説明

フェージングシミュレータ、移動体通信端末試験システム、及びフェージング処理方法

【課題】フェージング信号のレベルを所望の範囲内に収めることを目的とする。
【解決手段】第1のレベルPINで入力されるデジタルのベースバンド信号を複数受けて、フェージング処理を施し、出力を合成してデジタルのフェージング信号として出力する演算コア部と、所定のゲインGに基づきフェージング信号のレベルを変更する出力レベル調整部と、を備えたフェージングシミュレータであって、各ベースバンド信号間または各伝搬路間に相関特性がある場合に、レベルが変更された該フェージング信号の第2のレベルPOUTを測定する出力レベル測定部と、各ベースバンド信号間または各伝搬路間に相関特性がある場合に、第1のレベルPINと第2のレベルPOUTとのレベル比Kを算出し、該レベル比Kが所定の値となるように、ゲインGを更新する出力レベル調整制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信端末と基地局との間の空間伝搬によって生じるフェージングを模擬するフェージング処理の技術に関し、特にフェージング処理後の信号のレベルを調整するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信端末と基地局との間の空間伝搬によって生じるフェージングを模擬的に与えた信号(以下、「フェージング信号」と呼ぶ場合がある)を生成するフェージングシミュレータがある。無線通信用の信号は、一般的にはベースバンド帯の所望の信号で変調された搬送波により送信される。フェージングを模擬する方法としては、ベースバンド信号にフェージング処理を施す方法と、搬送波にフェージング処理を施す方法とがある。近年の信号の高周波化及び広帯域化に伴い、信号をデジタルで制御可能であるという点から、ベースバンド信号にフェージング処理を施す方法がしばしば用いられている。このようなフェージングシミュレータの一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
一方で、携帯電話等に代表される移動体通信端末では、インターネットからの情報をダウンロードすることが多くなり、下りの情報伝達量がより多く要求されてきている。しかしながら、情報量を増やすために周波数帯域を広くすることは、通信可能な端末数を減少させることになり、システム全体としての情報伝達量を増加させることにならない。この問題を解決する一つの方式として、MIMO(Multiple Input Multiple Output)方式が提案されている。
【0004】
MIMO方式では、基地局側で移動体通信端末に伝達したい情報を複数「M」のアンテナから同一周波数で同時に出力し、これを移動体通信端末が複数「N」のアンテナで受信して移動体通信端末の内部で情報の分離処理を行う。これによりMIMO方式は、情報伝達量の向上を可能としている。
【0005】
MIMOを構成する伝搬路の数は、基地局側のアンテナの数「M」と、移動体通信端末側のアンテナの数「N」との組合せの数に相当する。MIMO方式を採用する移動体通信システムを想定したフェージングシミュレータでは、生成された複数のベースバンド信号に対して、各ベースバンド信号に伝搬路に応じたフェージング処理を施してフェージング信号を生成する。このとき、フェージング信号は、フェージング処理が施された複数のベースバンド信号が加算されて生成される。そのため、フェージングシミュレータは、各ベースバンド信号が重畳することにより増大するフェージング信号のレベルを、所定のレベルに調整して出力している。この所定のレベルとしては、例えば、ベースバンド信号のレベルを、操作者が指定したゲインに基づき調整された値があげられる。
【0006】
従来のフェージングシミュレータの一例では、ベースバンド信号間に相関関係が無い場合を想定して動作させていた。ベースバンド信号間に相関関係が無い場合には、フェージング信号のレベルの理論値を、各ベースバンド信号のレベルに基づきあらかじめ算出することが可能である。そのため、従来のフェージングシミュレータの一例は、フェージング信号のレベルの理論値に基づき、フェージング信号のレベルのゲインを決定していた。
【0007】
しかしながら、ベースバンド信号間に相関関係がある場合には、フェージング処理の条件(例えば、位相の違い)によってフェージング信号のレベルが変動して、理論値が一意に決定されない。そのため、各ベースバンド信号のレベルからフェージング信号のレベルを算出することは困難である。また、フェージング条件が設定された各伝搬路間に相関がある場合も同様に困難である。したがって、これらの場合には、従来のフェージングシミュレータは、フェージング信号のレベルに応じてゲインを変更することができず、高確度で出力レベルを一定に保つことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−98650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、フェージング信号のレベルを所望の範囲内に収めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、この請求項1に記載の発明は、第1のレベルPINで入力される移動体通信端末の試験用の複数(m)のベースバンド信号を受けて、前記ベースバンド信号にフェージング処理を施す演算コア部(231X〜231X)を複数含み、前記複数の演算コア部の出力を合成して移動体通信の伝搬路ごとにデジタルのフェージング信号として出力する演算コア部群と、あらかじめ決められたゲインGに基づき前記フェージング信号のレベルを変更する出力レベル調整部(235)と、を備えたフェージングシミュレータであって、前記ベースバンド信号間に前記相関特性がある場合、または前記伝搬路間に相関特性がある場合に、レベルが変更された前記フェージング信号のレベルを第2のレベルPOUTとして測定する出力レベル測定部(236)と、前記ベースバンド信号間に前記相関特性がある場合、または前記伝搬路間に