説明

ブラスト加工用研磨剤及びその製造方法

【課題】本発明は、媒体中において安定的に分散して被研磨物を良好に研磨することができるブラスト加工用研磨剤を提供する。
【解決手段】 本発明のブラスト加工用研磨剤は、合成樹脂粒子を含有するブラスト加工用研磨剤であって、JISに規定されている篩の目開きであって上記合成樹脂粒子の平均粒子径からこの平均粒子径の40%の値だけ小さい値に最も近い目開きの値を超える粒子径を有し、且つ、JISに規定されている篩の目開きであって上記合成樹脂粒子の平均粒子径からこの平均粒子径と同一の値だけ大きい値に最も近い目開きの値未満の粒子径を有する合成樹脂粒子を90重量%以上含有していると共に、長径が上記合成樹脂粒子の平均粒子径よりも50μm以上大きい値を有し且つアスペクト比が1.5以上である合成樹脂粒子を0.01g当たり0〜15個含有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラスト加工用研磨剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属鋳造品や樹脂成形品の他に、半導体パッケージのバリの除去のためにブラスト加工用研磨剤が用いられている。ブラスト加工用研磨剤として合成樹脂粒子が用いられている。
【0003】
このようなブラスト加工用研磨剤として、特許文献1には、再生セルロース粒子にセルロースより比重の大きい無機微粒子を担持させた、球状及び/又は長球状の複合再生セルロース粒子からなるブラストクリーニング用投射材が開示されている。
【0004】
又、特許文献2には、スルホイソフタル酸の金属塩を0.5〜7モル%共重合した主鎖の少なくとも80モル%がポリエチレンテレフタレートである芳香族ポリエステル樹脂(A)100重量部とアルミナ粉末(B)20〜250重量部よりなる湿式ブラスト用投射材が開示されている。
【0005】
ブラスト加工用研磨剤は水などの媒体に分散させて用いられ、ブラスト加工用研磨剤を被研磨物に衝突させて被研磨物を研磨するものであるが、特許文献1、2に記載のブラスト加工用研磨剤は、被研磨物の表面の隙間に挟まるなどして被研磨物に不具合を生じさせるなどの問題点を有しており、研磨後の被研磨物の表面に付着することなく被研磨物を良好に研磨することができるブラスト加工用研磨剤が所望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−225272号公報
【特許文献2】特開平5−169371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、研磨後の被研磨物の表面に付着することがなく良好に被研磨物を研磨することができるブラスト加工用研磨剤及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のブラスト加工用研磨剤は、合成樹脂粒子を含有するブラスト加工用研磨剤であって、JISに規定されている篩の目開きであって上記合成樹脂粒子の平均粒子径からこの平均粒子径の40%の値だけ小さい値に最も近い目開きの値を超える粒子径を有し、且つ、JISに規定されている篩の目開きであって上記合成樹脂粒子の平均粒子径からこの平均粒子径と同一の値だけ大きい値に最も近い目開きの値未満の粒子径を有する合成樹脂粒子を90重量%以上含有していると共に、長径が上記合成樹脂粒子の平均粒子径よりも50μm以上大きい値を有し且つアスペクト比が1.5以上である合成樹脂粒子を0.01g当たり0〜15個含有していることを特徴とする。
【0009】
上記ブラスト加工用研磨剤は合成樹脂粒子を含有しているが、この合成樹脂粒子は、JISに規定されている篩の目開きであって上記合成樹脂粒子の平均粒子径からこの平均粒子径の40%の値だけ小さい値に最も近い目開きの値を超える粒子径を有し、且つ、JISに規定されている篩の目開きであって上記合成樹脂粒子の平均粒子径からこの平均粒子径と同一の値だけ大きい値に最も近い目開きの値未満の粒子径を有する合成樹脂粒子を90重量%以上含有していることから、粒度分布が狭いため、被研磨物の隙間に挟まるなどして研磨後の被研磨物の表面に付着するようなことは生じず、また、被研磨物を良好に研磨する。
【0010】
JISに規定されている篩の目開きであって上記合成樹脂粒子の平均粒子径からこの平均粒子径の40%の値だけ小さい値に最も近い目開きの値を超える粒子径、及び、JISに規定されている篩の目開きであって上記合成樹脂粒子の平均粒子径からこの平均粒子径と同一の値だけ大きい値に最も近い目開きの値未満の粒子径について説明する。
【0011】
JISには異なる目開きを有する複数の篩が規定されている。具体的には、目開き1.400mm、目開き1.180mm、目開き1.000mm、目開き0.850mm、目開き0.710mm、目開き0.600mm、目開き0.500mm、目開き0.425mm、目開き0.355mm、目開き0.300mm、目開き0.250mm、目開き0.212mm、目開き0.180mm、目開き0.150mm、目開き0.125mm、目開き0.106mm、目開き0.088mm、目開き0.075mm、目開き0.063mm、目開き0.053mmの篩が規定されている。
【0012】
各合成樹脂粒子の粒子径は下記の要領で測定された値をいう。合成樹脂粒子を上述したJISで規定された篩を用いて、目開きが大きな篩から小さな篩となるように篩でふるう。すると、合成樹脂粒子は、各粒子の粒径に応じて、目開きが所定大きさである篩上で通過することができなくなり、各篩上に残った状態となる。
