説明

フロントフォーク

【課題】 所定の大きさとなる圧側の減衰力が得られながら、二輪車における前輪側への架装性を悪化させない。
【解決手段】 二輪車の前輪側に架装されるフロントフォークを構成する左右で一対とされる油圧緩衝器のいずれか一方の油圧緩衝器がシリンダ3内をピストン5が下降する収縮作動時にピストン側油室R2の作動油を圧側チェック弁6によってリザーバ室Rに流出させずしてピストン5に配在の圧側減衰バルブ5aを介してロッド側油室R1に流入させると共に、このロッド側油室R1で余剰となる作動油をリザーバ室Rに流出させる一方で、ピストン5がシリンダ3内で反転して上昇する伸長作動時にロッド側油室R1の作動油を上記の圧側減衰バルブ5aによってピストン側油室R2に流出させずしてリザーバ室Rに流出させると共に、ピストン側油室R2で不足する作動油を上記の圧側チェック弁5aを介してリザーバ室Rから補給するユニフロー構造に形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フロントフォークに関し、特に、二輪車の前輪側に架装されて左右で一対とされる油圧緩衝器からなるフロントフォークの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、自動二輪車の前輪側に架装されるフロントフォークが油圧緩衝器からなるとき、この油圧緩衝器が伸側減衰力をいわゆるフォーク本体の上端での操作で高低調整できるとし、また、圧側減衰力をフォーク本体の下端での操作で高低調整できるとすることがあった。
【0003】
しかしながら、圧側減衰力の高低調整をフォーク本体の下端、すなわち、下端部分でする操作は、乗車姿勢のまま実践できないのはもちろんだが、降車して実践するとしても、一般的に言って容易でない。
【0004】
このことから、たとえば、特許文献1には、いわゆる左右とされるフロントフォークのいずれか一方のフロントフォークを形成する油圧緩衝器を伸側減衰力の発生を担う伸側減衰力発生用とし、また、他方のフロントフォークを形成する油圧緩衝器を圧側減衰力の発生を担う圧側減衰力発生用とし、さらに、それぞれの減衰力をフォーク本体の上端で高低調整できるとする提案が開示されている。
【0005】
それゆえ、この特許文献1に開示の提案による油圧緩衝器を自動二輪車の前輪側に架装されるフロントフォークに具現化する場合には、左右で一対となる油圧緩衝器にあって、各側の減衰力の高低調整を独立に実践し得るから、所望の減衰力の発生状態を具現化するのに有利となる。
【0006】
ちなみに、この特許文献1に開示の提案にあって、圧側減衰力の発生を担う油圧緩衝器は、その収縮作動時に下方油室から上方油室に流入されて余剰となる作動油がシリンダにおける上端側に開穿の連通孔を介してリザーバ室に流出され、反転して伸長作動するときは、上方油室および下方油室に充満されるべき作動油が上記の連通孔を介してリザーバ室から補給されるとしている。
【0007】
そして、伸側減衰力の発生を担う油圧緩衝器は、その伸長作動時に下方油室で不足する作動油がシリンダにおける下方油室側に開穿の連通孔を介してリザーバ室から補給され、反転して収縮作動するときは、下方油室で余剰となる作動油が上記の連通孔を介してリザーバ室に流出されるとしている。
【特許文献1】特開2004−446435号公報(段落0012,同0027,同0030,同0040,同0043,図2,図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1に開示の提案にあっては、各側の減衰力を担う各油圧緩衝器にあって、所定の安定した減衰力の発生を保障できなくなると指摘される可能性がある。
【0009】
すなわち、上記の提案にあって、たとえば、圧側減衰力の発生を担う油圧緩衝器では、収縮作動から反転して伸長作動するときには、リザーバ室から作動油がシリンダに開穿の連通孔を介して一旦上方油室に流入し、この上方油室に流入した作動油がピストンに配在のバルブ部分を介して下方油室に流入することになるから、この下方油室において勢い作動油の流入不足が招来され易くなると共に、実際に流入不足となる場合には、この状態から反転して収縮作動するときに発生される圧側減衰力が不安定なものになる。
