説明

ヒートポンプ式ふろ給湯機

【課題】給湯量が少ない場合にも浴槽水加熱が確実に行え、かつ湯余りを防止する。
【解決手段】少なくともふろ加熱実績記憶手段42で記憶するふろ加熱実績に応じて目標沸き上げ温度Tsを決定し、目標貯湯熱量Qと目標沸き上げ温度Tsと給水温度Twとから目標貯湯容量Vsを算出し、目標貯湯容量Vに基づいて複数の貯湯温度センサ22のうち沸き終いを判定する沸き終い貯湯温度センサを定め、特定時間帯に目標沸き上げ温度Tsの湯を沸き上げるようヒートポンプ式加熱手段23を駆動制御し、沸き終い貯湯温度センサが所定の沸き終い温度を検出するとヒートポンプ式加熱手段23の駆動を停止するよう制御する制御手段40とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定時間帯に貯湯タンク内の湯水を沸き上げるようにしたヒートポンプ式ふろ給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のヒートポンプ式ふろ給湯機においては、湯水を貯湯する貯湯タンクと、貯湯タンク下部に給水する給水管と、貯湯タンク上部から出湯して給湯する出湯管と、貯湯タンク側面上下に複数設けられ貯湯温度を検出する貯湯温度センサと、貯湯タンク下部から取り出した湯を目標沸き上げ温度Tsに加熱して貯湯タンク上部へ戻すヒートポンプ式加熱手段と、給湯された熱量を学習する給湯熱量学習手段とを備え、学習熱量を貯湯タンク容量で除して目標沸き上げ温度を算出し、深夜時間帯に目標沸き上げ温度Tsの湯を貯湯タンク満タンに沸き上げるようにし、目標沸き上げ温度Tsを下限温度としても貯湯タンク満タンに沸き上げると学習熱量を超過する場合に、沸き上げる容量を貯湯タンク満タンよりも少ない容量としたものがあった(特許文献1)。
【0003】
また、湯水を貯湯する貯湯タンクと、貯湯タンク下部に給水する給水管と、貯湯タンク上部から出湯して給湯する出湯管と、貯湯タンク側面上下に複数設けられ貯湯温度を検出する貯湯温度センサと、貯湯タンク内の湯を熱源として浴槽水を加熱するためのふろ回路と、貯湯タンク下部から取り出した湯を目標沸き上げ温度Tsに加熱して貯湯タンク上部へ戻すヒートポンプ式加熱手段と、給湯された熱量を学習する給湯熱量学習手段と、浴槽水の加熱実績の有無を記憶するふろ加熱実績記憶手段とを備え、少なくとも前記ふろ加熱実績記憶手段で記憶するふろ加熱実績に応じて前記目標沸き上げ温度Tsを決定し、深夜時間帯に貯湯タンク満タンに沸き上げるようにしたものがあった(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−8507号公報
【特許文献2】特開2007−3162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来のものでは、特許文献1のものでは、下限の目標沸き上げ温度Tsで貯湯タンク満タンまで沸き上げると湯が余る場合にのみ沸き上げる容量を貯湯タンク満タンよりも少ない容量としたものであるので、貯湯タンク内の湯を熱源として浴槽水を加熱するためのふろ回路が設けられている場合には、給湯量が少なく、かつ、浴槽水加熱を行う使い方がされると、下限の目標沸き上げ温度Tsで貯湯タンク満タンよりも少ない容量で沸き上げられ浴槽水加熱に時間が掛かりすぎ使い勝手が悪化してしまうという問題があった。
【0006】
また、特許文献2のものでは、浴槽水加熱を行った実績があると、それに応じた高めの目標沸き上げ温度で貯湯タンクの容量いっぱいまで沸き上げることとなるため、給湯量が少ない場合に多量の残湯が発生することに加え、浴槽水加熱によって発生する貯湯タンク内の中温水も沸き上げるため、ヒートポンプ式加熱手段のCOP(加熱効率)も低下してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するため、請求項1では、湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンク下部に給水する給水管と、前記貯湯タンク上部から出湯して給湯する出湯管と、前記貯湯タンク側面上下に複数設けられ貯湯温度を検出する貯湯温度センサと、前記貯湯