説明

ブッシング

【課題】専用の容器を用いることなく、溶液の増減にともなう容器の変形を防止することができるブッシングを提供する。
【解決手段】容器5に溶液を出し入れする開口部に着脱可能に装着されるブッシング1であって、容器5に溶液を出し入れする溶液出入管2が貫通する案内孔16と、溶液出入管2の一端に形成された出入管フランジ32に当接して溶液出入管2を案内孔16に吊り下げ保持する出入管吊持部20とを備え、案内孔16は溶液出入管2との間に気体の通流する間隙40を有して形成され、出入管吊持部20には出入管フランジ32との間に気体の通流する気体通流溝21および間隙41が形成され、案内孔16と気体通流溝21とが繋がっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス製造用薬品などの工業薬品や溶剤、食品関係で扱う液体材料、及び医薬品等の溶液を容器に充填し、容器から取り出す際に容器の開口部に装着されるブッシングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器に溶液を充填する際や容器から溶液を取り出す際に、容器の開口部に溶液注入装置や溶液取り出し装置などの送液装置を接続して容器への送液や容器からの送液が行われている。
【0003】
この場合、容器外部への溶液の遺漏を防止するため、送液装置は開口部に密着状態で取り付けられる。このため、容器内部の溶液の増減にともない容器内部の圧力も増減するため、容器の変形を防止し、スムーズな送液を可能にする目的で容器に気体通流路を形成する必要がある。また、この気体通流路に気体を導入して、積極的に送液を促進させる目的で気体通流路を形成する場合もある。
【0004】
例えば、特許文献1には、容器に開口部とは別に気体通流口(空気孔)を形成した容器が開示されている。
【0005】
この従来の容器では、溶液の増減にともなう容器の変形が防止されるものの、開口部を2つ有する専用の容器を用いる必要があり、容器選択の幅が狭まれてしまう。また、専用の容器を用いることは、コストアップにつながる。
【0006】
【特許文献1】特開平11−29128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、専用の容器を用いることなく、スムーズに溶液を送液することができるブッシングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載のブッシングは、容器に溶液を出し入れする開口部に着脱可能に装着されるブッシングであって、該容器に溶液を出し入れする溶液出入管が貫通する案内孔と、該溶液出入管の一端に形成された出入管フランジに当接して該溶液出入管を該案内孔に吊り下げ保持する出入管吊持部とを備え、該案内孔は該溶液出入管との間に気体の通流する間隙を有して形成され、該出入管吊持部には該出入管フランジとの間に気体の通流する気体通流部が形成され、該案内孔と該気体通流部とが繋がっていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載のブッシングは、請求項1に記載されたもので、前記ブッシングの一端部には前記容器の前記開口部の縁に当接して該ブッシングを該容器内側に吊り下げ保持するブッシングフランジが形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載のブッシングは、請求項2に記載されたもので、前記ブッシングフランジは、前記容器の前記開口部の縁と略同径、かつ該開口部に螺合して密閉する蓋の内径よりも小径に形成されると共に該蓋の螺合結合部の幅よりも薄く形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載のブッシングは、請求項3に記載されたもので、前記出入管吊持部は、前記ブッシングフランジの形成されたブッシングの一端部から前記出入管フランジの厚さだけ凹状に窪んで形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載のブッシングは、請求項1から4のいずれかに記載されたもので、添加剤無添加の高密度ポリエチレンで形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載のコネクタは、請求項1から5に記載されたいずれかのブッシングと該ブッシングに吊持される溶液出入管と共に組み合わせて用いるコネクタであって、該コネクタは、コネクタ本体と、該溶液出入管を吊持したブッシングが装着された容器の開口部にコネクタ本体を固定する固定部とで構成され、該コネクタ本体には、該溶液出入管に連通する溶液流路と、前記ブッシングの気体通流部に連通してコネクタ外部まで気体を通流させる気体流路とが形成されると共に、該溶液出入管に圧接される面における該溶液流路から該気体流路までの間に第1のパッキンが配置され、該ブッシングに圧接される面における該溶液流路よりも外側に第2のパッキンが配置され、該固定部には、該容器の蓋に形成された螺合結合部と同様の螺合結合部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載のブッシングは、案内孔が溶液を出し入れする溶液出入管との間に気体の通流する間隙を有して形成され、溶液出入管を吊持する出入管吊持部には出入管フランジとの間に気体の通流する気体通流部が形成されて、案内孔と気体通流部とが繋がっている。これにより、容器に溶液出入管を差込んだ状態で容器の内側と外側と繋ぐ気体流路が形成される。このため、容器に溶液を送液する際や容器から溶液を送液する際に、溶液の増減を補う気体が気体流路を通流して、スムーズに送液することができる。また、気体通流路に強制的に気体を導入することで一層スムーズに送液することができる。ブッシングは、簡易な形状のため簡便、安価に、かつ安定して製造することができるため、専用の容器を用いるよりもコストダウンすることができる。
【0015】
請求項2に記載のブッシングでは、ブッシングの一端部には容器の開口部の縁に当接してブッシングを容器内側に吊り下げ保持するブッシングフランジが形成されている。これにより、ブッシングフランジを上にして容器の開口部に入れるだけでブッシングが吊り下げ保持されるため、ブッシングを容器の開口部に容易に装着することができる。
【0016】
請求項3に記載のブッシングでは、ブッシングフランジが、容器の開口部の縁と略同径、かつ開口部に螺合して密閉する蓋の内径よりも小径に形成されると共に該蓋の螺合結合部の幅よりも薄く形成されている。これにより、ブッシングを容器に装着したままの状態であっても容器を蓋で密閉することができる。したがって、容器から溶液が遺漏することが防止されて、ブッシングを装着したままで容器の輸送や保管をすることができる。ブッシングが容器にあらかじめ装着されていれば、迅速に送液を開始することができる。
【0017】
請求項4に記載のブッシングでは、出入管吊持部が、ブッシングフランジの形成されたブッシングの一端部から出入管フランジの厚さだけ凹状に窪んで形成されている。これにより、容器の開口部にブッシングを装着し、さらに出入管をブッシングに装着した状態で、容器を蓋で密閉することができる。したがって、容器から溶液が遺漏することが防止されて、ブッシングおよび出入管を装着したままで容器の輸送や保管をすることができる。ブッシングおよび出入管が容器にあらかじめ装着されていれば、一層迅速に送液を開始することができる。
【0018】
請求項5に記載のブッシングによれば、添加剤無添加の高密度ポリエチレンで形成されていることにより、ブッシングから溶液への不純物の混入を防止することができる。
【0019】
