説明

フォースプレート及び重心動揺システム

【課題】被験者は踏み板の上面に設けられた足踏み動作基準凸状部を基準として足踏み動作を行って、これにより、フォースプレート上から外れることなく、足踏み検査を適正に行う。
【解決手段】足踏み検査にて被験者Sの重心移動を測定するためのフォースプレート1であって、被験者により踏まれる天板11と、天板の所定位置に作用する荷重を検出する三分力ロードセルとを備え、天板の上面には、被験者の足踏み動作の基準となる足踏み動作基準マーカ12が着脱自在に当該上面から突出するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めまい等の診断の際に行われる足踏み検査にて被験者の重心移動を測定するためのフォースプレート及び重心動揺システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、耳鼻科等にてめまい等の診断の際には、内耳の反射や身体の平衡感覚を調べる平衡機能検査が行われている。
平衡機能検査として、開眼又は閉眼状態にて所定歩数(例えば、50歩、100歩等)又は所定時間(例えば、30秒間、1分間等)足踏み動作を行う足踏み検査が知られている。
【0003】
足踏み検査は、従来、足踏み動作前後の位置のずれに基づいて身体の傾きや片寄りの程度等を測定するものであったが、近年では、フォースプレートによって垂直反力及び足底圧中心(COP)を測定する重心動揺システムが用いられている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。具体的には、足踏み動作における重心位置の時間変化を測定し、移動範囲の大きさや左右足にかかる荷重の割合等を算出するようになっている。
【特許文献1】特開昭60−261433号公報
【特許文献2】特開平4−28353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被験者によっては、足踏み動作ごとに足底接地位置がずれてしまう場合があり、特に、平衡感覚の優れていない被験者にあっては、フォースプレートの上面(足踏み面)から落ちてしまうといった問題がある。この場合、フォースプレートの足踏み面上にて足踏み動作を所定歩数又は所定時間継続することが困難となり、特に、閉眼状態における足踏み検査にて顕著となっている。
また、フォースプレートの足踏み面から踏み外した場合には、被験者が転倒してしまう虞もあり、足踏み検査を適正に行うことができないといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、フォースプレート上から外れることなく、足踏み検査を適正に行うことができるフォースプレート及び重心動揺システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
足踏み検査にて被験者(例えば、図1の被験者S等)の重心移動を測定するためのフォースプレート(例えば、図1のフォースプレート1等)であって、
前記被験者により踏まれる踏み板(例えば、図1の天板11等)と、前記踏み板の所定位置に作用する荷重を検出する荷重検出手段とを備え、
前記踏み板の上面には、前記被験者の足踏み動作の基準となる足踏み動作基準凸状部(例えば、図1の足踏み動作基準マーカ12等)が設けられていることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフォースプレートにおいて、
前記足踏み動作基準凸状部は、前記踏み板の上面に着脱自在に設けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の発明は、
足踏み検査にて被験者(例えば、図1の被験者S等)により踏まれる踏み板(例えば、図1の天板11等)と、前記踏み板の所定位置に作用する荷重を検出して荷重データを出力する荷重検出手段とを備えるフォースプレート(例えば、図1のフォースプレート1等)と、
前記荷重検出手段から出力された前記荷重データに基づいて、前記被験者の足踏み動作の際の重心移動を測定する重心測定装置(例えば、図1のデータ処理装置2等)とを備える重心動揺システム(例えば、図1の重心動揺システム100等)であって、
前記踏み板の上面には、前記被験者の前記足踏み動作の基準となる足踏み動作基準凸状部(例えば、図1の足踏み動作基準マーカ12等)が設けられていることを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の重心動揺システムにおいて、
前記重心測定装置は、