相関特性がある場合に、前記第1のレベルPINと前記第2のレベルPOUTとのレベル比Kを算出し、該レベル比Kが所定の値となるように、前記ゲインGを更新する出力レベル調整制御部(24)と、を備えたことを特徴とするフェージングシミュレータである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフェージングシミュレータであって、前記複数のベースバンド信号間の相関特性の有無を検出する相関特性検出部(222)を備えたことを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のフェージングシミュレータであって、前記ベースバンド信号のレベルを測定し、前記第1のレベルPINを求める入力レベル測定部(221)を備え、前記出力レベル調整制御部は、前記入力レベル測定部の測定結果(PIN)に基づき前記レベル比Kを算出することを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のフェージングシミュレータであって、前記複数(m)のベースバンド信号に対して、前記演算コア部群、前記レベル調整部、及び前記出力レベル測定部の組を複数(n)備え、複数の異なる前記フェージング信号を出力することを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のフェージングシミュレータであって、表示部(28)と、前記表示部に前記レベル比Kを表示させる表示制御部(26)と、を備えたことを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のフェージングシミュレータであって、あらかじめ決められた期間中に、前記レベル比Kが前記所定の値とならなかった場合に、その旨を通知することを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、出力レベルとして第1のレベルPINを有する試験用の複数(m)のデジタルのベースバンド信号を生成するベースバンド信号生成部(11)と、前記複数のベースバンド信号を受けて、MIMOを構成する伝搬路に応じて複数(n)のフェージング信号を出力するフェージングシミュレータ(20)と、前記フェージングシミュレータから出力された前記各フェージング信号をアナログ信号に変換し、所定の通信方式に従い周波数変換して試験対象である移動体通信端末に出力する送信部(12)と、を備えた移動体通信端末試験システムにおいて、前記フェージングシミュレータは、前記複数のベースバンド信号を受けて、前記ベースバンド信号にフェージング処理を施す演算コア部(231X〜231X)を複数含み、前記複数の演算コア部の出力を合成して前記伝搬路ごとにデジタルのフェージング信号として出力する演算コア部群と、あらかじめ決められたゲインGに基づき前記フェージング信号のレベルを変更する出力レベル調整部(235)と、前記ベースバンド信号間に前記相関特性がある場合、または前記伝搬路間に相関特性がある場合に、レベルが変更された前記フェージング信号のレベルを第2のレベルPOUTとして測定する出力レベル測定部(236)と、前記ベースバンド信号間に前記相関特性がある場合、または前記伝搬路間に相関特性がある場合に、前記第1のレベルPINと前記第2のレベルPOUTとの比をレベル比Kとして算出し、該レベル比Kが所定の値となるように、前記ゲインGを更新する出力レベル調整制御部(24)と、を備えたことを特徴とする移動体通信端末試験システムである。
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の移動体通信端末試験システムであって、前記フェージングシミュレータは、前記複数(m)のベースバンド信号に対して、前記演算コア部群、前記レベル調整部、及び前記出力レベル測定部の組を複数(n)備え、複数の異なる前記フェージング信号を出力することを特徴とする。
また、請求項9に記載の発明は、第1のレベルPINで入力される移動体通信端末の試験用の複数のベースバンド信号を受けて、移動体通信の伝搬路ごとにフェージング信号を出力するフェージングシミュレータ(20)を用いたフェージング処理方法であって、前記複数のベースバンド信号間の相関特性の有無と、前記伝搬路間の相関特性の有無とのいずれか一方または双方を検出する相関特性検出ステップと、前記複数のベースバンド信号にフェージング処理を施し、その出力を合成してフェージング信号として出力するフェージング処理ステップと、あらかじめ決められたゲインGに基づき前記フェージング信号のレベルを変更するレベル調整ステップと、前記ベースバンド信号間に前記相関特性がある場合、または前記伝搬路間に相関特性がある場合に、レベルが変更された該フェージング信号のレベルを第2のレベルPOUTとして測定する第2の測定ステップと、前前記ベースバンド信号間に前記相関特性がある場合、または前記伝搬路間に相関特性がある場合に、前記第1のレベルPINと前記第2のレベルPOUTとのレベル比Kを算出し、該レベル比Kが所定の値となるように、前記ゲインGを更新するゲイン調整ステップと、を備えたことを特徴とするフェージング処理方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るフェージングシミュレータは、ベースバンド信号間に相関関係がある場合、または前記伝搬路間に相関特性がある場合に、ベースバンド信号のレベルとフェージング信号のレベルとに基づきレベル比を算出し、このレベル比が所定の値となるように、フェージング信号のレベルを調整する。これにより、本発明に係るフェージングシミュレータは、ベースバンド信号間に相関関係がある場合、または前記伝搬路間に相関特性がある場合に、フェージング信号のレベルを所定の範囲内に収めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフェージング演算部のブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る演算コア部のブロック図である。
