説明

ブリンゾラミド水性組成物

【課題】ブリンゾラミドが完全に溶解した水性組成物の提供。
【解決手段】水溶液中にブリンゾラミドと多価カルボン酸もしくはその薬学的に許容される塩、酸性糖もしくはその薬学的に許容される塩及び/またはムコ多糖もしくはその薬学的に許容される塩を配合する。
【効果】従来の懸濁性点眼液よりも点眼時の霧視を軽減すると予測され、患者がより使いやすくなると期待される。また、懸濁性点眼液の製造には複雑な装置が必要であったが、本組成物は完全に溶解しており、製造が複雑でないため、生産コストの低減が期待される。さらに、無菌性の確保が容易になることも期待される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水に極めて溶けにくいブリンゾラミドを完全に溶解した水性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブリンゾラミドは炭酸脱水素酵素阻害剤であり、緑内障や高眼圧症の治療薬として世界中で使用されている(特許文献1)。ブリンゾラミドは水に極めて溶けにくいので、市販されている治療薬は懸濁性点眼液である。
ブリンゾラミド懸濁性点眼液は保存中に薬物が沈降して硬いケーキ状になり、薬物の投与が困難になるのを防止するために懸濁化剤などを添加しているため、白色クリーム状の液になっている。そのため、使用感が悪いと思われる。また、点眼時に霧視が多発している。
ブリンゾラミド懸濁性点眼液は水溶性点眼液のように、容易なろ過滅菌ができず、段階を踏み、数種の設備を必要とした特殊な製造方法が必要である(特許文献2)。そのため、調製に時間がかかるだけでなく、生産設備と生産コストが高額になり、また点眼剤の無菌性の確保も難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平5-508832
【特許文献2】特表2000-501749
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は、水に極めて溶けにくいブリンゾラミドを可溶化し、ブリンゾラミドが完全に溶解した水性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は水溶液中にブリンゾラミドと共に多価カルボン酸もしくはその薬学的に許容される塩、酸性糖もしくはその薬学的に許容される塩及び/またはムコ多糖もしくはその薬学的に許容される塩が存在するときに上記課題が達成し得るという知見に基づいて完成されたものであり、以下に示すブリンゾラミドが完全に溶解した水性組成物を提供するものである。
1.(A) ブリンゾラミドと、(B)多価カルボン酸もしくはその薬学的に許容される塩、酸性糖もしくはその薬学的に許容される塩、及びムコ多糖もしくはその薬学的に許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、水性組成物。
2.(B)多価カルボン酸がクエン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である1に記載の水性組成物。
3.(B)酸性糖がグルクロン酸、ガラクツロン酸、ラクトビオン酸、ソルビン酸及びグルコン酸から選ばれる少なくとも1種である1に記載の水性組成物。
4.(B)ムコ多糖がヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸及びケラタン硫酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である1に記載の水性組成物。
5.(C)多価アルコール、界面活性剤、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む1に記載の水性組成物。
6.(C)多価アルコールがポリエチレングリコール、グリセリン及びプロピレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む5に記載の水性組成物。
7.(C)界面活性剤がポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリソルベートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む5に記載の水性組成物。
8.(C)セルロース誘導体が、メチルセルロース、ヒプロメロース及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む5に記載の水性組成物。
8.(D)追加薬剤を含む1または5に記載の水性組成物。
9.(D)追加薬剤が抗感染剤、抗アレルギー薬、抗炎症剤、緑内障治療薬、角膜障害・ドライアイ剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である8に記載の水性組成物。
10. 注射剤または点眼剤の形態にある9に記載の水性組成物。

