説明

フィルタ係数決定装置

【課題】聴取位置における定在波の干渉を低減させるために、スピーカより出力されるオーディオ信号に対してフィルタ処理を行うためのフィルタ係数を決定するフィルタ係数決定装置を提供すること。
【解決手段】前席側または後席側においてディップが発生する周波数帯域と位相差とに基づいて、フィルタ係数テーブル部63で、サブ補正フィルタ部61a〜61dのフィルタ係数を決定し、レベル判定部62が、当該フィルタ係数に基づく前席側および後席側の位相差毎の信号レベルの変化量に基づいて、前席側の変化量あるいは後席側の変化量のいずれか一方が増減せず、いずれか他方の変化量が大きく増加する位相差の値を求める。そして、フィルタ係数テーブル部63が求められた位相差に基づいて、メイン補正フィルタ部のフィルタ係数を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルタ係数決定装置に関し、より詳細には、車室内におけるディップなどの発生を抑制するためにスピーカより出力されるオーディオ信号に対してフィルタ処理を行うためのフィルタ係数を決定するフィルタ係数決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車室内にカーオーディオシステムを設置して、運転中などに音楽を楽しむユーザが増えている。特に車室内は、閉じられた空間であるため、音響調整を行うことによりユーザに最適な音場環境を構築することが可能である。このような最適な音場環境を構築するために、車室に応じて、車室内(リスニング環境)の音場の周波数特性を調整する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この方法では、車室内の聴取位置にマイクロホンを設置し、スピーカとマイクロホンとの間の周波数特性の測定を行った後に、目標応答曲線の許容範囲内に入るように、フィルタの周波数、振幅および帯域を自動的に最適化して、周波数特性の補正を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000―152374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車室内のスピーカから出力されるオーディオ信号は、窓ガラスなどの反射によって、定在波によるディップが発生するという問題があった。特に、複数のスピーカからボーカル音などのモノラル信号が出力される場合には、スピーカ間の干渉も付加されてしまい、定在波のディップが増加するという特徴があった。
【0006】
ディップの発生に対して、従来技術のように周波数補正として増幅を行うことによって、ある程度の改善を図ることは可能であるが、アンプやスピーカのノイズと歪みとが増加すると共に、カーオーディオシステムにおける消費電力が増加してしまうという問題があった。
【0007】
このため、スピーカより出力されるオーディオ信号に対してフィルタ処理を行うことによってスピーカ間の干渉を低減させることが求められている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、聴取位置における定在波の干渉を低減させるために、スピーカより出力されるオーディオ信号に対してフィルタ処理を行うためのフィルタ係数を決定するフィルタ係数決定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るフィルタ係数決定装置は、前後に座席が配置された車室内の前席側に設置された前席スピーカと、後席側に設置された後席スピーカと、前記車室内の前席位置に設置された前席測定マイクロホンと、後席位置に設置された後席測定マイクロホンと、前記前席スピーカより出力された信号を前記前席測定マイクロホンおよび前記後席測定マイクロホンで測定すると共に、前記後席スピーカより出力された信号を前記前席測定マイクロホンおよび前記後席測定マイクロホンで測定することにより、各スピーカから各測定マイクロホンまでのそれぞれの組み合わせに対応したインパルス応答を測定するインパルス応答測定手段と、互いに直交した異なるM系列符合信号を出力することが可能な測定信号再生手段と、前記インパルス応答測定手段により測定された前記前席スピーカから前記前席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記測定信号再生手段より出力された前記互いに直交した一のM系列符合信号の畳み込み積分を行うと共に、前記インパルス応答測定手段により測定された前記後席スピーカから前記前席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記測定信号再生手段より出力された前記互いに直交した他のM系列符合信号の畳み込み積分を行い、畳み込み積分の行われたそれぞれの直交したM系列符合信号を合成して、前記前席スピーカと前記後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれない第1信号を生成する第1信号合成手段と、前記インパルス応答測定手段により測定された前記前席スピーカから前記前席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記測定信号再生手段より出力された前記互いに直交した一のM系列符合信号の畳み込み積分を行うと共に、前記インパルス応答測定手段により測定された前記後席スピーカから前記前席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記測定信号再生手段より出力された前記一のM系列符合信号の畳み込み積分を行い、畳み込み積分の行われたそれぞれのM系列符合信号を合成して、前記前席スピーカと前記後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれた第2信号を生成する第2信号合成手段と、前記第2信号から前記第1信号を減算した信号の周波数特性において、信号レベルが最小の値を示す周波数を求めるとともに、当該最小の値を示す周波数を含んで、所定の信号レベル以下となる周波数範囲を前席側定在波周波数として求める前席側定在波周波数検出手段と、前記インパルス応答測定手段により測定された前記前席スピーカから前記後席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記測定信号再生手段より出力された前記互いに直交した一のM系列符合信号の畳み込み積分を行うと共に、前記インパルス応答測定手段により測定された前記後席スピーカから前記後席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記測定信号再生手段より出力された前記互いに直交した他のM系列符合信号の畳み込み積分を行い、畳み込み積分の行われたそれぞれの直交したM系列符合信号を合成して、前記前席スピーカと前記後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれない第3信号を生成する第3信号合成手段と、前記インパルス応答測定手段により測定された前記前席スピーカから前記後席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記測定信号再生手段より出力された前記互いに直交した一のM系列符合信号の畳み込み積分を行うと共に、前記インパルス応答測定手段により測定された前記後席スピーカから前記後席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記測定信号再生手段より出力された前記一のM系列符合信号の畳み込み積分を行い、畳み込み積分の行われたそれぞれのM系列符合信号を合成して、前記前席スピーカと前記後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれた第4信号を生成する第4信号合成手段と、前記第4信号から前記第3信号を減算した信号の周波数特性において、信号レベルが最小の値を示す周波数を求めるとともに、当該最小の値を示す周波数を含んで、所定の信号レベル以下となる周波数範囲を後席側定在波周波数として求める後席側定在波周波数検出手段と、前記前席側定在波周波数の周波数範囲における上限周波数および下限周波数と、前記後席側定在波周波数に対する前記前席側定在波周波数の位相差の値とに基づいて決定される前席側フィルタ係数と、前記後席側定在波周波数の周波数範囲における上限周波数および下限周波数と、前記位相差の値とに基づいて決定される後席側フィルタ係数とが、様々な前記上限周波数、様々な前記下限周波数、および様々な前記位相差の値の組み合わせに基づいて前記車室内の音響特性に応じて予め算出されたフィルタ係数テーブルを備えるフィルタ係数テーブル手段と、前記測定信号再生手段より出力される前記一のM系列符合信号に対して前記前席側フィルタ係数に基づいてフィルタ処理を行う前席側フィルタ処理手段と、前記測定信号再生手段より出力される前記一のM系列符合信号に対して前記後席側フィルタ係数に基づいてフィルタ処理を行う後席側フィルタ処理手段と、前記前席スピーカから前記前席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記前席側フィルタ処理手段によりフィルタ処理された前記一のM系列符合信号の畳み込み積分を行うと共に、前記後席スピーカから前記前席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記前席側フィルタ処理手段によりフィルタ処理された前記一のM系列符合信号の畳み込み積分を行い、畳み込み積分の行われたそれぞれの前記一のM系列符合信号を合成して、前記前席スピーカと前記後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれない第5信号を生成する第5信号合成手段と、前記前席スピーカから前記後席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記後席側フィルタ処理手段によりフィルタ処理された前記一のM系列符合信号の畳み込み積分を行うと共に、前記後席スピーカから前記後席