説明

フェージングシミュレータ、移動体通信端末試験システム、及びフェージング処理方法

【課題】伝搬路ごとにフェージング処理される各ベースバンド信号のデータが非同期で送受信される場合において、動作中にフェージング条件の変更が発生しても、条件変更の反映の同期を維持することを可能とする。
【解決手段】フェージング処理部を各々有する第1及び第2のフェージング演算部を備えたフェージングシミュレータであって、第1のフェージング演算部は、フェージング条件の変更指示を受けたときの入力データの数を第1のデータ数Lmとして取得し、計測された入力データの数Cmが所定のデータ数Zmとなったときに、条件の変更を反映する第1の条件管理部を備え、第2のフェージング演算部は、変更指示を受けたときの入力データの数を第2のデータ数Lsとして取得し、計測された入力データの数CsがZm−(Ls−Lm)となったときに、条件の変更を反映する第2の条件管理部を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、移動体通信端末と基地局との間の伝搬路で生じるフェージングを模擬的に与えた信号を生成するフェージング処理の技術に関し、特に複数の伝搬路にまたがってフェージングの条件を変更する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信機器の間で生じるフェージングを模擬的に与えた信号(以下、「フェージング信号」と呼ぶ場合がある)を生成するフェージングシミュレータがある。無線通信用の信号は、一般的にはベースバンド帯の所望の信号で変調された搬送波により送信される。フェージングを模擬する方法としては、ベースバンド信号にフェージング処理を施す方法と、搬送波にフェージング処理を施す方法とがある。近年の信号の高周波化及び広帯域化に伴い、信号をデジタルで制御可能であるという点から、前者の方法がしばしば用いられている。このようなフェージングシミュレータの一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
携帯電話等に代表される移動体通信端末では、インターネットを介して情報をダウンロードすることが多くなり、下りの情報伝達量がより多く要求されてきている。しかしながら、情報量を増やすために周波数帯域を広くすることは、通信可能な端末数を減少させることになり、システム全体としての情報伝達量を増加させることにならない。この問題を解決する一つの方式として、MIMO(Multiple Input Multiple Output)方式が提案されている。
【0004】
MIMO方式では、基地局側で移動体通信端末に伝達したい情報を複数(M個)のアンテナから同一周波数で同時に出力し、これを移動体通信端末が複数(N個)のアンテナで受信して移動体通信端末の内部で情報の分離処理を行う。これによりMIMO方式は、情報伝達量の向上を可能としている。
【0005】
MIMO方式を採用する移動体通信システムを想定したフェージングシミュレータでは、MIMO用のフェージング処理の演算量が送受信アンテナの本数の増加に応じて指数関数的に増大する。これはMIMOを構成する伝搬路の数が、基地局側のアンテナの数Mと、移動体通信端末側のアンテナの数Nとの組合せの数に相当するためである。また、このようなシステムでは、装置構成の柔軟性が求められている。そのため、MIMO用のフェージングシミュレータでは、入力信号にフェージング処理を施すユニットを伝搬路ごとに設け、このユニットを複数組み合わせることで1つのMIMO用フェージング演算処理を実現する場合がある。このようなフェージングシミュレータでは、動作途中にフェージング条件が変更された場合においても、MIMOを構成する伝搬路間におけるデータのタイミングを維持する(即ち、データの同期をとる)必要がある。つまり、このようなフェージングシミュレータでは、複数のユニット間にまたがる空間相関演算の同期状態を崩さずにフェージングの条件を変更可能とすることが求められている。
【0006】
一方で、フェージングシミュレータと基地局模擬装置との間のデータの送受信は、高速I/Fによるパケット伝送となる。そのため、伝搬路ごとにフェージング処理されるそれぞれのベースバンド信号のデータの同期を保証する設計は困難になりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−98650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、伝搬路ごとにフェージング処理されるそれぞれのベースバンド信号のデータが非同期で送受信される場合において、動作中にフェージング条件の変更が発生しても、条件変更の反映の同期を維持することを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、移動体通信の試験用のデジタルのベースバンド信号である入力データを非同期で受けて、当該入力データにフェージング処理を施し、デジタルのフェージング信号として出力するフェージング処理部(22A、22B)を各々有する第1のフェージング演算部(21A)及び第2のフェージング演算部(21B)を、それぞれ異なる伝搬路と対応付けて備えたフェージングシミュレータ(20)であって、前記第1のフェージング演算部は、自己に入力された前記入力データの数を計測するとともに、フェージング条件の変更指示を受けたときの前記入力データの数を第1のデータ数Lmとして取得し、計測された前記入力データの数Cmが所定のデータ数Zmとなったときに、自己が有する前記フェージング処理部にフェージング条件の変更を指示する第1の条件変更制御部(23A)を備え、前記第2のフェージング演算部は、自己に入力された前記入力データの数を計測するとともに、前記変更指示を受けたときの前記入力データの数を第2のデータ数Lsとして取得し、計測された前記入力データの数CsがZm−(Ls−Lm)となったときに、自己が有する前記フェージング処理部にフェージング条件の変更を指示する第2の条件変更制御部(23B)を備えたことを特徴とするフェージングシミュレータである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフェージングシミュレータであって、前記第1の条件変更制御部及び第2の条件変更制御部は、自己に入力された前記入力データの数を計測するデータカウンタ(231A、231B)を、それぞれ備え、前記第1の条件変更制御部は、前記第1のデータ数Lmを取得する第1のカウンタ値取得部(232A)と、前記変更指示後に自己に入力された前記入力データの数Cmを計測する第1のタイミングカウンタ(234A)と、前記入力データの数Cmが所定のデータ数Zmとなったときに、自己が有する前記フェージング処理部にフェージング条件の変更を指示する第1の指示部(235A)と、を備え、前記第2の条件変更制御部は、前記第2のデータ数Lsを取得する第2のカウンタ値取得部(232B)と、前記変更指示後に自己に入力された前記入力データの数Csを計測する第2のタイミングカウンタ(234B)と、前記入力データの数CsがZm−(Ls−Lm)となったときに、自己が有する前記フェージング処理部にフェージング条件の変更を指示する第2の指示部(235B)と、を備えたことを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、移動体通信の試験用のデジタルのベースバンド信号である入力データを生成するデータ生成部(11)と、前記入力データを非同期で受けて、当該入力データにフェージング処理を施したフェージング信号を出力するフェージングシミュレータ(20)と、前記フェージングシミュレータから出力された前記フェージング信号をアナログ信号に変換し、所定の通信方式に従い周波数変換して試験対象である移動体通信端末に出力する送信部(12)と、を備えた移動体通信端末試験システムにおいて、前記フェージングシミュレータは、入力データを順次受けて、当該入力データにフェージング処理を施し、前記フェージング信号として出力するフェージング処理部(22A、22B)を各々有する第1のフェージング演算部(21A)及び第2のフェージング演算部(21B)を、それぞれ異なる伝搬路と対応付けて備え、前記第1のフェージング演算部は、自己に入力された前記入力データの数を計測するとともに、フェージング条件の変更指示を受けたときの第1のデータ数Lmを求め、計測された前記入力データの数Cmが所定のデータ数Zmとなったときに、自己が有する前記フェージング処理部にフェージング条件の変更を指示する第1の条件変更制御部(23A)を備え、前記第2のフェージング演算部は、自己に入力された前記入力データの数を計測するとともに、前記変更指示を受けたときの第2のデータ数Lsを求め、計測された前記入力データの数CsがZm−(Ls−Lm)となったときに、自己が有する前記フェージング処理部にフェージング条件の変更を指示する第2の条件変更制御部(23B)を備えたことを特徴とする移動体通信端末試験システムである。
また、請求項4に記載の発明は、移動体通信の試験用のデジタルのベースバンド信号である入力データを非同期で受けて、当該入力データにフェージング処理を施し、デジタルのフェージング信号として出力するフェージング処理部(22A、22B)を各々有する第1のフェージング演算部(21A)及び第2のフェージング演算部(21B)を、それぞれ異なる伝搬路と対応付けて備えたフェージングシミュレータ(20)を用いたフェージング処理方法であって、前記第1のフェージング演算部及び前記第2のフェージング演算部それぞれが、自己に入力された前記入力データの数を計測する入力データカウントステップと、前記第1のフェージング演算部がフェージング条件の変更指示を受けたときの前記入力データの数を第1のデータ数Lmとして取得する第1のデータ数取得ステップと、前記第1のフェージング演算部に入力された前記入力データの数Cmを計測する第1のタイミングカウントステップと、前記第2のフェージング演算部が前記変更指示を受けたときの前記入力データの数を第2のデータ数Lsとして取得する第2のデータ数取得ステップと、前記第2のフェージング演算部に入力された前記入力データの数Csを計測する第2のタイミングカウントステップと、前記入力データの数Cmが所定のデータ数Zmとなったときに、前記第1のフェージング演算部が有する前記フェージング処理部にフェージング条件の変更を指示する第1の指示ステップと、前記入力データの数CsがZm−(Ls−Lm)となったときに、前記第2のフェージング演算部が有する前記フェージング処理部にフェージング条件の変更を指示する第2の指示ステップと、を備えたことを特徴とするフェージング処理方法である。
【発明の効果】
【0010】
本実施形態に係るフェージングシミュレータは、第1及び第2のフェージング演算部それぞれが、入力データの数を計測し、この入力データの数に基づきフェージング条件を変更するタイミングを決定する。また、フェージング条件の変更指示を受けたときの、第1及び第2のフェージング演算部間におけるデータの数のずれを、第1のデータ数Lm及び第2のデータ数Lsにより調整している。これにより、本実施形態に係るフェージングシミュレータは、伝搬路ごとにフェージング処理されるそれぞれのベースバンド信号のデータが非同期で送受信される場合においても、第1及び第2のフェージング演算部にまたがりデータの同期をとって、フェージングの条件を変更することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係るフェージング演算部のブロック図である。
【図3】入力信号間のデータの送受信タイミングについて説明するための図である。
【図4】フェージング演算部による処理のタイミングチャートである。
【図5】マスター側のフェージング演算部の処理を示したフローチャートである。
【図6】スレーブ側のフェージング演算部の処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について図1を参照しながら説明する。図1に示す移動体通信端末試験システム1には、本実施形態に係るフェージングシミュレータが適用されている。
【0013】
移動体通信端末試験システム1は、一般的には、所定の通信方式に基づきベースバンド信号が周波数変換された搬送波を、疑似基地局装置の送信部から被試験端末に送信して被試験端末の受信特性を試験する。また、移動体通信端末試験システム1は、被試験端末から送信された信号を、疑似基地局装置の受信部で受信して被試験端末の送信特性を試験する。フェージングシミュレータは、疑似基地局装置の送信側の構成に接続され、試験用に生成された信号に対してフェージング処理を施す。以降では、被試験端末に搬送波を送信するための構成に着目して説明する。
