説明

フェノフィブラート含有組成物

【課題】従来カプセル剤と同等の生物学的利用能を有し、かつ従来カプセル剤のカプセルサイズを小さくすることが可能なフェノフィブラート含有組成物を提供する。
【解決手段】
下記処方
(a)フェノフィブラート 100重量部
(b)固形界面活性剤 3〜4重量部
(c)乳糖 1〜2重量部
(d)ステアリン酸マグネシウム 1〜2重量部
に、結合剤および崩壊剤合わせて17〜20重量部を加えたものからなり、フェノフィブラートと固形界面活性剤は共微粉砕したものであるフェノフィブラート含有組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノフィブラート(fenofibrate)含有製剤の小型化を図るための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノフィブラートは、イソプロピル2−〔4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ〕−2−メチルプロピオネートの化学名を有する化合物で、血清コレステロール低下作用、LDL−コレステロール低下作用、トリグリセリド低下作用およびHDL−コレステロール増加作用を示し、総合的に脂質代謝を改善する高脂血症用剤として日本を含め世界各国において賞用されている。
【0003】
フェノフィブラートは、従来より硬カプセル剤(以下、単にカプセル剤ともいう)として使用されているが、その生物学的利用能(bioavailability)を改善した組成物も検討されており、例えば特公平7−14876号〔特許文献1〕においてはフェノフィブラートと固形界面活性剤の均質混合物の微粉砕(以下、共微粉砕という)を含有する組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−14876号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、薬剤を長期間にわたり経口で服用しなければならない場合、先ず、一回に服用する個数の少ないことと共に服用し易い大きさの製剤であることが、患者の服薬コンプライアンスの向上に大きくつながっている。このような服薬コンプライアンスを向上させるための要因は、嚥下機能等の低下が見られる高齢者の場合は特に重要になってくる。
【0006】
本発明製剤の適応症である高脂血症においては、多くの場合、年単位の長期間にわたり薬剤を服用する必要があり、また患者には高齢者が多く、さらに、その中には糖尿病や動脈硬化等の合併症を伴い、数種類の薬剤を処方されている場合も多く見られている。このような状況下にあって、1回の服用個数を増加させることなく小型化した服用し易い製剤の開発が強く望まれていた。
【0007】
上記のフェノフィブラートと固形界面活性剤の共微粉砕を含有する組成物(以下、共微粉砕組成物ともいう)の場合、生物学的利用能の改善により、それまでのフェノフィブラートの1日の投与量を300mgから200mgへと2/3に減少させることを可能にしている。しかし、このような共微粉砕組成物の場合でも、製剤化する際、賦形剤、結合剤、崩壊剤等の製剤添加物(以下、単に添加剤ともいう)を加える必要があり、上記従来技術では、フェノフィブラート200mgを含有するカプセル剤の場合、1カプセル当たりフェノフィブラートと添加剤の重量を合計すると、297〜350mg(特公平7−14876号製造実施例IおよびII)程度となり、これらを1個のカプセルに充填するには1号(長径約19.1mm、短径6.9mm)もしくはそれ以上の大きなサイズのカプセルを使用せざるを得ない状況にある。
【0008】
現在、医薬品用の硬カプセルの大きさは、000号(長径約26.0mm、短径10.0mm)より5号(長径約11.1mm、短径4.9mm)までの8種類がある(例えば、大塚昭信ほか編集、製剤学、91頁、南江堂、1990年(第4刷発行):村田敏郎ほか編集、薬剤学(改訂第5版)、130頁、南江堂、1997年)が、患者にとって服用する際、カプセルのサイズは小さく、かつ1回に服用する数が少ないほど、患者負担が少なくコンプライアンスの上昇にもつながるため、多くの場合2号(長径約17.6mm、短径6.4mm)以下のカプセルが使用されている。しかしながら、上記で述べたように、共微粉砕組成物にすることにより主剤の量を2/3に減少させることが可能となったものの、フェノフィブラートの1日の投与量である200mgを、2号以下の1個のカプセルに充填できる製剤処方ないし技術は見当たらなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者は、フェノフィブラート含有組成物、特にカプセル剤に適する組成物を調製するにあたり、添加剤とその配合量を種々検討し、主剤であるフェノフィブラートの生物学的利用能を変えずに、カプセル剤の小型化を図るため鋭意、検討を重ねた。その結果、共微粉砕組成物に、特定の添加剤を特定の比率で配合することにより、共微粉砕組成物を含有する従来のカプセル剤(以下、従来カプセル剤)よりも添加剤の総量を約1/2以下に減少させて小型化、例えば、従来の1号から2ないし3号へ、同様に2号から3号へ、3号から4号などへの変換を可能にしたものであり、かつ従来カプセル剤と同等の生物学的利用能が期待される組成物を新規に見出した。以下に、本発明の目的を達成するための好ましい態様について述べる。