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記後席側フィルタ処理手段によりフィルタ処理された前記一のM系列符合信号の畳み込み積分を行い、畳み込み積分の行われたそれぞれの前記一のM系列符合信号を合成して、前記前席スピーカと前記後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれない第6信号を生成する第6信号合成手段と、前記第5信号から前記第2信号を減算して前記前席側の差分信号を求めるとともに、前記第6信号から前記第4信号を減算して前記後席側の差分信号を求めて、前記前席側の差分信号における信号レベルの増減変化と前記後席側の差分信号における信号レベルの増減変化量を、前記フィルタ係数テーブル手段において設定された位相差の値に対応づけて検出することにより、前記前席側の信号レベルの増減変化量あるいは前記後席側の信号レベルの増減変化量のいずれか一方の増減変化量が増減せず、いずれか他方の増減変化量が大きく増加する位相差の値を求める位相差検出手段とを有し、前記フィルタ係数テーブル手段は、前記位相差検出手段において検出された位相差の値と、前記前席側定在波周波数の周波数範囲における上限周波数および下限周波数とに基づいて前記フィルタ係数テーブルより求められる前席側フィルタ係数を、前記前席スピーカより出力されるオーディオ信号に対してフィルタ処理を行うためのフィルタ係数と決定し、前記位相差検出手段において検出された位相差の値と、前記後席側定在波周波数の周波数範囲における上限周波数および下限周波数とに基づいて前記フィルタ係数テーブルより求められる後席側フィルタ係数を、前記後席スピーカより出力されるオーディオ信号に対してフィルタ処理を行うためのフィルタ係数と決定することを特徴とする。
【0010】
また、上述したフィルタ係数決定装置において、前記前席側定在波周波数を求めるために設定される所定の信号レベル、および前記後席側定在波周波数を求めるために設定される所定の信号レベルは、−6dBであることが望ましい。
【0011】
一般に、車室内に設置されるスピーカから出力されるオーディオ信号は、窓ガラスなどに反射されることから、いずれかの聴取位置において、定在波によるディップが発生するおそれがあった。特に、複数のスピーカからボーカル音などのモノラル信号が出力される場合には、スピーカ間の干渉も付加されてしまい、定在波のディップが増加するという特徴があった。このような、定在波によるディップの低減を図るために、スピーカ間の干渉を低減させることが求められている。このため、本発明に係るフィルタ係数決定装置では、各スピーカから出力されるオーディオ信号に対して予めフィルタ処理を行うことにより、聴取位置における定在波の干渉を低減させることが可能なフィルタ係数を決定することを目的としている。
【0012】
本発明に係るフィルタ係数決定装置では、まず、各スピーカから前席測定マイクロホンまでのインパルス応答と、各スピーカから後席測定マイクロホンまでのインパルス応答を求める。そして、本発明に係るフィルタ係数決定装置では、第1信号合成手段が、前席スピーカから前席測定マイクロホンまでのインパルス応答を用いて、互いに直交した一のM系列符合信号の畳み込み積分を行うと共に、後席スピーカから前席測定マイクロホンまでのインパルス応答を用いて、互いに直交した他のM系列符合信号の畳み込み積分を行い、畳み込み積分の行われたそれぞれの直交したM系列符合信号を合成して第1信号を生成する。
【0013】
この第1信号は、それぞれが互いに直交したM系列符号信号に基づいて畳み込み積分された合成信号であることから、スピーカ間で共通する信号(モノラル成分の信号)が存在しない。このため、前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれない信号となる。
【0014】
また、この第1信号は、それぞれのスピーカから前席測定マイクロホンまでのインパルス応答を用いて畳み込み積分された合成信号であるから、前席測定マイクロホンの設置位置(前席位置)において前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれない信号となる。
【0015】
さらに、本発明に係るフィルタ係数決定装置では、第2信号合成手段が、前席スピーカから前席測定マイクロホンまでのインパルス応答を用いて、互いに直交した一のM系列符合信号の畳み込み積分を行うと共に、後席スピーカから前席測定マイクロホンまでのインパルス応答を用いて一のM系列符合信号の畳み込み積分を行い、畳み込み積分の行われたそれぞれのM系列符合信号を合成して第2信号を生成する。
【0016】
この第2信号は、同一のM系列符号信号(ともに一のM系列符号信号)に基づいて畳み込み積分された合成信号であることから、スピーカ間で共通する信号(モノラル成分の信号)が存在することになる。このため、前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれた信号となる。
【0017】
また、この第2信号は、それぞれのスピーカから前席測定マイクロホンまでのインパルス応答を用いて畳み込み積分された合成信号であるから、前席測定マイクロホンの設置位置(前席位置)において前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれた信号となる。
【0018】
そして、前席側定在波周波数検出手段において、第2信号から第1信号を減算することにより、前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれた信号から前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれない信号が減算される。この減算処理により算出された信号は、前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響のみが示された信号となり、前席測定マイクロホンの設置位置におけるスピーカ間の干渉の影響を周波数特性より求めることが可能となる。
【0019】
前席側定在波周波数検出手段が、前席測定マイクロホンの設置位置において前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響のみが示される信号の周波数特性から、信号レベルが最小の値を示す周波数を求めることにより、ディップの発生する周波数を容易に求めることが可能となる。
【0020】
さらに、最小の値を示す周波数を含んで、所定の信号レベル以下となる周波数範囲を前席側定在波周波数として求めることにより、ディップの発生する周波数範囲を特定することが可能となる。この所定の信号レベルは、位相制御により聴感上の効果が明確に感じられる値(人間が明らかに音が変わると判断できるレベル)が設定される。特に、一般的に振幅で半分となる−6dBに設定することが好ましい。
【0021】
また、後席測定マイクロホンの設置位置においても、同様に、後席側定在波周波数検出手段において、第4信号から第3信号を減算することにより、前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれた信号から前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれない信号が減算される。この減算処理により算出された信号は、前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響のみが示された信号となり、後席測定マイクロホンの設置位置におけるスピーカ間の干渉の影響を周波数特性より求めることが可能となる。
【0022】
後席測定マイクロホンの設置位置においても、後席側定在波周波数検出手段が、前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響のみが示される信号の周波数特性から、信号レベルが最小の値を示す周波数を求めることにより、ディップの発生する周波数を容易に求めることが可能となる。
【0023】
さらに、最小の値を示す周波数を含んで、所定の信号レベル以下となる周波数範囲を後席側定在波周波数として求めることにより、ディップの発生する周波数範囲を特定することが可能となる。
【0024】
このように、前席測定マイクロホンの設置位置におけるディップの発生周波数およびその周波数範囲(前席側定在波周波数)と、後席測定マイクロホンの設置位置におけるディップの発生周波数およびその周波数範囲(後席側定在波周波数)とを求めることにより、フィルタ処理によりディップの低減を図るために必要となる周波数帯域および信号レベルを求めることが可能となる。
【0025】
続いて、本発明に係るフィルタ係数決定装置では、第5信号合成手段が、前席側定在波周波数の上限周波数および下限周波数と後席側定在波周波数に対する前席側定在波周波数の位相差の値とに基づいてフィルタ係数テーブル手段により決定された前席側フィルタ係数を用いてフィルタ処理された一のM系列符合信号を、前席スピーカから前席測定マイクロホンまでのインパルス応答を用いて畳み込み積分を行うと共に、前席側フィルタ係数を用いてフィルタ処理された一のM系列符合信号を、後席スピーカから前席測定マイクロホンまでのインパルス応答を用いて畳み込み積分を行い、畳み込み積分の行われたそれぞれの一のM系列符合信号を合成して、前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれない第5信号を生成する。
【0026】
この第5信号は、同一のM系列符号信号(ともに一のM系列符号信号)に基づいて畳み込み積分された合成信号であり、同一のM系列符号信号によって畳み込み積分された信号であることから、スピーカ間で共通する信号(モノラル成分の信号)が存在することになる。ただし、第5信号における一のM系列符合信号は、前席側フィルタ係数を用いてフィルタ処理された信号であるため、前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響がフィルタ処理によりどの程度低減しているかを判断することが可能となる。
【0027】
