フィルタおよび濾過装置
【課題】ユーザーが容易かつ迅速に交換することができるフィルタ1を提供する。
【解決手段】ポリプロピレンまたはポリエチレン等からなる不織布を帯状に裁断した裁断濾材3aを網袋3b内に収容してなる網袋詰め裁断濾材3を、ポリプロピレンまたはポリエチレン等からなる不織布を上方を開放された箱状に縫製してなる箱状濾材2内に収容する。箱状濾材2内に収容されている網袋詰め裁断濾材3を、結合具4より箱状濾材2に留めておく。
【解決手段】ポリプロピレンまたはポリエチレン等からなる不織布を帯状に裁断した裁断濾材3aを網袋3b内に収容してなる網袋詰め裁断濾材3を、ポリプロピレンまたはポリエチレン等からなる不織布を上方を開放された箱状に縫製してなる箱状濾材2内に収容する。箱状濾材2内に収容されている網袋詰め裁断濾材3を、結合具4より箱状濾材2に留めておく。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水等の液体を濾過するフィルタに係り、特にオフセット印刷に使用される湿し水の濾過等に好適なフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフセット印刷に使用される湿し水を濾過するためのフィルタとしては、多くの場合、糸巻き型フィルタが用いられていた。この糸巻き型フィルタは、周壁に多数の貫通孔を開けられている芯管の外周に濾材となる糸を巻き付けたものを密閉容器内に収容し、ポンプにより芯管の内部に濾過対象液(湿し水)を送給し、圧力をかけた状態で該濾過対象液を前記貫通孔から芯管外に流出させ、さらに巻き付けられた糸間を通過させることにより、濾過を行うようになっていた。
【0003】
他方、本出願人は、フィルタ収容部を上下に複数段有し、濾過対象液を上段側のフィルタ収容部から下段側のフィルタ収容部へ圧力をかけないで自然落下させ、各段のフィルタ収容部に収容されたフィルタにより濾過対象液を濾過する濾過装置を開発した(特許文献1参照)。さらに、本出願人は、前記フィルタ収容部に収容されるフィルタとして、不織布を箱状に縫製してなる箱状濾材に、不織布を帯状に裁断した帯状濾材を網袋内に収容してなる網袋詰め裁断濾材を収容するフィルタを開発し、特許文献1に開示している。
【特許文献1】特開2007-237007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の糸巻き型フィルタにおいては、すぐ目詰まりしてしまうという問題があった。これは、濾過対象液(湿し水)に圧力をかけてフィルタを通過させようとするので、不純物等がフィルタの目に同時に全面的に入り込んでしまうためと考えられる。
【0005】
また、前記従来の糸巻き型フィルタを用いたフィルタにおいては、密閉されている容器にフィルタが収容されているため、フィルタの交換作業に非常に手間が掛かるという問題もあった。
【0006】
他方、前記本出願人が開発した、濾過対象液を上段側のフィルタ収容部から下段側のフィルタ収容部へ圧力をかけないで自然落下させて濾過する形式のフィルタにおいては、短期間のうちに目詰まりすることはない。しかしながら、前記本出願人が開発した箱状濾材に網袋詰め裁断濾材を収容する形式のフィルタにおいては、フィルタ交換時、ユーザーが箱状濾材に網袋詰め裁断濾材を一々収容してから、濾過装置のフィルタ収容部に収容しなければならないので、フィルタ交換作業が面倒であるという問題があった。
【0007】
また、一般に不織布は、目の粗いものほど硬く、箱状とした場合に形状保持性がよくなる一方、逆に目の細かいものほど柔らかく、箱状とした場合に形状保持性が悪くなる。したがって、箱状濾材の素材として、一定以上目の細かい不織布を用いることはできなかったので、濾過精度を高くする必要がある場合は、十分な濾過精度を得られないことがあるという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的の一つは、ユーザーがフィルタの交換を容易かつ迅速に行うことができるフィルタを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、濾過精度を高くすることができるフィルタを提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるフィルタは、不織布を上方を開放された箱状に縫製してなる箱状濾材と、不織布を帯状に裁断した裁断濾材を網袋内に収容してなり、前記箱状濾材内に収容された網袋詰め裁断濾材と、前記網袋詰め裁断濾材を前記箱状濾材に留めている結合具とを有してなるものである。
【0012】
また、本発明による濾過装置は、上下に複数段配置されたフィルタ収容部と、各段の前記フィルタ収容部に収容されるフィルタとを有してなり、濾過対象液を上段側の前記フィルタ収容部から下段側の前記フィルタ収容部へ落下させ、各段の前記フィルタ収容部に収容された前記フィルタにより前記濾過対象液を濾過する濾過装置において、
前記フィルタは、不織布を上方を開放された箱状に縫製してなる箱状濾材と、不織布を帯状に裁断した裁断濾材を網袋内に収容してなり、前記箱状濾材内に収容された網袋詰め裁断濾材と、前記網袋詰め裁断濾材を前記箱状濾材に留めている結合具とを有してなるものである。
【0013】
本発明においては、濾過対象液が上方から網袋詰め裁断濾材の上面に供給されるようにする。箱状濾材により、濾過対象液は側方に逃げるのを抑制されるので、大部分の濾過対象液は裁断濾材および箱状濾材の底部を通過して濾過される(多少は箱状濾材の側部を通過して側方に漏れる分もあるが、本発明の濾過装置のように、上下方向にフィルタ収容部を複数段設ければ、前記側方に漏れた分も下段側のフィルタ収容部に収容されたフィルタにより濾過される)。
【0014】
ここで、もし網袋詰め裁断濾材を、箱状濾材ではなく、硬いプラスチックのケースに収容すると、当該ケースは濾過機能を果たさない。また、使用後、網袋詰め裁断濾材と一緒に廃棄処理することもできない。
【0015】
しかるに、本発明のフィルタにおいては、不織布を箱状に縫製してなる箱状濾材に網袋詰め裁断濾材を収容するので、箱状濾材にも濾過機能を果たさせることができるとともに、使用後は、素材が同種であるため、箱状濾材を網袋詰め裁断濾材と一緒に廃棄処理することができる。
【0016】
また、裁断濾材は不織布を帯状に裁断してなるので、細かい気孔を沢山形成させ、濾過能力を向上させることができる。
【0017】
