説明

ヒートポンプ装置

【課題】ヒートポンプ装置を、小型でありながら熱交換が高効率ものにする。
【解決手段】本発明のヒートポンプ装置1は、冷媒Rが循環する循環流路に、冷媒Rを圧縮する圧縮機2と、外部の空気Aから冷媒Rへの熱移動を行う空気熱交換器5と、冷媒Rから利用側への熱移動を行う利用側熱交換器3とが設けられてなり、空気熱交換器5は、内部を冷媒Rが流通する冷媒用プレートエレメント8と、内部を空気Aが流通する空気用プレートエレメント9とが積層されてなるプレートフィン型の熱交換器であって、冷媒用プレートエレメント8には、内部を流れる冷媒Rの流速を増大させる冷媒増速手段16が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ装置に関し、特に、ヒートポンプ装置に備えられた空気熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、温度の低い方から高い方へと熱を伝達する機器として、ヒートポンプ装置が用いられている。ヒートポンプ装置の構成としては、圧縮機、凝縮器(利用側熱交換器)、膨張弁、蒸発器(空気熱交換器)と、これらを結ぶ配管から成っており、この配管の中を、低い温度でも蒸発する特性を持つ冷媒が循環するものとなっている。冷媒は、空気熱交換器で空気などの熱源から熱を吸収し、蒸発して圧縮機に吸い込まれ、高温・高圧のガスに圧縮されて利用側熱交換器に送られる。ここで、冷媒は、熱を放出して液体になり、さらに膨張弁で減圧されて再び空気熱交換器に戻ることになる。
【0003】
ヒートポンプ装置、及びヒートポンプ装置に用いられている利用側熱交換器や空気熱交換器に関しては、様々な構成のものが開発されている。
例えば、特許文献1は、圧縮機、空気熱交換器、利用側熱交換器及び切替弁を有し、これらを接続して冷温水サイクルを形成するヒートポンプ装置を開示している。このヒートポンプ装置では、利用側熱交換器がプレート式熱交換器で構成され、このプレート式熱交換器に冷媒ガスの供給・戻り通路と、冷媒液の供給・戻り通路を設け、冷媒液の供給・戻り通路が、冷房時に湿り冷媒液をプレートの各チャンネルに分布させるオリフィスを有する冷媒供給通路と、暖房時に冷媒液を通す前記オリフィスの出口側と連通する冷媒戻り通路とからなり、さらに、冷媒戻り通路の出口側にクッションタンクを設けている構成となっている。
【0004】
なお、上記したヒートポンプ装置の空気熱交換器は、V型のプレートフィンコイル式とされている。すなわち、特許文献1の空気熱交換器は、熱交換される冷媒液が流通するチューブが複数の薄板伝熱板を貫通している構成(プレートフィンコイル構造)を有しており、この構成を備えたコイルエレメントがV字型に配備されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−161806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の空気熱交換器に採用されたプレートフィンコイル式の熱交換器は、家庭用エアコンの室外機などに採用されるものであり、非常にポピュラーな熱交換器である。しかしながら、斯かるプレートフィンコイル式の熱交換器によりビル空調用や産業用において多量の熱の交換を行おうとした場合、薄板伝熱板(プレートフィン)の面積を大きくする必要があり、熱交換器自体が大型化するといった難点が存在していた。
【0007】
そのため、特許文献1に開示されたヒートポンプ装置を狭い場所に配備しようとした場合、前述したようなプレートフィンコイル式の熱交換器の嵩高、大型化がネックとなり、設置が困難になるといった問題が生じる。
