説明

フード

【課題】本発明は、着用者が前方を見ることができるように前方に開口部を有するフードであり、且つ、着用者の頭部を覆って風雨が頭部にあたったり、頭部が濡れるのを防止でき、頭部を保温することができるフードであって、フードが垂れ下がって前方が見にくくなることがないフードを提供する。
【解決手段】着用者の頭部を覆い、該着用者の少なくとも目を露出させる顔面開口部を備えたフード本体の頭頂部後方付近から顔面開口部付近まで、180度又は90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下である形状保持性を有する延伸ポリオレフィン系樹脂シートが積層されていることを特徴とするフード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防風、防水、保温等の目的で頭部を覆うフードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フードは風が頭部にあたるのを防止したり、雨が頭部にあたったり、頭部が濡れるのを防止したり、頭部を保温するために使用されており、一般に布や合成樹脂シートで、着用者の頭部を覆い、且つ、着用者が前方を見ることができるように前方に開口部を有するように形成されている。
【0003】
フードは広く使用されているので、より好適に使用できるように種々の改良がなされている。例えば、フードを着用すると耳をフードで覆うので耳が聞こえにくくなるので、「防水材料から構成される防水通音フードであって、前記防水材料の着用者の耳に面する部分の少なくとも一方に防水通音手段を備え、前記防水通音手段が、音響透過損失が5db以下の防水通音膜を有することを特徴とする防水通音フード。」(例えば、特許文献1参照。)が提案され、フードを着用した後に眼鏡を容易装着するために、「着用者の頭部を覆い、該着用者の少なくとも目を露出させる顔面開口部を備えたフード本体と、前記フード本体の前記顔面開口部の左右両側に形成され、前記フード本体の表面側から裏面側に通じる挿通部と、第1開口部と第2開口部を有する筒形状をなし、前記フード本体の裏面側に配置され、且つ、前記第1開口部が前記挿通部に接続され、該挿通部より挿入される眼鏡のつるを前記フード本体の裏面側に導く筒状体と、を有し、前記第2開口部の開口面積を、前記第1開口部の開口面積以上としたことを特徴とするフード。」(例えば、特許文献2参照。)等が提案されている。更に、風雨をより容易且つ確実に防止するために、「防水フード部と、該防水フード部に連続する防水コート部とを含むレインポンチョであり、前記防水フード部は、周縁部が縁取り枠で縁取られた防水顔面カバーを備えており、該縁取り枠は、少なくとも前記防水顔面カバーの下縁部を縁取る部分が屈曲変形可能な形状保持芯材を含んでいることを特徴とするレインポンチョ。」(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。
【0004】
上記フードはそれぞれの目的には適したものではあるが、フード本体は柔軟な布や合成樹脂シートで製造されているので、フード本体が垂れ下がって顔面を覆ってしまい前方が見にくくなるという欠点があった。上記レインポンチョの場合は屈曲変形可能な形状保持芯材を含んでいる周縁部が縁取り枠で縁取られた防水顔面カバーを備えているのでフード本体の垂れ下がりは有る程度抑えることが可能であるが、着用者の吐く息により防水顔面カバーが曇ってしまい前方が見にくくなるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−070874号公報
【特許文献2】特開2011−074511号公報
【特許文献3】特開2011−127263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、着用者が前方を見ることができるように前方に開口部を有するフードであり、且つ、着用者の頭部を覆って風雨が頭部にあたったり、頭部が濡れるのを防止でき、頭部を保温することができるフードであって、フードが垂れ下がって前方が見にくくなることがないフードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、
[1]着用者の頭部を覆い、該着用者の少なくとも目を露出させる顔面開口部を備えたフード本体の頭頂部後方付近から顔面開口部付近まで、180度又は90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下である形状保持性を有する延伸ポリオレフィン系樹脂シートが積層されていることを特徴とするフード、及び、
