説明

フェノフィブラート含有組成物

【課題】フェノフィブラートの溶出性を改善して、生物学的利用能を高いレベルで維持する。
【解決手段】(A)フェノフィブラートと(B)非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤とでフェノフィブラート含有組成物を構成する。前記非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)のHLBは1〜20程度であってもよい。フェノフィブラート含有組成物は、フェノフィブラート(A)と非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)とを共粉砕した粉粒状物を含有してもよい。フェノフィブラート(A)100重量部に対する非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)の割合は、1〜10重量部程度であってもよい。フェノフィブラート含有組成物は、さらに、結合剤、賦形剤及び崩壊剤から選択された少なくとも一種を含有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノフィブラートの生物学的利用能を高いレベルで維持でき、製剤を小型化することも可能なフェノフィブラート含有組成物(医薬組成物など)に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノフィブラート(イソプロピル2−[4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ]−2−メチルプロピオネート)は、血清コレステロール低下作用、LDL−コレステロール低下作用、トリグリセリド低下作用およびHDL−コレステロール増加作用を示し、総合的に脂質代謝を改善する高脂血症用剤として日本を含め世界各国において賞用されている。
【0003】
従来、フェノフィブラートは、硬カプセル剤(以下、単にカプセル剤と称する場合がある)として使用されている。しかし、単にフェノフィブラートをカプセルに封入しただけでは、フェノフィブラートの薬理活性を十分活用することができず、投与量や投与回数を増加させる必要があった。そこで、フェノフィブラートの生物学的利用能(bioavailability)を改善するため、特公平7−14876号公報(特許文献1)では、フェノフィブラートとラウリル硫酸ナトリウムなどの固形界面活性剤との均質混合物を微粉砕(以下、共微粉砕と称する場合がある)し、高脂血症及び高コレステリン血症の経口治療用組成物として用いている。この組成物では、従来300mg/日であったフェノフィブラート投与量を約2/3にまで減少させている。しかし、上記文献1では、製剤化に伴って、賦形剤、結合剤、崩壊剤などの製剤添加物を添加して、1カプセル当たりの重量を297〜350mgとしており(製造実施例)、カプセルサイズが非常に大きくなる(例えば、長径約19.1mm、短径6.9mmの1号カプセル又はそれ以上のサイズとなる)。
【0004】
一般に、高脂血症や高コレステリン血症などの患者は、長期に亘り薬剤を服用したり、糖尿病等の合併症に伴い、数種類の薬剤を処方される場合も多く、さらに高齢者の割合も高い。また、高齢者になると、嚥下機能も低下する傾向にある。このような状況では、患者の服薬コンプライアンスの点で、一回当たりの服用個数が少ないこと、製剤のサイズが大きすぎないことなどが非常に重要となる。
【0005】
国際公開WO2002/069957号公報(特許文献2)には、フェノフィブラート100重量部、固形界面活性剤(ラウリルアルコールのアルカリ金属硫酸塩、酸化エチレン・酸化プロピレン共重合物又はショ糖脂肪酸エステル)3〜4重量部、乳糖1〜2重量部、ステアリン酸マグネシウム1〜2重量部、結合剤及び崩壊剤17〜20重量部を含むフェノフィブラート含有組成物において、フェノフィブラートと固形界面活性剤とを共微粉砕した組成物が開示されている。しかし、特許文献2には、ショ糖脂肪酸エステルの詳細について記載されていない。また、実施例では、固形界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムを用いており、フェノフィブラートの溶出性の改善効果が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−14876号公報(請求項1、第2頁左欄42〜50行、第2頁右欄7〜10行、実施例)
【特許文献2】国際公開WO2002/069957号公報(請求項1、第3頁30〜33行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、フェノフィブラートの溶出性を改善でき、フェノフィブラートの生物学的利用能を高いレベルに維持できるフェノフィブラート含有組成物を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、添加剤の割合を低減できるとともに、幅広い種類の添加剤(担体成分)を使用できるフェノフィブラート含有組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、フェノフィブラートと非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤とを組み合わせると、フェノフィブラートの溶出性を大きく改善でき、フェノフィブラートの薬理活性を十分に活用できることを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明のフェノフィブラート含有組成物は、(A)フェノフィブラートと(B)非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤とを含有する。