説明

ヒートポンプ式温水暖房装置

【課題】 除霜運転で蒸発器から流れ落ちたドレン水の再凍結を防止するヒートポンプ式温水暖房装置を提供する。
【解決手段】 冷媒回路11と温水回路20の一部と送風ファン9とを収納した室外機1を構成する底面板36上に、上面がアルミ箔41で凍結防止ヒータ40を被覆し下面が両面テープ42で底面板36に貼着してドレン穴43に嵌合するドレン排出口45が形成されたヒータシート39設置することで、極低温の際、凍結防止ヒータ40に通電することで除霜運転で蒸発器10から流れ落ちたドレン水の再凍結を防止し、ドレン排出口45から室外機1の外部に排出することで、送風ファン9及び蒸発器10を構成する部位の破損を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷媒回路で加熱した冷媒と熱交換した温水によって暖房を行うヒートポンプ式温水暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器を順次配管で接続した冷媒回路と、凝縮器として作用する冷媒水熱交換器に接続された温水回路を構成する配管を内蔵した室外機を設置し、冷媒回路を構成する冷媒水熱交換器で加熱した温水を温水回路に接続されたファンコンベクタや床暖パネル等の放熱器に流入することで、暖房運転を可能とするヒートポンプ式温水暖房装置があり、室外機に設置された外気温センサで検出された温度が蒸発器に着霜する温度まで低下したら、膨張弁を全開にして高温の冷媒を蒸発器に流通させる除霜運転を行うことで、蒸発器に付着した霜を溶かして冷媒回路の加熱能力低下を防止するものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−164199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来のものでは、除霜運転によって溶かした霜がドレン水となって室外機の底面板に流れ落ち、底面板の所定位置に形成されたドレン穴から室外機の外部に排出されるが、外気温が極度に低いと底面板に流れ落ちたドレン水が再凍結し、凍結が進行することで大きくなった氷によって蒸発器を構成する配管がつぶれたり、雪が室外機に入り込むことで蒸発器に対向して設置された送風ファンのファンロックを引き起こすことから、暖房運転に支障をきたす問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器を順次配管で接続した冷媒回路と、該凝縮器に接続され温水が循環する温水回路と、該温水回路途中に設置され温水を循環させる循環ポンプと、前記温水回路に接続され室内の暖房を行う放熱器と、前記蒸発器に対向するよう設けられ外気を吹き込む送風ファンと、前記冷媒回路と温水回路の少なくとも凝縮器と接続した配管と送風ファンを収納した室外機と、該室外機の底面を構成しドレン水を外部へ案内するドレン穴が形成された底面板とを備えたヒートポンプ式温水暖房装置において、前記室外機内の蒸発器及び送風ファンと底面板の間に凍結防止ヒータを内蔵したヒータシートを設置したものである。
【0006】
また、請求項2では前記ヒータシートは上面が均熱材で構成され前記凍結防止ヒータを被覆し、下面が粘着材で構成され前記底面板に貼着しているものである。
【0007】
また、請求項3では前記均熱材は金属箔であるものである。
【0008】
また、請求項4では前記ヒータシートに前記底面板に固定するネジが取り付けられるネジ穴を形成したものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の請求項1によれば、室外機に収納された蒸発器及び送風ファンと底面板の間に凍結防止ヒータを内蔵したヒータシートを設置することで、外気温が極度に低い状況で除霜運転を行う際、ヒータシートに内蔵された凍結防止ヒータに通電することで、底面板で再凍結して氷となったドレン水や室外機に吹き込んできた雪を溶かすことできるため、蒸発器を構成する配管を保護して、送風ファンのファンロックを防止できる。
【0010】
また、請求項2によれば、ヒータシートは上面が均熱材で構成され下面が粘着材で構成され底面板に貼着することから、凍結防止ヒータで発生した熱を底面板の上面に対して均一に広げることができ、粘着材によりヒータシートの下面方向へ熱が伝わり難くいので、効率よく加熱を行いドレン水の再凍結を防止できる。
【0011】
また、請求項3によれば、均熱材を金属箔で構成することで熱導電率が向上するため、凍結防止ヒータでの消費電力を低減させることができる。