複数回の前記足踏み動作の各々の前記足踏み動作にかかる足踏み時間に基づいて、前記複数回の前記足踏み動作における時間関連パラメータを算出する時間パラメータ算出手段(例えば、図3のCPU26等)を備えることを特徴としている。
【0010】
ここで、時間関連パラメータとは、例えば、複数回の足踏み動作における時間軸上での再現度合に関連するパラメータのことであり、例えば、複数回の足踏み動作の各々に係る足踏み時間の平均値やバラツキ、複数回の足踏み動作の各々に係る足底接地時間における足底荷重値の平均値やバラツキ等が挙げられる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の重心動揺システムにおいて、
前記重心測定装置は、
複数回の前記足踏み動作の各々の前記足踏み動作における前記踏み板上の足踏み位置に基づいて、前記複数回の前記足踏み動作における足踏み位置関連パラメータを算出する位置パラメータ算出手段(例えば、図3のCPU26等)を備えることを特徴としている。
【0012】
ここで、足踏み位置関連パラメータとは、複数回の足踏み動作における足踏み位置の再現度合に関連するパラメータのことであり、例えば、複数回の足踏み動作の各々における足底接地位置の平均値やバラツキ、複数回の足踏み動作の各々における足底圧中心の移動の平均値やバラツキ等が挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被験者は踏み板の上面に設けられた足踏み動作基準凸状部を基準として足踏み動作を行うことができ、これにより、被験者が閉眼状態であっても、フォースプレート上から外れることなく足踏み検査を適正に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明について、図面を用いて具体的な態様を説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
図1は、本発明を適用した好適な一実施形態として例示する重心動揺システム100を模式的に示した図である。
なお、以下の説明にあっては、被験者Sの進行方向をX軸方向とし、このX軸方向に直交する一方向(左右方向)をY軸方向とし、X軸方向及びY軸方向の双方に直交する方向(上下方向)をZ軸方向とする。
【0015】
本実施形態の重心動揺システム100は、例えば、耳鼻科等にて足踏み検査を行う際に用いられ、当該足踏み検査の際の被験者Sの重心移動を測定するシステムである。
具体的には、例えば、図1に示すように、重心動揺システム100は、被験者Sの左右の各足の床反力を各々測定する2つのフォースプレート1、1と、フォースプレート1から出力されたデータを処理するデータ処理装置(重心測定装置)2と、各種データを印刷するプリンタ3等を備えている。
【0016】
先ず、フォースプレート1について図2(a)及び図2(b)を参照して説明する。
図2(a)は、フォースプレート1を模式的に示した平面図であり、図2(b)は、図2(a)のII- II線におけるフォースプレート1の断面図である。
【0017】
フォースプレート1の各々は、例えば、図2(a)に示すように、平面視にて略三角形状に形成されてなり、2つのフォースプレート1、1は、互いの一側面どうしを対向させるようにして配置されている。これら2つのフォースプレート1は、被験者Sの各足に対応して設けられ、例えば、図1における手前側のものは被験者Sの右足、また、図1における奥側のものは被験者Sの左足による足踏みに対応している。
【0018】
また、各フォースプレート1は、例えば、被験者Sが乗って足踏みされる天板(踏み板)11と、この天板11の3つの隅部分にそれぞれ配置されて下側から支持する三分力ロードセル(図示略)等を備えて構成されている。
【0019】
天板11の上面には、例えば、被験者Sの足踏み動作の基準となる足踏み動作基準マーカ(足踏み動作基準凸状部)12が当該上面から突出するようにして設けられている。即ち、足踏み動作基準マーカ12は、例えば、足裏にて感知可能な程度の大きさ(径、高さ)及び硬度を有し、具体的には、図2(a)及び図2(b)に示すように、直径約15mm、高さ約2mm程度の平面視にて略円形状をなす樹脂製の部材である。
これにより、被験者Sが足踏み動作を行った際に、足裏にて足踏み動作基準マーカ12を踏むことで当該足踏み動作基準マーカ12を知覚することができるようになっている。
【0020】
また、足踏み動作基準マーカ12は、例えば、天板11の上面に両面テープ等により着脱自在に貼着されている。
これにより、天板11の上面にて足踏み動作基準マーカ12の位置を被験者Sの足幅等に合わせて適正に調整することができる。