【0010】
そして、伸側減衰力の発生を担う油圧緩衝器にあっても、伸張作動から反転して収縮作動するときには、リザーバ室からの作動油がシリンダに開穿の連通孔を介して一旦下方油室に流入し、この下方油室に流入した作動油がピストンに配在のバルブ部分を介して上方油室に流入することになるから、この上方油室において勢い作動油の流入不足が招来され易くなると共に、実際に流入不足となる場合には、この状態から反転して収縮作動するときに発生される伸側減衰力が不安定なものになる。
【0011】
さらに、各側の減衰力を担う各油圧緩衝器にあって、それぞれがピストンに減衰力発生用の流路と作動油供給用の流路の二種類となる流路を設けることになるから、このとき、ピストンの大きさを勘案すると、各流路を十分に大きくできず、したがって、いわゆる流路の確保が困難になり易い不具合もある。
【0012】
それゆえ、上記した特許文献1に開示の提案にあっては、各側の減衰力を担う各油圧緩衝器にあって、本来の作動による減衰力の発生が逆方向の作動時における作動油不足で妨げられ、所定の安定した減衰力の発生を保障できなくなると指摘される可能性がある。
【0013】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、左右で一対とされる各油圧緩衝器が伸側あるいは圧側のいずれか一方の減衰力発生を担うとき、シリンダ内において作動油不足が招来されず、したがって、一対の油圧緩衝器がそれぞれ担う減衰力の発生を保障し得て、その汎用性の向上を期待するのに最適となるフロントフォークを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した目的を達成するために、この発明によるフロントフォークの構成を、基本的には、請求項1にあって、二輪車の前輪側に架装されて左右で一対とされる一方でシリンダ内に出没可能に挿通されるピストンロッドの先端に連設されてシリンダ内に摺動可能に収装のピストンがシリンダ内にロッド側油室とピストン側油室を画成すると共にこのロッド側油室とピストン側油室がシリンダ外に画成のリザーバ室に連通される油圧緩衝器からなるフロントフォークにおいて、
左右のいずれか一方の油圧緩衝器がシリンダ内をピストンが下降する収縮作動時にピストン側油室の作動油を圧側チェック弁によってリザーバ室に流出させずしてピストンに配在の一方向の流れのみを許容する圧側減衰バルブを介してロッド側油室に流入させると共に、このロッド側油室で余剰となる作動油をリザーバ室に無抵抗下に流出させる一方で、ピストンがシリンダ内で反転して上昇する伸長作動時にロッド側油室の作動油を上記の圧側減衰バルブによってピストン側油室に流出させずしてリザーバ室に流出させると共に、ピストン側油室で不足する作動油を上記の圧側チェック弁を介してリザーバ室から補給するユニフロー構造に形成されてなるとする。
【0015】
そして、より具体的には、請求項2にあって、二輪車の前輪側に架装されて左右で一対とされる一方でシリンダ内に出没可能に挿通されるピストンロッドの先端に連設されてシリンダ内に摺動可能に収装のピストンがシリンダ内にロッド側油室とピストン側油室を画成すると共にこのロッド側油室とピストン側油室がシリンダ外に画成のリザーバ室に連通される油圧緩衝器からなるフロントフォークにおいて、
左右のいずれか一方の油圧緩衝器がシリンダ内をピストンが下降する収縮作動時にピストン側油室の作動油を圧側チェック弁によってリザーバ室に流出させずしてピストンに配在の一方向の流れのみを許容する圧側減衰バルブを介してロッド側油室に流入させると共に、このロッド側油室で余剰となる作動油をリザーバ室に無抵抗下に流出させる一方で、ピストンがシリンダ内で反転して上昇する伸長作動時にロッド側油室の作動油を上記の圧側減衰バルブによってピストン側油室に流出させずしてリザーバ室に流出させると共に、ピストン側油室で不足する作動油を上記の圧側チェック弁を介してリザーバ室から補給するユニフロー構造に形成されてなり、かつ、