【0014】
移動体通信端末試験システム1は、基地局模擬装置10と、それに外付けされるフェージングシミュレータ20とを有する。基地局模擬装置10は、被試験端末2と無線または有線(試験のため、同軸ケーブルで接続して搬送波を伝搬する)による通信が可能に構成されている。なお、基地局模擬装置10とフェージングシミュレータ20は、同一筐体内に設けられていてもよい。
【0015】
基地局模擬装置10は、データ生成部11と、送信部12とを含んで構成されている。フェージングシミュレータ20は、データ生成部11と送信部12との間に接続される。フェージングシミュレータ20は、複数のフェージング演算部21A〜21Fと、制御部24と、操作部25と、表示部26とを含んで構成される。以降では、基地局模擬装置10及びフェージングシミュレータ20の動作について、「フェージング信号の生成」と「フェージング条件の変更」とに分けて説明する。まず、「フェージング信号の生成」に係る動作について、信号の流れに沿って説明する。
【0016】
(フェージング信号の生成)
データ生成部11は、試験用のベースバンド信号Baを、基地局模擬装置10と被試験端末2との間でMIMOを構成する伝搬路ごとまたは送信アンテナごとに生成する。この伝搬路の数は、基地局模擬装置10が模擬する基地局側のアンテナの数Mと、被試験端末2のアンテナの数Nとの組合せの数に基づきあらかじめ決定される。例えば、基地局側のアンテナの数Mが3、被試験端末2のアンテナの数Nが2の場合、伝搬路の数はM×N=6となる。また、送信アンテナごとに生成される場合は、ベースバンド信号Baは、アンテナ数Mごとに生成される。
【0017】
データ生成部11は、MIMOを構成する伝搬路ごとまたは送信アンテナごとに生成された各ベースバンド信号Baを、同様にそれぞれ設けられたフェージング演算部に、高速I/Fを介して、パケット伝送を用いて非同期で出力する。以降では、MIMOを構成する伝搬路A〜Fに対応して、フェージング演算部21A〜21Fが設けられているものとして説明する。また、伝搬路A〜Fに対応する各ベースバンド信号Baを、ベースバンド信号BaA〜BaFとする。なお、基地局模擬装置10にフェージングシミュレータ20を接続しない場合(言い換えると、上記したように一般的な疑似基地局として動作する場合)、図1に点線で示すように、データ生成部11は、ベースバンド信号Baを送信部12に出力する。
【0018】
フェージング演算部21A〜21Fは、MIMOを構成する伝搬路にそれぞれ対応付けられている。各フェージング演算部の構成を、フェージング演算部21Aを例に説明する。フェージング演算部21Aは、フェージング処理部22Aと、条件変更制御部23Aとを含んで構成される。
【0019】
データ生成部11から出力された伝搬路Aに対応するベースバンド信号BaAは、フェージング演算部21Aに含まれるフェージング処理部22A及び条件変更制御部23Aに入力される。なお、条件変更制御部23Aの動作については、「フェージング条件の変更」に係る動作とあわせて後述する。
【0020】
フェージング処理部22Aは、伝搬路Aに対応するフェージング条件を示す情報を、後述する制御部24からあらかじめ受ける。フェージング処理部22Aは、入力されたベースバンド信号BaAに対し、このフェージング条件に基づくフェージング処理を施してデジタルのフェージング信号BbAを生成する。
【0021】
MIMOを構成する伝搬路Aは、マルチパスを構成している。そのため、フェージング処理部22Aは、ベースバンド信号BaAに対して、マルチパスを構成する経路ごとに異なるフェージング条件に基づきフェージング処理を施す。フェージング処理の一例としては、ベースバンド信号BaAに対する遅延処理や減衰処理が含まれる。また、フェージングの条件に応じて、信号の散乱を模擬するために、ベースバンド信号BaAにノイズを付加してもよい。経路ごとに異なるフェージング処理が施されたベースバンド信号BaAが加算合成されることによりフェージング信号BbAが生成される。
【0022】
フェージング処理部22Aは、生成されたフェージング信号BbAを送信部12に出力する。なお、フェージング処理部22B〜22Fについても、フェージング処理部22Aと同様に動作する。即ち、フェージング処理部22B〜22Fは、データ生成部11から受けたベースバンド信号BaB〜BaFに対してフェージング処理を施すことにより、フェージング信号BbB〜BbFを生成する。フェージング処理部22B〜22Fは、生成されたフェージング信号BbB〜BbFを送信部12に出力する。
【0023】
送信部12は、フェージング信号BbA〜BbFをフェージング処理部22A〜22Fから受けて受信アンテナ数N別に加算し、この加算された信号をそれぞれアナログ信号にD/A変換する。送信部12は、これらのアナログ信号をあらかじめ決められた通信方式に基づいて周波数変換する。送信部12は、周波数変換されたアナログ信号(即ち、搬送波)それぞれを被試験端末2に送信する。
【0024】
制御部24は、MIMOを構成する伝搬路ごとにあらかじめ設定されたフェージングの条件を、フェージング処理部22A〜22Fに出力し、フェージング処理部22A〜22Fの動作を制御する。また、制御部24は、フェージング処理部22A〜22Fに設定されているフェージングの条件を表示部26に表示させる。また、操作部25を介して入力されたフェージングの条件を、フェージング処理部22A〜22Fに出力するように、制御部24を動作させてもよい。
【0025】