なお、足踏み動作基準マーカ12は、例えば、被験者Sに応じて足裏の略中央、具体的には、土踏まずの略中央又は第二中足骨先端(人差し指先端から2番目の関節)に位置するように上面に配置されるのが好ましい。
【0021】
なお、足踏み動作基準マーカ12を着脱自在とする手段としては、両面テープに限られるものではない。例えば、足踏み動作基準マーカ12の裏面に所定の突出長の凸部を設けるとともに天板11の上面に凸部が嵌合する凹部を複数設けることによって、当該凸部を所定位置の凹部に嵌合させるようにして位置調節自在とする構成としても良い。
【0022】
三分力ロードセル(荷重検出手段)は、例えば、図示は省略するが、フォースプレート1に作用する反力の天板11上面の面方向に沿ってほぼ直交する二軸(以下、X軸及びY軸とする)の各方向の分力を検出するX軸方向分力検出器とY軸方向分力検出器と、天板11上面に対して略垂直な軸(以下、Z軸とする)方向の分力を検出するZ軸方向分力検出器とを備えている。
【0023】
また、フォースプレート1は、例えば、アンプ1Aを介してデータ処理装置2と接続され、被験者Sの足踏み動作に基づいて三分力ロードセルにより検出された荷重データに係る所定の信号をアンプ2Aにより増幅してデータ処理装置2に出力するようになっている。
【0024】
次に、データ処理装置2について図3を参照して説明する。
図3は、データ処理装置2の要部構成を示すブロック図である。
データ処理装置23は、例えば、パーソナル・コンピュータ等から構成され、具体的には、図3に示すように、操作入力部21と、外部データ入力部22と、表示部23と、ROM24と、RAM25と、CPU26等を備えている。
【0025】
操作入力部21は、例えば、数値、文字等を入力するためのデータ入力キーや、データの選択、送り操作等を行うための上下左右移動キーや各種機能キー等によって構成されるキーボードを備え、ユーザにより押下されたキーの押下信号をCPU26に出力するようになっている。
【0026】
外部データ入力部22は、例えば、フォースプレート1等の外部装置から出力されるデータが入力されるインタフェースボード(図示略)等を備えている。そして、外部データ入力部22に入力されたデータは、CPU26に対して出力されるようになっている。
なお、外部装置がデータをアナログ信号で出力するものの場合、インタフェースボードにアナログ・デジタル変換部を設けることによりデータをデジタル信号に変換するようにしても良い。
【0027】
表示部23は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)等のディスプレイから構成され、CPU26の制御下にて、入力された各種データを表示するようになっている。具体的には、表示部23は、例えば、足底荷重値測定処理の結果G1(図4参照)、足踏み荷重値バラツキ算出処理の結果G2(図5参照)、位置パラメータ算出処理の結果G3(図6参照)、足踏み位置バラツキ算出処理の結果G4(図7参照)、足底圧中心バラツキ算出処理の結果G5(図8参照)、足底荷重値の標準偏差の加齢変化G6(図9参照)、足底接地位置の標準偏差の加齢変化G7(図10参照)等を表示するようになっている。
【0028】
CPU(Central Processing Unit)26は、例えば、ROM24に記憶されているデータ処理装置23としての機能に関る各種プログラムを読み出してRAM25の作業領域に展開し、当該プログラムに従って各種処理を実行するものである。
具体的には、CPU26は、タイミングフォースプレート1から出力され外部データ入力部22を介して入力された左右両足による足踏みに係る荷重データに基づいて被験者Sの足踏み動作の際の重心移動、より具体的には、例えば、歩行時の体重配分、駆動力や制動力、体重の移行性、捻転力、歩幅や歩行速度、歩行の安定性等を測定するようになっている。
【0029】
RAM(Random Access Memory)25は、例えば、書き換え可能なメモリであり、ROM24から読み出されたプログラムや入力データ等の格納領域や作業領域等を構成している。
【0030】
ROM(Read Only Memory)24は、例えば、読み出し専用のメモリであり、CPU26の制御下にて実行される各種のプログラム並びに各プログラムの処理に係るデータ及びテーブル等を記憶している。具体的には、ROM24は、時間パラメータ算出プログラム24a、位置パラメータ算出プログラム24b等を記憶している。
【0031】
