説明

ヒートポンプ装置

【課題】ヒートポンプ装置において、空気熱交換器で霜が発生しても熱交換効率を低下させない。
【解決手段】本発明のヒートポンプ装置1は、冷媒Rが循環する循環流路に、冷媒Rを圧縮する圧縮機2と、外部の空気Aから冷媒Rへの熱移動を行う空気熱交換器5と、冷媒Rから利用側への熱移動を行う利用側熱交換器3とが設けられてなり、空気熱交換器5は、内部を冷媒Rが流通する冷媒用プレートエレメント8と、内部を空気Aが流通する空気用プレートエレメント9とが積層されてなるプレートフィン型の熱交換器であって、空気用プレートエレメント9には、空気Aを流れる流路が、空気の流れ方向に下がるように傾斜して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ装置に関し、特に、ヒートポンプ装置に備えられた空気熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、温度の低い方から高い方へと熱を伝達する機器として、ヒートポンプ装置が用いられている。ヒートポンプ装置の構成としては、圧縮機、凝縮器(利用側熱交換器)、膨張弁、蒸発器(空気熱交換器)と、これらを結ぶ配管から成っており、この配管の中を、低い温度でも蒸発する特性を持つ冷媒が循環するものとなっている。冷媒は、空気熱交換器で空気などの熱源から熱を吸収し、蒸発して圧縮機に吸い込まれ、高温・高圧のガスに圧縮されて利用側熱交換器に送られる。ここで、冷媒は、熱を放出して液体になり、さらに膨張弁で減圧されて再び空気熱交換器に戻ることになる。
【0003】
ヒートポンプ装置、及びヒートポンプ装置に用いられている利用側熱交換器や空気熱交換器に関しては、様々な構成のものが開発されている。
例えば、特許文献1は、圧縮機、空気熱交換器、利用側熱交換器及び切替弁を有し、これらを接続して冷温水サイクルを形成するヒートポンプ装置を開示している。このヒートポンプ装置では、利用側熱交換器がプレート式熱交換器で構成され、このプレート式熱交換器に冷媒ガスの供給・戻り通路と、冷媒液の供給・戻り通路を設け、冷媒液の供給・戻り通路が、冷房時に湿り冷媒液をプレートの各チャンネルに分布させるオリフィスを有する冷媒供給通路と、暖房時に冷媒液を通す前記オリフィスの出口側と連通する冷媒戻り通路とからなり、さらに、冷媒戻り通路の出口側にクッションタンクを設けている構成となっている。
【0004】
なお、上記したヒートポンプ装置の空気熱交換器は、V型のプレートフィンコイル式とされている。すなわち、特許文献1の空気熱交換器は、熱交換される冷媒液が流通するチューブが複数の薄板伝熱板を貫通している構成(プレートフィンコイル構造)を有しており、この構成を備えたコイルエレメントがV字型に配備されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−161806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3(a)に示すような通常のプレートフィンコイル式の空気熱交換器の場合、コイルエレメントは垂直に立てて配備されることが多い。この場合、霜取り動作時に(空気熱交換器に付着した霜を液化させたときに)、液化した霜(水滴)を外部に流れ落とすことができず、水滴がコイルエレメント内に残存してしまう虞があった。斯かる水滴の残存や残存した水滴の再霜化は熱交換効率を低下させてしまうといった問題を招来する。
【0007】
そこで、特許文献1、すなわち図3(b)に示す如く、コイルエレメントをV字型に配備することが考えられる。しかしながら、このコイルエレメントのV字型配置は、据付面積を小さくすることができても、上方に広がっている不安定な形状となるため意匠的及び機能的に好ましくない。なお、コイルエレメントを逆V字型に配備したとすると、接地面積が大きくなるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点を鑑み、霜取り時に発生する水滴を効果的に排除することで霜付きを抑制して高い熱交換効率を発現し、かつ、意匠的にも機能的にも優れた空気熱交換器を備えたヒートポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明に係るヒートポンプ装置は、冷媒が循環する循環流路に、冷媒を圧縮する圧縮機と、外部の空気から冷媒への熱移動を行う空気熱交換器と、冷媒から利用側への熱移動を行う利用側熱交換器とが設けられてなるヒートポンプ装置において、前記空気熱交換器は
