酸エステル及びリゾホスファチジルグリセロールの少なくともいずれかを用いて製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物、又は、界面活性剤として、グリセリン脂肪酸エステル及びリゾホスファチジルグリセロールの少なくともいずれかと、ショ糖脂肪酸エステルとの組合せを用いて製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物は、中性付近の溶液だけでなく、酸性溶液にも溶解することができる乳化物となることがわかった。
【0084】
(配合例1)
<コラーゲン配合飲料>
イオン交換水500gにコラーゲン20g、クエン酸4.2g、適量の香料、及び実施例2で製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物100mgを調合した。これを容器に充填し、65℃で10分間加熱殺菌して、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物を配合するコラーゲン配合飲料を得た。
【0085】
(配合例2)
<コラーゲン配合機能性飲料>
イオン交換水500gにコラーゲン50g、ヒアルロン酸50mg、ビタミンC3g、鉄2g、クエン酸5g、適量の香料、及び実施例2で製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物100mgを調合した。これを容器に充填し、65℃で10分間加熱殺菌して、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物を配合するコラーゲン配合機能性飲料を得た。
【0086】
(配合例3)
<クエン酸配合飲料>
イオン交換水500gにクエン酸2g、適量の香料、及び実施例2で製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物100mgを調合した。これを容器に充填し、65℃で10分間加熱殺菌して、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物を配合するクエン酸配合飲料を得た。
【0087】
(配合例4)
<甘味料配合飲料>
イオン交換水500gにスクラロース10mg、アセスルファムK30mg、適量の香料、及び実施例2で製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物100mgを調合した。これを容器に充填し、80℃で30分間加熱殺菌して、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物を配合する甘味料配合飲料を得た。
【0088】
(配合例5)
<アミノ酸配合飲料>
イオン交換水500gにグリシン4g、プロリン3g、アラニン2g、適量の香料、及び実施例2で製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物100mgを調合した。これを容器に充填し、80℃で30分間加熱殺菌して、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物を配合するアミノ酸配合飲料を得た。
【0089】
(配合例6)
<麦茶飲料>
麦茶原料大麦40gを90℃のイオン交換水800gで30分間抽出し、続いてろ紙(FILTER PAPER No.2,アドバンテック社製)でろ過することにより原料を除去して、麦茶抽出物(飲用濃度:Brix0.6度;pH4.9;720g)を得た。この麦茶抽出液を30℃以下まで冷却、飲用濃度(Brix0.4度)となるようにイオン交換水で希釈し、L−アスコルビン酸ナトリウム、及び実施例2で製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物100mgを添加した。これに炭酸水素ナトリウムを溶解してpH6.0に調整した麦茶調合液を得た。これを容器に充填し、レトルト殺菌処理(121℃、20分間)を行って、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物を配合する麦茶飲料を得た。
【0090】
(配合例7)
<オレンジ100%果実飲料>
1/6濃縮オレンジ果汁168gに、適量の香料、及び実施例2で製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物100mgを調合し、これにイオン交換水を加えて1,000mLとした。これを容器に充填し、加熱殺菌(65℃、10分間)して、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物を配合するオレンジ100%果実飲料を得た。
【0091】
(配合例8)
<オレンジゼリー>
オレンジ果汁200mLにイオン交換水200mLを加えて加温し、これに砂糖90g、及び実施例2で製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物100mgを調合した。次いで、これにゼラチン9gを完全に溶かした後、容器に充填して冷却固化させて、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物を配合するオレンジゼリーを得た。
【0092】
(配合例9)
<紅茶飲料>
紅茶原料40gを90℃のイオン交換水800gで30分間抽出し、続いてろ紙(No.2、アドバンテック社製)でろ過することにより原料を除去して、720gの紅茶抽出物(pH5.0、Brix0.6°)を得た。この麦茶抽出液を30℃以下まで冷却、飲用濃度(Brix0.4°)となるようにイオン交換水で希釈し、L−アスコルビン酸ナトリウム、及び実施例2で製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物を100mg添加した。これに炭酸水素ナトリウムを溶解してpH6.0に調整した紅茶調合液を得た。これを容器に充填し、レトルト殺菌処理(121℃、20分間)を行って、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物を配合する紅茶飲料を得た。
【0093】
(配合例10)
<ブレンドティー飲料>
プーアル茶原料10g、緑茶原料10g、鳥龍茶原料10g、どくだみ原料5g、ハト麦原料5gを90℃のイオン交換水800gで30分間抽出し、続いてろ紙(No.2、アドバンテック社製)でろ過することにより原料を除去して、720gのブレンドティー抽出物(pH5.0、Brix0.6°)を得た。このブレンドティー抽出液を30℃以下まで冷却、飲用濃度(Brix0.4°)となるようにイオン交換水で希釈し、L−アスコルビン酸ナトリウム、及び実施例2で製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物を100mg添加した。これに炭酸水素ナトリウムを溶解してpH6.0に調整したブレンドティー調合液を得た。これを容器に充填し、レトルト殺菌処理(121℃、20分間)を行って、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物を配合するブレンドティー飲料を得た。
【0094】
(配合例11)
<コーヒー飲料>
焙煎コーヒー豆原料40gを90℃のイオン交換水800gで30分間抽出し、続いてろ紙(No.2、アドバンテック社製)でろ過することにより原料を除去して、720gのコーヒー豆抽出物(pH5.0、Brix0.6°)を得た。このコーヒー豆抽出液を30℃以下まで冷却、飲用濃度(Brix0.4°)となるようにイオン交換水で希釈し、L−アスコルビン酸ナトリウム、及び実施例2で製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物を100mg添加した。これに炭酸水素ナトリウムを溶解してpH6.0に調整したコーヒー豆調合液を得た。これを容器に充填し、レトルト殺菌処理(121℃、20分間)を行って、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物を配合するコーヒー飲料を得た。