時間パラメータ算出プログラム24aは、CPU26を時間パラメータ算出手段として機能させるプログラムである。即ち、時間パラメータ算出プログラム24aは、例えば、足踏み検査の際の被験者Sによる複数回の足踏み動作の各々の足踏み動作にかかる足踏み時間(後述)に基づいて、複数回の足踏み動作における時間軸上での再現度合(リズム感)に関連する時間関連パラメータを算出する時間パラメータ算出処理に係る機能をCPU26に実現させるためのプログラムである。
この時間パラメータ算出処理としては、例えば、左右両足の複数回の足踏み動作によって測定された足底荷重値に基づいて、複数回の足踏み動作の各々に係る足踏み時間T1〜Tn(図4参照;詳細後述)のバラツキを算出する足踏み時間バラツキ算出処理や、複数回の足踏み動作の各々における足底荷重値のバラツキを算出する足底荷重値バラツキ算出処理(図5参照)等が挙げられる。
【0032】
ここで、先ず、足底荷重値測定処理について図4を参照して説明する。
足底荷重値測定処理は、例えば、フォースプレート1上における左右両足の複数回の足踏み動作によって、各足に対応するフォースプレート1に作用した荷重データに基づいて、左右両足の足底荷重値を経時的に測定する処理である。
これにより、例えば、図4に示すように、表示部23には、縦軸を足底荷重値(N)とし、横軸を時間(秒)とする処理結果が表示されることとなる。
なお、図4にあっては、例えば、右足の足底荷重値を実線で示し、左足の足底荷重値を破線で示している。
【0033】
足踏み時間バラツキ算出処理は、例えば、左右各々の足毎に、各足踏み動作(ステップ)の際に足裏の一部が接地してから足裏が完全に離地した後、再度接地するまでの時間を足踏み時間として、複数の足踏み時間の平均時間(平均周期)及び標準偏差(SD)を算出する処理である。
即ち、足踏み時間バラツキ算出処理にあっては、例えば、足底荷重値測定処理にて測定された左右両足の足底荷重値の変化に基づいて、CPU26が、各足毎に足踏み時間(例えば、図4にあっては右足の足踏み時間T1〜Tn)を取得して、これら足踏み時間に基づいて所定の演算を行うことで、足踏み時間の平均時間及び標準偏差(SD)を算出するようになっている。
【0034】
足底荷重値バラツキ算出処理は、例えば、左右各々の足毎に、足踏み動作(ステップ)における接地してから離地するまでの足底接地状態(足底接地時間)にて経時的に移り変わる足底荷重値を算出して、複数回の足踏み動作における足底荷重値の平均値及び標準偏差を所定時刻毎に算出する処理である。
即ち、足底荷重値バラツキ算出処理にあっては、例えば、先ず、足底荷重値測定処理にて測定された左右両足の足底荷重値の変化に基づいて、CPU26が、各足毎に複数回の足踏み動作(ステップ)における足底荷重値を取得して、各足踏み動作における足底接地時間を所定値(例えば、100等)で等分して、等分された時刻毎に足底荷重値を算出する正規化処理を行う。続けて、CPU26が、等分された時刻ごとに各ステップの足底荷重値に基づいて平均値及び標準偏差を算出する。
これにより、例えば、図5に示すように、表示部23には、縦軸をFz体重比(%)とし、横軸を正規化歩行周期(%)として処理結果が表示されることとなる。
なお、図5にあっては、例えば、右足の足底荷重値の平均値を実線で示し、平均値±1標準偏差を破線で示し、さらに、制動期及び駆動期におけるFz体重比の最大値を「▲」で示し、その最小値を「▼」で示し、これらの出現時の歩行周期比を()内の数字で表している。
【0035】
また、足底荷重値バラツキ算出処理にあっては、CPU26が、等分された時刻毎の標準偏差値の平均値を算出する処理を行うようになっている。即ち、具体的には、図5における破線で囲まれた領域の面積を等分した値で除算することにより、標準偏差値の平均値を算出するようになっている。
【0036】
上記のように、時間パラメータ算出処理によって、足踏み動作の際の左右各足の足踏み時間や足底荷重値の平均値やバラツキを算出して表示部23に表示することができ、足踏み検査にて足踏み動作を複数回行う際に、被験者Sの神経伝達系の安定性等に起因するリズム感(リズムの再現性)を、当該足踏み検査(平衡機能検査)のバランス感覚の新たなパラメータとして規定することができる。
【0037】
位置パラメータ算出プログラム24bは、CPU26を位置パラメータ算出手段として機能させるプログラムである。即ち、位置パラメータ算出手段は、例えば、足踏み検査の際の被験者Sによる複数回の足踏み動作の各々の足踏み動作における天板11上の足底接地位置(足踏み位置)に基づいて、複数回の足踏み動作における足踏み位置の再現度合(位置の認識力)に関連する足踏み位置関連パラメータを算出する位置パラメータ算出処理に係る機能をCPU26に実現させるためのプログラムである。