、内部を冷媒が流通する冷媒用プレートエレメントと、内部を空気が流通する空気用プレートエレメントとが積層されてなるプレートフィン型の熱交換器であって、前記空気用プレートエレメントには、空気が流通し且つこの空気の流れ方向に沿って下方へ傾斜するように形成された傾斜流路が設けられていることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記傾斜流路の傾斜角度は、空気用プレートエレメントに付着した霜が液化した場合に、空気用プレートエレメント外部へ排出可能とされる角度であるとよい。
好ましくは、前記空気用プレートエレメントの傾斜流路のフィン高さが、前記冷媒用プレートエレメントの直線流路のフィン高さより高いように設定されているとよい。
好ましくは、前記空気用プレートエレメントの段数が冷媒用プレートエレメントの段数より多くなるように積層されているとよい。
【0011】
好ましくは、前記冷媒用プレートエレメントを挟み込むように空気用プレートエレメントが積層されているとよい。
好ましくは、前記空気熱交換器には、当該空気熱交換器に対して強制的に空気を導入するファンが設けられているとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヒートポンプ装置は、霜が発生した場合であっても効果的に霜を排除して高い熱交換効率を発現し、かつ、意匠的にも機能的にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るヒートポンプ装置を模式的に示した図である。
【図2】(a)は、本発明に係る空気熱交換器の構造を示した斜視分解図であり、(b)は、本発明に係る空気熱交換器の外観を示した斜視図である。
【図3】(a)は、通常の空気熱交換器の構造を示した模式図であり、(b)は、従来(特許文献1)の空気熱交換器の構造を示した模式図であり、(c)は、本発明に係る空気熱交換器の構造を示した模式図である。
【図4】本発明に係る空気熱交換器の構造を示した分解図である。
【図5】本発明に係る空気熱交換器の構造を示した全体図である。
【図6】本発明に係る空気熱交換器の断面構造を模式的に示した図である。
【図7】本発明の変形例に係る冷媒用プレートエレメントの内部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るヒートポンプ装置を図を基に説明する。
<<ヒートポンプ装置>>
本発明は、ヒートポンプ装置1に備えられた空気熱交換器5に特徴的な構成を有するものである。この空気熱交換器5の説明を行う前に、まず、ヒートポンプ装置1について説明を行う。
【0015】
図1に示すように、ヒートポンプ装置1は、低温側から高温側へと熱を移動させる装置である。ヒートポンプ装置1は、圧縮機2と、利用側熱交換器3(凝縮器)と、膨張弁4と、空気熱交換器5(蒸発器)とを備え、これら圧縮機2、利用側熱交換器3、膨張弁4及び空気熱交換器5は配管6で接続されている。配管6は冷媒Rが循環する循環流路となっている。
【0016】
配管6内の冷媒Rは、空気熱交換器5において外部の空気Aから冷媒Rへの熱移動が行われることにより熱を吸収し、蒸発して圧縮機2に吸い込まれ、この圧縮機2にて高温・高圧のガスに圧縮されて利用側熱交換器3に送られる。さらに、冷媒Rは、利用側熱交換器3において冷媒Rは熱を放出して液体になり、膨張弁4で減圧されて再び空気熱交換器5に戻り、液体から気体へと相変化する。なお、冷媒Rは、低い温度でも蒸発する特性を持つ冷媒R(代替フロン、すなわちハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)など)とされている。図1のヒートポンプ装置1においては、熱交換の効率を上げるために、空気熱交換器5に強制的に空気Aを導入するファン7が設けられている。