【図4】レベルの調整方法の特定に係る処理のフローチャートである。
【図5】フェージング信号のレベル調整に係る処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図1を参照しながら説明する。図1に示す移動体通信端末試験システム1には、本実施形態に係るフェージングシミュレータが適用されている。
【0014】
移動体通信端末試験システム1は、一般的には、所定の通信方式に基づきベースバンド信号が周波数変換された搬送波を、疑似基地局装置の送信部から被試験端末に送信して被試験端末の受信特性を試験する。また、移動体通信端末試験システム1は、被試験端末から送信された信号を、疑似基地局装置の受信部で受信して被試験端末の送信特性を試験する。フェージングシミュレータは、疑似基地局装置の送信側の構成に接続され、試験用に生成された信号に対してフェージング処理を施す。以降では、被試験端末に搬送波を送信するための構成に着目して説明する。
【0015】
移動体通信端末試験システム1は、基地局模擬装置10と、それに外付けされるフェージングシミュレータ20とで構成されている。基地局模擬装置10は、被試験端末2と無線または有線による通信が可能に構成されている。なお、基地局模擬装置10とフェージングシミュレータ20は、同一筐体内に設けられていてもよい。
【0016】
基地局模擬装置10は、ベースバンド信号生成部11と、送信部12とを含んで構成されている。フェージングシミュレータ20は、ベースバンド信号生成部11と送信部12との間に接続される。フェージングシミュレータ20は、フェージング演算部21と、設定制御部25と、表示制御部26と、操作部27と、表示部28とを含んで構成される。
【0017】
まず、フェージングシミュレータ20の動作の概要について説明する。フェージングシミュレータ20は、あらかじめ決められた数「m」のベースバンド信号をベースバンド信号生成部11から受け、これらのベースバンド信号にフェージング処理を施し、MIMOを構成する伝搬路に応じてあらかじめ決められた数「n」のフェージング信号を送信部12に出力する。以降では、フェージングシミュレータ20は、ベースバンド信号X〜Xを受け、フェージング信号Y〜Yを出力するものとして説明する。
【0018】
本実施形態に係るフェージングシミュレータ20は、出力されるフェージング信号(Y〜Y)ごとに出力レベルの調整を可能としており、そのためのパラメタとしてゲインGO1〜GOnを設けている。ここで、ゲインGO1はフェージング信号Yに対応しており、ゲインGOnはフェージング信号Y1nに対応している。操作者は、操作部27を介してゲインGO1〜GOnを設定することで各フェージング信号の出力レベルを指定する。フェージング信号Yを例とすると、フェージングシミュレータ20は、フェージング信号Yのレベルが、ゲインGO1により調整されたベースバンド信号Xのレベルと等しくなるようにフェージング演算部21を動作させる。このフェージング演算部21の動作については後述する。
【0019】
また、フェージング信号Y〜Yは、複数のベースバンド信号X〜Xごとにフェージング処理が施された複数の信号が重畳されたものであるため、ベースバンド信号X〜Xよりも出力レベルが高くなる場合がある。そのため、フェージングシミュレータ20には、フェージング信号Y〜Yのレベルを調整するためのゲインGが設けられている。フェージングシミュレータ20は、ゲインGによりフェージング信号Y〜Yを減衰させて出力する。ゲインGの詳細については後述する。また、以降では、ゲインGによりレベルが調整される前のフェージング信号を「フェージング信号Z〜Z」と呼び、「フェージング信号Y〜Y」は、ゲインGによりレベルが調整された後のフェージング信号を指すものとする。
【0020】
また、フェージングシミュレータ20には、フェージング信号Y〜Yのレベルの調整方法(モード)として「固定ゲイン調整」及び「自動ゲイン調整」の2つのモードが設けられている。「固定ゲイン調整」は、ゲインGとしてあらかじめ決められた固定値を使用するモードである。また、「自動ゲイン調整」は、フェージング信号Y〜Yの出力に基づき、フェージングシミュレータ20がゲインGを調整するモードである。レベルの調整方法の特定に係る具体的な動作については後述する。
【0021】
次に、各構成の動作について説明する。ベースバンド信号生成部11は、同じ出力レベルを示す試験用のベースバンド信号X〜Xを生成する。ベースバンド信号生成部11は、生成された各ベースバンド信号X〜Xを、フェージング演算部21に出力する。なお、基地局模擬装置10にフェージングシミュレータ20を接続しない場合(言い換えると、上記したように一般的な疑似基地局として動作する場合)、ベースバンド信号生成部11は、ベースバンド信号X〜Xを送信部12に出力する。
【0022】
設定制御部25は、操作者により指定されたフェージング処理の条件(以降では、「フェージング条件」と呼ぶ場合がある)を操作部27から受ける。このフェージング条件には、「レベルの調整方法」、「マルチパスの有無」、「遅延」、「減衰」、及び「雑音」の条件を示すパラメタ、「ドップラ周波数」を示すパラメタ、及び前述したゲインGO1〜GOnが含まれる。また、設定制御部25は、これらのパラメタに基づいて「伝搬路間の相関の有無」を判定して、新たなパラメタとする。この伝搬路間の相関の有無は、例えば、フェージング処理における雑音の印加のしかたにより決定される。言い換えると、設定制御部25は、全ての伝搬路がレイリーフェージングであり、かつ相関係数が0の場合に、伝搬路間の相関が無いと判断する。また、設定制御部25は、少なくとも1つの伝搬路がレイリーフェージングではない場合、または、相関係数が0ではない場合に、伝搬路間の相関があると判断する。設定制御部25は、これらのパラメタをフェージング演算部21に出力する。
【0023】
