説明

フィルム送り装置

【課題】伸び性が大きな転写フィルムを使用した場合でも、帯状フィルムに皺が生じるのを防止し、もってワークへの良好な転写品質を確保可能なフィルム送り装置を提供する。
【解決手段】フィルム送り完了後、転写フィルムFにフィルム送り方向に第1所定張力を付与する送り方向張力付与手段170、及びフィルム幅方向に第2所定張力を付与する幅方向張力付与手段180を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写装置に設けられ、帯状の転写フィルムをワークに対応位置するように送るフィルム送り装置に関し、転写の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
転写フィルムに形成された絵柄をワークに転写する転写装置として、従来より種々の装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、押し付けヘッドによって枚葉状の転写フィルムを加熱しながらワークに押付けることにより、転写フィルム上の絵柄をワークに転写する転写装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、上下のチャンバ部材間に挟まれた転写フィルムを加熱しながら下側チャンバ部材内の空間を真空状態とすることにより、上側チャンバ部材内の空間の気体の圧力により転写フィルムをワークの表面に密着させて転写フィルム上の絵柄をワークの表面に転写する転写装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、固定型と可動型との間に、転写フィルムを介在させ、樹脂成形品(ワーク)の射出成形と同時に該フィルム上の絵柄を成形品に転写する同時成形転写装置が開示されている。
【0006】
ここで、転写フィルムとしては、特許文献3に記載のように、帯状の転写フィルムが利用される場合があり、この場合、1つのワークへの転写作業が終了した際に転写フィルムを1ピッチ移送して、該フィルムにおける未転写の絵柄を次のワークに対応位置させるフィルム送り装置が設けられる。詳しく説明すると、型の上流側には転写フィルムを供給するフィルム供給ロールが配設されると共に、下流側には使用後のフィルムを巻き取る巻取りロールが配設されるが、この場合、転写フィルムのフィルム送り方向に弛みが生じないように、フィルム供給ロールにはパウダークラッチ等を介して反供給方向の微弱な回転力が付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−120817号公報
【特許文献2】特開2007−168121号公報
【特許文献3】特開昭63−176151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記特許文献2に記載のもののように立体形状のワークに転写するものにおいて、帯状の転写フィルムを用いると共に、そのためのフィルム送り装置として、前記特許文献3に記載のフィルム送り装置を利用することが考えられる。しかし、この場合、以下のような問題がある。すなわち、立体形状のワークに転写するための転写フィルムには、ワークの表面に該フィルムが密着可能なように大きな伸び性が必要とされるが、伸び性が大きな転写フィルムは、絵柄がワークに対応位置するようにフィルム送りしたときに、フィルム供給ロールの前記回転力により、皺、特にフィルム送り方向の縦皺が生じやすく、その結果、ワークへの転写品質が悪化する虞があるのである。
【0009】
そこで、本発明は、伸び性が大きな転写フィルムを使用した場合でも、帯状フィルムに皺が生じるのを防止し、もってワークへの良好な転写品質を確保可能なフィルム送り装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、前記課題を解決するために、次のように構成したことを特徴とする。
【0011】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、転写装置に設けられ、帯状の転写フィルムをワークに対応位置するように送るフィルム送り装置であって、フィルム送り完了後、前記転写フィルムにフィルム送り方向に第1所定張力を付与する送り方向張力付与手段、及びフィルム幅方向に第2所定張力を付与する幅方向張力付与手段が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載のフィルム送り装置であって、前記送り方向の張力付与手段は、前記帯状の転写フィルムの上流端を把持する上流端把持手段と、前記対応位置よりもフィルム送り方向下流側において転写フィルムを両面から挟む一対のローラと、フィルム送り完了後、該ローラをフィルム戻し方向に回動さるモータと、該モータを、転写フィルムのフィルム送り方向に第1所定張力が付与されるように所定トルクで駆動させるモータ制御手段とを有していることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載のフィルム送り装置であって、前記所定トルクの値を設定するトルク設定手段が設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフィルム送り装置であって、前記幅方向張力付与手段は、前記送り方向張力付与手段による第1所定張力の付与後、帯状の転写フィルムの左右の側部を把持する左右一対のフィルム側部把持手段と、該フィルム側部把持手段で転写フィルムの左右の側部が把持された後、左右のフィルム側部把持手段をフィルム幅方向において互いに離反するように移動させる移動手段と、該移動手段の駆動源を構成するモータを、転写フィルムのフィルム幅方向に第2所定張力が付与されるように第2所定トルクで駆動させるモータ制御手段とを有していることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項4に記載のフィルム送り装置であって、前記第2所定トルクの値を設定するトルク設定手段が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
