説明

フラットケーブル

【目的】 補強板が貼付される側の絶縁テープの端部を特定の形状とすることにより、曲げ,戻しに強いフラットケーブルを提供する。
【構成】 基材層kの熱可塑性樹脂層の外層gに該熱可塑性樹脂層よりも耐熱性を有する樹脂層を設けた2枚の複合絶縁テープ2a,2b間に複数本の導体1を一定間隔をおいて並列配置する。両端部の導体1を一定長にわたって露出し接続端末部tとする。補強板3が貼付けされる側の複合絶縁テープ2aの端部に断面略三角形状の熱押しつぶし部dを設ける。更に前記熱押しつぶし部dを設けた複合絶縁テープ2aの端部と接続端末部tの導体1上に補強板3を貼付け、フラットケーブル4とする。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案はフラットケーブルに関する。更に詳しくは、コンピュータ機器等、各種電子機器の内部配線として使用される、フラットケーブルの接続端末部に補強板が貼付されたフラットケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
フラットケーブルは2枚の絶縁テープ間に複数本の導体を一定間隔をおいて並列配置し、両端部の導体を一定長にわたって露出して接続端末部を設けた構造を有するもので、コンピュータ機器等、各種電子機器内のプリント基板間の接続等に使用される。その端部に於いては、コネクターとの接続を容易にするため、補強板を設けた構造のものが知られている。
【0003】
従来のフラットケーブルについて図3(a) を用いて説明する。
図3(a) はフラットケーブル4の縦断面図で、1は平角状の導体,2は絶縁テープ,3は補強板である。このフラットケーブル4は、平角状に形成された複数本の導体1が一定間隔をおいて並列配置され、この導体1の両面に、その接続端末部tを除いて、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂等からなる絶縁テープ2が貼付されて一体化されており、更に接続端末部tの片面の導体1および一方の面の絶縁体2の表面を一体に覆うように、ポリエステル樹脂等からなる補強板3が貼付されている。このフラットケーブル4とプリント基板等の接続は、一般にその接続端末部tがコネクタに取り付けて行われる(図示せず)。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、前記フラットケーブル4をプリント基板等に接続しようとする場合は、限られたスペースにこのフラットケーブル4を配線しなければならない。そのため、接続端末部tを折り曲げた状態として配線する場合もある。この際、フラットケーブル4には図3(a) の矢印で示すように曲げm,戻しrの力が加わるので、絶縁テープ2の端部近辺に最も応力が集中する。しかるにこの端部には、導体1と絶縁テープ2上に貼付された補強板3との間に非接着部の隙間sができており、この部分で導体1が伸びて図3(b) に示すような伸び部eが出来た状態となり、甚だしい場合には、その部分eから切断してしまうことがあった。
【0005】
本考案は上記従来技術が有する問題点を解決するためになされたもので、補強板が貼付される側の絶縁テープの端部を特定の形状とすることにより、曲げ,戻しに強いフラットケーブルを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本考案は、2枚の絶縁テープ間に複数本の導体を一定間隔をおいて並列配置し、両端部の導体を一定長にわたって露出して接続端末部とするとともに、その一方の面の絶縁テープと前記接続端末部とを一体に覆う補強板が貼付されているフラットケーブルに於いて、 前記2枚の絶縁テープが、基材層kの熱可塑性樹脂層の外層gに該熱可塑性樹脂層kよりも耐熱性を有する樹脂層(以下、耐熱性樹脂層と略記する)を設けた複合絶縁テープ2a,2bであり、かつ前記補強板3が貼付けされる側の複合絶縁テープ2aの端部には熱プレスにより押しつぶされた熱押しつぶし部dを有するフラットケーブル4にある。
【0007】
また本考案は、前記熱可塑性樹脂層kがポリ塩化ビニル樹脂層であり、また前記耐熱性樹脂層gがポリエステル樹脂層であるフラットケーブル4にある。
【0008】
また本考案は、前記熱押しつぶし部dが、先端部に行くほど厚さが薄くなる断面略三角形の形状、または殆ど耐熱性樹脂層のみ残した形状であるフラットケーブル4にある。
【0009】
前記熱可塑性樹脂としては、前記ポリ塩化ビニル樹脂以外にも、ポリエチレン樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリアミド系樹脂等を挙げることが出来る。また、前記耐熱性樹脂としては、ポリエステル樹脂以外にも、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエステルイミド樹脂,ポリアミドイミド樹脂,ポリイミド樹脂等を挙げることが出来る。また、前記熱可塑性樹脂と耐熱性樹脂の組み合わせは目的に応じて任意に選定することが出来る。
また、前記耐熱性樹脂層gの厚さは前記熱可塑性樹脂層kの厚さに対して薄く設けられるものであり、例えば1/5〜1/10位の厚さが適当である。
【0010】
【作用】
本考案のフラットケーブルは、外層に耐熱性樹脂層gを設けた複合絶縁テープ2aの端部が、熱ローラ,熱板等の熱プレスにより押しつぶされ,先端部に行くほど厚さが薄くなる断面略三角形状や耐熱性樹脂層のみ残した構造の熱押しつぶし部dを有するので、補強板3とは殆ど隙間なく強固に接着される。なお、熱プレスにより押しつぶされる部分は熱可塑性樹脂層(例えばPVC樹脂層)kのみであり、耐熱性樹脂層(例えばポリエステル樹脂層)gは押しつぶされず残っているものである。
従って、接続端末部tを折り曲げる際に応力集中が緩和されるので、曲げ,戻しに強くなり、導体1の伸びや切断が防止される。
【0011】
【実施例】
以下、本考案のフラットケーブルの実施例について図を用いて説明する。なお、本考案は本実施例に限定されるものではない。
図1,2は本考案のフラットケーブルの第1および第2の実施例を示す縦断面図であり、1は導体、2a,2bは複合絶縁テープ、3は補強板、dは熱押しつぶし部、gは外層(耐熱性を有する樹脂層、ポリエステル樹脂層)、kは基材層(熱可塑性樹脂層、PVC樹脂層)またtは接続端末部である。
【0012】
実施例1 図1を用いて本考案第1実施例のフラットケーブルの構造及び製造方法について詳しく説明する。
導体1は錫めっき平角銅線(例えば0.1mm厚×0.8mm幅)の複数本(例えば10本)からなり、一定間隔をおいて並列配置する。この複数本の平角銅線1の両側に、外層として10μm厚のポリエステル樹脂層を有し,基材層として80μm厚のPVC樹脂層を有する複合絶縁テープ2a,2bを配置し、熱ローラ等(図示せず)を用いて平角銅線1と複合絶縁テープ2a,2bを密着し一体化させる。次に200℃に設定した熱板(図示せず)を複合絶縁テープ2aの端部に数秒間押し付け、複合テープ2aの基材層のPVC樹脂層を溶解させるとともに押しつぶし、この熱押しつぶし部dの厚さが先端に行くほど薄くし、断面が略三角形状になるようにする。次に熱押しつぶし部dを設けた複合絶縁テープ2aの端部と,接続端末部tの露出された平角銅線1上に接着剤付きポリエステル樹脂補強板3を配置し、プレスにより該補強板3を貼付けることによりフラットケーブル4を製造した。
【0013】
実施例2 図2を用いて本考案第2実施例のフラットケーブルの構造及び製造方法について詳しく説明する。
前記実施例1と同様にして複数本の平角銅線1と複合絶縁テープ2a,2bを密着し一体化させる。次に220℃に設定した熱ローラ(図示せず)を複合絶縁テープ2aの端部に数秒間押し付け、複合絶縁テープ2aの基材層のPVC樹脂層を溶解させるとともに押しつぶし、この熱押しつぶし部dが、殆ど耐熱性樹脂層のポリエステル樹脂層gのみ残した形状とする。次に実施例1と同様にして補強板3を貼付けフラットケーブル4を製造した。
【0014】
得られた実施例1,2のフラットケーブルについて、接続端末部tの曲げ,戻しを2回行ってみたが、平角銅線1には伸び,切断等が発生せず良好であった。
【0015】
【考案の効果】
本考案のフラットケーブルは、基材層の熱可塑性樹脂層の外層に耐熱性樹脂層を設けた複合絶縁テープの端部が、熱ローラ,熱板等の熱プレスにより押しつぶされ、先端部に行くほど厚さが薄くなる断面略三角形の形状の熱押しつぶし部、または殆ど耐熱性樹脂層のみ残した形状の熱押しつぶし部を有するので、補強板とは殆ど隙間なく強固に接着される。そのため、接続端末部を折り曲げる際に応力集中が緩和されるので、曲げ,戻しに強くなり、導体の伸びや切断が防止されたフラットケーブルとなる。従って、産業に寄与する効果は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案のフラットケーブルの第1の実施例を示す縦断面図である。
【図2】本考案のフラットケーブルの第2の実施例を示す縦断面図である。
【図3】(a) 従来のフラットケーブルを示す縦断面図である。
(b) 曲げ,戻し後、接続端末部に伸び部が出来たフラットケーブルを示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 導体(平角銅線)
2a,2b 複合絶縁テープ
3 補強板
4 フラットケーブル
d 熱押しつぶし部
g 外層(耐熱性を有する樹脂層、ポリエステル樹脂層)
k 基材層(熱可塑性樹脂層、ポリ塩化ビニル樹脂層))
t 接続端末部