なお、図1では、データ生成部11が、伝搬路ごとのベースバンド信号BaA〜BaFを生成して、対応するフェージング演算部21A〜21Fに送信する構成を示している。これに替わる構成として、データ生成部11が送信アンテナごとのベースバンド信号を生成し、それを受けたフェージングシミュレータ20がベースバンド信号を分配して対応するフェージング演算部に入力する構成としてもよい。また、図1では、フェージングシミュレータ20が、伝搬路ごとのフェージング信号BbA〜BbFを出力して、それを受けた送信部12が受信アンテナごとに対応するフェージング信号BbA〜BbFを加算し、D/A変換及び周波数変換を行って被試験端末2に送信する構成を示している。これに替わる構成として、フェージングシミュレータ20が、受信アンテナごとに対応するフェージング信号BbA〜BbFを加算して出力し、それを受けた送信部12がD/A変換及び周波数変換を行って被試験端末2に送信する構成としてもよい。以降の説明は、図1に示す構成に沿って行う。
【0026】
(フェージング条件の変更)
次にフェージング条件を変更する場合のフェージングシミュレータ20の動作について説明する。ベースバンド信号BaA〜BaFは、パケット伝送によりそれぞれが非同期で送信される。例えば図3は、ベースバンド信号BaA〜BaFを構成する各データの時系列tに沿ったタイミングの関係を示している。ここで、ベースバンド信号BaA〜BaFを表すデータD0〜Dnは、データ生成部11内で生成された後、データ生成部11の送信バッファ(不図示)に蓄積され、高速I/Fを介してフェージングシミュレータ20に送信される。実際には、1または連続した複数のデータに高速I/F用のヘッダが付加されてパケットが構成され、さらのこのパケットが複数連続したバーストでフェージングシミュレータ20に送信される。そして、これらのパケットを受けたフェージングシミュレータ20は、高速I/F用のヘッダを外して、データD0〜Dnを対応するフェージング演算部21A〜21Fに入力する。前述したバーストの長さの上限、即ち1つのバーストに含まれるデータの上限は、前述したデータ生成部11内の送信バッファの容量によって決まる。なお、図3では、上述の高速I/F用のヘッダ及びパケットの構成の図示を省略し、バーストB0〜B1及びそれらに含まれるデータD0〜Dnを示している。
【0027】
図3に示すように、時間t1においては、ベースバンド信号BaAはデータD0を示しているのに対し、ベースバンド信号BaBはデータD1を示している。そのため、同一時間にフェージング処理部22A〜22Fによるフェージング処理の条件を変更した場合、新しいフェージング条件が適用されるデータが、ベースバンド信号BaA〜BaFのそれぞれで異なる。即ち、ベースバンド信号BaA〜BaF間でフェージング処理の同期が損なわれてしまう。
【0028】
そのため、フェージングシミュレータ20は、ベースバンド信号BaA〜BaFのデータ数をそれぞれカウントし、同じ順番のデータ(例えば、バーストB1のデータD1)でフェージング条件変更が反映されるように、フェージング演算部21A〜21Fを制御する。このとき、フェージングシミュレータ20は、フェージング演算部21A〜21Fのうちのいずれかを基準とし、基準以外のフェージング演算部が、この基準にあわせてフェージングの条件変更を反映するように、各フェージング演算部を制御する。なお、以降では基準となるフェージング演算部をマスターと呼び、基準以外のフェージング演算部をスレーブと呼ぶ場合がある。フェージング演算部21A〜21Fの動作は、マスターとして動作する場合とスレーブとして動作する場合とで異なる。以降では、フェージング演算部21Aをマスターとし、フェージング演算部21Bをスレーブとした場合を例に図2を参照しながら説明する。図2は、フェージング演算部21A(マスター側)及び21B(スレーブ側)の構成を示したブロック図である。まず、マスターとして設定されたフェージング演算部21Aの動作について説明する。
【0029】
(マスター側の動作)
条件変更制御部23Aは、データカウンタ231Aと、カウンタ値取得部232Aと、演算部233Aと、タイミングカウンタ234Aと、指示部235Aとを含んで構成される。データ生成部11で生成されたベースバンド信号BaAは、フェージング処理部22Aと、データカウンタ231Aと、タイミングカウンタ234Aに入力される。
【0030】
データカウンタ231Aは、入力されたベースバンド信号BaAを構成するデータD0〜Dnの数をカウントする。データカウンタ231Aは、このデータのカウントを、ベースバンド信号BaAの入力開始にあわせて開始し、フェージングシミュレータ20が停止するまで継続する。データカウンタ231Aは、データ数のカウント値をカウンタ値取得部232Aに遂次出力する。
【0031】
操作部25を介して、操作者によりフェージング条件の変更が指示されると、制御部24は、操作者により新しく設定されたフェージングの条件を示す情報を、フェージング処理部22A及び22Bに出力する。フェージング処理部22A及び22Bは、受信した情報を記憶部(図示しない)に記憶する。なお、この時点では、フェージング処理部22A及び22Bは、フェージングの条件を変更しない。また、制御部24は、マスターとして動作しているフェージング演算部21Aの、カウンタ値取得部232A及びタイミングカウンタ234Aに条件変更トリガT1Aを送信する。
【0032】
カウンタ値取得部232Aは、制御部24から条件変更トリガT1Aを受けると、条件変更トリガT1Bを生成する。このときカウンタ値取得部232Aは、受信した条件変更トリガT1Aを条件変更トリガT1Bとしてもよい。カウンタ値取得部232Aは、生成された条件変更トリガT1Bを、スレーブとして動作するフェージング演算部21Bのカウンタ値取得部232B及びタイミングカウンタ234Bに出力する。カウンタ値取得部232B及びタイミングカウンタ234Bについては後述する。
【0033】
また、カウンタ値取得部232Aは、データカウンタ231Aからデータ数のカウント値を遂次受ける。条件変更トリガT1Aを受けると、カウンタ値取得部232Aは、その時点におけるデータ数のカウンタ値をデータ数Lmとして特定する。ここで、図4を参照する。図4は、フェージング演算部による処理のタイミングチャートの一例である。この場合には、カウンタ値取得部232Aは、データ数の出力を指示したタイミング、即ち条件変更トリガT1Aを受けたタイミングにおけるカウンタ値「6h(16進数)」をデータ数Lmとして特定する。なお、カウンタ値を示すデータの型は、ベースバンド信号のデータ数をカウントできれば16進数に限らず、例えば10進数を用いてもよい。以降では、カウンタ値及びデータ数を16進数で示す。
【0034】