【0012】
また、請求項4によれば、ヒータシートに底面板に固定するネジが取り付けられるネジ穴を形成したことで、ヒータシートの底面板に対する固定をより強固にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施形態を示す概略構成図
【図2】同発明を示す要部説明図
【図3】同発明のヒータシートを示す平面図
【図4】図3におけるA−A線断面図
【図5】同発明の室外機を示す分解斜視図
【図6】同発明の室外機を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、この発明を適用した一実施形態を図面に基づいて説明する。
1はヒートポンプ式暖房装置の室外機、2は循環ポンプユニット、3は循環ポンプユニット2に隣接して設置されたヘッダユニット、4は床暖パネル等で構成される放熱器であり、室外機1から流出した温水が循環ポンプユニット2とヘッダユニット3を経て放熱器4に流入することで、放熱器4の設置箇所における暖房を可能とする。
【0015】
5は室外機1に内蔵されているヒートポンプユニットであり、冷媒を圧縮する圧縮機6と、高温の冷媒と湯水とで熱交換を行う凝縮器としての冷媒水熱交換器7と、熱交換後の冷媒を減圧する膨張弁8と、減圧された冷媒を送風ファン9で送風された外気で蒸発させる蒸発器10とを環状に接続した冷媒回路11が設置されている。
【0016】
12は冷媒水熱交換器7と膨張弁8との間に設けられた加熱器で、蒸発器10の風下側の下端から上下に設置された2本の銅管で冷媒水熱交換器7と膨張弁8に接続されており、蒸発器10と一体に形成されることで内部熱交換器を使用せずに吐出圧力の上昇を抑えることができ、製造コストが低く抑えられる。また、除霜運転での溶け残りを防止するため除霜の効率が向上し、吐出圧力の上昇を抑えるので圧縮機6の消費電力が低減することでCOPが向上する。
【0017】
13は圧縮機6の吐出側の配管に取り付けられ冷媒の吐出温度を検出して冷媒回路制御部14へ信号を送る吐出温センサ、15は外気温を検出する外気温センサ、16は蒸発器10に設置され蒸発器10の温度を検出して除霜運転の制御をする熱交センサ、17は冷媒水熱交換器7の中間位置に設置され熱交内部を流動する冷媒の温度を検出する冷媒中間センサである。
【0018】
18は冷媒水熱交換器7で加熱された温水を放熱器4に導く温水往き管、19は放熱器4で放熱し温度が低下した温水を冷媒水熱交換器7に導く温水戻り管であり、温水往き管18と温水戻り管19とで温水回路20が形成され温水による暖房運転を可能とする。
【0019】
21は温水回路20の温水を流動させる循環ポンプ、22は温水の体積膨張分を吸収する温水タンクであり、循環ポンプユニット2内の温水往き管18途中に設置されている。また、循環ポンプユニット2内には、温水往き管18を流動する温水の温度を検出する往き管温度センサ23と、温水戻り管19を流動する温水の温度を検出する戻り温度センサ24とが設置され、検出された温水温度に基づいて冷媒回路制御部14及び循環制御部25が圧縮機6の出力と循環ポンプ21の回転数を制御することで、最適な暖房運転を可能とする。
【0020】
ヘッダユニット3には、温水往き管18に接続され複数の放熱器4に流入させるために温水の流路を分岐する温水往きヘッダ26と、温水戻り管19に接続され複数の放熱器4で放熱した温水を一本の経路に流入させるための温水戻りヘッダ27と、温水往きヘッダ26に設置され弁を開閉して放熱器4への温水の供給を制御する熱動弁28とが設置され、暖房運転を行う放熱器4だけに温水が供給されるようヘッダ制御部29によって熱動弁28の開閉を制御する。また、30は温水往き管18と温水戻り管19とを放熱器4を介さず接続するバイパス管で、放熱器4へ流入する温水の流量を調節し、更に熱動弁28を閉止して温水回路20の圧力が増加した際、バイパス管30に温水を流入させることで圧力の上昇による配管の損傷を防止するものである。
【0021】
31は放熱器4での暖房運転に関する各種設定が可能なリモコンであり、暖房運転の開始又は停止をスイッチのON/OFFで操作する運転スイッチ32と、複数の放熱器4から暖房運転を行うために稼働させるものを選択する選択スイッチ33と、放熱器4に流入する温水温度を9段階のレベルで設定可能な温度設定スイッチ34と、温度設定スイッチ34で設定された温水温度のレベルや現在時刻等を表示する表示部35とが備えられている。
【0022】