例えば、電車の冷房システムとして、特許文献1に開示されたヒートポンプ装置を採用する場合、空気熱交換器を車両の床下に配備することがある。しかしながら、床下には電車の駆動モータや制御機器が存在する故、その設置場所は必然的に狭いものとなる。電車の床下の狭い設置場所に対応するために、空気熱交換器を小型化すると、ヒートポンプ装置自体の効率低下に繋がる虞がある。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点を鑑み、小型でありつつも高効率の空気熱交換器を備えたヒートポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明に係るヒートポンプ装置は、冷媒が循環する循環流路に、冷媒を圧縮する圧縮機
と、外部の空気から冷媒への熱移動を行う空気熱交換器と、冷媒から利用側への熱移動を行う利用側熱交換器とが設けられてなるヒートポンプ装置において、前記空気熱交換器は、内部を冷媒が流通する冷媒用プレートエレメントと、内部を空気が流通する空気用プレートエレメントとが積層されてなるプレートフィン型の熱交換器であって、前記冷媒用プレートエレメントには、内部を流れる冷媒の流速を増大させる冷媒増速手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記空気用プレートエレメントには、前記空気が流通する直線流路が形成されていて、前記冷媒用プレートエレメントに設けられた冷媒増速手段は、前記冷媒が流通し且つ当該冷媒用プレートエレメントの幅より幅狭であって蛇行するように形成された蛇行流路とされているとよい。
好ましくは、前記冷媒用プレートエレメントは、その厚み方向(流路高さ方向)が前後方向を向くように縦置きされており、前記蛇行流路は、縦置きされた冷媒用プレートエレメントの内部を下から上へ向かって蛇行するように配設されているとよい。
【0011】
好ましくは、前記冷媒用プレートエレメントの下端側に冷媒の入口が設けられると共に、前記冷媒用プレートエレメントの上端側に冷媒の出口が設けられているとよい。
好ましくは、前記空気用プレートエレメントの直線流路の高さ(フィン高さ)が、前記冷媒用プレートエレメントの蛇行流路の高さ(フィン高さ)よりも高くなるように設定されているとよい。
【0012】
好ましくは、前記空気用プレートエレメントの段数が冷媒用プレートエレメントの段数より多くなるように積層されているとよい。
好ましくは、前記冷媒用プレートエレメントを挟み込むように空気用プレートエレメントが積層されているとよい。
好ましくは、前記空気熱交換器には、当該空気熱交換器に対して強制的に空気を導入するファンが設けられているとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のヒートポンプ装置は、小型でありつつも高効率の空気熱交換器を備えることで、効率のよい熱交換を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るヒートポンプ装置を模式的に示した図である。
【図2】(a)は、本発明に係る空気熱交換器の構造を示した斜視分解図であり、(b)は、本発明に係る空気熱交換器の外観を模式的に示した斜視図である。
【図3】冷媒側プレートエレメントの内部を示した図である。
【図4】本発明に係る空気熱交換器の構造を示した斜視分解図である。
【図5】本発明に係る空気熱交換器の断面構造を模式的に示した図である。
【図6】従来の空気熱交換器の構造を示した斜視分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るヒートポンプ装置を図を基に説明する。
<<ヒートポンプ装置>>
本発明は、ヒートポンプ装置1に備えられた空気熱交換器5に特徴的な構成を有するものである。この空気熱交換器5の説明を行う前に、まず、ヒートポンプ装置1について説明を行う。
【0016】
図1に示すように、ヒートポンプ装置1は、低温側から高温側へと熱を移動させる装置である。ヒートポンプ装置1は、圧縮機2と、利用側熱交換器3(凝縮器)と、膨張弁4と、空気熱交換器5(蒸発器)とを備え、これら圧縮機2、利用側熱交換器3、膨張弁4及び空気熱交換器5は配管6で接続されている。配管6は冷媒Rが循環する循環流路となっている。
【0017】
配管6内の冷媒Rは、空気熱交換器5において外部の空気Aから冷媒Rへの熱移動が行われることにより熱を吸収し、蒸発して圧縮機2に吸い込まれ、この圧縮機2にて高温・高圧のガスに圧縮されて利用側熱交換器3に送られる。さらに、冷媒Rは、利用側熱交換器3において冷媒Rは熱を放出して液体になり、膨張弁4で減圧されて再び空気熱交換器
5に戻り、液体から気体へと相変化する。なお、冷媒Rは、低い温度でも蒸発する特性を持つ冷媒R(代替フロン、すなわちハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)など)とされている。図1のヒートポンプ装置1においては、熱交換の効率を上げるために、空気熱交換器5に強制的に空気Aを導入するファン7が設けられている。
【0018】
さて、上述したヒートポンプ装置1の空気熱交換器5として、プレートフィン型の熱交換器を採用する場合、採用するプレートフィン型の熱交換器の効率(空気Aから冷媒Rへの熱伝達効率)が高いことが要求される。しかしながら、ヒートポンプ装置1に適合するようにプレートフィン型の熱交換器の熱伝達性を向上させる場合、「発明が解決しようとする課題」で述べた如く熱交換器自体が大型化する問題もあり、従来構造を備えたプレートフィン型の熱交換器50(図6参照)をヒートポンプ装置1の空気熱交換器5として採用することが困難であった。
【0019】
そこで、図1〜図5に示す小型でも熱伝達性が高いプレートフィン型の空気熱交換器5を採用する。
<<空気熱交換器>>
以下、図1〜図5を基に、本発明のヒートポンプ装置1に採用した空気熱交換器5について説明する。なお、説明にあたっては、図3での左右方向を説明での左右方向とし、図3での上下方向を説明での上下方向とする。図3における紙面の貫通方向を説明での前後方向とする。
【0020】
まず、図2(a)に示すように、ヒートポンプ装置1に採用した空気熱交換器5は、内部を冷媒Rが流通する板状のエレメントである「冷媒用プレートエレメント8」と、内部を空気Aが流通する板状のエレメントである「空気用プレートエレメント9」と有し、これらが複数段積層されて構成されている。
この空気熱交換器5においては、空気用プレートエレメント9の段数が、冷媒用プレートエレメント8の段数よりも多く設定されている。図2(b)に示すように、この実施形態では、1基の冷媒用プレートエレメント8の前後方向両側に1基づつ空気用プレートエレメント9が配備されている。言い換えれば、冷媒用プレートエレメント8を挟み込むように空気用プレートエレメント9が配置されている。
<<冷媒用プレートエレメント>>
図2(a)、図3に示すように、冷媒用プレートエレメント8は、アルミやステンレスなどで形成され凹凸溝が形成されたフィン部10と、左右一対に配備されたサイドバー部材11と、前後一対に配備された隔離板12とを有している。フィン部10が一対のサイドバー部材11で幅方向から挟み込まれた上で、前後方向からフィン部10及びサイドバー部材11を覆うように隔離板12が取り付けられ、1基の冷媒用プレートエレメント8が構成される。
【0021】
この冷媒用プレートエレメント8は、その厚み方向が前後方向を向くように縦置きされる。縦置きされた冷媒用プレートエレメント8の下端側には、冷媒Rの入口13Rが設けられると共に、冷媒用プレートエレメント8の上端側には、エレメント内部を流れてきた冷媒Rが外部に流出する出口14Rが設けられている。
冷媒用プレートエレメント8の内部には、冷媒用プレートエレメント8の幅より幅狭であって蛇行するように形成された蛇行流路15が設けられている。蛇行流路15は、冷媒用プレートエレメント8の下端側に設けられた入口13Rに連通すると共に出口14Rに通じており、流路内を冷媒Rが流通する。この蛇行流路15内は、内部を流れる冷媒Rの流速を増大させる冷媒増速手段16として動作する。
【0022】
以下、冷媒用プレートエレメント8を構成する各部の詳細を説明する。