[2]着用者の頭部を覆い、該着用者の少なくとも目を露出させる顔面開口部を備えたフード本体の顔面開口部付近に顔面開口部に沿って、180度又は90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下である形状保持性を有する延伸ポリオレフィン系樹脂シートが積層されていることを特徴とするフード、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフードの構成は上述の通りであり、容易に着用でき、着用者は前方を見ることができ、且つ、着用者の頭部を覆って風雨が頭部にあたったり、頭部が濡れるのを防止でき、頭部を保温することができ、更に、フードが垂れ下がって前方が見にくくなることがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のフードの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明のフードの一例を示す断面図である。
【図3】本発明のフードの異なる例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
請求項1記載のフードは、着用者の頭部を覆い、該着用者の少なくとも目を露出させる顔面開口部を備えたフード本体の頭頂部後方付近から顔面開口部付近まで、180度又は90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下である形状保持性を有する延伸ポリオレフィン系樹脂シートが積層されていることを特徴とする。
【0011】
次に図面を参照して説明する。図1は本発明のフードの一例を示す斜視図である。図中1はフード本体であり、フード本体1は、着用者の頭部(頭頂部、側頭部及び後頭部)を覆い、該着用者の少なくとも目を露出させる顔面開口部2を備えたものである。図中3は、フード本体を着用者の首に固定するための紐を通すための貫通孔である。貫通孔3は、フード本体1の下端部を折りたたんで形成されており、フード本体1の下端部に右端部から左端部まで連通するように形成されている。尚、フード本体1は頬や頚部も覆うように形成されていてもよい。又、上着やレインコート等と直接接続されていてもよいし、ボタンやチャックにより上着やレインコート等と接続可能になされていてもよい。
【0012】
上記フード本体を構成する材料は、一般に衣服やレインコート等に使用されている材料であれば特に限定されず、例えば、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、ポリアクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の合成繊維及びこれらの繊維をゴムや合成樹脂で被覆した防水繊維から製造された織布や不織布並びにゴムシート、ポリエチレン樹脂シート、ポリプロピレン樹脂シート、ポリアミド樹脂シート等が挙げられる。
【0013】
上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートは、180度又は90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下である形状保持材料である。尚、折曲げ戻り角度θとは、180度又は90度に折曲げた延伸ポリオレフィン系樹脂シートが開放後5分経過した時に広がった角度であり、180度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下であるというのは、解放後5分経過した時の延伸ポリオレフィン系樹脂シートの折曲げ角度が20度以下であることを意味し、90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下であるというのは、解放後5分経過した時の延伸ポリオレフィン系樹脂シートの折曲げ角度が110度以下であることを意味する。
【0014】
上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートは形状保持性を有しているが、形状保持性は、延伸ポリオレフィン系樹脂シートを延伸方向と直角方向に180度又は90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下であり、好ましくは180度折曲げ戻り角度θが20度以下で且つ90度折曲げ戻り角度θが20度未満、更に好ましくは180度折曲げ戻り角度θが20度以下で且つ90度折曲げ戻り角度θが15度以下である。180度及び90度折曲げ時の折曲げ戻り角度θのいずれか一方、特に90度折曲げ戻り角度θが20度を越えると、充分な形状保持性が得られないことがある。