前記非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)のHLBは1〜20程度であってもよい。前記非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)としては、ショ糖脂肪酸エステル、(ポリ)アルキレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビット脂肪酸エステル、脂肪酸(ポリ)オキシアルキレンソルビタン、及び脂肪酸(ポリ)オキシアルキレンソルビットから選択された少なくとも一種などであってもよい。フェノフィブラート含有組成物は、(A)フェノフィブラートと(B)非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤との共粉砕物を含有してもよい。
【0011】
フェノフィブラート(A)100重量部に対する非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)の割合は、1〜10重量部程度であってもよい。フェノフィブラート含有組成物は、さらに、結合剤、賦形剤及び崩壊剤から選択された少なくとも一種の成分(C)を含有してもよい。また、前記組成物は、前記共粉砕物と、前記成分(C)とを含有してもよい。フェノフィブラート(A)100重量部に対する成分(C)の割合は、1〜70重量部程度であってもよい。また、フェノフィブラート含有組成物は、さらに、滑沢剤を含んでもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組成物では、フェノフィブラートと非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤とを組み合わせるので、フェノフィブラートの溶出性を改善でき、フェノフィブラートの生物学的利用能を高いレベルに維持できる。また、添加剤の割合を低減でき、また、幅広い種類の添加剤を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は実施例1並びに比較例1及び2で得られた共粉砕物に関し、経過時間に対するフェノフィブラートの溶出率(%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のフェノフィブラート含有組成物は、(A)フェノフィブラートと(B)非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤とを含有する。前記組成物において、フェノフィブラートは、有効成分(生理活性又は薬理活性成分)である。
【0015】
(B)非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤
非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)としては、多価アルコールの脂肪酸エステル、例えば、ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖カプリル酸エステル、ショ糖カプリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖アラキン酸エステル、ショ糖ベヘン酸エステル、ショ糖リンデル酸、ショ糖パルミトオレイン酸、ショ糖オレイン酸、ショ糖エライジン酸などのショ糖飽和又は不飽和C6−30脂肪酸エステル(ショ糖モノ又はポリC6−30脂肪酸エステルなど)など)、(ポリ)アルキレングリコール脂肪酸エステル(エチレングリコールモノ又はジステアリン酸エステル、ポリエチレングリコールモノ又はジラウリン酸エステル、ポリエチレングリコールモノ又はジオレイン酸エステル、ポリエチレングリコールモノ又はジステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの(ポリ)C2−4アルキレングリコール飽和又は不飽和C6−30脂肪酸エステルなど)、グリセリン脂肪酸エステル(モノ又はジカプリル酸デカグリセリン、モノ又はジカプリル酸グリセリン、モノ又はジステアリン酸グリセリン、モノ又はジオレイン酸グリセリンなどの飽和又は不飽和C6−30脂肪酸のグリセリンエステルなど)、ソルビタン脂肪酸エステル(モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリル酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ジステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンなどのソルビタン飽和又は不飽和C6−30脂肪酸エステルなど)、ソルビット脂肪酸エステル(前記ソルビタン脂肪酸エステルに対応するソルビット脂肪酸エステル、例えば、モノラウリル酸ソルビット、モノパルミチン酸ソルビット、モノステアリン酸ソルビット、モノオレイン酸ソルビットなどのソルビット飽和又は不飽和C6−30脂肪酸エステルなど)、脂肪酸(ポリ)オキシアルキレンソルビタン(モノラウリン酸オキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンなどの飽和又は不飽和C6−30脂肪酸(ポリ)C2−4オキシアルキレンソルビタンなど)、脂肪酸(ポリ)オキシアルキレンソルビット(前記脂肪酸ポリオキシアルキレンソルビタンに対応する脂肪酸(ポリ)オキシアルキレンソルビット、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットなどの飽和又は不飽和C6−30脂肪酸(ポリ)オキシC2−4アルキレンソルビットなど)などが挙げられる。これらの非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0016】
また、上記の各非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤において、脂肪酸部位(飽和又は不飽和脂肪酸部位)は、それぞれ、好ましくはC8−26脂肪酸(例えば、C10−24脂肪酸)、さらに好ましくはC12−22脂肪酸(例えば、C12−20脂肪酸)、特にC14−18脂肪酸などである。前記脂肪酸部位としては、不飽和脂肪酸であってもよいが、通常、飽和脂肪酸である場合が多い。
【0017】
前記非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤のうち、生理学的又は薬理学的に許容な界面活性剤が好ましく、特に、少なくともショ糖脂肪酸エステルを用いるのが好ましい。また、ショ糖脂肪酸エステルは、モノエステルであってもよく、ジエステル、トリエステルなどのポリエステルであってもよい。なお、ショ糖脂肪酸エステル中のモノエステル(ショ糖1分子に対して脂肪酸1分子が結合したエステル)含有量は、特に制限されず、例えば、10〜100モル%、好ましくは15〜80モル%、さらに好ましくは20〜60モル%程度であってもよい。
【0018】
また、ショ糖脂肪酸エステルと、他の非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(例えば、(ポリ)アルキレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビット脂肪酸エステル、脂肪酸ポリオキシアルキレンソルビタン及び脂肪酸ポリオキシアルキレンソルビットから選択された少なくとも一種)と組み合わせて用いてもよい。なお、ショ糖脂肪酸エステルと、他の非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤とを組み合わせて用いる場合、両者の割合は、前者/後者(重量比)=30/70〜99/1、好ましくは50/50〜95/5、さらに好ましくは60/40〜90/40程度の範囲から選択できる。
【0019】
前記脂肪酸エステル系界面活性剤のHLBは、界面活性剤の種類に応じて、例えば、1〜30程度の範囲から選択でき、好ましくは1〜20(例えば、3〜18)、さらに好ましくは5〜18(例えば、8〜17.5)、特に10〜17(例えば、12〜16)程度である。なお、ショ糖脂肪酸エステルのHLBは、例えば、1〜18、好ましくは3〜17.5(例えば、10〜17.5)、さらに好ましくは5〜17(例えば、11〜17)、特に10〜16.5(例えば、13〜16.5)程度であってもよい。
【0020】
非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤の(B)の割合は、フェノフィブラート100重量部に対して、例えば、1〜10重量部、好ましくは2〜5重量部(例えば、2.5〜4.5重量部)、さらに好ましくは3〜4重量部程度である。
【0021】
フェノフィブラートと非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤とは、フェノフィブラート含有組成物(又は製剤)中に共存していればよく、分かれて存在していてもよいが、互いに接触して存在していてもよい。例えば、フェノフィブラートと非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤とを造粒したり、フェノフィブラートと非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤とを共粉砕することにより両者を接触させた状態で、組成物中に含有させることができる。
【0022】
なお、フィブラート含有組成物は、フェノフィブラート(A)及び非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)に加え、必要により、他の成分、例えば、製剤添加物及び/又は担体成分(結合剤、賦形剤及び崩壊剤から選択された少なくとも一種の成分(C)など)、非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)以外の界面活性剤及び/又は糖類(成分(D))などを含有してもよい。なお、成分(C)及び(D)などの他の成分は、生理学的又は薬理学的に許容可能な成分であるのが好ましい。