【0017】
さて、上述したヒートポンプ装置1の空気熱交換器5として、プレートフィン型の熱交換器を採用する場合、特許文献1(図3(b))のように、コイルエレメントをV字型に
配備すると据付面積を小さくすることができても、上方に広がっている不安定な形状となり好ましくなく、一方、コイルエレメントをV字型ではなく垂直に立てて配備すると(図3(a))、霜取り時における水滴の排出がうまく行かない虞があり、結果的に熱交換効率を低下させてしまう。このように、コイルエレメントを垂直に立てて配備して、霜が発生した場合であっても、コイルエレメントに付着した霜を効果的に排除して熱交換効率を低下することを回避する必要がある。
【0018】
そこで、図1〜図6に示す霜が発生しても熱交換効率を低下させず、意匠的にも機能的にも優れたプレートフィン型の空気熱交換器5を採用する。
<<空気熱交換器>>
以下、図1〜図6を基に、本発明のヒートポンプ装置1に採用した空気熱交換器5について説明する。なお、説明にあたっては、図4での左右方向を説明での左右方向とし、図4での上下方向を説明での上下方向とする。図4における紙面の貫通方向を説明での前後方向とする。
【0019】
まず、図3(c)に示すように、本発明の空気熱交換器5は、上方に空気の上昇強制流れを発生させるファン7を備えている。このファン7の下方であって左右両側には、空気熱交換器5を構成する右側のコア部と左側のコア部とが配備されている。
右側のコア部と左側のコア部との内部構造は略同じであるため、主に右側に配備されたコア部の構造について、以下、説明を進める。
【0020】
図2(a)に示すように、ヒートポンプ装置1に採用した空気熱交換器5(右側に配備されたコア部)は、内部を冷媒Rが流通する板状のエレメントである「冷媒用プレートエレメント8」と、内部を空気Aが流通する板状のエレメントである「空気用プレートエレメント9」と有し、これらが複数段積層されて構成されている。
この空気熱交換器5においては、空気用プレートエレメント9の段数が、冷媒用プレートエレメント8の段数よりも多く設定されている。図2(b)に示すように、この実施形態では、1基の冷媒用プレートエレメント8の前後方向両側に1基ずつ空気用プレートエレメント9が配備されている。言い換えれば、冷媒用プレートエレメント8を挟み込むように空気用プレートエレメント9が配置されている。
【0021】
なお、冷媒用プレートエレメント8における冷媒Rの流れおよび空気用プレートエレメント9における空気Aの流れは、それぞれ図2に示す矢示の通りである。詳細は後述するが、空気用プレートエレメント9のフィン部10は、空気Aの流れ方向に下がる傾斜を備える。
図3(c)に示す如く、空気用プレートエレメント9のフィン部10の傾斜が下がる方向が対向するように、冷媒用プレートエレメント8と空気用プレートエレメント9とを積層したコア部がファン7下部の左右方向にそれぞれ配備される。このため、空気用プレートエレメント9は、右側配備用の右側空気用プレートエレメント9Rと左側配備用の左側空気用プレートエレメント9Lとがある。なお、図3(a)は、通常の空気熱交換器の構造を示した模式図であり、(b)は、従来(特許文献1)の空気熱交換器の構造を示した模式図である。
<<冷媒用プレートエレメント>>
図2(a)、図4に示すように、冷媒用プレートエレメント8は、アルミやステンレスで凹凸溝が形成されたフィン部10と、左右一対に配備されたサイドバー部材11と、前後一対に配備された隔離板12とを有している。フィン部10が一対のサイドバー部材11で幅方向から挟み込まれた上で、前後方向からフィン部10及びサイドバー部材11を覆うように隔離板12が取り付けられ、1基の冷媒用プレートエレメント8が構成される。
【0022】
この冷媒用プレートエレメント8は、その厚み方向が前後方向を向くように縦置きされる。縦置きされた冷媒用プレートエレメント8の下端側には、冷媒Rの入口13Rが設けられると共に、冷媒用プレートエレメント8の上端側には、エレメント内部を流れてきた冷媒Rが外部に流出する出口14Rが設けられている。
