説明

ビール製造プロセスにおける炭酸ガスの利用方法

【課題】発酵工程で発生した炭酸ガスのうち必要な量の炭酸ガスだけを液化、気化し、液化と気化に要するエネルギを最小限に抑制する。
【解決手段】仕込工程、醸造工程、及びびん詰め又は缶詰め工程を含むビール製造プロセスにおける炭酸ガスの利用方法は、醸造工程の発酵工程で発生した炭酸ガスを圧縮して低純度炭酸ガスを得る圧縮工程13と、圧縮工程で得られた低純度炭酸ガスの一部を仕込工程24における雰囲気ガスとして使用する工程と、圧縮工程で得られた残りの低純度炭酸ガスを液化・気化して高純度炭酸ガスを生成する工程と、高純度炭酸ガスをびん詰め又は缶詰め工程29における雰囲気ガスとして使用する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール製造プロセスで発生する炭酸ガスの利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールの製造工程は、概略、仕込工程、醸造工程、びん(缶)詰め工程に分けることができる。仕込工程は、砕いた麦芽と、副原料(米、コーン、コーン、スターチ)を水と混ぜてもろみを造り、このもろみをろ過したものにホップを加えて煮沸して麦汁を造る工程である。醸造工程は、麦汁を冷却し、酵母を加えて発酵させる発酵工程、発酵工程で得られたビールを貯蔵タンクで低温貯蔵して熟成させる熟成工程、熟成したビールから酵母を取り除くろ過工程に分けられる。びん(缶)詰め工程は、ろ過されたビールをびん(又は缶)に詰める工程である。
【0003】
以上の製造工程の中で、特に発酵工程では、麦汁中の糖分がアルコールと炭酸ガスに分解され、大量の炭酸ガスが発生する。ここで発生した炭酸ガスは、後に、仕込工程、ろ過工程、びん詰め工程のそれぞれのタンク内の置換ガスとして利用し、ビールが空気(特に酸素)に接触して酸化することを防止している。
【0004】
そのために、従来、発酵工程で発生した炭酸ガスを圧縮、気化した高純度の炭酸ガスをすべてのタンクに供給して雰囲気ガスとして利用している。しかし、仕込工程で置換ガスとして利用される炭酸ガスに要求される純度と、最終製品のビール又はそれに近い状態のビールを扱うろ過工程やびん詰め工程で置換ガスとして利用される炭酸ガスに要求される純度は異なる。例えば、仕込工程では約99.5%程度の低純度の炭酸ガスで十分であるのに対して、最終製品を扱うろ過工程やびん詰め工程では約99.95%の高純度の炭酸ガスが必要である。ところが、従来、低純度の炭酸ガスで十分である仕込工程にも高純度の炭酸ガスを供給しており、過度の量の炭酸ガスを液化、気化している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、低純度の炭酸ガスで十分な仕込工程には低純度の炭酸ガスを供給し、高純度の炭酸ガスが必要なびん(缶)詰め工程に供給するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
具体的に、本発明は、仕込工程、醸造工程、及びびん詰め又は缶詰め工程を含むビール製造プロセスにおける炭酸ガスの利用方法であって、
上記醸造工程の発酵工程で発生した炭酸ガスを圧縮して低純度炭酸ガスを得る圧縮工程と、
上記圧縮工程で得られた低純度炭酸ガスの一部を仕込工程における雰囲気ガスとして使用する工程と、
上記圧縮工程で得られた残りの低純度炭酸ガスを液化・気化して高純度炭酸ガスを生成する工程と、
上記高純度炭酸ガスをびん詰め又は缶詰め工程における雰囲気ガスとして使用する工程を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発酵工程で発生した炭酸ガスのうち必要な量の炭酸ガスだけを液化、気化し、液化と気化に要するエネルギを最小限に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図1を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、ビール製造プロセスにおける炭酸ガス処理プロセス1を示す。
【0009】
図示する炭酸ガス処理プロセス1は、回収工程11、前処理工程12、圧縮工程13、液化工程14、気化工程15、貯蔵工程16を有する。
【0010】
回収工程11は、発酵工程10で発生した炭酸ガスを回収タンク21に回収して貯蔵する。
【0011】
前処理工程12は、回収タンク21から供給された炭酸ガスを水で洗浄する洗浄工程22と炭酸ガスに含まれる臭いを除去する脱臭工程23を含み、この前処理工程12で炭酸ガスに含まれる異物(例えば、硫化水素)が除去される。
【0012】
圧縮工程13は、前処理工程12で洗浄・脱臭された炭酸ガスを圧縮する。圧縮された炭酸ガスは約99.5%の純度を有する。以下、圧縮工程13で圧縮された炭酸ガスを「低純度炭酸ガス」という。
【0013】
低純度炭酸ガスの一部は、仕込工程24に供給され、仕込工程24の各種タンク(仕込釜、仕込槽、麦汁ろ過槽、煮沸槽)の雰囲気ガス(空気置換ガス)として利用される。
【0014】
残りの低純度炭酸ガスは、液化工程14でコンデンサ25によって液化される。
【0015】
好ましくは、液化された炭酸ガスは、貯蔵槽26で一時的に貯蔵され、必要量が気化工程15に供給される。
【0016】
貯蔵槽26から供給される液化炭酸ガスは、気化工程15で気化器27によって気化される。気化された炭酸ガスは約99.95%の純度を有する。以下、気化工程15で気化された炭酸ガスを「高純度炭酸ガス」という。
【0017】
このようにして製造された高純度炭酸ガスは、必要であれば、貯蔵工程16に送られて貯蔵槽28に貯蔵された後、醸造工程の発酵・熟成工程29やびん詰(缶)詰め工程30に供給される。また、必要であれば、低純度炭酸ガスとともに仕込工程24に供給され、そこでビールの酸化を防止する雰囲気ガスとして利用される。
【0018】
このように、本発明によれば、発酵工程で発生した炭酸ガスはそのすべてが液化、気化されることがなく、一部は低純度のままで仕込工程に供給される。したがって、発酵工程で発生した炭酸ガスのすべての気化、液化している従来のプロセスに比べて、液化、気化に要するエネルギ(具体的には、電力)を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る炭酸ガス利用方法(処理プロセス)を説明する図。
【符号の説明】
【0020】
1:炭酸ガス処理プロセス
11:回収工程
12:前処理工程
13:圧縮工程
14:液化工程
15:気化工程
16:貯蔵工程
21:回収タンク
22:洗浄工程
23:脱臭工程
24:仕込工程
25:コンデンサ
26:貯蔵槽
27:気化器
28:貯蔵槽
29:発酵・熟成工程
30:びん詰(缶)詰め工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕込工程、醸造工程、及びびん詰め又は缶詰め工程を含むビール製造プロセスにおける炭酸ガスの利用方法であって、
上記醸造工程の発酵工程で発生した炭酸ガスを圧縮して低純度炭酸ガスを得る圧縮工程と、
上記圧縮工程で得られた低純度炭酸ガスの一部を仕込工程における雰囲気ガスとして使用する工程と、
上記圧縮工程で得られた残りの低純度炭酸ガスを液化・気化して高純度炭酸ガスを生成する工程と、
上記高純度炭酸ガスをびん詰め又は缶詰め工程における雰囲気ガスとして使用する工程を備えたことを特徴とするビール製造プロセスにおける炭酸ガスの利用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−154760(P2010−154760A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333439(P2008−333439)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】