カウンタ値取得部232Aは、特定されたデータ数Lmを、スレーブとして動作するフェージング演算部21Bの演算部233Bに送信する。演算部233Bについては後述する。
【0035】
タイミングカウンタ234Aは、制御部24から条件変更トリガT1Aを受ける。条件変更トリガT1Aを受けると、タイミングカウンタ234Aは、データ生成部11から入力されたベースバンド信号BaAを構成するデータD0〜Dnの数のカウントを開始する。このとき、図4に示すように、データ数Lmに対応するカウンタ値「6h」のデータが、タイミングカウンタ234Aでは、1番目のデータ、即ちカウンタ値「0h」としてカウントされる。タイミングカウンタ234Aは、このカウント値をデータ数Cmとして指示部235Aに遂次出力する。指示部235Aについては後述する。
【0036】
演算部233Aは、フェージング条件変更の基準となるデータ数Zmを記憶部(図示しない)にあらかじめ記憶させる。演算部233Aは、データ数Zmを指示部235Aに出力する。図4では、データ数Zmは「20h」を示している。
【0037】
指示部235Aは、タイミングカウンタ234Aから遂次出力されるデータ数Cmを受ける。また、指示部235Aは、演算部233Aからデータ数Zmを受ける。
【0038】
指示部235Aは、データ数Zmとデータ数Cmとを遂次比較する。図4に示すように、データ数Cmがデータ数Zmに達すると、指示部235Aは、フェージング処理部22Aに条件反映トリガT2Aを出力することによって、フェージング処理部22Aにフェージング条件を変更させる。
【0039】
フェージング処理部22Aは、フェージング条件の変更が指示されると、まず制御部24から新たなフェージング条件を示す情報を受ける。フェージング処理部22Aは、この情報を記憶部(図示しない)に記憶させる。その後、フェージング処理部22Aは、指示部235Aから条件反映トリガT2Aを受ける。条件反映トリガT2Aを受けると、フェージング処理部22Aは、記憶部に記憶された新しいフェージング条件を特定のデータ以降のデータに対して反映させる動作を開始する。
【0040】
詳細は後述するが、スレーブ側のフェージング処理部22Bもこのデータ数Zmを基に、フェージング条件変更を反映させるデータのタイミングを調整する。スレーブ側のベースバンド信号BaBは、必ずしもマスター側のベースバンド信号BaAよりも遅れているとは限らない。そのため、本実施形態に係るフェージングシミュレータ20は、条件変更トリガT1Aを受けてから条件反映トリガT2Aを出力するまでの間にマージンを設けている。これにより、マスター側のベースバンド信号BaAがスレーブ側のベースバンド信号BaBより遅れている場合においても、データ数Zmによりその差を吸収して、ベースバンド信号間(即ち、伝搬路間)のデータの同期をとることが可能となる。
【0041】
なお、データ数Zmは、ベースバンド信号Baのバースト長以上の長さ(データ数)にあらかじめ設定しておく。MIMOに基づく伝搬路ごとのベースバンド信号Ba間のデータ数のずれは、ベースバンド信号Baのバースト長以上となることは無い。そのため、データ数Zmをベースバンド信号Baのバースト長以上の長さに設定することで、ベースバンド信号Ba間のずれが最大となった場合においてもデータの同期を維持すること、即ち、データのサンプル数を基準としてフェージング条件変更のタイミングの同期をとることが可能となる。
【0042】
(スレーブ側の動作)
次に、スレーブとして設定されたフェージング演算部21Bの動作について説明する。
【0043】
条件変更制御部23Bは、データカウンタ231Bと、カウンタ値取得部232Bと、演算部233Bと、タイミングカウンタ234Bと、指示部235Bとを含んで構成される。データ生成部11で生成されたベースバンド信号BaBは、フェージング処理部22Bと、データカウンタ231Bと、タイミングカウンタ234Bに入力される。
【0044】
データカウンタ231Bは、入力されたベースバンド信号BaBを構成するデータD0〜Dnの数をカウントする。データカウンタ231Bは、このデータのカウントを、ベースバンド信号BaBの入力開始にあわせて開始し、フェージングシミュレータ20が停止するまで継続する。データカウンタ231Bは、データ数のカウント値をカウンタ値取得部232Bに遂次出力する。
【0045】
カウンタ値取得部232Bは、データカウンタ231Bからデータ数のカウント値を遂次受ける。また、カウンタ値取得部232Bは、マスター側のカウンタ値取得部232Aから条件変更トリガT1Bを受ける。条件変更トリガT1Bを受けると、カウンタ値取得部232Bは、その時点におけるデータ数のカウンタ値をデータ数Lsとして特定する。ここで、図4を参照する。この場合には、カウンタ値取得部232Bは、データ数の出力を指示したタイミング、即ち条件変更トリガT1Bを受けたタイミングにおけるカウンタ値「8h(16進数)」をデータ数Lsとして特定する。
【0046】
カウンタ値取得部232Bは、特定されたデータ数Lsを、演算部233Bに出力する。演算部233Bについては後述する。
【0047】
タイミングカウンタ234Bは、マスター側のカウンタ値取得部232Aから条件変更トリガT1Bを受ける。条件変更トリガT1Bを受けると、タイミングカウンタ234Bは、データ生成部11から入力されたベースバンド信号BaBを構成するデータD0〜Dnの数のカウントを開始する。このとき、図4に示すように、データ数Lsに対応するカウンタ値「8h」のデータが、タイミングカウンタ234Bでは、1番目のデータ、即ちカウンタ値「0h」としてカウントされる。タイミングカウンタ234Aは、このカウント値をデータ数Csとして指示部235Bに遂次出力する。指示部235Bについては後述する。
【0048】
演算部233Bは、マスター側のカウンタ値取得部232Aからデータ数Lmを受ける。また、演算部233Bは、自己のカウンタ値取得部232Bからデータ数Lsを受ける。また、演算部233Bは、データ数Zmを、記憶部(図示しない)にあらかじめ記憶させている。このデータ数Zmは、マスター側の演算部233Aが記憶部に記憶させているものと同様である。演算部233Bは、データ数Zm、Lm、及びLsを基に、フェージング処理部22Bがフェージング条件を変更するタイミングを示すデータ数Zsを算出する。データ数Zsは、次式により与えられる。
