説明

フローチューブ保持部材

【課題】 コリオリ流量計におけるフローチューブの振動を安定させるとともに、フローチューブのメンテナンス性を向上させることが可能なフローチューブ保持部材を提供する。
【解決手段】 フローチューブ保持部材24は、十分に質量のある金属部材(剛体)であって、固着状態部分17の着脱を自在とする分割式に形成されている。すなわち、フローチューブ保持部材24は、上部側ブロック状部材25及び下部側ブロック状部材26からなる二つの部材と、上部側ブロック状部材25及び下部側ブロック状部材26を固定する例えばネジ27等の複数の留め具とを備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コリオリ流量計におけるフローチューブの固着状態部分に取り付けられるフローチューブ保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
コリオリ流量計は、被計測流体の流通する流管の一端又は両端を支持し、その支持点回りに流管の流れ方向と垂直な方向に振動を加えたときに、流管(以下、振動が加えられるべき流管をフローチューブという)に作用するコリオリの力が質量流量に比例することを利用した質量流量計である。コリオリ流量計は周知のものであり、コリオリ流量計におけるフローチューブの形状は直管式と湾曲管式とに大別されている。
【0003】
直管式のコリオリ流量計は、両端が支持された直管の中央部直管軸に垂直な方向の振動を加えたとき、直管の支持部と中央部との間でコリオリの力による直管の変位差、すなわち位相差信号が得られ、その位相差信号に基づいて質量流量を検知するように構成されている。このような直管式のコリオリ流量計は、シンプル、コンパクトで堅牢な構造を有している。しかしながら、高い検出感度を得ることができないという問題点もあわせ持っている。
【0004】
これに対して、湾曲管式のコリオリ流量計は、コリオリの力を有効に取り出すための形状を選択できる面で、直管式のコリオリ流量計よりも優れており、実際、高感度の質量流量を検出することができている。尚、湾曲管式のコリオリ流量計としては、一本のフローチューブを備えるもの(例えば特許文献1参照)や、並列二本のフローチューブを備えるもの(例えば特許文献2参照)、或いは一本のフローチューブをループさせた状態に備えるもの(例えば特許文献3参照)などが知られている。
【0005】
図8及び図9において、一本のフローチューブ101を二重にループさせてなる下記特許文献3のコリオリ流量計では、フローチューブ101が第一湾曲管部102と第二湾曲管部103と屈曲管部104とを有している。第一湾曲管部102及び第二湾曲管部103は、第一湾曲管部102により形成されるチューブ形成面105(図中の仮想線に沿って形成される面)と、第二湾曲管部103により形成されるチューブ形成面106とが平行になるように互いが配置されている。屈曲管部104は、第一湾曲管部102及び第二湾曲管部103を連結するために、これら第一湾曲管部102及び第二湾曲管部103の間に存在するように配置形成されている。屈曲管部104は、図示のような状態に屈曲形成されている。
【特許文献1】特公平4−55250号公報
【特許文献2】特許第2939242号公報
【特許文献3】特公平5−69453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術にあっては、屈曲管部104が第一湾曲管部102及び第二湾曲管部103間に存在する構造であることから、第一湾曲管部102及び第二湾曲管部103の間隔が比較的広くなるようにフローチューブ101が形成されている。これにより、フローチューブ101を駆動するための駆動手段や、フローチューブ101に作用するコリオリの力に比例した位相差及び/又は振動周波数を検出するための検出手段の配置から、次のような問題点が生じている。
【0007】
すなわち、駆動手段や検出手段を構成するコイル及びマグネットは、互いに近づけて配置する必要性があることから、第一湾曲管部102及び第二湾曲管部103のような広い間隔となる場合では、コイルやマグネットを保持するための専用の保持部材を大きく形成しなければならず、この結果、駆動手段や検出手段の存在する部分の自重が大きくなってS/N比が減少してしまうという問題点が生じている。
【0008】