タンク下部から取り出した湯を目標沸き上げ温度Tsに加熱して前記貯湯タンク上部へ戻すヒートポンプ式加熱手段と、前記貯湯タンク内の湯を熱源として浴槽水を加熱するためのふろ回路と、浴槽水の加熱実績の有無を記憶するふろ加熱実績記憶手段と、少なくとも前記ふろ加熱実績記憶手段で記憶するふろ加熱実績に応じて前記目標沸き上げ温度Tsを決定し、目標貯湯熱量Qと前記目標沸き上げ温度Tsと給水温度Twとから目標貯湯容量Vsを算出し、前記目標貯湯容量Vに基づいて前記複数の貯湯温度センサのうち沸き終いを判定する沸き終い貯湯温度センサを定め、特定時間帯に前記目標沸き上げ温度Tsの湯を沸き上げるよう前記ヒートポンプ式加熱手段を駆動制御し、前記沸き終い貯湯温度センサが所定の沸き終い温度を検出すると前記ヒートポンプ式加熱手段の駆動を停止するよう制御する制御手段とを備えたものとした。
【0008】
また、請求項2では、請求項1のものにおいて、前記制御手段は、前記目標貯湯容量Vの上下に位置する前記貯湯温度センサをそれぞれ上沸き終い貯湯温度センサ、下沸き終い貯湯温度センサと定め、前記上沸き終い貯湯温度センサと前記下沸き終い貯湯温度センサの検出する貯湯温度から算出される前記目標貯湯容量V位置の貯湯温度が前記所定の沸き終い温度を検出すると前記ヒートポンプ式加熱手段の駆動を停止するようにした。
【0009】
また、請求項3では、請求項1のものにおいて、前記制御手段は、前記目標貯湯容量Vに基づいて沸き終い貯湯温度センサを定めるに際し、前記目標貯湯容量Vの位置より上または下の前記貯湯温度センサを前記沸き終い貯湯温度センサとし、この沸き終い貯湯温度センサ位置までの貯湯容量と、前記目標貯湯熱量Qとを用いて前記目標沸き上げ温度Tsを修正するようにした。
【0010】
また、請求項4では、請求項3のものにおいて、前記制御手段は、前記目標貯湯容量Vの位置から近い方の上または下の前記貯湯温度センサを前記沸き終い貯湯温度センサとした。
【発明の効果】
【0011】
ふろ加熱実績に応じて必要な目標沸き上げ温度が決定されるので、ふろ加熱が確実に行えると共に、目標貯湯熱量Qが少ない場合には、貯湯タンクの全容量を沸き上げることなく適宜な容量で沸き上げを終了するので、浴槽水加熱によって発生している中温水を沸き上げる量が減少し、ヒートポンプ式加熱手段のCOP(加熱効率)が向上し、高効率に沸き上げが行え、湯余りや湯切れの発生を防止して省エネ性を向上することができる。
【0012】
さらには、日々の目標貯湯容量Vの変化に伴う沸き終い貯湯温度センサの変更に起因して目標貯湯熱量Q以上に沸き上げる熱量が変動してしまうことを防止して、目標貯湯熱量Qを過不足なく安定的に沸き上げることができるので、湯余りや湯切れの発生を防止して省エネ性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成図
【図2】同一実施形態の作動を説明するフローチャート
【図3】同一実施形態の沸き終い時の作動を説明するための図
【図4】別の一実施形態の作動を説明するフローチャート
【図5】別の一実施形態の沸き終い時の作動を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の一実施形態のヒートポンプ式ふろ給湯機を図面に基づいて説明する。
1は湯水を貯湯する貯湯タンク(ここではタンク容量370[L])、2は貯湯タンク1に給水する給水管、3は給水管2に設けられ給水圧を減圧する減圧弁、4は貯湯タンク1上部から出湯する出湯管、5は出湯管4に設けられ過圧を逃がす過圧逃がし弁、6は減圧弁3の下流側の給水管2から分岐した給水バイパス管、7は出湯管4からの湯水と給水バイパス管6からの水とを混合する給湯混合弁、8は給湯混合弁7からの湯水を給湯する給湯管、9は給湯管8に設けられた給湯温度センサ、10は給湯管8を流れる流量を検出する給湯流量センサ、11は給水温度を検出する給水温度センサ、12は給湯栓である。
【0015】
13は浴槽、14は貯湯タンク1内の上部に設けたふろ熱交換器、15は浴槽13とふろ熱交換器14とを浴槽水が循環可能に接続しているふろ循環回路、16はふろ循環回路15途中に設けられたふろ循環ポンプで、ふろ熱交換器14とふろ循環回路15とふろ循環ポンプ16とでふろ回路を構成している。