そして、本発明のフィルタにおいては、網袋詰め裁断濾材が箱状濾材に収容された状態で該箱状濾材に結合具により留められているので、フィルタ交換時、ユーザーが箱状濾材に網袋詰め裁断濾材を一々収容する作業を行う必要がなく、ユーザーがフィルタの交換を容易かつ迅速に行うことができる。
【0018】
また、箱状濾材を、目の粗い不織布を縫製してなる外側箱状濾材と、この外側箱状濾材の内側に重ねて収容された、目の細かい不織布を縫製してなる内側箱状濾材とを有してなるようにすれば、全体として箱状濾材の形状保持性を高くし、しかも濾過精度を高くすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフィルタは、
(イ)フィルタ交換時、ユーザーが箱状濾材に網袋詰め裁断濾材を一々収容する必要がなく、ユーザーがフィルタの交換を容易かつ迅速に行うことができる、
(ロ)箱状濾材を、目の粗い不織布を縫製してなる外側箱状濾材と、この外側箱状濾材の内側に重ねて収容された、目の細かい不織布を縫製してなる内側箱状濾材とを有してなるようにすれば、全体として箱状濾材の形状保持性を高くし、しかも濾過精度を高くすることができる、
等の優れた効果を得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、実施例1におけるフィルタ1の箱状濾材2を示しており、ポリプロピレンまたはポリエチレン等からなる不織布を、ポリプロピレン等からなる糸(図示せず)を用いて、上方を開放された箱状に縫製してなる。なお、前記糸は、箱状の四隅部を縫い合わせている。
【0022】
図2および3は、実施例1におけるフィルタ1全体を示しており、前記箱状濾材2内には網袋詰め裁断濾材3が収容されている。前記網袋詰め裁断濾材3は、ポリプロピレンまたはポリエチレン等からなる不織布を帯状に裁断した裁断濾材3aを網袋3b内に収容してなり、箱状濾材2内に収容された状態で、図2,3,6および7に示されるように、該箱状濾材2に複数箇所において結合具4により留められている。
【0023】
前記結合具4は、図4および5によく示されるように、全体にプラスチックからなり、可撓性を有する偏平な線状のフィラメント部4aと、このフィラメント部4aの一端部に設けられた、フィラメント部4aの幅または太さより広い幅を有する頭部4bと、前記フィラメント部4aの他端部に設けられており、自由な状態では前記フィラメント部とT字状に交差する横棒部4cとを一体的に有している。
【0024】
図8は、前記結合具4により箱状濾材2と網袋詰め裁断濾材3とを結合するために使用する結合具取付具5の先端側部分を示している。この結合具取付具5の取付具本体6に固定設置されている針7には、該針7の長さ方向に沿って横棒送出路8が設けられている。この横棒送出路8には、互いに多数つながった状態とされている結合具4の集合体(図示せず)のうちの先頭の結合具4の横棒部4cが供給されるようになっている。そして、取付具本体6に設けられた引き金(図示せず)を引く度に、横棒送出路8内後端側に嵌合された押し棒9が往復動し、結合具4の横棒部4cを針7後端側から針7先端側に向かって押し、針7外部に放出するようになっている(横棒送出路8から外部に横棒部4cを放出された結合具4は前記集合体から切り離され、集合体の中の新たに先頭になった結合具4の横棒部4cが横棒送出路6に供給される)。
【0025】
ここで、結合具4が横棒送出路8を通過している間は、図8に示されるように、横棒部4cの長さ方向と横棒送出路8ひいては針7の長さ方向とは一致している。したがって、網袋詰め裁断濾材3の上部から箱状濾材2の側面部2aへ針7を突き刺し、針7の先端部を箱状濾材2の側面部2aから突出させた状態とすると、針7とともにフィラメント部4aが網袋詰め裁断濾材3および箱状濾材2の側面部2aを貫通した状態となる。そして、この状態で結合具取付具5の引き金を引けば、横棒部4cが針7外部に放出されるので、フィラメント部4aが網袋詰め裁断濾材3および箱状濾材2の側面部2aを貫通しているとともに、横棒部4cが箱状濾材2の側面部2aに通り抜け不可能に外方から当接する一方、頭部4bが網袋詰め裁断濾材3の上部に通り抜け不可能に外方から当接した状態となり、結合具4により箱状濾材2に網袋詰め裁断濾材3が留められた状態となる。
【0026】
なお、図を分かりやすくするため、図2,3,6,7では、頭部4bおよび横棒部4cが網袋詰め裁断濾材3および箱状濾材2に対しめり込んでいないように描いているが、網袋詰め裁断濾材3および箱状濾材2は柔らかいので、実際には、頭部4bおよび横棒部4cが網袋詰め裁断濾材3および箱状濾材2に対しめり込んだ状態となる。
【0027】
また、勿論、上記とは逆に、箱状濾材2の側面部2a側から網袋詰め裁断濾材3の上部へ針7を突き刺し、針7の先端部を網袋詰め裁断濾材3の上部から突出させた状態で、結合具取付具5の引き金を引くことにより、フィラメント部4aが箱状濾材2の側面部2aおよび網袋詰め裁断濾材3を貫通し、横棒部4cが網袋詰め裁断濾材3の上部に通り抜け不可能に外方から当接する一方、頭部4bが箱状濾材2の側面部2aに通り抜け不可能に外方から当接した状態となるようにして、結合具4により箱状濾材2に網袋詰め裁断濾材3を留めてもよい。
【0028】
図9〜12は、本実施例における濾過装置10を示している。この濾過装置10はオフセット印刷に使用される湿し水を濾過するためのものである。
【0029】
濾過装置10の基台11の下部には、ポンプ12が取り付けられている。このポンプ12は、オフセット印刷の湿し水循環系において、印刷機(図示せず)で使用されて汚れた湿し水を、図9の矢印Aで示されるように吸引するようになっている。前記基台11の上部には、プラスチックからなるフィルタ容器13が上下方向に5個重ねて取り付けられている。
【0030】
本実施例においては、各フィルタ容器13は各段のフィルタ収容部14をそれぞれ構成するユニットであり、すべて同一形状かつ同一の大きさとされている(ただし、一番下のフィルタ容器13のみ、後で詳しく説明する底部の排出口15の位置および個数が他のフィルタ容器13と異なっている)。図11は、前記フィルタ容器13および後で詳しく説明する開放部カバー16をそれぞれ1個のみ取り出して示したものである。同図によく示されるように、各フィルタ容器13は、基本的に箱状をなしていて、上方および上部前方を開放されている。各フィルタ容器13の左右両側の内壁面13a,13bのうちの前端付近の部分には、直線状のカバー挿入溝17がそれぞれ上下方向に設けられている。各フィルタ容器13の底部には、排出口15が設けられている。
【0031】