左右のいずれか他方の油圧緩衝器がシリンダ内をピストンが上昇する伸長作動時にロッド側油室の作動油を伸側チェック弁によってリザーバ室に流出させずしてピストンに配在の伸側減衰バルブを介してピストン側油室に流出させると共に、このピストン側油室で不足する作動油をリザーバ室から補給する一方で、ピストンがシリンダ内で反転して下降する収縮作動時にピストン側油室で余剰となる作動油を上記の伸側減衰バルブによってロッド側油室に流入させずしてリザーバ室に流出させると共に、ロッド側油室で不足する作動油を上記の伸側チェック弁を介してリザーバ室から補給するユニフロー構造に形成されてなるとする。
【0016】
ちなみに、圧側の減衰力を担う油圧緩衝器において、圧側減衰バルブは、また、伸側の減衰力を担う油圧緩衝器において、伸側減衰バルブは、それぞれ一方向の流れのみを許容するように形成されてなるとする。
【0017】
そして、圧側の減衰力を担う油圧緩衝器において、リザーバ室からロッド側油室内に、また、伸側の減衰力を担う油圧緩衝器において、リザーバ室からピストン側油室に、それぞれ作動油を補給するときには、絞り効果などが発揮されずして無抵抗下に実践されるとする。
【0018】
さらに、圧側の減衰力を担う油圧緩衝器において、圧側チェック弁がシリンダのボトム部に配在されてなるとし、また、伸側の減衰力を担う油圧緩衝器において、伸側チェック弁がシリンダのヘッド部に配在されてなるとするのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
それゆえ、請求項1の発明にあっては、圧側の減衰力を担う油圧緩衝器において、シリンダ内をピストンが下降する収縮作動時にピストンに配在の圧側減衰バルブによって所定の圧側減衰力が発生されると共に、反転してシリンダ内をピストンが上昇する伸長作動時には、広くなるピストン側油室で不足する作動油をリザーバ室から圧側チェック弁を介して補給するとするから、この油圧緩衝器が本来の作動である収縮作動をするときに、ピストン側油室に作動油の供給不足を招来することがなく、設定通りの圧側減衰力の発生が可能になる。
【0020】
そして、請求項2の発明にあっては、上記に加えて、伸側の減衰力を担う油圧緩衝器にあって、シリンダ内をピストンが上昇する伸長作動時にピストンに配在の伸側減衰バルブによって所定の伸側減衰力が発生されると共に、反転してシリンダ内をピストンが下降する収縮作動時には、広くなるロッド側油室で不足する作動油をリザーバ室から伸側チェック弁を介して補給するとするから、この油圧緩衝器が本来の作動である伸長作動をするときに、ロッド側油室に作動油の供給不足を招来することがなく、設定通りの伸側減衰力の発生が可能になる。
【0021】
その結果、この発明によれば、左右で一対とされる各油圧緩衝器が伸側あるいは圧側のいずれか一方の減衰力発生を担うとき、シリンダ内において作動油不足が招来されず、したがって、一対の油圧緩衝器がそれぞれ担う減衰力の発生を保障し得ることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるフロントフォークは、二輪車たる自動二輪車の前輪側に架装されて左右で一対とされる油圧緩衝器からなる。
【0023】
このとき、この発明では、左右のいずれか一方の油圧緩衝器が伸長作動時にはいわゆる空作動して伸側減衰力を発生しないが、収縮作動時には所定の圧側減衰力を発生するユニフロー構造に形成されてなるとしている。
【0024】
すなわち、このユニフロー構造の油圧緩衝器は、図1に示すように、図示する実施形態では、外筒1に対して内筒2がいわゆる液密構造下に出没可能に挿通されてなるとし、外筒1および内筒2でフロントフォークにおけるいわゆるフォーク本体を形成するとしている。
【0025】
このとき、外筒1と内筒2との間には懸架バネSが配在されていて、この懸架バネSの附勢力で外筒1内から内筒2が脱け出るように、すなわち、フォーク本体が伸長方向に附勢されてなるとしている。
【0026】
そして、このフォーク本体の軸芯部にいわゆるダンパ部を有してなるとするもので、このダンパ部は、内筒2の軸芯部に立設のシリンダ3に対して外筒1の軸芯部に垂設のピストンロッド4が出没可能に挿通されてなるとしている。
【0027】
このとき、シリンダ3の図中で上端となる開口端は、軸芯部にピストンロッド4を貫通させるヘッド部3aで閉塞されるとしており、シリンダ3の図中で下端となる開口端は、内筒2のボトム部2aで閉塞されるとしている。