【0013】
各篩上に残った合成樹脂粒子の平均粒子径は、この合成樹脂粒子が残った篩の目開きの値と、上記篩の目開きに最も近く且つ大きい篩の目開きの値との相加平均値とする。具体的には、例えば、表1の通りとなる。例えば、目開きが0.150μmの篩上に残った合成樹脂粒子の平均粒子径は、目開き0.150μmと、0.150μmに最も近く且つ大きい篩の目開き0.180μmとの相加平均値0.165μmとする。
【0014】
【表1】

【0015】
そして、合成樹脂粒子の総重量W1を測定する共に、各篩上に残った合成樹脂粒子の総重量W2を測定し、篩ごとにW2をW1で除して粒度分布W3(W2/W1)を算出する。次に、篩ごとに合成樹脂粒子の平均粒子径D0に粒度分布W3を乗じてEを算出し、各篩のEの総和を合成樹脂粒子の平均粒子径とする。
【0016】
「JISに規定されている篩の目開きであって上記合成樹脂粒子の平均粒子径からこの平均粒子径の40%の値だけ小さい値に最も近い目開きの値」とは、合成樹脂粒子の平均粒子径から、この平均粒子径の40%の値を引いた値をD1としたとき、このD1に最も近い目開きを有するJISに規定されている篩の目開きの値をいう。例えば、合成樹脂粒子の平均粒子径が0.100μmである場合、合成樹脂粒子の平均粒子径から、合成樹脂粒子の平均粒子径の40%に相当する値を引いた値D1は0.060μmとなり、このD1に最も近い目開きを有する篩の目開きの値0.063μmが、「JISに規定されている篩の目開きであって上記合成樹脂粒子の平均粒子径からこの平均粒子径の40%の値だけ小さい値に最も近い目開きの値」となる。
【0017】
なお、合成樹脂粒子の平均粒子径の40%の値を引いた値D1に最も近い目開きを有する篩が二つ存在する場合には、目開きの大きい方の篩の目開きの値とする。例えば、合成樹脂粒子の平均粒子径の40%の値を引いた値D1が0.097μmであった場合、この値に最も近い目開きとして0.088μmと0.106μmが存在するが、大きい方の目開きの値0.106μmを採用する。
【0018】
「JISに規定されている篩の目開きであって上記合成樹脂粒子の平均粒子径からこの平均粒子径と同一の値だけ大きい値に最も近い目開きの値」とは、合成樹脂粒子の平均粒子径に、この平均粒子径に相当する値を加算した値をD2としたとき、このD2に最も近い目開きを有するJISに規定されている篩の目開きの値をいう。例えば、合成樹脂粒子の平均粒子径が0.100μmである場合、合成樹脂粒子の平均粒子径に、この平均粒子径に相当する値を加算した値D2は、0.200μmとなり、このD2に最も近い目開きを有する篩の目開きの値0.212μmが、「JISに規定されている篩の目開きであって上記合成樹脂粒子の平均粒子径からこの平均粒子径と同一の値だけ大きい値に最も近い目開きの値」となる。
【0019】
なお、合成樹脂粒子の平均粒子径に、この平均粒子径に相当する値を加算した値D2に最も近い目開きを有する篩が二つ存在する場合には、目開きの小さい方の篩の目開きの値とする。例えば、合成樹脂粒子の平均粒子径に、この平均粒子径に相当する値を加算した値D2が0.275μmであった場合、この値に最も近い目開きとして0.250μmと0.300μmが存在するが、小さい方の目開きの値0.250μmを採用する。
【0020】
上記合成樹脂粒子の平均粒子径は、小さいと、被研磨物にブラスト加工用研磨剤が衝突した時の衝撃力が小さくなり、研磨性能が低下することがあり、大きいと、被研磨物を傷付けることがあるので、130〜500μmが好ましく、150〜250μmがより好ましい。又、ブラスト加工用研磨剤が半導体パッケージのバリ取りに用いられる場合には、合成樹脂粒子の平均粒子径は、小さいと、被研磨物にブラスト加工用研磨剤が衝突した時の衝撃力が小さくなり、研磨性能が低下することがあり、大きいと、半導体パッケージのリードフレームの隙間に、二〜三個のブラスト加工用研磨剤が詰まり、研磨後の半導体パッケージに付着することがあるので、130〜500μmが好ましく、150〜250μmがより好ましい。
【0021】
更に、本発明のブラスト加工用研磨剤に含まれている合成樹脂粒子0.01g中、長径が上記合成樹脂粒子の平均粒子径よりも50μm以上大きい値を有し且つアスペクト比が1.5以上である合成樹脂粒子を0〜15個含有している。即ち、本発明のブラスト加工用研磨剤は、長径が上記合成樹脂粒子の平均粒子径よりも50μm以上大きい値を有し且つアスペクト比が1.5以上である合成樹脂粒子を含んでいないか又は合成樹脂粒子0.01g当たり1〜15個含有している。
【0022】
ブラスト加工用研磨剤は、長径が上記合成樹脂粒子の平均粒子径よりも50μm以上大きい値を有し且つアスペクト比が1.5以上である合成樹脂粒子を含有していないか、又は、長径が上記合成樹脂粒子の平均粒子径よりも50μm以上大きい値を有し且つアスペクト比が1.5以上である合成樹脂粒子を含有していても、合成樹脂粒子0.01g当たり15個未満であるので、合成樹脂粒子はその殆どが球状に近いものとなっており、ブラスト加工用研磨剤を用いて被研磨物を研磨した場合に、ブラスト加工用研磨剤を被研磨物に偏りなく衝突させて被研磨物を良好に研磨することができ、更に、被研磨物の表面の隙間にブラスト加工用研磨剤が付着するのを防止することができる。
【0023】