次に、本発明の効果について説明する。
【0017】
まず、請求項1に記載の発明によれば、送り手段によるフィルム送り完了後、帯状フィルムの転写部分に、送り方向張力付与手段によりフィルム送り方向に第1所定張力がされると共に、幅方向張力付与手段によりフィルム幅方向にも第2所定張力が付与されることとなる。その場合に、この第1、第2所定張力を、使用する転写フィルム等に応じた適切な張力に設定しておくことにより、転写フィルムに皺、特に縦皺が生じるのが防止されることとなる。したがって、ワークへの良好な転写品質を確保することができる。なお、本発明の技術は、延び性が高くない転写フィルムを利用する場合においても適切な張力を付与することができる。特に、幅が広い転写フィルムにおいては左右の側部が幅方向内側へカールしやすくなるが、本発明によれば、幅方向に適切な張力を付与することによりこのようなカールも防止することができる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、送り方向張力付与手段を具体化したものであり、該発明によれば、上流側把持手段により、前記帯状フィルムにおける転写部分のフィルム送り方向上流側が把持されると共に、一対のローラにより、前記対応位置よりもフィルム送り方向下流側において転写フィルムが両面から挟まれ、前記送り手段によるフィルム送り完了後、モータにより前記ローラがフィルム戻し方向に回動されることとなる。その場合に、モータがモータ制御手段により所定トルクで駆動され、これにより、転写フィルムのフィルム送り方向に第2所定張力が付与されることとなる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記所定トルクの値を設定するトルク設定手段が設けられているから、伸び性等の異なる種々の転写フィルムを利用する場合に、前記モータをそれぞれの転写フィルムに適した所定トルクで駆動させることができる。
【0020】
また、請求項4に記載の発明は、幅方向張力付与手段を具体化したものであり、該発明によれば、前記送り方向張力付与手段による第1所定張力の付与後、左右一対のフィルム側部把持手段により、転写フィルムの左右の側部が把持されると共に、該フィルム側部把持手段で把持された後、これらの左右のフィルム側部把持手段が移動手段によりフィルム幅方向において互いに離反するように移動させられる。その場合に、移動手段の駆動源を構成するモータがモータ制御手段により第2所定トルクで駆動され、これにより、転写フィルムのフィルム幅方向に第2所定張力が付与されることとなる。
【0021】
また、請求項5に記載の発明によれば、前記第2所定トルクの値を設定するトルク設定手段が設けられているから、伸び性等の異なる種々の転写フィルムを利用する場合に、前記モータをそれぞれの転写フィルムに適した第2所定トルクで駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る転写装置の正面図である。
【図2】同転写装置の第1ステーション側の側面図である(第1、第2装置の側面は省略している)。
【図3】密着機構の構成図である。
【図4】同転写装置のシステム構成図である。
【図5】図1のA方向からのフィルム送り装置の側面図である。
【図6】図5のB方向からの矢視図である(背景については適宜省略している)。
【図7】図5のC方向からの矢視図である(背景については適宜省略している)。
【図8】図5のD方向からの矢視図(平面図)である(背景については適宜省略している)。
【図9】図5の引き出し部及び送り方向張力付与手段周辺の要部拡大図である。
【図10】図7の幅方向張力付与手段及びその周辺の要部拡大図である。
【図11】フィルム送り装置のシステム構成図であ。。
【図12】作用の説明図である(その1)。
【図13】作用の説明図である(引き出し部及び送り方向張力付与手段周辺の要部拡大図である)。
【図14】作用の説明図である(その2)。
【図15】作用の説明図である(その3)。
【図16】作用の説明図である(幅方向張力付与手段及びその周辺の要部拡大図である)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
本実施の形態においては、本発明に係るフィルム送り装置は、これから説明する転写装置に適用されている。すなわち、図1、図2に示すように、本実施の形態に係る転写装置1においては、機台2上に間隔を空けて平行に配設されたベースプレート3,3の上方幅方向略中央に、転写及び転写準備工程が実行可能な第1装置10が、その一側方に、転写が実行可能な第2装置50が配設されていると共に、機台2における第1装置10の他側方には、下側チャンバ部材22に対して作業者が作業を行えるように該下側チャンバ部材22を配置可能に構成されており、これにより、作業者による下側チャンバ部材22に対する作業が行われる第1ステーションS1、第1装置10による転写または転写準備工程が実行可能な第2ステーションS2、第2装置50による転写が実行可能な第3ステーションS3の3つのステーションが構成されている。
【0025】
第2のステーションS2に配設された第1装置10は、前記各ベースプレート3,3に立設された支持ポール12,12と、該支持ポール12,12の上端に取り付けられた固定プレート13と、該固定プレート13に昇降可能に支持された移動ポール14,14と、該移動ポール14,14の下面に固定された上側チャンバ部材21と、後述する移動機構60の移動プレート63上に固定された下側チャンバ部材22と、前記固定プレート13の上面に固定され、ピストンロッド15aの先端が前記上側チャンバ31の上面に固着されたエアシリンダ15とを有し、該エアシリンダ15を作動させることにより、上側チャンバ部材21を昇降可能に構成されている。
【0026】
