説明

フック装置

【課題】最小部品数にて格納式に構成し、ケースの開口がフック部材の使用状態でも閉じられるようにして見栄えを向上し、清潔感ないしは斬新性も付与できるようにする。
【解決手段】ケース1と、ケースに軸支されてケース内に入る格納状態とケース外へ先端側フック部を突出した使用状態とに切り換えられるフック部材2とを備えたフック装置において、フック部材2は略J形状をなし、ケース開口を閉じる大きさで裏面側を略平坦になった基板20及び基板の一端側から裏面と反対側に突出されたフック部25からなり、 基板20の裏面をケース外側に露出した格納状態から、フック部25をケース外側に露出するとともに基板20でケース開口を閉じた使用状態に切り換えられることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服やバック等を吊すためのフック装置のうち、特に、フック部材がケース内に入る格納状態とケース外へ突出した使用状態とに切り換えられる乗物の室内用として好適なフック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象のフック装置は、特許文献1や2に例示されるごとくケースと、ケースに軸支されてケース内に入る格納状態とケース外へフック部を突出した使用状態とに切り換えられるフック部材とを備えた格納式である。そして、各特許文献1,2のフック装置は、フック部材がケース内に収まった格納状態から下側を支点として略90度回転されると使用状態に切り換えられるとともに、フック部材を使用状態又は格納状態の方向へ付勢する付勢手段、フック部材の回転速度を制動するダンパーなどを有している。また、各フック部材は、格納状態から使用状態に切り換えられると、先端側フック部をケース外へ突出するとともに、ケースの開口のうち上側空間を露出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−28130号公報
【特許文献2】特開2006−35994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したフック構造では、ケース及びフック部材とともに付勢手段やダンパーなどを必須としているため部品点数が多く組立が面倒でありコスト低減に限界があった。また、従来のフック構造では、フック部材が格納状態から略90度回転されて使用状態に切り換えられると、フック部をケース外へ突出してケースの開口のうち上側空間を大きく露出するため、見栄えが悪くなり埃などが侵入し易くなる。また、フック部材を略90度回転ないしは略90度反転して格納状態から使用状態に切り換えたり使用状態から格納状態に切り換えるタイプだと、フック部の掛止形状を維持してケース側の収納空間を低減し難かった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、以上のような課題を解決して、特に、最小部品数にて格納式に構成し、ケースの開口がフック部材の使用状態でも閉じられるようにして見栄えを向上し、清潔感ないしは斬新性も付与できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、形態例を参考にして特定すると、ケース1と、前記ケースに軸支されてケース内に入る格納状態とケース外へ先端側フック部を突出した使用状態とに切り換えられるフック部材2とを備えたフック装置において、前記フック部材2は、略J形状をなし、前記ケースの開口を閉じる大きさで裏面側を略平坦になった基板20及び前記基板の一端側から裏面と反対側に突出されたフック部25からなり、 前記基板20の裏面を前記ケース外側に露出した格納状態から、前記フック部25を前記ケース外側に露出するとともに前記基板20で前記ケースの開口を閉じた使用状態に切り換えられることを特徴としている。
【0007】
以上の本発明は、請求項2〜6のごとく具体化されることがより好ましい。すなわち、(イ)前記ケース1と前記フック部材2との間に設けられて、前記フック部材の回転範囲を略180度に規制する反転規制手段(17,19aと22)を有している構成である(請求項2)。
(ロ)前記ケース1と前記フック部材2との間に設けられて、前記フック部材を前記格納状態に維持する保持手段(15bと27)を有し、前記保持手段の保持力に抗して前記フック部材を前記格納状態から前記使用状態に切り換える構成である(請求項3)。
【0008】
(ハ)前記ケース1と前記フック部材2との間に設けられて、前記フック部材を前記使用状態に維持する第2の保持手段(15bと21a)を有し、前記第2の保持手段の保持力に抗して前記フック部材を前記使用状態から前記格納状態に切り換える構成である(請求項4)。