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 2枚の絶縁テープ間に複数本の導体を一定間隔をおいて並列配置し、両端部の導体を一定長にわたって露出して接続端末部とするとともに、その一方の面の絶縁テープと前記接続端末部とを一体に覆う補強板が貼付されているフラットケーブルに於いて、前記2枚の絶縁テープが、基材層の熱可塑性樹脂層の外層に該熱可塑性樹脂層よりも耐熱性を有する樹脂層を設けた複合絶縁テープであり、かつ前記補強板が貼付けされる側の複合絶縁テープの端部には熱プレスにより押しつぶされた熱押しつぶし部を有することを特徴とするフラットケーブル。
【請求項2】 前記熱可塑性樹脂層がポリ塩化ビニル樹脂層であり、また前記熱可塑性樹脂層よりも耐熱性を有する樹脂層がポリエステル樹脂層であることを特徴とする請求項1記載のフラットケーブル。
【請求項3】 前記熱押しつぶし部が、先端部に行くほど厚さが薄くなる断面略三角形の形状であることを特徴とする請求項1または2記載のフラットケーブル。
【請求項4】 前記熱押しつぶし部が、殆ど耐熱性を有する樹脂層のみ残した形状であることを特徴とする請求項1または2記載のフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【登録番号】第3018054号
【登録日】平成7年(1995)8月30日
【発行日】平成7年(1995)11月14日
【考案の名称】フラットケーブル
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平7−5488
【出願日】平成7年(1995)5月12日
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)