また、第1装置10には、転写フィルムFを上下のチャンバ部材21,22間に供給する転写フィルム供給装置17が備えられている。なお、該装置17についての詳細は後述する。本転写装置1で用いられる転写フィルムFは、ベースフィルム(後述するベースフィルムBFとは異なるものである)と、該ベースフィルム上に形成された絵柄層とを有しており、加熱された状態でワークに対して所定以上の圧力で押さえつけられることにより、絵柄層がワークに対して転写される構造とされている。
【0027】
また、第1装置10の機台2内には、真空ポンプ31及び圧空ポンプ32が設けられていると共に、図3に示すように、該真空ポンプ31及び圧空ポンプ32と前記上側及び下側の各チャンバ部材21,22との間には接続配管33が設けられていると共に、該接続配管33の第1通路33a、第2通路33b、及び第1通路33aと連絡通路33cとの接続部には、電気制御可能な第1〜第3開閉弁34,35,36が設けられている。
【0028】
第1開閉弁34は、接続配管33の第1通路33aを開状態、閉状態、または第1通路33aを大気と連通させる大気開放状態のいずれかを選択的に実現可能に構成されている。第2開閉弁35は、第1通路33aにおける該開閉弁35の左右の部分33a,33dを連通させる第1状態と、第1通路33aにおける該開閉弁35のチャンバ部材21側の部分33aと連絡通路33cとを連通させる第2状態とを選択的に実現可能に構成されている。第3開閉弁36は、接続配管33の第2通路33bの開状態、閉状態、または第2通路33bを大気と連通させる大気開放状態のいずれかを選択的に実現可能に構成されている。ここで、前記真空ポンプ31、圧空ポンプ32、接続配管33、及び第1〜第3開閉弁34,35,36は、密着機構30(特許請求の範囲における密着手段に相当する)を構成する。
【0029】
また、上側チャンバ部材21の内面には、複数のヒータ41…41が取り付けられている。
【0030】
図1に戻り、第3ステーションS3に配設された第2の装置50は、機台2上のベースプレート3,3に立設された支持ポール51,51と、該支持ポール51,51の上端に取り付けられた固定プレート52と、前記支持ポール51,51に昇降可能に支持された昇降プレート53と、該昇降プレート53の下面に取り付けられたヒータ(熱盤)54と、該ヒータ54の下面に取り付けられたラバー部材55と、前記固定プレート52の上面に固定され、ピストンロッド56aの先端が前記昇降プレート53の上面に固着されたエアシリンダ56とを有し、該エアシリンダ56を作動させることにより、前記ラバー部材55を昇降可能に構成されている。ここで、ラバー部材55の下面には、ワークWの外面形状に対応して凹まされた押し付け面部が形成されている。また、ラバー部材55は、種々のワークWに対応したものが準備され、ワークWに応じて交換可能とされている。ここで、ラバー部材55としては、高熱伝導性、高耐久性を有するものを利用している。
【0031】
また、図1、図2に示すように、転写装置1は、下側チャンバ部材22を前記各ステーションS1,S2,S3間で移動させる移動機構60を有している。すなわち、前記各ベースプレート3,3の上面には、平行に一対のロワーレール61,61が配置されていると共に、該ロワーレール61,61の上部には、摺動可能にアッパーレール62,62がそれぞれ支持されている。そして、該アッパーレール62,62の上面には、前記下側チャンバ部材22が固定される移動プレート63が固着されている。
【0032】
また、機台2の上方には、前記ロワーレール61,61と平行に延びるネジ軸64が、その両端側において一対のブラケット65,65を介して回動可能に支持されている。また、機台2の内部には、モータ66が配設されており、前記ネジ軸の一端側と、モータ66の駆動軸66aとの間に駆動ベルト67が巻きかけられている。また、前記移動プレート63の下面には、前記ネジ軸64に螺合するネジ孔を有する移動ブラケット68が固着されている。そして、このような構成により、前記モータ66を作動させると、駆動ベルト67を介してネジ軸64が回転し、その結果、移動プレート63がネジ軸64の軸方向に移動するようになっている。
【0033】
ここで、このモータ66は、回転量及び回転方向が制御可能なサーボモータにより構成されており、これにより、前記移動プレート63、すなわち該プレート63上に固定された下側チャンバ部材22を、図1に仮想線で示すように、第2ステーションS2の第1装置10の上側チャンバ部材21の直下方位置、及び第3ステーションS3の第2装置50のラバー部材55の直下方位置に精度よく移動、停止させ、かつ第1ステーションS1との間で往復動させることが可能となっている。
【0034】
また、本実施の形態に係る転写装置1には、図4に示すように、前記駆動モータ66、ヒータ41、真空ポンプ31、圧空ポンプ32、第1〜第3開閉弁34,35,36、フィルム供給装置17、エアシリンダ15(第1装置10用)、及びエアシリンダ56(第2装置50用)等の作動を、入力装置71からの入力情報に基づいて制御するコントローラ80が設けられている。
【0035】
入力装置71においては、第1装置10の作動、第2装置50の作動の要否を個別に設定可能に構成されている。また、第1装置10を作動させる場合には、ヒータ41の作動要否、及び圧空ポンプ32の作動要否を個別に設定可能に構成されている。また、入力装置71には、転写作業開始ボタンが設けられている。そして、入力装置71において、転写作業開始ボタンをON操作することにより、前記第1、第2装置10,50及び移動機構60の前記駆動モータ66、ヒータ41等の各装置が入力装置71からの入力情報に基づいて転写が完了するまで自動で作動するようになっている。
【0036】
次に、コントローラ80によって達成される転写装置1の動作の一例について、作業員の転写作業とあわせて説明する。ここで、作業開始前には、下側チャンバ部材22は第1ステーションS1に位置し、第2ステーションS2の第1装置10の上側チャンバ部材21は上方待機位置に位置し、第3ステーションS3の第2装置50のラバー部材55は上方待機位置に位置している。