一番上のフィルタ容器13の上端には上部蓋材18が取り付けられており、この上部蓋材18は一番上のフィルタ容器13の上方開放部を閉じている。前記上部蓋材18に取り付けられた4路に分岐された管19の出口側は、図12および14に示されるように、一番上のフィルタ容器13内に侵入している。前記管19の入口側は、図9および10に示されるように、弁30を介してポンプ12の吐出口に接続されている。上から2〜5番目のフィルタ容器13は、上段側のフィルタ容器13の底部で下段側のフィルタ容器13の上部開放部が閉じられるようにして、重ねられている。このようにして上部蓋材18が一番上のフィルタ容器13に取り付けられるとともに、5個のフィルタ容器13が上下方向に重ねられることにより、上下方向に5段、フィルタ収容部14が形成されており、かつ各段のフィルタ収容部14に横方向(本実施例では、特に前方)に開放された横方向開放部20(図9,12,13参照)が形成されている。
【0032】
上から1〜4段目のフィルタ収容部14(上から1〜4番目のフィルタ容器13)の底部には、図12〜14に示されるように、それぞれ前記排出口15が4つずつ設けられており、上段側のフィルタ収容部14内の空間と下段側のフィルタ収容部14内の空間とを連続させている。これらの排出口15は、上段側のフィルタ収容部14から下段側のフィルタ収容部14へ水を導く流路を構成している。最下段のフィルタ収容部14(一番下のフィルタ容器13)の底部には、図13に示されるように、1つの排出口15が設けられており、この排出口15は管19を介して湿し水循環系のうちの、濾過後の水を供給すべき部分(図示せず)に接続されている。
【0033】
各段のフィルタ収容部14の底部上には、フィルタ載置材21が載置されている。このフィルタ載置材21は、それぞれ全体に偏平な水平部21aと立ち上がり部21bとを有しており、前記立ち上がり部21bは水平部21aの後端部から直角上方に立ち上がっている。前記水平部21aおよび立ち上がり部21bは、それぞれ、多数の小さな開口を有する格子状部分22と、この格子状部分22の一方の面に設けられた多数の脚部23とを一体的に有している。前記水平部21aの脚部23は、該水平部21aの下方に突出して各段のフィルタ収容部14(フィルタ容器13)の底面に接し、該水平部21aの格子状部分22を前記底面から離間させている。他方、前記立ち上がり部21bの脚部23は、該立ち上がり部21bの格子状部分22から後方に突出している。
【0034】
図12〜14に示されるように、各段のフィルタ収容部14内には、フィルタ載置材21上に載置された状態で、フィルタ1が2つずつ横に並べて収容されている。なお、管19の4路に分岐された出口および上から第1〜4段目のフィルタ収容部14に設けられた4つの排出口15は、それらの2つずつが各フィルタ1の網袋詰め裁断濾材3上にそれぞれ位置するように配置されている。
【0035】
前記開放部カバー16は、図11によく示されるように、不透明なプラスチック製の下側板16aと、透明なプラスチック製の上側板16bとを有してなり、上側板16bは蝶番24により、下側板16aの上端に幅方向に延びる軸回りに回動可能に取り付けられている。前記下側板16aは、幅方向両端部をフィルタ収容部14のカバー挿入溝17に抜き出し可能に挿入されるようになっている。前記上側板16bには、止め具25が取り付けられている。
【0036】
この濾過装置10においては、印刷機で使用されて汚れた湿し水が図9の矢印Aのようにポンプ12で吸引され、該ポンプ12から吐出されて、弁30を介して上方に送られ、管19の出口から最上段のフィルタ収容部14内に図12および14の矢印のように自然落下する。そして、最上段のフィルタ収容部14内に収容されたフィルタ1により濾過された後、該フィルタ収容部14の底部の排出口15を経て、上から2段目のフィルタ収容部14内に自然落下し、該フィルタ収容部14内に収容されたフィルタ1により濾過される。以後、同様にして使用後の湿し水が順次上段側のフィルタ収容部14から排出口15を経て下段側のフィルタ収容部14に図12〜14の矢印のように自然落下して濾過が行われる。最下段のフィルタ収容部14の底部の排出口15に達した湿し水は、管19を経て、図9の矢印Bのように、湿し水循環系のうちの、濾過後の水を供給すべき部分に送られる。
【0037】
次に、フィルタ1の作用効果についてより詳しく説明する。前述のように濾過すべき湿し水が上方から各段のフィルタ収容部14に落下することにより、湿し水が網袋詰め裁断濾材3の上面に供給される。そして、この湿し水は、箱状濾材2により側方に逃げるのを抑制されるので、その大部分は裁断濾材3aおよび箱状濾材2の底部を通過して濾過される。なお、箱状濾材2の側面部2aを通過して側方に漏れる湿し水も多少あるが、この側方に漏れた分も下段のフィルタ収容部14に収容されたフィルタ1により濾過される。
【0038】
ここで、もし網袋詰め裁断濾材3を、箱状濾材2ではなく、硬いプラスチックのケースに収容すると、当該ケースは濾過機能を果たさない。また、使用後、網袋詰め裁断濾材3と一緒に廃棄処理することもできない。
【0039】
しかるに、本発明のフィルタ1においては、不織布を箱状に縫製してなる箱状濾材2に網袋詰め裁断濾材3を収容するので、箱状濾材2にも濾過機能を果たさせることができるとともに、使用後は、素材が同種であるため、網袋詰め裁断濾材3と一緒に廃棄処理することができる。
【0040】
また、裁断濾材3aは不織布を帯状に裁断してなるので、細かい気孔を沢山形成させ、濾過能力を向上させることができる。
【0041】
そして、本発明のフィルタ1においては、網袋詰め裁断濾材3が箱状濾材2に収容された状態で該箱状濾材2に結合具4により留められているので、フィルタ1交換時、ユーザーが箱状濾材2に網袋詰め裁断濾材3を一々収容する必要がなく、ユーザーがフィルタ1の交換を容易かつ迅速に行うことができる。
【0042】
また、本実施例では、前述のようにして結合具4により箱状濾材2に網袋詰め裁断濾材8が留められるので、簡単・迅速かつ低コストにて、箱状濾材2に網袋詰め裁断濾材3を留めることができる。
【実施例2】
【0043】
図15は、本発明の実施例2のフィルタ1を示している。本実施例においては、箱状濾材2は、目の粗い不織布を縫製してなる外側箱状濾材26と、この外側箱状濾材26の内側に重ねて収容された、目の細かい不織布を縫製してなる内側箱状濾材27とからなる。網袋詰め裁断濾材3は内側箱状濾材27および外側箱状濾材26に前記実施例1と同様に結合具4(図示せず)により留められている(本実施例の場合、結合具4のフィラメント部4aは網袋詰め裁断濾材3、内側箱状濾材27の側面部27aおよび外側箱状濾材26の側面部26aを貫通している)。他の構成は、前記実施例1の場合と同様である。