【0015】
上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートを構成するポリオレフィン系樹脂としては、フィルム形成能を有する任意のオレフィン系樹脂が使用でき、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ペンテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン―塩化ビニル共重合体、エチレン―プロピレン―ブテン共重合体等が挙げられ、高密度ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂が好適に使用される。
【0016】
上記ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、重量平均分子量が10万未満の場合には、脆くなり、延伸性が低下したり、十分な機械的強度又は耐クリープ性を有する延伸ポリオレフィン系樹脂シートを得ることができにくくなり、逆に、50万を超えると、溶融粘度が高くなり、熱溶融成形加工性が低下し、均一なシートが得られにくくなるので10万〜50万が好ましい。尚、本発明において、重量平均分子量はゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値である。
【0017】
又、上記ポリオレフィン系樹脂のメルトインデックス(以下、MI)はフィルム成形性が優れている0.1〜20(g/10分)が好ましく、より好ましくは0.2〜10(g/10分)である。尚、MIとは、JIS K 7210に規定されている熱可塑性樹脂の溶融粘度を表す指標である。更に、高密度ポリエチレン樹脂の場合は、密度は小さくなると延伸しても機械的強度が向上しなくなるので、0.94g/cm以上が好ましい。
【0018】
上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートとしては、重量平均分子量が10万〜50万のポリオレフィン系樹脂シートが延伸倍率5倍以上に一軸延伸された形状保持性を有する延伸ポリオレフィン系樹脂シートが好ましい。
【0019】
この場合は、ポリオレフィン系樹脂としては極限粘度[η]3.5dl/g未満の高密度ポリエチレン樹脂が好ましく、ガラス繊維、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカアルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、珪酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭素繊維、カーボンブラック等の無機機充填材を添加するのが好ましい。
【0020】
延伸前のポリオレフィン系樹脂シートの厚みは特に限定されるものではないが、厚過ぎると、延伸が困難になるし、逆に、薄過ぎると、延伸後のポリオレフィン系樹脂シートの厚みが薄くなり過ぎ、形状保持性が低下するので、0.2〜5.0mmが望ましい。
【0021】
上記延伸された延伸ポリオレフィン系樹脂シートは、延伸倍率は5倍以上であって、形状保持性を有していればよいが、10〜40倍が好ましい。又、延伸方法は、従来公知の任意の方法が採用されればよく、例えば、ロール一軸延伸法、ゾーン一軸延伸法等の一軸延伸法により、ヒータや熱風により加熱しながら延伸する方法が挙げられる。
【0022】
一軸延伸する際に10〜40倍と高度に延伸する場合は、一軸延伸を複数回繰り返す多段一軸延伸する方法が好ましい。多段一軸延伸を行う場合の延伸回数は2〜20回が好ましく、より好ましくは3〜15回、更に好ましくは4〜10回である。又、ロール一軸延伸法により多段延伸を行う場合には、繰出ピンチロール、引取ピンチロール及びこれらのロール間に一定速度で回転する少なくとも1つの、好ましくは複数の接触ロールを設置することが望ましい。このような接触ロールを設置することにより、均一延伸性が高められ、安定な延伸成形を行うことができる。
【0023】