【0037】
まず、作業員は、作業対象のワークW及び転写フィルムFに応じて、入力装置から第1、第2装置10,50の作動条件を入力する。本例では、第1、第2装置10,50の両方を作動させ、かつ第1装置50のヒータ41及び圧空ポンプ32の両方を作動させるように設定したものとする。
【0038】
次に、作業員は、第1ステーションS1で下側チャンバ部材22にワークW用の取付治具Tを固定すると共に、該取付治具TにワークWをセット(配置)する(図3参照)。そして、入力装置71の作動開始ボタンをON操作する。すると、コントローラ80は、前記第1、第2装置10,50及び移動機構60の前記駆動モータ66、ヒータ41等の各装置を以下のように自動的に制御する。
【0039】
まず、コントローラ80は、移動機構60の駆動モータ66を作動させて下側チャンバ部材22を、第2ステーションS2に移動させる。
【0040】
そして、第2ステーションS2において、第1装置10のフィルム供給装置17を作動させて上下のチャンバ部材21,22間に転写フィルムFを供給し、所定の状態にセットする。そして、エアシリンダ15を作動させて、上側チャンバ部材21を転写フィルムFを介して下側チャンバ部材22に対接する(押し付けられる)まで下方に移動させる。そして、真空ポンプ31を作動させると共に前記各開閉弁34,35,36を制御して、転写フィルムFで上下に仕切られた上下のチャンバ空間X1,X2内をそれぞれ真空状態とする。
【0041】
次に、前記各開閉弁34,35,36を制御すると共に圧空ポンプ32を作動させて、上側チャンバ空間X1内にのみ大気より高圧力の圧縮空気を導入する。また、ヒータ41…41も作動させる。こうすることにより、転写フィルムFが圧縮空気の圧力により下側チャンバ部材22側に押し付けられ、ワークWの表面に密着、転写されることとなる。なお、上下のチャンバ空間X1,X2の両方を真空状態とさせるのでなく下側のチャンバ空間X2のみ真空状態とさせた後、上側チャンバ空間X1内にのみ大気より高圧力の圧縮空気を導入し、ヒータ41…41を作動させるようにしてもよい。
【0042】
次に、前記各開閉弁34,35,36を制御して大気解放状態とした後、上側チャンバ部材21を上方待機位置まで移動させる。そして、移動機構60の駆動モータ66を作動させて下側チャンバ部材22を第3ステーションS3に移動させる。
【0043】
そして、第3ステーションS3において、第2装置50のエアシリンダ56を作動させてラバー部材55を下降させて、所定時間、転写フィルムFが表面に密着した状態のワークWを押し付け、より確実に転写させる。
【0044】
そして、所定時間経過後、第2装置50のエアシリンダ56を作動させてラバー部材55を上方待機位置まで移動させた後、移動機構60の駆動モータ66を作動させて、下側チャンバ部材22を第1ステーションS1に移動させる。
【0045】
そして、第1ステーションS1において、作業員は、転写フィルムFのベースフィルムを剥離した後、絵柄層Fcが転写されたワークWを下側チャンバ部材22の取付治具Tから取り外す。これにより、ワークW1個についての転写作業が完了する。
【0046】
このような本実施の形態に係る転写装置1によれば、第1装置10の作動、第2装置50の作動の要否を個別に設定可能に構成されているから、第1装置10のみによる転写、第1、第2装置10,50の両方を用いた転写を行うことができる。また、第1装置10を作動させる場合、ヒータ41の作動要否、及び圧空ポンプ32の作動要否を個別に設定可能に構成されているから、第1装置10のヒータ41や圧空ポンプ32を作動させずに、密着機構30のみを作動させることもできる。したがって、種々の立体形状のワーク、種々の転写フィルムに対して柔軟に対応することができる。また、転写作業開始ボタンをON操作するだけで、一連の作業が完了することとなり、生産性が向上する。また、密着に気体を利用する第1装置10を有しているから、アンダーカット部を有するワーク等、複雑な形状のワークに対しても形状に制約されることなく良好に転写フィルムを密着させることができる。さらに、アンダーカット部を有しないものに対しては、ゴムで押圧する第2装置50も有していることにより、ワークWに転写フィルムを強い圧力で押し付けることができ、気体の圧力で押し付けるだけの場合よりも短時間で転写を行うことができる。すなわち、高い生産性を得ることができる。
【0047】
次に、本発明に係るフィルム送り装置17の構造について詳しく説明する。
【0048】
ここで、本実施の形態においては、前述のように気体の圧力変化により転写フィルムFを伸縮させてワークWに吸着させるように構成されているので、転写フィルムFとしては比較的大きな伸び性を有するものが使用される。一方、未使用時においては転写フィルムFの伸びを防止する必要があるので、転写フィルムFは、伸び性の小さいベースフィルムBFに貼りあわされた2層構造のフィルムFFとして供給される。そのため、フィルム送り装置17は、このような2層構造のフィルムに対応可能なように構成されている。
【0049】
すなわち、図5に示すように、このフィルム送り装置17は、機台100の下部の一側方に設けられたフィルム供給部111から供給されたフィルムFFを、その上方に設けられたガイドローラ112位置においてベースフィルムBFと転写フィルムFとに剥離した後、剥離されたベースフィルムBFについてはその上方のベースフィルム巻き取り部113で巻き取ると共に、剥離された転写フィルムFについては転写フィルム水平引き出し部114により下側チャンバ部材22を上方から覆うようにフィルム送り方向上流側に水平に引き出すと共に、下側チャンバ部材22の上流側においてカッター部115により枚葉状に切断するようになっている。
【0050】