【発明の効果】
【0006】
ブリンゾラミドが完全に溶解した水性組成物を提供することにより、患者の負担となる点眼時の霧視を軽減することが予測され、且つ、生産コストの低減と無菌性の確保が容易になることが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に用いられるブリンゾラミドは好適にブリンゾラミドのフリー体が用いられる。
【0008】
本発明に用いられる(A)ブリンゾラミドの濃度は薬物による治療効果が得られる範囲であれば特に制限はないが、好ましくは0.01〜5w/v%であり、より好ましくは0.02〜3w/v%、最も好ましくは0.05〜2w/v%である。ブリンゾラミドの濃度が5 w/v%以下の場合にはブリンゾラミドが容易に水に溶解するので好ましく、また、濃度が0.01w/v%以上の場合には薬物の効果が得られやすいので好ましい。
【0009】
本発明に用いられる(B)多価カルボン酸としてはクエン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルタミン酸及び/またはアスパラギン酸もしくはこれらの薬学的に許容される塩を用いることが好ましい。(B)酸性糖としてはグルクロン酸及び/またはガラクツロン酸、ソルビン酸もしくはこれらの薬学的に許容される塩を用いることが好ましい。薬学的に許容される塩としてはナトリウム塩、カリウム塩などを挙げることができる。(B)ムコ多糖としてはヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸もしくはこれらの薬学的に許容される塩を用いることが好ましい。薬学的に許容される塩としてはナトリウム塩、カリウム塩などを挙げることができる。
【0010】
本発明に用いられる(B)多価カルボン酸、酸性糖及び/またはムコ多糖もしくはこれらの薬学的に許容される塩の濃度は本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限はないが、好ましくは0.005〜10w/v%であり、より好ましくは0.01〜6w/v%、最も好ましくは0.02〜4w/v%である。多価カルボン酸及び酸性糖の濃度が10w/v%以下の場合にはこれらの添加剤が容易に溶解するので好ましく、0.005w/v%以上の場合にはブリンゾラミドを容易に溶解することができるので好ましい。
【0011】
本発明に用いられる(C)多価アルコールとしてはポリエチレングリコール、グリセリン及び/またはプロピレングリコールを用いることが好ましい。また、(C)界面活性剤としてはポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び/またはポリソルベートを用いることが好ましい。さらに、(C)セルロース誘導体としてはメチルセルロース、ヒプロメロース及び/またはヒドロキシエチルセルロースを用いることが好ましい。
【0012】
本発明に用いられる(C)多価アルコール、界面活性剤、セルロース誘導体あるいはポリビニルピロリドンは、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、好ましくは0.01〜10w/v%、より好ましくは0.05〜8w/v%、最も好ましくは0.1〜6w/v%である。多価アルコール、界面活性剤、セルロース誘導体あるいはポリビニルピロリドンは、10w/v%以下の場合には添加剤が容易に溶解するので好ましく、また、濃度が0.01w/v%以上の場合にはブリンゾラミドが容易に溶解するので好ましい。
【0013】
従って、本発明の好ましい実施態様は、(A)ブリンゾラミドを0.01〜5w/v%含み、(B) 多価カルボン酸もしくはその薬学的に許容される塩、酸性糖もしくはその薬学的に許容される塩、及びヒアルロン酸もしくはその薬学的に許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を0.005〜10w/v%含み、(C)多価アルコール、界面活性剤、セルロース誘導体及びポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも一種を0.01〜10w/v%含む水性組成物である。
本発明のより好ましい実施態様は、(A)ブリンゾラミドを0.02〜3w/v%含み、(B) 多価カルボン酸もしくはその薬学的に許容される塩、酸性糖もしくはその薬学的に許容される塩、及びヒアルロン酸もしくはその薬学的に許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を0.01〜6w/v%を含み、(C)多価アルコール、界面活性剤、セルロース誘導体及びポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも一種を0.05〜8w/v%含む、澄明な水性組成物である。
【0014】
本発明の水性組成物にはさらに(D)追加薬剤を含有させることができる。このような薬物としては、例えば、アムホテリシンB、フルコナゾール、硝酸ミコナゾール、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム、カルベニシリンナトリウム、硫酸ゲンタマイシン、エリスロマイシン、アジスロマイシン、トブラマイシン、カナマイシン、塩酸シプロフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、トシル酸パズフロキサシン、ガチフロキサシン、塩酸モキシフロキサシン、アシクロビル、ガンシクロビル、シドフォビル、ソリブジン、トリフルオロチミジン、ドキシサイクリンなどのテトラサイクリン類などの抗感染剤、アシタザノラスト、塩酸レボカバスチン、フマル酸ケトチフェン、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラストなどの抗アレルギー薬、リン酸ベタメタゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ジクロフェナクナトリウ厶、プラノプロフェン、インドメタシン、ブロムフェナックナトリウム、メロキシカム、ロルノキシカム、シクロスポリン、タクロリムスなどの抗炎症剤、マレイン酸チモロール、塩酸ブナゾシン、ラタノプロスト、ニプラジロール、塩酸カルテオロール、イソプロピルウノプロストン、塩酸ドルゾラミド、タフルプロスト、ビマプロスト、トラボプロストなどの緑内障治療薬、アミノエチルスルホン酸、アミノ酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ドキシサイクリンなどのテトラサイクリン類などの角膜障害及びドライアイ治療剤、などを挙げることができる。なかでも好ましい追加薬剤は、レボフロキサシン、アシタザノラスト、リン酸ベタメタゾン、ラタノプロストである。これら薬物の配合量は期待される薬効が得られる濃度であれば特に制限はない。例えば、組成物中、0.001〜10w/v%である。上記のような(D)追加薬剤を添加しても、溶液は澄明である。
【0015】
本発明の組成物は、通常pH4〜10に調整され、好ましくはpH4.5〜7.0、より好ましくはpH5.0〜5.7で調整されることが好ましい。本発明の組成物のpHを調整するために、通常添加される種々のpH調整剤が使用される。酸類としては、例えば、アスコルビン酸、塩酸、グルクロン酸、酢酸、乳酸、リン酸、硫酸、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。塩基類としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタモール、メグルミンなどが挙げられる。その他のpH調整剤としては、グリシン、ヒスチジン、イプシロンアミノカプロン酸などのアミノ酸類なども挙げることができる。
【0016】
本発明の組成物を調製するにあたって、薬学的に許容し得る等張化剤、可溶化剤、保存剤及び安定化剤などを必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で本発明の組成物に添加することができる。等張化剤としては、ブドウ糖等の糖類、プロピレングリコール、グリセリン、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等の糖アルコール等が挙げられる。保存剤としては塩化ベンザルコニウ厶、塩化ベンゼトニウム及びグルコン酸クロルヘキシジンなどの逆性石鹸類、パラヒドロキシ安息香酸メチル、パラヒドロキシ安息香酸プロピル、パラヒドロキシ安息香酸ブチル等のパラベン類、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール及びベンジルアルコールなどのアルコール類、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸及びソルビン酸カリウムなどの有機酸及びその塩類が使用できる。また、その他の添加剤としては、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールもしくはポリアクリル酸ナトリウ厶等の増粘剤、エチレンジアミン四酢酸及びそれらの薬学的に許容される塩、トコフエロール及びその誘導体、亜硫酸ナトリウムなどの安定化剤が挙げられる。
【0017】
本発明のブリンゾラミド水性組成物の製法を例示する。
メチルセルロースを70℃以上に加熱した滅菌精製水に分散させ、氷冷する。室温に戻した後、ブリンゾラミド、クエン酸、ポリソルベート、ポリエチレングリコール、保存剤を添加し、良く攪拌する。すべての成分が溶解したのを確認後、pHを調整し、滅菌精製水でメスアップし、本発明のブリンゾラミド水性組成物を調製する。点眼剤とする場合には調製した本発明の組成物をメンブランフィルターによるろ過滅菌後、プラスチック製点眼ボトルなどの容器に充填する。
【0018】
本発明のブリンゾラミド水性組成物は、その特性を生かして、注射剤、点眼剤などの形態で使用することができる。
【0019】
ブリンゾラミドが完全に溶解した水性組成物を点眼剤として使用した場合、点眼時の霧視が軽減されると予測され、患者がより使いやすくなると期待される。
また、水性点眼液であることから、懸濁性点眼液よりも、眼組織内へのブリンゾラミドの移行性が高くなり、より強い効果が得られることが予測される。また、ブリンゾラミドの眼組織内への移行性が高くなることで、効果の持続性の向上も期待される。
【実施例】
【0020】
0.5gのブリンゾラミドと0.5gのクエン酸、マレイン酸もしくはガラクツロン酸に80mLの精製水を添加し、溶解するまで攪拌した。溶解を確認後、NaOHでpHを5.3に調整し、精製水で100mLにメスアップし、本発明の組成物(実施例1〜3)とした。
【0021】
比較例として、0.5gのブリンゾラミドに80mLの精製水に添加し、攪拌することで均一に分散させた。ここにHCLを添加し溶解するまで撹拌した。溶解を確認後、NaOHでpHを5.3に調整し、精製水で100mLにメスアップし、比較例の組成物(比較例1)とした。
【0022】
表1に各組成物の組成と調製後の組成物の外観を示した。
本発明の組成物はいずれも無色澄明か微黄色澄明であり、ブリンゾラミドが完全に溶解していた。一方、比較例では、調製中にブリンゾラミドが析出し、調製後はブリンゾラミドの懸濁液となった。
【0023】
【表1】