ここで、合成樹脂粒子の長径及びアスペクト比は以下の要領で測定される。合成樹脂粒子を倍率100倍にて写真を撮る。この写真にあらわれた各合成樹脂粒子について、合成樹脂粒子の輪郭線上にある任意の二点を結び、最長となる直線L1の長さを長径とする。なお、図1に示したように、直線は、合成樹脂の輪郭線から一部又は全てが外れていてもよい。
【0024】
次に、上記した最長となる直線L1に対して直交し且つ両端が合成樹脂粒子の輪郭線上にある直線のうち、最長となる直線L2の長さ(短径)を測定する。そして、直線L1の長さ(長径)を直線L2の長さ(短径)で除した値を合成樹脂粒子のアスペクト比とする。
【0025】
そして、合成樹脂粒子中において、長径が合成樹脂粒子の平均粒子径よりも50μm以上大きい値を有し且つアスペクト比が1.5以上である合成樹脂粒子の個数は、合成樹脂粒子0.01gを採取し、この採取した合成樹脂粒子の全てについて上述の要領で、長径及びアスペクト比を測定する。そして、長径が合成樹脂粒子の平均粒子径よりも50μm以上大きい値を有し且つアスペクト比が1.5以上である合成樹脂粒子を抽出し、これら抽出した合成樹脂粒子の個数を数えることによって算出することができる。
【0026】
ブラスト加工用研磨剤の製造方法について説明する。はじめに、合成樹脂粒子を分級してブラスト加工用研磨剤を製造するための分級装置Aの一例を図2を参照しつつ説明する。
【0027】
図2において、装置本体1内には、この装置本体1に一体的に設けられた駆動装置2によって駆動する回転軸21が配設されていると共に、この回転軸21の搬送始端部に合成樹脂粒子を供給するためのホッパー11が設けられている。
【0028】
上記回転軸21の搬送始端部から後述するスクリーン3に至るまでの外周面にはスクリュー羽根21aが一体的に設けられており、ホッパー11を通じて装置本体1内に供給された合成樹脂粒子は、スクリュー羽根21aによって搬送終端方向(図2において右側から左側方向)に搬送されて、後述するスクリーン3内にその供給口31を通じて連続的に供給されるように構成されている。
【0029】
上記装置本体1内には、回転軸21を包囲するように円筒状のスクリーン3がその長さ方向を上記回転軸21の長さ方向に合致させた状態に配設されている。円筒状のスクリーン3は合成樹脂繊維を編成することによって形成されており、合成樹脂繊維同士の間には網目が形成されており、合成樹脂粒子をスクリーンの網目に通過させることによって合成樹脂粒子の分級可能に構成されている。
【0030】
更に、図3に示したように、スクリーン3内に配設された回転軸21には、一対の側面略三角形状の支持部材22、22が回転軸21の長さ方向に所定間隔を存して一体的に配設されている。一対の支持部材22、22の外周端部間にはブレード4が架設状態にて一体的に設けられている。このように一対の支持部材22、22間に架設されたブレード4が複数枚、回転軸21の回転方向に所定間隔ごとに、好ましくは、等間隔ごとに配設されている。そして、各ブレード4の外周端面と、スクリーン3の内周面との間には僅かな隙間が形成されるように構成されている。
【0031】
そして、回転軸21の回転に伴って、この回転軸21に支持部材22を介して一体的に設けられたブレード4がスクリーン3の内周面に沿ってスクリーン3の周方向に回転し、ブレード4によってスクリーン3内の合成樹脂粒子をスクリーン3に向かって押圧し、スクリーン3の網目からこの網目よりも小さい合成樹脂粒子を通過させることによって合成樹脂粒子の分級をスクリーンの目詰まりを殆ど生じさせることなく精度良く行うことができるように構成されている。
【0032】
更に、スクリーン3内には複数個の直径が0.5〜1cmのタッピングボール5が配設されており、これらのタッピングボール5がスクリーン3内において跳ねることによってスクリーン3が振動し、この振動によって、上記ブレード4の外周端面と、スクリーン3の内周面との間に形成された隙間が周期的に狭まり、この狭まりによって、ブレード4によるスクリーン3に対する合成樹脂粒子の押圧が大きくなり、その結果、スクリーン3の網目からこの網目よりも小さい合成樹脂粒子をより確実に通過させることができ、合成樹脂粒子の分級をスクリーンの目詰まりを殆ど生じさせることなく更に精度良く行うことができるように構成されている。装置本体1には、スクリーン3の網目を通じてスクリーン3の外部に押出された合成樹脂粒子を回収するための回収口12が設けられている。なお、タッピングボール5がスクリーン3外に飛び出さないように、スクリーン3の供給口31及び後述する排出口32には図示しないストッパ部材が配設されている。
【0033】
また、スクリーン3の網目を通過できない大きな粒子径の合成樹脂粒子は、スクリーン3の排出口32を通じてスクリーン3外に排出され、装置本体1には、排出された合成樹脂粒子を取り出すための取出口13が設けられている。
【0034】
次に、上記分級装置Aを用いて合成樹脂粒子を分級してブラスト加工用研磨剤を製造する要領を説明する。
【0035】
先ず、分級の対象となる合成樹脂粒子の製造方法について説明する。合成樹脂粒子の製造方法は、公知の方法が採用され、特に限定されず、例えば、懸濁重合、乳化重合、シード重合などのように、水性媒体中で単量体を重合させて合成樹脂粒子を製造する方法、合成樹脂を押出機に供給して溶融混練して押出し、ペレット化し、得られたペレットを表面が軟化しうる温度に加熱することで合成樹脂粒子を製造する方法などが挙げられ、水性媒体中で単量体を重合して合成樹脂粒子を製造する方法が好ましく、懸濁重合がより好ましい。
【0036】