以下、冷媒用プレートエレメント8を構成する各部の詳細を説明する。
【0023】
冷媒用プレートエレメント8を構成するサイドバー部材11は、アルミやステンレスなどで形成された長尺の角棒体である。このサイドバー部材11は、長手方向が上下方向を向くと共に、左右に所定間隔だけ離れた状態で配備されている。一対のサイドバー部材11間の距離が冷媒用プレートエレメント8の幅となり、サイドバー部材11の長さが冷媒用プレートエレメント8の長さとなる。サイドバー部材11の厚み(前後方向の厚み)が、冷媒Rが流れる流路の高さとされる。
【0024】
図2(a)、図4に示すように、左右一対のサイドバー部材11間に、冷媒用プレートエレメント8向けのフィン部10が配備される。本実施形態のフィン部10は、左右一対のサイドバー部材11の間に嵌り込む一枚板(一枚のフィン部材10R)から構成されている。
フィン部材10Rは、矩形形状を呈しており、矩形の右辺及び左辺に平行に直線状の凹凸溝がプレス形成されている。この直線状の凹凸溝が直線流路18として働き、この直線流路18の下端が冷媒用プレートエレメント8の入口13Rに繋がり、直線流路18の上端が冷媒用プレートエレメント8の出口14Rに繋がっている。そのため、入口13Rから入った冷媒Rは、直線流路18の長手方向に沿って上側へ流通し、出口14Rから外部へと吐出する。
【0025】
以上述べた一対のサイドバー部材11、及びこのサイドバー部材11間で幅方向に挟まれたフィン部10は、前後一対の隔離板12により挟持されるようになっている。隔離板12もアルミやステンレスなどで形成されており矩形形状を呈している。フィン部材10Rに形成された凹凸溝に関しては、凹部の底部及び凸部の頂部が、隔離板12に接するように構成されている。
【0026】
これらサイドバー部材11、フィン部材10R、隔離板12は、ろう付けや拡散接合や溶接等により互いが固着されるようになっており、強固に一体化された冷媒用プレートエレメント8が形成される。
<<空気用プレートエレメント>>
一方、図2(a)、図4に示すように、空気用プレートエレメント9は、凹凸溝が形成されたフィン部10と、上下一対に配備されたサイドバー部材11と、前後一対に配備された隔離板12とを有している。フィン部10が一対のサイドバー部材11で上下方向から挟み込まれた上で、前後方向からフィン部10及びサイドバー部材11を覆うように隔離板12が取り付けられ、1基の空気用プレートエレメント9が構成される。
【0027】
この空気用プレートエレメント9は、その厚み方向が前後方向を向くように縦置きされる。また、空気用プレートエレメント9内部を流れてきた空気Aが外部に流出する出口14Aが対向するように、冷媒用プレートエレメント8と空気用プレートエレメント9とを積層した2つのコア部が、図3(c)に示すように設けられる。
右側に縦置きされた右側空気用プレートエレメント9Rの右端側には、熱源となる空気Aの入口13Aが設けられると共に、右側空気用プレートエレメント9Rの左端側には、エレメント内部を流れてきた空気Aが外部に流出する出口14Aが設けられている。また、左側に縦置きされた左側空気用プレートエレメント9Lの左端側には、熱源となる空気Aの入口13Aが設けられると共に、左側空気用プレートエレメント9Lの右端側には、エレメント内部を流れてきた空気Aが外部に流出する出口14Aが設けられている。
【0028】
以下、空気用プレートエレメント9を構成する各部の詳細を説明する。
図4に示す如く、本実施形態の空気用プレートエレメント9には、上下に配備された一対のサイドバー部材11が設けられている。このサイドバー部材11はアルミやステンレスなどで形成された略角状の棒体であって、長手方向が左右方向を向くように配備されている。下方に配備されるサイドバー部材11は、空気Aの入口13A側で上下に厚く、かつ、空気Aの出口14A側で上下に薄い台形形状を呈している。上方に配備されるサイドバー部材11は、空気Aの入口13A側で上下に薄く、空気Aの出口14A側で上下に厚い台形形状を呈している。その厚みの差は傾斜流路19の傾斜角度に対応している。サイドバー部材11の長さが空気用プレートエレメント9の幅長となる。サイドバー部材11の厚み(前後方向の厚み)が、空気Aが通る流路の高さとされる。