図5、図6に示すように、フィルム供給部111は、機台100のベースプレート101に立設された左右一対の下部ブラケット121,121と、これらの下部ブラケット121,121間に架設され、2層構造のフィルムFFのロールF′を支持するロール支持軸122と、該ロール支持軸122にパウダークラッチ(図示せず)を介して反供給方向の回転力を付与するモータ126とを有している。また、フィルム供給部111には、ロール支持軸122上のフィルムFFのロール径を検出するセンサ(図示せず)が設けられており、該センサの検出結果に基づいてパウダークラッチの締結状態を制御することにより、ガイドローラ112より上流側のフィルムFFにロール径によらず一定の張力を付与して、該フィルムFFの弛みを防止可能に構成されている。
【0051】
ベースフィルム巻取り部113は、機台100のベースプレート101に立設された4本の支柱102…102に支持されたアッパープレート104に取り付けられた左右一対の上部ブラケット123,123と、これらの上部ブラケット123,123間に架設された巻き取りロールを支持する巻取りロール支持軸124と、該巻取りロール支持軸124にパウダークラッチ(図示せず)を介して巻き取り方向の回転力を付与する、すなわちベースフィルムBFを巻き取るモータ127とを有している。また、ベースフィルム巻取り部113には、巻取りロール支持軸124上の巻取りロールのロール径を検出するセンサ(図示せず)が設けられており、該センサの検出結果に基づいてパウダークラッチの締結状態を制御することにより、ガイドローラ112より下流側の剥離されたベースフィルムBFにロール径によらず一定の張力を付与して、該ベースフィルムBFの弛みを防止可能に構成されている。
【0052】
ガイドローラ112は、前記各上部ブラケット123,123から下方に延びる左右一対の支持部材125,125の下端部間に支持されている。
【0053】
図5に示すように、転写フィルム引き出し部114は、転写フィルムの上流端を把持する把持部130と、該把持部130を引き出し方向に移動させる移動部140とを有している。
【0054】
図5、図7〜図9に示すように、把持部130は、左右一対の連結ブラケット131,131(複数部材で構成されている)の下部間に架設された連結部材132の下面に取り付けられた複数の櫛歯材133a…133aでなる下側櫛状部材133と、前記連結部材132の上面の左右に離間して、かつ前記下側櫛状部材133の上方に突出するように配設された台状部材134,134と、該台状部材134,134の先端にそれぞれ取り付けられたシリンダ135,135と、両シリンダ135,135のピストンロッド135a,135aの先端に固定された支持部材136の下面に、前記下側櫛状部材133の上方に対応位置させて取り付けられた複数の櫛歯材137a…137aでなる上側櫛状部材137とを有し、図13に示すように、前記移動部140より把持部130がフィルム送り方向下流側所定位置(図12、図13に示す位置)まで移動した状態で、該上側櫛状部材137をシリンダ135で上方待機位置(図13に実線で示す位置)から下降させて、転写フィルムFを介して前記下側櫛状部材193に押し付けることにより、仮想線で示すように転写フィルムFを上側櫛状部材137と前記下側櫛状部材133とで挟んで把持するようになっている。
【0055】
移動部140は、図5、図7に示すように、機台100のアッパプレート104上に配置された減速機構付きモータ143と、該モータ143の出力軸に連結された回転軸143aの回転をフィルム送り方向の動きに変換して前記把持部130に伝達する伝達部140D,140Dとを有している。伝達部140D(伝達部140D,140Dは対称に構成されており、片方についてのみ説明する)は、機台100の前記アッパプレート104の下面に固定された上部側面部材103に固定され、フィルム送り方向に延びるレール141と、図9にも示すように、前記把持部130の左右一対の連結ブラケット131の上部に取り付けられ、前記レール141に摺動可能に支持された摺動部材142と、前記回転軸143aの端部に取り付けられた駆動プーリ144と、前記上部側面部材103における前記レール141の両端部近傍にそれぞれ配置されたガイドプーリ145…145及びテンションプーリ146と、これらのプーリ144〜146間に掛け渡されると共に、前記把持部130の連結ブラケット131に固定された固定部材147と該部材147に固定される固定部材148とで挟まれることにより途中部位が連結ブラケット131に固定されたベルト149とを有し、前記モータ143を作動させることにより、ベルト149を介して連結ブラケット131すなわち把持部130が、フィルム送り方向上流側所定位置(図5、図14に示す位置)と、フィルム送り方向下流側所定位置との間で、レール141に沿ってフィルム送り方向に移動可能に構成されている。なお、フィルム送り方向上流側所定位置は、転写フィルムFの上流端の位置決め位置とされている。また、フィルム送り方向下流側所定位置は、後述する載置部160に当接しないように、かつ該載置部160に載置された切断された転写フィルムFの上流端を把持部130が把持可能な位置に設定される。
【0056】
カッター部115は、図5、図6、図9に示すように、機台100の前記アッパプレート104にフィルム幅方向に離間して取り付けられたシリンダ151と、フィルム幅方向に延び、前記シリンダ151のピストンロッド151aの先端に固定された支持部材152と、該支持部材152にその下方で支持され、フィルム幅方向に延びるニクロム線153と、該ニクロム線153に通電する通電部(図示せず)とを有し、該ニクロム線153をシリンダ151により図9に仮想線で示すように下方に移動させて転写フィルムFに当接させることにより該転写フィルムFを切断するようになっている。
【0057】