(ニ)前記フック部材2は、前記基板20と前記フック部先端との間に配設されて、前記フック部25の出入口を閉じてそのフック部に吊り下げられる物品類の抜けを防止可能にする弾性のリッド3や6を有している構成である(請求項5)。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、ケース及びフック部材からなるため簡易であり、ケースの開口がフック部材の格納状態だけではなく使用状態でも閉じられているため見栄えがよく、埃などの異物がケース内へ入り難くなって清潔感が得られる。換言すると、本発明のフック装置は、ケース及びフック部材の2点構成にして低コスト化を図ることに加え、フック部材が略J形状で、格納状態及び使用状態ともにケースの開口を基板で閉じるようにして見栄えなどを向上できる。
【0010】
請求項2の発明では、形態例のごとく略J形状の上下中間部を支点として約180度正逆回転ないしは約180度反転して、格納状態から使用状態に切り換えたり使用状態から格納状態に切り換えるため、従来の略90度回転するタイプに比べて安定した切換操作性とともにケース側からの張出量を抑え易くなる。
【0011】
請求項3の発明では、フック部材の格納状態を保持手段で保つため安定維持できる。この保持手段は形態例のごとく凹凸構成により簡単に付与することができる。
【0012】
請求項4の発明では、フック部材の使用状態を第2の保持手段で保つため、例えばフック部に吊り下げられた物品類を外すときなどにフック部材の不用意な回転を防ぎ、それにより使い勝手を向上できる。この第2の保持手段も形態例のごとく凹凸構成により簡単に付与することができる。
【0013】
請求項5の発明では、物品類がフック部に吊り下げられた状態で上下に振動してもリッドにより脱落を防ぎ、それにより使い勝手を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明形態のフック装置を分解して示す構成図である。
【図2】(a),(b)は図1のフック装置をフック部材の格納状態及び使用状態で示す概略斜視図である。
【図3】(a)〜(d)は上記フック装置を使用状態で示す正面図、側面図、上面図、下面図である。
【図4】(a)〜(d)は上記フック装置を格納状態で示す正面図、側面図、上面図、下面図である。
【図5】(a)と(b)は図3(a)のA−A線拡大断面図とB−B線拡大断面図である。
【図6】(a)と(b)は図4(a)のA1−A1線拡大断面図とB1−B1線拡大断面図である。
【図7】(a)と(b)は上記フック装置のケースを示す側面図と背面図である。
【図8】(a)と(b)は上記フック装置のフック部材を示す側面図と正面図である。
【図9】(a)は上記フック装置の変形例を図5(a)に対応して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な形態例について図面を参照しながら説明する。この説明では、装置構造、組立と主作動、変形例の順に詳述する。
【0016】
(装置構造)形態例のフック装置は、前後に貫通形成されたケース1と、ケース1に軸支されてケース内に入る格納状態とケース外へ先端側フック部25を突出した使用状態とに切り換えられるフック部材2と、フック部材2に設けられてフック部25の出入口を閉じているリッド3とを備えている。材質は、ケース1、フック部材2、リッド3がともに樹脂成形品であるが、樹脂以外でもよい。
【0017】
ここで、ケース1は、特に図1と図5及び図7に示されるごとく前側の枠部10と、枠部10から後方へ張り出し、かつ間の切欠部13を介して設けられた上下区画壁部111,12とからなる。切欠部13は、枠部10に近づくほど上下区画壁部11,12の上下対向部を接近した状態に設けられ、かつ枠部10の両側付近に軸穴13aを形成している。両軸穴13aは、枠部両側の略上下中間に設けられて左右対向している。
【0018】
上下区画壁部11,12は、切欠部13を挟んだ上下に対向していて、図6のごとく間にフック部材2を収容可能な形状となっている。上区画壁部11は、上外面にあって枠部10と間隔を保って立設された一対の片部14と、図3(c)のごとく各片部14の外側に設けられて反転規制手段を構成している前後に長い規制溝17、及び両規制溝17の間に設けられて略コ形スリット15aで区画されて内面に弾性圧接部15bを形成している揺動片部15とを有している。
【0019】