【0023】
製剤添加物又は担体成分としては、固形製剤を製造するために通常使用される添加剤が使用でき、担体又は添加剤成分(C)としては、例えば、局方、「医薬品添加物事典」(薬事日報社、1994年1月14日発行)及び「医薬品添加物事典」(薬事日報社、2002年3月25日第2刷発行)に収載されている結合剤、賦形剤、崩壊剤などが利用できる。
【0024】
固形剤に用いられる担体成分又は添加剤のうち結合剤としては、デンプン[アルファ化デンプン、部分アルファ化デンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン(特に、アルファ化デンプンなどの可溶性デンプン)など];寒天、アラビアゴム、デキストリンなどの多糖類;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリ乳酸などの合成高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル類などが例示できる。これらの結合剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0025】
前記賦形剤としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトールなどの糖類;トウモロコシデンプンなどのデンプン;結晶セルロース(微結晶セルロースも含む)などの多糖類;軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウムなどの酸化ケイ素又はケイ酸塩などが例示できる。これらの賦形剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0026】
前記崩壊剤としては、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース又はその塩(カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウムなど)、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポピドン)など)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが例示できる。これらの崩壊剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0027】
これらの成分(C)の割合は、フェノフィブラート100重量部に対して、1〜70重量部、好ましくは2〜50重量部、さらに好ましくは5〜30重量部(例えば、7〜20重量部)程度である。また、結合剤及び崩壊剤の総量は、フェノフィブラート100重量部に対して、例えば、1〜65重量部、好ましくは5〜60重量部、さらに好ましくは10〜50重量部(例えば、15〜30重量部)、特に17〜20重量部程度であってもよい。賦形剤の割合は、フェノフィブラート100重量部に対して、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜15重量部、さらに好ましくは1〜7重量部(例えば、1〜3重量部)程度であってもよい。
【0028】
また、前記成分(D)のうち、成分(B)以外の界面活性剤としては、特に制限されず、アニオン性界面活性剤(例えば、ドデカンスルホン酸などのスルホン酸又はその塩類;テトラデシル硫酸などのアルキル硫酸又はその塩(ラウリル硫酸ナトリウムなど);スルホ脂肪族ジカルボン酸エステル塩;有機リン酸又はその塩;ステアリン酸カルシウムなどの長鎖脂肪酸塩;脂肪酸金属塩;胆汁酸又はその塩;コール酸、デオキシコール酸などのコール酸類など)、カチオン性界面活性剤(テトラアルキルアンモニウムハライドなどのテトラアルキルアンモニウム塩;塩化ステアリルペンタエトキシアンモニウム、塩化ベンゼトニウムなど)、非イオン性界面活性剤(ラウリン酸ジエタノールアミドなどの脂肪酸ジアルカノールアミド;ポリオキシエチレンステアリン酸アミドなどのポリオキシアルキレン脂肪酸アミド;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアリールエーテル;ポリオキシエチレンステアリルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテルなど)、両イオン性界面活性剤(ドデシル−ジ−(アミノエチル)グリシンなどのグリシン類;ベタイン、ジメチルドデシルカルボキシベタインなどのベタイン類;レシチンなどのホスファチジン酸誘導体など)、及び高分子型界面活性剤(ポリアルキレンオキシド−(メタ)アクリレート共重合体;ポリアルキレンオキシド−エピクロルヒドリン共重合体;ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルエステルなどのポリエーテル系樹脂など)などが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0029】
