説明

フロントドアとリアドアとの間の遮蔽構造

【課題】センターピラーレスの観音開きドア構造のドア全閉状態において、フロントドアとリアドアとの間隙を簡単な構造で且つ安価に遮蔽して、外観上の見栄えを向上させる。
【解決手段】シール部41は、リアドア20の前辺部21の外側面部26に取り付けられ、ドア全閉状態のフロントドア10の後辺部12の内側面部16の後端縁部16aと接触して弾性変形し、フロントドア10の後辺部12の内側面部16とリアドア20の前辺部21の外側面部26との間隙50を密閉状態で遮蔽する。遮蔽部42は、シール部41から車両後方へ一体的に延びてリアドア20の前辺部21とリアドアウインドウパネル31の前辺部32との間に進入し、ドア全閉状態のフロントドア10の後辺部12とリアウインドウパネル31の前辺部32との間隙51を遮蔽する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントドアとリアドアとの間の遮蔽構造に関し、車両前後に亘って広く形成されたドア開口をフロントドアとリアドアとによって観音開き状に開閉するセンターピラーレスの観音開きドア構造におけるフロントドアとリアドアとの間の遮蔽構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フロントドア及びリアドアのドアフレームまわりにそれぞれ装着されるウェザーストリップが記載されている。フロントドアウェザーストリップの上後隅部のリップには、フロントドアサッシュよりも後方に突出する延設部が形成され、リアドアウェザーストリップには、リップ延長部分が形成されている。フロントドアウェザーストリップのリップの延設部は、リアドアウェザーストリップのリップ延長部分の車外側に位置するため、車両の側面視でフロントドア後端とリアドア前端との隙間からセンターピラーアウターパネルの色が見えず、車両外観を損なうことがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第2590561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の中には、センタピラーを設けず、車両前後に亘って広く形成されたドア開口をフロントドアとリアドアとによって観音開き状に開閉するドア構造(以下、センターピラーレスの観音開きドア構造と称する)を有するものがあり、ドア開口のうち前席用の前側開口領域はフロントドアによって開閉され、後席用の後側開口領域はリアドアによって開閉される。
【0005】
このようなセンターピラーレスの観音開きドア構造において、車両を側方から視たときの見栄えを向上させるためには、ドア全閉状態で車幅方向に離間するフロントドアの後辺部の内側面部とリアドアの前辺部の外側面部との間を遮蔽することが好ましい。特に、リアドア窓部を車幅方向外側から覆うリアドアウインドウパネルがリアドアに取り付けられ、前側開口領域の後縁部分がリアウインドウパネルの前辺部によって区画される場合、ドア全閉状態におけるフロントドアの後辺部とリアウインドウパネルの前辺部との間の間隙はリアウインドウパネルによって視認し易くなるため、この間隙を遮蔽することは見栄えの向上にとって重要である。
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載のドアウェザーストリップは、前席用のフロントドア開口と後席用のリアドア開口とがセンタピラーによって前後に分離したドア構造に適用されるものであり、センターピラーレスのドア構造に適用することはできない。
【0007】
そこで、本発明は、いわゆるセンターピラーレスの観音開きドア構造において、ドア全閉状態におけるフロントドアとリアドアとの間隙を簡単な構造で且つ安価に遮蔽して、外観上の見栄えを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明の遮蔽構造は、いわゆるセンターピラーレスの観音開きドア構造のドア全閉状態において、フロントドアとリアドアとの間を遮蔽する。
【0009】
センターピラーレスの観音開きドア構造では、車体側部に形成された乗降用のドア開口の前側開口領域を開閉するフロントドアの前辺部は、ドア開口の車両前側で車体側に回転自在に連結される。ドア開口の後側開口領域を開閉するリアドアの後辺部は、ドア開口の車両後側で車体側に回転自在に連結される。前側開口領域を閉止する前閉止位置のフロントドアは、車幅方向外側への傾動によって前側開口領域を車両後側から開放する後開き状に開移動する。後側開口領域を閉止する後閉止位置のリアドアは、車幅方向外側への傾動によって後側開口領域を車両前側から開放する前開き状に開移動する。