【0016】
17は浴槽13からふろ熱交換器14へ戻る浴槽水の温度を検出するふろ戻り温度センサ、18はふろ熱交換器14から浴槽13へ往く浴槽水の温度を検出するふろ往き温度センサ、19は浴槽13内の水位を圧力により検出する水位センサ、20は給湯管8から分岐されてふろ循環回路15へ接続された湯張り管、21は湯張り管20の開閉を行う湯張り電磁弁である。
【0017】
22は貯湯タンク1の側面上下に複数設けられ各部の貯湯温度を検出する貯湯温度センサであり、ここでは、貯湯温度センサ22aは30[L]、貯湯温度センサ22bは80[L]、貯湯温度センサ22cは130[L]、貯湯温度センサ22dは180[L]、貯湯温度センサ22eは230[L]、貯湯温度センサ22fは280[L]、貯湯温度センサ22gは330[L]の容量の貯湯温度を検出するものである。
【0018】
23は貯湯タンク1内の湯水を加熱するヒートポンプ式加熱手段で、冷媒を圧縮する圧縮機24と、圧縮された高温冷媒と貯湯タンク1からの湯水とを熱交換する冷媒水熱交換器25と、冷媒水熱交換器25で放熱された冷媒を減圧する膨張弁26と、低温低圧の冷媒を蒸発される蒸発器としての空気熱交換器27とを冷媒配管28で環状に接続して構成され、一定の加熱能力で作動するように制御されるもので、貯湯タンク1下部から取り出した湯を加熱して貯湯タンク1上部に戻すようにしているため沸き上げる湯量を自在にコントロールできるものである。なお、29は空気熱交換器27に熱源となる外気を送風する送風ファンである。
【0019】
30は貯湯タンク1の下部と冷媒水熱交換器25の入口とを接続し、冷媒水熱交換器25の出口と貯湯タンク1の上部とを接続する加熱循環回路、31は冷媒水熱交換器25入口側の加熱循環回路30に設けられ貯湯タンク1下部から取り出した湯水を冷媒水熱交換器25を介して貯湯タンク1上部に循環させる加熱循環ポンプ、32は冷媒水熱交換器25に流入する湯水の温度を検出する入水温度センサ、33は冷媒水熱交換器25から流出する湯水の温度を検出する沸き上げ温度センサ、34は外気温度を検出する外気温度センサである。
【0020】
35は給湯温度や各種必要な設定を行うためのリモートコントローラで、給湯設定温度やふろ設定温度を表示する表示部36と、給湯設定温度およびふろ設定温度を設定する温度設定スイッチ37と、浴槽13への所定湯量の湯張りに続いて所定の保温時間だけ保温運転を行わせるふろスイッチ38と、浴槽水を加熱する追い焚き動作を行わせる追い焚きスイッチ39とを備えている。
【0021】
40はこのヒートポンプ式ふろ給湯機の作動を制御する制御手段で、予め作動を制御するためのプログラムが記憶されていると共に、演算、比較、記憶機能、カウント機能を有し、給湯温度センサ9、給湯流量センサ10、給水温度センサ11、ふろ戻り温度センサ17、ふろ往き温度センサ18、水位センサ19、貯湯温度センサ22a〜g、入水温度センサ32、沸き上げ温度センサ33、外気温度センサ34にて検出される値が入力され、給湯混合弁7、ふろ循環ポンプ16、湯張り電磁弁21、圧縮機24、膨張弁26、送風ファン29、加熱循環ポンプ31の駆動を制御し、沸き上げ動作、給湯動作やふろ加熱動作等を制御するもので、リモートコントローラ35と通信可能に接続されているものである。
【0022】
制御手段40は、給湯に必要な熱量を決定する手段としての給湯された熱量を学習する給湯熱量学習手段41と、浴槽水の加熱実績の有無を記憶するふろ加熱実績記憶手段42とが設けられていると共に、少なくともふろ加熱実績記憶手段42で記憶するふろ加熱実績に応じて目標沸き上げ温度Tsを決定し、給湯に必要な熱量に応じて目標貯湯熱量Qを算出し、目標貯湯熱量Qと目標沸き上げ温度Tsと給水温度Twとから目標貯湯容量Vを算出し、目標貯湯容量Vに基づいて複数の貯湯温度センサ22a〜gのうち沸き終いを判定する沸き終い貯湯温度センサを定め、特定時間帯に目標沸き上げ温度Tsの湯を沸き上げるようヒートポンプ式加熱手段23を駆動制御し、沸き終い貯湯温度センサが所定の沸き終い温度を検出するとヒートポンプ式加熱手段23の駆動を停止するよう制御するものである。
【0023】