36は室外機1の底面を構成する底面板であり、該底面板36の表面には、送風ファン9を取り付けるファン設置板37と、蒸発器10から流れ落ちたドレン水を室外機1外部に導く丸穴形状のドレン穴38が形成されている。
【0023】
39はヒータシートであり、図示しない先端にある端子から供給される電力で加熱する凍結防止ヒータ40が搭載され、上面が凍結防止ヒータ40を被覆する金属箔としてのアルミ箔41と、下面が底面板36に貼着する粘着材としての両面テープ42とで構成されている。また、ヒータシート39には、底面板36の所定箇所に固定するためのネジを取り付けるネジ穴43と、ファン設置台37を据え置くための設置台固定部44と、上面から下面に貫通しておりドレン穴38の内径に嵌り込んで固定するドレン排出口45とが形成されている。
【0024】
ヒータシート39の表面にあり凍結防止ヒータ40を被覆するアルミ箔41の熱伝導率は約200W/m・Kと高いので、凍結防止ヒータ40に通電した際に効率よく上面温度を上昇させることができ、少ない消費電力でドレン水の再凍結を防止可能な熱量が得られる。対して、両面テープ42の熱伝導率は約3W/m・Kと低く凍結防止ヒータ40の熱は下面に伝わり難いことから、アルミ箔41で覆われた上面全体のみを効率よく加熱することができる。また、底面板36に連通するネジ穴43を形成してネジでの固定を可能としたことで、ヒータシート39をより強固に固定することで底面板36から剥がれないようにしている。また、ヒータシート39は送風ファン9の下面にある底面板36との間に設置されているので、雪が室外機1に入り込み底面板36に積もったとしても凍結防止ヒータ40に通電して雪を溶かすことで、送風ファン9が雪に引っかかってファンロックすることが防止可能であり、暖房運転に支障をきたすことがない。また、底面板36に形成されたドレン穴38に嵌り込むドレン排出口45に向けてヒータシート39全体が下り傾斜していることで、凍結防止ヒータ40で溶かしたドレン水を確実にドレン排出口45まで案内して室外機1の外部に排出することができる。
【0025】
次に、このヒートポンプ式暖房装置における暖房運転を説明する。
まず、リモコン31に設置された運転スイッチ32を操作し、暖房運転のレベルを温度設定スイッチ34で選択する。暖房運転のレベルは9段階から選択可能であり、例えば、レベル8は強運転で約27〜32℃の温水を放熱器4に流入し、レベル2は弱運転で約23〜24℃の温水を放熱器4に流入し、レベル5は強運転と弱運転の中間で約25〜28℃の温水を放熱器4に流入するモードである。
【0026】
温度設定スイッチ34で暖房運転のレベルを設定したら、暖房運転を行う放熱器4を選択スイッチ33で選択し、ヘッダ制御部29によって選択された放熱器4に接続されている熱動弁28を開成して、循環ポンプ22を駆動させ放熱器4に温水を導くことで暖房運転が開始される。
【0027】
暖房運転が開始されると、往き管温度センサ23で検出された温度が温度設定スイッチ34で選択したレベルに適合しているか循環制御部25で判断して、選択レベルに適合するよう圧縮機6の出力と循環ポンプ21の回転数とを調節することで放熱器4に適切な温度の温水を流入することができる。
【0028】
暖房運転中に再度運転スイッチ31が操作されたら、暖房運転の停止指令として循環ポンプ21の駆動を停止させ、熱動弁28を閉止することで温水回路20の温水の循環を停止して放熱器4による暖房運転を終了させる。
【0029】
次に、蒸発器10における除霜運転について説明する。
暖房運転を開始してヒートポンプユニット5内の冷媒回路11を冷媒が循環すると、蒸発器10では送風ファン9から送風された外気の熱を奪って冷媒を蒸発させているため、外気温が低くなると周囲にある空気が凝結して蒸発器10の表面に着霜する。この霜が成長すると蒸発器10における熱交換効率が著しく低下するため、霜を溶かす除霜運転を行う必要がある。
【0030】
具体的には、ヒートポンプユニット5に設置された外気温センサ15で検出された温度と熱交センサ16で検出された温度の差が所定値以上(例えば7℃)となったら、膨張弁8を全開にした状態で圧縮器6を駆動させ送風ファン9の回転を停止させて、高温の冷媒を蒸発器10に流入して表面の着霜を溶かす。熱交センサ16の温度が除霜運転開始前から所定値(例えば5℃)上昇したら、除霜運転を終了して通常の暖房運転を再開する。
【0031】
また、蒸発器10と一体に加熱器12を設置したことで、前記除霜運転で蒸発器10表面の着霜が全て溶けなかったとしても、通常の暖房運転の際に冷媒水熱交換器7から流出した冷媒の熱で着霜を溶かすことができるため、熱交換効率の低下を招くことなく暖房運転を行える。