この位置パラメータ算出処理としては、例えば、左右両足の複数回の足踏み動作によって測定された足底接地位置に基づいて、複数回の足踏み動作の各々における足底接地位置(天板11上における絶対座標)のバラツキを算出する足踏み位置バラツキ算出処理(図6及び図7参照)や、複数回の足踏み動作の各々における足底圧中心(COP)の移動のバラツキを算出する足底圧中心バラツキ算出処理(図8参照)等が挙げられる。
【0038】
足踏み位置バラツキ算出処理は、例えば、フォースプレート1の天板11上の所定位置を原点として、左右各々の足毎に、各足踏み動作(ステップ)の際に足裏が接地した位置(足底接地位置)の絶対座標を算出して、複数の足踏み動作における足底接地位置の中心位置(平均値)及び前後左右方向のバラツキ(標準偏差)を算出する処理である。
即ち、足踏み位置バラツキ算出処理にあっては、例えば、CPU26は、フォースプレート1から出力され入力された荷重データに基づいて左右両足の複数回の足踏み動作における天板11上の足底接地位置(「◆」;図6参照)を測定(算出)して、各足毎に足底接地位置(例えば、左足の足底接地位置)を取得し、これらの足底接地位置に基づいて所定の演算を行うことで、足底接地位置の中心位置及び前後左右方向のバラツキ(例えば、平均値±1標準偏差及び±2標準偏差等)を算出するようになっている。また、CPU26は、各足毎に各足踏み動作毎の足底圧中心の移動軌跡Lを算出して、これら足底圧中心の移動軌跡Lの平均値を算出するようになっている。
これにより、例えば、図7に示すように、表示部23には、縦軸をCOP−Y(cm)とし、横軸をCOP−X(cm)とする座標系にて、足底接地位置の平均値(座標)が「●」で表され、平均値±1標準偏差の領域が一点鎖線で表され、平均値±2標準偏差の領域が二点鎖線で表されることとなる。さらに、足底圧中心の移動軌跡Lの平均値が太い実線で、複数の足底圧中心の移動軌跡Lが破線で重ねて表され、当該移動軌跡Lが存する領域の面積が表されることとなる。
なお、図6にあっては、例えば、左右各足の足底接地位置を「◆」で表し、各足の足底圧中心の移動軌跡を実線で示し、全身の重心の移動軌跡を破線で示している。
【0039】
足底圧中心バラツキ算出処理は、例えば、足踏み位置バラツキ算出処理にて算出された足底圧中心の移動軌跡L及びその平均値に基づいて、各移動軌跡Lの始点(足底接地位置)を原点とする座標系に変換して、足底圧中心の移動のバラツキを算出する処理である。
ここで、足底圧中心の移動のバラツキは、例えば、移動軌跡Lの存する領域の面積として表すことができ、当該領域の前後左右方向の幅を積算することにより算出される(図8参照)。
なお、図8にあっては、例えば、足底接地位置を「●」で表し、足底圧中心の移動軌跡Lの平均値を太い実線で、複数の足底圧中心の移動軌跡Lを破線で重ねて表し、当該移動軌跡が存する領域を一点鎖線で表している。また、移動軌跡Lが存する領域の中心位置を「×」で示している。
【0040】
上記のように、位置パラメータ算出処理によって、足踏み動作の際の左右各足の足底接地位置や足底圧中心の平均値やバラツキを算出して表示部23に表示することができ、足踏み検査にて足踏み動作を複数回行う際に、被験者Sの足底圧感覚等に起因する位置の認識力(位置の再現性)を、当該足踏み検査(平衡機能検査)のバランス感覚の新たなパラメータとして規定することができる。
【0041】
<実験例1>
次に、足底荷重値バラツキ算出処理にて算出された足底荷重値の標準偏差の加齢変化について説明する。
実験例1では、20代から50代までの成人を対象として足踏み検査を行った際に、足底荷重値バラツキ算出処理にて算出された足底圧荷重値の標準偏差の平均値を基にしてグラフ化したものである。
【0042】
被験者:25歳男性;一人、27歳男性;一人、28歳男性;二人、33歳男性;一人、40歳男性;一人、48歳男性;二人、50歳男性;二人、53歳男性;一人、55歳男性;一人、58歳男性;二人、59歳男性;一人
【0043】
フォースプレート1(アニマ株式会社製;G−620):天板11の所定位置に樹脂製の足踏み動作基準マーカ12(直径;15mm、厚さ;2mm)を両面テープにより貼り付けたものを用いた。
【0044】
足踏み試験:足踏み動作基準マーカ12を足裏の略中央にて踏むように指示して各足50歩ずつ足踏み動作を行った。
その結果、足底荷重値バラツキ算出処理にて算出された足底荷重値の標準偏差の平均値を算出して、当該標準偏差を縦軸とし、年齢を横軸として図9に示す。
また、図9には、当該データに基づいて算出された近似式及び標準偏差を示している。
【0045】