請求項6に記載のコネクタは、コネクタ本体と、固定部とで構成され、コネクタ本体には、溶液出入管に連通する溶液流路と、ブッシングの気体通流部に連通してコネクタ外部まで気体を通流させる気体流路とが形成されている。これにより、送液装置の送液用ホースをコネクタの溶液流路に接続しておくことで、容器への送液や容器からの送液を行うことができる。この際に、ブッシングの気体通流部に連通する気体流路が形成されているため、容器内部と外部との間で気体が通流して、スムーズに送液することができる。また、固定部には、蓋に形成された螺合結合部と同様の螺合結合部が形成されているため、確実にコネクタを容器に取り付けることができる。また、溶液出入管に圧接される面における溶液流路から気体流路までの間に第1のパッキンが配置され、ブッシングに圧接される面における溶液流路よりも外側に第2のパッキンが配置されていることにより、機密性が保持できて、溶液の遺漏や溶液中への空気の混入を防止することができる。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明の実施の一形態のフランジは、図1に斜視図が示され、図2に上面図およびそのA−A断面図が示されている。このブッシング1は、図3に上面図およびそのB−B断面図が示されている溶液出入管2、および図4に断面図が示されているコネクタ3と組み合わせて、同図に示されている容器5の開口部11に装着されて使用される。また、ブッシング1は、図5に示されるように容器5の開口部11に装着されたままの状態で蓋6が取り付けられる。
【0022】
ブッシング1が装着される容器5は、添加剤無添加の高密度ポリオレフィン系樹脂組成物を原料にして一体成形加工された容器である。
【0023】
この容器5には、図5に示されるように、溶液を出し入れするための円形の開口部11が形成されている。開口部11には、蓋6が開口部11を覆うように螺合して着脱可能に取り付けられて、容器5を密閉する。開口部11には、容器5内部に通じる入出孔12が形成され、開口部11の容器5の外側には、蓋6が螺合するネジ山が形成されている。また、開口部11の端部には、縁13が形成されている。
【0024】
蓋6は、例えば、溶液を購入した際に溶液の充填された容器5に付属して取り付けられたり、容器5を購入した際に付属して取り付けられたりする一般的な蓋である。蓋6には、その内壁に容器5のねじ山に螺合するねじ山が形成されている。このねじ山が形成されている部分が本発明における螺合結合部に相当し、図5に示されるねじ山が形成された幅L1が本発明における螺合結合部の幅に相当する。
【0025】
ブッシング1と組み合わせて使用される溶液出入管2は、図3に示されるように、円筒状のパイプ部31および出入管フランジ32によって構成されている。パイプ部31は、容器5の開口部11から底部までの長さと同程度の長さで形成されている。出入管フランジ32は、パイプ部31の一端部に円盤鍔状に形成されている。
【0026】
本発明に係るブッシング1は、熱可塑性合成樹脂を金型で成形して、形成されている。
【0027】
ブッシング1には、図1,2に示されるように、一端にフランジの付いた薄型の柱状で、この円柱と同心で丸孔の案内孔16が貫通されて形成されている。この案内孔16の内径は、溶液出入管2のパイプ部31の外径よりも大きく形成されて、案内孔16に溶液出入管2を貫通した際に、案内孔16を形成する内壁と溶液出入管2のパイプ部31との間に間隙40(図4参照)を有する径に形成されている。
【0028】
ブッシング1は、この円柱の胴部外側の外径が容器5の開口部11の出入孔12の内径よりも略小径に形成されて、出入孔12に挿入可能になっている。また、ブッシング1の一端部には、この一端面と面を同一にして、案内孔16と同心で円盤鍔状のブッシングフランジ15が形成されている。ブッシングフランジ15は、容器5の開口部11の出入孔12の内径よりも径が大きく、蓋6の内壁の内径よりも小さい外径に形成されている。また、ブッシングフランジ15の板厚は蓋6のねじ山が形成された幅L1よりも十分薄く、例えば、ネジ山と隣接するねじ山との間隔よりも薄い厚みで形成されている。
【0029】
ブッシング1には、ブッシングフランジ15が形成されたその一端部から、案内孔16と同心の円形で凹状に一段窪ませた出入管装着部18が形成されている。この出入管装着部18の底部には、出入管吊持部20および気体通流溝21が形成されている。出入管装着部18を形成するブッシング1の内壁の内径は、溶液出入管2の出入管フランジ32の外径よりも大きく形成されて、出入管装着部18に溶液出入管2を装着した際に、出入管装着部18の内壁と溶液出入管2の出入管フランジ32の外周との間に間隙41(図4参照)を有する径に形成されている。出入管装着部18の深さ(ブッシング1の一端部からの窪みの深さ)は、溶液出入管2の出入管フランジ32の板厚と等しく形成されている。