Zs=Zm−(Ls−Lm)
【0049】
ここで、Ls−Lmは、マスター側のタイミングカウンタ234Aがカウントを開始したデータ数と、スレーブ側のタイミングカウンタ234Bがカウントを開始したデータ数との差、即ちタイミングのずれを示している。図4では、Ls−Lmは、「8h−6h=2h」を示している。また、データ数Zsは「20h−2h=1Eh」を示している。
【0050】
演算部233Bは、算出されたデータ数Zsを指示部235Bに出力する。
【0051】
指示部235Bは、演算部233Bからデータ数Zsを受ける。また、指示部235Bは、タイミングカウンタ234Bから遂次出力されるデータ数Csを受ける。
【0052】
指示部235Bは、データ数Zsとデータ数Csとを遂次比較する。図4に示すように、データ数Csがデータ数Zsに達すると、指示部235Bは、フェージング処理部22Bに条件反映トリガT2Bを出力することによって、フェージング処理部22Bにフェージング条件を変更させる。
【0053】
フェージング処理部22Bは、フェージング処理部22Aと同様に、フェージング条件の変更が指示されると、まず制御部24から新たなフェージング条件を示す情報を受ける。フェージング処理部22Bは、この情報を記憶部(図示しない)に記憶させる。その後、フェージング処理部22Bは、指示部235Bから条件反映トリガT2Bを受ける。条件反映トリガT2Bを受けると、フェージング処理部22Bは、記憶部に記憶された新しいフェージング条件の情報に基づいた動作を開始する。以上のように動作することで、図4に示すように、フェージング演算部21Bは、フェージング演算部21Aと同様のデータ数、即ち26h番目以降のデータよりフェージング条件変更を反映させることが可能となる。
【0054】
なお、スレーブ側のカウンタ値取得部232Bへの条件変更トリガT1Bの出力を、カウンタ値取得部232Aに替えて、制御部24が行ってもよい。この場合、カウンタ値取得部232Aは、条件変更トリガT1Bの生成及び送信を行わなくてよい。
【0055】
また、スレーブ側のフェージング処理部として、フェージング演算部21C〜21Fを設けてもよい。この場合は、伝搬路Bに対応するフェージング演算部21Bの動作を、伝搬路C〜Fの場合について適宜読みかえればよい。また、この場合には、カウンタ値取得部232Aは、条件変更トリガT1B〜T1Fを生成し、スレーブ側のカウンタ値取得部232B〜232F及びタイミングカウンタ234B〜234Fに出力する。また、カウンタ値取得部232Aは、データカウンタ231Aから受けたデータ数Lmを、演算部233B〜233Fに送信する。
【0056】
(マスター側の一連の動作)
次に、マスター側のフェージング演算部21Aの、フェージング条件の変更に係る一連の動作について、フェージング演算部21Aをマスターとし、フェージング演算部21Bをスレーブとした場合を例に図5を参照しながら説明する。図5は、マスター側のフェージング演算部21Aの一連の処理の流れを示したフローチャートである。
【0057】
(ステップS101)
データ生成部11は、MIMOを構成する伝搬路ごとに各ベースバンド信号BaA及びBaBを生成する。データ生成部11は、伝搬路Aに対応するベースバンド信号BaAを、伝搬路Aに対応付けられたフェージング演算部21Aに、パケット伝送を用いてベースバンド信号BaBとは非同期で出力する。データ生成部11から出力されたベースバンド信号BaAは、フェージング処理部22Aと、データカウンタ231Aと、タイミングカウンタ234Aに入力される。
【0058】
データカウンタ231Aは、入力されたベースバンド信号BaAを構成するデータD0〜Dnの数をカウントする。データカウンタ231Aは、データ数のカウント値をカウンタ値取得部232Aに遂次出力する。
【0059】
(ステップS102、S103)
フェージング条件の変更が指示されると(ステップS102、Y)、制御部24は、新しく設定されたフェージングの条件を示す情報を、フェージング処理部22Aに出力する。フェージング処理部22Aは、この情報を記憶部(図示しない)に記憶させる(S103)。
【0060】
(ステップS104)
また、制御部24は、マスターとして動作しているフェージング演算部21Aの、カウンタ値取得部232A及びタイミングカウンタ234Aに条件変更トリガT1Aを送信する。
【0061】
(ステップS105)
カウンタ値取得部232Aは、制御部24から条件変更トリガT1Aを受けると、条件変更トリガT1Bを生成する。カウンタ値取得部232Aは、生成された条件変更トリガT1Bを、スレーブとして動作するフェージング演算部21Bのカウンタ値取得部232B及びタイミングカウンタ234Bに出力する。
【0062】
(ステップS106)
また、カウンタ値取得部232Aは、データカウンタ231Aからデータ数のカウント値を遂次受ける。条件変更トリガT1Aを受けると、その時点におけるデータ数のカウンタ値をデータ数Lmとして特定する。
【0063】
(ステップS107)
カウンタ値取得部232Aは、特定されたデータ数Lmを、スレーブとして動作するフェージング演算部21Bの演算部233Bに送信する。
【0064】
(ステップS108)
タイミングカウンタ234Aは、制御部24から条件変更トリガT1Aを受けると、データ生成部11から入力されたベースバンド信号BaAを構成するデータD0〜Dnの数のカウントを開始する。タイミングカウンタ234Aは、このカウント値をデータ数Cmとして指示部235Aに遂次出力する。
【0065】
(ステップS109)
指示部235Aは、タイミングカウンタ234Aから遂次出力されるデータ数Cmを受ける。また、指示部235Aは、演算部233Aからデータ数Zmを受ける。指示部235Aは、データ数Zmとデータ数Cmとを遂次比較する。データ数Cmがデータ数Zmに達すると、指示部235Aは、フェージング処理部22Aに条件反映トリガT2Aを出力することによって、フェージング処理部22Aにフェージング条件を変更させる。
【0066】
(ステップS110)