一方、下区画壁部12は、各規制溝17に対応して設けられたガイド溝19及びそのガイド溝19を枠部10側に延長形成した反転規制溝を構成している規制溝19aを有している。符号12aはフック部材2を後述するパネル4に取り付けるための係止爪である。符号18は、両ガイド溝19の間に設けられて略コ形スリット18aで区画されている揺動片部である。この揺動片部18は、例えば、フック部材2がケース1内に入れられた図6の格納状態において、フック部材2の対応部が軽く弾性的に接するようにして不用意な隙間を吸収可能にする。
【0020】
これに対し、フック部材2は、特に図1と図5及び図8に示されるごとく概略J形状をなし、ケース1の開口つまり枠部10内を閉じる大きさの基板20、及び基板20の一端側から円弧状に突出形成されたフック部25と、基板20とフック部25先端との間に配設されて、フック部25の出入口を閉じてそのフック部に吊り下げられる物品(の引っ掛け部5)の抜けを防止可能にする弾性のリッド3とからなる。但し、本発明のフック装置は、リッド3を省略しても基本作動に影響しないが、車室使用で走行振動を受け易い場合などにはリッド3を付設することが好ましい。
【0021】
基板20は、湾曲状のフック部25を突出している側が表面となり、その反対側が略平坦となった背面ないしは裏面となり、両側面に設けられた軸部23と、フック部25を突出している側と反対側の端面に設けられた一対の突起22と、フック部25の外面に設けられて保持手段を構成している凸部27とを有している。
【0022】
このうち、両側の軸部23は同軸線上に設けられている。各突起22は、ケース側の規制溝17及び19aとともに本発明のフック部材用反転規制手段を構成している。凸部27は、上記弾性圧接部15bとともに本発明の保持手段を構成している。なお、符号20a〜20e、及び符号25a,25bは、基板20ないしはフック部25の両側面に設けられた軽量化を目的とした凹部である。このような凹部は省略可能である。
【0023】
基板20の表面側には、フック部25が上下方向の一端側から所定の傾きで突設されているとともに、係合溝24がフック部25とは反対側の他端側に設けられている。この係合溝24は、リッド3を装着するためのものであり、断面で略T形状に設けられて基板20の幅方向に延びている。
【0024】
基板20の裏面側には、操作部21が突起22を突出している端面付近に膨出形成されている。この操作部21は、図6のごとくフック部材2がケース1に収まった格納状態から、図5のごとく使用状態に切り換えられるときにフック部材2をケース内方向に押し操作するときに指当て部となる。また、操作部21の端面側には凹部21aが設けられている。この凹部21aは、上記弾性圧接部15bとともに本発明の第2の保持手段を構成している。
【0025】
リッド3は、適度な弾性変形可能な平板状をなし、少し太く形成された基端3aを有している。そして、リッド3は、基端3aを係合溝24と係合することでフック部材2に装着される。この装着状態では、リッド3の先端がフック部25の先端面に当接されて、基板20とフック部25との間の隙間をリッド3により閉じる。
【0026】
(組立と主作動)以上のケース1とフック部材2とは、例えば、フック部材2がケース1内に配置されて、両側の軸部23が対応する軸穴13aに押し入れられるようにして嵌合することにより、ケース1に対して180度反転可能に組み付けられてフック装置となる。このフック装置は、図3及び図4の各(b)に模式的に示したごとく車室内などのパネル4に対し、取付穴に上下区画壁部11,12を押し入れると、パネルの取付穴縁部を片部14と枠部10の対向部との間と、係止爪12aと枠部10の対向部との間に挟持した状態で装着される。そして、フック装置は、フック部材2がケース1に対して各突起22が規制溝17の溝端に当接した図5(b)の使用状態と、規制溝19aの溝端に当接した図6(b)の格納状態とに軸部23を支点として略180度反転される。その際は次のような利点が得られるようになっている。
【0027】
(1)このフック装置は、ケース1の開口(枠部10内)がフック部材2の格納状態、及び使用状態ともに基板20により閉じられていることから、従来品に比べ格納状態だけではなく使用状態においても見栄えがよく、埃などの異物がケース1内へ入り難くなり、それらによって高品質化が部材数を抑え低コスト化とともに達成される。
【0028】
(2)以上のフック装置において、フック部材2は、各突起22が規制溝17の枠側溝端に当接した使用状態において、凹部21aが図5(a)の拡大図のごとく弾性圧接部15bに圧接係合することにより、その使用状態に安定保持される。同時に、フック部材2は、各突起22が規制溝19aの枠側溝端に当接した格納状態において、凸部27が図6(a)の拡大図のごとく弾性圧接部15bに圧接係合することにより、その格納状態に安定保持される。