【0030】
気体通流溝21は、出入管装着部18の底部に形成された4つの幅広の溝であって、案内孔16を形成する内壁から出入管装着部18を形成するブッシング1の内壁までつながる溝で形成されている。出入管吊持部20は、出入管装着部18の底部の気体通流溝21が形成されていない部分で構成される。つまり、ブッシング1は、その一端部から一段窪んで出入管吊持部20が形成され、さらに出入管吊持部20から一段窪んで気体通流溝21が形成されている。
【0031】
気体通流溝21の溝の幅L2(図2参照)は、例えば、容器5の出入孔12の内径が50mmの場合には、10〜20mmの幅であることが好ましい。また、出入管吊持部20の面積と気体通流溝21の面積との比が、2:1〜1:2の間にあることがより好ましい。
【0032】
出入管装着部18の内壁と溶液出入管2の出入管フランジ32の外周との間にできる間隙41、および気体通流溝21の両者が相俟って本発明における気体流通部43を形成し、間隙41および気体通流溝21は連通して気体(例えば空気)が通流する通路を形成する。
【0033】
ブッシング1は、添加剤無添加の高密度ポリエチレンを原料として成形することが好ましい。さらに、JIS B 9920に基づいて測定される空気清浄度がクラス7以下のクリーンルーム内で成形されることがより好ましい。
【0034】
このブッシング1は、一例としてインジェクション成形によって形成される。ブッシング1は簡易な形状のため簡便、安価に、かつ安定して製造することができる。
【0035】
ブッシング1と溶液出入管2と共に組み合わせて用いる本発明を適用するコネクタ3は、図4に示されるように、コネクタ本体3aおよび固定部3bによって構成されている。このコネクタ3は、溶液出入管2を吊持したブッシング1が装着された容器5の開口部11にコネクタ本体3aが固定部3bによって固定される。
【0036】
コネクタ本体3aは、熱可塑性合成樹脂によって全体として円柱状に形成されると共に、その円柱胴部の下側(図4で示す下側)全周に固定部3bの掛けられる突起部が形成されている。コネクタ本体3aには、溶液出入管2に連通する溶液流路35および気体流路36とが形成されている。
【0037】
溶液流路35は、コネクタ本体3aと同心の丸孔で溶液出入管2のパイプ部31の内径と同径でコネクタ本体3aを貫通している。溶液流路35の上側には、例えば、溶液注入ポンプや溶液吸引ポンプに繋がるホース39を差込んで連結接続可能なようにホース39の外径で孔開けされている。
【0038】
気体流路36は、コネクタ本体3aの底面(図4に示される下面)に形成された溝部36aと、この溝部36aに繋がると共にコネクタ本体3aの外部に繋がる排気部36bとによって形成されている。溝部36aは、ブッシング1に溶液出入管2を吊り下げ保持した状態にできる間隙41に連通する位置に、間隙41よりも若干大きめの幅で、環状の溝に形成されている。排気部36bには、外部から気体入排気用のホース(非図示)が差込まれて連結接続可能なようにホースの外径で穴開けされている。
【0039】
コネクタ本体3aには、その底面に、溶液流路35から溝部36aまでの間の溶液出入管2の出入管フランジ32に圧接する部分に環状で柔軟性を有する樹脂で形成されたパッキン37が配置されている。また、コネクタ本体3aには、その底面に、溝部36aよりも外側でブッシング1に圧接される部分に、環状で柔軟性を有する樹脂で形成されたパッキン38が配置されている。
【0040】
固定部3bは、熱可塑性合成樹脂によって全体として円筒状で、その上端部(図4に示す上側)が内側にL字状に曲がって形成されている。固定部3bには、その内壁の下側に蓋6に形成されたねじ山と同様に、容器5のねじ山に螺合するねじ山が形成されている。
【0041】
次に、本発明におけるブッシング1の使用状態について説明する。
【0042】