そこで、本願発明者は上記問題点に対する検討を重ねた結果、一つの対策案を見出すに至った。この対策案は、一本のフローチューブを二重にループさせて形成した二つのチューブ形成面を、チューブ駆動側が所定の間隔で開く略V字状となるように配置し、この配置状態でチューブ駆動側の反対側を固着状態にするような形状のフローチューブを用いるという案であり、上記問題点を解消することができるという良好な結果が得られた。
【0009】
ところで、本願発明者は、更に創意工夫を重ねて次のようなことも新たに見出した。すなわち、上記対策案のフローチューブに関し、剛体となるフローチューブ保持部材を上記固着状態部分に溶接すれば、フローチューブの振動の安定性を高めることができるということを見出した。また、本願発明者は、固着状態部分に溶接するフローチューブ保持部材の質量を高めると、フローチューブの振動を更に安定させることができるということも見出した。
【0010】
しかしながら、固着状態部分にフローチューブ保持部材を溶接してしまうと、例えばフローチューブを交換しなければならない場合に、交換対応が困難又は不能になるという問題点を有している。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、コリオリ流量計におけるフローチューブの振動を安定させるとともに、フローチューブのメンテナンス性を向上させることが可能なフローチューブ保持部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のフローチューブ保持部材は、コリオリ流量計におけるフローチューブのチューブ集合部分を固着することにより形成した固着状態部分を着脱自在に挟み込む分割式の剛体からなることを特徴としている。
【0013】
このような特徴を有する本発明によれば、フローチューブの固着状態部分に取り付けると、振動を安定させるという機能を発揮する。一方、分解してフローチューブの固着状態部分から取り外すと、例えばフローチューブに対するメンテナンスが行えるような状態になる。
【0014】
請求項2記載の本発明のフローチューブ保持部材は、請求項1に記載のフローチューブ保持部材において、前記固着状態部分に対応する溝を形成した一対のブロック状部材と、該一対のブロック状部材同士を固定する留め具とを備えて構成するとともに、前記一対のブロック状部材の一方に前記コリオリ流量計における筐体に対しての固定部を形成することを特徴としている。
【0015】
このような特徴を有する本発明によれば、一対のブロック状部材の各溝にフローチューブの固着状態部分を挟み込み、この状態から留め具で一対のブロック状部材同士を固定すると、フローチューブ保持部材の取り付けが完了する。一方、留め具を取り外して一対のブロック状部材を分割すると、フローチューブの取り外しが完了する。本発明のフローチューブ保持部材は、着脱が容易となる構造を有する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載された本発明によれば、コリオリ流量計におけるフローチューブの振動を安定させることができるという効果を奏する。また、従来よりフローチューブだけの交換が不可能で、検出器(センサユニットであり流量計要部)一式交換を余儀なくされていた融通性のない構造から開放されるという効果を奏する。これにより、フローチューブのメンテナンス性を向上させることができるという効果を奏する。請求項2に記載された本発明によれば、より良いフローチューブ保持部材の形態を提供することができるという効果を奏する。請求項1、請求項2に記載された本発明は、意図的に詰まり易い流体計測において、フローチューブの交換が可能で常に安定した計測を提供するものであり、新分野への拡大を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明のフローチューブ保持部材の一実施の形態を示すコリオリ流量計の図であり、(a)はフローチューブ保持部材を取り付けたフローチューブの斜視図、(b)は二つのチューブ形成面を模式的に示した図である。また、図2はフローチューブの斜視図、図3は図1のA視方向の図、図4は固着状態となる部分の斜視図(断面を含む)、図5はフローチューブ保持部材の分解斜視図、図6(a)は二つのチューブ形成面の振動軌跡の変化を示す模式図、図6(b)は比較例の振動軌跡の変化を示す模式図である。
【0018】