【0095】
(配合例12)
<アリスクリーム>
卵黄60g、牛乳300cc、砂糖100gを調合し、加温した。完全に溶かした後、実施例2で製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物100mgを調合した。続いて泡立てた生クリーム150ccを加えて容器に充填して冷却固化させて、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物を配合するアイスクリームを得た。
【0096】
(配合例13)
<野菜ジュース>
人参100g、トマト20g、ホウレンソウ10g、キウイ50g、はちみつ大さじ1杯、豆乳80cc、適量の香料をミキサーにいれ、撹拌した。これに実施例2で製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物100mgを加えた。これを容器に充填し、65℃で10分間加熱殺菌して、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物を配合する野菜ジュースを得た。
【0097】
(配合例14)
<乳飲料>
ヨーグルト200g、牛乳200mL、はちみつ大さじ1、適量の香料、及び実施例2で製造したヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物100mgを調合した。これを容器に充填し、65℃で10分間加熱殺菌して、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物を配合する乳飲料を得た。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する抽出物及び乳化物の製造方法は、飲食品、化粧品等に使用可能な溶媒のみを用いるため、飲食品(健康食品、美容食品)、化粧品(美白剤、保湿剤、抗老化剤)等の用途に好適であり、安全性に優れ日常的に摂取することができ、かつ、生産性に優れ高収率及び高純度で安価に製造することができるヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する抽出物及び乳化物、並びにこれらの製造方法を提供することができるので、飲食品原料、化粧品原料、医薬品原料等に好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物材料からヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する抽出物を製造する方法であって、
前記植物材料を、80体積%〜100体積%のエタノール水溶液で抽出して抽出液を得る抽出工程と、
前記抽出液を、25体積%〜35体積%のエタノール濃度となるまで希釈して濾過し、析出したヒドロキシ脂肪酸誘導体を残渣として得る析出濾過工程と、
前記残渣を、70体積%〜100体積%のエタノール水溶液に再溶解して再溶解液を得る再溶解工程と、
前記再溶解液を、合成吸着剤に吸着させた後、90体積%〜100体積%のエタノール水溶液で溶出して精製する精製工程とを含むことを特徴とするヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造方法。
【請求項2】
植物材料が、パイナップル可食部である請求項1に記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造方法。
【請求項3】
植物材料が、パイナップル可食部の圧搾後の残渣である請求項1に記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造方法。
【請求項4】
抽出工程におけるエタノール水溶液が、85体積%〜100体積%のエタノール水溶液である請求項1から3のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造方法。
【請求項5】
精製工程が、再溶解液を、合成吸着剤に通液した後、90体積%〜100体積%のエタノール水溶液で溶出してカラム精製する工程である請求項1から4のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造方法。
【請求項6】
合成吸着剤が、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤である請求項1から5のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物の製造方法により製造されることを特徴とするヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物。
【請求項8】
請求項7に記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物からヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有する乳化物を製造する方法であって、
前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンを70体積%〜95体積%のエタノール水溶液に加熱溶解して加熱溶解液を得る加熱溶解工程と、
前記加熱溶解液を濃縮して濃縮物を得る濃縮工程と、
前記濃縮物を乳化する乳化工程とを含むことを特徴とするヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造方法。
【請求項9】
ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物、界面活性剤、及びグリセリンの質量比(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有抽出物:界面活性剤:グリセリン)が、1:1:10〜1:20:40である請求項8に記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造方法。
【請求項10】
界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル及びリゾホスファチジルグリセロールの少なくともいずれかである請求項8から9のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造方法。
【請求項11】
界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル及びリゾホスファチジルグリセロールの少なくともいずれかと、ショ糖脂肪酸エステルとの組合せである請求項8から9のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造方法。
【請求項12】
請求項8から11のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物の製造方法により製造されることを特徴とするヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乳化物。

【公開番号】特開2013−67590(P2013−67590A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207870(P2011−207870)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】