【0032】
更に、外気温度が極低温(例えば−10℃以下)の際は、除霜運転を行いつつヒータシート39に設置された凍結防止ヒータ40に通電することで、熱伝導率の高いアルミ箔41で構成された表面が加熱され、除霜運転によって蒸発器10の表面から底面板36に流れ落ちたドレン水の再凍結を確実に防止し、ドレン排出口45から室外機1の外部へ排出することができる。
【0033】
また、ヒータシート39に温度センサや質量センサを設置し、上面に所定量以上の雪が積もったと判断したら凍結防止ヒータ40に通電する制御を加えてもよく、これにより送風ファン9が雪によってファンロックすることを防止できる。
【0034】
以上のように、室外機1の底面板36上に凍結防止ヒータ40を搭載したヒータシート39を設置することで、外気温が極低温の際における除霜運転で凍結防止ヒータ40に通電するとアルミ箔41で覆われた表面を均一に効率よく加熱してドレン水の再凍結を防止し内部に吹き込んだ雪を溶かすことができるため、流れ落ちたドレン水が氷となって大きくなり蒸発器10を構成する配管を押し潰すことや、送風ファン9が雪でファンロックすることを確実に防止することができ、暖房運転に支障をきたすことがない。
【0035】
また、ヒータシート39の上面をアルミ箔41で構成し下面を両面テープ42で構成して底面板36に貼着したことで、凍結防止ヒータ40から発生する熱を熱伝導率の低い両面テープ42より下面に伝熱させず、熱伝導率の高いアルミ箔41で覆われた上面を効率よく加熱することができ、少ない消費電力で氷や雪を溶かすことができる。
【0036】
また、ヒータシート39の所定位置に底面板36に連通するネジ穴43を形成してネジによる固定を行うことで、底面板36上の所定場所において強固に固定することができる。
【0037】
また、ヒータシート39は底面板36に形成されたドレン穴38に嵌り込むドレン排出口45に向けて下り傾斜しているので、蒸発器10から流れ落ちてきたドレン水を確実にドレン排出口45まで案内することができ、室外機1内にドレン水を残すことなく排水することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 室外機
4 放熱器
5 ヒートポンプユニット
6 圧縮機
7 凝縮器
8 膨張弁
9 送風ファン
10 蒸発器
11 冷媒回路
20 温水回路
36 底面板
38 ドレン穴
39 ヒータシート
40 凍結防止ヒータ
41 アルミ箔
42 両面テープ
43 ネジ穴
45 ドレン排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器を順次配管で接続した冷媒回路と、該凝縮器に接続され温水が循環する温水回路と、該温水回路途中に設置され温水を循環させる循環ポンプと、前記温水回路に接続され室内の暖房を行う放熱器と、前記蒸発器に対向するよう設けられ外気を吹き込む送風ファンと、前記冷媒回路と温水回路の少なくとも凝縮器と接続した配管と送風ファンを収納した室外機と、該室外機の底面を構成しドレン水を外部へ案内するドレン穴が形成された底面板とを備えたヒートポンプ式温水暖房装置において、前記室外機内の蒸発器及び送風ファンと底面板の間に凍結防止ヒータを内蔵したヒータシートを設置したことを特徴とするヒートポンプ式温水暖房装置。
【請求項2】
前記ヒータシートは上面が均熱材で構成され前記凍結防止ヒータを被覆し、下面が粘着材で構成され前記底面板に貼着していることを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ式温水暖房装置。
【請求項3】
前記均熱材は金属箔であることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載のヒートポンプ式温水暖房装置。
【請求項4】
前記ヒータシートに前記底面板に固定するネジが取り付けられるネジ穴を形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のヒートポンプ式温水暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−189250(P2012−189250A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52409(P2011−52409)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】