説明

ピラゾロン化合物を含有する水溶液剤

【課題】ピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有する水溶液剤であって、長期保存した場合における不純物の形成を抑制した安定な水溶液剤を提供すること。
【解決手段】ピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物、アルコール、及び水溶液中で亜硫酸水素イオンを発生する化合物を含有する水溶液剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有する水溶液剤に関する。
【背景技術】
【0002】
下記式(I):
【化1】

(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1〜5のアルキル又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1〜5のアルキル又は1〜3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル、炭素数5〜7のシクロアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル又はフェニル、又は炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル、炭素数1〜3のアルキルメルカプト、炭素数1〜4のアルキルアミノ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、及びアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体については、医薬の用途として、脳機能正常化作用(特許文献1参照)、過酸化脂質生成抑制作用(特許文献2参照)、抗潰瘍作用(特許文献3参照)、血糖上昇抑制作用(特許文献4参照)等が知られている。
【0003】
また、上記式(I)の化合物のうち、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンを有効成分とする製剤は、2001年6月以来、脳保護剤(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)として上市されている。この「エダラボン」は、活性酸素に対して高い反応性を有することが報告されている(非特許文献1;非特許文献2参照)。このように、エダラボンは活性酸素をはじめとする種々のフリーラジカルを消去することで、細胞障害などを防ぐ働きをするフリーラジカルスカベンジャーである。
【0004】
上記式(I)の化合物は、固体状態では極めて安定であるが水溶液とした場合には、溶存酸素により容易に酸化をうけ不溶性異物を生成し、特にpH2.5以下、及びpH6.0以上で加速されることが判明し液剤の製剤化にあたり相当な困難が予想された。特に注射剤とする場合には不溶性異物の発生は生体内に悪影響を及ぼし致命的欠陥となる。この問題を解決するために、特許文献5には、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩及びピロ亜硫酸塩の中から選ばれる1種以上及びシステイン類を含有する3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾロン−5−オンの水溶液であって、かつ該溶液のpHが2.5〜6.0の範囲にあることを特徴とする注射剤が提唱されている。しかしながら、特に長期保存した場合におけるピラゾロン誘導体の3量体に代表される不純物の形成を抑制した安定な3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾロン−5−オン含有水溶液を開発することが望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特公平5−31523号公報
【特許文献2】特公平5−35128号公報
【特許文献3】特開平3−215425号公報
【特許文献4】特開平3−215426号公報
【特許文献5】特開昭63−132833号公報
【非特許文献1】Kawai, H., et al., J. Phamacol. Exp. Ther., 281(2), 921, 1997
【非特許文献2】Wu, TW. et al., Life Sci, 67(19), 2387, 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有する水溶液剤であって、長期保存した場合におけるピラゾロン誘導体の3量体に代表される不純物の形成を抑制した安定な水溶液剤を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として、式(I)で示されるピラゾロン誘導体を含有する水溶液の処方を鋭意検討した結果、式(I)で示されるピラゾロン誘導体を含有する水溶液に、水溶液中で亜硫酸水素イオンを発生する化合物を添加することによって、長期保存した場合でも不純物の形成を抑制した安定な水溶液剤を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、下記式(I):
【化2】

(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1〜5のアルキル又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1〜5のアルキル又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル、炭素数5〜7のシクロアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル又はフェニル、又は炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル、炭素数1〜3のアルキルメルカプト、炭素数1〜4のアルキルアミノ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、及びアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)
で表されるピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物、アルコール、及び水溶液中で亜硫酸水素イオンを発生する化合物を含有する水溶液剤が提供される。
【0009】
好ましくは、水溶液中で亜硫酸水素イオンを発生する化合物は、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩又はピロ亜硫酸塩である。
好ましくは、水溶液中で亜硫酸水素イオンを発生する化合物は、亜硫酸水素ナトリウムである。
【0010】
好ましくは、アルコールはエタノールである。
好ましくは、pHは3.0〜7.0である。
【0011】
好ましくは、式(I)で表されるピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物が、0.1〜20mg/ml含有されている。
好ましくは、式(I)で表されるピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物が1.5mg/ml含有されている。
【0012】
好ましくは、式(I)で示されるピラゾロン誘導体は3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである。
好ましくは、本発明の水溶液剤は、等張化剤をさらに含む。
好ましくは、等張化剤は塩化ナトリウムである。
好ましくは、本発明の水溶液剤では、不純物の形成が抑制されている。
【0013】
本発明の別の側面によれば、下記式(I):
【化3】