<給湯動作>
次に、給湯栓12が開かれ、給湯流量センサ10が給湯開始と見なせる量以上の流量を検出すると、制御手段40は給湯温度センサ9で検出する給湯温度がリモートコントローラ35で設定した給湯設定温度となるように給湯混合弁7の開度を調節し、出湯管4からの湯と給水バイパス管6からの水とを混合して給湯設定温度の湯を給湯する。
【0024】
このとき、給湯熱量学習手段41は、給水温度センサ11で検出する給水温度と給湯流量センサ11で検出する給湯流量と給湯設定温度とから給湯熱量を算出し、積算記憶する。
【0025】
そして、給湯栓12が閉じられる等して給湯流量センサ10が検出する流量が給湯停止と見なせる量未満の流量まで低下すると、制御手段40は給湯混合弁7の開度調節を終了し、給湯を終了する。
【0026】
<湯張り動作>
また、リモートコントローラ35のふろスイッチ38がオンされた場合について説明すると、制御手段40は湯張り電磁弁21を開き、給湯温度センサ9で検出する給湯温度がリモートコントローラ35で設定したふろ設定温度となるように給湯混合弁7の開度を調節してふろ設定温度の湯を湯張りし、給湯流量センサ10が検出する湯張り電磁弁21を開いてからの流量積算値が予めリモートコントローラ35等で設定した湯張り湯量に達すると湯張り電磁弁21を閉じる。
【0027】
このとき、給湯熱量学習手段41は、給水温度センサ11で検出する給水温度と給湯流量センサ11で検出する給湯流量とふろ設定温度とから浴槽13へ給湯された給湯熱量を算出し、積算記憶する。
【0028】
そして、湯張り運転を完了すると制御手段40は所定の保温時間(例えば2時間)の保温運転を行う。この保温運転では、定期的にふろ循環ポンプ16を駆動して浴槽水温度をチェックし、ふろ設定温度未満であればふろ加熱要求ありとしてふろ循環ポンプ16の駆動を継続して浴槽水をふろ設定温度まで加熱するようにし、そして、湯張り運転の完了から所定の保温時間が経過すると、浴槽水の保温運転を行わないようにしている。ここで、ふろ加熱要求ありとされてふろ加熱動作が行われると、ふろ加熱実績記憶手段42は、ふろ加熱実績ありの旨を記憶する。
【0029】
<追い焚き動作>
また、リモートコントローラ35の追い焚きスイッチ39がオンされると、制御手段40は、ふろ加熱要求ありとしてふろ設定温度まで加熱する追い焚き運転を行うようにしており、追い焚き運転によってふろ加熱要求が発生すると、制御手段40は、ふろ循環ポンプ16を駆動開始し、浴槽水をふろ熱交換器14に循環させて、貯湯タンク1内の貯湯熱によって浴槽水を加熱するふろ加熱動作を開始し、そして、ふろ戻り温度センサ17がふろ設定温度以上を検出すると、ふろ循環ポンプ16を駆動停止してふろ加熱動作を終了する。このとき、ふろ加熱実績記憶手段42は、ふろ加熱実績ありの旨を記憶する。
【0030】
<沸き上げ動作>
次に、電力料金単価の安価な深夜の沸き上げ動作について、図2のフローチャートに基づいて説明する。ここでは、23時から翌朝7時までの深夜時間帯がそれ以外の昼間時間帯よりも電力料金単価が安価な料金制度に基づいて説明するが、これに限られず、例えば22時から翌朝8時までを安価な深夜時間帯とする料金制度でもよいものである。
【0031】
現在時刻が23時になり特定時間帯としての深夜時間帯の開始時刻となると(ステップS1でYes)、制御手段40は、給湯熱量学習手段41が積算記憶している過去数日分の1日単位の給湯熱量に基づいて目標貯湯熱量Qを算出、決定する(ステップS2)。ここでは、過去一週間の給湯熱量の平均値と、その標準偏差に基づく値の和から目標貯湯熱量Qを算出、決定するようにしている。
【0032】
次に、制御手段40は、外気温度センサ34で検出する外気温度Taとふろ加熱実績記憶手段42に記憶されているふろ加熱実績の有無に応じ、予め記憶されている外気温度Taとふろ加熱実績の有無に応じたテーブルデータから目標沸き上げ温度Tsを決定する(ステップS3)。ここでは、ふろ加熱実績がなしの場合は、目標沸き上げ温度Tsを外気温度Taに関係なく65℃とし、ふろ加熱実績がある場合は、目標沸き上げ温度Tsを外気温度Taが10℃未満で75℃、外気温度Taが10℃以上では70℃とする。
【0033】