【0028】
そして、シリンダ3内にはピストンロッド4の先端に連設のピストン5が摺動可能に収装されていて、このピストン5によってシリンダ3内にロッド側油室R1とピストン側油室R2が画成されるとしている。
【0029】
このとき、シリンダ1の外側が内筒2との間で画成されるザーバ室Rに設定されていて、このリザーバ室Rは、上記のロッド側油室R1に無抵抗下に、すなわち、上記のヘッド部3aに配在の流路(符示せず)を介して自由連通すると共に、ピストン側油室R2に圧側チェック弁6を介して連通するとしている。
【0030】
そして、ピストン5は、ピストン側油室R2の作動油がロッド側油室R1に流入することを許容しながら所定の圧側減衰力を発生する圧側減衰バルブ5aが配在されてなるとしている。
【0031】
それゆえ、この油圧緩衝器にあっては、外筒1内に内筒2が没入する、すなわち、シリンダ3内にピストンロッド4が没入する収縮作動時には、ピストン側油室R2の作動油が圧側減衰バルブ5aを介してロッド側油室R1に流入することになり、作動油が圧側減衰バルブ5aを通過することで所定の大きさの圧側減衰力が発生されることになる。
【0032】
そして、ロッド側油室R1に流入した作動油の内、このロッド側油室R1において言わば余剰となるロッド侵入体積分に相当する量の作動油がシリンダ3のヘッド部3aの流路を介してリザーバ室Rに流出されることになる。
【0033】
そして、上記したところと逆に、外筒1内から内筒2が脱け出る、すなわち、シリンダ3内からピストンロッド4が脱け出るようになる伸長作動時には、ロッド側油室R1の作動油がピストン5に配在の圧側減衰バルブ5aによってピストン側油室R2に流出することが阻止されながら上記の流路を介してリザーバ室Rに流出されることになる。
【0034】
そして、このとき、ピストン側油室R2で不足することになるロッド退出体積分に相当する量の作動油がリザーバ室Rから圧側チェック弁6を介して補給されることになる。
【0035】
以上のように、この発明では、ユニフロー構造の油圧緩衝器の収縮作動時にピストン5に配在の圧側減衰バルブ5aで所定の圧側減衰力を発生させるが、この収縮作動から反転して伸長作動するときには、ピストン側油室R2で不足する作動油が圧側チェック弁6を介してであるが、リザーバ室Rから直接補給されることになる。
【0036】
すなわち、前記した特許文献1に開示のフロントフォークを形成する油圧緩衝器にあっては、下方油室で不足することになる作動油を供給するには、リザーバ室から一旦上方油室に流入された作動油を引き続きピストンに配在のバルブ部分を介して下方油室に供給する構成とされているから、言わば間接的に作動油が供給されることになるが、それに対して、この発明にあっては、リザーバ室Rから不足分の作動油が、圧側チェック弁6を介してであるが、言わば直接的にピストン側油室R2に補給されることから、作動油の供給不足が招来されなくなり、安定した圧側減衰力の発生を期待し得ることになる。
【0037】
以上からすれば、上記した圧側減衰力の発生用の油圧緩衝器を利用するフロントフォークにあっては、言わば作動油の供給不足を招来することなくして、所定の大きさの圧側減衰力を得ることが可能になるが、この圧側の油圧緩衝器と一対になる伸側の油圧緩衝器、すなわち、伸側減衰力の発生用の油圧緩衝器として、たとえば、図2に示す油圧緩衝器を提案し得る。
【0038】
このとき、この伸側減衰力の発生用の油圧緩衝器は、伸張作動時には所定の伸側減衰力を発生するように形成されてなるが、反転して収縮作動するときにはいわゆる空作動して圧側減衰力を発生しないとし、図示するところでは、前記した図1に示す圧側減衰力の発生用の油圧緩衝器と同様にユニフロー構造に形成されてなるとしている。
【0039】
少し説明すると、この図2に示す伸側減衰力の発生用の油圧緩衝器も、外筒1に対して内筒2がいわゆる液密構造下に出没可能に挿通されてなるとし、外筒1および内筒2でフロントフォークにおけるいわゆるフォーク本体を形成するとしている。
【0040】
このとき、外筒1と内筒2との間には懸架バネSが配在されていて、この懸架バネSの附勢力で外筒1内から内筒2が脱け出るように、すなわち、フォーク本体が伸長方向に附勢されてなるとしている。