冷媒用プレートエレメント8を構成するサイドバー部材11は、アルミやステンレスなどで形成された長尺の角棒体である。このサイドバー部材11は、長手方向が上下方向を向くと共に、左右に所定間隔だけ離れた状態で配備されている。一対のサイドバー部材11間の距離が冷媒用プレートエレメント8の幅となり、サイドバー部材11の長さが冷媒用プレートエレメント8の長さとなる。サイドバー部材11の厚みが、冷媒Rが流れる
流路の高さとされる。
【0023】
サイドバー部材11の下端側には、サイドバー部材11間の距離の約半分の長さを有する閉塞バー部材17が配備されている。この閉塞バー部材17は、アルミやステンレスなどで形成された長尺の角棒体である。閉塞バー部材17は、その長手方向が左右方向を向くと共に、当該閉塞バー部材17の右端が右側のサイドバー部材11に接するように配備されている。それ故、閉塞バー部材17の左端と左側のサイドバー部材11との間に空間が生じることになるが、この空間が、冷媒Rの入口13Rとされる。すなわち、左右方向を向く閉塞バー部材17が、冷媒用プレートエレメント8の下端部の右側を閉塞することで、冷媒用プレートエレメント8の幅の約1/2の幅を有する入口13Rが形成されている。
【0024】
なお、一対のサイドバー部材11の上端間にも空間が生じているが、この空間は冷媒Rの出口14Rとされる。
図3に示すように、一対のサイドバー部材11間に、アルミやステンレスなどの板を凹凸状に折り曲げて形成されたフィン部10が配備される。本実施形態のフィン部10は、複数のフィン部材18を組み合わせることで構成されている。
【0025】
フィン部材18は、三角形乃至は平行四辺形の形状を呈している。三角形のフィン部材18は当該三角形の底辺に平行に折り曲げ加工が施されて、前記底辺に平行な凹凸溝が形成されている。平行四辺形のフィン部材18は、上辺及び下辺に平行に折り曲げ加工が施され、前記上辺及び下辺に平行な凹凸溝が形成されている。各フィン部材18の凹凸溝のピッチは略同一とされている。
【0026】
図3に示す如く、冷媒用プレートエレメント8の入口13Rには、凹凸溝が上下方向を向くように形成された三角形のフィン部材18が繋がっている。さらに、この三角形のフィン部材18には、凹凸溝が左右方向を向くように形成された平行四辺形のフィン部材18が繋がっている。三角形のフィン部材18の左右幅と平行四辺形のフィン部材18の上下幅とは同じとされ、冷媒用プレートエレメント8の幅の約1/2とされている。
【0027】
上記した平行四辺形のフィン部材18は、さらに三角形のフィン部材18へとつながり、その繰り返しが冷媒用プレートエレメント8の上端側、すなわち出口14Rまで続いている。
このように、複数のフィン部材18の組み合わせにより構成される一連の凹凸溝のつながりにより、入口13Rからジクサグに出口14Rに向けて伸びる蛇行流路15が構成される。この蛇行流路15の流路幅はフィン部材18の幅で決定される。蛇行流路15の流路幅は、冷媒用プレートエレメント8の幅、言い換えれば、従来型の冷媒用プレートエレメント50に備えられた上下を向く直線流路51(図6参照)の約1/2とされている。加えて、蛇行流路15の流路長は、冷媒用プレートエレメント8の上下長さ、言い換えれば、従来型の冷媒用プレートエレメント50に備えられた上下を向く直線流路51(図6参照)の流路長の約2倍とされている。
【0028】
そのため、本実施形態の冷媒用プレートエレメント8に流入した冷媒Rは、従来型の冷媒用プレートエレメント50に比べてその流速が増大するようになる。つまり、蛇行流路15は冷媒増速手段16として作用することになる。
以上述べた一対のサイドバー部材11、及びこのサイドバー部材11間で幅方向に挟まれたフィン部10は、前後一対の隔離板12により挟持されるようになっている。隔離板12もアルミやステンレスなどで形成されており矩形形状を呈している。フィン部材18に形成された凹凸溝に関しては、凹部の底部及び凸部の頂部が、隔離板12に接するように構成されている。
【0029】