なお、ふろ加熱実績の有無と外気温度Taと目標沸き上げ温度Tsの関係テーブルデータの代わりに、ふろ加熱実績の有無と給水温度Twと目標沸き上げ温度Tsのテーブルデータを制御手段40に予め記憶し、ステップS3では、給水温度センサ11、最下部の貯湯温度センサ22gあるいは入水温度センサ32で検出される給水温度Twとふろ加熱実績の有無に基づいて目標沸き上げ温度Tsを決定する構成としてもよく、少なくともふろ加熱実績の有無に応じて目標沸き上げ温度Tsを決定する構成であればよいものである。
【0034】
このように、外気温度Taと給水温度Twのいずれか一方とふろ加熱実績の有無に基づいて目標沸き上げ温度Tsを決定することで、ふろ加熱実績がある場合は、外気温度Taまたは給水温度Twから推測されるふろの放熱度合いに応じて必要な目標沸き上げ温度Tsを定めることができ、ふろ加熱を確実に行い得る目標沸き上げ温度Tsを決定することが可能なものである。
【0035】
そして、制御手段40は、目標貯湯熱量Qを目標沸き上げ温度Tsから給水温度Twを引いた値で除して、目標貯湯容量V[L]を算出する(ステップS4)。
【0036】
このとき、制御手段40は、目標貯湯容量V[L]と貯湯温度センサ22a〜gの位置とを比較して、沸き上げ動作を終了させる判定を行う貯湯温度センサとしての沸き終い貯湯温度センサを決定するもので、ここでは、目標貯湯容量Vが180[L]以下では180[L]の位置にある貯湯温度センサ22dを沸き終い貯湯温度センサとし、目標貯湯容量Vが330[L]超では、330[L]の位置にある貯湯温度センサ22gを沸き終い貯湯温度センサとして決定する(ステップS5)。
【0037】
また、目標貯湯容量Vが180[L]超330[L]以下では、目標貯湯容量Vの直近の上の貯湯温度センサを上沸き終い貯湯温度センサ、目標貯湯容量V直下の貯湯温度センサを下沸き終い貯湯温度センサとし、上沸き終い貯湯温度センサと下沸き終い貯湯温度センサを沸き上げ動作を終了させる判定を行う貯湯温度センサとして決定するもので、目標貯湯容量Vが180[L]超230[L]以下では、180[L]の位置にある貯湯温度センサ22dを上沸き終い貯湯温度センサ、230[L]の位置にある貯湯温度センサ22eを下沸き終い貯湯温度センサとし、目標貯湯容量Vが230[L]超280[L]以下では、230[L]の位置にある貯湯温度センサ22eを上沸き終い貯湯温度センサ、280[L]の位置にある貯湯温度センサ22fを下沸き終い貯湯温度センサとし、目標貯湯容量Vが280[L]超330[L]以下では、280[L]の位置にある貯湯温度センサ22fを上沸き終い貯湯温度センサ、330[L]の位置にある貯湯温度センサ22gを下沸き終い貯湯温度センサとして決定する(ステップS5)。
【0038】
次に、制御手段40は、貯湯温度センサ22a〜gの検出温度に基づき、残湯判定温度(例えば50℃)以上の残湯量Vzを算出し(ステップS6)、目標貯湯容量Vから残湯量Vzを減じて沸き上げ必要量Vpを算出する(ステップS7)。
【0039】
そして、制御手段40は、沸き上げ必要量Vpをヒートポンプ式加熱手段23の一定の加熱能力で除して沸き上げ時間を算出し、深夜時間帯の終了時刻から逆算して沸き上げ開始時刻(ピークシフト時刻)を算出する(ステップS8)。
【0040】
現在時刻がピークシフト時刻となると(ステップS9でYes)、前記ステップS3で決定した目標沸き上げ温度Tsでの沸き上げ動作を開始すべく、ヒートポンプ式加熱手段23および加熱循環ポンプ31を駆動開始し、貯湯タンク1下部から取り出した水を目標沸き上げ温度Tsの湯に加熱して貯湯タンク1上部から戻して積層状に貯湯する(ステップS10)。
【0041】
そして、現在時刻が深夜時間帯の終了時刻である7時に到達するか(ステップS11)、前記ステップS5で決定した目標貯湯容量Vに応じた沸き終い貯湯温度センサ22dまたは22gが所定の沸き終い温度(例えば55℃)以上を検出するか、または前記ステップS5で決定した目標貯湯容量Vに応じた上沸き終い貯湯温度センサおよび下沸き終い貯湯温度センサのそれぞれの容量およびそれぞれの検出する貯湯温度と目標貯湯容量Vとに基づいて推測される目標貯湯容量V位置の貯湯温度が所定の沸き終い温度以上を検出して沸き上げが完了されると(ステップS12でYes)、ヒートポンプ式加熱手段23および加熱循環ポンプ31を駆動停止して沸き上げ動作を終了し(ステップS13)、沸き上げ動作のフローを終了するようにしている(ステップS14)。