懸濁重合を用いて合成樹脂粒子を製造する方法としては、特に限定されず、公知の条件で単量体を水性媒体に攪拌機や分散機を用いて懸濁させ、次いで、単量体を重合させることによって合成樹脂粒子を製造することができる。なお、懸濁時に公知の懸濁安定剤や界面活性剤を用いてもよい。懸濁重合後、合成樹脂粒子を水性媒体から分離、洗浄後、乾燥させることによってブラスト加工用研磨剤用の分級前の合成樹脂粒子を得ることができる。
【0037】
重合温度は、単量体又は重合開始剤の種類に応じて適宜、調整すればよい。重合温度は40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましい。
【0038】
上記単量体としては、特に制限されず、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアクリル系単量体が挙げられる。
【0039】
上記アクリル系単量体にこの単量体と共重合可能な単量体を共重合させてもよい。このような単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレンなどのスチレン系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル系単量体などが挙げられる。
【0040】
又、上記単量体としては、湿式ブラスト加工の際に水面に浮上することがなく、分散安定性、耐衝撃性に優れる点から、カルボキシル基を含有するアクリル系単量体(A)0.2〜10重量部と、エーテル基と水酸基、又は、エステル基と水酸基とを含有するアクリル系単量体(B)0.1〜20重量部と、上記アクリル系単量体(A)及び(B)以外のビニル系単量体100重量部とを含む単量体混合物が好ましい。
【0041】
アクリル系単量体(A)が、メタクリル酸、アクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸及び2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸から選択される場合、研磨安定性、ブラスト時におけるブラスト加工用研磨剤の欠損発生の抑制、研磨時の作業性により優れたブラスト加工用研磨剤を提供することができる。
【0042】
更に、アクリル系単量体(B)が、下記式
CH2=CR1-COO[(C2H4O)m-(C3H6O)n]-H (式1)
(式中、R1はH又はCH3、mは0〜50の整数、nは0〜50の整数、但し、m及びnが同時に0の場合を除く)又は
CH2=CR2-COOCH2CH2O[CO(CR22)5O]p-H (式2)
(式中、R2は互いに独立してH又はCH3、pは1〜50の整数)で表される化合物から選択される場合、研磨安定性、ブラスト時におけるブラスト加工用研磨剤の欠損発生の抑制、研磨時の作業性に、より優れた研磨材を提供できる。
【0043】
具体的には、カルボキシル基を分子中に含むアクリル系単量体(A)としては、メタクリル酸、アクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸などが挙げられる。
【0044】
エーテル基と水酸基、又は、エステル基と水酸基とを含有するアクリル系単量体(B)において、エーテル基としては、エチレングリコール、プロピレングリコールに由来する基が挙げられる。エステル基としては、ラクトンに由来する基が挙げられる。アクリル系単量体(B)は、脂肪族であることが好ましく、特に好ましいアクリル系単量体(B)は、下記式
CH2=CR1-COO[(C2H4O)m-(C3H6O)n]-H (式1)
(式中、R1はH又はCH3、mは0〜50の整数、nは0〜50の整数、但し、m及びnが同時に0の場合を除く)又は
CH2=CR2-COOCH2CH2O[CO(CR22)5O]p-H (式2)
(式中、R2は互いに独立してH又はCH3、pは1〜50の整数)の化合物から選択できる。
【0045】
なお、式1の化合物において、mが50より大きい場合、重合安定性が低下して合着粒子が発生することがあり、又、nが50より大きい場合も重合安定性が低下して合着粒子が発生することがあり、好ましくない。好ましいm及びnの範囲は0〜30である(但し、m及びnが同時に0の場合は除く)。
【0046】
式2の化合物において、pが50より大きい場合、重合安定性が低下して合着粒子が発生することがあり、好ましくない。好ましいpの範囲は1〜30である。又、2つのR2は同一であっても相違してもよい。
【0047】
アクリル系単量体(B)としては市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、日本油脂社製のブレンマーシリーズ、ダイセル化学社製のプラクセルシリーズが挙げられる。更に、ブレンマーシリーズの中で、ブレンマーPP−1000、ブレンマー50PEP−300、ブレンマー70PEP−350Bなどが、プラクセルシリーズの中で、プラクセルFM2D、プラクセルFA2Dなどが好ましい。
【0048】
上記単量体に架橋性ビニル系単量体を含有させて、得られる合成樹脂粒子を架橋させてもよい。このような架橋性ビニル系単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系多官能単量体、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びこれらの誘導体である芳香族ビニル系多官能単量体が挙げられる。架橋性ビニル系単量体は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0049】