前記成分(D)のうち、糖類としては、例えば、糖(単糖類、多糖類、オリゴ糖類など)、糖アルコール(エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、マルチトールなど)などが例示できる。糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。前記糖としては、例えば、ブドウ糖、ショ糖、果糖、乳糖、黒砂糖、ハチミツ、トレハロース、マルトース(麦芽糖)、キシロース、マンノース、ラフィノース、ガラクトース、フルクトース、ラムノース、異性化糖、パラチノースなどが挙げられる。
【0030】
フェノフィブラート含有組成物が、前記成分(D)を含有する場合、成分(D)の割合は、フェノフィブラート100重量部に対して、例えば、0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜3重量部、さらに好ましくは0.1〜2重量部程度の範囲から選択できる。また、成分(D)の割合は、ショ糖脂肪酸エステル100重量部に対して、0.001〜50重量部、好ましくは0.01〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部程度である。
【0031】
また、前記組成物は、必要により、他の生理活性成分又は薬理活性成分(成分(E))、例えば、ビタミン類、アミノ酸類、制酸剤、生薬成分、酵素類、降圧薬、高脂血症治療剤[他のフィブラート系薬剤(ベザフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブラート、シンフィブラート、フェノフィブリン酸、ゲムフィブロジル、又はそれらの塩(例えば、クロフィブラートアルミニウムなど)など)、ヒドロキシメチルグルタリルCoAリダクターゼ阻害剤、ニコチン酸又はその誘導体、イオン交換薬、プロブコール、植物ステロールなど]、糖尿病薬などを含有してもよい。
【0032】
また、フェノフィブラート含有組成物は、他の製剤添加物又は添加剤(成分(F))、例えば、滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000など)、崩壊助剤、酸化防止剤(抗酸化剤)、保存剤又は防腐剤、湿潤剤、帯電防止剤などを含有してもよい。フェノフィブラート含有組成物は、上記添加剤のうち、少なくとも滑沢剤を用いる場合が多く、滑沢剤の割合は、フェノフィブラート100重量部に対して、例えば、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは1〜3重量部(例えば、1〜2重量部)程度であってもよい。なお、本発明の組成物は、必要により、矯味剤(例えば、甘味剤など)やマスキング剤、着色剤、矯臭剤(芳香剤など)、清涼化剤、消泡剤(以下、単に成分(G)と称する場合がある)などを含有してもよい。
【0033】
本発明のフィブラート含有組成物は、少なくともフェノフィブラート(A)と非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)とを含有すればよく、両成分と必要により他の成分(例えば、成分(C)、(D)、(E)、(F)及び/又は(G)など)を混合した混合物であってもよく、混合物においては、少なくとも一部の成分を適宜造粒して混合してもよい。フィブラート含有組成物は、少なくともフェノフィブラート(A)及び非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)を共粉砕(両者の混合物を粉砕)することにより得られる粉粒状物(共粉砕物又は粉砕物)を含有するのが好ましい。
【0034】
成分(A)及び(B)を共粉砕する場合、他の成分(成分(C)〜(F)から選択された少なくとも一種の成分など)は、種類及び/又は割合を適宜選択して、成分(A)及び(B)とともに共粉砕してもよく、成分(A)、成分(B)(及び必要により成分(C)〜(F)から選択された少なくとも一種の成分)を含む共粉砕物に、成分(C)〜(F)から適宜選択した少なくとも一種の成分を添加してもよい。例えば、フェノフィブラート(A)及び非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)の共粉砕物と、成分(C)及び/又は成分(D)とを混合して用いてもよく、フェノフィブラート(A)と、非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)と、必要により成分(C)、成分(D)及び/又は成分(E)との共粉砕物に、成分(C)、成分(E)及び/又は成分(F)などをさらに添加して用いてもよい。また、前記のような共粉砕物と、成分(C)などとを造粒などにより一旦製剤した後、他の活性成分(E)及び/又は成分(F)(例えば、滑沢剤など)と混合してもよい。また、成分(G)は共粉砕物に含有させてもよく、共粉砕物と混合して用いてもよい。なお、共粉砕物が、成分(C)を含有する場合、成分(C)の割合は、フェノフィブラート100重量部に対して、0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜7重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部程度の範囲から選択できる。
【0035】
前記組成物のうち、フェノフィブラート(A)及び非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)の共粉砕物で構成された組成物、前記共粉砕物と成分(C)とで構成された組成物などが好ましい。
