説明

ピッチング練習用具

【課題】室内、屋外において1人でも投球、送球練習ができるピッチング練習用具であり、リリースポイントを把握することでコントロールの安定を図り、腕の振りを速くしてフォロースルーを大きくすることができ、球威のあるボールを身につける練習用具を提供する。
【解決手段】球状体1と、前記球状体の中心に貫通させた孔に固定させると共に端部に孔を形成した心棒2と、紐状体4と、内部の長手方向に貫通孔を形成したグリップ5と、を備え、前記グリップ5内部の貫通孔に前記紐状体4を移動可能に取り付け、前記紐状体4の一端を前記心棒2の端部に形成された孔に係留するとともに手首を固定するリング状部3を形成し、前記リング状部3に手首を固定した状態で前記球状体1及びグリップ5を指で握り、投球動作を行い、前記グリップ5だけを握り最後まで振り切ることで、前記紐状体4に沿って前記グリップ5が手首側に移動可能に構成させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手首、肘、腕、肩などの上半身及び下半身を鍛えるとともに、フォロースルーを大きくすることで腕の振りを速くする練習が1人でできるピッチング練習用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、投手の投球練習においてタオルを手で握って振るなどのシャドウピッチングの方法があった。また、捕球相手がいなくても1人で投球練習ができる投球練習機具が考えられていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2006−218272号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タオルを利用したシャドウピッチングは、タオルが軽すぎるために腕をフォロースルーまで大きく振り抜くことができなかった。さらに、捕手、野手に関しては捕球する相手がいなければ投球、送球練習ができなかった。また、特許文献1によると投球の際に手首が返らないように手首の曲がりを調整することはできた。だが、フォロースルーを大きくするためには構造上に問題があった。
【0005】
本発明は、手首、肘、腕、肩などの上半身及び下半身を鍛えるとともに、フォロースルーを大きくすることで腕の振りを速くする練習が1人でできるピッチング練習用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のピッチング練習用具にあっては、球状体と、前記球状体の中心に貫通させた孔に固定させると共に端部に孔を形成した心棒と、紐状体と、内部の長手方向に貫通孔を形成したグリップと、を備え、前記グリップ内部の貫通孔に前記紐状体を移動可能に取り付け、前記紐状体の一端を前記心棒の端部に形成された孔に係留するとともに手首を固定するリング状部を形成し、前記リング状部に手首を固定した状態で前記球状体及びグリップを指で握り、投球動作を行い、前記球状体を投げた後に、前記グリップだけを握り最後まで振り切ることで、前記紐状体に沿って前記グリップが手首側に移動可能に構成させることを特徴とするピッチング練習用具。
【0007】
前記球状体には、指を入れるための溝又は孔を1又は複数箇所形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のピッチング練習用具は、実際にボールを握ったような状態で投球練習ができるため、例えば第1指、第2、第3指で球状体を支え、第4指、第5指でグリップを握ってピッチング練習をすることにより、球状体を投げた後に更にグリップを掴んでフォロースルーまで振り抜くことができる構造となっている。1度目の動作でボールリリース、2度目の動作でグリップを握りフォロースルーまでの動作を行うことができ、1つの用具で2つの投げ方が得られるという優れた用具である。2度目の動作では、グリップを握って振り抜くためにフォロースルーを大きくとることができ、フォロースルーを大きくとることで下半身に負荷がかかり、下半身が強化されるという優れた効果を発揮する。
【0009】
本発明のピッチング練習用具は、球状体及び心棒の重量の加減を素材及び形状で決定することができることにより、野球のみならずソフトボール、ハンドボール、テニス、投擲などのトレーニング用としても利用することができる。球状体を軽くする場合は球状体の素材を例えばプラスチックなどの樹脂で形成し心棒を細く短くすることができる。また、球状体を重くする場合は、例えば鉄などの素材で形成することができ、心棒を太く長くすることができる。軽くした場合は、腕を速く振り抜くことができ、また、重くした場合は、ゆっくり振りながら手首、肘、肩などのストレッチや筋力トレーニングができる。球状体及び、球状体の中心となる部分の重量を加減することで、腕を速く振るトレーニングやストレッチ、ウォーミングアップ、筋力強化などさまざまなトレーニングができるという優れた効果を発揮する。