先ず、ブッシング1の使用状態が示された図4を参照しつつ説明する。この図4には、容器5に溶液を送液する状態、または、容器5から溶液を送液する状態の使用例が示されている。
【0043】
容器5の開口部11にブッシング1のブッシングフランジ15が開口部11の外側(図4に示す上側)になるように装着する。ブッシングフランジ15は、出入孔12の内径よりも径が大きいため、開口部11の縁13に当接してブッシング1の円柱状胴部を容器5内側に吊り下げ保持する。この場合、ブッシング1の胴部外径が出入孔12の内径よりも略小径に形成されているため、ブッシング1は開口部11に対して大きくがたつくことなく装着される。
【0044】
ブッシング1の案内孔16に溶液出入管2のパイプ部31を出入管フランジ32を上側にして差込む。出入管フランジ32は、ブッシング1の出入管吊持部20に吊り下げ保持されて、出入管装着部18に納まる。このとき、出入管装着部18の深さが溶液出入管2の出入管フランジ32の板厚と等しいため、出入管フランジ32の上面は、ブッシング1のブッシングフランジ15の形成された一端面と同一の面を構成する。
【0045】
ブッシング1の案内孔16は溶液出入管2のパイプ部31の外径よりも大きく形成されているため、案内孔16とパイプ部31との間には間隙40ができる。気体通流溝21は案内孔16の形成された内壁に繋がっているため、間隙40は気体通流溝21に連通する。出入管装着部18は溶液出入管2の出入管フランジ32の外径よりも大きく形成されているため、出入管装着部18の内壁と溶液出入管2の出入管フランジ32の外周との間に間隙41ができる。気体通流溝21は出入管装着部18を形成する内壁まで繋がり、出入管装着部18は出入管フランジ32の外形よりも大きいため、気体通流溝21と間隙40とが連通する。したがって、間隙40、気体通流溝21および間隙41が連通する。
【0046】
コネクタ3は、溶液出入管2の装着されたブッシング1を介して容器5の開口部11に取り付けられる。この場合、固定部3bが開口部11に螺合することで、コネクタ本体3aがブッシング1および溶液出入管2を開口部11に圧接して、互いが密着状態で確実に固定取り付けられる。これにより、間隙40、気体通流溝21および間隙41とコネクタ本体3aの気体流路36が連通して容器5の内側と外側とを繋ぐ気体流路が形成される。
【0047】
また、パッキン37がコネクタ本体3aと溶液出入管2の出入管フランジ32との接合面を完全に閉塞し、パッキン38がコネクタ本体3aとブッシング1のブッシングフランジ15との接合面を完全に閉塞している。このため、機密性が保持できて、溶液の遺漏や溶液中への気体の混入が防止される。
【0048】
容器5に溶液を送液して充填する場合について説明する。コネクタ本体3aに接続されたホース39から送液を開始すると、溶液流路35およびパイプ部31を溶液が流れて、容器5内部に溶液が流入する。流入した溶液の容積と同量の容器5内の気体は、間隙40、気体通流溝21、間隙41、気体流路36の経路を通流して外部に排気される。このため、気体が通流して容器5内部の圧力が変化しないため、スムーズに溶液を送液することができる。また、圧力が変化しないため、容器の変形を防止することができる。
【0049】
容器5から内部の溶液を送液する場合について説明する。コネクタ本体3aに接続されたホース39から溶液の吸引を開始すると、パイプ部31および溶液流路35を溶液が流れて、容器5外部に溶液が送液される。送液された溶液の容積と同量の気体が、気体流路36、間隙41、気体通流溝21、間隙40の経路を通流して内部に入気する。このため、溶液が減少しても容器内部の圧力は低下しないため、スムーズに溶液を送液することができる。また、圧力が変化しないため、容器の変形を防止することができる。
【0050】
なお、エアー加圧によって容器5から内部の溶液を送液することもできる。この場合、コネクタ本体3aの排気部36bに圧縮したエアーを導入する。エアーが排気口36b、溝部36a、間隙41、気体通流溝21、間隙40の経路を通流して内部に強制的に導入される。このエアーの圧力で溶液が溶液出入管2のパイプ部31、コネクタ本体3aの溶液流路35、ホース39の経路で流れて強制的に送液される。このため、一層スムーズに送液することができる。