【0044】
本実施例においては、外側箱状濾材26は目が粗いので、硬く、形状保持性をよくすることができる。他方、内側箱状濾材27は目が細かいので、濾過精度を高くすることができる。したがって、全体として箱状濾材2の形状保持性を高くし、しかも濾過精度を高くすることができる。なお、本実施例では、外側箱状濾材26内に内側箱状濾材27を1つのみ収容し、全体として箱状濾材を2重構造としているが、外側箱状濾材内に内側箱状濾材を重ねて2つ以上収容し、全体として箱状濾材を3重以上の多重構造としてもよい。
【0045】
また、前記各実施例は、本発明をオフセット印刷に使用される湿し水を濾過するためのフィルタおよび濾過装置に適用した例であるが、本発明のフィルタ1は他の用途のフィルタおよび濾過装置にも広く適用できるものである。また、濾過対象液は水のみならず、他の種の液体であてもよい。
【0046】
また、前記各実施例では、1つの箱状濾材2内に1つの網袋詰め裁断濾材3を収容しているが、1つの箱状濾材内に2以上の網袋詰め裁断濾材を収容してもよい。さらにその場合、1つの箱状濾材内に2以上の網袋詰め裁断濾材を上下に積層して収容してもよいし、1つの箱状濾材内に2以上の網袋詰め裁断濾材を横に並べて収容してもよい(1つの箱状濾材内に2以上の網袋詰め裁断濾材を収容する場合は、一部の網袋詰め裁断濾材のみを結合具で箱状濾材に留め、この結合具で箱状濾材に留められた網袋詰め裁断濾材により、結合具で留められていない網袋詰め裁断濾材も箱状濾材に対して拘束された状態となるようにしてもよい)。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように本発明によるフィルタは、水等の液体を濾過するフィルタとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例1におけるフィルタの箱状濾材を示す斜視図である。
【図2】実施例1におけるフィルタ全体を示す平面図である。
【図3】図2のIII−III線における断面図である。
【図4】実施例1におけるフィルタの結合具を示す正面図である。
【図5】前記結合具を示す側面図である。
【図6】実施例1のフィルタにおける結合具による箱状濾材と網袋詰め裁断濾材との結合部付近を示す平面図である。
【図7】図6のVII−VII線における断面図である。
【図8】前記結合具で箱状濾材と網袋詰め裁断濾材とを結合するために使用する結合具取付具の先端側部分を示す側面図である。
【図9】実施例1における濾過装置を示す正面図である。
【図10】前記濾過装置を示す側面図である。
【図11】前記濾過装置におけるフィルタ容器を示す斜視図である。
【図12】前記濾過装置における上段側のフィルタ収容部を示す側断面図である。
【図13】前記濾過装置における下段側のフィルタ収容部を示す側断面図である。
【図14】前記濾過装置における上段側のフィルタ収容部を示す正面断面図である。
【図15】本発明の実施例2におけるフィルタを示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 フィルタ
2 箱状濾材
2a 箱状濾材の側面部
3 網袋詰め裁断濾材
3a 裁断濾材
3b 網袋
4 結合具
4a フィラメント部
4b 頭部
4c 横棒部
10 濾過装置
14 フィルタ収容部
26 外側箱状濾材
27 内側箱状濾材
【技術分野】
【0001】
本発明は、水等の液体を濾過するフィルタに係り、特にオフセット印刷に使用される湿し水の濾過等に好適なフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフセット印刷に使用される湿し水を濾過するためのフィルタとしては、多くの場合、糸巻き型フィルタが用いられていた。この糸巻き型フィルタは、周壁に多数の貫通孔を開けられている芯管の外周に濾材となる糸を巻き付けたものを密閉容器内に収容し、ポンプにより芯管の内部に濾過対象液(湿し水)を送給し、圧力をかけた状態で該濾過対象液を前記貫通孔から芯管外に流出させ、さらに巻き付けられた糸間を通過させることにより、濾過を行うようになっていた。
【0003】
他方、本出願人は、フィルタ収容部を上下に複数段有し、濾過対象液を上段側のフィルタ収容部から下段側のフィルタ収容部へ圧力をかけないで自然落下させ、各段のフィルタ収容部に収容されたフィルタにより濾過対象液を濾過する濾過装置を開発した(特許文献1参照)。さらに、本出願人は、前記フィルタ収容部に収容されるフィルタとして、不織布を箱状に縫製してなる箱状濾材に、不織布を帯状に裁断した帯状濾材を網袋内に収容してなる網袋詰め裁断濾材を収容するフィルタを開発し、特許文献1に開示している。
【特許文献1】特開2007-237007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の糸巻き型フィルタにおいては、すぐ目詰まりしてしまうという問題があった。これは、濾過対象液(湿し水)に圧力をかけてフィルタを通過させようとするので、不純物等がフィルタの目に同時に全面的に入り込んでしまうためと考えられる。
【0005】
また、前記従来の糸巻き型フィルタを用いたフィルタにおいては、密閉されている容器にフィルタが収容されているため、フィルタの交換作業に非常に手間が掛かるという問題もあった。
【0006】
他方、前記本出願人が開発した、濾過対象液を上段側のフィルタ収容部から下段側のフィルタ収容部へ圧力をかけないで自然落下させて濾過する形式のフィルタにおいては、短期間のうちに目詰まりすることはない。しかしながら、前記本出願人が開発した箱状濾材に網袋詰め裁断濾材を収容する形式のフィルタにおいては、フィルタ交換時、ユーザーが箱状濾材に網袋詰め裁断濾材を一々収容してから、濾過装置のフィルタ収容部に収容しなければならないので、フィルタ交換作業が面倒であるという問題があった。
【0007】
また、一般に不織布は、目の粗いものほど硬く、箱状とした場合に形状保持性がよくなる一方、逆に目の細かいものほど柔らかく、箱状とした場合に形状保持性が悪くなる。したがって、箱状濾材の素材として、一定以上目の細かい不織布を用いることはできなかったので、濾過精度を高くする必要がある場合は、十分な濾過精度を得られないことがあるという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的の一つは、ユーザーがフィルタの交換を容易かつ迅速に行うことができるフィルタを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、濾過精度を高くすることができるフィルタを提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるフィルタは、不織布を上方を開放された箱状に縫製してなる箱状濾材と、不織布を帯状に裁断した裁断濾材を網袋内に収容してなり、前記箱状濾材内に収容された網袋詰め裁断濾材と、前記網袋詰め裁断濾材を前記箱状濾材に留めている結合具とを有してなるものである。