これらサイドバー部材11、フィン部材18、隔離板12は、ろう付けや拡散接合等により互いが固着されるようになっており、強固に一体化された冷媒用プレートエレメント8が形成される。
このように構成された冷媒用プレートエレメント8においては、冷媒Rの流路を蛇行させることで、流路を流れる冷媒Rの流速が早くなり熱伝達特性が向上することになる。また、入口13Rから出口14Rまでの間に冷媒Rが流れる距離が長くなるため、冷媒Rと
隔離板12との接触する面積が増大し、熱移動を増加させることができる。
<<空気用プレートエレメント>>
一方、図2(a)、図4に示すように、空気用プレートエレメント9は、凹凸溝が形成されたフィン部10と、上下一対に配備されたサイドバー部材11と、前後一対に配備された隔離板12とを有している。フィン部10が一対のサイドバー部材11で上下方向から挟み込まれた上で、前後方向からフィン部10及びサイドバー部材11を覆うように隔離板12が取り付けられ、1基の空気用プレートエレメント9が構成される。
【0030】
この空気用プレートエレメント9は、その厚み方向が前後方向を向くように縦置きされる。縦置きされた空気用プレートエレメント9の右端側には、熱源となる空気Aの入口13Aが設けられると共に、空気用プレートエレメント9の左端側には、エレメント内部を流れてきた空気Aが外部に流出する出口14Aが設けられている。なお、空気Aの入口13Aと出口14Aとは逆に設けられていても何ら問題はない。
【0031】
以下、空気用プレートエレメント9を構成する各部の詳細を説明する。
図4に示す如く、本実施形態の空気用プレートエレメント9には、上下に配備された一対のサイドバー部材11が設けられている。このサイドバー部材11はアルミやステンレスなどで形成された角棒体であって、長手方向が左右方向を向くように配備されている。サイドバー部材11の長さが空気用プレートエレメント9の幅長となる。サイドバー部材11の厚み(前後方向の厚み)が、空気Aが通る流路の高さとされる。
【0032】
空気用プレートエレメント9は、前述した冷媒用プレートエレメント8に積層されて、空気熱交換器5(プレートフィン熱交換器)のコア部となる。そのため、空気用プレートエレメント9の上下方向長さと冷媒用プレートエレメント8の上下方向長さは同じとされ、空気用プレートエレメント9の幅長と冷媒用プレートエレメント8の幅長とは同じとされている。
【0033】
上下一対のサイドバー部材11間に、空気用プレートエレメント9向けのフィン部10が配備される。本実施形態のフィン部10は、上下一対のサイドバー部材11の間に嵌り込む一枚板(一枚のフィン部材18)から構成されている。
フィン部材18は、矩形形状を呈しており、矩形の上辺及び下辺に平行に直線状の凹凸溝がプレス形成されている。この直線状の凹凸溝が直線流路19として働き、この直線流路19の右端が空気用プレートエレメント9の入口13Aに繋がり、直線流路19の左端が空気用プレートエレメント9の出口14Aに繋がっている。そのため、入口13Aから入った空気Aは、直線流路19の長手方向に沿って左側へ流通し、出口14Aから外部へと吐出する。
【0034】
以上述べた一対のサイドバー部材11、及びこのサイドバー部材11間で挟まれたフィン部10は、前後一対の隔離板12により挟まれるようになっている。隔離板12もアルミやステンレスなどで形成されている。フィン部材18に形成された凹凸溝に関しては、凹部の底部及び凸部の頂部が隔離板12に接するように構成されている。
これらサイドバー部材11、フィン部材18、隔離板12は、溶接等により互いが固着されるようになっており、強固に一体化された空気用プレートエレメント9が形成される。
【0035】
まとめれば、空気用プレートエレメント9は、左右方向に延びる直線流路19を有しているため、入口13Aから導入された空気Aは出口14Aに至るまで、凹凸溝に沿って水平に流れることとなり、その圧力損失も非常に低いものとなる。
<<コア部>>
以上述べた冷媒用プレートエレメント8及び空気用プレートエレメント9は交互に積載されて、空気熱交換器5(空気熱交換器5のコア部)が構成される。