ここで図2を参照する。図2は、フェージング演算部21のブロック図を示している。フェージング演算部21は、入力レベル測定部221と、相関特性検出部222と、複数のフェージング信号生成部23Y〜23Yと、出力レベル調整制御部24とを含んで構成される。フェージング信号生成部23Y〜23Yは、フェージング信号ごとに設けられている。以降では、フェージング信号生成部23Yは、フェージング信号Yに対応し、フェージング信号生成部23Yは、フェージング信号Yに対応して設けられているものとして説明する。
【0024】
ベースバンド信号生成部11から出力されたベースバンド信号X〜Xは、入力レベル測定部221と、相関特性検出部222と、フェージング信号生成部23Y〜23Yとに入力される。
【0025】
入力レベル測定部221は、ベースバンド信号生成部11から同一レベルのベースバンド信号X〜Xを受けて、ベースバンド信号X〜Xのレベルを入力レベルPINとして測定する。このとき、入力レベル測定部221は、ベースバンド信号X〜Xのうちいずれかのレベル、例えばベースバンド信号Xのレベルを測定し、これを入力レベルPINとする。
【0026】
なお、測定期間Tは、以下に示す[a]〜[d]のいずれかにより決定される。
[a]フェージングシミュレータ20のサンプリング信号の周期に基づく値。
[b]フェージングシミュレータ20に設定されたフェージング条件に基づく値。
[c]通信の条件に基づく値。
[d]あらかじめ実験的に測定することで経験的に決定された値。
【0027】
[a]の場合には、フェージングシミュレータ20のサンプリング信号の周期の整数倍(例えば10000〜100000倍)の期間を測定期間とする。また、[b]の場合には、例えば、フェージング条件として設定されたドップラ周波数の逆数の整数倍(例えば10倍)の期間を測定期間とする。また、[c]の場合には、例えば、フレーム長やスロット長に相当する期間の整数倍(例えば10倍)を測定期間とする。また、[a]〜[d]のいずれかの期間のみを特定して測定期間としてもよいし、[a]〜[d]それぞれの期間を特定し、その中から最も長い期間を測定期間としてもよい。
【0028】
また、入力レベルPINは、X(t)X(t)をあらかじめ決められた測定期間Tだけ積算する関数としても表される。ここで、X(t)は、時間tにおけるベースバンド信号Xのレベルを示している。また、X(t)は、X(t)の共役複素数を示している。
【0029】
入力レベル測定部221は、測定された入力レベルPINを出力レベル調整制御部24に出力する。出力レベル調整制御部24については後述する。また、入力レベル測定部221は、入力レベルPINを表示制御部26に出力する。表示制御部26については後述する。
【0030】
相関特性検出部222は、ベースバンド信号X〜X間の相関特性を検出する。以下に、相関特性検出部222による相関特性の具体的な検出方法について説明する。相関特性検出部222は、ベースバンド信号Xとベースバンド信号Xとの間の相関特性Rijを、X(t)X(t)をあらかじめ決められた測定期間Tだけ積算することで算出する(X≦X,X≦X,X≠X)。なお、この測定期間Tは、入力レベルPINの測定期間Tと同様である。
【0031】
相関特性検出部222は、算出された相関特性Rijが、あらかじめ決められた値未満の場合(理想的には、Rij=0の場合)に、ベースバンド信号XとXとの間には相関が無いと判定する。また、相関特性検出部222は、相関特性Rijが、あらかじめ決められた値以上の場合に、ベースバンド信号XとXとの間には相関があると判定する。
【0032】
なお、相関特性検出部222は、ベースバンド信号Xと信号Xと間の相関特性として、相関特性Rij及びRjiのいずれかのみを算出して相関の有無を判定する。このとき、X(t)X(t)とX(t)X(t)とは複素共役の関係にある。
【0033】
このようにして、相関特性検出部222は、ベースバンド信号X〜Xの全ての組合せについて相関の有無を判定する。全ての組合せについて相関が無いと判定された場合、相関特性検出部222は、ベースバンド信号X〜X間に相関が無いことを出力レベル調整制御部24に通知する。また、少なくとも1つの組合せについて相関があると判定された場合、相関特性検出部222は、ベースバンド信号X〜X間に相関があることを出力レベル調整制御部24に通知する。また、相関特性検出部222は、ベースバンド信号X〜X間における相関の有無を表示制御部26に出力する。
【0034】
次に、フェージング信号生成部23Y〜23Yの構成について、フェージング信号生成部23Yを例に説明する。フェージング信号生成部23Yは、演算コア部231X〜231Xと、加算器234と、出力レベル調整部235と、出力レベル測定部236とを含んで構成される。なお、フェージング信号生成部23Y〜23Yについても、フェージング信号生成部23Yと同様の構成を有している。
【0035】
演算コア部231X〜231Xは、入力されるベースバンド信号X〜Xに対応付けられて設けられている。フェージング信号生成部23Yに入力されたベースバンド信号X〜Xは、それぞれ対応する演算コア部に入力される。言い換えると、ベースバンド信号Xは演算コア部231Xに入力され、ベースバンド信号Xは演算コア部231Xに入力される。
【0036】
演算コア部231X〜231Xの詳細な構成について、図3を参照しながら、演算コア部231Xを例に具体的に説明する。図3は、演算コア部231Xの構成を示したブロック図である。なお、演算コア部231X〜231Xについても演算コア部231Xと同様の構成を有している。
【0037】
演算コア部231Xは、複数のマルチパス演算コア部232X11〜232X1kと、加算器233Xとを含んで構成されている。
【0038】
マルチパス演算コア部は、フェージングを模擬するためのマルチパスを構成する経路ごとに設けられている。図3は、経路1〜経路kによるマルチパスを想定した構成を示しており、マルチパス演算コア部232X11は経路1に対応し、マルチパス演算コア部232X1kは経路kに対応している。以下、マルチパス演算コア部232X11〜232X1kの構成について、マルチパス演算コア部232X11を例に説明する。
【0039】