【0012】
また、本発明による濾過装置は、上下に複数段配置されたフィルタ収容部と、各段の前記フィルタ収容部に収容されるフィルタとを有してなり、濾過対象液を上段側の前記フィルタ収容部から下段側の前記フィルタ収容部へ落下させ、各段の前記フィルタ収容部に収容された前記フィルタにより前記濾過対象液を濾過する濾過装置において、
前記フィルタは、不織布を上方を開放された箱状に縫製してなる箱状濾材と、不織布を帯状に裁断した裁断濾材を網袋内に収容してなり、前記箱状濾材内に収容された網袋詰め裁断濾材と、前記網袋詰め裁断濾材を前記箱状濾材に留めている結合具とを有してなるものである。
【0013】
本発明においては、濾過対象液が上方から網袋詰め裁断濾材の上面に供給されるようにする。箱状濾材により、濾過対象液は側方に逃げるのを抑制されるので、大部分の濾過対象液は裁断濾材および箱状濾材の底部を通過して濾過される(多少は箱状濾材の側部を通過して側方に漏れる分もあるが、本発明の濾過装置のように、上下方向にフィルタ収容部を複数段設ければ、前記側方に漏れた分も下段側のフィルタ収容部に収容されたフィルタにより濾過される)。
【0014】
ここで、もし網袋詰め裁断濾材を、箱状濾材ではなく、硬いプラスチックのケースに収容すると、当該ケースは濾過機能を果たさない。また、使用後、網袋詰め裁断濾材と一緒に廃棄処理することもできない。
【0015】
しかるに、本発明のフィルタにおいては、不織布を箱状に縫製してなる箱状濾材に網袋詰め裁断濾材を収容するので、箱状濾材にも濾過機能を果たさせることができるとともに、使用後は、素材が同種であるため、箱状濾材を網袋詰め裁断濾材と一緒に廃棄処理することができる。
【0016】
また、裁断濾材は不織布を帯状に裁断してなるので、細かい気孔を沢山形成させ、濾過能力を向上させることができる。
【0017】
そして、本発明のフィルタにおいては、網袋詰め裁断濾材が箱状濾材に収容された状態で該箱状濾材に結合具により留められているので、フィルタ交換時、ユーザーが箱状濾材に網袋詰め裁断濾材を一々収容する作業を行う必要がなく、ユーザーがフィルタの交換を容易かつ迅速に行うことができる。
【0018】
また、箱状濾材を、目の粗い不織布を縫製してなる外側箱状濾材と、この外側箱状濾材の内側に重ねて収容された、目の細かい不織布を縫製してなる内側箱状濾材とを有してなるようにすれば、全体として箱状濾材の形状保持性を高くし、しかも濾過精度を高くすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフィルタは、
(イ)フィルタ交換時、ユーザーが箱状濾材に網袋詰め裁断濾材を一々収容する必要がなく、ユーザーがフィルタの交換を容易かつ迅速に行うことができる、
(ロ)箱状濾材を、目の粗い不織布を縫製してなる外側箱状濾材と、この外側箱状濾材の内側に重ねて収容された、目の細かい不織布を縫製してなる内側箱状濾材とを有してなるようにすれば、全体として箱状濾材の形状保持性を高くし、しかも濾過精度を高くすることができる、
等の優れた効果を得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、実施例1におけるフィルタ1の箱状濾材2を示しており、ポリプロピレンまたはポリエチレン等からなる不織布を、ポリプロピレン等からなる糸(図示せず)を用いて、上方を開放された箱状に縫製してなる。なお、前記糸は、箱状の四隅部を縫い合わせている。
【0022】
図2および3は、実施例1におけるフィルタ1全体を示しており、前記箱状濾材2内には網袋詰め裁断濾材3が収容されている。前記網袋詰め裁断濾材3は、ポリプロピレンまたはポリエチレン等からなる不織布を帯状に裁断した裁断濾材3aを網袋3b内に収容してなり、箱状濾材2内に収容された状態で、図2,3,6および7に示されるように、該箱状濾材2に複数箇所において結合具4により留められている。
【0023】
前記結合具4は、図4および5によく示されるように、全体にプラスチックからなり、可撓性を有する偏平な線状のフィラメント部4aと、このフィラメント部4aの一端部に設けられた、フィラメント部4aの幅または太さより広い幅を有する頭部4bと、前記フィラメント部4aの他端部に設けられており、自由な状態では前記フィラメント部とT字状に交差する横棒部4cとを一体的に有している。
【0024】
図8は、前記結合具4により箱状濾材2と網袋詰め裁断濾材3とを結合するために使用する結合具取付具5の先端側部分を示している。この結合具取付具5の取付具本体6に固定設置されている針7には、該針7の長さ方向に沿って横棒送出路8が設けられている。この横棒送出路8には、互いに多数つながった状態とされている結合具4の集合体(図示せず)のうちの先頭の結合具4の横棒部4cが供給されるようになっている。そして、取付具本体6に設けられた引き金(図示せず)を引く度に、横棒送出路8内後端側に嵌合された押し棒9が往復動し、結合具4の横棒部4cを針7後端側から針7先端側に向かって押し、針7外部に放出するようになっている(横棒送出路8から外部に横棒部4cを放出された結合具4は前記集合体から切り離され、集合体の中の新たに先頭になった結合具4の横棒部4cが横棒送出路6に供給される)。
【0025】
ここで、結合具4が横棒送出路8を通過している間は、図8に示されるように、横棒部4cの長さ方向と横棒送出路8ひいては針7の長さ方向とは一致している。したがって、網袋詰め裁断濾材3の上部から箱状濾材2の側面部2aへ針7を突き刺し、針7の先端部を箱状濾材2の側面部2aから突出させた状態とすると、針7とともにフィラメント部4aが網袋詰め裁断濾材3および箱状濾材2の側面部2aを貫通した状態となる。そして、この状態で結合具取付具5の引き金を引けば、横棒部4cが針7外部に放出されるので、フィラメント部4aが網袋詰め裁断濾材3および箱状濾材2の側面部2aを貫通しているとともに、横棒部4cが箱状濾材2の側面部2aに通り抜け不可能に外方から当接する一方、頭部4bが網袋詰め裁断濾材3の上部に通り抜け不可能に外方から当接した状態となり、結合具4により箱状濾材2に網袋詰め裁断濾材3が留められた状態となる。