(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1〜5のアルキル又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1〜5のアルキル又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル、炭素数5〜7のシクロアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル又はフェニル、又は炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル、炭素数1〜3のアルキルメルカプト、炭素数1〜4のアルキルアミノ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、及びアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)
で表されるピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物;アルコール;及び亜硫酸塩、亜硫酸水素塩又はピロ亜硫酸塩の何れか1種以上、を含有する液剤が提供される。
【0014】
好ましくは、亜硫酸水素塩は、亜硫酸水素ナトリウムである。
好ましくは、アルコールはエタノールである。
好ましくは、pHは3.0〜7.0である。
【0015】
好ましくは、式(I)で表されるピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物が、0.1〜20mg/ml含有されている。
好ましくは、式(I)で表されるピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物が1.5mg/ml含有されている。
【0016】
好ましくは、式(I)で示されるピラゾロン誘導体は3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである。
好ましくは、本発明の液剤は、等張化剤をさらに含む。
好ましくは、等張化剤は塩化ナトリウムである。
好ましくは、本発明の液剤では、不純物の形成が抑制されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有する水溶液剤及び液剤であって、長期保存した場合における不純物の形成を抑制した安定な水溶液剤及び液剤が提供される。本発明の水溶液剤及び液剤は、ピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有するので、脳機能正常化、過酸化脂質生成抑制、抗潰瘍、血糖上昇抑制など様々な用途に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の水溶液剤又は液剤は、本明細書に定義する式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有する。
【0019】
本発明で用いる式(I)で示される化合物は、互変異性により、以下の式(I')又は(I”)で示される構造をもとりうる。本明細書の式(I)には、便宜上、互変異性体のうちの1つを示したが、当業者には下記の互変異性体の存在は自明である。本発明の医薬の有効成分としては、下記の式(I')又は(I”)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を用いてもよい。
【0020】
【化4】