【0010】
本発明のピッチング練習用具は、グリップのエンド側から輪のように紐をはみ出させリング状に形成し手首を通し固定することができるため、ピッチングの際に球状体が体から離れて飛んでいくということがなく、捕球相手がいなくても1人で投球、送球練習ができ、また、リング状に形成した輪の部分を肘まで通しピッチング練習をすることで、肘が高く上がり下半身を使った球威のある投球ができるという優れた効果を発揮する。
【0011】
本発明のピッチング練習用具は、球状体に穴または溝を形成することにより、球状体をボールのように握るのではなく、この穴または溝に指を挿入して支えるように軽く握ることができ球状体を握らずに支えることで、投球の際に肩や腕などの上体に力が入ることがなく、上体から力を抜いた下半身を使った投球ができ、極限までリリースを遅らせることができる。また、ボールを投げる際に高めのボールまたは低めのボール、変化球などを想定しながら投球することができ、投球のイメージトレーニングができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】 本発明の斜視図である。
【図2】 本発明の正面図である。
【図3】 本発明の背面図である。
【図4】 本発明の左側面断面図である。
【図5】 本発明の球状体の第2の実施例の正面図である。
【図6】 本発明の球状体の第3の実施例の正面図である。
【図7】 本発明の球状体の第4の実施例の正面図である。
【図8】 本発明の球状体の第4の実施例の側面断面図である。
【図9】 本発明の使用例である。
【図10】 本発明の球状体の第2の実施例の使用例である。
【図11】 本発明の球状体の第2の実施例の使用例である。
【図12】 本発明の使用時の形状の変化を表した左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明をする。
【0014】
図1から図12を参照して詳しく説明をする。ただし、本実施の形態により、本発明が限定されるものではなく、以下の実施の形態は本発明のピッチング練習用具についての一例として説明されるものであり、この説明に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明のピッチング練習用具の斜視図である。ピッチング練習用具は、心棒2を内部に嵌め込み固定している球状体1と、リング3、3′と一端側を心棒2にリング3、3′を介して係留すると共に他端側に腕を通し手首に固定するリング状部Aを有する紐状体4と、内部に紐状体4を移動可能に貫通させた孔5bを有するグリップ5から構成される。紐状体4のリング状部Aには、緩衝材6が取り付けられている。球状体1及び心棒2は強度を保つために木、鉄、鋳物、ステンレス、ゴムなどのような硬質な素材で形成することができる。また、トレーニングの内容によって心棒2の軸の太さ及び長さ、形状を変え球状体1の重量を軽くしたり重くしたりすることも可能である。
【0016】
図2は、本発明のピッチング練習用具の正面図である。球状体1、心棒2から構成される。正面図では球状体1の中心に貫通させた孔に心棒2が固定されているため、心棒2の頭の部分が球状体の表層面中心に見えるようになっている。心棒2の頭の部分は、被覆するように栓状のもの、貼り物などを使用することもできる。
【0017】
図3は、本発明のピッチング練習用具の背面図である。球状体1、紐4、グリップ5、緩衝材6から構成される。緩衝材6の役割は、球状体1が投球の際に遠心力で引っ張られた場合に手首や肘などにかかる衝撃を和らげるものであり、且つグリップの孔から球状体1、紐4が抜け落ちないための止め具としても利用できる。
【0018】
図4は、本発明のピッチング練習用具の左側面断面図である。球状体1、孔2aが一端側に設けられる心棒2、リング3、3′、紐4、貫通孔5aを有するグリップ5、球状体1の中心に貫通させた孔1a、心棒2に形成された突起部1bから構成される。球状体1の中心に貫通させた孔1aに心棒2の突起部1bを正面側に向け嵌め込む。球状体1の中心に形成する孔1aの径は正面側を大きく形成し、背面側の径は小さく形成する。背面側の孔1aの径を心棒2の突起部の径より小さく形成することで、心棒2の突起部1bが孔1aに嵌まり球状体1から外れない構造となる。これは、ピッチング練習をする際に球状体1がグリップ5から外れて飛び出さないための構造である。
【0019】