【0010】
また、本発明が適用されるドア構造では、リアドアの前辺部は、フロントドアが前閉止位置に設定され且つリアドアが後閉止位置に設定されたドア全閉状態で、フロントドアの後辺部の内側面部に車幅方向内側から対向する外側面部を有する。リアドアには、リアドアのリアドア窓部を車幅方向外側から覆うリアドアウインドウパネルが取り付けられる。リアドアウインドウパネルの前辺部は、ドア全閉状態のフロントドアの後辺部の車両後方でリアドアの前辺部の外側面部と対向する。
【0011】
本発明の遮蔽構造は、シール部と遮蔽部とを備える。シール部は、リアドアの前辺部の外側面部に取り付けられ、ドア全閉状態のフロントドアの後辺部の内側面部の後端縁部と接触して弾性変形し、フロントドアの後辺部の内側面部とリアドアの前辺部の外側面部との間隙を密閉状態で遮蔽する。遮蔽部は、シール部から車両後方へ一体的に延びてリアドアの前辺部とリアドアウインドウパネルの前辺部との間に進入し、ドア全閉状態のフロントドアの後辺部とリアウインドウパネルの前辺部との間隙を遮蔽する。
【0012】
上記構成では、車両前後に亘って広く形成されたドア開口をフロントドアとリアドアとによって観音開き状に開閉するセンターピラーレスの観音開きドア構造において、フロントドアの後辺部の内側面部の後端縁部とリアドアの前辺部の外側面部と間に形成される車幅方向の間隙は、シール部によって遮蔽される。このため、上記車幅方向の間隙を斜め後方から視た場合であっても、この間隙からリアドアの前辺部の外側面部が露出することがなく、見栄えが向上する。
【0013】
また、フロントドアの後辺部とリアウインドウパネルの前辺部との間に形成される車両前後方向の間隙は、遮蔽部によって遮蔽される。このため、上記車両前後方向の間隙を側方から視た場合であっても、この間隙からリアドアの前辺部の外側面部が露出することがなく、見栄えが向上する。なお、シール部が弾性変形によって車両後方へ膨出している場合、シール部の膨出部分も上記車幅方向の間隙の遮蔽に寄与する。
【0014】
さらに、遮蔽部はシール部から一体的に延びるので、シール部と遮蔽部とを弾性樹脂材によって一体成形することができる。従って、ドア全閉状態におけるフロントドアの後辺部とリアウインドウパネルの前辺部との間の間隙を簡単な構造で且つ安価に遮蔽することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、センターピラーレスの観音開きドア構造において、ドア全閉状態におけるフロントドアの後辺部とリアウインドウパネルの前辺部との間の間隙を簡単な構造で且つ安価に遮蔽して、見栄えを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る遮蔽構造を備えたドア構造を車幅方向外側から観た側面図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】図2のIII部の拡大図である。
【図4】図1のリアドアの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図中FRは車両前方を、UPは車両上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示している。
【0018】
本実施形態の車両のドア構造は、いわゆるセンターピラーレスの観音開きドア構造であり、図1に示すように、車体側部には乗降用のドア開口1が車両前後に亘って広く形成されている。ドア開口1の前側開口領域2を開閉するフロントドア10の前辺部11は、ドア開口1の車両前側でフロントヒンジ(前連結部)4を介して車体側に回転自在に連結される。ドア開口1の後側開口領域3を開閉するリアドア20の後辺部22は、ドア開口1の車両後側でリアヒンジ(後連結部)5を介して車体側に回転自在に連結される。前側開口領域2を閉止する前閉止位置のフロントドア10は、フロントヒンジ4を中心とした車幅方向外側への傾動によって、前側開口領域2を車両後側から開放する後開き状に開移動する。後側開口領域3を閉止する後閉止位置のリアドア20は、リアヒンジ5を中心とした車幅方向外側への傾動によって、後側開口領域3を車両前側から開放する前開き状に開移動する。
【0019】