また、カッター部115は、カッター部115により切断された転写フィルムFの上流端が載置される載置部160を有している。すなわち、図8に示すように、前記機台100のアッパープレート104の送り方向上流端側からフィルム幅方向に離間して下方に延びる左右の一対の支持プレート161,161の下部間に架設され、前記把持部130の下側櫛状部材133が移動部140により移動させられてきたときに該部材133の各櫛歯133a…133aと嵌合可能な複数の溝部162a…162aが形成された台状部材162と、該台状部材162の上方で前記左右一対の支持プレート161間に架設された連結プレート163の下部に、前記台状部材162の各溝部162a…162a間で該溝部162a…162a間の部分に転写フィルムFよりも若干量大きな隙間を空けて対向させてフィルム送り方向に取り付けられた複数の爪部材164…164とを有し、帯状の転写フィルムFが、台状部材162と爪部材164…164とで上下から送り可能な程度に緩やかに挟まれた状態で載置される。そして、台状部材162における送り方向下流端近傍に前記カッター部115の前記ニクロム線153が下降して転写フィルムFに当接すると、該転写フィルムFが切断されると共に、その上流端が台状部材162の上流端にほぼ一致した状態で載置されるようになっている。
【0058】
ここで、本実施の形態においては、フィルム送り装置17には、図5、図7、図8に示すように、フィルム送り完了後、前記転写フィルムFにフィルム送り方向に第1所定張力を付与する送り方向張力付与手段170、及びフィルム幅方向に第2所定張力を付与する幅方向張力付与手段180が設けられている。
【0059】
まず、送り方向張力付与手段170について説明すると、該送り方向張力付与手段170は、図9にも示すように、前記載置部160の一対の支持プレート161,161間に、前記台状部材162における前記ガイドローラ112側で該台状部材162に近接させて架設され、転写フィルムFを上下から挟む上下一対のニップローラ171,172と、これらのニップローラ171,172のうち下側のローラ172に反フィルム送り方向の回転力を付与する減速機構付きモータ173とを有している。ここで、下側のローラ172の外周はゴムにより構成されている。また、モータ173は、回転トルク及び回転速度、回転量等が任意の値に制御可能なサーボモータが用いられており、引き出し部114により転写フィルムFが下側チャンバ部材22を上方から覆うように機台100の他側方側に水平に引き出された状態において、後述するコントローラ210により回転トルクが所定トルクT1となるように駆動されるようになっている。この所定トルクT1の値は、例えば種々の転写フィルムに対応可能なように、コントローラ210の入力装置(キーボード等)を介して任意の値に設定可能とされている。また、モータ173は、引き出し部114による転写フィルムFの引き出し時には、引き出しに同期してフィルム送り方向に回転駆動される。なお、前記引き出し部114の把持部130も、転写フィルムの上流端を把持するものとして送り方向張力付与手段170を構成する。
【0060】
一方、幅方向張力付与手段180は、前記引き出し部114と類似の構成とされている。すなわち、幅方向張力付与手段180は、転写フィルムFの通過経路の側方に配設され、フィルム送り完了後、転写フィルムFの左右の側端部を把持する左右一対の把持部181,181と、これらの把持部181,181をそれぞれフィルム幅方向に移動させる左右一対の移動部182,182とを有している。
【0061】
把持部181(左右の把持部181,181は対称に構成されており、片方についてのみ説明する)は、図10にも示すように、左右一対の連結ブラケット191,191(複数部材で構成されている)の下部間に架設された連結部材192の下面に取り付けられた下側プレート部材193と、前記連結部材192の上面の左右に離間して、かつ前記下側プレート部材193の上方に突出するように配設された台状部材194,194と、該台状部材194,194の先端にそれぞれ取り付けられたシリンダ195,195と、両シリンダ195,195のピストンロッド195a,195aの先端間に固定された支持部材196の下面に、前記下側プレート部材193の上方に対応位置させて取り付けられた上側プレート部材197とを有し、図16に示すように、前記移動部182により把持部181がフィルム幅方向内側所定位置(図15、図16に示す位置)まで移動した状態で、該上側プレート部材197をシリンダ195で上方待機位置(図16に実線で示す位置)から下降させて、転写フィルムFを介して前記下側プレート部材193に押し付けることにより、該転写フィルムFを上側プレート部材197と前記下側プレート部材193とで挟んで把持するようになっている。
【0062】
移動部182(左右の移動部182,182は対称に構成されており、片方についてのみ説明する)は、図5にも示すように、前記機台100のベースプレート101上に配置された減速機構付きモータ203と、該モータ203の減速機構の出力軸に連結された回転軸203aの回転をフィルム送り方向の動きに変換して前記把持部181に伝達する伝達部182D,182Dとを有している。伝達部182D(伝達部182D,182Dは対称に構成されており、片方についてのみ説明する)は、機台100の下側フレーム体の上部側面部材105に固定され、フィルム幅方向に延びるレール201と、前記把持部181の左右一対の連結ブラケット191の上部に取り付けられ、前記レール201に摺動可能に支持された摺動部材202と、前記減速機構付きモータ203の回転軸203aの端部に取り付けられた駆動プーリ204と、前記上部側面部材105における前記レール201の両端部近傍にそれぞれ配置されたガイドプーリ205…205及びテンションプーリ206と、これらのプーリ204〜206間に掛け渡されると共に、前記ブラケット191に固定された固定部材207と該部材207に固定される固定部材208とで挟まれることにより途中部位が連結ブラケット191に固定されたベルト209とを有し、前記モータ203を作動させることにより、ベルト209を介してブラケット191すなわち把持部181が、フィルム幅方向外側所定位置(図7、図14に示す位置)と、フィルム幅方向内側所定位置との間で、レール201に沿ってフィルム幅方向に移動可能に構成されている。