【0042】
ここで、目標貯湯容量V位置の貯湯温度測定方法の一例を図3に基づいて説明すると、目標貯湯容量V[L]の位置の貯湯温度W℃は、上沸き終い貯湯温度センサ(X[L]位置)の貯湯温度をa℃とし、下沸き終い貯湯温度センサ(Y[L]位置)の貯湯温度をb℃とすると、X[L]位置のa℃からY[L]位置のb℃まで比例的に温度低下していると見なして、W=a−{(a−b)/(Y−X)}*(V−X)の計算式およびこれと等価の計算式で算出することができる。
【0043】
このようにして、ふろ加熱実績に応じて必要な目標沸き上げ温度Tsが決定されるので、ふろ加熱が確実に行えると共に、学習熱量が少ない場合には、貯湯タンク1の全容量を沸き上げることなく適宜な容量で沸き上げを終了するので、浴槽水加熱によって発生している中温水を沸き上げる量が減少し、ヒートポンプ式加熱手段23のCOP(加熱効率)が向上し、高効率に沸き上げが行え、湯余りや湯切れの発生を防止して省エネ性を向上することができる。
【0044】
さらには、貯湯温度センサ22c〜gの位置からずれた位置に目標貯湯容量Vが決定されても、目標貯湯容量Vを過不足なく沸き上げることができるので、日々の目標貯湯熱量Qの変化に伴って目標貯湯容量Vがいずれか一個の貯湯温度センサを挟んでその上下に日々変動しても目標貯湯熱量Qを過不足なく安定的に沸き上げることができるので、湯余りや湯切れの発生を防止して省エネ性を向上することができる。
【0045】
次に、本発明の別の実施形態を図4、図5に基づいて説明する。なお、先の一実施形態と同一のものには同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0046】
この実施形態では、制御手段40は目標貯湯容量V位置の直近の上または下の貯湯温度センサを沸き終い貯湯温度センサとし、目標貯湯容量Vをこの沸き終い貯湯温度センサ位置までの貯湯容量に修正すると共に、修正された目標貯湯容量Vと目標貯湯熱量Qとを用いて目標沸き上げ温度Tsを修正するようにしたものである。
【0047】
<沸き上げ動作>
次に、この実施形態の深夜の沸き上げ動作について、図4のフローチャートに基づいて説明する。現在時刻が23時になり特定時間帯としての深夜時間帯の開始時刻となると(ステップS21でYes)、制御手段40は、給湯熱量学習手段41が積算記憶している過去数日分の1日単位の給湯熱量に基づいて目標貯湯熱量Qを算出、決定する(ステップS22)。ここでは、過去一週間の給湯熱量の平均値と、その標準偏差に基づく値の和から目標貯湯熱量Qを算出、決定するようにしている。
【0048】
次に、制御手段40は、外気温度センサ34で検出する外気温度Taとふろ加熱実績記憶手段42に記憶されているふろ加熱実績の有無に応じ、予め記憶されている外気温度Taとふろ加熱実績の有無に応じたテーブルデータから仮の目標沸き上げ温度Tsを決定する(ステップS23)。ここでは、ふろ加熱実績がなしの場合は、目標沸き上げ温度Tsを外気温度Taに関係なく65℃とし、ふろ加熱実績がある場合は、目標沸き上げ温度Tsを外気温度Taが10℃未満で75℃、外気温度Taが10℃以上では70℃とする。
【0049】
そして、制御手段40は、目標貯湯熱量Qを目標沸き上げ温度Tsから給水温度Twを引いた値で除して、仮の目標貯湯容量Vを算出する(ステップS24)。
【0050】
このとき、制御手段40は、仮の目標貯湯容量Vと貯湯温度センサ22a〜gの位置とを比較して、沸き上げ動作を終了させる判定を行う貯湯温度センサとしての沸き終い貯湯温度センサを決定するもので、ここでは、目標貯湯容量Vが180[L]以下では180[L]の位置にある貯湯温度センサ22dを沸き終い貯湯温度センサとし、目標貯湯容量Vが330[L]超では、330[L]の位置にある貯湯温度センサ22gを沸き終い貯湯温度センサとして決定する(ステップS25)。
【0051】