図2及び図3に示すように、フロントドア10のドアパネル(フロントドアパネル)13は、車幅方向外側のフロントドアアウタパネル14と車幅方向内側のフロントドアインナパネル15とを有する。フロントドアアウタパネル14とフロントドアインナパネル15とは、その周縁部分同士が接合され、パネル14,15内に閉断面を形成する。リアドア20のドアパネル(リアドアパネル)23は、車幅方向外側のリアドアアウタパネル24と車幅方向内側のリアドアインナパネル25とを有する。リアドアアウタパネル24とリアドアインナパネル25とは、その周縁部分同士が接合され、パネル24,25内に閉断面を形成する。
【0020】
リアドア20の前辺部21は、フロントドア10が前閉止位置に設定され且つリアドア20が後閉止位置に設定されたドア全閉状態で、フロントドア10の後辺部12の内側面部(フロント後辺内側面部)16に車幅方向内側から対向する外側面部(リア前辺外側面部)26を有する。フロント後辺内側面部16は、フロントドアインナパネル15の後辺部分(パネル14,15の接合部分を含む)によって構成され、リア前辺外側面部26は、リアドアアウタパネル24の前辺部分(パネル24,25の接合部分を含む)によって構成される。
【0021】
図2〜図4に示すように、リアドアパネル23の上部には、リアドア窓部30が形成されるとともに、このリアドア窓部30を車幅方向外側から覆うリアドアウインドウパネル31が取り付けられる。リアドアウインドウパネル31の前辺部32は、ドア全閉状態のフロントドア10の後辺部12の車両後方でリア前辺外側面部26と対向する。リアドアウインドウパネル31の前辺部32は、その端縁に嵌着されたクリップ部材34を含む。クリップ部材34は、ウインドウパネル支持板33の前端に固定され、ウインドウパネル支持板33は、クリップ部材34によってリアドアウインドウパネル31に固定される。ウインドウパネル支持板33は、ヒンジ部材34を介してリアドアパネル23に傾動可能に支持され、リアドアウインドウパネル31は、その後側が車幅方向外側へ移動するように開移動する。なお、リアドアウインドウパネル31は、リアドアパネル23に固定されてもよい。
【0022】
リアドアインナパネル25の周縁部分には、リアドア20を後閉止位置に設定した状態でリアドア20と車体側(後側開口領域3の周縁部分)との間隙を密閉するリアドアウェザーストリップ40が設けられている。リアドアウェザーストリップ40は、リアドアインナパネル25の上縁と後縁と下縁とにそれぞれ沿うように取り付けられる上ストリップ部43と後ストリップ部44と下ストリップ部45とを一体的に有する。
【0023】
上ストリップ部43の前端には、リアドアパネル23の車幅方向の内側と外側とを架け渡すようにリアドアパネル23の上端に支持される上取付部46が固定され、この上取付部46から下方へシール部41が延びている。
【0024】
シール部41は、弾性樹脂によって中空筒状に形成され、リア窓部30の前上隅の斜め前上方から前下隅の斜め前下方まで延びて、リア前辺外側面部26の表面に接着等によって固定されている。シール部41は、ドア全閉状態のフロント後辺内側面部16の後端縁部16aと接触して弾性変形し、フロント後辺内側面部16とリア前辺外側面部26との間隙50を密閉状態で遮蔽する。シール部41は、間隙50を遮蔽する機能の他、間隙50への走行風の進入を阻止して風音の発生を防止する機能を有する。
【0025】
シール部41には、その後面から車両後方へ一体的に延びるリップ形状の遮蔽部42が設けられている。遮蔽部42は、リアドア20の前辺部21(リア前辺外側面部26)とリアドアウインドウパネル31の前辺部32との間に進入し、遮蔽部42の後縁部分は、車幅方向でリアドアウインドウパネル31と重なる。このため、遮蔽部42は、ドア全閉状態のフロントドア10の後辺部12とリアウインドウパネル31の前辺部32との間の前後方向の間隙51を確実に遮蔽する。
【0026】
なお、本実施形態のシール部41は、ドア全閉状態の弾性変形によって車両後方へ膨出するため、前後方向の間隙51は、シール部41の膨出部分と遮蔽部42との双方によって遮蔽される。また、遮蔽部42は、リアドア20及びリアドアウインドウパネル31と非接触であってもよく、これらの一方と接触してもよい。また、フロント後辺内側面部16の前部には、ドア全閉状態のリア前辺外側面部26の前部と接触して弾性変形し、フロント後辺内側面部16とリア前辺外側面部26との間隙を密閉するフロントドアウェザーストリップ52が取り付けられている。