【0051】
次に、ブッシング1の使用状態が示された図5を参照しつつ説明する。この図5には、容器5にブッシング1を装着して蓋6を取り付けた状態の使用例が示されている。
【0052】
ブッシング1のフランジ15の外径は、蓋6の内壁の内径よりも小さく形成されているため、蓋6の内側に収まる。また、ブッシングフランジ15の板厚は、蓋6のねじ山が形成された幅L3よりも十分薄いため、容器5の開口部11に装着したままの状態で蓋6を容器5に螺合させることができ、かつ、容器5の密閉状態に保つことができる。このため、容器5から溶液が遺漏しない。
【0053】
次に、本発明を適用するブッシングの別の実施形態について、図6を参照しつつ説明する。なお、すでに説明した構成と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0054】
図6に示されているブッシング1aは、気体通流溝21を形成せずに気体通流溝21の幅でブッシング1aの底面まで貫通させたことがブッシング1と異なっている。出入管装着部18の底部からブッシング1aの底面まで貫通した気体通流孔21aは、案内孔16に繋がっている。また、気体通流孔21aは、出入管装着部18を形成するブッシング1の内壁まで繋がっている。このブッシング1aに溶液出入管2を挿入して出入管吊持部20に吊持しても、ブッシング1aの出入管装着部18を形成する内壁と溶液出入管2との間に間隙41が形成される。なお、この間隙41と気体通流孔21aとが相俟って本発明における気体流通部を形成する。
【0055】
このブッシング1aを用いても気体通流孔21aと間隙41とが繋がって、容器5の内部と外部とを繋ぐ気体流路が形成される。
【実施例】
【0056】
以下に、本発明を適用するブッシングおよびコネクタを試作した例を実施例1〜3に示し、本発明を適用外のブッシングを試作した例を比較例1〜2に示す。
【0057】
(実施例1)
容器5には、出入孔12の内径が50mmで容器容量が20Lの容器を使用した。
【0058】
ブッシング1は、ブッシング1の円柱胴部の外径が47mm、ブッシングフランジ15の外径が55mm、案内孔16の内径が17mm、出入管装着部18を形成する内壁の穴径が30mm、気体通流溝21を4箇所に気体通流溝21の深さ(出入管吊持部20からの深さ)が1mmで気体通流溝21の幅L2を10mmで形成した。ブッシング1は、高密度ポリエチレンを原料として、インジェクション成形によって形成した。
【0059】
溶液出入管2は、パイプ部31の外径が15mm、パイプ31の内径が12mm、出入管フランジ32の外径が28mmで形成した。
【0060】
コネクタ3には、コネクタ本体3aにパイプ部31の内径と同径の溶液流路35を形成した。また、コネクタ本体3aの溝部36aを溝幅4mmで形成し、これと連通する排気部36bを形成した。固定部3bのねじ山を容器5の開口部11に形成されたねじ山に螺合する形状で形成した。
【0061】
試作したブッシング1、溶液出入管2およびコネクタ3を、図4に示されるように容器5の開口部11に装着した。
【0062】
溶液注入ポンプに接続された溶液注入・排出用のホース39から20Lの溶液を容器5に送液したとき、溶液はスムーズに充填されると共に、容器5の形状変化は全く認められなかった。
【0063】
また、溶液排出ポンプに接続された容器注入・排出用のホース39で容器5に充填されている20Lの溶液を吸引したとき、溶液はスムーズに容器5から排出されると共に容器5の形状変化は全く認められなかった。
【0064】
(実施例2)
ブッシング1aは、実施例1に記載したブッシング1の気体通流溝21がブッシング1の底部まで貫通している点が異なるだけで、他は同様に形成した。
【0065】
試作したブッシング1a、溶液出入管2およびコネクタ3を、容器5の開口部11に装着した。また、コネクタ本体3aの溶液流路35に溶液注入・排出用のホースを接続した。
【0066】
溶液注入ポンプに接続された溶液注入・排出用のホースから20Lの溶液を容器5に送液したとき、溶液はスムーズに充填されると共に、容器5の形状変化は全く認められなかった。