上記接触ロールは、ピンチされることなく、ポリオレフィン系樹脂シートに摩擦力を与えることにより一軸延伸を行う。又、接触ロールは繰出ロール及び/又は引取ロールに対し、ギア、チェーン、プーリー、ベルト若しくはこれらの組み合わせからなる連結部材により連結されていてもよい。
【0024】
一軸延伸温度は、低くなると均一に延伸できず、高くなるとシートが溶融切断するので、延伸するポリオレフィン系樹脂シートのポリオレフィン系樹脂の「融点−60℃」〜融点の範囲が好ましく、より好ましくは、ポリオレフィン系樹脂の「融点−50℃」〜「融点−5℃」である。
【0025】
上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートの寸法安定性を向上させるために、延伸ポリオレフィン系樹脂シートはポリオレフィン系樹脂の「融点−60℃」〜融点の温度でアニールしてもよい。アニール温度は、低くなると寸法安定性が向上せず、長時間使用するとそりが発生し、高くなるとポリオレフィン系樹脂が溶解して配向が消滅し引張弾性率、引張強度等が低下するので、ポリオレフィン系樹脂の「融点−60℃」〜融点の温度でアニールするのが好ましい。
【0026】
アニールとは生産ライン中で熱処理を行うことであり、アニールする際に、延伸ポリオレフィン系樹脂シートに大きな張力がかかっていると延伸され、張力がかかっていないか、非常に小さい状態では収縮するので、延伸ポリオレフィン系樹脂シートの延伸方向の長さが実質的に変化しないようにした状態で行うことが好ましく、延伸ポリオレフィン系樹脂シートに圧力もかかっていないのが好ましい。即ち、アニールされた延伸ポリオレフィン系樹脂シートの長さが、アニール前の延伸ポリオレフィン系樹脂シートの長さの1.0以下になるようにアニールするのが好ましい。
【0027】
従って、延伸ポリオレフィン系樹脂シートをピンチロール等のロールで加熱室内を移動しながら連続的にアニールする場合は、入口側と出口側のポリオレフィン系樹脂シートの送り速度比を1.0以下になるように設定してアニールするのが好ましい。
【0028】
アニールする際の加熱方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱風、ヒータ、加熱板、温水等で加熱する方法があげられる。アニールする時間は、特に限定されず、延伸されたポリオレフィン系樹脂シートの厚さやアニール温度により異なるが、一般に10秒以上が好ましく、より好ましくは30秒〜60分であり、更に好ましくは1〜20分である。
【0029】
又、異なる好ましい延伸ポリオレフィン系樹脂シートとして、重量平均分子量が10万〜50万のポリオレフィン系樹脂シートが圧延倍率5倍以上に圧延された後、総延伸倍率が10〜40倍に一軸延伸された延伸ポリオレフィン系樹脂シートが挙げられる。
【0030】
上記圧延前のポリオレフィン系樹脂シートの厚みは特に限定されるものではないが、厚過ぎると、延伸が困難になるし、圧延工程において、ポリオレフィン系樹脂シートを圧延ロールで押しつぶすのに大きな加圧力や引取力が必要となり、圧延ロールの撓みなどにより幅方向に均一な圧延が困難となることがある、逆に、薄過ぎると、圧延後のポリオレフィン系樹脂シートの厚みが薄くなり過ぎ、均一な圧延が困難となるだけでなく、圧延ロール同士が接触して圧延ロールの寿命が短くなることがあるので、0.2〜5.0mmが望ましい。
【0031】
上記ポリオレフィン系樹脂シートは、先ず、最初に圧延倍率5倍以上に圧延されるが、圧延温度は、低くなると均一に圧延できず、高くなると溶融切断するので、圧延する際のロール温度は、圧延するポリオレフィン系樹脂シートのオレフィン系樹脂の「融点−40℃」〜融点の範囲が好ましく、より好ましくは、オレフィン系樹脂の「融点−30℃」〜「融点−5℃」である。尚、本発明において、融点とは示差走査型熱量測定機(DSC)で熱分析を行った際に認められる、結晶の融解に伴う吸熱ピークの最大点をいう。
【0032】
圧延ロールによりポリオレフィン系樹脂シートに負荷される加圧力(線圧)が小さ過ぎると所定の圧延倍率を得ることが出来なくなることがあり、逆に大き過ぎると圧延ロールの撓みが生じるだけでなく、圧延ロールと原反シートとの間ですべりが生じ易くなり、均一な圧延が困難となることがあるので加圧力は、100MPa〜3000MPaが好ましく、より好ましくは、300MPa〜1000MPaである。
【0033】
