説明

フィルターガスケット

【課題】ガスケット本体およびフィルターを別体で製作したうえで組み立てる構造のフィルターガスケットにおいて、凹部の内面に寸法公差による隙間が生じても装着時にガスケット本体が大きく弾性変形することがなく、もってシール面圧が極端に低下するのを抑制する。また、ガスケット本体からフィルターが脱落するのを抑制する。
【解決手段】装着時にガスケット厚み方向に圧縮されるガスケット本体の内周部に設けた凹部にフィルターの周縁部を非接着で挿入することによりガスケット本体にフィルターを組み付けてなるフィルターガスケットにおいて、凹部の内面と凹部に挿入したフィルターの周縁部との間に寸法公差によるガスケット厚み方向の隙間が生じたときにスペーサーとして作用する突起を凹部の内面に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール技術に係るガスケットに関し、更に詳しくは、ガスケット本体にフィルターを組み付けてなるフィルターガスケットに関する。本発明のフィルターガスケットは例えば、エンジンフィードパイプなどの配管系に用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来から図3に示すように、ゴム状弾性体製のガスケット本体52にフィルター53を組み付けてなるフィルターガスケット51が知られており、この従来技術ではガスケット本体52およびフィルター53が金型を用いて一体成形されている(特許文献1参照)。
【0003】
これに対し、ガスケット本体52およびフィルター53をそれぞれ別体で製作したうえで組み立てることが考えられ、例えば図4に示す参考例では、装着時にガスケット厚み方向(図では上下方向)に圧縮されるガスケット本体52の内周部に凹部52aが設けられ、この凹部52aにフィルター53の周縁部53aが非接着で挿入されている。
【0004】
しかしながら上記図4のフィルターガスケット51では、ガスケット本体52の凹部公差やフィルター53の厚み公差の如何によっては図5(A)に示すように、凹部52aの内面と凹部52aに挿入したフィルター53の周縁部53aとの間にガスケット厚み方向の隙間cが生じることがあり、このような隙間cが生じると図5(B)に示すように、ガスケット本体52が装着時一対のハウジング61,62(図4参照)によってガスケット厚み方向に圧縮されたときに隙間cを無くすべく大きく弾性変形することから、シール部52bに必要とされる接触面圧が低下し、シール性に支障を来たす虞がある。尚、このとき、ガスケット本体52は凹部52aの開口部を塞ぐように内周寄りの部位で特に大きく弾性変形するため、接触面圧分布曲線Dに示すとおり、内周寄りの部位で接触面圧の低下が顕著となる。
【0005】
また、上記のように隙間cが生じると、ガスケット本体52からフィルター53が脱落しやすい不都合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−102619号公報(図4)
【特許文献2】特開2002−39394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の点に鑑みて、ガスケット本体およびフィルターをそれぞれ別体で製作したうえで組み立てる構造のフィルターガスケットにおいて、凹部の内面に寸法公差による隙間が生じても装着時にガスケット本体が大きく弾性変形することがなく、もってシール部の接触面圧(シール面圧)が極端に低下するのを抑制することができるフィルターガスケットを提供することを目的とする。また、ガスケット本体からフィルターが脱落しにくい構造のフィルターガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるフィルターガスケットは、装着時にガスケット厚み方向に圧縮されるゴム状弾性体製のガスケット本体の内周部に設けた凹部にフィルターの周縁部を非接着で挿入することにより前記ガスケット本体に前記フィルターを組み付けてなるフィルターガスケットにおいて、前記凹部の内面と前記凹部に挿入した前記フィルターの周縁部との間に寸法公差によるガスケット厚み方向の隙間が生じたときにスペーサーとして作用する突起を前記凹部の内面に設けたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2によるフィルターガスケットは、上記した請求項1記載のフィルターガスケットにおいて、前記突起は、前記凹部の開口部またはその近傍位置に設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3によるフィルターガスケットは、上記した請求項1または2記載のフィルターガスケットにおいて、前記突起は、前記凹部に挿入した前記フィルターの周縁部をその厚み方向両側から挟み込む一対の突起として設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記構成を備える本発明のフィルターガスケットにおいては、凹部の内面と凹部に挿入したフィルターの周縁部との間に寸法公差による隙間が生じたときにスペーサーとして作用する突起が凹部の内面に設けられているために、この突起がスペーサーとして作用することにより、ガスケット本体が圧縮されたときの弾性変形が小さく抑えられる。また、隙間が生じても突起がフィルターに接触して抜け止めすることにより、ガスケット本体からフィルターが脱落するのが抑えられる。
