説明

ヒートポンプ式給湯装置

【課題】通信異常時でも沸き上げ運転が行えるヒートポンプ式給湯装置を提供する。
【解決手段】ヒートポンプユニット3の水冷媒熱交換器17の水側と貯湯タンク2とを環状に接続する加熱循環回路4と、前記貯湯タンク2内の湯水を目標沸き上げ温度に加熱するよう前記ヒートポンプユニット3を制御するヒーポン制御部27と、このヒーポン制御部27及びリモコン14と通信線15、28で接続され該リモコン14からの指示をヒーポン制御部27に伝達するタンクユニット1内の給湯制御部13と、この給湯制御部13とヒーポン制御部27とを接続する電力線30とを備えたヒートポンプ式給湯装置で、前記タンクユニット1とヒートポンプユニット3との通信不通時には、リモコン14からの指示で給湯制御部13が電力線30を介してヒーポン制御部27に沸き上げ運転を指示しヒートポンプユニット3を駆動させるようにしたので、極めて使用勝手が良いものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯湯タンク内の湯水をヒートポンプで加熱するヒートポンプ式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のヒートポンプ式給湯装置に於いては、貯湯タンクを収納したタンクユニット内に備えられた給湯制御部と、ヒーポンユニット内に備えられ圧縮機や減圧器、蒸発器等の駆動を制御するヒーポン制御部とを信号線で結び、更にこの給湯制御部と台所等の壁に取り付けられるリモコンとを信号線で結んで、リモコンの操作や設定で給湯制御部の制御で給湯や風呂の湯張りや追い焚き、保温等の運転を行わせるものであり、又給湯制御部を介してヒーポン制御部を制御し、貯湯タンクの沸き上げ運転や沸き増し運転等を行わせるものであった。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−281260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの従来のヒートポンプ給湯装置では、給湯制御部とヒーポン制御部とを結ぶ信号線が断線して通信が出来なくなった場合、修理業者が来るまで貯湯タンクの沸き上げ運転が行われず、器具は正常に動くのに給湯や風呂が使用出来ないと言う不具合を有し、極めて使用勝手が悪いものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明はこの点に着目し上記課題を解決するために、特にその構成を、湯水を貯湯する貯湯タンクを収納したタンクユニットと、圧縮機、水冷媒熱交換器、減圧器、蒸発器を備えたヒートポンプユニットと、該ヒートポンプユニットの前記水冷媒熱交換器の水側と前記貯湯タンクとを環状に接続する加熱循環回路と、前記貯湯タンク内の湯水を目標沸き上げ温度に加熱するよう前記ヒートポンプユニットを制御するヒーポン制御部と、このヒーポン制御部及びリモコンと通信線で接続され該リモコンからの指示をヒーポン制御部に伝達するタンクユニット内の給湯制御部と、この給湯制御部とヒーポン制御部とを接続する電力線とを備えたヒートポンプ式給湯装置に於いて、前記タンクユニットとヒーポンユニットとの通信不通時には、リモコンからの指示で給湯制御部が電力線を介してヒーポン制御部に沸き上げ運転を指示しヒートポンプユニットを駆動させるようにしたものである。
【0006】
又請求項2では、前記給湯制御部は、電力線を所定間隔でON/OFFすることでヒーポン制御部へ沸き上げ運転の指示するものである。
【0007】
又請求項3では、前記ヒーポンユニットの駆動停止は、貯湯タンクの外周下部に取り付けられた貯湯温度センサが所定温度以上を検知後、電力線からのヒーポン制御部への電力供給を停止させて行うものである。
【0008】
又請求項4では、前記ヒーポンユニットの駆動停止は、駆動開始と同時にカウントを開始するヒーポン制御部のタイマ部が所定時間のカウント終了で行うものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のようにこの発明によれば、信号線が断線して給湯制御部とヒーポン制御部で通信が出来ない場合には、給湯制御部とヒーポン制御部とをつなげているもう1本の電力線を利用して、リモコンからの沸き上げ運転指示をヒーポン制御部に伝えることで、貯湯タンクの沸き上げ運転を行わせることが出来、正常に動くタンクユニットやヒーポンユニットを応急的に動かして、給湯や風呂を継続して使用することが出来て、極めて使用勝手が良いものである。
【0010】
又請求項2によれば、給湯制御部からヒーポン制御部への沸き上げ運転指示の信号を、電力線を所定間隔でON/OFFするものとしたことで、簡単でありながら通常運転時には起こらず、誤動作する心配がなく安心して使用出来るものである。
【0011】
又請求項3によれば、貯湯タンク内の湯水を確実に沸き上げることが出来、しかも通電を遮断するのでより確実に停止させられ、安全で安心して使用出来るものである。
【0012】
又請求項4によれば、所定時間経過すれば自動的に沸き上げ運転は停止されるので、沸き上げは確実ではないが停止は確実に行われ、安心して使用出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明のヒートポンプ式給湯装置の一実施形態の概略構成図。