また、この第5信号は、それぞれのスピーカから前席測定マイクロホンまでのインパルス応答を用いて畳み込み積分された合成信号であるから、前席測定マイクロホンの設置位置(前席位置)における、前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響を、前席側フィルタ係数を用いたフィルタ処理により判断することが可能な信号となる。
【0028】
一方で、第2信号は、上述したように、同一のM系列符号信号(ともに一のM系列符号信号)に基づいて畳み込み積分された合成信号であることから、スピーカ間で共通する信号(モノラル成分の信号)が存在することになる。このため、前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれた信号となる。
【0029】
また、第2信号は、それぞれのスピーカから前席測定マイクロホンまでのインパルス応答を用いて畳み込み積分された合成信号であるから、前席測定マイクロホンの設置位置(前席位置)において前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれた信号となる。
【0030】
従って、位相差検出手段が第5信号から第2信号を減算して前席側の差分信号を求めることにより、フィルタ処理によりディップの低減が図られていない場合には差分信号の信号レベルに差が生ずることがなく、フィルタ処理によりディップの低減が図られている場合には差分信号の信号レベルに差が生ずることになる。
【0031】
一方で、ディップの影響はユーザの聴取位置毎に異なる。このため、同様にして、位相差検出手段が、後席測定マイクロホンの設置位置(後席位置)において、後席側フィルタ係数を用いてフィルタ処理された第6信号から、前席スピーカと後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれる第4信号を減算して後席側の差分信号を求める。この差分信号の信号レベルに差が生じていない場合には、フィルタ処理によりディップの低減が図られていないと判断でき、差分信号の信号レベルに差が生ずる場合には、フィルタ処理によりディップの低減が図られていると判断することが可能となる。
【0032】
また、ディップの影響はスピーカ間の干渉により顕著となるため、スピーカ間の干渉を低減するために、位相差検出手段が、前席側の差分信号の信号レベルの増減変化量あるいは後席側の差分信号の信号レベルの増減変化量のいずれか一方の増減変化量が増減せず(つまり安定した値を維持する状態を示し)、いずれか他方の増減変化量が大きく増加する位相差の値を求める。
【0033】
このように一方の増減変化量が少なく、他方の増減変化量が大きい位相差の値を求め、フィルタ係数テーブル手段が、この位相差の値と、前席側定在波周波数の上限周波数および下限周波数とに基づいてフィルタ係数テーブルより求められる前席側フィルタ係数を、前席スピーカより出力されるオーディオ信号に対してフィルタ処理するためのフィルタ係数と決定し、位相差の値と、後席側定在波周波数の上限周波数および下限周波数とに基づいてフィルタ係数テーブルより求められる後席側フィルタ係数を、後席スピーカより出力されるオーディオ信号に対してフィルタ処理するためのフィルタ係数と決定する。このようにして決定されたフィルタ係数を用いて各スピーカより出力されるオーディオ信号にフィルタ処理を行うことによって、スピーカ間の干渉の低減を効果的に図ることができ、ディップの発生を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係るフィルタ係数決定装置によれば、車室内の前席位置と後席位置とのいずれかを基準としてスピーカより出力されるオーディオ信号の位相制御を行うことによりスピーカ間の干渉を低減させることが可能となり、ディップの発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施の形態に係る定在波測定装置の概略構成を示したブロック図である。
【図2】車室内に設置される4つのスピーカの設置位置と、4つの測定マイクロホンの設置位置とを示した概略図である。
【図3】実施の形態に係るデータ記録部に記録されたインパルス応答の一例であって、測定マイクロホンFLMにおけるスピーカFLとの間のインパルス応答C1と、測定マイクロホンFRMにおけるスピーカFLとの間のインパルス応答C5と、測定マイクロホンRLMにおけるスピーカFLとの間のインパルス応答C9と、測定マイクロホンRRMにおけるスピーカFLとの間のインパルス応答C13とが示されている。
【図4】実施の形態に係る定在波制御装置の概略構成を示したブロック図である。
【図5】実施の形態に係る定在波検出部の概略構成を示している。
【図6】左側前席(助手席)に設置される測定マイクロホンFLMに対応した定在波検出ユニットと、測定信号再生部と、定在波判定部との概略構成を示したブロック図である。
【図7】実施の形態に係る定在波制御装置において、同一のM系列符号と直交のM系列符号を測定信号として測定信号再生部から出力し、各測定マイクロホンに対応する各定在波検出ユニットにおいて畳み込み積分等された同一のM系列符号の信号と直交するM系列符号の信号との周波数特性を、各測定マイクロホン毎に示した図である。
【図8】図7に示した同一のM系列符号の信号から直交するM系列符号の信号を減算した場合の周波数特性の差分値を示した図である。
【図9】(a)は、前席側の平均化処理を行った後の周波数特性を示し、(b)は後席側の平均化処理を行った後の周波数特性を示している。
【図10】実施の形態に係るフィルタ係数計算部の概略構成を示したブロック図である。
【図11】左側前席(助手席)に設置される測定マイクロホンFLMに対応した定在波検出ユニットと、測定信号再生部と、レベル判定部と、フィルタ係数テーブル部と、第1サブ補正フィルタ部〜第4サブ補正フィルタ部との概略構成を示したブロック図である。
【図12】実施の形態に係るフィルタ係数テーブルを示した図である。
【図13】実施の形態に係る第1サブ補正フィルタ部〜第4サブ補正フィルタ部の内部構造を示したブロック図である。
【図14】前席側の差分信号の信号レベルの増減量(増減変化量)と、後席側の差分信号の信号レベルの増減量(増減変化量)との値を示したグラフである。
【図15】位相差を−90度とした場合のオールパスフィルタの位相特性を示した図であって、前席側と後席側とのそれぞれの位相特性(位相の値)を示した図である。
【図16】位相差を−90度とした場合のオールパスフィルタの位相特性を示した図であって、後席側の位相特性から前席側の位相特性を差し引いた場合の位相の値を示した図である。
【図17】第1サブ補正フィルタ部〜第4サブ補正フィルタ部においてフィルタ処理が行われる信号が対数平均化処理部により平均化処理された後の周波数特性であって、下限周波数を80Hz、上限周波数を140Hz、位相差を−180度に設定した場合のフィルタ係数を用いて実際に第1サブ補正フィルタ部〜第4サブ補正フィルタ部により位相制御が行われた場合と、行われなかった場合における周波数特性を、各測定マイクロホンの設置位置に対応する定在波検出ユニット(測定マイクロホンFLM、FRM,RLM,RRM)毎に示した図である。
【図18】図17に示した図に関して、実施の形態に係るフィルタ係数テーブルにおいて、下限周波数を80Hz、上限周波数を140Hz、位相差を−180度に設定した場合のフィルタ係数を用いた場合の信号の周波数特性を、各測定マイクロホンの設置位置に対応する定在波検出ユニット(測定マイクロホンFLM、FRM,RLM,RRM)毎に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係るフィルタ係数決定装置について、その一例である定在波制御装置を示して、図面を用いて詳細に説明する。まず、車室内のインパルス応答(音響特性)を測定するための定在波測定装置について説明を行い、その後に、測定されたインパルス応答を用いて、車室内におけるディップの発生を抑制するためのフィルタ係数を算出する定在波制御装置について説明する。
【0037】
[定在波測定装置]
図1は定在波測定装置の概略構成を示したブロック図である。定在波測定装置10は、測定信号再生部(測定信号再生手段)11と、スピーカ選択部12と、アンプ部13と、4つ(4チャンネル)のスピーカ(スピーカFL、スピーカFR、スピーカRL、スピーカRR)14と、4座席分の測定マイクロホン(測定マイクロホンFLM、測定マイクロホンFRM、測定マイクロホンRLM、測定マイクロホンRRM)15と、測定部(インパルス応答測定手段)16と、データ記録部17とを有している。
【0038】
測定信号再生部11は、測定信号としてM系列符号(M系列符合信号)を再生する役割を有している。測定信号再生部11は、互いに直交する4種類のM系列符号(M1〜M4)を測定信号として出力することが可能となっている。なお、同一のM系列符号は、例えば、複数のスピーカからボーカル等のモノラル音声が再生される場合に相当する出力信号であり、直交するM系列符号は、例えば、ステレオ信号に該当する出力信号であって、スピーカ間における干渉が生じない信号である。
【0039】
スピーカ選択部12は、測定信号再生部11より入力された測定信号をいずれのスピーカ14(スピーカFL、スピーカFR、スピーカRL、スピーカRR)から出力させるかを選択する役割を有している。
【0040】
アンプ部13は、スピーカ選択部12により選択されたスピーカに対して出力される測定信号の増幅を行う。そして、スピーカ選択部12において選択されたスピーカ14では、アンプ部13において増幅された測定音の出力を行う。
【0041】
図2は、車室内に設置される4つのスピーカ14(スピーカFL、スピーカFR、スピーカRL、スピーカRR)の設置位置と、測定マイクロホン15(測定マイクロホンFLM、測定マイクロホンFRM、測定マイクロホンRLM、測定マイクロホンRRM)の設置位置とを示した概略図である。
【0042】
図2に示すように、スピーカFLは、車室の左側前席(助手席側)の例えばドアあるいAピラー部分などに設置され、スピーカFRは、右側前席(運転席側)の例えばドア部分あるいはAピラー部分などに設置され、スピーカRLは、左側後席の例えばドア部分などに設置され、スピーカRRは、右側後席の例えばドア部分などに設置される。なお、スピーカFLおよびスピーカFRは、本発明に係る前席スピーカに該当し、スピーカRLおよびスピーカRRは、本発明に係る後席スピーカに該当する。