【0029】
空気用プレートエレメント9は、前述した冷媒用プレートエレメント8に積層されて、空気熱交換器5(プレートフィン熱交換器)のコア部となる。そのため、空気用プレートエレメント9の上下方向長さと冷媒用プレートエレメント8の上下方向長さは同じとされ、空気用プレートエレメント9の幅長と冷媒用プレートエレメント8の幅長とは同じとされている。
【0030】
図2(a)、図4に示すように、上下一対のサイドバー部材11間に、空気用プレートエレメント9向けのフィン部10が配備される。本実施形態のフィン部10は、上下一対のサイドバー部材11の間に嵌り込む一枚板(一枚のフィン部材10A)から構成されている。
フィン部材10Aは、矩形形状を呈しており、矩形の上辺及び下辺に平行に直線状の凹凸溝がプレス形成されている。この直線状の凹凸溝を空気用プレートエレメント9の外形(上のサイドバー部材11の上辺または下のサイドバー部材11の下辺)に対して斜めになるように、フィン部材10Aが設けられている。このようにフィン部材10Aを設けるので、フィン部材10Aが傾斜流路19として働く。この傾斜流路19の傾斜方向は、空気Aの流れに対して次第に下がるようにサイドバー部材11にフィン部材10Aが設けられる。この傾斜流路19の傾斜上端が空気用プレートエレメント9の入口13Aに繋がり、傾斜流路19の傾斜下端が空気用プレートエレメント9の出口14Aに繋がっている。
【0031】
この傾斜流路19における傾斜角度は、熱交換時にフィン部材10Aに付着した霜を水滴として自然に流れ落とすことができる角度であればよい。なお、冷媒Rが下方から上方へ流れるので、空気用プレートエレメント9の上方よりも下方の方が、霜が付きやすい。このように霜の付き具合等を考慮して傾斜角度を決定することも好ましい。
以上述べた一対のサイドバー部材11、及びこのサイドバー部材11間で挟まれたフィン部10Aは、前後一対の隔離板12により挟まれるようになっている。隔離板12もアルミやステンレスなどで形成されている。フィン部材10Aに形成された凹凸溝に関しては、凹部の底部及び凸部の頂部が隔離板12に接するように構成されている。
【0032】
これらサイドバー部材11、フィン部材10A、隔離板12は、溶接等により互いが固着されるようになっており、強固に一体化された空気用プレートエレメント9が形成される。
まとめれば、空気用プレートエレメント9は、左右方向に延びる傾斜流路19を有しているため、入口13Aから導入された空気Aは出口14Aに至るまで、凹凸溝に沿って流れることとなり、その圧力損失も非常に低いものとなる。さらに、傾斜流路19を備えるために、熱交換時にフィン部材10Aに付着した霜を水滴として自然に流れ落とすことができ、熱交換効率が低下することを回避できる。
<<コア部>>
以上述べた冷媒用プレートエレメント8及び空気用プレートエレメント9は交互に積載されて、空気熱交換器5(空気熱交換器5のコア部)が構成される。
【0033】
すなわち、図2、図4(b)に示すように、コア部を構成する冷媒用プレートエレメント8は、冷媒Rの入口13Rが下側とされ、冷媒Rの出口14Rが上側とされるように縦置きされる。その上で、この縦置きの冷媒用プレートエレメント8を挟み込むように空気用プレートエレメント9が縦置き状態で積層される。縦置きした空気用プレートエレメント9は、空気Aの入口13A及び出口14Aが左右方向を向くようになっている。
【0034】
このとき、図6に示すように、空気用プレートエレメント9の傾斜流路19の高さが、冷媒用プレートエレメント8の直線流路18の高さよりも高くなる(例えば、約2倍となる)ようにするとよい。冷媒Rに比べて空気Aの熱伝達率が低いのは周知のことであり、空気Aの流量を増やすことで、空気用プレートエレメント9側の(見かけの)熱伝達をアップさせることが可能となる。
【0035】
なお、図2に示す如く、各エレメントを積層するに際しては、冷媒用プレートエレメント8と空気用プレートエレメント9との間の隔離板12を一枚とし、この隔離板12の一方側に冷媒Rが流れ、隔離板12の他方側に空気Aが流れるようにしている。