ベースバンド信号生成部11から演算コア部231Xに出力されたベースバンド信号Xは、マルチパス演算コア部232X11〜232X1kそれぞれに入力される。つまり、マルチパス演算コア部232X11には、ベースバンド信号Xが入力される。また、マルチパス演算コア部232X11は、経路1に対応したフェージング条件(例えば、遅延、減衰、雑音等の条件)を示す情報を設定制御部25から受ける。また、マルチパス演算コア部232X11は、フェージング信号Yに対応して設定されたレベルのゲインGO1を受ける。
【0040】
本実施形態に係るフェージング演算部21は、フェージング信号Yを例とすると、フェージング信号YのレベルがGO1INとなるようにマルチパス演算コア部232X11〜232X1k及び出力レベル調整部235を動作させる。なお、PINは、前述したベースバンド信号X〜Xの入力レベルPINを示している。また、この制御に係るマルチパス演算コア部232X11〜232X1k及び出力レベル調整部235の動作については後述する。
【0041】
マルチパス演算コア部232X11は、入力されたベースバンド信号X1に対して、経路1に対応したフェージング条件に基づきフェージング処理を施してデジタルのフェージング信号X11’を生成する。フェージング処理の一例としては、ベースバンド信号Xに対する遅延処理や減衰処理が含まれる。また、フェージングの条件に応じて、信号の散乱を模擬するために、ベースバンド信号Xにノイズを付加してもよい。マルチパス演算コア部232X11は、生成されたフェージング信号X11’を加算器233Xに出力する。同様に、マルチパス演算コア部232X12〜232X1kは、フェージング信号X12’〜X1k’を生成し、生成されたフェージング信号X12’〜X1k’を加算器233Xに出力する。
【0042】
加算器233Xは、マルチパス演算コア部232X11〜232X1kからフェージング信号X11’〜X1k’を受ける。加算器233Xは、フェージング信号X11’〜X1k’を加算してフェージング信号X’を生成する。加算器233Xは、生成されたフェージング信号X’を加算器234(図2参照)に出力する。
【0043】
上記のようにして、演算コア部231X〜231Xで生成されたフェージング信号X’〜X’が加算器234に出力される。加算器234は、フェージング信号X’〜X’を加算してフェージング信号Zを生成する。加算器234は、生成されたフェージング信号Zを出力レベル調整部235に出力する。なお、演算コア部231X〜231X、及び加算器234が「演算コア部群」に相当する。
【0044】
出力レベル調整部235は、出力レベル調整制御部24からゲインGを受ける。ゲインGは出力レベル調整制御部24により、フェージング信号(Y〜Y)ごとに算出される。出力レベル調整制御部24については後述する。なお以降では、フェージング信号Yに対応するゲインGを「ゲインGC1」と記載する場合がある。同様に、フェージング信号Yに対応するゲインGの場合は「ゲインGCn」と記載する場合がある。また、説明上フェージング信号(Y〜Y)との対応を特に明記する必要が無い場合には、単に「ゲインG」と記載する。
【0045】
また、出力レベル調整部235は、加算器234からフェージング信号Zを受ける。出力レベル調整部235は、ゲインGC1を基にフェージング信号Zのレベルを調整する(即ち、減衰させる)。なお、ゲインGC1を基にレベルが調整されたフェージング信号Zが、フェージング信号Yに相当する。
【0046】
また、出力レベル調整部235は、出力レベル調整制御部24から新たなゲインGC1を受ける。この場合には、出力レベル調整部235は、フェージング信号Zのレベルの調整に用いていたゲインGC1を、新たなゲインGC1に更新する。その後、出力レベル調整部235は、新たなゲインGに基づきフェージング信号Zのレベルを調整する。
【0047】
出力レベル調整部235は、フェージング信号Yを出力レベル測定部236及び送信部12(図1参照)に出力する。
【0048】
出力レベル測定部236は、出力レベル調整部235からフェージング信号Yを受けて、フェージング信号Yのレベルを出力レベルPOUTとして測定する。なお、出力レベルPOUTの測定期間は、入力レベルPINの測定期間Tと同様である。
【0049】
また、出力レベルPOUTは、Y(t)Y(t)をあらかじめ決められた測定期間Tだけ積算する関数としても表される。ここで、Y(t)は、時間tにおけるフェージング信号Yのレベルを示している。また、Y(t)は、Y(t)の共役複素数を示している。
【0050】
出力レベル測定部236は、測定された出力レベルPOUTを出力レベル調整制御部24に出力する。また、出力レベル測定部236は、出力レベルPOUTを表示制御部26に出力する。なお、出力レベルPOUTの測定及び出力は、フェージング信号生成部23Y〜23Yの各出力レベル測定部236が個々に行う。つまり、フェージング信号(Y〜Y)ごとに出力レベルPOUTが出力レベル調整制御部24及び表示制御部26に出力される。以降では、フェージング信号Yに対応する出力レベルPOUTを「出力レベルPOUT1」と記載する場合がある。同様に、フェージング信号Yに対応する出力レベルPOUTの場合は「出力レベルPOUTn」と記載する場合がある。また、説明上フェージング信号Y〜Yとの対応を特に明記する必要が無い場合には、単に「出力レベルPOUT」と記載する。
【0051】
出力レベル調整制御部24は、フェージングシミュレータ20が起動すると、まずフェージング信号のレベルの調整方法を「固定ゲイン調整」及び「自動ゲイン調整」のいずれかに特定する。その後、出力レベル調整制御部24は、特定されたレベルの調整方法に基づきゲインGC1〜GCnを調整することで、フェージング信号Y〜Yのレベルを調整する。以降では、出力レベル調整制御部24の動作を「レベルの調整方法の特定」と「フェージング信号のレベル調整」とに分けて説明する。
【0052】
(レベルの調整方法の特定)
まず、「レベルの調整方法の特定」に係る出力レベル調整制御部24の動作について図4を参照しながら説明する。図4は、レベルの調整方法の特定に係る処理のフローチャートである。