【0021】
式(I)において、R1の定義におけるアリール基は単環性又は多環性アリール基のいずれでもよい。例えば、フェニル基、ナフチル基などのほか、メチル基、ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子、又は水酸基等の置換基で置換されたフェニル基等が挙げられる。アリール部分を有する他の置換基(アリールオキシ基など)におけるアリール部分についても同様である。
【0022】
1、R2及びR3の定義における炭素数1〜5のアルキル基は直鎖状、分枝鎖状のいずれでもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。アルキル部分を有する他の置換基(アルコキシカルボニルアルキル基)におけるアルキル部分についても同様である。
【0023】
1の定義における総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基としては、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、プロポキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基等が挙げられる。
【0024】
1及びR2の定義における炭素数3〜5のアルキレン基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、メチルトリメチレン基、エチルトリメチレン基、ジメチルトリメチレン基、メチルテトラメチレン基等が挙げられる。
【0025】
2の定義におけるアリールオキシ基としては、p−メチルフェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、p−ヒドロキシフェノキシ基等が挙げられ、アリールメルカプト基としては、フェニルメルカプト基、p−メチルフェニルメルカプト基、p−メトキシフェニルメルカプト基、p−クロロフェニルメルカプト基、p−ヒドロキシフェニルメルカプト基等が挙げられる。
【0026】
2及びR3の定義における炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。R3の定義における炭素数5〜7のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
【0027】
3の定義において、フェニル基の置換基における炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられ、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられ、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基としては、メチルメルカプト基、エチルメルカプト基、プロピルメルカプト基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基等が挙げられ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等が挙げられる。
【0028】
本発明の医薬の有効成分として好適に用いられる化合物(I)として、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3,4−ジメチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロピルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0029】
1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロポキシフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0030】
1−(4−ブロモフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−フルオロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(3−メチル−5−オキソ−2−ピラゾリン−1−イル)安息香酸;
1−(4−エトキシカルボニルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ニトロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−エチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−3−プロピル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0031】
1,3−ジフェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−フェニル−1−(p−トリル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3,4−ジメチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−イソブチル−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェノキシ−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェニルメルカプト−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0032】
3,3',4,5,6,7−ヘキサヒドロ−2−フェニル−2H−インダゾール−3−オン;
3−(エトキシカルボニルメチル)−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1,3−ジメチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−エチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ブチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキエチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−シクロヘキシル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ベンジル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0033】
1−(α−ナフチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−メチル−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0034】
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−アミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(アセトアミドフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;及び
1−(4−シアノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン
【0035】
本発明の水溶液剤又は液剤の有効成分としては、式(I)で表される遊離形態の化合物のほか、生理学的に許容される塩を用いてもよい。生理学的に許容される塩としては、塩酸、硫酸、臭化水素塩、リン酸等の鉱酸との塩;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸等の有機酸との塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニア、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のアミンとの塩が挙げられる。この他、生理的に許容されるものであれば塩の種類は特に限定されることはない。
【0036】
式(I)で表される化合物はいずれも公知の化合物であり、特公平5−31523号公報などに記載された方法により当業者が容易に合成できる。
【0037】
本発明の水溶液剤又は液剤に処方される式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物(以下、これらを総称して、ピラゾロン誘導体とも言う)の濃度は、一般的には約0.1mg/ml以上約20mg/ml以下であり、好ましくは約1mg/ml以上約20mg/ml以下である。
【0038】
本発明の水溶液剤又は液剤には、アルコールが含まれる。アルコールとしては、炭素数1から6の低級アルコールを使用することが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、ブタノールなどを使用することができ、好ましくはエタノールを使用することができる。本発明の水溶液剤又は液剤におけるアルコールの使用量は特に限定されないが、一般的には、0.05ml/ml以上0.8ml/ml以下であり、好ましくは0.05ml/ml以上0.7ml/ml以下である。
【0039】
本発明の水溶液剤には、水溶液中で亜硫酸水素イオンを発生する化合物が含まれる。水溶液中で亜硫酸水素イオンを発生する化合物は、好ましくは亜硫酸塩、亜硫酸水素塩又はピロ亜硫酸塩である。また、本発明の液剤には、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩又はピロ亜硫酸塩が含まれる。本発明で用いる亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、亜硫酸カリウム(K2SO3)、亜硫酸カルシウム(CaSO3)などが挙げられ、本発明で用いる亜硫酸水素塩としては、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)、亜硫酸水素カリウム(KHSO3)、亜硫酸水素アンモニウム(NH4SO3)などが挙げられ、ピロ亜硫酸塩としては、ピロ亜硫酸ナトリウム(Na225)、ピロ亜硫酸カリウム(K225)などが挙げられる。本発明の水溶液剤における水溶液中で亜硫酸水素イオンを発生する化合物の使用量、並びに本発明の液剤における亜硫酸塩、亜硫酸水素塩又はピロ亜硫酸塩の使用量は特に限定されないが、一般的には、0.01mg/ml以上5mg/ml以下であり、好ましくは0.1mg/ml以上2mg/ml以下であり、特に好ましくは0.1mg/ml以上1mg/ml以下である。
【0040】
本発明の水溶液剤又は液剤には、所望により、等張化剤を含めることができる。等張化剤としては、塩化ナトリウムなどを用いて等張化することができる。
【0041】
本発明の水溶液剤又は液剤の調製に用いられるpH調節剤としては、一般に注射剤のpH調節剤として用いられるものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、水酸化ナトリウムなどを使用することができる。
【0042】
本発明の水溶液剤又は液剤の液性、すなわちpHは、前記のpH調節剤を用いることで任意に調節することができる。本発明の水溶液剤又は液剤のpHは、pH3.0〜7.0が好ましく、pH3.0〜6.0がより好ましく、pH3.5〜4.5が特に好ましい。
【0043】
本発明の水溶液剤又は液剤の調製に用いられるその他の添加剤としては、一般に注射剤の添加剤として用いられているようなものであれば特に制限無く用いることができる。本発明において、好ましいその他の添加剤としては、例えば、薬事日報社2000年刊「医薬品添加物辞典」(日本医薬品添加剤協会編集)等に記載されているような医薬品添加剤等が挙げられる。これらの添加剤は、所望によって、塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等の一価のアルカリ金属塩等)として添加してもよく、また、水和物として添加してもよい。これらの添加剤は、一般に注射剤に通常用いられる割合で配合される。当業者にとっては容易なことであり、また、薬事日報社2000年刊「医薬品添加物辞典」(日本医薬品添加剤協会編集)等にも記載されている様に、これらの添加剤は使用目的に応じて、例えば、安定化剤、界面活性剤、緩衝剤、可溶化剤、抗酸化剤、消泡剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、無痛化剤、溶解剤、溶解補助剤等として使い分けることが可能である。これらの添加剤は、所望によって、2以上の成分を組み合わせて添加することができる。
【0044】
本発明の水溶液剤又は液剤の調製における添加や混合の操作は通常の製剤学的手法に従って行うことができる。例えば、ピラゾロン誘導体、アルコール、及び水溶液中で亜硫酸水素イオンを発生する化合物をそれぞれ秤量し、混合したあとで水に溶解してもよいし、ピラゾロン誘導体とアルコールを含有する水溶液に、秤量した水溶液中で亜硫酸水素イオンを発生する化合物を溶解してもよい。また、アルコール、及び水溶液中で亜硫酸水素イオンを発生する化合物を含有する水溶液に、秤量したピラゾロン誘導体を溶解してもよい。アルコール、及び水溶液中で亜硫酸水素イオンを発生する化合物を含有する水溶液とピラゾロン誘導体を含有する水溶液を各々調製しておいて、ピラゾロン誘導体の濃度が前記の濃度になるように、これらの水溶液を混合して調製することも可能である。また、その他の添加剤を含む場合も同様に調製することが可能である。
【0045】
本発明の水溶液剤又は液剤は、例えば、プラスチック容器又はガラス容器などの容器に充填して使用することができる。容器は、密封可能であり、内容物の無菌性を保つことができる容器であればどのような形態であってもよいが、一般的に注射液の充填に用いられる、輸液バッグ、シリンジ、アンプル、バイアル等の容器が好ましく、輸液バッグ、シリンジ、アンプル等の容器がより好ましい。また、これらの容器は、不溶性異物生成の有無を確認するために、透明で無着色のものが好ましいが、不透明で着色されたものであってもよい。
【0046】
本発明の水溶液剤又は液剤に含まれるピラゾロン化合物の投与経路は特に限定されず、経口的または非経口的に投与することができるが、好ましくは非経口的に投与される。
【0047】
本発明の水溶液剤又は液剤に含まれるピラゾロン化合物の投与量は、有効成分の種類や作用の程度により適宜選択することができるが、通常は、有効成分である式(I)で示される化合物の重量として一般に経口投与の場合には一日あたり0.1〜100mg/kg体重であり、非経口投与の場合には一日あたり0.1〜100mg/kg体重である。
【0048】
本発明の水溶液剤又は液剤は、脳梗塞急性期に伴う神経症候、日常生活動作障害、機能障害の改善のほか、筋萎縮性側索硬化症、抗潰瘍剤、血糖上昇抑制剤として用いることができる。
本発明の水溶液剤又は液剤の投与時期及び投与期間も特に限定されず、適宜選択することができる。例えば、本発明の水溶液剤又は液剤は、対象疾患の発症に先立って予防的に投与してもよいし、発症後に、治療、症状の改善、又は症状の悪化の防止を目的として投与してもよい。
【0049】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
(1)3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン(以下、エダラボンと称す)の合成
エタノール50ml中にアセト酢酸エチル13.0g及びフェニルヒドラジン10.8gを加え、3時間還流攪拌した。反応液を放冷後、析出した結晶をろ取し、エタノールより再結晶して、表題の化合物11.3gを無色結晶として得た。
収率 67%
融点 127.5〜128.5℃
【0051】
(2)水溶液剤の調製
亜硫酸塩として亜硫酸水素ナトリウムを添加した水溶液剤1(本発明)と、亜硫酸水素ナトリウムを添加しない水溶液剤2(比較例)とを、下記の表1に記載の処方に従って調製した。
【0052】
【表1】