重合時に任意に用いられる重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系化合物等が挙げられる。重合開始剤は、単量体100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲で用いられることが好ましく、0.2〜2.0重量部の範囲で使用することがより好ましい。
【0050】
水性媒体としては水が挙げられる。水性媒体は、単量体100重量部に対して100〜1000重量部の範囲で使用することが好ましく、150〜300重量部の範囲で使用することがより好ましい。
【0051】
駆動装置2を駆動させて回転軸21を回転させた後、装置本体1のホッパー11を通じて装置本体1内に分級する合成樹脂粒子を供給する。すると、合成樹脂粒子は、回転軸21のスクリュー羽根21aによってスクリーン3内にその供給口31を通じて供給される。
【0052】
スクリーン3内においては、回転軸21の回転に伴って複数個のブレード4、4・・・がスクリーン3の内周面に沿ってスクリーン3の周方向に回転している。この状態において、スクリーン3内に合成樹脂粒子が供給されると、合成樹脂粒子はブレード4、4・・・によってスクリーン3内において撹拌されると共に、合成樹脂粒子の一部が、ブレード4の外周端面とこれに対向するスクリーン3の内周面との隙間に進入し、この隙間に進入した合成樹脂粒子は、ブレード4によってスクリーン3に向かって押圧され、スクリーン3の網目よりも小さな合成樹脂粒子は、スクリーン3の網目を通じてスクリーン3の目詰まりを殆ど生じさせることなくスクリーン3外に押し出される。
【0053】
更に、スクリーン3内に配設された複数個のタッピングボール5は、回転するブレード4、4・・・によってスクリーン3内において跳ね、この跳ねたタッピングボール5がスクリーン3に衝突することによってスクリーン3を振動させている。
【0054】
タッピングボール5による振動によって、ブレード4の外周端面と、スクリーン3の内周面との間に形成された隙間が周期的に狭まり、この狭まりによって、ブレード4によるスクリーン3に対する合成樹脂粒子の押圧がより大きくなり、ブレード4の外周端面とこれに対向するスクリーン3の内周面との隙間に進入した合成樹脂粒子は、ブレード4によってスクリーン3に向かってより強い力で押圧され、スクリーン3の網目よりも小さな合成樹脂粒子は、スクリーン3の網目を通じて目詰まりを殆ど生じさせることなくスクリーン3外に精度良く排出される。そして、スクリーン3外に排出された合成樹脂粒子は、装置本体1の回収口12を通じて回収される。
【0055】
一方、スクリーン3の網目の大きさよりも大きな粒径を有する合成樹脂粒子は、スクリーン3の網目を通過せず、スクリーン3の排出口32を通じてスクリーン3外に排出され、この排出された合成樹脂粒子は、装置本体1の取出口13から回収される。
【0056】
上述の如き分級装置Aを用い、目開きの異なる二種類のスクリーンを用いて合成樹脂粒子を二回に亘って分級することによって、上述したような粒度分布の狭い合成樹脂粒子を含むブラスト加工用研磨剤を容易に製造することができる。例えば、先ず、目開きの大きなスクリーンを使用した分級装置Aを用いて合成樹脂粒子を分級し、スクリーン3の網目を通過してスクリーン3外に排出された合成樹脂粒子を回収口12から回収する。次に、目開きの小さなスクリーンを使用した分級装置Aを用いて、分級装置Aの回収口12から回収した上記合成樹脂粒子を分級し、スクリーン3の網目を通過しなかった合成樹脂粒子をスクリーン3の排出口32を通じて装置本体1の取出口13から回収する。このように合成樹脂粒子を分級することによって、粒度分布が狭くて殆どが球状に近い形状を有する合成樹脂粒子を含むブラスト加工用研磨剤を得ることができる。
【0057】
上述の要領で合成樹脂粒子を分級してブラスト加工用研磨剤を製造するにあたって、特に、分級の対象となる合成樹脂粒子の分級装置Aへの供給速度、ブレードの回転数、タッピングボールの個数、タッピングボールによるスクリーンの押圧度合いを調整することによって、JISに規定されている篩の目開きであって上記合成樹脂粒子の平均粒子径からこの平均粒子径の40%の値だけ小さい値に最も近い目開きの値を超える粒子径を有し、且つ、JISに規定されている篩の目開きであって上記合成樹脂粒子の平均粒子径からこの平均粒子径の値だけ大きい値に最も近い目開きの値未満の粒子径を有する合成樹脂粒子を90重量%以上含有していると共に、長径が上記合成樹脂粒子の平均粒子径よりも50μm以上大きい値を有し且つアスペクト比が1.5以上である合成樹脂粒子を0.01g当たり0〜15個含有してなる合成樹脂粒子を含むブラスト加工用研磨剤を製造することができる。
【0058】
上記の如くして得られたブラスト加工用研磨剤はブラスト加工に用いられる。ブラスト加工としては、機械式、空気式などの乾式ブラスト加工、水を併用する湿式ブラスト加工が挙げられる。機械式ブラスト加工は、機械的に投射することにより、被研磨物にブラスト加工用研磨剤を衝突させて研磨を行う方法である。空気式ブラスト加工は、圧縮空気の作用で被研磨物にブラスト加工用研磨剤を衝突させて研磨を行う方法である。湿式ブラスト加工は、水とブラスト加工用研磨剤とを混合してスラリーとし、このスラリーを噴射することにより、被研磨物に研磨材を衝突させて研磨を行う方法である。本発明のブラスト加工用研磨剤は、水への分散性が良好である観点から、湿式ブラスト加工に用いることが好ましい。