【0026】
なお、図を分かりやすくするため、図2,3,6,7では、頭部4bおよび横棒部4cが網袋詰め裁断濾材3および箱状濾材2に対しめり込んでいないように描いているが、網袋詰め裁断濾材3および箱状濾材2は柔らかいので、実際には、頭部4bおよび横棒部4cが網袋詰め裁断濾材3および箱状濾材2に対しめり込んだ状態となる。
【0027】
また、勿論、上記とは逆に、箱状濾材2の側面部2a側から網袋詰め裁断濾材3の上部へ針7を突き刺し、針7の先端部を網袋詰め裁断濾材3の上部から突出させた状態で、結合具取付具5の引き金を引くことにより、フィラメント部4aが箱状濾材2の側面部2aおよび網袋詰め裁断濾材3を貫通し、横棒部4cが網袋詰め裁断濾材3の上部に通り抜け不可能に外方から当接する一方、頭部4bが箱状濾材2の側面部2aに通り抜け不可能に外方から当接した状態となるようにして、結合具4により箱状濾材2に網袋詰め裁断濾材3を留めてもよい。
【0028】
図9〜12は、本実施例における濾過装置10を示している。この濾過装置10はオフセット印刷に使用される湿し水を濾過するためのものである。
【0029】
濾過装置10の基台11の下部には、ポンプ12が取り付けられている。このポンプ12は、オフセット印刷の湿し水循環系において、印刷機(図示せず)で使用されて汚れた湿し水を、図9の矢印Aで示されるように吸引するようになっている。前記基台11の上部には、プラスチックからなるフィルタ容器13が上下方向に5個重ねて取り付けられている。
【0030】
本実施例においては、各フィルタ容器13は各段のフィルタ収容部14をそれぞれ構成するユニットであり、すべて同一形状かつ同一の大きさとされている(ただし、一番下のフィルタ容器13のみ、後で詳しく説明する底部の排出口15の位置および個数が他のフィルタ容器13と異なっている)。図11は、前記フィルタ容器13および後で詳しく説明する開放部カバー16をそれぞれ1個のみ取り出して示したものである。同図によく示されるように、各フィルタ容器13は、基本的に箱状をなしていて、上方および上部前方を開放されている。各フィルタ容器13の左右両側の内壁面13a,13bのうちの前端付近の部分には、直線状のカバー挿入溝17がそれぞれ上下方向に設けられている。各フィルタ容器13の底部には、排出口15が設けられている。
【0031】
一番上のフィルタ容器13の上端には上部蓋材18が取り付けられており、この上部蓋材18は一番上のフィルタ容器13の上方開放部を閉じている。前記上部蓋材18に取り付けられた4路に分岐された管19の出口側は、図12および14に示されるように、一番上のフィルタ容器13内に侵入している。前記管19の入口側は、図9および10に示されるように、弁30を介してポンプ12の吐出口に接続されている。上から2〜5番目のフィルタ容器13は、上段側のフィルタ容器13の底部で下段側のフィルタ容器13の上部開放部が閉じられるようにして、重ねられている。このようにして上部蓋材18が一番上のフィルタ容器13に取り付けられるとともに、5個のフィルタ容器13が上下方向に重ねられることにより、上下方向に5段、フィルタ収容部14が形成されており、かつ各段のフィルタ収容部14に横方向(本実施例では、特に前方)に開放された横方向開放部20(図9,12,13参照)が形成されている。
【0032】
上から1〜4段目のフィルタ収容部14(上から1〜4番目のフィルタ容器13)の底部には、図12〜14に示されるように、それぞれ前記排出口15が4つずつ設けられており、上段側のフィルタ収容部14内の空間と下段側のフィルタ収容部14内の空間とを連続させている。これらの排出口15は、上段側のフィルタ収容部14から下段側のフィルタ収容部14へ水を導く流路を構成している。最下段のフィルタ収容部14(一番下のフィルタ容器13)の底部には、図13に示されるように、1つの排出口15が設けられており、この排出口15は管19を介して湿し水循環系のうちの、濾過後の水を供給すべき部分(図示せず)に接続されている。
【0033】
各段のフィルタ収容部14の底部上には、フィルタ載置材21が載置されている。このフィルタ載置材21は、それぞれ全体に偏平な水平部21aと立ち上がり部21bとを有しており、前記立ち上がり部21bは水平部21aの後端部から直角上方に立ち上がっている。前記水平部21aおよび立ち上がり部21bは、それぞれ、多数の小さな開口を有する格子状部分22と、この格子状部分22の一方の面に設けられた多数の脚部23とを一体的に有している。前記水平部21aの脚部23は、該水平部21aの下方に突出して各段のフィルタ収容部14(フィルタ容器13)の底面に接し、該水平部21aの格子状部分22を前記底面から離間させている。他方、前記立ち上がり部21bの脚部23は、該立ち上がり部21bの格子状部分22から後方に突出している。
【0034】
図12〜14に示されるように、各段のフィルタ収容部14内には、フィルタ載置材21上に載置された状態で、フィルタ1が2つずつ横に並べて収容されている。なお、管19の4路に分岐された出口および上から第1〜4段目のフィルタ収容部14に設けられた4つの排出口15は、それらの2つずつが各フィルタ1の網袋詰め裁断濾材3上にそれぞれ位置するように配置されている。
【0035】
前記開放部カバー16は、図11によく示されるように、不透明なプラスチック製の下側板16aと、透明なプラスチック製の上側板16bとを有してなり、上側板16bは蝶番24により、下側板16aの上端に幅方向に延びる軸回りに回動可能に取り付けられている。前記下側板16aは、幅方向両端部をフィルタ収容部14のカバー挿入溝17に抜き出し可能に挿入されるようになっている。前記上側板16bには、止め具25が取り付けられている。
【0036】
この濾過装置10においては、印刷機で使用されて汚れた湿し水が図9の矢印Aのようにポンプ12で吸引され、該ポンプ12から吐出されて、弁30を介して上方に送られ、管19の出口から最上段のフィルタ収容部14内に図12および14の矢印のように自然落下する。そして、最上段のフィルタ収容部14内に収容されたフィルタ1により濾過された後、該フィルタ収容部14の底部の排出口15を経て、上から2段目のフィルタ収容部14内に自然落下し、該フィルタ収容部14内に収容されたフィルタ1により濾過される。以後、同様にして使用後の湿し水が順次上段側のフィルタ収容部14から排出口15を経て下段側のフィルタ収容部14に図12〜14の矢印のように自然落下して濾過が行われる。最下段のフィルタ収容部14の底部の排出口15に達した湿し水は、管19を経て、図9の矢印Bのように、湿し水循環系のうちの、濾過後の水を供給すべき部分に送られる。