図1において、コリオリ流量計1は、筐体2と、この筐体2の内部に収納されるフローチューブ3と、フローチューブ3に取り付けられる本発明のフローチューブ保持部材24とを備えて構成されている。また、コリオリ流量計1は、駆動装置4、一対の振動検出センサ5、5、及び温度センサ(図示せず)を有するセンサ部(図示せず)と、このセンサ部からの信号に基づいて質量流量等の演算処理を行う信号演算処理部(図示せず)と、駆動装置4を励振するための励振回路部(図示せず)とを備えて構成されている。コリオリ流量計1は、フローチューブ3に分割式のフローチューブ保持部材24を取り付けている点が特徴となっている。以下、図1ないし図5を参照しながら各構成部材について説明する。
【0019】
上記筐体2は、曲げやねじれに強固な構造を有している。筐体2は、フローチューブ3等の流量計要部を保護することができるように形成されている。このような筐体2の内部には、アルゴンガス等の不活性ガスが充填されている。不活性ガスの充填により、フローチューブ3等への結露が防止されるようになっている。
【0020】
上記フローチューブ3は、一本の測定用の流管を二重にループさせることにより形成されている。すなわち、フローチューブ3は、第一湾曲管部6とこれに連続する第二湾曲管部7とを有する図示のような形状に形成されている。フローチューブ3は、第一湾曲管部6及び第二湾曲管部7の他に、第一湾曲管部6に連続する流入管8と、第二湾曲管部7に連続する流出管9とを有している。
【0021】
フローチューブ3は、流入口(図示省略)及び流出口(図示省略)の部分が直接又は間接的に筐体2に対して固定されている。また、フローチューブ3は、この中間が固着状態となり(後述する固着状態部分17)、本発明のフローチューブ保持部材24によって保持されている。本発明のフローチューブ保持部材24は、筐体2に対して固定されている。
【0022】
フローチューブ3の第一湾曲管部6及び第二湾曲管部7は、それぞれ環状に形成され、また、略V字状に配置されている。ここで、第一湾曲管部6及び第二湾曲管部7の配置についてもう少し具体的に説明する。先ず、第一湾曲管部6により形成される面を第一チューブ形成面10とし、また、第二湾曲管部7により形成される面を第二チューブ形成面11とする。これら二つの第一、第二チューブ形成面10、11は、図1(b)に示すように角度θを持って配置される。二つの第一、第二チューブ形成面10、11が角度θを持って配置されるということは、この二つの第一、第二チューブ形成面10、11が略V字状に配置されることになる。従って、第一湾曲管部6及び第二湾曲管部7は、略V字状に配置されることになる(略V字状の配置に関しては図3も参照)。
【0023】
尚、上記角度θは鋭角であり、駆動装置4及び振動検出センサ5、5の形状により任意に決定されるものとする(駆動装置4及び振動検出センサ5、5を構成するそれぞれのコイル及びマグネット同士が、最小の保持部材を用いた状態で互いに近づくような角度θに設定されるものとする)。
【0024】
図1中の矢線Pを垂直方向、矢線Qを水平方向と定義すると、第一湾曲管部6及び第二湾曲管部7は、共に水平方向に長くのびる略矩形の形状に形成されている(一例であるものとする。垂直方向に長くのびる略矩形の形状や、略楕円形、略円形の形状も可能であるものとする)。第一湾曲管部6及び第二湾曲管部7は、これら二つに共通となる共通チューブ部分12を有している。共通チューブ部分12は、第一湾曲管部6と第二湾曲管部7との連続部分に相当する部分であって、真っ直ぐに形成されている。
【0025】
第一湾曲管部6及び第二湾曲管部7において、引用符号13、13は駆動側チューブ部分を示している。この駆動側チューブ部分13、13同士は、平行となるように形成されている。駆動側チューブ部分13、13は、真っ直ぐに形成されている。このような駆動側チューブ部分13、13の中央は、駆動装置4に対する取り付け位置となっている。
【0026】
各駆動側チューブ部分13の両端で垂直方向のチューブ部分14、14との連結部分は、振動検出センサ5、5に対する取り付け位置となっている。駆動装置4及び振動検出センサ5、5は、共通チューブ部分12の位置から同じ高さで取り付けられるように設定されている。
【0027】