【0059】
湿式ブラスト加工において、スラリーを形成する方法は特に限定されないが、通常の撹拌機を用いて、水にブラスト加工用研磨剤を分散させることで容易に形成できる。なお、スラリーには帯電防止剤、消泡剤、抑泡剤などの添加剤を加えてもよい。スラリー中への添加剤の添加量は、ブラスト加工用研磨剤100重量部に対して0.001〜1重量部が好ましい。更に、水には、水溶性の有機溶媒や他の添加剤が含まれてもよい。
【0060】
スラリー中のブラスト加工用研磨剤の含有量は5〜50体積%が好ましく、10〜40体積%がより好ましい。ブラスト加工用研磨剤の含有量がこの範囲であることで、不十分な研磨や過剰な研磨を抑制することができる。
【0061】
更に、スラリーの噴射は、ブラスト加工用研磨剤の配合割合、被研磨物の種類などにより適宜調整されるが、スラリー圧力が1〜8kg/cm2、噴射量が5〜50リットル/分の条件で行うことが好ましい。
【0062】
被研磨物としては、本発明のブラスト加工用研磨剤により研磨可能であれば特に限定されない。例えば、電子機器部品(IC、コンデンサ、抵抗、プリント基板など)の合成樹脂製のパッケージのバリ、各種合成樹脂成形体(筐体、自動車部品)のバリや塗料などが挙げられる。バリを構成する合成樹脂としては、エポキシ系樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィドなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0063】
そして、ブラスト加工用研磨剤に含まれている合成樹脂粒子は、この合成樹脂粒子の平均粒子径を基準として定められた所定範囲内に粒径を有する合成樹脂粒子を90重量%以上含有し、且つ、長径が上記合成樹脂粒子の平均粒子径よりも50μm以上大きい値を有しアスペクト比が1.5以上である合成樹脂粒子を0.01g当たり0〜15個含有していることから、被研磨物に応じて合成樹脂粒子の平均粒子径を調整することによって、被研磨物の研磨時に被研磨物の隙間に挟まるなどして研磨後の被研磨物の表面に付着するようなことはなく、被研磨物を良好に研磨することができる。
【発明の効果】
【0064】
本発明のブラスト加工用研磨剤は、上述の如き構成を有しているので、合成樹脂粒子が被研磨物の隙間に挟まるなどして研磨後の被研磨物の表面に付着するような事態を生じさせることなく、被研磨物を良好に研磨することができる。
【0065】
また、本発明のブラスト加工用研磨剤の製造方法は、上述の如き構成を有していることから、合成樹脂粒子によるスクリーンの目詰まりを生じさせることなく、合成樹脂粒子をその粒度分布が所望となるように且つその殆どが球状に近いものに分級することができ、合成樹脂粒子が被研磨物の隙間に挟まるなどして研磨後の被研磨物の表面に付着するような事態を生じさせることなく、被研磨物を良好に研磨することができるブラスト加工用研磨剤を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】合成樹脂粒子のアスペクト比の算出要領を説明するための模式図である。
【図2】分級装置の一例を示した模式断面図である。
【図3】支持部材及びブレードを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0068】
(実施例1)
メタクリル酸メチル285重量部、エチレングリコールジメタクリレート15重量部、 ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート15重量部、過酸化ベンゾイル1.5重量部及びアゾビスイソブチロニトリル1.5重量部を混合して油相を調整した。
【0069】
脱イオン水500重量部、第3リン酸カルシウム50重量部及びラウリル硫酸ナトリウム0.05重量部を混合して水相を調整した。
【0070】
攪拌機及び温度計を備えた1リットルの重合器に上記油相及び上記水相を供給して混合液を作製した。次に、重合器内の混合液を65℃に加熱し撹拌機を用いて230rpmで攪拌しながら懸濁重合を6時間に亘って行った後に室温まで冷却した。得られた懸濁液をろ過、洗浄した後に乾燥して合成樹脂粒子を得た。得られた合成樹脂粒子の平均粒子径は170μmであった。又、得られた合成樹脂粒子の粒度分布を下記表2に示した。
【0071】
【表2】


【0072】
図2及び図3に示した分級装置A(ターボ工業社製)を用意し、目開きが300μmのスクリーンを使用し、タッピングボールを5個使用した。分級装置Aの駆動装置2を駆動させて回転軸21を1200rpmの回転速度で回転させ、装置本体1のホッパー11を通じて装置本体1内に、分級する合成樹脂粒子を50kg/時間の供給速度で供給し、合成樹脂粒子を回転軸21のスクリュー羽根21aによってスクリーン3内にその供給口31を通じて供給した。
【0073】
回転軸21の外周面にはその回転方向に一定間隔毎に3個のブレード4、4・・・が支持部材22を介して一体的に設けられており、上記ブレード4の外周端面と、これに対向するスクリーン3の内周面との間には約10mmの隙間が形成されていた。
【0074】