図9に示すように、成人が加齢するにつれて足底荷重値のバラツキ度合が大きくなっていくことが確認できた。また、算出された近似式から検討すると、20代から30代半ばにかけてバラツキが次第に小さくなるが、それ以降次第に大きくなっていった。
従って、近似式の標準偏差値Rは0.7程度であり、被験者Sの性差等に関わらず信頼できる結果であると考えられ、足底荷重値の標準偏差の加齢変化は、加齢により所定の変動パターンを有していると想定される。
【0046】
<実験例2>
次に、足踏み位置バラツキ算出処理にて算出された足底接地位置の標準偏差の加齢変化について説明する。
実験例2では、20代から50代までの成人を対象として足踏み検査を行った際に、足踏み位置バラツキ算出処理にて算出された足底接地位置の前後左右方向の標準偏差の中で最大のものを基にしてグラフ化したものである。
【0047】
被験者:25歳男性;一人、27歳男性;一人、28歳男性;二人、33歳男性;一人、42歳男性;一人、48歳男性;二人、50歳男性;二人、53歳男性;一人、55歳男性;一人、58歳男性;一人、59歳男性;一人
フォースプレート1及び足踏み検査は、実験例1と同様にして行った。
その結果を、足底接地位置の標準偏差を縦軸とし、年齢を横軸として図10に示す。
また、図10には、当該データに基づいて算出された近似式及び標準偏差を示している。
【0048】
図10に示すように、成人が加齢するにつれて足底荷重値のバラツキ度合が大きくなっていくことが確認できた。また、算出された近似式から検討すると、20代から30代前半にかけてバラツキが次第に小さくなるが、それ以降次第に大きくなっていった。
従って、近似式の標準偏差値Rは0.7程度であり、被験者Sの性差等に関わらず信頼できる結果であると考えられ、足底接地位置の標準偏差の加齢変化は、加齢により所定の変動パターンを有していると想定される。
【0049】
以上のように、本実施形態の重心動揺システム100によれば、被験者Sは天板11の上面に設けられた足踏み動作基準マーカ12を基準として、即ち、当該足踏み動作基準マーカ12を足裏にて感知しながら足踏み動作を行うことができる。これにより、被験者Sが閉眼状態であっても、足踏み動作をフォースプレート1上から外れることなく所定時間以上行うことができ、当該足踏み検査を適正に行うことができる。
この結果、従来のように、足踏み動作前後の位置のずれを基準としてバランス能力を検査するのではなく、被験者Sのリズムの再現性(神経伝達系の安定性等に起因するリズム感)や被験者Sの足踏み位置の再現性(足底圧感覚等に起因する位置の認識力)等を新たなパラメータとして足踏み検査を行うことができることとなる。
即ち、被験者Sは測定面(天板11)の面積が狭いフォースプレート1であっても、当該フォースプレート1上にて所定時間連続して足踏み動作を行うことができるため、足踏み動作を複数回行う際の左右各足の足踏み時間や足底荷重値の平均値やバラツキを被験者Sのリズムの再現性に係るパラメータとして、また、左右各足の足底接地位置や足底圧中心の平均値やバラツキを被験者Sの足踏み位置の再現性に係るパラメータとして新たに規定して、足踏み検査を適正に行うことができる。
【0050】
なお、本実施形態の重心動揺システム100によると、従来の足踏み検査に係る足底接地位置の時間的な変移は測定することができなくなったが、被験者Sの足踏み位置の再現性を検出することにより、従来の足底接地位置の時間的な変移パラメータと同等のバランス評価の指標(パラメータ)を把握することができる。
また、目標値の情報は、足裏の感覚(足底圧感覚受容器)から入力され、脳への伝達系や脳から筋肉への制御系といったトータル的なバランス能力が関与するため、これらの系が衰える高齢者や患者の総合的なバランス評価パラメータを取得することができる。
さらに、従来のタッピングテスト(例えば、一定周期で机等を叩かせるテストや座位で足踏みさせるテスト等)では検出していなかった足底圧荷重のパターンの変動を把握することができる。
【0051】
また、足底荷重値バラツキ算出処理にて算出された足底荷重値の標準偏差の加齢変化、及び足踏み位置バラツキ算出処理にて算出された足底接地位置の標準偏差の加齢変化は、加齢により所定の変動パターンを有している。即ち、加齢による変動を捉えることができ、バランス評価の指標(パラメータ)とすることができると考えられる。
【0052】
さらに、被験者Sが足踏み検査を開眼状態で行った場合と閉眼状態で行った場合の所定の評価パラメータの比を求めることで、重心動揺検査のロンベルグ率(開眼/閉眼の比)と同じように、バランス機能の視覚の影響を把握することもできると考えられる。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、時間パラメータ算出手段及び位置パラメータ算出手段に係る機能をCPU26による所定プログラムの実行に基づいて実現するようにしたが、これに限られるものではなく、例えば、各種機能を実現するためのロジック回路等から構成しても良い。