【0010】
本発明は、下記処方:
(a)フェノフィブラート 100重量部
(b)固形界面活性剤 フェノフィブラート100重量部に対して3〜4重量部
(c)乳糖 フェノフィブラート100重量部に対して1〜2重量部
(d)ステアリン酸マグネシウム フェノフィブラート100重量部に対して1〜2重量部
に、結合剤および崩壊剤合わせてフェノフィブラート100重量部に対して17〜20重量部を加えたものからなり、フェノフィブラートと固形界面活性剤は共微粉砕したものであるフェノフィブラート含有組成物で、且つ、該フェノフィブラート含有組成物は2〜4号のカプセル剤とされているフェノフィブラート含有組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、試験例1の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において用いられるフェノフィブラートは、予め固形界面活性剤と共微粉砕される。上記固形界面活性剤としては、ラウリルアルコールのアルカリ金属硫酸塩(例:ラウリル硫酸ナトリウム)、酸化エチレン・酸化プロピレン共重合物(例:ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール)、ショ糖脂肪酸エステル等が使用され、これらの中でラウリル硫酸ナトリウムが有利に用いられる。
【0013】
上記固形界面活性剤の使用量は、フェノフィブラート100重量部に対して3〜4重量部であり、両者は、製剤製造上通常用いられる微粉砕化装置(例:ジェットミル、ハンマーミル、振動ボールミル)によって共微粉砕される。共微粉砕は、例えば特公平7−14876号公報に記載の方法に準じて行うことができ、その平均粒度は15μmより小さく、好ましくは10μmより小さく、特に好ましくは5μmより小さい粉末が得られるまで実行するのが有利である。
【0014】
上記乳糖は、通常添加剤として使用されるグレードのものであればよく、その使用量は、フェノフィブラート100重量部に対して、1〜2重量部である。上記ステアリン酸マグネシウムは、通常添加剤として使用されるグレードのものであればよく、その使用量はフェノフィブラート100重量部に対して1〜2重量部である。
【0015】
上記結合剤としては、デンプンが有利に使用される。本発明で使用されるデンプンとしては、通常添加剤として使用されるグレードのものであればよいが、アルファ化デンプン、部分アルファ化デンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、可溶性デンプンが好ましく、アルファ化デンプンが特に好ましい。また、上記崩壊剤としては、通常添加剤として使用されるグレードの、クロスポピドン(別名:架橋ポリビニルピロリドン)、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム等が好ましく、クロスポピドンが特に好ましい。上記結合剤および同崩壊剤両者合わせた使用量は、フェノフィブラート100重量部に対して、17〜20重量部である。
【0016】
本発明の組成物は、上記のフェノフィブラートと固形界面活性剤の共微粉砕粉末に上記添加剤を加え、次のような工程で製造される。
【0017】
共微粉砕粉末と添加剤を均一に混合し、造粒工程を経て顆粒を製する。さらに滑沢剤等を混合した後、空カプセルに充填することによりカプセル剤を得る。この時の造粒方法は乾式造粒法、あるいは湿式造粒法が使われる。
【0018】
本発明で得られた組成物は、カプセル剤とした後、後述するように第13改正日本薬局方(日局XIII)の溶出試験法に基づき試験を行った結果、添加剤を約1/2以下に減少させたにも拘わらず、特公平7−14876号に開示の従来カプセル剤と比較して溶出速度にほとんど差が認められず、良好な生物学的利用能を示すことが示唆された。
【実施例】
【0019】
次に、実施例、比較例および試験例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。全ての実施例、比較例および試験例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
【0020】
〔実施例1〕
特公平7−14876号の製剤実施例I(該公報では「製造実施例I」と記載)に準じて、次の処方に示すフェノフィブラートと添加剤を用い、フェノフィブラートとラウリル硫酸ナトリウムの共微粉砕工程を経て、顆粒を製造し、2号カプセルに充填した。