スクリーン3内において、回転軸21の回転に伴って3個のブレード4、4・・・がスクリーン3の内周面に沿ってスクリーン3の周方向に回転しており、スクリーン3内に供給された合成樹脂粒子がブレード4、4・・・によって撹拌されると共に、合成樹脂粒子の一部が、ブレード4の外周端面とこれに対向するスクリーン3の内周面との隙間に進入し、この隙間に進入した合成樹脂粒子が、ブレード4によってスクリーン3に向かって押圧され、スクリーン3の網目よりも小さな合成樹脂粒子は、スクリーン3の網目を通じてスクリーン3の目詰まりを殆ど生じさせることなくスクリーン3外に押し出された。
【0075】
又、スクリーン3内には5個の直径が0.8cmのタッピングボール5が配設されており、これらのタッピングボールは、回転するブレード4、4・・・によってスクリーン3内において跳ね、この跳ねたタッピングボール5がスクリーン3に衝突することによってスクリーン3を振動させていた。スクリーン3外に排出された合成樹脂粒子を装置本体1の回収口12を通じて回収した。
【0076】
次に、目開きが125μmのスクリーンを使用したこと以外は上記と同様の仕様を有する分級装置Aを用意した。この分級装置Aの駆動装置2を駆動させて回転軸21を1500rpmの回転速度で回転させた後、装置本体1のホッパー11を通じて装置本体1内に、上述の如く分級した合成樹脂粒子を50kg/時間の供給速度で供給し、合成樹脂粒子を回転軸21のスクリュー羽根21aによってスクリーン3内にその供給口31を通じて供給した。
【0077】
スクリーン3内において、回転軸21の回転に伴って3個のブレード4、4・・・がスクリーン3の内周面に沿ってスクリーン3の周方向に回転しており、スクリーン3内に供給された合成樹脂粒子がブレード4、4・・・によって撹拌されると共に、合成樹脂粒子の一部が、ブレード4の外周端面とこれに対向するスクリーン3の内周面との隙間に進入し、この隙間に進入した合成樹脂粒子が、ブレード4によってスクリーン3に向かって押圧され、スクリーン3の網目よりも小さな合成樹脂粒子は、スクリーン3の網目を通じてスクリーン3の目詰まりを殆ど生じさせることなくスクリーン3外に押し出された。
【0078】
又、スクリーン3内には10個のタッピングボール5が配設されており、これらのタッピングボールは、回転するブレード4、4・・・によってスクリーン3内において跳ね、この跳ねたタッピングボール5がスクリーン3に衝突することによってスクリーン3を振動させていた。そして、スクリーン3の網目を通過せず、スクリーン3の排出口32を通じてスクリーン3外に排出された合成樹脂粒子を装置本体1の取出口13から回収した。
【0079】
得られた合成樹脂粒子の平均粒子径は178μmであった。また、得られた合成樹脂粒子の粒度分布を下記表3に示した。合成樹脂粒子中、0.106mmを超え且つ0.355mm未満の粒子径を有する合成樹脂粒子が99.44重量%含有されていた。合成樹脂粒子0.01g中、長径が上記合成樹脂粒子の平均粒子径よりも50μm以上大きい値を有し且つアスペクト比が1.5以上である合成樹脂粒子は7個含有されていた。
【0080】
【表3】

【0081】
上述のようにして得られた合成樹脂粒子を含むブラスト加工用研磨剤を水に供給して攪拌機を用いて撹拌することによってスラリーを作製した。スラリーは、水70体積%、ブラスト加工用研磨剤30体積%含有していた。スラリーに泡立ちは発生せず、ブラスト加工用研磨剤は水中に容易に分散した。
【0082】
湿式ブラスト研磨機(不二精機製作所社製 商品名「液体ホーニング機LH−5」)を用意し、この湿式ブラスト研磨機に上記スラリーを供給してICパッケージ封止樹脂のバリの除去試験を行った。バリの除去試験は、スラリー圧力6kg/cm2、ノズル噴射量10リットル/分、30秒の噴射時間の条件下にて行った。バリの除去後のパッケージ100個を目視観察し、リードフレーム間への樹脂粒子の詰まりの状態を目視観察したところ、合成樹脂粒子の詰まりはなく、バリも除去できていた。
【0083】
(実施例2)
メタクリル酸メチル270重量部、エチレングリコールジメタクリレート30重量部、 ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート18重量部、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸3重量部、過酸化ベンゾイル1.5重量部及びアゾビスイソブチロニトリル1.5重量部を混合して油相を調整した。この油相を用いたこと以外は実施例1と同様にして合成樹脂粒子を製造した。得られた合成樹脂粒子の平均粒子径は171μmであった。又、得られた合成樹脂粒子の粒度分布を下記表4に示した。
【0084】
【表4】


【0085】
この合成樹脂粒子を実施例1と同様の要領で分級した。得られた合成樹脂粒子の平均粒子径は179μmであった。また、得られた合成樹脂粒子の粒度分布を下記表5に示した。合成樹脂粒子中、0.106mmを超え且つ0.355mm未満の粒子径を有する合成樹脂粒子が99.4重量%含有されていた。合成樹脂粒子0.01g中、長径が上記合成樹脂粒子の平均粒子径よりも50μm以上大きい値を有し且つアスペクト比が1.5以上である合成樹脂粒子は12個含有されていた。
【0086】
【表5】

【0087】
上述のようにして得られた合成樹脂粒子を含むブラスト加工用研磨剤を用いて実施例1と同様の要領でバリの除去試験を行った。スラリーに泡立ちは発生せず、ブラスト加工用研磨剤は水中に容易に分散した。バリの除去後のパッケージ100個を目視観察し、リードフレーム間への樹脂粒子の詰まりの状態を目視観察したところ、合成樹脂粒子の詰まりはなく、バリも除去できていた。