【0043】
測定マイクロホン15(測定マイクロホンFLM、測定マイクロホンFRM、測定マイクロホンRLM、測定マイクロホンRRM)は、スピーカ14より出力された測定音を測定する役割を有している。図2に示すように、本実施の形態に係る定在波測定装置10では、測定マイクロホンFLMが左側前席位置(助手席位置)に設置され、測定マイクロホンFRMが右側前席位置(運転席位置)に設置され、測定マイクロホンRLMが左側後席位置に設置され、測定マイクロホンRRMが右側後席位置に設置される。なお、測定マイクロホンFLMおよび測定マイクロホンFRMは、本発明に係る前席測定マイクロホンに該当し、測定マイクロホンRLMおよび測定マイクロホンRRMは、本発明に係る後席測定マイクロホンに該当する。
【0044】
各座席位置に測定マイクロホン15が設置されることから、各測定マイクロホン15において測定音を測定することにより、各測定マイクロホン15の設置位置(測定マイクロホンFLMは助手席、測定マイクロホンFRMは運転席、測定マイクロホンRLMは左側後席、測定マイクロホンRRMは右側後席の位置)にユーザが着座した状態における各座席の音響特性を備えた測定音を測定することが可能となる。
【0045】
測定部16は、各測定マイクロホン15を通してスピーカ14から出力された測定信号を取得し、測定信号再生部11より出力された測定信号をそれぞれのリファレンス信号として相関演算処理を行う。そして、測定部16は、この相関演算処理により各測定マイクロホン15と各スピーカ14との間のインパルス応答の算出を行って、インパルス応答データとしてデータ記録部17に記録させる。
【0046】
データ記録部17は、測定部16により算出された各測定マイクロホン15と各スピーカ14との間のインパルス応答を記録する役割を有している。データ記録部17に記録されるデータは、スピーカ14の設置数(4個)×測定マイクロホン15の設置数(4個)により、16通りの組み合わせのインパルス応答により構成される。
【0047】
具体的に、本実施の形態に係る定在波測定装置10には、スピーカFLと測定マイクロホンFLMとの間のインパルス応答C1と、スピーカFRと測定マイクロホンFLMとの間のインパルス応答C2と、スピーカRLと測定マイクロホンFLMとの間のインパルス応答C3と、スピーカRRと測定マイクロホンFLMとの間のインパルス応答C4とが記録される。
【0048】
また、定在波測定装置10には、スピーカFLと測定マイクロホンFRMとの間のインパルス応答C5と、スピーカFRと測定マイクロホンFRMとの間のインパルス応答C6と、スピーカRLと測定マイクロホンFRMとの間のインパルス応答C7と、スピーカRRと測定マイクロホンFRMとの間のインパルス応答C8とが記録される。
【0049】
さらに、定在波測定装置10には、スピーカFLと測定マイクロホンRLMとの間のインパルス応答C9と、スピーカFRと測定マイクロホンRLMとの間のインパルス応答C10と、スピーカRLと測定マイクロホンRLMとの間のインパルス応答C11と、スピーカRRと測定マイクロホンRLMとの間のインパルス応答C12とが記録される。
【0050】
また、定在波測定装置10には、スピーカFLと測定マイクロホンRRMとの間のインパルス応答C13と、スピーカFRと測定マイクロホンRRMとの間のインパルス応答C14と、スピーカRLと測定マイクロホンRRMとの間のインパルス応答C15と、スピーカRRと測定マイクロホンRRMとの間のインパルス応答C16とが記録される。
【0051】
図3には、データ記録部17に記録されたインパルス応答(インパルス応答データ)の一例であって、スピーカFLと測定マイクロホンFLMとの間のインパルス応答C1と、スピーカFLと測定マイクロホンFRMとの間のインパルス応答C5と、スピーカFLと測定マイクロホンRLMとの間のインパルス応答C9と、スピーカFLと測定マイクロホンRRMとの間のインパルス応答C13とが示されている。
【0052】
[定在波制御装置]
次に、定在波制御装置について説明する。定在波制御装置は、定在波測定装置10によって測定された各インパルス応答C1〜C16を利用して、座席毎に生じ得るディップの低減を図る役割を有している。
【0053】
図4は、定在波制御装置の概略構成を示したブロック図である。定在波制御装置20は、定在波検出部21と、フィルタ係数計算部22と、メイン補正フィルタ部23と、アンプ部13と、スピーカ14とを有している。なお、定在波制御装置20において、アンプ部13およびスピーカ14は、定在波測定装置10において既に説明したため、ここでの詳細な説明を省略する。
【0054】
さらに、定在波検出部21には、データ記録部17と、測定信号再生部11とが接続されている。データ記録部17には、上述したように定在波測定装置10において測定された各インパルス応答C1〜C16が記録されており、定在波検出部21では、データ記録部17よりインパルス応答C1〜C16を読み出して利用することが可能となっている。
【0055】
図4において、測定信号再生部11、定在波検出部21、フィルタ係数計算部22、データ記録部17は、メイン補正フィルタ部23に設けられる第1サブ補正フィルタ部61a〜第4サブ補正フィルタ部61dのフィルタ係数を決定する役割を有している。この点で、測定信号再生部11、定在波検出部21、フィルタ係数計算部22は、本発明に係るフィルタ係数決定装置に該当する。メイン補正フィルタ部23は、図示を省略した音源により出力されるオーディオ信号に対して、フィルタ係数計算部22において決定されたフィルタ係数を用いたフィルタ処理を行い、その後にアンプ部13で信号レベルの増幅を行って、スピーカ14から出力する。
【0056】
図5は、定在波検出部21の概略構成を示している。定在波検出部21は、4つの定在波検出ユニット31a〜31dと1つの定在波判定部32とを有している。4つの定在波検出ユニット31a〜31dは、それぞれ、4つの測定マイクロホン15(測定マイクロホンFLM、測定マイクロホンFRM、測定マイクロホンRLM、測定マイクロホンRRM)に対応するようにして設けられている。図5においては、左側前席(助手席)に設置される測定マイクロホンFLMに対応した定在波検出ユニット31aと、右側前席(運転席)に設置される測定マイクロホンFRMに対応した定在波検出ユニット31bと、左側後席に設置される測定マイクロホンRLMに対応した定在波検出ユニット31cと、右側後席に設置される測定マイクロホンRRMに対応した定在波検出ユニット31dとの4つの定在波検出ユニット31が示されている。
【0057】
定在波検出ユニット31a〜31dには、測定信号再生部11により出力される4種類の測定信号が入力されている。具体的には、測定信号として、それぞれが直交しているM系列符号M1〜M4が入力される。また、それぞれの定在波検出ユニット31a〜31dより出力される信号(差分信号)は、定在波判定部32に入力される構成となっている。
【0058】
図6は、左側前席(助手席)に設置される測定マイクロホンFLMに対応した定在波検出ユニット31aと、測定信号再生部11と、定在波判定部32との概略構成を示し、定在波検出ユニット31b〜31dの記載を省略したブロック図を示している。なお、図6においては、定在波検出ユニット31aのブロック図のみを代表例として示すが、右側前席(運転席)に設置される測定マイクロホンFRMに対応した定在波検出ユニット31bと、左側後席に設置される測定マイクロホンRLMに対応した定在波検出ユニット31cと、右側後席に設置される測定マイクロホンRRMに対応した定在波検出ユニット31dも同様の機能ブロックにより構成されている。以下、説明の便宜上、図5に示した定在波検出ユニット31aについて説明を行う。
【0059】
定在波検出ユニット31aは、図6に示すように、測定マイクロホンFLMと各スピーカ14(スピーカFL,FR,RL,RR)との間のインパルス応答に対応する4つのインパルス応答部が2組(インパルス応答部41〜44とインパルス応答部45〜48との組からなる合計8個のインパルス応答部)と、2つの加算部51a,51bと、2つの周波数変換部52a,52bと、2つの対数平均化処理部53a,53bと、差分算出部54とを有している。
【0060】
測定マイクロホンFLMと4つのスピーカ14との間のインパルス応答は、定在波測定装置10において既に検出されており、定在波検出ユニット31aに設置される2組のインパルス応答部(合計8個のインパルス応答部)は、該当する測定マイクロホン15と4つのスピーカ14との間のインパルス応答を、測定信号(M系列符号)に畳み込み積分する役割を有している。
【0061】
具体的に、定在波検出ユニット31aには、スピーカFLと測定マイクロホンFLMとの間のインパルス応答C1を用いて畳み込み積分を行うインパルス応答部41、45と、スピーカFRと測定マイクロホンFLMとの間のインパルス応答C2を用いて畳み込み積分を行うインパルス応答部42、46と、スピーカRLと測定マイクロホンFLMとの間のインパルス応答C3を用いて畳み込み積分を行うインパルス応答部43、47と、スピーカRRと測定マイクロホンFLMとの間のインパルス応答C4を用いて畳み込み積分を行うインパルス応答部44、48とが設けられている。
【0062】
定在波検出ユニット31a〜31dでは、2組設置されるインパルス応答部(インパルス応答部41〜44とインパルス応答部45〜48との2組)のうち、一方の組(1組目)のそれぞれのインパルス応答部(インパルス応答部41〜44)にM系列符号M1〜M4がそれぞれ入力され、他方の組(2組目)のそれぞれのインパルス応答部(インパルス応答部45〜48)にはM系列符合M4がそれぞれ入力される。
【0063】
また、各インパルス応答部41〜48おけるインパルス応答の値は、データ記録部17より読み出されたそれぞれのインパルス応答部41〜48に対応するインパルス応答のデータC1〜C4が設定される。
【0064】