【0067】
また、溶液排出ポンプに接続された容器注入・排出用のホースで容器5に充填されている20Lの溶液を吸引したとき、溶液はスムーズに容器5から排出されると共に容器5の形状変化は全く認められなかった。
【0068】
(比較例1)
図7に示されるブッシング50を試作した。ブッシング50には、出入管装着部18の底部に気体通流溝21を1つも形成していない。したがって、出入管装着部18の底部の出入管吊持部51は、案内孔16を除いて平面状に形成されている。他の形状は実施例1のブッシング1と同様に形成した。
【0069】
図8に示されるコネクタ53を試作した。コネクタ53のコネクタ本体53aは、コネクタ本体3aに形成した溝部36aおよび排気部36bを形成せずに、他は実施例1のコネクタ本体3aと同様に形成した。固定部3bは実施例1と同様に形成した。
【0070】
試作したブッシング50、溶液出入管2およびコネクタ53を、実施例1と同様に容器5の開口部11に装着した。
【0071】
溶液注入ポンプに接続された溶液注入・排出用のホース39から溶液を容器5に送液したとき、約5Lを充填したところで容器5の胴部が膨らみ始めて容器形状が変化した。そのまま送液を継続したところ。容器5の底部が膨らんで容器5の座り安定性が悪化し、約12L充填したところで容器内圧が高まって、送液が停止されてしまった。
【0072】
また、溶液排出ポンプに接続された容器注入・排出用のホース39で容器5に充填されている溶液を吸引したとき、溶液を約6L排出したところで容器5の胴部の凹みが認められた。そのまま排出を継続したところ、排出の脈動および排出液中に空気胞(泡噛み)が認められた。
【0073】
(実施例3)
実施例1に記載したブッシング1と同一形状で、密度951kg/m3、MFR0.2g/10min.であって添加剤無添加の高密度ポリエチレンを原料としてインジェクション成形して試作した。この試作したブッシング1を以下に記載する容器5に、図5に示されるように装着して蓋6を螺合取り付けした。
【0074】
容器5は、JIS B 9920に基づいて測定される空気清浄度がクラス7以下のクリーンルーム内で成形され、かつJIS B 9925(液体用光散乱自動粒子計数器)に規定される測定機を用いて、容器5の容量まで0.1μm以上の大きさの微粒子数が2個/mlの超純水を充填し、蓋6で密栓された容器5を20分間振とうし、24時間放置後、容器5内の超純水中の0.1μm以上の微粒子数が42個/mlである高密度ポリエチレン製容器である。また蓋6はこの容器5に付属している蓋を使用した。
【0075】
上記の超純水が充填されたままで、ブッシング1を容器5に装着して、蓋6を取り付けた。この状態で、容器5を20分間振とうし、24時間放置後、容器5内の超純水中の0.1μm以上の微粒子数を測定したところ42個/mlであり、ブッシング1による超純水の汚染は観察されなかった。
【0076】
(比較例2)
実施例3で試作したブッシング1と同一形状で、密度951kg/m3、MFR0.2g/10min.であり、添加剤が添加されている一般的な高密度ポリエチレンを原料として、インジェクション成形して試作した。この試作したブッシングを以下に記載する容器に、図5に示されるように装着して蓋を螺合取り付けした。
【0077】
容器は、クリーンルーム内ではなく、全く管理されていない環境下で試作した。形状は、実施例3で試作した容器5と同様に試作した。
【0078】
この容器に、実施例3で用いた超純水と同様の超純水を充填し、蓋で密栓された容器を20分間振とうし、24時間放置後、容器内の超純水中の0.1μm以上の微粒子数が1372個/mlであった。
【0079】
この超純水が充填されたままで、試作したブッシングを容器に装着して、蓋を取り付けた。この状態で、容器を20分間振とうし、24時間放置後、容器内の超純水中の0.1μm以上の微粒子数を測定したところ3000個/mlであった。微粒子数が1628個/ml増加した。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明を適用するブッシングの一実施形態の斜視図である。