上記圧延倍率は、圧延倍率が5倍未満の場合には、後で行われる一軸延伸時のネッキングを抑制する効果が得られなかったり、高倍率一軸延伸を行うことができなかったり、一軸延伸工程に負担がかかることになるので、5倍以上であり、好ましくは7倍以上である。圧延倍率に特に上限はないが、圧延倍率が高いほど圧延設備に負荷がかかるので10倍以下が好ましい。尚、圧延倍率は(ポリオレフィン系樹脂シートの断面積)/(圧延後ポリオレフィン系樹脂シートの断面積)で定義されるが、圧延の前後においてポリオレフィン系樹脂シートの幅は殆ど変化しないので、(ポリオレフィン系樹脂シートの厚み)/(圧延後のポリオレフィン系樹脂シートの厚み)であってもよい。
【0034】
圧延されたポリオレフィン系樹脂シートは、次に、総延伸倍率が10〜40倍に一軸延伸される。一軸延伸方法は、特に限定されず、前述の一軸延伸方法が採用されればよい。又、一軸延伸倍率は、総延伸倍率が10〜40倍であるから、圧延倍率を考慮し、総延伸倍率がこの範囲にはいるように決定すればよいが、一軸延伸が少ないと機械的強度が向上しないので、1.3倍以上が好ましく、より好ましくは1.5倍以上であり、更に好ましくは1.8倍以上である。又、上限は特に限定されるものではないが、4倍以下が好ましく、より好ましくは3.5倍以下である。尚、総延伸倍率は圧延倍率と一軸延伸倍率を乗じた数値である。
【0035】
又、更に異なる好ましい延伸ポリオレフィン系樹脂シートとして、重量平均分子量が10万〜50万のポリオレフィン系樹脂シートが圧延倍率5倍以上に圧延された延伸ポリオレフィン系樹脂シートが挙げられる。即ち、圧延のみで一軸延伸をしなくても、180度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下である形状保持性を有する延伸ポリオレフィン系樹脂シートも好適に使用できる。
【0036】
上記圧延前のポリオレフィン系樹脂シートの厚みは特に限定されるものではないが、厚過ぎると、圧延工程において、ポリオレフィン系樹脂シートを圧延ロールで押しつぶすのに大きな加圧力や引取力が必要となり、圧延ロールの撓みなどにより幅方向に均一な圧延が困難となることがあり、逆に、薄過ぎると、圧延後のポリオレフィン系樹脂シートの厚みが薄くなり過ぎ、均一な圧延が困難となるだけでなく、圧延ロール同士が接触して圧延ロールの寿命が短くなることがあるので、0.2〜5.0mmが望ましい。
【0037】
上記圧延工程を含む延伸方法で延伸された延伸ポリオレフィン系樹脂シートも寸法安定性を向上させるために、延伸ポリオレフィン系樹脂シートはポリオレフィン系樹脂の「融点−60℃」〜融点であって、圧延温度以下の温度でアニールしてもよい。
【0038】
アニール温度は、低くなると寸法安定性が向上せず、長時間使用するとそりが発生し、高くなるとポリオレフィン系樹脂が溶解して配向が消滅し引張弾性率、引張強度等が低下するので、ポリオレフィン系樹脂の「融点−60℃」〜融点であって、圧延温度以下の温度でアニールするのが好ましい。その他のアニール方法は前述の通りである。
【0039】
アニールした延伸ポリオレフィン系樹脂シートを、更に、40℃〜ポリオレフィン系樹脂の融点の温度範囲でエージングしてもよい。エージングすることによりアニールされたポリオレフィン系樹脂シートの寸法安定性はより優れたものとなる。
【0040】
エージングとは、生産ライン中連続で処理するものではなく、延伸ポリオレフィン系樹脂シートをカット巻回等の一度加工した、枚葉物、巻物等の熱処理を、比較的長い時間(分、時間単位)じっくり寝かせて熱処理することを意味する。エージング温度は、低くなると常温で放置するのと同様になり、高くなると熱変形するので40℃〜ポリオレフィン系樹脂の融点の温度範囲であり、エージング時間は短時間では効果がなく、長時間しすぎても効果が増大することはないので12時間〜7日が好ましい。
【0041】
延伸ポリオレフィン系樹脂シートの厚みは特に限定されるものではないが、薄くなると形状保持性が低下し、厚くなるとフードとしては使用しにくくなるので0.04〜2mmが好ましく、より好ましくは0.05〜1mmである。
【0042】
上記ポリオレフィン系樹脂シートに、必要に応じて、熱安定剤、耐熱向上剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、衝撃改良剤、防曇剤、難燃剤、着色剤等が添加されてもよい。
【0043】
又、延伸ポリオレフィン系樹脂シートは上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートを2枚以上積層した積層延伸ポリオレフィン系樹脂シートでもよい。積層されている各延伸ポリオレフィン系樹脂シートの延伸方向は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