さて、図3(c)、図5に示すように、本発明の空気熱交換器5は、上方に空気の上昇
強制流れを発生させるファン7を備えおり、このファン7の下方であって左右両側には、コア部(右側のコア部と左側のコア部)が配備されている。
【0036】
右側のコア部と左側のコア部とは、ファン7の回転軸心に対して、鏡像な配置及び構成とされている。それ故、右側のコア部を構成する空気用プレートエレメント9(右側空気用プレートエレメント9R)、左側のコア部を構成する空気用プレートエレメント9(左側空気用プレートエレメント9L)に関しては、右側空気用プレートエレメント9Rの右方向に空気Aの入口13Aが、左方向に空気Aの出口14Aが向くようになっており、左側空気用プレートエレメント9Lの左方向に空気Aの入口13Aが、右方向に空気Aの出口14Aが向くようになっている。
<<作動態様>>
次に、ヒートポンプ装置1、特に、ヒートポンプ装置1に備えられた空気熱交換器5の作動態様について述べる。
【0037】
図1のヒートポンプ装置1において、利用側熱交換器3で熱を放出し液体となった冷媒Rは、膨張弁4で減圧されて空気熱交換器5に戻るようになる。戻ってきた液体の冷媒Rは、空気熱交換器5を構成する冷媒用プレートエレメント8の入口13R(下側)から、冷媒用プレートエレメント8内の直線流路18へと導かれる。直線流路18の前半、言い換えれば冷媒用プレートエレメント8の下方側では、冷媒Rは液体状態である。この液体の冷媒R(二次側の媒体)が、冷媒用プレートエレメント8の内部の直線流路18を通ってゆく間に空気用プレートエレメント9の空気A(一次側の媒体)から熱をもらうことで、冷媒Rは徐々に気化し、冷媒用プレートエレメント8の出口14R(上側)では気化がほとんど完了する。
【0038】
一方で、液体の冷媒Rに熱を供給する熱源となる空気Aは、冷媒用プレートエレメント8に接するように配備された、右側空気用プレートエレメント9Rの入口13A(右側)および左側空気用プレートエレメント9Lの入口13A(左側)から、ファン7などの強制力により導入される。
右側空気用プレートエレメント9Rの入口13Aから入った空気Aは、傾斜流路19を左側へ流れてゆき、右側空気用プレートエレメント9Rのフィン部材10A及び隔離板12(冷媒用プレートエレメント8と共通の隔離板12)を介して冷媒Rへ熱を供給し、右側空気用プレートエレメント9Rの出口14A(左側)から外部に排出される。
【0039】
左側空気用プレートエレメント9Lの入口13Aから入った空気Aは、傾斜流路19を右側へ流れてゆき、左側空気用プレートエレメント9Lのフィン部材10A及び隔離板12(冷媒用プレートエレメント8と共通の隔離板12)を介して冷媒Rへ熱を供給し、左側空気用プレートエレメント9Lの出口14A(右側)から外部に排出される。
この場合において、右側空気用プレートエレメント9Rにおいて発生した霜や霜取り時に発生する水滴は、傾斜流路19の傾斜により出口14A側へ流れて、空気熱交換器5の中央部(右側空気用プレートエレメント9Rと左側空気用プレートエレメント9Lとの間)に滴下する。
【0040】
空気熱交換器5で気化された冷媒R、すなわち冷媒用プレートエレメント8の出口14Rから吐出された冷媒Rは、配管6を通り圧縮機2に吸い込まれ、この圧縮機2にて高温・高圧のガスに圧縮されて利用側熱交換器3に送られる。
このように、本発明では、空気Aの傾斜流動を可能とする傾斜流路19を備えた空気用プレートエレメント9を採用した空気熱交換器5を用いて、霜が発生した場合においても高効率のヒートポンプ装置1を実現している。さらに、空気用プレートエレメント9自体を傾斜させて配備するのではなく、空気用プレートエレメント9の内部に設けられるフィン部10を斜めに設けて空気用プレートエレメント9自体は傾斜させることなく配備する。このため、意匠的にも機能的にも優れた空気熱交換器を実現することができる。
<<冷媒用プレートエレメントの変形例>>
以上述べた冷媒用プレートエレメント8は、上下方向に延びた直線流路を有するものであったが、その構成はこれには限定されない。
【0041】