【0088】
(比較例1)
実施例1と同様の要領で合成樹脂粒子を製造した。次に、分級装置として徳寿工作所から市販されているジャイロシフターを用意した。このジャイロシフターにJISで規定された目開きが300μmの篩をセットし、この篩上に合成樹脂粒子を50kg/時間の供給速度で供給し、篩上で10個のタッピングボールを跳ねさせつつ、篩を振動させて合成樹脂粒子を分級し、篩を通過した合成樹脂粒子を回収した。なお、篩の網目には多数の目詰まりが生じており、連続生産には不向きであった。
【0089】
次に、JISで規定された目開きが300μmの篩の代わりにJISで規定された目開きが125μmの篩を上記ジャイロシフターにセットし、上記篩上に、上記分級処理した合成樹脂粒子を50kg/時間の供給速度で供給し、篩上で10個のタッピングボールを跳ねさせつつ、篩を振動させて合成樹脂粒子を分級し、篩上に残った合成樹脂粒子を回収した。なお、篩の網目には多数の目詰まりが生じており、連続生産には不向きであった。
【0090】
得られた合成樹脂粒子0.01g中、長径が上記合成樹脂粒子の平均粒子径よりも50μm以上大きい値を有し且つアスペクト比が1.5以上である合成樹脂粒子が24個含有されていた。
【0091】
上述のようにして得られた合成樹脂粒子を含むブラスト加工用研磨剤を用いて実施例1と同様の要領でバリの除去試験を行った。バリの除去後のパッケージ100個を目視観察し、リードフレーム間への樹脂粒子の詰まりの状態を目視観察したところ、アスペクト比が1.5以上である合成樹脂粒子がリードフレーム間に詰まったパッケージが3個見られた。
【0092】
(比較例2)
実施例2と同様の要領で合成樹脂粒子を製造した。分級装置としてダルトン社から市販されている振動篩を用意した。この振動篩にJISで規定された目開きが300μmの篩をセットし、この篩上に合成樹脂粒子を50kg/時間の供給速度で供給し、篩上で10個のタッピングボールを跳ねさせつつ、篩を振動させて合成樹脂粒子を分級し、篩を通過した合成樹脂粒子を回収した。なお、篩の網目には多数の目詰まりが生じており、連続生産には不向きであった。
【0093】
次に、JISで規定された目開きが300μmの篩の代わりにJISで規定された目開きが125μmの篩を上記振動篩にセットし、上記篩上に、上記分級処理した合成樹脂粒子を50kg/時間の供給速度で供給し、篩上で10個のタッピングボールを跳ねさせつつ、篩を振動させて合成樹脂粒子を分級し、篩上に残った合成樹脂粒子を回収した。なお、篩の網目には多数の目詰まりが生じており、連続生産には不向きであった。
【0094】
得られた合成樹脂粒子0.01g中、長径が上記合成樹脂粒子の平均粒子径よりも50μm以上大きい値を有し且つアスペクト比が1.5以上である合成樹脂粒子は22個含有されていた。
【0095】
上述のようにして得られた合成樹脂粒子を含むブラスト加工用研磨剤を用いて実施例1と同様の要領でバリの除去試験を行った。バリの除去後のパッケージ100個を目視観察し、リードフレーム間への樹脂粒子の詰まりの状態を目視観察したところ、アスペクト比が1.5以上である合成樹脂粒子がリードフレーム間に詰まったパッケージが5個見られた。
【符号の説明】
【0096】
1 装置本体
11 ホッパー
12 回収口
13 取出口
2 駆動装置
21 回転軸
21a スクリュー羽根
22 支持部材
3 スクリーン
31 供給口
32 排出口
4 ブレード
5 タッピングボール
A 分級装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂粒子を含有するブラスト加工用研磨剤であって、JISに規定されている篩の目開きであって上記合成樹脂粒子の平均粒子径からこの平均粒子径の40%の値だけ小さい値に最も近い目開きの値を超える粒子径を有し、且つ、JISに規定されている篩の目開きであって上記合成樹脂粒子の平均粒子径からこの平均粒子径と同一の値だけ大きい値に最も近い目開きの値未満の粒子径を有する合成樹脂粒子を90重量%以上含有していると共に、長径が上記合成樹脂粒子の平均粒子径よりも50μm以上大きい値を有し且つアスペクト比が1.5以上である合成樹脂粒子を0.01g当たり0〜15個含有していることを特徴とするブラスト加工用研磨剤。
【請求項2】
合成樹脂粒子を分級してブラスト加工用研磨剤を製造するブラスト加工用研磨剤の製造方法であって、円筒状のスクリーンとこのスクリーン内に配設されて上記スクリーンの内周面に沿って変位するブレードとを備えた分級装置の上記スクリーン内に上記合成樹脂粒子を供給し、上記ブレードを上記スクリーンに対して相対的に変位させることによって上記ブレードにより上記合成樹脂粒子を上記スクリーンに向かって押圧して上記合成樹脂粒子を上記スクリーンによって分級することを特徴とするブラスト加工用研磨剤の製造方法。
【請求項3】
スクリーン内にタッピングボールを配設し、上記タッピングボールをスクリーンに衝突させることによって上記スクリーンを振動させることを特徴とする請求項1に記載のブラスト加工用研磨剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−75344(P2013−75344A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217162(P2011−217162)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)