【0053】
(3)水溶液剤の安定性の評価
上記(2)で調製した水溶液剤1と水溶液剤2とを60℃で4週間保存後、品質評価を行った。品質評価は、純度試験(3量体の含有量)、及び外観の観察により行った。さらに、60℃で4週間保存した水溶液を室温で1ヶ月保存した後に、結晶の析出の有無を観察した。純度試験(3量体の含有量)は、以下の方法で行った。
【0054】
試験方法
試料調製:試料を試料溶液とした。
試験条件
検出器: 紫外吸光光度計(測定波長:240nm)
カラム: 内径約4mm、長さ約15cmのステンレス管に約5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんしたもの。
カラム温度: 40℃
移動相: 水/メタノール/酢酸(100)混液(100:100:1)
流量: 毎分0.8mL
注入量: 10μL
【0055】
上記した品質評価の結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
表2の結果から分かるように、亜硫酸塩を添加した本発明の水溶液剤1では、着色が抑制された。亜硫酸塩を添加しない水溶液剤2では、3量体が生成し、60℃で4週間の保存品を室温で1ヶ月保管したところ、結晶が析出したが、亜硫酸塩を添加することにより、3量体の生成を抑制することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1〜5のアルキル又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1〜5のアルキル又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル、炭素数5〜7のシクロアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル又はフェニル、又は炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル、炭素数1〜3のアルキルメルカプト、炭素数1〜4のアルキルアミノ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、及びアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)
で表されるピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物、アルコール、及び水溶液中で亜硫酸水素イオンを発生する化合物を含有する水溶液剤。
【請求項2】
水溶液中で亜硫酸水素イオンを発生する化合物が、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩又はピロ亜硫酸塩である、請求項1に記載の水溶液剤。
【請求項3】
水溶液中で亜硫酸水素イオンを発生する化合物が、亜硫酸水素ナトリウムである、請求項1又は2に記載の水溶液剤。
【請求項4】
アルコールがエタノールである、請求項1から3の何れか1項に記載の水溶液剤。
【請求項5】
pHが3.0〜7.0である、請求項1から4の何れか1項に記載の水溶液剤。
【請求項6】
式(I)で表されるピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物が、0.1〜20mg/ml含有されている、請求項1から6の何れか1項に記載の水溶液剤。
【請求項7】
式(I)で表されるピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物が1.5mg/ml含有されている、請求項1から6の何れか1項に記載の水溶液剤。
【請求項8】
式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである、請求項1から7の何れか1項に記載の水溶液剤。
【請求項9】
等張化剤をさらに含む、請求項1から8の何れか1項に記載の水溶液剤。
【請求項10】
等張化剤が塩化ナトリウムである、請求項9に記載の水溶液剤。
【請求項11】
不純物の形成が抑制された、請求項1から10の何れか1項に記載の水溶液剤。
【請求項12】
下記式(I):
【化2】