【0021】
〔処方(1カプセル中;全量250.0mg)〕
フェノフィブラート 200.0mg
ラウリル硫酸ナトリウム 7.0mg
乳糖 3.0mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
アルファ化デンプン 30.0mg
クロスポピドン 7.0mg
【0022】
〔実施例2〕
実施例1と同様の方法にて、次の処方に示すフェノフィブラートと添加剤を用い、フェノフィブラートとラウリル硫酸ナトリウムの共微粉砕工程を経て、顆粒を製造し、2号カプセルに充填した。
【0023】
〔処方(1カプセル中;全量250.0mg)〕
フェノフィブラート 200.0mg
ラウリル硫酸ナトリウム 7.0mg
乳糖 3.0mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
アルファ化デンプン 30.0mg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 7.0mg
【0024】
〔参考例3〕
実施例1と同様の方法にて、次の処方に示すフェノフィブラートと添加剤を用い、フェノフィブラートとラウリル硫酸ナトリウムの共微粉砕工程を経て、顆粒を製造し、2号カプセルに充填した。
【0025】
〔処方(1カプセル中;全量250.0mg)〕
フェノフィブラート 200.0mg
ラウリル硫酸ナトリウム 7.0mg
乳糖 5.0mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
アルファ化デンプン 25.0mg
クロスポビドン 10.0mg
【0026】
〔比較例1〕
実施例1と同様の方法にて、次の処方に示すフェノフィブラートと添加剤を用い、フェノフィブラートとラウリル硫酸ナトリウムの共微粉砕工程を経て、顆粒を製造し、1号カプセルに充填した。
【0027】
〔処方(1カプセル中;全量350.0mg)〕
フェノフィブラート 200.0mg
ラウリル硫酸ナトリウム 7.0mg
乳糖 101.0mg
ステアリン酸マグネシウム 5.0mg
アルファ化デンプン 30.0mg
クロスポピドン 7.0mg
【0028】
〔試験例1〕 溶出試験
<試験法>
実施例1および比較例1で得られたカプセル剤を、日局XIIIの一般試験法溶出試験法第2法(パドル法)に準じ、試験液に0.1mol/Lのラウリル硫酸ナトリウム1000mLを用いて毎分50回転で実施した。
【0029】
<結果>
結果を図1に示す。図1から明らかなように、実施例1および比較例1の間で、フェノフィブラートの溶出の程度に有意な差は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明のフェノフィブラート含有組成物は、従来カプセル剤に比べて、その良好な生物学的利用能を保持したまま、添加剤の量を約1/2以下に減少させることが可能で、患者にとって服用し易い小型化を図ったカプセル剤の提供を可能とするものである。より具体的に述べれば、フェノフィブラート200mgを含有し、従来より大きな(例えば、1号)カプセルが必要な共微粉砕組成物は、本発明によって、より小さな(例えば、2ないし3号)カプセルに充填可能となる。
【0031】
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記処方:
(a)フェノフィブラート 100重量部
(b)固形界面活性剤 フェノフィブラート100重量部に対して3〜4重量部
(c)乳糖 フェノフィブラート100重量部に対して1〜2重量部
(d)ステアリン酸マグネシウム フェノフィブラート100重量部に対して1〜2重量部
に、結合剤および崩壊剤合わせてフェノフィブラート100重量部に対して17〜20重量部を加えたものからなり、フェノフィブラートと固形界面活性剤は共微粉砕したものであるフェノフィブラート含有組成物で、且つ、該フェノフィブラート含有組成物は2〜4号のカプセル剤とされているフェノフィブラート含有組成物。
【請求項2】
固形界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムであり、結合剤がデンプンであり、崩壊剤がクロスポビドンである請求項1に記載の組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−25778(P2012−25778A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233080(P2011−233080)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【分割の表示】特願2008−218988(P2008−218988)の分割
【原出願日】平成14年2月28日(2002.2.28)
【出願人】(000002990)あすか製薬株式会社 (39)
【Fターム(参考)】