図2において、引用符号15、15は固着側チューブ部分を示している。この固着側チューブ部分15、15は、共通チューブ部分12に対して平行且つ接触し合うように形成されている。固着側チューブ部分15、15は、共通チューブ部分12の両側に配置されている。このような固着側チューブ部分15、15は、共通チューブ部分12に対して溶接されている。引用符号16は溶接部分を示している。図4は共通チューブ部分12及び固着側チューブ部分15、15が一括して溶接され、3つのチューブが剛体化して結合されている状態を示しており、ここでは剛体化して結合されている部分として固着状態部分17が形成されている。図4は固着状態部分17を拡大して図示したものである。
【0028】
図2において、溶接部分16の範囲Hは、第一湾曲管部6及び第二湾曲管部7の水平方向の長さよりも短く設定されている。尚、溶接部分16の範囲Hは、ベンディングモードの振動(後述する)が生じ、この振動に伴う応力が共通チューブ部分12及び固着側チューブ部分15、15の捻りに変換されるような範囲であれば特に限定しないものとする。溶接部分16により、固着状態部分17が上記範囲Hにおいて形成されている。固着状態部分17には、本発明のフローチューブ保持部材24が取り付けられている(後述する)。
【0029】
第一湾曲管部6に連続する流入管8は、フローチューブ3の流入口(図示省略)を一端に有している。また、流入管8は、固着側チューブ部分15に連続する部分を他端に有している。流入管8は、固着側チューブ部分15に連続する部分が屈曲するように形成されている。また、その他の部分は真っ直ぐに形成されている。
【0030】
第二湾曲管部7に連続する流出管9は、フローチューブ3の流出口(図示省略)を一端に有している。また、流出管9は、固着側チューブ部分15に連続する部分を他端に有している。流出管9は、固着側チューブ部分15に連続する部分が屈曲(共通チューブ部分12及び他の固着側チューブ部分15の下側を跨ぐような格好で屈曲)するように形成されている。また、その他の部分は真っ直ぐに形成されている。
【0031】
流入管8及び流出管9の上記真っ直ぐに形成した部分は、同軸となるように配置されている。ここでは、流入管8及び流出管9を結ぶ軸が固着状態部分17の軸(例えば共通チューブ部分12の中心軸)に対して略平行となるように配置されている(一例であるものとする)。
【0032】
フローチューブ3の材質は、ステンレス、ハステロイ、チタン合金等のこの技術分野において通常のものが用いられている。
【0033】
本発明のフローチューブ保持部材24は、十分に質量のある金属部材(剛体)であって、固着状態部分17の着脱を自在とする分割式に形成されている。すなわち、フローチューブ保持部材24は、例えば図中に示すような上部側ブロック状部材25及び下部側ブロック状部材26からなる二つの部材と、上部側ブロック状部材25及び下部側ブロック状部材26を固定する例えばネジ27等の複数の留め具とを備えて構成されている。フローチューブ保持部材24の材質は、ステンレス等のものが用いられている。
【0034】
上部側ブロック状部材25及び下部側ブロック状部材26の各対向面には、三つの真っ直ぐな溝28が形成されている。溝28は、固着状態部分17の形状に合わせて形成されている。固着状態部分17は、溝28を介して挟み込まれ、そして保持されるようになっている。下部側ブロック状部材26には、筐体2に対して適宜手段で固定される固定部29が形成されている(下部側ブロック状部材26と筐体2とを別体にした場合である。尚、下部側ブロック状部材26を筐体2に対し一体形成しても良いものとする)。
【0035】
上記センサ部を構成する上記駆動装置4は、フローチューブ3の第一湾曲管部6及び第二湾曲管部7を対向振動させるためのものであって、コイル18とマグネット19とを備えて構成されている。このような駆動装置4は、フローチューブ3の駆動側チューブ部分13、13の中央に、且つこれらによって挟まれるような状態で取り付けられている。駆動装置4は、最小の保持部材(符号省略)を用いた状態でコイル18及びマグネット19が互いに近づくように取り付けられている。
【0036】
駆動装置4の作用について説明する。駆動装置4において吸引作用が生じると、マグネット19がコイル18に対して差し込まれるような状態になり、この結果、フローチューブ3の駆動側チューブ部分13、13同士が近接するようになる。これに対し、反発作用が生じると、駆動側チューブ部分13、13同士が離間するようになる。駆動装置4は、フローチューブ3が固着状態部分17を有することから、この固着状態部分17を中心にして回転方向に交番駆動させることができるように構成されている。
【0037】