【0012】
凹部がガスケット本体の内周部に設けられるとともにガスケット本体がガスケット厚み方向に圧縮される場合、ガスケット本体は上記したように凹部の開口部を塞ぐように内周寄りの部位で特に大きく弾性変形する。したがって突起はこれを凹部の開口部またはその近傍位置に設けることにより、ガスケット本体の変形抑制効果が大きくなる。
【0013】
また、突起はこれを、凹部に挿入したフィルターの周縁部をその厚み方向両側から挟み込む一対の突起として設けるのが好適であり、これによれば一対の突起がフィルターの周縁部をその厚み方向両側から挟み込むため、フィルターの脱落抑制効果が大きくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0015】
すなわち、本発明によれば以上説明したように、凹部の内面と凹部に挿入したフィルターの周縁部との間に寸法公差による隙間が生じたときにスペーサーとして作用する突起が凹部の内面に設けられているために、この突起がスペーサーとして作用することにより、ガスケット本体が圧縮されたときの弾性変形が小さく抑えられ、これによりシール面圧が極端に低下するのが抑制される。また、隙間が生じても突起がフィルターに接触して抜け止めすることにより、ガスケット本体からフィルターが脱落するのが抑えられる。したがって本発明所期の目的どおり、ガスケット本体およびフィルターをそれぞれ別体で製作したうえで組み立てる構造のフィルターガスケットにおいて、凹部の内面に寸法公差による隙間が生じても装着時にガスケット本体が大きく弾性変形することがなく、もってシール面圧が極端に低下するのを抑制することができ、しかもガスケット本体からフィルターが脱落しにくい構造のフィルターガスケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例に係るフィルターガスケットの要部断面図
【図2】本発明の他の実施例に係るフィルターガスケットの要部断面図
【図3】従来例に係るフィルターガスケットの要部断面図
【図4】参考例に係るフィルターガスケットの要部断面図
【図5】参考例における不具合発生状態を示す図で、(A)は参考例に係るフィルターガスケットの要部断面図、(B)は同ガスケットが弾性変形した状態の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
構成・・・本発明は、凹部先端部に突起を設ける形状を特徴とする。
効果・・・本発明によれば、面圧不足の改善によるシール性向上(公差がない場合でもシール面圧の部分は影響を受けない)、およびフィルター脱落防止によるフィルター機能向上が望める。
【実施例】
【0018】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施例に係るフィルターガスケット1の要部断面を示している。当該実施例に係るフィルターガスケット1は、ガスケット本体11およびフィルター21をそれぞれ別体で製作したうえで組み立てる構造のフィルターガスケットであって、すなわち装着時にガスケット厚み方向(図では上下方向、以下「軸方向」とも称する)に圧縮されるガスケット本体11を備え、このガスケット本体11の内周部(内周面)に凹部11aが設けられ、この凹部11aにフィルター21の周縁部21aが非接着で挿入されることによりガスケット本体11に対しフィルター21が組み付けられている。
【0020】
ガスケット本体11は、所定のゴム状弾性体によって環状に成形され、また断面円形に成形され、その内周部に環状の凹部11aがフィルター21の周縁部21aを挿入するための環状の挿入溝として設けられている。凹部11aはその内部に、互いに対向する一対の側面11bおよび側面11bに直交する底面11cを有し、一対の側面11bはそれぞれ軸方向と直交する方向に広がる平面状に形成されている。また、凹部11aの深さ寸法は、ガスケット本体11の線径の半分ほどに達し、半分より若干大きく設定されている。
【0021】
フィルター21は、所定の金属材料によって平板状に成形され、またフィルター機能を発揮すべく例えばメッシュ状に成形されている。
【0022】
上記構成のフィルターガスケット1において、ガスケット本体11の凹部公差やフィルター21の厚み公差の如何によっては、凹部11aの内面(側面11b)と凹部11aに挿入したフィルター21の周縁部21aとの間にガスケット厚み方向の隙間cが生じることがあり、このような隙間cが生じると、ガスケット本体11が装着時一対のハウジング61,62によってガスケット厚み方向に圧縮されたときに隙間cを無くすべく大きく弾性変形することから、シール部11dに必要とされる接触面圧が低下し、シール性に支障を来たす虞があることは上記したとおりである。また隙間cが生じると、ガスケット本体11からフィルター21が脱落しやすいことも上記したとおりである。
【0023】