延伸方向が異なる延伸ポリオレフィン系樹脂シートが複数層積層された積層延伸ポリオレフィン系樹脂シートとしては、例えば、延伸方向が直交するように2枚の延伸ポリオレフィン系樹脂シートが積層された積層延伸ポリオレフィン系樹脂シート、延伸方向を60度ずつずらして3枚の延伸ポリオレフィン系樹脂シートが積層された積層延伸ポリオレフィン系樹脂シート、延伸方向を45度ずつずらして4枚の延伸ポリオレフィン系樹脂シートが積層された積層延伸ポリオレフィン系樹脂シート等があげられる。
【0045】
上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートは延伸方向と直交する方向に屈曲すると形状保持性を有しており、延伸方向が異なる2枚以上の延伸ポリオレフィン系樹脂シートが接着されていると2枚以上の延伸ポリオレフィン系樹脂シートの延伸方向により任意の方向への形状保持性が向上し、延伸ポリオレフィン系樹脂シートの延伸方向と屈曲方向が同一であっても延伸ポリオレフィン系樹脂シートが割れにくくなる。
【0046】
延伸ポリオレフィン系樹脂シートを積層する方法は、従来公知の任意の方法が採用されればよく、例えば、第2のポリオレフィン系樹脂シートを延伸ポリオレフィン系樹脂シートの間に供給して加熱接着する方法、延伸ポリオレフィン系樹脂シートの間に第2のポリオレフィン系樹脂を溶融押出して接着積層する方法等があげられる。
【0047】
上記第2のポリオレフィン系樹脂としては、延伸ポリオレフィン系樹脂シートを接着するのであるから、前述の延伸ポリオレフィン系樹脂シートを構成するポリオレフィン系樹脂と同一種類のものが好ましいが、延伸ポリオレフィン系樹脂シートを熱融着する際に接着剤として作用するのであるから、延伸ポリオレフィン系樹脂シートを構成するポリオレフィン系樹脂の溶融温度より低い溶融温度のポリオレフィン系樹脂が好ましく、線状低密度ポリエチレン樹脂が好ましい。
【0048】
第2のポリオレフィン系樹脂(シート)の厚さは特に限定されるものではないが、薄くなりすぎると接着しにくくなり、厚すぎると延伸ポリオレフィン系樹脂シートの形状保持性が低下するので、一般に2〜80μmであり、好ましくは5〜20μmである。
【0049】
尚、上記積層延伸ポリオレフィン系樹脂シートにおいても、積層された延伸ポリオレフィン系樹脂シートのうちの少なくとも一層の延伸ポリオレフィン系樹脂シートの延伸方向と直角となるように180度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下である形状保持性を有する。
【0050】
積層する延伸ポリオレフィン系樹脂シートの厚みは特に限定されるものではないが、薄くなると形状保持性が低下するので0.02〜0.5mmが好ましい。積層延伸ポリオレフィン系樹脂シートは上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートを積層するので、厚いシートも製造可能であるが、厚すぎると曲げにくくなり、形状保持性も低下し、フードとして使用しにくくなるので0.04〜2mmが好ましく、より好ましくは0.05〜1mmである。
【0051】
上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートは、フード本体の頭頂部後方付近から顔面開口部付近まで積層されている。延伸ポリオレフィン系樹脂シートの幅や本数は、特に限定されず、例えば、多数(5〜20本程度)の幅が1〜3mm程度の細い長尺体を略平行に積層してもよいし、1〜4本の幅が4〜10mm程度の幅広の長尺体を略平行に積層してもよい。
【0052】
更に、上記長尺体を織って網状に成形し、少なくとも1本の延伸ポリオレフィン系樹脂シートが、フード本体の頭頂部後方付近から顔面開口部付近まで達するように積層してもよい。又、上記延伸ポリオレフィン系樹脂シートをフード本体の頭頂部後方付近から顔面開口部付近までだけでなく、フード本体の後頭部付近から顔面開口部付近までにも積層してもよく、こうすることにより、フード本体の形状保持性はより向上し、使用時に垂れ下がりにくくなる。
【0053】
積層する方法は、特に限定されず、例えば、両面粘着テープで接着する方法、粘着剤で接着する方法、ホットメルト接着剤、イソシネート系瞬間接着剤、反応性接着剤等の接着剤で接着する方法、熱融着する方法、縫合する方法、フード本体を2層以上のシートで作成しシートの間に挿入する方法等が挙げられる。