上記センサ部を構成する上記振動検出センサ5、5は、フローチューブ3の振動を検出するとともに、フローチューブ3に作用するコリオリの力に比例した位相差を検出するためのセンサであって、それぞれコイル20とマグネット21とを備えて構成されている(これに限らず、加速度センサ、光学的手段、静電容量式、歪み式(ピエゾ式)等の変位、速度、加速度のいずれかを検出する手段であればよいものとする)。
【0038】
このような構成の振動検出センサ5、5は、フローチューブ3の各駆動側チューブ部分13の両端で垂直方向のチューブ部分14、14との連結部分(一例であるものとする。コリオリの力に比例した位相差を検出することが可能な位置であれば他でも良いものとする)に取り付けられている。振動検出センサ5、5は、最小の保持部材(符号省略)を用いた状態でコイル20及びマグネット21が互いに近づくように取り付けられている。
【0039】
コリオリ流量計1の内部には、特に図示しないが、基板等が設けられている。この基板には、筐体2の外部に引き出されるワイヤハーネスや、駆動装置4及び振動検出センサ5、5からの例えば電線が接続されている。
【0040】
上記センサ部の一部を構成する温度センサは、コリオリ流量計1の温度補償をするためのセンサであって、適宜手段でフローチューブ3に取り付けられている。具体的な配置としては、例えば流入管8が好適であるものとする。温度センサから引き出される図示しない電線は、上記基板に接続されている。
【0041】
上記信号演算処理部には、一方の振動検出センサ5からの、フローチューブ3の変形に関する検出信号、他方の振動検出センサ5からの、フローチューブ3の変形に関する検出信号、及び温度センサからの、フローチューブ3の温度に関する検出信号がそれぞれ入力されるように配線及び接続がなされている。このような信号演算処理部では、センサ部より入力された各検出信号に基づいて質量流量及び密度の演算がなされるように構成されている。また、信号演算処理部では、演算により得られた質量流量、密度が図示しない表示器に対して出力されるように構成されている。
【0042】
上記励振回路部は、平滑部と比較部と目標設定部と可変増幅部と駆動出力部とを備えて構成されている。平滑部は、一方の振動検出センサ5(又は他方の振動検出センサ5)からの検出信号を取り出すように配線され、入力された検出信号を整流し平滑するとともに、その振幅に比例した直流電圧を出力することができるような機能を有している。比較部は、平滑部からの直流電圧と目標設定部から出力される目標設定電圧とを比較するとともに、可変増幅部の利得を制御して共振振動の振幅を目標設定電圧に制御することができるような機能を有している。
【0043】
上記構成において、本発明のフローチューブ保持部材24を取り付けたフローチューブ3に被計測流体を流すとともに、駆動装置4を駆動させてフローチューブ3の第一湾曲管部6及び第二湾曲管部7を対向振動させると、振動検出センサ5、5の点でのコリオリの力によって生じる位相の差分により、質量流量が上記信号演算処理部で算出される。また、振動周波数から密度も算出される。
【0044】
フローチューブ3は、第一湾曲管部6及び第二湾曲管部7が略V字状に配置され、また、固着状態部分17を有することから、この固着状態部分17を軸の中心としてベンディングモードの振動が生じる。駆動手段4の駆動によりフローチューブ3にベンディングモードの振動が生じると、この振動に伴う応力は上記軸方向の捻りに変換される。互いに発生するノイズ成分の振動はキャンセルされる。
【0045】
本発明のコリオリ流量計1によれば、フローチューブ3の第一湾曲管部6及び第二湾曲管部7を略V字状に配置するとともに、固着状態となる固着状態部分17を有するものであることから、図6(a)に示すように振動軌跡22のクロス(後述する)の大きさを小さくするとともに、変化も少なくすることができる。また、共通チューブ部分12、固着側チューブ部分15、15を一体化していることから、ベンディングされた抗力が一轄され、S/N比の高い位相差信号を得ることができる(理由:従来では、図6(b)に示すようにフローチューブ3の第一湾曲管部及び第二湾曲管部を非V字状に配置するとともに、基端を離れた位置に固着するものであることから、図6(b)に示す2つの振動面が互いに独立して振動することになる。従って、2つの振動面の振動軌跡23、23は、第一湾曲管部及び第二湾曲管部の内側かつこれらの中央位置付近でクロスすることになる。従来の振動状態では、流体の挙動で振動軌跡23、23のクロスや変化が大きくなり、測定結果に影響を来すことになる)。