【0036】
フェノフィブラート、非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)、並びに必要により他の成分の共粉砕(共微粉砕)は、慣用の方法、例えば、構成成分を、慣用の混合方法により混合(好ましくは均一に混合)し、得られた混合物を、微粉砕化装置(ジェットミル、ハンマーミル、振動ボールミルなど)を用いて微粉砕することにより行うことができる。また、構成成分を溶融混合し、必要により冷却固形化して、共粉砕することにより共粉砕物を調製してもよい。なお、共微粉砕方法の詳細は、例えば、特公平7−14876号公報を参照できる。共粉砕物は、必要により分級してもよい。
【0037】
共粉砕物の50%粒子径(又は平均粒径)は、15μm以下(例えば、0.1〜12μm程度)、好ましくは10μm以下(例えば、0.5〜8μm程度)、さらに好ましくは5μm以下(例えば、0.7〜5μm)、特に、1〜4μm程度である。
【0038】
本発明のフェノフィブラート含有組成物は、通常、固形製剤として使用される。前記組成物は、打錠剤などの錠剤として用いてもよいが、通常、顆粒剤や顆粒剤を充填したカプセル剤などとして使用される場合が多い。固形製剤の製造方法は、特に制限されず、慣用の方法により製造できる。例えば、顆粒剤は、慣用の造粒方法(乾式造粒法、湿式造粒法)、例えば、押出造粒、噴霧造粒などにより前記共粉砕物と添加剤(担体成分)とを造粒し、必要により整粒することにより調製できる。また、カプセル剤は、カプセルに前記顆粒剤を充填することにより調製できる。
【0039】
本発明の組成物において、フェノフィブラートは、すでに単独で医薬として使用されていることもあり、毒性も低く、その安全性も確立されている。また、ショ糖脂肪酸エステルなどの非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤は、食品添加物、医薬品分野で使用される添加剤として知られており、担体成分又は添加剤成分も医薬品分野で使用される添加剤として知られている。従って、本発明の組成物は、毒性が低く、安全性も高い。そのため、本発明の組成物は、ヒト及び非ヒト動物、通常、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト動物(マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サルなど)など)に対し、安全に用いられる。
【0040】
本発明の組成物(製剤)の投与量は、フェノフィブラートの通常の投与量に準ずればよく、投与対象、投与対象の年齢及び体重、症状、投与時間、剤形、投与方法等により、適宜選択することができる。フェノフィブラートの用量は、臨床上用いられる用量を基準として適宜選択でき、例えば、成人1人当たり経口投与の場合の1日用量として、20〜400mg、好ましくは30〜350mg、さらに好ましくは50〜300mg程度である。投与回数は、特に制限されず、例えば、1日1回であってもよく、必要に応じて1日複数回(例えば、2〜4回)であってもよい。
【0041】
本発明では、フェノフィブラートと非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)とを組み合わせるので、フェノフィブラートとラウリル硫酸ナトリウムなどとの共粉砕物を用いる従来の製剤に比べて、フェノフィブラートの溶出性を大幅に改善することができる。また、本発明の組成物では、フェノフィブラートの薬理活性を損なうことなく、従来の製剤(カプセル剤など)に比べて、添加剤の割合を大幅に低減でき、製剤のサイズ及び服用する製剤の個数を低減できる。なお、フェノフィブラートの薬理活性は、例えば、第14改正日本薬局方(日局XIV)の溶出試験法に基づく溶出速度を従来の製剤におけるフェノフィブラートの溶出速度と比較することにより評価することができる。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0043】
実施例1及び比較例1〜2
(1)微粉砕物の調製
未粉砕フェノフィブラート(原薬、粒子径100〜150μm)と表1に示す界面活性剤との混合粉末(フェノフィブラート/界面活性剤(重量比)=100/3.5)を、ジェットミルにより微細化処理し、表1に示す50%平均粒径(D50%)を有する共微粉砕物を得た(実施例1及び比較例2)。
【0044】
また、界面活性剤を用いることなく未粉砕フェノフィブラートのみを用いる以外は、上記と同様にして、フェノフィブラートの単独微粉砕物を得た(比較例1)。
【0045】
なお、実施例1及び比較例2で用いた界面活性剤は、それぞれ、以下の通りである。
【0046】
(B1):ショ糖パルミチン酸エステル(三菱化成(株)製、J1616、HLB=16)
(B2):ラウリル硫酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製、SLS、HLB=40)。
【0047】
(2)評価
(i)50%平均粒子径(D50%)
50%平均粒子径は、レーザ式粒度分布測定装置(島津製作所(株)製)にて、分散溶媒として水を用いる湿式測定法により測定した。
【0048】
なお、溶出試験の試料としては、二次凝集を防ぐために、乳糖と微粉砕物とを、乳糖/微粉砕物(重量比)=2/1の割合で混合した後、200メッシュの篩を通過したものを用いた。