【0053】
(ステップS11)
出力レベル調整制御部24は、設定制御部25からフェージング処理の条件を受ける。このフェージング処理の条件には、操作者により指定されたパラメタとして、レベルの調整方法、伝搬路間の相関の有無、マルチパスの有無、及びゲインGO1〜GOnが含まれている。この伝搬路間の相関の有無は、設定制御部25が設定されたフェージング処理の条件から判断している。
【0054】
(ステップS12)
まず、出力レベル調整制御部24は、操作者により指定されたレベルの調整方法を確認する。指定されたレベルの調整方法が「自動ゲイン調整」ではない場合には(ステップS12、N)、出力レベル調整制御部24は、レベルの調整方法として「固定ゲイン調整」を設定して(ステップS19)、レベルの調整方法の特定に係る処理を終了する。
【0055】
(ステップS13)
指定されたレベルの調整方法が「自動ゲイン調整」の場合には(ステップS12、Y)、出力レベル調整制御部24は、伝搬路間の相関の有無の有無を確認する。伝搬路間に相関が無い場合には(ステップS13、N)、出力レベル調整制御部24は、レベルの調整方法として「固定ゲイン調整」を設定して(ステップS19)、レベルの調整方法の特定に係る処理を終了する。
【0056】
(ステップS14)
伝搬路間に相関がある場合には(ステップS13、Y)、出力レベル調整制御部24は、マルチパスの有無を確認する。マルチパスが設定されていた場合(ステップS14、Y)、つまり、伝搬路ごとに複数の経路が存在する場合には、出力レベル調整制御部24は、レベルの調整方法として「自動ゲイン調整」を設定して(ステップS18)レベルの調整方法の特定に係る処理を終了する。
【0057】
(ステップS15)
マルチパスが設定されていない場合には(ステップS14、N)、出力レベル調整制御部24は、ベースバンド信号X〜X間の相関特性を確認する。そのため、まず出力レベル調整制御部24は、所定のゲインを、ゲインGC1〜GCnとしてフェージング信号生成部23Y〜23Yの各出力レベル調整部235に出力する。この所定のゲインは、相関特性検出部222がベースバンド信号X〜Xの相関特性を検出可能な範囲で設定されればよく、実験等によりあらかじめ測定して決定しておく。
【0058】
出力レベル調整制御部24によりゲインGC1〜GCnが設定されると、フェージングシミュレータ20は、ベースバンド信号生成部11からのベースバンド信号X〜Xの受信を開始する。これにより、ベースバンド信号生成部11から出力されたベースバンド信号X〜Xが、入力レベル測定部221と、相関特性検出部222と、フェージング信号生成部23Y〜23Yとに入力される。
【0059】
(ステップS16)
ベースバンド信号X〜Xの受信が開始されると、出力レベル調整制御部24は、相関特性検出部222からベースバンド信号X〜X間における相関の有無が通知される。
【0060】
(ステップS17)
ベースバンド信号X〜X間に相関がある場合には(ステップS17、Y)、出力レベル調整制御部24は、レベルの調整方法として「自動ゲイン調整」を設定する(ステップS18)。ベースバンド信号X〜X間に相関が無い場合には(ステップS17、N)、出力レベル調整制御部24は、レベルの調整方法として「固定ゲイン調整」を設定する(ステップS18)。レベルの調整方法の設定が完了すると、出力レベル調整制御部24は、レベルの調整方法の特定に係る処理を終了する。
【0061】
(フェージング信号のレベル調整)
次に、「フェージング信号のレベル調整」に係る出力レベル調整制御部24の動作について図5を参照しながら説明する。図5は、フェージング信号のレベル調整に係る処理のフローチャートである。
【0062】
(ステップS21)
まず、出力レベル調整制御部24は、ゲインGC1〜GCnの初期値をフェージング信号生成部23Y〜23Yの各出力レベル調整部235に出力する。ゲインGC1〜GCnの初期値は、上述の所定のゲインを用いるほか、「固定ゲイン調整」の設定ゲインを用いたり、フェージング条件に基づいて算出してもよい。
【0063】
(ステップS22)
ゲインGC1〜GCnの初期値が設定されると、出力レベル調整制御部24は、フェージング信号生成部23Y〜23Yにフェージング信号Y〜Yの生成を開始させる。
【0064】
(ステップS23)
次に、出力レベル調整制御部24は、特定されたレベルの調整方法が「自動ゲイン調整」か否かを確認する。「自動ゲイン調整」ではない場合には(ステップS23、N)、出力レベル調整制御部24は、フェージング信号のレベル調整に係る処理を終了する。これにより、フェージング信号Z〜Zは、出力レベル調整部235によりゲインGC1〜GCnの初期値に基づきレベルが調整され、フェージング信号Y〜Yとして出力される(即ち、「固定ゲイン調整」に基づきレベルが調整される)。なお、「固定ゲイン調整」に基づき動作する場合のゲインGC1〜GCnとして、初期値とは異なるゲインを設定する場合には、出力レベル調整制御部24は、処理を終了する前にゲインGC1〜GCnを設定し直せばよい。
【0065】
(ステップS24)
「自動ゲイン調整」が設定されている場合には(ステップS23、Y)、出力レベル調整制御部24は、入力レベル測定部221から入力レベルPINを受ける。
【0066】
(ステップS25)
また、出力レベル調整制御部24は、フェージング信号生成部23Y〜23Yの各出力レベル測定部236から出力レベルPOUT(即ち、POUT1〜POUTn)を受ける。
【0067】
(ステップS26)
出力レベル調整制御部24は、入力レベルPINと、出力レベルPOUT1と、ゲインGO1とに基づき、ベースバンド信号Xに対するフェージング信号Yのレベル比Kを算出する。レベル比Kは、次式により与えられる。
=POUT1/(GO1IN
【0068】
フェージング信号Y〜Yについても同様である。つまり、出力レベル調整制御部24は、入力レベルPINと、出力レベルPOUT2〜POUTnと、ゲインGO2〜GOnとに基づきレベル比K〜Kを算出する。以下、フェージング信号Yの場合を例に説明する。