【図2】同要部のフローチャート。
【図3】この発明のヒートポンプ式給湯装置の他の実施形態の概略構成図。
【図4】同要部のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、この発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
1は湯水を貯湯する貯湯タンク2を有したタンクユニット、3は貯湯タンク2内の湯水を加熱するヒートポンプユニット、4は前記貯湯タンク2の下部に接続された加熱往き管5及び前記貯湯タンク2の上部に接続された加熱戻り管6からなり、貯湯タンク2とヒートポンプユニット3とを湯水が循環するよう環状に接続する加熱循環回路、7は前記貯湯タンク2の下部に接続され貯湯タンク2に水を給水する給水管、8は前記貯湯タンク2の上部に接続され貯湯されている高温水を出湯する出湯管である。
【0015】
9は給水管7から分岐された給水バイパス管、10は出湯管8からの湯と給水バイパス管9からの水を混合して給湯設定温度の湯とする混合弁、11は混合弁10で混合後の給湯温度を検出する給湯温度センサ、12は貯湯タンク2の側面上下にわたり複数設けられ、貯湯タンク2内の湯水の温度を検出する貯湯温度センサ、13は前記タンクユニット1内の各センサの出力を受けて各機器の動作を制御するマイコンからなる給湯制御部で、台所等の壁に取り付けられたリモコン14と信号線15で接続し該リモコン14の操作、設定に応じて給湯や風呂動作を行わせるものである。
【0016】
前記ヒートポンプユニット3は、冷媒を圧縮する圧縮機16と、該圧縮機16から吐出された冷媒を流通させる冷媒側の流路と加熱往き管5からの湯水を加熱戻り管6に流通させる水側の流路とを有し、高温高圧の冷媒と貯湯タンク2内の湯水とを熱交換する水冷媒熱交換器17と、該水冷媒熱交換器17通過後の冷媒を減圧させる減圧器としての電子膨張弁18と、この電子膨張弁18からの低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器としての空気熱交換器19とを冷媒配管で環状に接続したヒートポンプサイクル20と、水冷媒熱交換器17の水側の加熱循環回路4途中に設けられて貯湯タンク2の湯水を循環させる加熱循環ポンプ21とを備えており、ヒートポンプサイクル20内には冷媒として二酸化炭素が用いられて超臨界ヒートポンプサイクルを構成しているものである。
【0017】
22は圧縮機16と水冷媒熱交換器17との間に設けられ、圧縮機16から吐出される冷媒の吐出温度を検出する吐出温度センサ、23は水冷媒熱交換器17と電子膨張弁18との間に設けられ、水冷媒熱交換器17の冷媒側から流出し電子膨張弁18に向かう冷媒の温度を検出する流出温度センサ、24は空気熱交換器19の空気入口側に設けられ、外気温度を検出する外気温度センサ、25は水冷媒熱交換器17の水側に流入する入水温度を検出する入水温度センサ、26は水冷媒熱交換器17の水側から貯湯タンク2に向かって流出する沸き上げ温度を検出する沸き上げ温度センサである。
【0018】
27は前記ヒートポンプユニット3内の各センサの出力を受けて各機器の動作を制御するマイコンからなるヒーポン制御部で、給湯制御部13とは信号線28で接続し連携して作動するものであり、交流200Vの外部電源29と接続している給湯制御部13からは電力線30を介して電力の供給を受けており、信号線28の断線による通信異常時には、給湯制御部13がこれを検知してリモコン14の表示部31に表示して使用者に知らせるものであり、そして沸き上げ運転が必要な時には、リモコン14の給湯スイッチ32を長押しするなどの通常時とは違う操作をすることで、給湯制御部13に沸き上げ運転の指示を与えると共に、給湯制御部13は電力線30への通電を3秒ON、1秒OFFを1分間繰り返すことで、ヒーポン制御部27は予め記憶されたこのON/OFF信号を受けて沸き上げ運転を開始させ、最下部の貯湯温度センサ12が50℃以上を検知すると給湯制御部13が電力線30によるヒーポン制御部27への通電を停止して沸き上げ運転を終了させるものである。
【0019】
次にこの一実施形態の動作について説明する。
深夜時間帯となると、給湯制御部13は貯湯タンク2内の湯水が所定の目標沸き上げ温度になるように沸き上げ運転を開始するようヒーポン制御部27へ沸き上げ開始命令を指示する。そしてヒーポン制御部27は、沸き上げ運転に於いて、前記目標沸き上げ温度および外気温度センサ24で検出した外気温度に応じて設定される運転周波数で動作するように圧縮機16を制御すると共に、吐出温度センサ22の検出する冷媒温度と流出温度センサ23の検出する冷媒温度との温度差が所定の目標温度差となるように電子膨張弁18の開度を所定の周期でフィードバック制御する。同時に、ヒーポン制御部27は沸き上げ温度センサ26で検出する水冷媒熱交換器17で加熱された湯が目標沸き上げ温度になるように加熱循環ポンプ21の回転数をフィードバック制御する。
【0020】