また、目標貯湯容量Vが180[L]超330[L]以下では、図5に示すように、仮の目標貯湯容量Vとその上下の貯湯温度センサ22の貯湯容量(α[L]、β[L])の中間容量(θ[L])とを比較し、仮の目標貯湯容量Vが中間容量(θ[L])以下であれば目標貯湯容量Vを切り捨てて上かつ直近の貯湯温度センサ22の容量(α[L])に修正すると共に、この仮の目標貯湯容量Vより上かつ直近の貯湯温度センサ22を沸き終い貯湯温度センサとして決定し、一方、仮の目標貯湯容量Vが中間容量(θ[L])よりも多ければ目標貯湯容量Vを繰り上げて下かつ直近の貯湯温度センサ22の容量(β[L])に修正すると共に、この仮の目標貯湯容量Vより下かつ直近の貯湯温度センサ22を沸き終い貯湯温度センサとして決定する(ステップS25、S26)。
【0052】
そして、制御手段40は、修正された目標貯湯容量VとステップS22で決定された目標貯湯熱量Qと給水温度Twとから改めて目標沸き上げ温度Tsを算出し、目標沸き上げ温度Tsを修正する(ステップS27)。
【0053】
次に、制御手段40は、貯湯温度センサ22a〜gの検出温度に基づき、残湯判定温度(例えば50℃)以上の残湯量Vzを算出し(ステップS28)、目標貯湯容量Vから残湯量Vzを減じて沸き上げ必要量Vpを算出する(ステップS29)。
【0054】
そして、制御手段40は、沸き上げ必要量Vpをヒートポンプ式加熱手段23の一定の加熱能力で除して沸き上げ時間を算出し、深夜時間帯の終了時刻から逆算して沸き上げ開始時刻(ピークシフト時刻)を算出する(ステップS30)。
【0055】
現在時刻がピークシフト時刻となると(ステップS31でYes)、前記ステップS27で決定した目標沸き上げ温度Tsでの沸き上げ動作を開始すべく、ヒートポンプ式加熱手段23および加熱循環ポンプ31を駆動開始し、貯湯タンク1下部から取り出した水を目標沸き上げ温度Tsの湯に加熱して貯湯タンク1上部から戻して積層状に貯湯する(ステップS32)。
【0056】
そして、現在時刻が深夜時間帯の終了時刻である7時に到達するか(ステップS33)、前記ステップS25で決定した沸き終い貯湯温度センサ22が所定の沸き終い温度(例えば55℃)以上を検出して沸き上げが完了されると(ステップS34でYes)、ヒートポンプ式加熱手段23および加熱循環ポンプ31を駆動停止して沸き上げ動作を終了し(ステップS35)、沸き上げ動作のフローを終了するようにしている(ステップS36)。
【0057】
このようにして、ふろ加熱実績に応じて必要な目標沸き上げ温度Tsが決定されるので、ふろ加熱が確実に行えると共に、学習熱量が少ない場合には、貯湯タンク1の全容量を沸き上げることなく適宜な容量で沸き上げを終了するので、浴槽水加熱によって発生している中温水を沸き上げる量が減少し、ヒートポンプ式加熱手段23のCOP(加熱効率)が向上し、高効率に沸き上げが行え、湯余りや湯切れの発生を防止して省エネ性を向上することができる。
【0058】
さらには、貯湯温度センサ22d〜gの位置からずれた位置に仮の目標貯湯容量Vが決定されても、目標貯湯容量Vを貯湯温度センサ22d〜gの位置に修正すると共に、目標沸き上げ温度Tsも修正するので、目標貯湯熱量Qを過不足なく沸き上げることができ、日々の目標貯湯熱量Qの変化に伴って目標貯湯容量Vがいずれか一個の貯湯温度センサを挟んでその上下に日々変動しても目標貯湯熱量Qを過不足なく安定的に沸き上げることができるので、湯余りや湯切れの発生を防止して省エネ性を向上することができる。
【0059】
なお、中間容量は上下の貯湯温度センサの容量を足して2で割った中間容量でもよいが、例えば50L間隔の貯湯温度センサ22において、上の貯湯温度センサからは30L下、下の貯湯温度センサからは20L上の貯湯容量を中間容量とするように、下の貯湯温度センサ寄りの容量としてもよく、このように中間容量を下の貯湯温度センサ寄りにすることで、目標沸き上げ温度Tsの温度低下を抑制することができ、ふろ加熱の能力を確実に維持することができる。
【0060】