【0036】
すなわち、図2、図4(b)に示すように、冷媒用プレートエレメント8は、冷媒Rの入口13Rが下側とされ、冷媒Rの出口14Rが上側とされるように縦置きされる。その上で、この縦置きの冷媒用プレートエレメント8を挟み込むように空気用プレートエレメント9が縦置き状態で積層される。縦置きした空気用プレートエレメント9は、空気Aの入口13A及び出口14Aが左右方向を向くようになっている。
【0037】
このとき、図5に示すように、空気用プレートエレメント9の直線流路19の高さが、冷媒用プレートエレメント8の蛇行流路15の高さよりも高くなる(例えば、約2倍となる)ようにするとよい。冷媒Rに比べて空気Aの熱伝達率が低いのは周知のことであり、空気Aの流量を増やすことで、空気用プレートエレメント9側の(見かけの)熱伝達をアップさせることが可能となる。
【0038】
なお、図1に示す如く、各エレメントを積層するに際しては、冷媒用プレートエレメント8と空気用プレートエレメント9との間の隔離板12を一枚とし、この隔離板12の一方側に冷媒Rが流れ、隔離板12の他方側に空気Aが流れるようにしている。
<<作動態様>>
次に、ヒートポンプ装置1、特に、ヒートポンプ装置1に備えられた空気熱交換器5の作動態様について述べる。
【0039】
図1のヒートポンプ装置1において、利用側熱交換器3で熱を放出し液体となった冷媒Rは、膨張弁4で減圧されて空気熱交換器5に戻るようになる。戻ってきた液体の冷媒Rは、空気熱交換器5を構成する冷媒用プレートエレメント8の入口13R(下側)から、冷媒用プレートエレメント8内の蛇行流路15へと導かれる。蛇行流路15の前半、言い換えれば冷媒用プレートエレメント8の下方側では、冷媒Rは液体状態である。この液体の冷媒R(二次側の媒体)が、冷媒用プレートエレメント8の内部の蛇行流路15を通ってゆく間に空気用プレートエレメント9の空気A(一次側の媒体)から熱をもらうことで、冷媒Rは徐々に気化し、冷媒用プレートエレメント8の出口14R(上側)では気化がほとんど完了する。
【0040】
冷媒用プレートエレメント8の入口13Rの幅は、出口14Rの幅よりも小さく形成されていて、且つ蛇行流路15の流路幅は、冷媒用プレートエレメント8の幅、言い換えれば、図6に示すような従来型のプレートフィン型熱交換器に備えられた冷媒用プレートエレメント50の直線流路51より幅狭であるため、冷媒Rの流速が増大する。それ故、冷媒用プレートエレメント8全体としての熱伝達効率が増えることになる。また、蛇行流路15は、図6の従来型の冷媒用プレートエレメント50の流路より路長が長く、フィン部10及び隔離板12との接触面積も増えることになる。加えて、蛇行流路15により冷媒Rの流れが複雑になり乱流発生効果も期待できる。これらの働きによっても、冷媒用プレートエレメント8全体としての熱伝達効率が増えることになる。
【0041】
一方で、液体の冷媒Rに熱を供給する熱源となる空気Aは、冷媒用プレートエレメント8に接するように配備された空気用プレートエレメント9の入口13A(右側)から、ファン7などの強制力により導入される。空気用プレートエレメント9の入口13Aから入った空気Aは、直線流路19を左側へ流れてゆき、空気用プレートエレメント9のフィン部材18及び隔離板12(冷媒用プレートエレメント8と共通の隔離板12)を介して冷媒Rへ熱を供給し、空気用プレートエレメント9の出口14A(左側)から外部に排出される。言い換えれば、冷媒用プレートエレメント8内の冷媒Rの流れ(ジグザグな流れ)の一部分に対して、空気用プレートエレメント9内の空気Aが対向するように流れることになり、部分的な疑似対向流が形成されることとなる。
【0042】
空気熱交換器5で気化された冷媒R、すなわち冷媒用プレートエレメント8の出口14Rから吐出された冷媒Rは、配管6を通り圧縮機2に吸い込まれ、この圧縮機2にて高温・高圧のガスに圧縮されて利用側熱交換器3に送られる。