(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1〜5のアルキル又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1〜5のアルキル又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル、炭素数5〜7のシクロアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル又はフェニル、又は炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル、炭素数1〜3のアルキルメルカプト、炭素数1〜4のアルキルアミノ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、及びアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)
で表されるピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物;アルコール;及び亜硫酸塩、亜硫酸水素塩又はピロ亜硫酸塩の何れか1種以上、を含有する液剤。
【請求項13】
亜硫酸水素塩が、亜硫酸水素ナトリウムである、請求項12に記載の液剤。
【請求項14】
アルコールがエタノールである、請求項12又は13に記載の液剤。
【請求項15】
pHが3.0〜7.0である、請求項12から14の何れか1項に記載の液剤。
【請求項16】
式(I)で表されるピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物が、0.1〜20mg/ml含有されている、請求項12から15の何れか1項に記載の液剤。
【請求項17】
式(I)で表されるピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物が1.5mg/ml含有されている、請求項12から16の何れか1項に記載の液剤。
【請求項18】
式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである、請求項12から17の何れか1項に記載の液剤。
【請求項19】
等張化剤をさらに含む、請求項12から18の何れか1項に記載の液剤。
【請求項20】
等張化剤が塩化ナトリウムである、請求項19に記載の液剤。
【請求項21】
不純物の形成が抑制された、請求項12から20の何れか1項に記載の液剤。

【公開番号】特開2008−1606(P2008−1606A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170094(P2006−170094)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000006725)三菱ウェルファーマ株式会社 (92)
【Fターム(参考)】