そこで、以下、冷媒用プレートエレメントの変形例を説明する。この変形例に係る冷媒
用プレートエレメントの内部を図7に示す。なお、上述した構成と同じ構成については同じ符号を付して、同じ説明は繰り返さない。
図7に示すように、この冷媒用プレートエレメント8の下端側には、冷媒Rの入口13Rが設けられると共に、冷媒用プレートエレメント8の上端側には、エレメント内部を流れてきた冷媒Rが外部に流出する出口14Rが設けられている。
【0042】
冷媒用プレートエレメント8の内部には、冷媒用プレートエレメント8の幅より幅狭であって蛇行するように形成された蛇行流路15が設けられている。蛇行流路15は、冷媒用プレートエレメント8の下端側に設けられた入口13Rに連通すると共に出口14Rに通じており、流路内を冷媒Rが流通する。この蛇行流路15内は、内部を流れる冷媒Rの流速を増大させる冷媒増速手段として動作する。
【0043】
サイドバー部材11の下端側には、サイドバー部材11間の距離の約半分の長さを有する閉塞バー部材17が配備されている。この閉塞バー部材17は、アルミやステンレスなどで形成された長尺の角棒体である。閉塞バー部材17は、その長手方向が左右方向を向くと共に、当該閉塞バー部材17の右端が右側のサイドバー部材11に接するように配備されている。それ故、閉塞バー部材17の左端と左側のサイドバー部材11との間に空間が生じることになるが、この空間が、冷媒Rの入口13Rとされる。すなわち、左右方向を向く閉塞バー部材17が、冷媒用プレートエレメント8の下端部の右側を閉塞することで、冷媒用プレートエレメント8の幅の約1/2の幅を有する入口13Rが形成されている。
【0044】
なお、一対のサイドバー部材11の上端間にも空間が生じているが、この空間は冷媒Rの出口14Rとされる。
図7に示すように、一対のサイドバー部材11間に、アルミやステンレスなどの板を凹凸状に折り曲げて形成されたフィン部10が配備される。本実施形態のフィン部10は、複数のフィン部材16を組み合わせることで構成されている。
【0045】
フィン部材16は、三角形乃至は平行四辺形の形状を呈している。三角形のフィン部材16は当該三角形の底辺に平行に折り曲げ加工が施されて、前記底辺に平行な凹凸溝が形成されている。平行四辺形のフィン部材16は、上辺及び下辺に平行に折り曲げ加工が施され、前記上辺及び下辺に平行な凹凸溝が形成されている。各フィン部材16の凹凸溝のピッチは同一とされている。
【0046】
図7に示す如く、冷媒用プレートエレメント8の入口13Rには、凹凸溝が上下方向を向くように形成された三角形のフィン部材16が繋がっている。さらに、この三角形のフィン部材16には、凹凸溝が左右方向を向くように形成された平行四辺形のフィン部材16が繋がっている。三角形のフィン部材16の左右幅と平行四辺形のフィン部材16の上下幅とは同じとされ、冷媒用プレートエレメント8の幅の約1/2とされている。
【0047】
上記した平行四辺形のフィン部材16は、さらに三角形のフィン部材16へとつながり、その繰り返しが冷媒用プレートエレメント8の上端側、すなわち出口14Rまで続いている。
このように、複数のフィン部材16の組み合わせにより構成される一連の凹凸溝のつながりにより、入口13Rからジクサグに出口14Rに向けて伸びる蛇行流路15が構成される。この蛇行流路15の流路幅はフィン部材16の幅で決定される。蛇行流路15の流路幅は、冷媒用プレートエレメント8の幅、言い換えれば、従来型の冷媒用プレートエレメントに備えられた上下を向く直線流路の約1/2とされている。加えて、蛇行流路15の流路長は、冷媒用プレートエレメント8の上下長さ、言い換えれば、従来型の冷媒用プレートエレメントに備えられた上下を向く直線流路の流路長の約2倍とされている。
【0048】
そのため、本実施形態の冷媒用プレートエレメント8に流入した冷媒Rは、従来型の冷媒用プレートエレメントに比べてその流速が増大するようになる。つまり、蛇行流路15は冷媒増速手段として作用することになる。
以上述べた一対のサイドバー部材11、及びこのサイドバー部材11間で幅方向に挟まれたフィン部10は、前後一対の隔離板12により挟持されるようになっている。隔離板12もアルミやステンレスなどで形成されており矩形形状を呈している。フィン部材16