【0027】
本実施形態によれば、センターピラーレスの観音開きドア構造において、フロント後辺部内側面部16の後端縁部16aとリア前辺外側面部26と間に形成される車幅方向の間隙50は、シール部41によって遮蔽される。このため、車幅方向の間隙50を斜め後方から視た場合であっても、この間隙50からリア前辺外側面部26が露出することがなく、見栄えが向上する。
【0028】
また、フロントドア10の後辺部12とリアウインドウパネル31の前辺部32との間に形成される車両前後方向の間隙51は、遮蔽部42とシール部41の膨出部分とによって遮蔽される。このため、車両前後方向の間隙51を側方から視た場合であっても、この間隙51からリア前辺外側面部26が露出することがなく、見栄えが向上する。
【0029】
さらに、遮蔽部42はシール部41から一体的に延びるので、シール部41と遮蔽部42とを弾性樹脂材によって一体成形することができる。従って、ドア全閉状態におけるフロントドア10の後辺部12とリアウインドウパネル31の前辺部32との間の間隙51を簡単な構造で且つ安価に遮蔽することができる。
【0030】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定をされるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲では適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1:ドア開口
2:前側開口領域
3:後側開口領域
4:フロントヒンジ(前連結部)
5:リアヒンジ(後連結部)
10:フロントドア
11:フロントドアの前辺部
12:フロントドアの後辺部
16:フロント後辺内側面部
16a:後端縁部
20:リアドア
21:リアドアの前辺部
22:リアドアの後辺部
26:リア前辺外側面部
30:リアドア窓部
31:リアドアウインドウパネル
32:リアドアウインドウパネルの前辺部
40:リアドアウェザーストリップ
41:シール部
42:遮蔽部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部に形成された乗降用のドア開口の前側開口領域を開閉するフロントドアの前辺部を、前記ドア開口の車両前側で車体側に回転自在に連結し、前記ドア開口の後側開口領域を開閉するリアドアの後辺部を、前記ドア開口の車両後側で車体側に回転自在に連結し、前記前側開口領域を閉止する前閉止位置の前記フロントドアは、車幅方向外側への傾動によって前記前側開口領域を車両後側から開放する後開き状に開移動し、前記後側開口領域を閉止する後閉止位置の前記リアドアは、車幅方向外側への傾動によって前記後側開口領域を車両前側から開放する前開き状に開移動し、前記リアドアの前辺部は、前記フロントドアが前記前閉止位置に設定され且つ前記リアドアが前記後閉止位置に設定されたドア全閉状態で、前記フロントドアの後辺部の内側面部に車幅方向内側から対向する外側面部を有し、前記リアドアには、該リアドアのリアドア窓部を車幅方向外側から覆うリアドアウインドウパネルが取り付けられ、該リアドアウインドウパネルの前辺部が、前記ドア全閉状態の前記フロントドアの後辺部の車両後方で前記リアドアの前辺部の外側面部と対向する車両のドア構造において、前記ドア全閉状態の前記フロントドアと前記リアドアとの間を遮蔽する遮蔽構造であって、
前記リアドアの前辺部の外側面部に取り付けられ、前記ドア全閉状態のフロントドアの後辺部の内側面部の後端縁部と接触して弾性変形し、このフロントドアの後辺部の内側面部と前記リアドアの前辺部の外側面部との間隙を密閉状態で遮蔽するシール部と、
前記シール部から車両後方へ一体的に延びて前記リアドアの前辺部とリアドアウインドウパネルの前辺部との間に進入し、前記ドア全閉状態のフロントドアの後辺部と前記リアウインドウパネルの前辺部との間隙を遮蔽する遮蔽部と、を備えた
ことを特徴とするフロントドアとリアドアとの間の遮蔽構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−67293(P2013−67293A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207904(P2011−207904)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】