インパルス応答部41〜48は、それぞれのM系列符号M1〜M4の測定信号にそれぞれのインパルス応答を用いて畳み込み積分を行い、加算部51a、51bは、畳み込み積分された測定信号を合成し、合成された測定信号(第1信号、第2信号)は、周波数変換部52a、52bに入力される。
【0065】
ここで、M系列符合M1〜M4はそれぞれ直交しているので、インパルス応答部41〜44にそれぞれのM系列符合M1〜M4が入力されると、いわゆるステレオ信号に該当する信号が入力されて畳み込み積分が行われた場合に該当する。一方で、インパルス応答部45〜48のそれぞれに、同一の測定信号であるM系列符合M4が入力される場合には、それぞれの信号が共通するため、いわゆるモノラル信号に該当する信号が入力されて畳み込み積分が行われた場合に該当する。
【0066】
なお、定在波検出ユニット31aおよび定在波検出ユニット31bにおけるインパルス応答部41〜44および加算部51aは、本発明に係る第1信号合成手段に該当し、定在波検出ユニット31aおよび定在波検出ユニット31bにおけるインパルス応答部45〜48および加算部51bは、本発明に係る第2信号合成手段に該当する。
【0067】
周波数変換部52a、52bは、加算部51a、51bにおいて合成された測定信号を、フーリエ変換により周波数領域に変換する役割を有している。対数平均化処理部53a、53bは、周波数変換部52a、52bにおいて変換された測定信号を、周波数が高くなるに従って平均化数の増加を行うことにより、周波数領域での対数的なスムージング処理を行い、リニア信号をデシベル信号に変換する役割を有している。
【0068】
差分算出部54は、それぞれの対数平均化処理部53a、53bにおいてデシベル信号に変換された各信号を、デシベルの周波数領域おいて、同一M系列符号側から直交M系列符号側を減算する処理を行う役割を有している。
【0069】
なお、インパルス応答部、加算部、周波数変換部、対数平均化処理部、差分算出部の処理は、図5に示した定在波検出ユニット31aだけでなく、運転席に設置される測定マイクロホンFRMの定在波検出ユニット31b、左側後席に設置される測定マイクロホンRLMの定在波検出ユニット31c、右側後席に設置される測定マイクロホンRRMの定在波検出ユニット31dも同様に行われる。このため、後席側に設置される測定マイクロホンRLM、RRMの定在波検出ユニット31c、31dにおいても、インパルス応答部41〜48で、それぞれのM系列符号M1〜M4の測定信号にそれぞれのインパルス応答を用いて畳み込み積分が行われ、それぞれの加算部51a、51bにおいて、畳み込み積分された測定信号が合成される。合成された測定信号が本発明の第3信号、第4信号に該当する。
【0070】
また、定在波検出ユニット31cおよび定在波検出ユニット31dのインパルス応答部41〜45および加算部51aは、本発明に係る第3信号合成手段に該当し、定在波検出ユニット31cおよび定在波検出ユニット31dのインパルス応答部44〜48および加算部51bは、本発明に係る第4信号合成手段に該当する。
【0071】
図7には、実際に車室内で測定マイクロホン15の設置位置ごとにインパルス応答を求め、定在波制御装置20において、同一のM系列符号と直交のM系列符号を測定信号として測定信号再生部11から出力し、定在波検出ユニット31a〜31dにおいて畳み込み積分等された同一のM系列符号の信号と直交するM系列符号の信号との周波数特性を示している。また、図8には、図7に示した周波数特性の差分値を示している。
【0072】
すでに説明したように、同一のM系列符号は、複数のスピーカからボーカル等のモノラル信号が再生される場合に相当し、図7の同一のM系列符号の周波数特性は、スピーカの特性や窓ガラス等の反射等に加えてスピーカ間の干渉が生じている状態が示されている。一方で、図7における直交のM系列符号の周波数特性では、スピーカ間の干渉が生じていない状態が示されている。
【0073】
図8では、同一のM系列符号の信号から直交のM系列符号の信号が減算された場合の周波数特性が示されており、スピーカ間の干渉が顕在化された信号が表されている。図8において、信号レベルが0dB以下となっている部分は、スピーカ間の干渉によりディップが発生している周波数を示しており、マイナス方向の大きさはディップの深さを示している。
【0074】
差分算出部54により同一のM系列符号の信号から直交のM系列符号の信号が減算された信号(図8に示す周波数特性に該当する信号)は、定在波判定部32に入力される。なお、定在波判定部32には、定在波検出ユニット31aの差分算出部54により出力された信号だけでなく、定在波検出ユニット31b〜31dの差分算出部54から出力された信号も入力される。
【0075】
定在波判定部32は、各定在波検出ユニット31a〜31dより入力された信号において、ディップが発生した周波数帯域を検出する役割を有している。一般に、車室内は左右対称の空間構成となっている。従って、運転席において測定される周波数特性と助手席において測定される周波数特性とは同様の特性傾向を示し、左側後席において測定される周波数特性と右側後席において測定される周波数特性とは同様の特性傾向を示す。
【0076】
このため、本実施の形態に係る定在波判定部32では、助手席に設置される測定マイクロホンFLMの定在波検出ユニット31aより入力された信号の周波数特性と、運転席に設置される測定マイクロホンFRMの定在波検出ユニット31bより入力された信号の周波数特性との双方を合成して平均化処理を行った後に、スレッショルド(閾値)を設定することにより、ディップが発生した周波数特性の検出を行う。
【0077】
また、同様にして、定在波判定部32では、左側後席に設置される測定マイクロホンRLMの定在波検出ユニット31cより入力された信号の周波数特性と、右側後席に設置される測定マイクロホンRRMの定在波検出ユニット31dより入力された信号の周波数特性との双方を合成して平均化処理を行った後に、スレッショルドを設定することにより、ディップが発生した周波数特性の検出を行う。
【0078】
具体的に、定在波判定部32は、スレッショルド以下となった周波数帯を検出し、また、信号レベルが最小となる周波数を検出する。この検出により、スレッショルド以下となる周波数帯において、最小値が含まれる周波数帯を深いディップが発生している周波数帯と判定する。
【0079】
図9(a)は、前席側の平均化処理を行った後の周波数特性を示し、図9(b)は後席側の平均化処理を行った後の周波数特性を示している。図9(a)(b)においては、定在波判定部32においてスレッショルドが−6dBに設定された場合が示されている。前席側の最小値となる周波数、図9(a)に示すように、380Hzであり、その信号レベルは−8.5dBとなる。一方で、後席側の最小値となる周波数、図9(b)に示すように、90Hzであり、その信号レベルは−12.0dBとなる。これらのスレッショルドにより、深いディップが発生している周波数帯は、信号レベルが最小値となる信号レベルを含み、スレッショルド以下となる信号レベルの周波数帯域であると判断し、定在波判定部32は、前席側で250Hz〜400Hz、後席側で80Hz〜140Hzとして判定する。このようにして判定された周波数を前席側の定在波周波数(前席側定在波周波数)および後席側の定在波周波数(後席側定在波周波数)としてフィルタ係数計算部22に出力する。
【0080】
なお、定在波判定部32において設定されるスレッショルドの値は、後述する位相制御により聴感上の効果が明確に感じられる値(人間が明らかに音が変わると判断できるレベル)が設定される。本実施の形態では、スレッショルドとして、一般的に振幅で半分となる−6dBの値を設定した。また、定在波検出ユニット31aおよび定在波検出ユニット31bにおける差分算出部54および定在波判定部32は、本発明に係る前席側定在波周波数検出手段に該当し、定在波検出ユニット31cおよび定在波検出ユニット31dにおける差分算出部54および定在波判定部32は、本発明に係る後席側定在波周波数検出手段に該当する。
【0081】
次に、フィルタ係数計算部22について説明する。フィルタ係数計算部22は、定在波検出部21の定在波判定部32より取得した前席側および後席側の定在波周波数と、フィルタ係数テーブルとに基づいて、メイン補正フィルタ部23におけるフィルタ係数を選定する役割を有している。
【0082】
図10は、フィルタ係数計算部22の概略構成を示したブロック図である。フィルタ係数計算部22は、第1サブ補正フィルタ部61aと、第2サブ補正フィルタ部61bと、第3サブ補正フィルタ部61cと、第4サブ補正フィルタ部61dと、定在波検出ユニット31a〜31dと、レベル判定部62と、フィルタ係数テーブル部63とを有している。また、フィルタ係数計算部22においても測定信号再生部11が接続されており、測定信号再生部11は、定在波検出ユニット31a〜31d、第1サブ補正フィルタ部61a、第2サブ補正フィルタ部61b、第3サブ補正フィルタ部61cおよび第4サブ補正フィルタ部61dに対して、同一のM系列符合M4を出力する。
【0083】
定在波検出ユニット31a〜34dは、図5、図6において説明した定在波検出ユニットと同一のものである。図11に、左側前席(助手席)に設置される測定マイクロホンFLMに対応した定在波検出ユニット31aと、測定信号再生部11と、レベル判定部62と、フィルタ係数テーブル部63と、第1サブ補正フィルタ部61a〜第4サブ補正フィルタ部61dとの概略構成を示し、定在波検出ユニット31b〜31dの記載を省略したブロック図を示している。なお、図11においては、定在波検出ユニット31aのブロック図のみを代表例として示すが、右側前席(運転席)に設置される測定マイクロホンFRMに対応した定在波検出ユニット31bと、左側後席に設置される測定マイクロホンRLMに対応した定在波検出ユニット31cと、右側後席に設置される測定マイクロホンRRMに対応した定在波検出ユニット31dも同様の機能ブロックにより構成されることになる。以下、説明の便宜上、図11に示した定在波検出ユニット31aについて説明を行う。
【0084】