に形成された凹凸溝に関しては、凹部の底部及び凸部の頂部が、隔離板12に接するように構成されている。
【0049】
これらサイドバー部材11、フィン部材16、隔離板12は、ろう付けや拡散接合や溶接等により互いが固着されるようになっており、強固に一体化された冷媒用プレートエレメント8が形成される。
このように構成された冷媒用プレートエレメント8においては、冷媒Rの流路を蛇行させることで、流路を流れる冷媒Rの流速が早くなり熱伝達特性が向上することになる。また、入口13Rから出口14Rまでの間に冷媒Rが流れる距離が長くなるため、冷媒Rと隔離板12との接触する面積が増大し、熱移動を増加させることができる。
【0050】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0051】
1 ヒートポンプ装置
2 圧縮機
3 利用側熱交換器
4 膨張弁
5 空気熱交換器
6 配管
7 ファン
8 冷媒用プレートエレメント
9 空気用プレートエレメント
9R 右側空気用プレートエレメント
9L 左側空気用プレートエレメント
10 フィン部
10R (冷媒用)フィン部材
10A (空気用)フィン部材
11 サイドバー部材
12 隔離板
13R (冷媒の)入口
13A (空気の)入口
14R (冷媒の)出口
14A (空気の)出口
15 蛇行流路
16 (変形例に係る冷媒用)フィン部材
17 閉塞バー部材
18 直線流路
19 傾斜流路
R 冷媒(二次側の媒体)
A 空気(一次側の媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が循環する循環流路に、冷媒を圧縮する圧縮機と、外部の空気から冷媒への熱移動を行う空気熱交換器と、冷媒から利用側への熱移動を行う利用側熱交換器とが設けられてなるヒートポンプ装置において、
前記空気熱交換器は、内部を冷媒が流通する冷媒用プレートエレメントと、内部を空気が流通する空気用プレートエレメントとが積層されてなるプレートフィン型の熱交換器であって、
前記空気用プレートエレメントには、空気が流通し且つこの空気の流れ方向に沿って下方へ傾斜するように形成された傾斜流路が設けられていることを特徴とするヒートポンプ装置。
【請求項2】
前記傾斜流路の傾斜角度は、空気用プレートエレメントに付着した霜が液化した場合に、空気用プレートエレメント外部へ排出可能とされる角度であることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ装置。
【請求項3】
前記空気用プレートエレメントの傾斜流路の高さが、前記冷媒用プレートエレメントの直線流路のフィン高さより高いように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートポンプ装置。
【請求項4】
前記空気用プレートエレメントの段数が冷媒用プレートエレメントの段数より多くなるように積層されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のヒートポンプ装置。
【請求項5】
前記冷媒用プレートエレメントを挟み込むように空気用プレートエレメントが積層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のヒートポンプ装置。
【請求項6】
前記空気熱交換器には、当該空気熱交換器に対して強制的に空気を導入するファンが設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のヒートポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−113480(P2013−113480A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259034(P2011−259034)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)