【0069】
(ステップS27、S28)
出力レベル調整制御部24は、算出されたレベル比Kが1か否かを判定する。ここで、GO1INは、操作者が所望するフェージング信号Yの出力レベルを示している。これに対し、POUT1は、フェージング信号Yの実際の出力レベルを示している。そのため、出力レベル調整制御部24は、K≠1の場合には(ステップS27、N)、Kが1に近づくようにGC1を調整する(ステップS28)。
【0070】
具体的には、出力レベル調整制御部24は、Kが1未満の場合には、GO1INに対してPOUT1が小さいため、POUT1が増大するようにGC1を増大させる。また、出力レベル調整制御部24は、Kが1より大きい場合には、GO1INに対してPOUT1が大きいため、POUT1が減少するようにGC1を減少させる。このように、出力レベル調整制御部24は、K=1となるように、出力レベルPOUT1を追い込んでいく。K=1となった場合には(ステップS27、Y)、出力レベル調整制御部24は、フェージング信号のレベル調整に係る処理を終了する。なお、出力レベルPOUT1を追い込むための時間は、フェージング信号Yが発振しない時間に設定する。この時間は、実験等によりあらかじめ算出し、出力レベル調整制御部24に設定しておく。
【0071】
フェージング信号Y〜Yについても同様である。つまり、出力レベル調整制御部24は、レベル比K〜Kに基づきフェージング信号Y〜Yの出力レベルPOUT2〜POUTnが所望のレベル(即ち、GO2IN〜GOnIN)となるように追い込む。
【0072】
次に図1を参照する。送信部12は、フェージング信号Y〜Yをフェージング演算部21から受ける。送信部12は、フェージング信号Y〜Yをアナログ信号に変換する。送信部12は、このアナログ信号をあらかじめ決められた通信方式に基づいて周波数変換する。送信部12は、周波数変換されたアナログ信号(即ち、搬送波)を被試験端末2に送信する。
【0073】
表示制御部26は、フェージング演算部21に設定された「フェージング条件」や、フェージング信号の調整に係るパラメタを表示部28に表示させる。フェージング信号の調整に係るパラメタとは、「入力レベルPIN」、「出力レベルPOUT1〜POUTn」、及び「ベースバンド信号X〜X間における相関の有無」を示している。ここで、「入力レベルPIN」及び「出力レベルPOUT1〜POUTn」は、相対的な値であり絶対的な単位では特定できない。そのため、前述のレベル比Kを用いて、単位「dB」で表示してもよい。あるいは、dBFS(デシベル.フルスケール:dB Full Scale)により単位「dB」で表示してもよい。
【0074】
表示制御部26は、「フェージング条件」を設定制御部25から受ける。また、表示制御部26は、「入力レベルPIN」を入力レベル測定部221から受ける。また、表示制御部26は、「出力レベルPOUT1〜POUTn」をフェージング信号生成部23Y〜23Yの各出力レベル測定部236から受ける。また、表示制御部26は、「ベースバンド信号X〜X間における相関の有無」に関する通知を相関特性検出部222から受ける。
【0075】
なお、出力レベル調整制御部24は、レベル比KをK=POUT1/PINに基づき算出してもよい。この場合には、出力レベル調整制御部24は、K=GO1か否かを判定し、K≠GO1の場合には、KがGO1に近づくようにGC1を調整する。
【0076】
また、出力レベル測定部236は、フェージング信号Y〜Yのレベルを出力レベルPOUTとして測定していたが、フェージング信号Z〜Zのレベルを出力レベルPOUTとして測定してもよい。この場合には、レベル比Kは次式により算出される。
=(GC1OUT1)/(GO1IN
【0077】
レベル比K〜Kについても同様に、入力レベルPINと、出力レベルPOUT2〜POUTnと、ゲインGO2〜GOnとに基づき算出することが可能である。
【0078】
また、ベースバンド信号X〜Xそれぞれのレベルが異なる場合については、フェージング演算部21を、ベースバンド信号X〜Xのレベルの組合せの数だけ設ければよい。
【0079】
また、出力レベル調整制御部24は、あらかじめ決められた時間内にK=1とならなかった場合に、このことを、表示制御部26を介して表示部28に表示させてもよい。これにより、操作者は、出力レベル調整部235及び出力レベル測定部236を含んで構成される負帰還回路の発振等により、出力レベルPOUT2〜POUTnが所定の値に収束しない場合に、これを検知することが可能となる。
【0080】
以上、本実施形態に係るフェージングシミュレータ20は、ベースバンド信号X〜X間に相関関係がある場合に、ベースバンド信号のレベルPINとフェージング信号Y〜YのレベルPOUTとに基づきレベル比K〜Kを算出する。フェージングシミュレータ20は、このレベル比K〜Kが1となるようにゲインGを更新し、フェージング信号のレベルPOUTを調整する。これにより、フェージングシミュレータ20は、ベースバンド信号X〜X間に相関関係がある場合に、フェージング信号Y〜YのレベルPOUTを、操作者が所望するレベルGO1IN〜GOnINとなるように調整することが可能となる。あるいは、各伝搬路間に相関がある場合、つまり、フェージング条件によって一意にゲインを特定できない場合に、フェージング信号Y〜YのレベルPOUTを同様に調整することが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1 移動体通信端末試験システム
10 基地局模擬装置
11 ベースバンド信号生成部
12 送信部
20 フェージングシミュレータ
21 フェージング演算部
221 入力レベル測定部
222 相関特性検出部
231X〜231X 演算コア部
232X11〜232X1k マルチパス演算コア部
233X 加算器
234 加算器
235 出力レベル調整部
236 出力レベル測定部
23Y〜23Y フェージング信号生成部
24 出力レベル調整制御部
25 設定制御部
26 表示制御部
27 操作部
28 表示部