そこで、当該実施例に係るガスケット1では、凹部11aの内面と凹部11aに挿入したフィルター21の周縁部21aとの間に寸法公差によるガスケット厚み方向の隙間cが生じたときにスペーサーとして作用する突起11eが凹部11aの内面に設けられており、この突起11eがスペーサーとして作用して隙間cをキャンセルすることにより、ガスケット本体11が圧縮されたときの弾性変形が小さく抑えられるように構成されている。
【0024】
突起11eとしては、以下のものが好適である。
【0025】
(1)
突起11eは、凹部11aの開口部またはその近傍位置に設けられている。すなわち上記したように図5(A)(B)の参考例によると、ガスケット本体52が凹部52aの開口部を塞ぐように内周寄りの部位で特に大きく弾性変形するために、接触面圧分布曲線Dに示すとおり、内周寄りの部位で接触面圧の低下が顕著となる。これに対し、突起11eを凹部11aの開口部またはその近傍位置に設けることにより、ガスケット本体11が内周寄りの部位で弾性変形しにくくなる。したがって接触面圧分布曲線Eに示すとおり、接触面圧の低下が内周寄りの部位で殆ど生じなくなる。
【0026】
(2)
突起11eは、凹部11aに挿入したフィルター21の周縁部21aをその厚み方向両側から挟み込む一対の突起として設けられている。また突起11eはそれぞれ、その高さ寸法を以下の寸法tを目安として設定されている。すなわち凹部11aの溝幅に関する公差内最大値をx、フィルター21の厚みに関する公差内最小値をyとして、
t=(x−y)÷2
または
t≒(x−y)÷2。これにより、隙間cの存在をほぼキャンセルすることができる。
【0027】
尚、図2に示すように隙間cが生じていないとき、突起11eは凹部11aの開口部の溝幅を拡大するように作用することになるが、このように突起11eが凹部11aの開口部の溝幅を拡大しても、シール部11dの接触面圧は低下することがない。したがって、このように突起11eが凹部11aの溝幅を拡大することは何ら問題を生じないものである。
【0028】
(3)
また、突起11eは、環状に設けられており、また、その断面形状を円弧状に設けられている。
【0029】
以上のように突起11eを凹部11aの内面に設ける構造によれば、隙間cが生じても突起11eがスペーサーとして作用して隙間cをキャンセルすることにより、ガスケット本体11が圧縮されたときの弾性変形が小さく抑えられ、これによりシール面圧が極端に低下するのが抑制される。また、隙間cが生じても突起11eがフィルター21に接触して抜け止めすることにより、ガスケット本体11からフィルター21が脱落するのが抑えられる。したがって本発明所期の目的どおり、ガスケット本体11およびフィルター21をそれぞれ別体で製作したうえで組み立てる構造のフィルターガスケット1において、凹部11aの内面に寸法公差による隙間cが生じても装着時にガスケット本体11が大きく弾性変形することがなく、もってシール面圧が極端に低下するのを抑制することができ、しかもガスケット本体11からフィルター21が脱落しにくい構造のフィルターガスケット1を提供することができる。
【0030】
尚、本発明において、ガスケット本体11の断面形状は円形に限定されず、四角形やU字形などであっても良い。また突起11eの断面形状も限定されず、突起11eは環状でなくても良い(突起11eを周上複数設けるなど)。また突起11eを凹部11aの深さ方向に複数設けることも考えられる。
【符号の説明】
【0031】
1 フィルターガスケット
11 ガスケット本体
11a 凹部
11b 側面
11c 底面
11d シール部
11e 突起
21 フィルター
21a 周縁部
61,62 ハウジング
c 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着時にガスケット厚み方向に圧縮されるゴム状弾性体製のガスケット本体の内周部に設けた凹部にフィルターの周縁部を非接着で挿入することにより前記ガスケット本体に前記フィルターを組み付けてなるフィルターガスケットにおいて、
前記凹部の内面と前記凹部に挿入した前記フィルターの周縁部との間に寸法公差によるガスケット厚み方向の隙間が生じたときにスペーサーとして作用する突起を前記凹部の内面に設けたことを特徴とするフィルターガスケット。
【請求項2】
請求項1記載のフィルターガスケットにおいて、
前記突起は、前記凹部の開口部またはその近傍位置に設けられていることを特徴とするフィルターガスケット。
【請求項3】
請求項1または2記載のフィルターガスケットにおいて、
前記突起は、前記凹部に挿入した前記フィルターの周縁部をその厚み方向両側から挟み込む一対の突起として設けられていることを特徴とするフィルターガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104475(P2013−104475A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248204(P2011−248204)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】