【0037】
次に、フィルタ1の作用効果についてより詳しく説明する。前述のように濾過すべき湿し水が上方から各段のフィルタ収容部14に落下することにより、湿し水が網袋詰め裁断濾材3の上面に供給される。そして、この湿し水は、箱状濾材2により側方に逃げるのを抑制されるので、その大部分は裁断濾材3aおよび箱状濾材2の底部を通過して濾過される。なお、箱状濾材2の側面部2aを通過して側方に漏れる湿し水も多少あるが、この側方に漏れた分も下段のフィルタ収容部14に収容されたフィルタ1により濾過される。
【0038】
ここで、もし網袋詰め裁断濾材3を、箱状濾材2ではなく、硬いプラスチックのケースに収容すると、当該ケースは濾過機能を果たさない。また、使用後、網袋詰め裁断濾材3と一緒に廃棄処理することもできない。
【0039】
しかるに、本発明のフィルタ1においては、不織布を箱状に縫製してなる箱状濾材2に網袋詰め裁断濾材3を収容するので、箱状濾材2にも濾過機能を果たさせることができるとともに、使用後は、素材が同種であるため、網袋詰め裁断濾材3と一緒に廃棄処理することができる。
【0040】
また、裁断濾材3aは不織布を帯状に裁断してなるので、細かい気孔を沢山形成させ、濾過能力を向上させることができる。
【0041】
そして、本発明のフィルタ1においては、網袋詰め裁断濾材3が箱状濾材2に収容された状態で該箱状濾材2に結合具4により留められているので、フィルタ1交換時、ユーザーが箱状濾材2に網袋詰め裁断濾材3を一々収容する必要がなく、ユーザーがフィルタ1の交換を容易かつ迅速に行うことができる。
【0042】
また、本実施例では、前述のようにして結合具4により箱状濾材2に網袋詰め裁断濾材8が留められるので、簡単・迅速かつ低コストにて、箱状濾材2に網袋詰め裁断濾材3を留めることができる。
【実施例2】
【0043】
図15は、本発明の実施例2のフィルタ1を示している。本実施例においては、箱状濾材2は、目の粗い不織布を縫製してなる外側箱状濾材26と、この外側箱状濾材26の内側に重ねて収容された、目の細かい不織布を縫製してなる内側箱状濾材27とからなる。網袋詰め裁断濾材3は内側箱状濾材27および外側箱状濾材26に前記実施例1と同様に結合具4(図示せず)により留められている(本実施例の場合、結合具4のフィラメント部4aは網袋詰め裁断濾材3、内側箱状濾材27の側面部27aおよび外側箱状濾材26の側面部26aを貫通している)。他の構成は、前記実施例1の場合と同様である。
【0044】
本実施例においては、外側箱状濾材26は目が粗いので、硬く、形状保持性をよくすることができる。他方、内側箱状濾材27は目が細かいので、濾過精度を高くすることができる。したがって、全体として箱状濾材2の形状保持性を高くし、しかも濾過精度を高くすることができる。なお、本実施例では、外側箱状濾材26内に内側箱状濾材27を1つのみ収容し、全体として箱状濾材を2重構造としているが、外側箱状濾材内に内側箱状濾材を重ねて2つ以上収容し、全体として箱状濾材を3重以上の多重構造としてもよい。
【0045】
また、前記各実施例は、本発明をオフセット印刷に使用される湿し水を濾過するためのフィルタおよび濾過装置に適用した例であるが、本発明のフィルタ1は他の用途のフィルタおよび濾過装置にも広く適用できるものである。また、濾過対象液は水のみならず、他の種の液体であてもよい。
【0046】
また、前記各実施例では、1つの箱状濾材2内に1つの網袋詰め裁断濾材3を収容しているが、1つの箱状濾材内に2以上の網袋詰め裁断濾材を収容してもよい。さらにその場合、1つの箱状濾材内に2以上の網袋詰め裁断濾材を上下に積層して収容してもよいし、1つの箱状濾材内に2以上の網袋詰め裁断濾材を横に並べて収容してもよい(1つの箱状濾材内に2以上の網袋詰め裁断濾材を収容する場合は、一部の網袋詰め裁断濾材のみを結合具で箱状濾材に留め、この結合具で箱状濾材に留められた網袋詰め裁断濾材により、結合具で留められていない網袋詰め裁断濾材も箱状濾材に対して拘束された状態となるようにしてもよい)。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように本発明によるフィルタは、水等の液体を濾過するフィルタとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例1におけるフィルタの箱状濾材を示す斜視図である。
【図2】実施例1におけるフィルタ全体を示す平面図である。
【図3】図2のIII−III線における断面図である。
【図4】実施例1におけるフィルタの結合具を示す正面図である。
【図5】前記結合具を示す側面図である。
【図6】実施例1のフィルタにおける結合具による箱状濾材と網袋詰め裁断濾材との結合部付近を示す平面図である。
【図7】図6のVII−VII線における断面図である。
【図8】前記結合具で箱状濾材と網袋詰め裁断濾材とを結合するために使用する結合具取付具の先端側部分を示す側面図である。
【図9】実施例1における濾過装置を示す正面図である。
【図10】前記濾過装置を示す側面図である。
【図11】前記濾過装置におけるフィルタ容器を示す斜視図である。
【図12】前記濾過装置における上段側のフィルタ収容部を示す側断面図である。
【図13】前記濾過装置における下段側のフィルタ収容部を示す側断面図である。
【図14】前記濾過装置における上段側のフィルタ収容部を示す正面断面図である。
【図15】本発明の実施例2におけるフィルタを示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 フィルタ
2 箱状濾材
2a 箱状濾材の側面部
3 網袋詰め裁断濾材
3a 裁断濾材
3b 網袋
4 結合具
4a フィラメント部
4b 頭部
4c 横棒部
10 濾過装置
14 フィルタ収容部
26 外側箱状濾材
27 内側箱状濾材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布を上方を開放された箱状に縫製してなる箱状濾材と、不織布を帯状に裁断した裁断濾材を網袋内に収容してなり、前記箱状濾材内に収容された網袋詰め裁断濾材と、前記網袋詰め裁断濾材を前記箱状濾材に留めている結合具とを有してなるフィルタ。
【請求項2】
前記結合具は、全体にプラスチックからなり、可撓性を有する線状のフィラメント部と、このフィラメント部の一端部に設けられた、前記フィラメント部の幅または太さより大きい幅を有する頭部と、前記フィラメント部の他端部に設けられており、自由な状態では前記フィラメント部とT字状に交差する横棒部とを一体的に有しており、