測定信号再生部11より出力される測定信号(M系列符合M4)は、第1サブ補正フィルタ部61a、第2サブ補正フィルタ部61b、第3サブ補正フィルタ部61cおよび第4サブ補正フィルタ部61dに入力される。第1サブ補正フィルタ部61a、第2サブ補正フィルタ部61b、第3サブ補正フィルタ部61cおよび第4サブ補正フィルタ部61dに入力されたM系列符合M4は、それぞれのサブ補正フィルタ部61a〜61dにおいてフィルタ処理が行われた後に、それぞれインパルス応答部41〜44に入力される。
【0085】
なお、第1サブ補正フィルタ部61aおよび第2サブ補正フィルタ部61bは、本発明に係る前席側フィルタ処理手段に該当し、第3サブ補正フィルタ部61cおよび第4サブ補正フィルタ部61dは、本発明に係る後席側フィルタ処理手段に該当する。
【0086】
インパルス応答部41〜44では、入力された信号を、それぞれのインパルス応答部41〜44においてインパルス応答C1〜C4により畳み込み積分を行った後に、加算部51aにおいて合成する。その後、加算部51aにおいて合成された測定信号は、周波数変換部52aにおいて、フーリエ変換により周波数領域に変換され、対数平均化処理部53aにおいて、周波数領域での対数的なスムージング処理が行われ、リニア信号からデシベル信号に変換される。
【0087】
なお、定在波検出ユニット31aおよび定在波検出ユニット31bにおけるインパルス応答部41〜44および加算部51aは、本発明に係る第5信号合成手段に該当する。また、定在波検出ユニット31cおよび定在波検出ユニット31dにおけるインパルス応答部41〜44および加算部51aは、本発明に係る第6信号合成手段に該当する。また、それぞれの加算部51aにおいて合成された測定信号は、本発明に係る第5信号および第6信号に該当する。
【0088】
一方で、測定信号再生部11より、サブ補正フィルタ部61a〜61dを介さずに、直接にインパルス応答部45〜48に入力された測定信号(M系列符合)は、それぞれのインパルス応答部45〜48においてインパルス応答C1〜C4により畳み込み積分を行った後に、加算部51bにおいて合成する。その後、加算部51bにおいて合成された測定信号は、周波数変換部52bにおいて、フーリエ変換により周波数領域に変換され、対数平均化処理部53bにおいて、周波数領域での対数的なスムージング処理が行われ、リニア信号からデシベル信号に変換される。なお、いずれのインパルス応答部41〜48に入力される測定信号も同一のM系列符号であるため、モノラル信号に対する処理が行われることになる。
【0089】
その後、対数平均化処理部53a,53bにおいてデシベル信号に変換された信号は、差分算出部54において、サブ補正フィルタ部61a〜61dによりフィルタ処理が行われた信号から補正処理が行われなかった信号を減算する処理を行う。この減算処理により、サブ補正フィルタ部61a〜61dによりフィルタ処理によって位相制御を行った場合の信号レベルの増減量を求めることが可能となる。
【0090】
なお、上述した定在波検出ユニット31のインパルス応答部、加算部、周波数変換部、対数平均化処理部、差分算出部の処理は、図11に示した定在波検出ユニット31aだけでなく、運転席に設置される測定マイクロホンFRMの定在波検出ユニット31b、左側後席に設置される測定マイクロホンRLMの定在波検出ユニット31c、右側後席に設置される測定マイクロホンRRMの定在波検出ユニット31dも同様に行われる。
【0091】
第1サブ補正フィルタ部61a〜第4サブ補正フィルタ部61dは、上述したように、測定信号であるM系列符合に対してフィルタ処理を行う役割を有している。第1サブ補正フィルタ部61a〜第4サブ補正フィルタ部61dは、2次のIIRフィルタを用いたオールパスフィルタにより構成され、周波数の振幅特性を一定に保持したまま位相の制御を行う役割を有している。具体的に、第1サブ補正フィルタ部61aは左前席側のスピーカFL用の位相制御を行う役割を有し、第2サブ補正フィルタ部61bは、右前席側のスピーカFR用の位相制御を行う役割を有している。また、第3サブ補正フィルタ部61cは左後席側のスピーカRL用の位相制御を行う役割を有し、第4サブ補正フィルタ部61dは、右後席側のスピーカRR用の位相制御を行う役割を有している。
【0092】
各サブ補正フィルタ部61a〜61dのフィルタ係数は、フィルタ係数テーブル部63によって設定される。第1サブ補正フィルタ部61a〜第4サブ補正フィルタ部61dの内部構成については後述する。
【0093】
フィルタ係数テーブル部63は、定在波検出部21より取得した前席側の定在波周波数の帯域情報と、後席側の定在波周波数の帯域情報と、後述するレベル判定部62により求められる位相差情報とに基づいて、第1サブ補正フィルタ部61a〜第4サブ補正フィルタ部61dのフィルタ係数を決定する役割を有している。フィルタ係数テーブル部63は、フィルタ係数テーブルを備えており、このフィルタ係数テーブルに、前席側の定在波周波数の帯域情報における上限周波数および下限周波数とに基づいて第1サブ補正フィルタ部61aと第2サブ補正フィルタ部61bとのフィルタ係数を決定し、後席側の定在波周波数の帯域情報における上限周波数および下限周波数とに基づいて第3サブ補正フィルタ部61cと第4サブ補正フィルタ部61dとのフィルタ係数を決定する。なお、フィルタ係数テーブル部63は、本発明におけるフィルタ係数テーブル手段に該当する。
【0094】
図12は、フィルタ係数テーブルを示した図である。フィルタ係数テーブルは、車室内の音響特性など基づいて予め各値が算出されている。フィルタ係数テーブルには、後席側の定在波周波数に対する前席側の定在波周波数の位相差として、−180度から175度までの値と、下限周波数として、20Hzから495Hzまでの値と、上限周波数として、25Hzから500Hzまでの値との組み合わせに対応する前席側のフィルタ係数の値a2,a3,b1,b2と後席側のフィルタ係数の値a2,a3,b1,b2とが設定されている。
【0095】
フィルタ係数テーブルに設定されるフィルタ係数は、テーブルの設定項目における下限周波数から上限周波数の間において、後席側の定在波周波数に対する前席側の定在波周波数の位相差を、フィルタ係数テーブルに記載される位相差の値に補正(フィルタ処理)するためのフィルタ係数が予め設定されている。このため、フィルタ係数テーブル部63では、フィルタ係数テーブルに基づいて、レベル判定部62より取得した位相差情報と、定在波検出部21より取得した前席側および後席側の定在波周波数における上限周波数および下限周波数の値とを用いることによって、第1サブ補正フィルタ部61a〜第4サブ補正フィルタ部61dにおけるフィルタ係数を求めることが可能となる。
【0096】
図13は、第1サブ補正フィルタ部61a〜第4サブ補正フィルタ部61dの内部構造を示したブロック図である。各サブ補正フィルタ部61a〜61dは、直接型II転置構成の2次のIIRフィルタを用いたオールパスフィルタである。図13において、Kはゲインを示し、各符号b1,b2,a1,a2に該当するゲインが、フィルタ係数テーブルにより求められたフィルタ係数に基づいて設定される。また、Zは遅延を示しており、本実施の形態に係るサブ補正フィルタ部61a〜61dでは、1サンプルの遅延が設定されている。第1サブ補正フィルタ部61a〜第4サブ補正フィルタ部61dは、フィルタ係数テーブルにより求められたフィルタ係数の値が設定されるa2,a3,b1,b2については、それぞれ同一の係数が設定されている。
【0097】
レベル判定部62は、フィルタ係数テーブル部の位相差を−180度から175度まで5度のステップで可変させて、設定された位相差情報をフィルタ係数テーブル部63に出力する役割を有している。そして、フィルタ係数テーブル部63では、レベル判定部62より取得した位相差情報に基づいて、第1サブ補正フィルタ部61a〜第4サブ補正フィルタ部61dのフィルタ係数を設定する。レベル判定部62では、設定されたフィルタ係数に基づく差分信号を、定在波検出ユニット31aおよび定在波検出ユニット31bのそれぞれの差分算出部54より取得して、左側前席(助手席)に設置される測定マイクロホンFLMに対応した定在波検出ユニット31aからの差分信号と、右側前席(運転席)に設置される測定マイクロホンFRMに対応した定在波検出ユニット31bからの差分信号との信号レベルの増減量を合成して、位相差に対する前席側の信号レベルの増減量を求める。
【0098】
また、同様にして、レベル判定部62は、第1サブ補正フィルタ部61a〜第4サブ補正フィルタ部61dで設定されたフィルタ係数に基づく差分信号を、定在波検出ユニット31cおよび定在波検出ユニット31dのそれぞれの差分算出部54より取得して、左側後席に設置される測定マイクロホンRLMに対応した定在波検出ユニット31cからの差分信号と、右側後席に設置される測定マイクロホンRRMに対応した定在波検出ユニット31dからの差分信号との信号レベルの増減量を合成して、位相差に対する後席側の信号レベルの増減量を求める。
【0099】
図14は、図9(b)に示すように、スレッショルドを−6dBに設定することにより、判定された後席側の定在波周波数の下限周波数80Hz、上限周波数140Hzを基準として、深いディップが発生している後席側の位相差を−180度から180度の間で制御した場合における、前席側の差分信号の信号レベルの増減量(増減変化量)と、後席側の差分信号の信号レベルの増減量(増減変化量)との値を示したグラフである。
【0100】
図14のグラフに示されるように、後席側の増減量は、位相差が0度の場合を基準として、位相差が0度から−180度へ減少するに従って増減量がプラス側に増大し、また、位相差が0度から180度へ増加するに従って増減量がプラス側に増大する傾向を示している。
【0101】
一方で、前席側の増減量は、位相差が−90度から0度の間においては増減量が変化せず安定するが、−90度から−180度へ減少するに従って増減量がマイナス側へと減少し、また、位相差が0度から180度へ増加するに従って増減量がマイナス側に減少する傾向を示している。
【0102】
ここで、図9(a)に示された前席側のディップの深さと、図9(b)に示された後席側のディップの深さとを比較すると、前席側に比べて後席側のディップの深さの方が深い(ディップの発生した信号レベルが低い)。このため、深いディップが発生する後席側の位相差を積極的に制御することにより後席側のディップを低減させつつ、位相差制御により前席側のディップが深くならないように制御することが望ましい。