【0054】
請求項2記載のフードは、着用者の頭部を覆い、該着用者の少なくとも目を露出させる顔面開口部を備えたフード本体の顔面開口部付近に顔面開口部に沿って、180度又は90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下である形状保持性を有する延伸ポリオレフィン系樹脂シートが積層されていることを特徴とする。
【0055】
上記フードにおいては、フード本体の顔面開口部付近に顔面開口部に沿って、形状保持性を有する延伸ポリオレフィン系樹脂シートが積層されている以外は請求項1記載のフードと同一である。
【0056】
延伸ポリオレフィン系樹脂シートは、フード本体の顔面開口部付近に顔面開口部に沿って積層されているが、顔面開口部の右端部から左端部まで50%以上積層されているのが好ましく、全体に積層されているのがより好ましい。尚、全体に積層されない場合は左右対称に積層されるのが好ましい。
【実施例】
【0057】
次に、本発明の実施例を、図面を参照して説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
図2は実施例1のフードを示す断面図である。図中1は着用者の頭部を覆い、該着用者の少なくとも目を露出させる顔面開口部2を備えたフード本体であり、頭頂部はポリエステル繊維の織布からなる外層11と内層12が積層され、外層11と内層12の間に頭頂部後部付近から顔面開口部付近まで延伸ポリオレフィン系樹脂シート4が1本積層されている。フード本体1の他の部分はポリエステル繊維の織布から形成されている。延伸ポリエチレン樹脂シート4は幅10mm、厚さ0.8mm、長さ150mmであり、延伸方向は長さ方向であった。
【0059】
上記フードを頭に被り、延伸ポリオレフィン系樹脂シート4を頭頂部に沿うように手で変形し、貫通孔3に挿通されている紐(図示せず。)でフードを頭に固定した後、自転車で、速度約15km/hrで約30分走行したが、フードが垂れたりずり落ちて前方が見えなくなることは無かった。
【0060】
尚、延伸ポリオレフィン系樹脂シートの製造方法は以下のとおりである。
重量平均分子量(Mw)33万、融点135℃の高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製)を、同方向二軸混練押出機(プラスチック工学研究所製)に供給して樹脂温度200℃で溶融混練した後、溶融混練物をロール温度110℃に制御したカレンダー成形機にて、幅350mm、厚さ11.3mmにシート成形してポリエチレン樹脂シートを得た。
【0061】
得られたポリエチレン樹脂シートを125℃に加熱した圧延成形機(積水工機製作所製)を用いて圧延倍率10.3倍に圧延し、幅350mm、厚さ1.10mmの圧延ポリエチレン樹脂シートを得た。得られた圧延ポリエチレン樹脂シートを110℃に加熱された熱風加熱式の多段延伸装置(協和エンジニアリング製)にて1.72倍の多段延伸を行い、総延伸倍率18倍、幅280mm、厚さ0.8mmの延伸ポリエチレン樹脂シートを得た。
【0062】
得られた延伸ポリエチレン樹脂シートをピンチロールが設置され、125℃に設定されているライン長19.25mの熱風加熱槽に、入口速度2.75m/minで供給し、出口速度2.75m/minに設定して7分間1次アニールを行い、続いて同様にして2次アニールを行って、アニールされた延伸ポリエチレン樹脂シートを得、その後60℃の恒温槽に供給し、24時間エージングして、エージングされた延伸ポリエチレン樹脂シートを得た。
【0063】
得られた延伸ポリエチレン樹脂シートを幅10mm、長さ150mmに切断し、延伸ポリエチレン樹脂シートの延伸方向と直交するように180度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過時の折曲げ戻り角度θを測定したところ、それぞれ4度〜7度であった。
【0064】
(実施例2)
図3は実施例2のフードを示す断面図である。図中1は着用者の頭部を覆い、該着用者の少なくとも目を露出させる顔面開口部2を備えた、ポリエステル繊維の織布から形成されているフード本体であり、フード本体1の顔面開口部2付近に顔面開口部2に沿って右下端部から左下端部まで1本の積層延伸ポリオレフィン系樹脂シート5が1本アクリル系粘着剤によって積層されている。フード本体1はポリエステル繊維の織布から形成されている。積層延伸ポリエチレン樹脂シート5は幅10mm、厚さ0.83mm、長さ600mmであり、一方の延伸ポリエチレン樹脂シートの延伸方向は長さ方向であった。