このように、本発明では、冷媒Rの蛇行流動を可能とする蛇行流路15を備えた冷媒用プレートエレメント8を採用した空気熱交換器5を用いて、高効率のヒートポンプ装置1を実現している。そのため、本発明のヒートポンプ装置1は、例えば、電車の床下などの狭い設置場所や設置場所に空間的な制限のある場所に設置することができるようになる。
【0043】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0044】
1 ヒートポンプ装置
2 圧縮機
3 利用側熱交換器
4 膨張弁
5 空気熱交換器
6 配管
7 ファン
8 冷媒用プレートエレメント
9 空気用プレートエレメント
10 フィン部
11 サイドバー部材
12 隔離板
13R 冷媒の入口
13A 空気の入口
14R 冷媒の出口
14A 空気の出口
15 蛇行流路
16 冷媒増速手段
17 閉塞バー部材
18 フィン部材
19 直線流路
50 従来型の空気熱交換器
51 (従来型の空気熱交換器に備えられた)直線流路
R 冷媒(二次側の媒体)
A 空気(一次側の媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が循環する循環流路に、冷媒を圧縮する圧縮機と、外部の空気から冷媒への熱移動を行う空気熱交換器と、冷媒から利用側への熱移動を行う利用側熱交換器とが設けられてなるヒートポンプ装置において、
前記空気熱交換器は、内部を冷媒が流通する冷媒用プレートエレメントと、内部を空気が流通する空気用プレートエレメントとが積層されてなるプレートフィン型の熱交換器であって、
前記冷媒用プレートエレメントには、内部を流れる冷媒の流速を増大させる冷媒増速手段が設けられていることを特徴とするヒートポンプ装置。
【請求項2】
前記空気用プレートエレメントには、前記空気が流通する直線流路が形成されていて、
前記冷媒用プレートエレメントに設けられた冷媒増速手段は、前記冷媒が流通し且つ当該冷媒用プレートエレメントの幅より幅狭であって蛇行するように形成された蛇行流路とされている
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ装置。
【請求項3】
前記冷媒用プレートエレメントは、その厚み方向が前後方向を向くように縦置きされており、
前記蛇行流路は、縦置きされた冷媒用プレートエレメントの内部を下から上へ向かって蛇行するように配設されていることを特徴とする請求項2に記載のヒートポンプ装置。
【請求項4】
前記冷媒用プレートエレメントの下端側に冷媒の入口が設けられると共に、前記冷媒用プレートエレメントの上端側に冷媒の出口が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のヒートポンプ装置。
【請求項5】
前記空気用プレートエレメントの直線流路の高さが、前記冷媒用プレートエレメントの蛇行流路の高さよりも高くなるように設定されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のヒートポンプ装置。
【請求項6】
前記空気用プレートエレメントの段数が冷媒用プレートエレメントの段数より多くなるように積層されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のヒートポンプ装置。
【請求項7】
前記冷媒用プレートエレメントを挟み込むように空気用プレートエレメントが積層されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のヒートポンプ装置。
【請求項8】
前記空気熱交換器には、当該空気熱交換器に対して強制的に空気を導入するファンが設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のヒートポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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