【0063】
また、図11に示すように、フィルム送り装置17には、前記フィルムFFのロール支持軸122用のモータ126、ベースフィルムBFの巻取りロール支持軸124用のモータ127、フィルム送り方向張力付与手段170を構成する下側ニップローラ172回転駆動用のモータ173、転写フィルム水平引き出し部114の移動部140のモータ143、フィルム幅方向張力付与手段180の移動部182のモータ203、引き出し部114の前記把持部130の各シリンダ135,135、及びカッター部115のシリンダ151等の作動を、転写装置1のコントローラ80の入力装置71からの入力情報に基づいて制御するコントローラ210が設けられている。
【0064】
次に、このコントローラ210によって達成されるフィルム送り装置17の動作について説明する。なお、1ワークへの転写装置1による転写作業が終了し、次のワークWが載置された下側チャンバ部材22が第1ステーションS1から第2ステーションS2に移動してきたところ、すなわち、転写フィルムFの上流端が、カッター部115の載置部160において、台状部材162と爪部材164とで該フィルムFが送り可能な程度に上下から緩やかに挟まれた状態となっているところから説明する。
【0065】
まず、コントローラ210は、転写フィルム水平引き出し部114の把持部130のモータ143を作動させて把持部130をフィルム送り方向上流側所定位置から図12に示すように下流側所定位置まで水平方向に移動させる。このとき、図13に示すように、把持部130の下側櫛状部材133の各櫛歯133aと、台状部材160の複数の溝部160aとが嵌合すると共に、把持部130の上側櫛状部材133がその上方に位置し、転写フィルムFの上流端が上下の櫛状部材133,137の間に位置することとなる。
【0066】
次に、転写フィルム水平引き出し部114の把持部130のシリンダ135を作動させて上側櫛状部材137を下方位置に下降させ、上側櫛状部材137と下側櫛状部材133とで転写フィルムFの上流端を挟んで把持する。
【0067】
次に、転写フィルム水平引き出し部114の把持部130のモータ143を作動させて、図14に示すように、把持部130をフィルム送り方向上流側所定位置まで水平方向に移動させる。
【0068】
次に、送り方向張力付与手段170の下側ニップローラ172回転駆動用のモータ173を作動させて、該ニップローラ172に反フィルム供給方向の力を付与する。このとき、モータ173の回転トルクは、前記転写フィルムFにフィルム送り方向に第1所定張力が付与されるように、所定トルクT1で駆動される。
【0069】
次に、幅方向張力付与手段180の把持部181のモータ195を作動させて、該把持部181を図15、図16に示すように転写フィルムFのフィルム幅方向端内側所定位置まで水平方向に移動させる。このとき、転写フィルムFの側端部が、把持部181の下側プレート部材193と、上側プレート部材197との間に位置することとなる。
【0070】
次に、把持部181のシリンダ195を作動させて上側プレート部材193を下方位置に下降させ、上側プレート部材197と下側プレート部材193とで転写フィルムFの側端部を挟んで把持させる。
【0071】
次に、幅方向張力付与手段180の移動部182のモータ203を、把持部181が転写フィルムFから幅方向に遠ざかる方向β、βに所定トルクT2で作動させる。ここで、この所定トルクT2は、前述したように、把持部181により転写フィルムFを幅方向両側に引っ張ったときに、前記転写フィルムFにフィルム送り方向に第1所定張力が付与されることとなるように設定されている。
【0072】
そして、これにより、転写フィルムFにおける下側チャンバ部材22上方の部分に対して、フィルム送り方向に第1所定張力が付与されると共に、フィルム幅方向に第2所定張力が付与されることとなる。
【0073】
そして、次に、転写装置17のコントローラ210は、上側チャンバ部材21を下側チャンバ部材22に転写フィルムFを介して対接するまで下降させて、図3に示すように、転写フィルムFを上側チャンバ部材21と下側チャンバ部材22とで挟み込む。なお、上側チャンバ部材21及び下側チャンバ部材22における転写フィルムFとの対接面には、滑り止め処理が施されている。
【0074】
次に、フィルム送り装置17のコントローラ80は、カッター部115のシリンダ151を作動させてニクロム線153を下方切断位置まで下降させる。これにより、転写フィルムFにニクロム線151が当接し、転写フィルムFがγで示す位置において切断されることとなる。
【0075】
次に、転写フィルム水平引き出し部114の把持部130のシリンダ135を作動させて上側櫛状部材137を上方待機位置まで上昇させ、上側櫛状部材137と下側櫛状部材13とによる転写フィルムFの上流端の把持を解除する。
【0076】
また、幅方向張力付与手段180の把持部181のシリンダ195を作動させて上側プレート部材197を上方待機位置まで上昇させ、上側プレート部材197と下側プレート部材193とによる転写フィルムFの側端部の把持を解除する。また、幅方向張力付与手段180の移動部182のモータ203を作動させて、把持部181を図14に示すフィルム幅方向外側所定位置まで水平方向に移動させる。
【0077】
そして、次に、転写装置17のコントローラ210は、第2ステーションS2の上側チャンバ部材21及び下側チャンバ部材22において、前述した気体状態の操作、及び加熱等を行い、ワークWに転写フィルムFを密着させる。そして、ワークWの種類等に応じて、下側チャンバ部材22を、第3ステーションS3まで移動させ、あるいは第1ステーションS1に移動させる。
【0078】