フェージング処理部22Aは、指示部235Aから条件反映トリガT2Aを受けると、受けたタイミングのデータから、記憶部に記憶された新しいフェージング条件を反映したフェージング処理を開始する。
【0067】
(ステップS111)
フェージング処理部22Aは、フェージング処理の終了が指示されない限り(ステップS102、N、かつ、ステップS111、N)、フェージング信号の生成に係る処理を継続する。フェージング処理の終了が指示された場合(ステップS111、Y)、フェージング処理部22Aは、フェージング信号の生成に係る処理を終了する。
【0068】
(スレーブ側の一連の動作)
次に、スレーブ側のフェージング演算部21Bの、フェージング条件の変更に係る一連の動作について図6を参照しながら説明する。図6は、スレーブ側のフェージング演算部21Bの一連の処理の流れを示したフローチャートである。
【0069】
(ステップS201)
データ生成部11は、MIMOを構成する伝搬路ごとに各ベースバンド信号BaA及びBaBを生成する。データ生成部11は、伝搬路Bに対応するベースバンド信号BaBを、伝搬路Bに対応付けられたフェージング演算部21Bに、パケット伝送を用いてベースバンド信号BaAとは非同期で出力する。データ生成部11から出力されたベースバンド信号BaBは、フェージング処理部22Bと、データカウンタ231Bと、タイミングカウンタ234Bに入力される。
【0070】
データカウンタ231Bは、入力されたベースバンド信号BaBを構成するデータD0〜Dnの数をカウントする。データカウンタ231Bは、データ数のカウント値をカウンタ値取得部232Bに遂次出力する。
【0071】
(ステップS202、S203)
フェージング条件の変更が指示されると(ステップS202、Y)、制御部24は、新しく設定されたフェージングの条件を示す情報を、フェージング処理部22Bに出力する。フェージング処理部22Bは、この情報を記憶部(図示しない)に記憶させる(S203)。
【0072】
(ステップS204)
カウンタ値取得部232Bは、データカウンタ231Bからデータ数のカウント値を遂次受ける。また、カウンタ値取得部232B及びタイミングカウンタ234Bは、マスター側のカウンタ値取得部232Aから条件変更トリガT1Bを受ける。
【0073】
(ステップS205)
条件変更トリガT1Bを受けると、カウンタ値取得部232Bは、その時点におけるデータ数のカウンタ値をデータ数Lsとして特定する。カウンタ値取得部232Bは、特定されたデータ数Lsを、演算部233Bに出力する。
【0074】
(ステップS206)
演算部233Bは、マスター側のカウンタ値取得部232Aからデータ数Lmを受ける。
【0075】
(ステップS207)
また、演算部233Bは、自己のカウンタ値取得部232Bからデータ数Lsを受ける。また、演算部233Bは、フェージング条件変更の基準となるデータ数Zmを、記憶部(図示しない)にあらかじめ記憶させている。このデータ数Zmは、マスター側の演算部233Aが記憶部に記憶させているものと同様である。演算部233Bは、データ数Zm、Lm、及びLsを基に、フェージング処理部22Bがフェージング条件を変更するタイミングを示すデータ数Zsを算出する。演算部233Bは、算出されたデータ数Zsを指示部235Bに出力する。
【0076】
(ステップS208)
また、条件変更トリガT1Bを受けると、タイミングカウンタ234Bは、データ生成部11から入力されたベースバンド信号BaBを構成するデータD0〜Dnの数のカウントを開始する。タイミングカウンタ234Aは、このカウント値をデータ数Csとして指示部235Bに遂次出力する。
【0077】
(ステップS209)
指示部235Bは、演算部233Bからデータ数Zsを受ける。また、指示部235Bは、タイミングカウンタ234Bから遂次出力されるデータ数Csを受ける。
【0078】
指示部235Bは、データ数Zsとデータ数Csとを遂次比較する。データ数Csがデータ数Zsに達すると、指示部235Bは、フェージング処理部22Bに条件反映トリガT2Bを出力することによって、フェージング処理部22Bにフェージング条件を変更させる。
【0079】
(ステップS210)
フェージング処理部22Bは、指示部235Bから条件反映トリガT2Bを受けると、受けたタイミングのデータから、記憶部に記憶された新しいフェージング条件を反映したフェージング処理を開始する。
【0080】
(ステップS211)
フェージング処理部22Bは、フェージング処理の終了が指示されない限り(ステップS202、N、かつ、ステップS211、N)、フェージング信号の生成に係る処理を継続する。フェージング処理の終了が指示された場合(ステップS211、Y)、フェージング処理部22Bは、フェージング信号の生成に係る処理を終了する。
【0081】
以上、本実施形態に係るフェージングシミュレータ20は、フェージング演算部21A〜21Fそれぞれが、入力されるベースバンド信号Baのデータの数を計測し、このデータの数に基づきフェージング条件の変更を反映するタイミングを決定する。また、フェージング条件の変更指示を受けたときの、マスター及びスレーブ間のデータの数のずれを、マスター側のデータ数Lm及びスレーブ側のデータ数Lsにより調整している。これにより、本実施形態に係るフェージングシミュレータ20は、伝搬路ごとにフェージング処理されるそれぞれのベースバンド信号のデータが非同期で送受信される場合においても、複数のフェージング演算部にまたがりデータの同期をとって、フェージングの条件を変更することが可能となる。即ち、動作中にフェージング条件の変更が発生しても、複数の伝搬路間におけるデータのサンプル数を基準に条件変更の反映の同期を維持することが可能となる。
【符号の説明】
【0082】
1 移動体通信端末試験システム
10 基地局模擬装置
11 データ生成部
12 送信部
20 フェージングシミュレータ
21A〜21F フェージング演算部
22A、22B フェージング処理部
23A、23B 条件変更制御部
231A、231B データカウンタ
232A、232B カウンタ値取得部
233A、233B 演算部
234A、234B タイミングカウンタ
235A、235B 指示部
24 制御部
25 操作部
26 表示部