【0041】
そして、このフォーク本体の軸芯部にいわゆるダンパ部を有してなるとし、このダンパ部は、内筒2の軸芯部に立設のシリンダ3に対して外筒1の軸芯部に垂設のピストンロッド4が出没可能に挿通されてなるとしている。
【0042】
このとき、シリンダ3の図中で上端となる開口端は、軸芯部にピストンロッド4を貫通させるヘッド部3aで閉塞されるとしており、シリンダ3の図中で下端となる開口端は、内筒2のボトム部2aで閉塞されるとしている。
【0043】
そして、シリンダ3内にはピストンロッド4の先端に連設のピストン5が摺動可能に収装されていて、このピストン5によってシリンダ3内にロッド側油室R1とピストン側油室R2が画成されるとしている。
【0044】
このとき、シリンダ1の外側が内筒2との間で画成されるザーバ室Rに設定されていて、このリザーバ室Rは、上記のピストン側油室R2に無抵抗下に、すなわち、上記のボトム部2aに配在の流路(符示せず)を介して自由連通すると共に、ロッド側油室R1に伸側チェック弁7を介して連通するとしている。
【0045】
そして、ピストン5は、ロッド側油室R1の作動油がピストン側油室R2に流出することを許容しながら所定の伸側減衰力を発生する伸側減衰バルブ5bが配在されてなるとしている。
【0046】
それゆえ、この油圧緩衝器にあっては、外筒1内から内筒2が脱け出るようになる、すなわち、シリンダ3内からピストンロッド4が脱け出るように伸長作動するときには、ロッド側油室R1の作動油が伸側チェック弁7によってリザーバ室Rに流出することを阻止されながら伸側減衰バルブ5bを介してピストン側油室R2に流出することになり、作動油が伸側減衰バルブ5bを通過することで所定の大きさの伸側減衰力が発生されることになる。
【0047】
そして、このとき、ピストン側油室R2で不足することになるロッド退出体積分に相当する量の作動油がリザーバ室Rから内筒のボトム部2aに配在の流路を介して補給されることになる。
【0048】
そして、上記したところと逆に、外筒1内に内筒2が没入する、すなわち、シリンダ3内にピストンロッド4が没入するように反転する収縮作動時には、ピストン側油室R2の作動油がピストン5に配在の伸側減衰バルブ5bによってロッド側油室R1に流入することが阻止されながらロッド進入体積分に相当する量の作動油がボトム部2aに配在の流路を介してリザーバ室Rに流出されることになる。
【0049】
そして、このとき、ロッド側油室R1で不足することになるロッド進入体積分に相当する量の作動油がリザーバ室Rから伸側チェック弁7を介して補給されることになる。
【0050】
以上のように、この発明では、ユニフロー構造の油圧緩衝器の伸長作動時にピストン5に配在の伸側減衰バルブ5bで所定の伸側減衰力を発生させるが、この伸長作動から反転して収縮作動するときには、ロッド側油室R1で不足する作動油が伸側チェック弁7を介してであるが、リザーバ室Rから直接補給されることになる。
【0051】
すなわち、前記した特許文献1に開示のフロントフォークを形成する油圧緩衝器にあっては、上方油室で不足することになる作動油を供給するには、リザーバ室から一旦下方油室に流入された作動油を引き続きピストンに配在のバルブ部分を介して上方油室に供給する構成とされているから、言わば間接的に作動油が供給されることになるが、それに対して、この発明にあっては、リザーバ室Rから不足分の作動油が、伸側チェック弁7を介してであるが、言わば直接的にロッド側油室R1に補給されることから、収縮作動時に言わば余計な減衰力を発生させないで済む。
【0052】
前記したところは、このフロントフォークを架装する二輪車が自動二輪車とされる場合を例にして説明したが、この発明が意図するところからすれば、二輪車が自転車とされる場合であっても良く、その場合に、このフロントフォークを構成する油圧緩衝器の作用効果が異ならないのはもちろんである。
【0053】