また、図4は心棒2の一端側に孔2aを形成し、孔2aにリング3、3′を介して、球状体1と紐4を繋ぐための手段としているが、孔2aにリング3だけを介して紐4を繋ぐことも可能であり、リング3、3′を使用せずに直接孔2aと紐4を繋ぐことも可能である。球状体1と紐4を繋ぐ場合、テークバックやボールリリースの時に球状体1を握った手首が前後左右に360度自由に動かせるように連結することが肝要である。例えば、孔2aにリング3、3′を2つ連結することで球状体1と紐4の間に球状体1が自由に動ける程度の余裕となる距離ができ、球状体1を持ちながら手首を自由に動かすことができる。また、リング3、3′を使用しない場合は、柔軟性の高い紐4を直接孔2aに通し球状体1と紐4を繋ぎ、紐4に柔軟性があることで前後左右に球状体1が動き、手首を自由に動かすことができる。
【0020】
また、図4の心棒2は長さ及び太さ、形状を変えることで重量の加減を行うことができ、例えば心棒2の正面側と球状体1の表面の間には空間部分1aがあり、この空間部分1aを利用して心棒2の長短を決定することで重量の加減を調整することができる。また、心棒2の背面側は球状体1からはみ出すように嵌め込み、はみ出した部分にリング3の線径より大きい径の孔2aを形成し、リング3′を介してリング3と紐4を繋ぎ球状体1とグリップ5が繋がるようにする。また、グリップ5はゴム、木、合成樹脂などで形成し移動不可にして固定することも可能である。グリップを固定する場合は、腕、手首が入るリング状部A、グリップ5、グリップ5から球状体側にはみでる紐4それぞれの長さの比率を変更しながら形成する。
【0022】
また、心棒2を球状体1の中心に固定し心棒2の重量を重くした場合、心棒2がおもりの役目を果たし、投球の際におもりが先導するような格好で球状体1が体より前へ引っ張られる状態になる。球状体1が前へ引っ張られることで同時に腕が真っ直ぐ前へ伸び、フォロースルーを大きくすることができる。
【0022】
図5は、本発明の球状体1の第2の実施例の正面図である。球状体7、球状体7に形成された穴8、8′、孔2aが一端側に設けられる心棒9から構成される。穴8、8′は正面側の表層面から背面側へ心棒9に対してほぼ直角に手の指を真っ直ぐ入れられるようにそれぞれ円柱状に形成し、穴8と8′はほぼ平行になるように位置を決め、また穴8、8′は球状体の中心線上に設けることが好ましい。穴8、8′は手の第2指と第3指を入れて投球練習をするためのものであり、指を入れて屈伸運動などをするための穴であるため、穴の断面が真円とは限らず手の指が入るような形状であれば楕円、半円など、どのような形状にも形成することが可能である。
【0023】
図6は、本発明の球状体1の第3の実施例の正面図である。球状体10、球状体10に形成された穴11、心棒12、孔2aが一端側に設けられる心棒12から構成される。穴11は正面側の表層面から背面側へ心棒12に対して直角になるように削り、穴11には手の指が数本入れられるようにだ円の柱状に形成することができる。
【0024】
図7は、本発明の球状体1の第4の実施例の正面図である。球状体13、球状体13に形成された穴14、14′、紐15から構成される。
【0025】
図8は、本発明の球状体1の第4の実施例の側面断面図である。球状体13に形成された穴14、14′、14″、紐15、係留部16から構成される。球状体13は例えば鋳物、鉄、ゴムなどの材質で成型する場合には、球状体13の正面の表層面に紐15が1本挿通できる程度の径を有する孔14、14′を形成し、球状体13の背面表層面には紐15が2本挿通できる程度の径を有する孔14″を貫通させ、図7に示したように正面から見ると孔が2つあいているように見え、図8に示したように背面から見ると孔が1つ見えるように形成することで、球状体13の係留部16が形成されることになり、係留部16に紐15が引っかかるように挿通することで、球状体13とグリップ5を繋ぐ場合にリングなどを必要とせず、簡易に球状体13とグリップ5を繋ぐことができる。
【0026】
図9は、本発明の使用例である。球状体1、グリップ5から構成される。球状体1とグリップ5を握り、リリースポイントで球状体1を離した後グリップ5だけを握り最後まで振り切る。グリップ5を握り遠心力で腕を振り切ることでフォロースルーが大きくなり、腕の振りが速くなる練習ができる。また、球状体1の重量を重くした場合は、球状体1を持ちゆっくりと指、手首、肘、腕、肩などの屈伸運動、旋回運動をすることで指、手首、肘、腕、肩、背筋などの上半身の筋力を鍛えることができ、またウォーミングアップなどにも有効である。
【0027】
図10は、本発明の球状体の第2の実施例の使用例でる。グリップ5、球状体7、穴8から構成される。球状体の穴8に第2指を入れ、穴8′には第3指を入れてグリップ5を第1指、第4指、第5指で握って投球動作を行う。図10は、テークバックからリリースポイントまでの中間の位置を示した図である。グリップを握って投球することにより、手首が折れ曲がることがなく真っ直ぐ前へ投球することができ、通常のボールを握って投球をする時よりリリースポイントを前方へ置くことができ、リリースポイントを遅くすることができる。リリースポイントが遅くなることでスイングの軌道が大きくなり下半身にウエートが乗ったピッチング練習ができるようになる。下半身にウエートが乗ることで投球に必要な土台となる下半身部分が徐々に鍛えられ、球威の増したボールが投げられるようになる。