2 被試験端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信の試験用のデジタルのベースバンド信号である入力データを非同期で受けて、当該入力データにフェージング処理を施し、デジタルのフェージング信号として出力するフェージング処理部(22A、22B)を各々有する第1のフェージング演算部(21A)及び第2のフェージング演算部(21B)を、それぞれ異なる伝搬路と対応付けて備えたフェージングシミュレータ(20)であって、
前記第1のフェージング演算部は、
自己に入力された前記入力データの数を計測するとともに、フェージング条件の変更指示を受けたときの前記入力データの数を第1のデータ数Lmとして取得し、計測された前記入力データの数Cmが所定のデータ数Zmとなったときに、自己が有する前記フェージング処理部にフェージング条件の変更を指示する第1の条件変更制御部(23A)を備え、
前記第2のフェージング演算部は、
自己に入力された前記入力データの数を計測するとともに、前記変更指示を受けたときの前記入力データの数を第2のデータ数Lsとして取得し、計測された前記入力データの数CsがZm−(Ls−Lm)となったときに、自己が有する前記フェージング処理部にフェージング条件の変更を指示する第2の条件変更制御部(23B)を備えたことを特徴とするフェージングシミュレータ。
【請求項2】
前記第1の条件変更制御部及び第2の条件変更制御部は、
自己に入力された前記入力データの数を計測するデータカウンタ(231A、231B)を、それぞれ備え、
前記第1の条件変更制御部は、
前記第1のデータ数Lmを取得する第1のカウンタ値取得部(232A)と、
前記変更指示後に自己に入力された前記入力データの数Cmを計測する第1のタイミングカウンタ(234A)と、
前記入力データの数Cmが所定のデータ数Zmとなったときに、自己が有する前記フェージング処理部にフェージング条件の変更を指示する第1の指示部(235A)と、
を備え、
前記第2の条件変更制御部は、
前記第2のデータ数Lsを取得する第2のカウンタ値取得部(232B)と、
前記変更指示後に自己に入力された前記入力データの数Csを計測する第2のタイミングカウンタ(234B)と、
前記入力データの数CsがZm−(Ls−Lm)となったときに、自己が有する前記フェージング処理部にフェージング条件の変更を指示する第2の指示部(235B)と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のフェージングシミュレータ。
【請求項3】
移動体通信の試験用のデジタルのベースバンド信号である入力データを生成するデータ生成部(11)と、
前記入力データを非同期で受けて、当該入力データにフェージング処理を施したフェージング信号を出力するフェージングシミュレータ(20)と、
前記フェージングシミュレータから出力された前記フェージング信号をアナログ信号に変換し、所定の通信方式に従い周波数変換して試験対象である移動体通信端末に出力する送信部(12)と、
を備えた移動体通信端末試験システムにおいて、
前記フェージングシミュレータは、
入力データを順次受けて、当該入力データにフェージング処理を施し、前記フェージング信号として出力するフェージング処理部(22A、22B)を各々有する第1のフェージング演算部(21A)及び第2のフェージング演算部(21B)を、それぞれ異なる伝搬路と対応付けて備え、
前記第1のフェージング演算部は、
自己に入力された前記入力データの数を計測するとともに、フェージング条件の変更指示を受けたときの第1のデータ数Lmを求め、計測された前記入力データの数Cmが所定のデータ数Zmとなったときに、自己が有する前記フェージング処理部にフェージング条件の変更を指示する第1の条件変更制御部(23A)を備え、
前記第2のフェージング演算部は、
自己に入力された前記入力データの数を計測するとともに、前記変更指示を受けたときの第2のデータ数Lsを求め、計測された前記入力データの数CsがZm−(Ls−Lm)となったときに、自己が有する前記フェージング処理部にフェージング条件の変更を指示する第2の条件変更制御部(23B)を備えたことを特徴とする移動体通信端末試験システム。
【請求項4】
移動体通信の試験用のデジタルのベースバンド信号である入力データを非同期で受けて、当該入力データにフェージング処理を施し、デジタルのフェージング信号として出力するフェージング処理部(22A、22B)を各々有する第1のフェージング演算部(21A)及び第2のフェージング演算部(21B)を、それぞれ異なる伝搬路と対応付けて備えたフェージングシミュレータ(20)を用いたフェージング処理方法であって、
前記第1のフェージング演算部及び前記第2のフェージング演算部それぞれが、自己に入力された前記入力データの数を計測する入力データカウントステップと、
前記第1のフェージング演算部がフェージング条件の変更指示を受けたときの前記入力データの数を第1のデータ数Lmとして取得する第1のデータ数取得ステップと、
前記第1のフェージング演算部に入力された前記入力データの数Cmを計測する第1のタイミングカウントステップと、
前記第2のフェージング演算部が前記変更指示を受けたときの前記入力データの数を第2のデータ数Lsとして取得する第2のデータ数取得ステップと、
前記第2のフェージング演算部に入力された前記入力データの数Csを計測する第2のタイミングカウントステップと、
前記入力データの数Cmが所定のデータ数Zmとなったときに、前記第1のフェージング演算部が有する前記フェージング処理部にフェージング条件の変更を指示する第1の指示ステップと、
前記入力データの数CsがZm−(Ls−Lm)となったときに、前記第2のフェージング演算部が有する前記フェージング処理部にフェージング条件の変更を指示する第2の指示ステップと、
を備えたことを特徴とするフェージング処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−195846(P2012−195846A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59576(P2011−59576)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】