【図2】本発明を適用するブッシングの上面図および側面断面図である。
【図3】ブッシングと組み合わせて使用する溶液出入管の上面図および側面断面図である。
【図4】本発明を適用するブッシングおよびコネクタの使用状態を示す断面図である。
【図5】本発明を適用するブッシングの別の使用状態を示す断面図である。
【図6】本発明を適用するブッシングの別の実施形態を示す断面図である。
【図7】比較例に用いたブッシングの斜視図である。
【図8】比較例に用いたコネクタの斜視図である。
【符号の説明】
【0081】
1,1a,50はブッシング、2は溶液出入管、3,53はコネクタ、3a,53aはコネクタ本体、3bは固定部、5は容器、6は蓋、11は開口部、12は入出孔、13は縁、15はブッシングフランジ、16は案内孔、18は出入管装着部、20は出入管吊持部、21は気体通流溝、21aは気体通流孔、31はパイプ部、32は出入管フランジ、35は溶液流路、36は気体流路、36aは溝部、36bは排気部、37,38はパッキン、39はホース、40,41は間隙、L1はネジ部の幅,L2は気体通流溝21の溝の幅である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に溶液を出し入れする開口部に着脱可能に装着されるブッシングであって、該容器に溶液を出し入れする溶液出入管が貫通する案内孔と、該溶液出入管の一端に形成された出入管フランジに当接して該溶液出入管を該案内孔に吊り下げ保持する出入管吊持部とを備え、該案内孔は該溶液出入管との間に気体の通流する間隙のできる孔径で形成され、該出入管吊持部には該出入管フランジとの間に気体の通流する気体通流部が形成され、該案内孔と該気体通流部とが繋がっていることを特徴とするブッシング。
【請求項2】
前記ブッシングの一端部には前記容器の前記開口部の縁に当接して該ブッシングを該容器内側に吊り下げ保持するブッシングフランジが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のブッシング。
【請求項3】
前記ブッシングフランジは、前記容器の前記開口部の縁と略同径、かつ該開口部に螺合して密閉する蓋の内径よりも小径に形成されると共に該蓋の螺合結合部の幅よりも薄く形成されていることを特徴とする請求項2に記載のブッシング。
【請求項4】
前記出入管吊持部は、前記ブッシングフランジの形成されたブッシングの一端部から前記出入管フランジの厚さだけ凹状に窪んで形成されていることを特徴とする請求項3に記載のブッシング。
【請求項5】
添加剤無添加の高密度ポリエチレンで形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のブッシング。
【請求項6】
請求項1から5に記載されたいずれかのブッシングと該ブッシングに吊持される溶液出入管と共に組み合わせて用いるコネクタであって、該コネクタは、コネクタ本体と、該溶液出入管を吊持したブッシングが装着された容器の開口部にコネクタ本体を固定する固定部とで構成され、該コネクタ本体には、該溶液出入管に連通する溶液流路と、前記ブッシングの気体通流部に連通してコネクタ外部まで気体を通流させる気体流路とが形成されると共に、該溶液出入管に圧接される面における該溶液流路から該気体流路までの間に第1のパッキンが配置され、該ブッシングに圧接される面における該溶液流路よりも外側に第2のパッキンが配置され、該固定部には、該容器の蓋に形成された螺合結合部と同様の螺合結合部が形成されていることを特徴とするコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−90999(P2009−90999A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262443(P2007−262443)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000100849)アイセロ化学株式会社 (20)
【Fターム(参考)】