【0065】
上記フードを頭に被り、延伸ポリオレフィン系樹脂シート5を顔面に沿うように手で変形し、貫通孔3に挿通されている紐(図示せず。)でフードを頭に固定した後、自転車で、速度約15km/hrで約30分走行したが、フードが垂れたりずり落ちて前方が見えなくなることは無かった。
【0066】
尚、積層延伸ポリオレフィン系樹脂シートの製造方法は以下のとおりである。
重量平均分子量(Mw)33万、融点135℃の高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製)を、同方向二軸混練押出機(プラスチック工学研究所製)に供給して樹脂温度200℃で溶融混練した後、溶融混練物をロール温度110℃に制御したカレンダー成形機にて、幅350mm、厚さ5.66mmにシート成形してポリエチレン樹脂シートを得た。
【0067】
得られたポリエチレン樹脂シートを125℃に加熱した圧延成形機(積水工機製作所製)を用いて圧延倍率10.3倍に圧延し、幅350mm、厚さ0.55mmの圧延ポリエチレン樹脂シートを得た。得られた圧延ポリエチレン樹脂シートを110℃に加熱された熱風加熱式の多段延伸装置(協和エンジニアリング製)にて1.72倍の多段延伸を行い、総延伸倍率18倍、幅280mm、厚さ0.4mmの延伸ポリエチレン樹脂シートを得た。
【0068】
得られた延伸ポリエチレン樹脂シートをピンチロールが設置され、125℃に設定されているライン長19.25mの熱風加熱槽に、入口速度2.75m/minで供給し、出口速度2.75m/minに設定して7分間1次アニールを行い、続いて同様にして2次アニールを行って、アニールされた延伸ポリエチレン樹脂シートを得、その後60℃の恒温槽に供給し、24時間エージングして、エージングされた延伸ポリエチレン樹脂シートを得た。
【0069】
得られた2枚の延伸ポリエチレン樹脂シートを、それぞれの延伸方向が直交するように積層すると共にその間に厚さ0.03mmの線状低密度ポリエチレンフィルム(積水フィルム工業社製、商品名「2TN」)を積層し、加熱プレス機に供給し、加熱温度120℃、圧力4.4MPaの条件で15分間プレスして厚さ0.83mmの2層の積層延伸ポリエチレン樹脂シートを得た。
【0070】
得られた積層延伸ポリエチレン樹脂シートを幅10mm、長さ150mmに切断し、一方の延伸ポリエチレン樹脂シートの延伸方向と直交するように120度及び90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過時の折曲げ戻り角度θを測定したところ、それぞれ17度〜19度であった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のフードは風雨の時、自転車やオートバイに乗る時等に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0072】
1 フード本体
2 顔面開口部
3 貫通孔
4 延伸ポリオレフィン系樹脂シート
5 延伸ポリオレフィン系樹脂シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の頭部を覆い、該着用者の少なくとも目を露出させる顔面開口部を備えたフード本体の頭頂部後方付近から顔面開口部付近まで、180度又は90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下である形状保持性を有する延伸ポリオレフィン系樹脂シートが積層されていることを特徴とするフード。
【請求項2】
着用者の頭部を覆い、該着用者の少なくとも目を露出させる顔面開口部を備えたフード本体の顔面開口部付近に顔面開口部に沿って、180度又は90度に折曲げて1分間保持した後解放し、解放後5分経過した時の折曲げ戻り角度θが共に20度以下である形状保持性を有する延伸ポリオレフィン系樹脂シートが積層されていることを特徴とするフード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−87395(P2013−87395A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230297(P2011−230297)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000198802)積水成型工業株式会社 (66)