【0046】
以上、図1ないし図6を参照しながら説明してきたように、本発明のフローチューブ保持部材24を固着状態部分17に取り付けると、この取り付けたフローチューブ保持部材24の存在によって恰も固着状態部分17の質量が増大したようになる。従って、上記ベンディングモードの振動が安定するという利点を有する。また、本発明のフローチューブ保持部材24は着脱式であることから、メンテナンス性の良いコリオリ流量計1になるという利点を有する。尚、コリオリ流量計1は、駆動手段4や振動検出センサ5、5の存在する部分の自重が小さくなることから、従来よりもS/N比が格段に向上するという利点を有する。
【0047】
次に、図7を参照しながらフローチューブ3の他の例を説明する。図7は流入口及び流出口を結ぶ軸と固着状態となる部分の軸とを略一致状態に配置した例を示す斜視図である。
【0048】
上述の例(図1ないし図5の例)では、流入管8及び流出管9を結ぶ軸が固着状態部分17の軸に対して略平行となるように配置されていたが、本発明では図7に示すような状態に配置しても良いものとする。すなわち、流入管8及び流出管9を結ぶ軸と、固着状態部分17の軸とを略一致状態に配置するようなものを用いても良いものとする。図7からも分かるように、固着側チューブ部分15に連続する部分の屈曲状態が上述の例よりも緩やかになるという利点を有する。
【0049】
図7では固着状態部分17の変更がないことから、本発明のフローチューブ保持部材24が当然に取り付くものとする。
【0050】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のフローチューブ保持部材の一実施の形態を示すコリオリ流量計の図であり、(a)はフローチューブ保持部材を取り付けたフローチューブの斜視図、(b)は二つのチューブ形成面を模式的に示した図である。
【図2】フローチューブの斜視図である。
【図3】図1のA視方向の図である。
【図4】固着状態となる部分の斜視図(断面を含む)である。
【図5】フローチューブ保持部材の分解斜視図である。
【図6】(a)は二つのチューブ形成面の振動軌跡の変化を示す模式図、(b)は比較例の振動軌跡の変化を示す模式図である。
【図7】流入口及び流出口を結ぶ軸と固着状態となる部分の軸とを略一致状態に配置した例を示す斜視図である。
【図8】従来例のコリオリ流量計のフローチューブを示す斜視図である。
【図9】図8のフローチューブの平面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 コリオリ流量計
2 筐体
3 フローチューブ
4 駆動装置
5 振動検出センサ
6 第一湾曲管部
7 第二湾曲管部
8 流入管
9 流出管
10 第一チューブ形成面
11 第二チューブ形成面
12 共通チューブ部分
13 駆動側チューブ部分
14 垂直方向のチューブ部分
15 固着側チューブ部分
16 溶接部分
17 固着状態部分
18、20 コイル
19、21 マグネット
22、23 振動軌跡
24 フローチューブ保持部材
25 上部側ブロック状部材
26 下部側ブロック状部材
27 ネジ(留め具)
28 溝
29 固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コリオリ流量計におけるフローチューブのチューブ集合部分を固着することにより形成した固着状態部分を着脱自在に挟み込む分割式の剛体からなる
ことを特徴とするフローチューブ保持部材。
【請求項2】
請求項1に記載のフローチューブ保持部材において、
前記固着状態部分に対応する溝を形成した一対のブロック状部材と、該一対のブロック状部材同士を固定する留め具とを備えて構成するとともに、前記一対のブロック状部材の一方に前記コリオリ流量計における筐体に対しての固定部を形成する
ことを特徴とするフローチューブ保持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−349633(P2006−349633A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179663(P2005−179663)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)
【Fターム(参考)】