【0054】
また、上記実施形態における足踏み動作基準マーカ12の数、形状等は一例であって、これに限られるものではないのは勿論のことである。例えば、上記実施形態では、足踏み動作基準マーカ12として、天板11の上面に対して着脱自在な構成のものを例示したが、これに限られるものではなく、天板11の上面の所定位置に接着等により取付固定されたものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明を適用した好適な一実施形態として例示する重心動揺システムを模式的に示した図である。
【図2】図1の重心動揺システムを構成するフォースプレートを模式的に示した図である。
【図3】図1の重心動揺システムを構成するデータ処理装置の要部構成を示すブロック図である。
【図4】図1の重心動揺システムによる足底荷重値測定処理の結果を示した図である。
【図5】図1の重心動揺システムによる足底荷重値バラツキ算出処理の結果を示した図である。
【図6】図1の重心動揺システムによる位置パラメータ算出処理の結果を示した図である。
【図7】図1の重心動揺システムによる足踏み位置バラツキ算出処理の結果を示した図である。
【図8】図1の重心動揺システムによる足底圧中心バラツキ算出処理の結果を示した図である。
【図9】図4の足底荷重値バラツキ算出処理における足底圧荷重値の標準偏差の加齢変化を示した図である。
【図10】図7の足踏み位置バラツキ算出処理における足底接地位置の標準偏差の加齢変化を示した図である。
【符号の説明】
【0056】
100 重心動揺システム
1 フォースプレート
11 天板(踏み板)
12 足踏み動作基準マーカ(足踏み動作基準凸状部)
2 データ処理装置(重心測定装置)
26 CPU(時間パラメータ算出手段、位置パラメータ算出手段)
S 被験者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足踏み検査にて被験者の重心移動を測定するためのフォースプレートであって、
前記被験者により踏まれる踏み板と、前記踏み板の所定位置に作用する荷重を検出する荷重検出手段とを備え、
前記踏み板の上面には、前記被験者の足踏み動作の基準となる足踏み動作基準凸状部が設けられていることを特徴とするフォースプレート。
【請求項2】
前記足踏み動作基準凸状部は、前記踏み板の上面に着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフォースプレート。
【請求項3】
足踏み検査にて被験者により踏まれる踏み板と、前記踏み板の所定位置に作用する荷重を検出して荷重データを出力する荷重検出手段とを備えるフォースプレートと、
前記荷重検出手段から出力された前記荷重データに基づいて、前記被験者の足踏み動作の際の重心移動を測定する重心測定装置とを備える重心動揺システムであって、
前記踏み板の上面には、前記被験者の前記足踏み動作の基準となる足踏み動作基準凸状部が設けられていることを特徴とする重心動揺システム。
【請求項4】
前記重心測定装置は、
複数回の前記足踏み動作の各々の前記足踏み動作にかかる足踏み時間に基づいて、前記複数回の前記足踏み動作における時間関連パラメータを算出する時間パラメータ算出手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の重心動揺システム。
【請求項5】
前記重心測定装置は、
複数回の前記足踏み動作の各々の前記足踏み動作における前記踏み板上の足踏み位置に基づいて、前記複数回の前記足踏み動作における足踏み位置関連パラメータを算出する位置パラメータ算出手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の重心動揺システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−330434(P2007−330434A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164607(P2006−164607)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000101558)アニマ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】