2 被試験端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のレベルPINで入力される移動体通信端末の試験用の複数(m)のベースバンド信号を受けて、前記ベースバンド信号にフェージング処理を施す演算コア部(231X〜231X)を複数含み、前記複数の演算コア部の出力を合成して移動体通信の伝搬路ごとにデジタルのフェージング信号として出力する演算コア部群と、
あらかじめ決められたゲインGに基づき前記フェージング信号のレベルを変更する出力レベル調整部(235)と、
を備えたフェージングシミュレータであって、
前記ベースバンド信号間に前記相関特性がある場合、または前記伝搬路間に相関特性がある場合に、レベルが変更された前記フェージング信号のレベルを第2のレベルPOUTとして測定する出力レベル測定部(236)と、
前記ベースバンド信号間に前記相関特性がある場合、または前記伝搬路間に相関特性がある場合に、前記第1のレベルPINと前記第2のレベルPOUTとのレベル比Kを算出し、該レベル比Kが所定の値となるように、前記ゲインGを更新する出力レベル調整制御部(24)と、
を備えたことを特徴とするフェージングシミュレータ。
【請求項2】
前記複数のベースバンド信号間の相関特性の有無を検出する相関特性検出部(222)を備えたことを特徴とする請求項1に記載のフェージングシミュレータ。
【請求項3】
前記ベースバンド信号のレベルを測定し、前記第1のレベルPINを求める入力レベル測定部(221)を備え、
前記出力レベル調整制御部は、前記入力レベル測定部の測定結果(PIN)に基づき前記レベル比Kを算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフェージングシミュレータ。
【請求項4】
前記複数(m)のベースバンド信号に対して、前記演算コア部群、前記レベル調整部、及び前記出力レベル測定部の組を複数(n)備え、複数の異なる前記フェージング信号を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のフェージングシミュレータ。
【請求項5】
表示部(28)と、
前記表示部に前記レベル比Kを表示させる表示制御部(26)と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のフェージングシミュレータ。
【請求項6】
あらかじめ決められた期間中に、前記レベル比Kが前記所定の値とならなかった場合に、その旨を通知することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のフェージングシミュレータ。
【請求項7】
出力レベルとして第1のレベルPINを有する試験用の複数(m)のデジタルのベースバンド信号を生成するベースバンド信号生成部(11)と、
前記複数のベースバンド信号を受けて、MIMOを構成する伝搬路に応じて複数(n)のフェージング信号を出力するフェージングシミュレータ(20)と、
前記フェージングシミュレータから出力された前記各フェージング信号をアナログ信号に変換し、所定の通信方式に従い周波数変換して試験対象である移動体通信端末に出力する送信部(12)と、
を備えた移動体通信端末試験システムにおいて、
前記フェージングシミュレータは、
前記複数のベースバンド信号を受けて、前記ベースバンド信号にフェージング処理を施す演算コア部(231X〜231X)を複数含み、前記複数の演算コア部の出力を合成して前記伝搬路ごとにデジタルのフェージング信号として出力する演算コア部群と、
あらかじめ決められたゲインGに基づき前記フェージング信号のレベルを変更する出力レベル調整部(235)と、
前記ベースバンド信号間に前記相関特性がある場合、または前記伝搬路間に相関特性がある場合に、レベルが変更された前記フェージング信号のレベルを第2のレベルPOUTとして測定する出力レベル測定部(236)と、
前記ベースバンド信号間に前記相関特性がある場合、または前記伝搬路間に相関特性がある場合に、前記第1のレベルPINと前記第2のレベルPOUTとの比をレベル比Kとして算出し、該レベル比Kが所定の値となるように、前記ゲインGを更新する出力レベル調整制御部(24)と、
を備えたことを特徴とする移動体通信端末試験システム。
【請求項8】
前記フェージングシミュレータは、前記複数(m)のベースバンド信号に対して、前記演算コア部群、前記レベル調整部、及び前記出力レベル測定部の組を複数(n)備え、複数の異なる前記フェージング信号を出力することを特徴とする請求項6に記載の移動体通信端末試験システム。
【請求項9】
第1のレベルPINで入力される移動体通信端末の試験用の複数のベースバンド信号を受けて、移動体通信の伝搬路ごとにフェージング信号を出力するフェージングシミュレータ(20)を用いたフェージング処理方法であって、
前記複数のベースバンド信号間の相関特性の有無と、前記伝搬路間の相関特性の有無とのいずれか一方または双方を検出する相関特性検出ステップと、
前記複数のベースバンド信号にフェージング処理を施し、その出力を合成してフェージング信号として出力するフェージング処理ステップと、
あらかじめ決められたゲインGに基づき前記フェージング信号のレベルを変更するレベル調整ステップと、
前記ベースバンド信号間に前記相関特性がある場合、または前記伝搬路間に相関特性がある場合に、レベルが変更された該フェージング信号のレベルを第2のレベルPOUTとして測定する第2の測定ステップと、
前前記ベースバンド信号間に前記相関特性がある場合、または前記伝搬路間に相関特性がある場合に、前記第1のレベルPINと前記第2のレベルPOUTとのレベル比Kを算出し、該レベル比Kが所定の値となるように、前記ゲインGを更新するゲイン調整ステップと、
を備えたことを特徴とするフェージング処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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