前記フィラメント部が前記網袋詰め裁断濾材および前記箱状濾材の側面部を貫通し、前記頭部(または前記横棒部)が前記網袋詰め裁断濾材の上部に通り抜け不可能に外方から当接する一方、前記横棒部(または前記頭部)が前記箱状濾材の側面部に通り抜け不可能に外方から当接した状態とされていることにより、前記網袋詰め裁断濾材を前記箱状濾材に留めている請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
前記箱状濾材は、目の粗い不織布を上方を開放された箱状に縫製してなる外側箱状濾材と、目の細かい不織布を上方を開放された箱状に縫製してなり、前記外側箱状濾材の内側に重ねて収容された内側箱状濾材とを有してなる請求項1記載のフィルタ。
【請求項4】
上下に複数段配置されたフィルタ収容部と、各段の前記フィルタ収容部に収容されるフィルタとを有してなり、濾過対象液を上段側の前記フィルタ収容部から下段側の前記フィルタ収容部へ落下させ、各段の前記フィルタ収容部に収容された前記フィルタにより前記濾過対象液を濾過する濾過装置において、
前記フィルタは、不織布を上方を開放された箱状に縫製してなる箱状濾材と、不織布を帯状に裁断した裁断濾材を網袋内に収容してなり、前記箱状濾材内に収容された網袋詰め裁断濾材と、前記網袋詰め裁断濾材を前記箱状濾材に留めている結合具とを有してなる濾過装置。
【請求項5】
前記結合具は、全体にプラスチックからなり、可撓性を有する線状のフィラメント部と、このフィラメント部の一端部に設けられた、前記フィラメント部の幅または太さより大きい幅を有する頭部と、前記フィラメント部の他端部に設けられており、自由な状態では前記フィラメント部とT字状に交差する横棒部とを一体的に有しており、
前記フィラメント部が前記網袋詰め裁断濾材および前記箱状濾材の側面部を貫通し、前記頭部(または前記横棒部)が前記網袋詰め裁断濾材の上部に通り抜け不可能に外方から当接する一方、前記横棒部(または前記頭部)が前記箱状濾材の側面部に通り抜け不可能に外方から当接した状態とされていることにより、前記網袋詰め裁断濾材を前記箱状濾材に留めている請求項4記載の濾過装置。
【請求項6】
前記箱状濾材は、目の粗い不織布を上方を開放された箱状に縫製してなる外側箱状濾材6と、目の細かい不織布を上方を開放された箱状に縫製してなり、前記外側箱状濾材6の内側に重ねて収容された内側箱状濾材7とを有してなる請求項4または5記載の濾過装置。
【請求項1】
不織布を上方を開放された箱状に縫製してなる箱状濾材と、不織布を帯状に裁断した裁断濾材を網袋内に収容してなり、前記箱状濾材内に収容された網袋詰め裁断濾材と、前記網袋詰め裁断濾材を前記箱状濾材に留めている結合具とを有してなるフィルタ。
【請求項2】
前記結合具は、全体にプラスチックからなり、可撓性を有する線状のフィラメント部と、このフィラメント部の一端部に設けられた、前記フィラメント部の幅または太さより大きい幅を有する頭部と、前記フィラメント部の他端部に設けられており、自由な状態では前記フィラメント部とT字状に交差する横棒部とを一体的に有しており、
前記フィラメント部が前記網袋詰め裁断濾材および前記箱状濾材の側面部を貫通し、前記頭部(または前記横棒部)が前記網袋詰め裁断濾材の上部に通り抜け不可能に外方から当接する一方、前記横棒部(または前記頭部)が前記箱状濾材の側面部に通り抜け不可能に外方から当接した状態とされていることにより、前記網袋詰め裁断濾材を前記箱状濾材に留めている請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
前記箱状濾材は、目の粗い不織布を上方を開放された箱状に縫製してなる外側箱状濾材と、目の細かい不織布を上方を開放された箱状に縫製してなり、前記外側箱状濾材の内側に重ねて収容された内側箱状濾材とを有してなる請求項1記載のフィルタ。
【請求項4】
上下に複数段配置されたフィルタ収容部と、各段の前記フィルタ収容部に収容されるフィルタとを有してなり、濾過対象液を上段側の前記フィルタ収容部から下段側の前記フィルタ収容部へ落下させ、各段の前記フィルタ収容部に収容された前記フィルタにより前記濾過対象液を濾過する濾過装置において、
前記フィルタは、不織布を上方を開放された箱状に縫製してなる箱状濾材と、不織布を帯状に裁断した裁断濾材を網袋内に収容してなり、前記箱状濾材内に収容された網袋詰め裁断濾材と、前記網袋詰め裁断濾材を前記箱状濾材に留めている結合具とを有してなる濾過装置。
【請求項5】
前記結合具は、全体にプラスチックからなり、可撓性を有する線状のフィラメント部と、このフィラメント部の一端部に設けられた、前記フィラメント部の幅または太さより大きい幅を有する頭部と、前記フィラメント部の他端部に設けられており、自由な状態では前記フィラメント部とT字状に交差する横棒部とを一体的に有しており、
前記フィラメント部が前記網袋詰め裁断濾材および前記箱状濾材の側面部を貫通し、前記頭部(または前記横棒部)が前記網袋詰め裁断濾材の上部に通り抜け不可能に外方から当接する一方、前記横棒部(または前記頭部)が前記箱状濾材の側面部に通り抜け不可能に外方から当接した状態とされていることにより、前記網袋詰め裁断濾材を前記箱状濾材に留めている請求項4記載の濾過装置。
【請求項6】
前記箱状濾材は、目の粗い不織布を上方を開放された箱状に縫製してなる外側箱状濾材6と、目の細かい不織布を上方を開放された箱状に縫製してなり、前記外側箱状濾材6の内側に重ねて収容された内側箱状濾材7とを有してなる請求項4または5記載の濾過装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−220011(P2009−220011A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66894(P2008−66894)
【出願日】平成20年3月15日(2008.3.15)
【出願人】(501311502)ダアイシム工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月15日(2008.3.15)
【出願人】(501311502)ダアイシム工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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