【0049】
(ii)溶出試験
微粉砕物をゼラチンカプセルに充填し、得られたカプセル剤を用いて、日局溶出試験法第2法に準拠して、液量900mL、37℃±0.5℃、及びパドル回転数100rpmの条件で溶出試験を行った。なお、試験液には1重量%濃度のポリソルベート80溶液を用いた。また、フェノフィブラートの定量は、紫外可視吸光度測定法により行い、波長290nmにおける吸光度を測定した。
【0050】
結果を表1に示す。また、経過時間に対するフェノフィブラートの溶出率(%)を示すグラフを図1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
表1及び図1から明らかなように、フェノフィブラートと界面活性剤とを共微粉砕した実施例1及び比較例2の試料は、何れもフェノフィブラート単独微粉砕物(比較例1)と比較して、溶出初期(5,10分後)に高い溶出率が得られた。また、ショ糖パルミチン酸エステルを用いた実施例1は、比較例に比べて、高い溶出性を示し、ラウリル硫酸ナトリウムを用いた比較例2に対しても高い効果が得られた。
【0053】
実施例2
界面活性剤としてショ糖パルミチン酸エステル(B1)に代えて、下記の非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤を用いる以外は実施例1と同様にして試料を調製し、フェノフィブラートの溶出試験を行ったところ、実施例1と同様の溶出挙動を示した。
【0054】
(i)ショ糖ラウリン酸エステル(HLB=5)
(ii)ショ糖ミリスチン酸エステル(HLB=16)
(iii)ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=9)
(iv)モノステアリン酸グリセリン(HLB=3.8)
【0055】
実施例3
下記の成分を混合し、ゼラチンカプセルに充填し、カプセル剤とした。
【0056】
フェノフィブラート 100.0 mg
ショ糖パルミチン酸エステル 3.5 mg
乳糖 30.0 mg
トウモロコシデンプン 20.0 mg
ステアリン酸マグネシウム 1.5 mg
全量 150.0 mg。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の組成物は、有効成分であるフェノフィブラートの生物学的利用能を改善しつつ、添加剤(担体成分など)の割合を大幅に低減できるため、カプセル剤などの製剤サイズを大幅に小さくすることができるとともに、服用個数を増加する必要もない。そのため、本発明のフェノフィブラート含有組成物は、長期に亘り薬剤を服用したり、合併症等に伴い複数の薬剤を処方される場合や、嚥下が困難な高齢者などの患者であっても、服用コンプライアンスを改善するための固形製剤(カプセル剤など)などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フェノフィブラートと(B)非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤と、結合剤、賦形剤及び崩壊剤から選択された少なくとも一種の成分(C)とを含むフェノフィブラート含有組成物であって、
フェノフィブラート(A)100重量部に対する成分(C)の割合が1〜70重量部であるフェノフィブラート含有組成物。
【請求項2】
非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)のHLBが1〜20である請求項1記載のフェノフィブラート含有組成物。
【請求項3】
非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)が、ショ糖脂肪酸エステル、(ポリ)アルキレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビット脂肪酸エステル、脂肪酸(ポリ)オキシアルキレンソルビタン、及び脂肪酸(ポリ)オキシアルキレンソルビットから選択された少なくとも一種である請求項1記載のフェノフィブラート含有組成物。
【請求項4】
(A)フェノフィブラートと(B)非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤とが共粉砕された粉粒状物を含む請求項1記載のフェノフィブラート含有組成物。
【請求項5】
フェノフィブラート(A)100重量部に対する非イオン性脂肪酸エステル系界面活性剤(B)の割合が1〜10重量部である請求項1記載のフェノフィブラート含有組成物。
【請求項6】
さらに、滑沢剤を含む請求項1記載のフェノフィブラート含有組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2013−47282(P2013−47282A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−265109(P2012−265109)
【出願日】平成24年12月4日(2012.12.4)
【分割の表示】特願2007−224951(P2007−224951)の分割
【原出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000002990)あすか製薬株式会社 (39)
【Fターム(参考)】