以上説明したように、本実施の形態に係るフィルム送り装置17によれば、送り手段によるフィルム送り完了後、帯状フィルムの転写部分に、送り方向張力付与手段170によりフィルム送り方向に第1所定張力がされると共に、幅方向張力付与手段180によりフィルム幅方向に第2所定張力が付与されることとなる。その場合に、この第1、第2所定張力を、使用する転写フィルム等に応じた適切な張力に設定しておくことにより、転写フィルムFに皺が生じるのが防止されることとなる。したがって、ワークWへの良好な転写品質を確保することができる。なお、第1、第2所定張力の値は、転写フィルムの特性や使用態様によっては同じ値とされることもある。なお、本実施の形態の技術は、延び性が高くない転写フィルムを利用する場合においても適切な張力を付与することができる。特に、幅が広い転写フィルムにおいては左右の側部が幅方向内側へカールしやすくなるが、本実施の形態によれば、幅方向に適切な張力を付与することによりこのようなカールも防止することができる。
【0079】
また、入力装置71により前記所定トルク1及び所定トルクT2(第2所定トルク)の値を任意の値に設定することができる。したがって、伸び性等の異なる種々の転写フィルムを利用する場合に、前記送り方向張力付与手段170の前記下側ニップローラ172駆動用のモータ173をそれぞれの転写フィルムに適した所定トルクT1で駆動させることができると共に、幅方向張力付与手段180の移動部182のモータ203をそれぞれの転写フィルムに適した所定トルクT2で駆動させることができる。なお、各張力付与手段170,180の駆動源としては、エアシリンダを利用することも考えられるが、圧縮空気の圧力をきめ細かくかつ安定して制御するのは困難である。すなわち、種々の転写フィルムに対応させて張力をきめ細かく、かつ安定して制御するのは困難である。しかし、本実施の形態においては、各張力付与手段170,180の駆動源として、モータ173,203(サーボモータ)を利用しているので、種々の転写フィルムに対応させて張力をきめ細かく、かつ安定して制御することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、伸び性が大きな転写フィルムを使用した場合でも、帯状フィルムにおける転写部分に皺が生じるのを防止し、もってワークへの良好な転写品質を確保可能なフィルム送り装置を提供することができ、フィルム送り装置において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 フィルム送り装置
10 第1装置(第1の装置)
17 フィルム送り装置
21 上側チャンバ部材
22 下側チャンバ部材
50 第2装置
60 移動機構
71 入力装置(トルク設定手段)
80 転写装置のコントローラ
130 把持部(上流側把持手段)
170 送り方向張力付与手段
180 幅方向張力付与手段
171,172 ニップローラ(上下一対のローラ)
173 モータ(モータ)
181 把持部(フィルム側部把持手段)
182 移動部(移動手段)
203 モータ(フィルム側部把持手段の移動手段のモータ)
210 フィルム送り装置のコントローラ(所定トルクで駆動させるモータ制御手段、第2所定トルクで駆動させるモータ制御手段)
F 転写フィルム
Fc 絵柄層
T1 所定トルク
T2 所定トルク(第2所定トルク)
W ワーク
X1 上側チャンバ空間
X2 下側チャンバ空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写装置に設けられ、帯状の転写フィルムをワークに対応位置するように送るフィルム送り装置であって、
フィルム送り完了後、前記転写フィルムにフィルム送り方向に第1所定張力を付与する送り方向張力付与手段、及びフィルム幅方向に第2所定張力を付与する幅方向張力付与手段が設けられていることを特徴とするフィルム送り装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載のフィルム送り装置であって、
前記送り方向の張力付与手段は、前記帯状の転写フィルムの上流端を把持する上流端把持手段と、前記対応位置よりもフィルム送り方向下流側において転写フィルムを両面から挟む一対のローラと、フィルム送り完了後、該ローラをフィルム戻し方向に回動さるモータと、該モータを、転写フィルムのフィルム送り方向に第1所定張力が付与されるように所定トルクで駆動させるモータ制御手段とを有していることを特徴とするフィルム送り装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載のフィルム送り装置であって、
前記所定トルクの値を設定するトルク設定手段が設けられていることを特徴とするフィルム送り装置。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフィルム送り装置であって、
前記幅方向張力付与手段は、前記送り方向張力付与手段による第1所定張力の付与後、帯状の転写フィルムの左右の側部を把持する左右一対のフィルム側部把持手段と、該フィルム側部把持手段で転写フィルムの左右の側部が把持された後、左右のフィルム側部把持手段をフィルム幅方向において互いに離反するように移動させる移動手段と、該移動手段の駆動源を構成するモータを、転写フィルムのフィルム幅方向に第2所定張力が付与されるように第2所定トルクで駆動させるモータ制御手段とを有していることを特徴とするフィルム送り装置。
【請求項5】
前記請求項4に記載のフィルム送り装置であって、
前記第2所定トルクの値を設定するトルク設定手段が設けられていることを特徴とするフィルム送り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−168197(P2010−168197A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13758(P2009−13758)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000110642)ナビタス株式会社 (15)
【Fターム(参考)】