【0103】
従って、図14に示すグラフにおいて、前席側の増減量の変化が少なく、かつ、後席側の増減量が大きくなる(つまり、後席側のみ位相差調整による大きな影響が発生し得る)位相差を求めることにより、前席側の信号レベル変動を抑制しつつ、後席側の信号レベルを大きく改善させることが可能となる。このため、図14に示す場合においては、前席側の増減量の変化が少なく、かつ、後席側の増減量が大きくなる位相差である−90度を最適な位相差として決定することができる。
【0104】
レベル判定部62は、図14に示したような前席側の信号レベルの変化量と、後席側の信号レベルの変化量に基づいて、前席側の増減量の変化が少なく、かつ、後席側の増減量が大きくなる位相差となる、−90度の値を検出する。そして、検出された位相差の値をフィルタ係数テーブル部63に出力する。なお、定在波検出ユニット31a〜31dの差分算出部54およびレベル判定部62は、前席側と後席側との差分信号を求め、前席側の増減量の変化が少なく、かつ、後席側の増減量が大きくなる位相差を検出する点において、本発明に係る位相差検出手段に該当する。
【0105】
なお、本実施の形態では、深いディップが発生する後席側の位相差を制御する場合を一例として示して説明を行うが、位相制御は後席側の位相だけを制御する場合だけには限定されない。例えば、前席側および後席側の測定マイクロホンにおいてもディップが検出される場合には、前席側および後席側の全体の信号レベルの最適化を行うことになり、また、前席側に深いディップが発生する場合には、前席側の位相差を制御する方法を用いることも可能である。
【0106】
レベル判定部62より−90度の位相差の値を取得したフィルタ係数テーブル部63は、位相差−90度に基づいて、メイン補正フィルタ部23に設定するためのフィルタ係数を求める。図12に示すフィルタ係数テーブルに基づいて、位相差−90度、前席側の上限周波数140Hzにした場合に求められるサブ補正フィルタ部61aおよびサブ補正フィルタ部61bのフィルタ係数は、以下のようになる。
【0107】
前席側のサブ補正フィルタ部(第1サブ補正フィルタ部61aおよび第2サブ補正フィルタ部61b)のフィルタ係数
a2=-1.9810692365072391
a3=0.98154930488456404
b1=0.98154930488456404
b2=-1.9810692365072391
【0108】
また、図12に示すフィルタ係数テーブルに基づいて、位相差−90度、後席側の下限周波数80Hzにした場合に求められる各サブ補正フィルタ部61cおよびサブ補正フィルタ部61dのフィルタ係数は、以下のようになる。
【0109】
後席側のサブ補正フィルタ部(第3サブ補正フィルタ部61cおよび第4サブ補正フィルタ部61d)のフィルタ係数
a2=-1.98133469305836
a3=0.98154930488456404
b1=0.98154930488456404
b2=-1.98133469305836
【0110】
また、位相差を−90度とした場合のオールパスフィルタの位相特性を図15および図16に示す。図15は前席側と後席側とのそれぞれの位相特性(位相の値)を示し、図16は、後席側の位相特性から前席側の位相特性を差し引いた場合の位相の値を示している。図15に示すように、後席側に対して前席側の位相には遅れが生じており、位相差は図16に示すように110Hz付近において最大−90度の値を示すことになる。
【0111】
図17は、上述したフィルタ係数が設定された場合において、第1サブ補正フィルタ部61a〜第4サブ補正フィルタ部61dにおいてフィルタ処理が行われる信号が対数平均化処理部53a、53bにより平均化処理された後の周波数特性であって、実際に第1サブ補正フィルタ部61a〜第4サブ補正フィルタ部61dにより位相制御が行われた場合と、行われなかった場合における周波数特性を、各測定マイクロホン15の設置位置に対応する定在波検出ユニット31a〜31d(測定マイクロホンFLM,FRM,RLM,RRM)毎に示した図である。
【0112】
図17に示すように、サブ補正フィルタ部61a〜61dによって最適な位相差に基づく補正処理(位相処理)を行うと、前席側の周波数特性はほとんど変化しないが、後席側の周波数特性では、110Hz付近の帯域において、大幅に信号レベルが増加しており、スピーカ間の干渉によるディップが低減していることが判断できる。
【0113】
また、図18は、フィルタ係数テーブルにおいて、下限周波数を80Hz、上限周波数を140Hz、位相差を−180度に設定した場合のフィルタ係数を用いて、図17と同様に対数平均化処理部53a、53bより出力される信号の周波数特性を、各測定マイクロホン15の設置位置に対応する定在波検出ユニット31a〜31d(測定マイクロホンFLM,FRM,RLM,RRM)毎に示した図である。
【0114】
図18に示すように、サブ補正フィルタ部61a〜61dにより位相制御を行うと、前席側の信号レベルは低下するが、後席側の110Hz付近の帯域において、図17よりもさらに信号レベルが増加しており、スピーカ間の干渉によるディップが低減していることがわかる。従って、調整を行うにあたって、後席側のディップが極度に深い場合などにおいては、前席側の信号レベルの低減をある程度考慮しつつ、積極的に後席側の干渉を低減させるような位相差を設定して、補正処理を行うことも有効となる場合が存在する。
【0115】
以上のように、フィルタ係数計算部22においては、定在波検出部21(定在波判定部32)から取得した前席側および後席側の定在波周波数に基づいて、スピーカ間の干渉によるディップを低減するフィルタ係数の選定を行う。
【0116】
次に、メイン補正フィルタ部23について説明する。メイン補正フィルタ部23は、図4に示すように、図10および図11において説明した第1サブ補正フィルタ部61a〜第4サブ補正フィルタ部61dと同様の構成を有する4つのオールパスフィルタにより構成されている。本実施の形態に係るメイン補正フィルタ部23では、図4に示すように、4つのオールパスフィルタを、図10および図11において説明した第1サブ補正フィルタ部61a〜第4サブ補正フィルタ部61dと同一の符合を用いる。
【0117】
メイン補正フィルタ部23には、図4に示すように、Lチャンネル用のオーディオ信号とRチャンネル用のオーディオ信号とがそれぞれ入力されている。メイン補正フィルタ部23に入力されたLチャンネル用のオーディオ信号は、左前席側における出力信号の位相制御を行うための第1サブ補正フィルタ部61aと、左後席側における出力信号の位相制御を行うための第3サブ補正フィルタ部61cとにおいて、フィルタ係数計算部22において求められたフィルタ係数に基づくフィルタ処理が行われる。また、メイン補正フィルタ部23に入力されたRチャンネル用のオーディオ信号は、右前席側における出力信号の位相制御を行うための第2サブ補正フィルタ部61bと、右後席側における出力信号の位相制御を行うための第4サブ補正フィルタ部61dとにおいて、フィルタ係数計算部22において求められたフィルタ係数に基づくフィルタ処理が行われる。
【0118】
このフィルタ処理において、メイン補正フィルタ部23におけるフィルタ係数は、上述したフィルタ係数計算部22において求められたフィルタ係数であって、前席側におけるオーディオ信号と後席側におけるオーディオ信号との位相差により、最も効果的に干渉によるディップの発生を抑制することが可能なフィルタ係数の値である。このため、メイン補正フィルタ部23を構成する第1サブ補正フィルタ部61a〜第4サブ補正フィルタ部61dによりフィルタ処理が行われたオーディオ信号が、アンプ部13で信号レベルの増幅後に車室に設置されたスピーカ14(FL,FR,RL,RR)より出力された場合には、各座席において発生し得るディップを効果的に抑制することができる。
【0119】
特に、本実施の形態に係る定在波制御装置20においては、後席側において発生する可能性の高いディップを効果的に抑制することが可能となる。従って、スピーカ14(FL,FR,RL,RR)より出力されるオーディオ信号は、メイン補正フィルタ部23において、前席側にはほとんど影響を及ぼさず、後席側におけるスピーカ間の干渉を低減させることが可能な信号としてスピーカ14より出力されることになる。
【0120】
以上説明したように、本実施の形態に係る定在波制御装置20では、同一のM系列符号と直交のM系列符号を用いてその差分により定在波の干渉を判定するため、ディップが発生する車室内の座席位置と、その周波数帯を簡易に検出することが可能となる。
【0121】
また、本実施の形態に係る定在波制御装置20は、従来技術の周波数補正のように信号レベルの増幅などを行う必要がないため、アンプ部13やスピーカ14においてノイズや歪みが増加されたり発生したりすることを防止することができる。また、スピーカ14より出力されるオーディオ信号を、予め減衰させることができるので、全体的な消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0122】
以上、本発明に係るフィルタ係数決定装置について、定在波制御装置20を一例として示し、図面を用いて詳細に説明を行ったが、本発明に係るフィルタ係数決定装置は上述した実施の形態に例示したものには限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0123】
例えば、メイン補正フィルタ部23において、4個のオールパスフィルタ(第1サブ補正フィルタ部61a〜第4サブ補正フィルタ部61d)を用いて、入力されるオーディオ信号の他の周波数に対しても補正フィルタを適用させる場合には、さらに他のオールパスフィルタを追加することが可能である。
【符号の説明】
【0124】
10 …定在波測定装置
11 …測定信号再生部(測定信号再生手段)
12 …スピーカ選択部
13 …アンプ部
14、FL、FR、RL、RR …スピーカ(前席スピーカ、後席スピーカ)
15、FLM、FRM、RLM、RRM …測定マイクロホン(前席測定マイクロホン、後席測定マイクロホン)
16 …測定部(インパルス応答測定手段)
17 …データ記録部
20 …定在波制御装置(フィルタ係数決定装置)