なお、前記所定の目標沸き上げ温度は、過去の給湯量の最大値や平均値等の給湯実績から翌日の給湯量の予測量を確保できるように給湯制御部13によって算出されるもので、65℃から90℃の範囲で決定されるものであり、貯湯タンク2の最下部の貯湯温度センサ12が50℃以上の湯温を検知することで、沸き上げが終了したとして給湯制御部13及びヒーポン制御部27は沸き上げ運転を終了するものである。
【0021】
そしてこの貯湯タンク2に貯湯された高温水は、出湯管8から出湯し混合弁10で給水バイパス管9からの給水と混合され、給湯設定温度や風呂設定温度に混合されて給湯や風呂に適宜供給して使用されるものである。
【0022】
次に給湯制御部13とヒーポン制御部27を結ぶ通信線28断線している通信異常時の沸き上げ運転について、図2のフローチャートに従って説明すると、先ずスデップ33でリモコン14の給湯スイッチ32を長押しすると、ステップ34で給湯制御部13が沸き上げモードになると共に、電力線30を介してヒーポン制御部27へON3秒、OFF1秒1分間繰り返しのON/OFF信号を送り、ステップ35ではこの信号を受けたヒーポン制御部27が沸き上げモードに入り、ステップ36で沸き上げ運転が開始され、ステップ37で最下部の貯湯温度センサ12が50℃以上を検知するかを判断し、YESでステップ38に進んで給湯制御部13が電力線30を介したヒーポン制御部27の通電を停止することによる沸き上げ運転の終了となるものである。
【0023】
このように給湯制御部13とヒーポン制御部27との間で通信が出来なくなったとしても、電力線30を利用して予めヒーポン制御部27に記憶させておいた信号で、沸き上げ運転を行わせることが出来るもので、修理業者が来るまでの応急的な手段として利用出来て、極めて使用勝手が良く安心して使用されるものである。
又沸き上げの終了を貯湯タンク2の最下部の温度で行うことで、確実に沸き上げの終了を検知して終了出来、大量の高温水を得て良好な給湯を継続することが出来るものである。
【0024】
次に図3、4に示す他の実施形態について説明するが、図1、2と同一部分には同一符号を付し説明は省略し、相違点のみ説明する。
39は給湯制御部13内に備えられたタイマ部で、通信異常時の応急措置での沸き上げ運転をカウントし、所定時間の経過で運転を停止させるものである。
【0025】
発信
図4のフローチャートでは、ステップ35のヒーポン制御部27の沸き上げモード入りの後に、ステップ40として沸き上げ運転開始と同時にタイマ部39がカウントを開始して、ステップ41でこのタイマ部39のカウントが4時間をカウントしたかを判断し、YESでステップ42に進み沸き上げ運転を停止させるものである。
【0026】
このように沸き上げ運転の停止をタイマ部39による所定時間のカウントで行うことにより、確実に沸き上げ運転を停止することが出来、安心して応急措置の沸き上げ運転を行うことが出来るものである。
【符号の説明】
【0027】
2 貯湯タンク
3 ヒートポンプ式加熱手段
4 加熱循環回路
14 圧縮機
15 水冷媒熱交換器
16 電子膨張弁(減圧器)
17 空気熱交換器(蒸発器)
20 吐出温度センサ
21 流出温度センサ
22 外気温度センサ
23 入水温度センサ
25 加熱制御手段(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクを収納したタンクユニットと、圧縮機、水冷媒熱交換器、減圧器、蒸発器を備えたヒートポンプユニットと、該ヒートポンプユニットの前記水冷媒熱交換器の水側と前記貯湯タンクとを環状に接続する加熱循環回路と、前記貯湯タンク内の湯水を目標沸き上げ温度に加熱するよう前記ヒートポンプユニットを制御するヒーポン制御部と、このヒーポン制御部及びリモコンと通信線で接続され該リモコンからの指示をヒーポン制御部に伝達するタンクユニット内の給湯制御部と、この給湯制御部とヒーポン制御部とを接続する電力線とを備えたヒートポンプ式給湯装置に於いて、前記タンクユニットとヒーポンユニットとの通信不通時には、リモコンからの指示で給湯制御部が電力線を介してヒーポン制御部に沸き上げ運転を指示しヒートポンプユニットを駆動させるようにした事を特徴とするヒートポンプ式給湯装置。
【請求項2】
前記給湯制御部は、電力線を所定間隔でON/OFFすることでヒーポン制御部へ沸き上げ運転の指示する事を特徴とした請求項1記載のヒートポンプ式給湯装置。
【請求項3】
前記ヒーポンユニットの駆動停止は、貯湯タンクの外周下部に取り付けられた貯湯温度センサが所定温度以上を検知後、電力線からのヒーポン制御部への電力供給を停止させて行う事を特徴とする請求項1記載のヒートポンプ式給湯装置。
【請求項4】
前記ヒーポンユニットの駆動停止は、駆動開始と同時にカウントを開始するヒーポン制御部のタイマ部が所定時間のカウント終了で行う事を特徴とする請求項1記載のヒートポンプ式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−149795(P2012−149795A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7483(P2011−7483)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)