また、前記したところでは、ユニフロー型に形成されて圧側減衰力の発生を担う油圧緩衝器からなるフロントフォークと、同じくユニフロー型に形成されて伸側減衰力の発生を担う油圧緩衝器からなるフロントフォークとが一対とされて二輪車の前輪側に架装されるとして説明したが、この発明が意図するところからすれば、いずれか一方のフロントフォークが、すなわち、油圧緩衝器がユニフロー型以外の構造に形成されてなるとしても、他方のフロントフォークにおいて、すなわち、油圧緩衝器において、この発明の具現化が妨げられないことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明によるフロントフォークを構成して圧側減衰力を発生するユニフロー構造の油圧緩衝器を原理的に示す図である。
【図2】この発明によるフロントフォークを構成して伸側減衰力を発生するユニフロー構造の油圧緩衝器を図1と同様に示す図である。
【符号の説明】
【0055】
3 シリンダ
4 ピストンロッド
5 ピストン
5a 圧側減衰バルブ
5b 伸側減衰バルブ
6 圧側チェック弁
7 伸側チェック弁
R リザーバ室
R1 ロッド側油室
R2 ピストン側油室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車の前輪側に架装されて左右で一対とされる一方でシリンダ内に出没可能に挿通されるピストンロッドの先端に連設されてシリンダ内に摺動可能に収装のピストンがシリンダ内にロッド側油室とピストン側油室を画成すると共にこのロッド側油室とピストン側油室がシリンダ外に画成のリザーバ室に連通される油圧緩衝器からなるフロントフォークにおいて、
左右のいずれか一方の油圧緩衝器がシリンダ内をピストンが下降する収縮作動時にピストン側油室の作動油を圧側チェック弁によってリザーバ室に流出させずしてピストンに配在の圧側減衰バルブを介してロッド側油室に流入させると共に、このロッド側油室で余剰となる作動油をリザーバ室に流出させる一方で、ピストンがシリンダ内で反転して上昇する伸長作動時にロッド側油室の作動油を上記の圧側減衰バルブによってピストン側油室に流出させずしてリザーバ室に流出させると共に、ピストン側油室で不足する作動油を上記の圧側チェック弁を介してリザーバ室から補給するユニフロー構造に形成されてなることを特徴とするフロントフォーク
【請求項2】
二輪車の前輪側に架装されて左右で一対とされる一方でシリンダ内に出没可能に挿通されるピストンロッドの先端に連設されてシリンダ内に摺動可能に収装のピストンがシリンダ内にロッド側油室とピストン側油室を画成すると共にこのロッド側油室とピストン側油室がシリンダ外に画成のリザーバ室に連通される油圧緩衝器からなるフロントフォークにおいて、
左右のいずれか一方の油圧緩衝器がシリンダ内をピストンが下降する収縮作動時にピストン側油室の作動油を圧側チェック弁によってリザーバ室に流出させずしてピストンに配在の圧側減衰バルブを介してロッド側油室に流入させると共に、このロッド側油室で余剰となる作動油をリザーバ室に流出させる一方で、ピストンがシリンダ内で反転して上昇する伸長作動時にロッド側油室の作動油を上記の圧側減衰バルブによってピストン側油室に流出させずしてリザーバ室に流出させると共に、ピストン側油室で不足する作動油を上記の圧側チェック弁を介してリザーバ室から補給するユニフロー構造に形成されてなり、かつ、
左右のいずれか他方の油圧緩衝器がシリンダ内をピストンが上昇する伸長作動時にロッド側油室の作動油を伸側チェック弁によってリザーバ室に流出させずしてピストンに配在の伸側減衰バルブを介してピストン側油室に流出させると共に、このピストン側油室で不足する作動油をリザーバ室から補給する一方で、ピストンがシリンダ内で反転して下降する収縮作動時にピストン側油室で余剰となる作動油を上記の伸側減衰バルブによってロッド側油室に流入させずしてリザーバ室に流出させると共に、ロッド側油室で不足するの作動油を上記の伸側チェック弁を介してリザーバ室から補給するユニフロー構造に形成されてなることを特徴とするフロントフォーク

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−64098(P2006−64098A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248374(P2004−248374)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】