【0028】
また、投手にとって必要不可欠な指の圧力、握力等を鍛えるために穴8、8′に指を入れて指だけを使った指で押し出すような投球をすることにより徐々に指が鍛えられ、指でボールを押さえる圧力の低下及び握力の低下による球威の衰えを軽減するトレーニングをすることができる。
【0029】
また、球状体7の穴8、8′に指を入れテークバックすると、通常のボールを握った状態よりも数十度球状体1が手首より後ろへ位置するために、通常のボールを投球する時よりも球状体1の重心をさらに肘より後ろ側に置くことができ、重心が後ろにある距離分リリースポイントを遅くすることができる。リリースポイントが遅くなることで腕を振る軌道を前方へ大きくすることができる。腕の振りの軌道が前方へ大きくなということは、テークバックからリリースポイントまでの間にボールを押す距離が長くなるということであり、ボールを前へ押す距離が長くなることで前方へ振られた腕、上体を支えるために下半身に体重が乗り、下半身に体重が乗ることで球威のあるボールを投げる投球練習ができる。
【0030】
図11は、本発明の球状体の第2の実施例の使用例である。球状体1、紐4、グリップ5、穴8から構成される。図11は、図10に続く動作であり、ボールリリース直後の図である。指が真っ直ぐ前に伸びた時が球状体1が第2指、第3指から抜ける位置であり、本発明のリリースポイントである。球状体1が指から離れる位置が通常のボールを離すリリースポイントより遅いことが特徴である。また、球状体1に形成された穴の側壁が指の側面に接触することで、球状体1が指から離れるポイントがよく分かりリリースポイントの位置を把握することができる。リリースポイントを正確に把握できるということは、コントロールの安定したボールを投げる練習に適している。
【0031】
図12は、本発明の形状の変化を表したものである。ボールを離すリリース前がa、リリース後がb、球状体1、紐4、グリップ5、手首を固定するリング状部A、グリップの移動距離Bから構成される。aは、テークバックからリリース前の球状体1を握っている状態のグリップ5の位置である。bはリリース後のグリップ5の位置である。球状体1を指から離したリリース後グリップ5を握ってフォロースルーの体勢をとることにより、遠心力により紐4がグリップ5の内部を移動して体から遠くへ離れていき、グリップ5は手首側に移動する。bは、グリップが移動した距離Bの長さの分だけ手首から球状体1までの距離が長くなり、aの状態よりbの状態が遠心力が強く働きスイングのスピートが上がりフォロースルーが大きくなる。フォロースルーが大きくなるということは腕の振りが速くなり、通常のボールを投げた時にもボールのスピードが上がるということである。
【0032】
1、球状体
2、心棒
3、3′、リング
4、紐
5、グリップ
6、緩衝材
7、球状体
8、8′、穴
9、心棒
10、球状体
11、穴
12、心棒
13、球状体
14、14′、14″、穴
15、紐
16、係留部
1a、球状体に貫通させる孔
1b、心棒に形成される突起部
2a、心棒に貫通させる孔
5a、グリップに貫通させる孔
A、手首、肘を固定するリング状部
B、グリップが紐上を移動する距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状体と、
前記球状体の中心に貫通させた孔に固定させると共に端部に孔を形成した心棒と、
紐状体と、
内部の長手方向に貫通孔を形成したグリップと、
を備え、
前記グリップ内部の貫通孔に前記紐状体を移動可能に取り付け、前記紐状体の一端を前記心棒の端部に形成された孔に係留するとともに手首を固定するリング状部を形成し、前記リング状部に手首を固定した状態で前記球状体及びグリップを指で握り、投球動作を行い、前記球状体を投げた後に、前記グリップだけを握り最後まで振り切ることで、前記紐状体に沿って前記グリップが手首側に移動可能に構成したことを特徴とするピッチング練習用具。
【請求項2】
前記球状体は表面に溝又は孔を1カ所以上形成することを特徴とする請求項1に記載のピッチング練習用具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−269112(P2010−269112A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142745(P2009−142745)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(399043417)有限会社内田販売システム (24)
【出願人】(592047663)
【出願人】(597030637)