なお、本発明は上記の一実施形態にのみ限定されるものではなく、例えば、目標貯湯熱量Qは給湯の学習熱量によって決定されるのみならず、ユーザーがリモートコントローラ35のスイッチを操作して手動入力される設定給湯量に基づいて目標貯湯熱量Qを決定してもよいもので、また、目標貯湯熱量Qは給湯に必要な熱量のみによって決定されるものに限られず、例えば、ふろ加熱実績に応じて、目標貯湯熱量Qにふろ加熱に必要な分の熱量を加算するような構成としてもよい。
【0061】
また、ふろ回路として貯湯タンク1内にふろ熱交換器14を配置する構成としたが、これに限らず、例えば、ふろ熱交換器14をプレート式熱交換器等の一次流路と二次流路とを有した構成として貯湯タンク1の外部に設け、貯湯タンク1から取り出した湯水をふろ熱交換器の一次流路に流通させ、浴槽水をふろ熱交換器の二次流路に流通させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 貯湯タンク
2 給水管
4 出湯管
14 ふろ熱交換器(ふろ回路)
15 ふろ循環回路(ふろ回路)
16 ふろ循環ポンプ(ふろ回路)
22 貯湯温度センサ
23 ヒートポンプ式加熱手段
40 制御手段
42 ふろ加熱実績記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンク下部に給水する給水管と、前記貯湯タンク上部から出湯して給湯する出湯管と、前記貯湯タンク側面上下に複数設けられ貯湯温度を検出する貯湯温度センサと、前記貯湯タンク下部から取り出した湯を目標沸き上げ温度Tsに加熱して前記貯湯タンク上部へ戻すヒートポンプ式加熱手段と、前記貯湯タンク内の湯を熱源として浴槽水を加熱するためのふろ回路と、浴槽水の加熱実績の有無を記憶するふろ加熱実績記憶手段と、少なくとも前記ふろ加熱実績記憶手段で記憶するふろ加熱実績に応じて前記目標沸き上げ温度Tsを決定し、目標貯湯熱量Qと前記目標沸き上げ温度Tsと給水温度Twとから目標貯湯容量Vsを算出し、前記目標貯湯容量Vに基づいて前記複数の貯湯温度センサのうち沸き終いを判定する沸き終い貯湯温度センサを定め、特定時間帯に前記目標沸き上げ温度Tsの湯を沸き上げるよう前記ヒートポンプ式加熱手段を駆動制御し、前記沸き終い貯湯温度センサが所定の沸き終い温度を検出すると前記ヒートポンプ式加熱手段の駆動を停止するよう制御する制御手段とを備えたことを特徴とするヒートポンプ式ふろ給湯機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記目標貯湯容量Vの上下に位置する前記貯湯温度センサをそれぞれ上沸き終い貯湯温度センサ、下沸き終い貯湯温度センサと定め、前記上沸き終い貯湯温度センサと前記下沸き終い貯湯温度センサの検出する貯湯温度から算出される前記目標貯湯容量V位置の貯湯温度が前記所定の沸き終い温度を検出すると前記ヒートポンプ式加熱手段の駆動を停止するようにしたことを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ式ふろ給湯機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記目標貯湯容量Vに基づいて沸き終い貯湯温度センサを定めるに際し、前記目標貯湯容量Vの位置より上または下の前記貯湯温度センサを前記沸き終い貯湯温度センサとし、この沸き終い貯湯温度センサ位置までの貯湯容量と、前記目標貯湯熱量Qとを用いて前記目標沸き上げ温度Tsを修正するようにしたことを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ式ふろ給湯機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記目標貯湯容量Vの位置から近い方の上または下の前記貯湯温度センサを前記沸き終い貯湯温度センサとしたことを特徴とする請求項3記載のヒートポンプ式ふろ給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−233656(P2012−233656A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103944(P2011−103944)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)