【0029】
(3)また、フック装置は、フック部材2がケース1内において上下略中間に設けられた軸部23を支点として略180度反転されるため、例えば90度回転する従来構成に比べて使用状態においてケース1からの突出量を抑え易くなったり安定した切換操作性とともにケース側の収納空間を抑え易くなる。
【0030】
(4)フック装置の使用状態において、図5に模式的に示したごとく各種物品の引っ掛け部5を、リッド3をフック部内から外へ弾性変位させて、フック部25の先端とリッド3と間に形成される隙間からフック部25内に引っ掛けるようにして吊り下げる。また、他の方法としては、リッド3を引っ掛け部5の荷重によりフック部25内へ強制的に弾性変位させて、引っ掛け部5をフック部25内に入れて引っ掛けることも可能である。その場合は、リッド3がフック部25内に強制的に折り曲げられた後、引っ掛け部5を通り過ぎると元の状態に弾性復元される。
【0031】
(変形例)図9は、上記リッドの他の構成例を図5(a)に対応して示している。この説明では、上記形態と同じか類似する部材に同じ符号を付し、変更した構成についてだけ詳述する。すなわち、このリッド6は、フック部材2の基板20に一体的に樹脂成形した例であり、リッド先端がフック部25の先端面に当接されて、基板20とフック部25との間の隙間を閉じる。勿論、このようなリッドは、インサート成形やアウトサート成形により一体的に成形することも可能である。
【0032】
なお、以上の形態例は本発明を何ら制約するものではない。本発明のフック装置は、請求項1で特定される技術要素を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。その一例としてはフック部材からリッドを省略することである。
【符号の説明】
【0033】
1・・・ケース(10は枠部、11と12は上下区画壁部、13は切欠部)
2・・・フック部材(20は基板、25はフック部、23は軸部)
3・・・リッド
4・・・パネル
5・・・物品の引っ掛け部
6・・・リッド
13a・・・軸穴
14・・・挟持用片部
15b・・・弾性圧接部(保持手段又は第2の保持手段)
17,19a・・・規制溝(反転規制手段)
21a・・・凹部(第2の保持手段)
22・・・突起(反転規制手段)
27・・・凸部(保持手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケースに軸支されてケース内に入る格納状態とケース外へ先端側フック部を突出した使用状態とに切り換えられるフック部材とを備えたフック装置において、
前記フック部材は、略J形状をなし、前記ケースの開口を閉じる大きさで裏面側を略平坦になった基板及び前記基板の一端側から裏面と反対側に突出されたフック部からなり、
前記基板の裏面を前記ケース外側に露出した格納状態から、前記フック部を前記ケース外側に露出するとともに前記基板で前記ケースの開口を閉じた使用状態に切り換えられることを特徴とするフック装置。
【請求項2】
前記ケースと前記フック部材との間に設けられて、前記フック部材の回転範囲を略180度に規制する反転規制手段を有していることを特徴とする請求項1に記載のフック装置。
【請求項3】
前記ケースと前記フック部材との間に設けられて、前記フック部材を前記格納状態に維持する保持手段を有し、前記保持手段の保持力に抗して前記フック部材を前記格納状態から前記使用状態に切り換えることを特徴とする請求項1又は2に記載のフック装置。
【請求項4】
前記ケースと前記フック部材との間に設けられて、前記フック部材を前記使用状態に維持する第2の保持手段を有し、前記第2の保持手段の保持力に抗して前記フック部材を前記使用状態から前記格納状態に切り換えることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のフック装置。
【請求項5】
前記フック部材は、前記基板と前記フック部先端との間に配設されて、前記フック部の出入口を閉じてそのフック部に吊り下げられる物品類の抜けを防止可能にする弾性のリッドを有していることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のフック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−192779(P2012−192779A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56820(P2011−56820)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】