21 …定在波検出部(フィルタ係数決定装置)
22 …フィルタ係数計算部(フィルタ係数決定装置)
23 …メイン補正フィルタ部
31、31a〜31d …定在波検出ユニット
32 …定在波判定部(前席側定在波周波数検出手段、後席側定在波周波数検出手段)
41〜44 …インパルス応答部(第1信号合成手段、第3信号合成手段、第5信号合成手段、第6信号合成手段)
45〜48 …インパルス応答部(第2信号合成手段、第4信号合成手段)
51a、51b …加算部(第1信号合成手段、第2信号合成手段、第3信号合成手段、第4信号合成手段、第5信号合成手段、第6信号合成手段)
52a、52b …周波数変換部
53a、53b …対数平均化処理部
54 …差分算出部(前席側定在波周波数検出手段、後席側定在波周波数検出手段、位相差検出手段)
61a …第1サブ補正フィルタ部(前席側フィルタ処理手段)
61b …第2サブ補正フィルタ部(前席側フィルタ処理手段)
61c …第3サブ補正フィルタ部(後席側フィルタ処理手段)
61d …第4サブ補正フィルタ部(後席側フィルタ処理手段)
62 …レベル判定部(位相差検出手段)
63 …フィルタ係数テーブル部(フィルタ係数テーブル手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に座席が配置された車室内の前席側に設置された前席スピーカと、後席側に設置された後席スピーカと、
前記車室内の前席位置に設置された前席測定マイクロホンと、後席位置に設置された後席測定マイクロホンと、
前記前席スピーカより出力された信号を前記前席測定マイクロホンおよび前記後席測定マイクロホンで測定すると共に、前記後席スピーカより出力された信号を前記前席測定マイクロホンおよび前記後席測定マイクロホンで測定することにより、各スピーカから各測定マイクロホンまでのそれぞれの組み合わせに対応したインパルス応答を測定するインパルス応答測定手段と、
互いに直交した異なるM系列符合信号を出力することが可能な測定信号再生手段と、
前記インパルス応答測定手段により測定された前記前席スピーカから前記前席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記測定信号再生手段より出力された前記互いに直交した一のM系列符合信号の畳み込み積分を行うと共に、前記インパルス応答測定手段により測定された前記後席スピーカから前記前席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記測定信号再生手段より出力された前記互いに直交した他のM系列符合信号の畳み込み積分を行い、畳み込み積分の行われたそれぞれの直交したM系列符合信号を合成して、前記前席スピーカと前記後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれない第1信号を生成する第1信号合成手段と、
前記インパルス応答測定手段により測定された前記前席スピーカから前記前席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記測定信号再生手段より出力された前記互いに直交した一のM系列符合信号の畳み込み積分を行うと共に、前記インパルス応答測定手段により測定された前記後席スピーカから前記前席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記測定信号再生手段より出力された前記一のM系列符合信号の畳み込み積分を行い、畳み込み積分の行われたそれぞれのM系列符合信号を合成して、前記前席スピーカと前記後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれた第2信号を生成する第2信号合成手段と、
前記第2信号から前記第1信号を減算した信号の周波数特性において、信号レベルが最小の値を示す周波数を求めるとともに、当該最小の値を示す周波数を含んで、所定の信号レベル以下となる周波数範囲を前席側定在波周波数として求める前席側定在波周波数検出手段と、
前記インパルス応答測定手段により測定された前記前席スピーカから前記後席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記測定信号再生手段より出力された前記互いに直交した一のM系列符合信号の畳み込み積分を行うと共に、前記インパルス応答測定手段により測定された前記後席スピーカから前記後席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記測定信号再生手段より出力された前記互いに直交した他のM系列符合信号の畳み込み積分を行い、畳み込み積分の行われたそれぞれの直交したM系列符合信号を合成して、前記前席スピーカと前記後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれない第3信号を生成する第3信号合成手段と、
前記インパルス応答測定手段により測定された前記前席スピーカから前記後席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記測定信号再生手段より出力された前記互いに直交した一のM系列符合信号の畳み込み積分を行うと共に、前記インパルス応答測定手段により測定された前記後席スピーカから前記後席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記測定信号再生手段より出力された前記一のM系列符合信号の畳み込み積分を行い、畳み込み積分の行われたそれぞれのM系列符合信号を合成して、前記前席スピーカと前記後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれた第4信号を生成する第4信号合成手段と、
前記第4信号から前記第3信号を減算した信号の周波数特性において、信号レベルが最小の値を示す周波数を求めるとともに、当該最小の値を示す周波数を含んで、所定の信号レベル以下となる周波数範囲を後席側定在波周波数として求める後席側定在波周波数検出手段と、
前記前席側定在波周波数の周波数範囲における上限周波数および下限周波数と、前記後席側定在波周波数に対する前記前席側定在波周波数の位相差の値とに基づいて決定される前席側フィルタ係数と、前記後席側定在波周波数の周波数範囲における上限周波数および下限周波数と、前記位相差の値とに基づいて決定される後席側フィルタ係数とが、様々な前記上限周波数、様々な前記下限周波数、および様々な前記位相差の値の組み合わせに基づいて前記車室内の音響特性に応じて予め算出されたフィルタ係数テーブルを備えるフィルタ係数テーブル手段と、
前記測定信号再生手段より出力される前記一のM系列符合信号に対して前記前席側フィルタ係数に基づいてフィルタ処理を行う前席側フィルタ処理手段と、
前記測定信号再生手段より出力される前記一のM系列符合信号に対して前記後席側フィルタ係数に基づいてフィルタ処理を行う後席側フィルタ処理手段と、
前記前席スピーカから前記前席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記前席側フィルタ処理手段によりフィルタ処理された前記一のM系列符合信号の畳み込み積分を行うと共に、前記後席スピーカから前記前席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記前席側フィルタ処理手段によりフィルタ処理された前記一のM系列符合信号の畳み込み積分を行い、畳み込み積分の行われたそれぞれの前記一のM系列符合信号を合成して、前記前席スピーカと前記後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれない第5信号を生成する第5信号合成手段と、
前記前席スピーカから前記後席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記後席側フィルタ処理手段によりフィルタ処理された前記一のM系列符合信号の畳み込み積分を行うと共に、前記後席スピーカから前記後席測定マイクロホンまでの前記インパルス応答を用いて、前記後席側フィルタ処理手段によりフィルタ処理された前記一のM系列符合信号の畳み込み積分を行い、畳み込み積分の行われたそれぞれの前記一のM系列符合信号を合成して、前記前席スピーカと前記後席スピーカとの間の干渉の影響が含まれない第6信号を生成する第6信号合成手段と、
前記第5信号から前記第2信号を減算して前記前席側の差分信号を求めるとともに、前記第6信号から前記第4信号を減算して前記後席側の差分信号を求めて、前記前席側の差分信号における信号レベルの増減変化と前記後席側の差分信号における信号レベルの増減変化量を、前記フィルタ係数テーブル手段において設定された位相差の値に対応づけて検出することにより、前記前席側の信号レベルの増減変化量あるいは前記後席側の信号レベルの増減変化量のいずれか一方の増減変化量が増減せず、いずれか他方の増減変化量が大きく増加する位相差の値を求める位相差検出手段とを有し、
前記フィルタ係数テーブル手段は、前記位相差検出手段において検出された位相差の値と、前記前席側定在波周波数の周波数範囲における上限周波数および下限周波数とに基づいて前記フィルタ係数テーブルより求められる前席側フィルタ係数を、前記前席スピーカより出力されるオーディオ信号に対してフィルタ処理を行うためのフィルタ係数と決定し、前記位相差検出手段において検出された位相差の値と、前記後席側定在波周波数の周波数範囲における上限周波数および下限周波数とに基づいて前記フィルタ係数テーブルより求められる後席側フィルタ係数を、前記後席スピーカより出力されるオーディオ信号に対してフィルタ処理を行うためのフィルタ係数と決定すること
を特徴とするフィルタ係数決定装置。
【請求項2】
前記前席側定在波周波数を求めるために設定される所定の信号レベル、および前記後席側定在波周波数を求めるために設定される所定の信号レベルは、−6dBであること
を特徴とする請求項1に記載のフィルタ係数決定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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