【0024】
0.25gのブリンゾラミドと所定量のフマル酸、フタル酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルクロン酸、ラクトビオン酸、ソルビン酸もしくは50%グルコン酸水溶液に80mLの精製水を添加し、溶解するまで攪拌した。溶解を確認後、NaOHでpHを5.3に調整し、精製水で100mLにメスアップし、本発明の組成物(実施例4〜14)とした。
【0025】
比較例として、0.25gのブリンゾラミドに80mLの精製水に添加し、攪拌することで均一に分散させた。ここにHCLを添加し溶解するまで撹拌した。溶解を確認後、NaOHでpHを5.3に調整し、精製水で100mLにメスアップし、比較例の組成物(比較例2)とした。
【0026】
表2に各組成物の組成と調製後の組成物の外観を示した。
本発明の組成物はいずれも無色澄明か微黄色澄明であり、ブリンゾラミドが完全に溶解していた。一方、比較例では、調製中にブリンゾラミドが析出し、調製後はブリンゾラミドの懸濁液となった。
【0027】
【表2】

【0028】
所定量のSM-4(メチルセルロース、信越化学工業(株)製、メトローズ(登録商標))もしくは65SH400(ヒプロメロース、信越化学工業(株)製、メトローズ(登録商標))に、85℃に加熱した80mLの精製水を添加し攪拌することで分散させた。均一に分散したことを確認後、攪拌しながら氷冷した。全体が澄明になったことを確認後、室温に戻るまで放置した。
所定量のブリンゾラミドと所定量のクエン酸、ポリエチレングリコール4000(PEG4000)、グリセリン、プロピレングリコール、CO-40(ポリオキシエチレンヒマシ油40)、HCO-60(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)、ポリソルベート80及び/またはポリビニルピロリドン(k25)に、80mLの精製水もしくは先に調製したSM-4もしくは65SH400水溶液を添加し、溶解するまで攪拌した。処方によっては、さらに所定量のヒアルロン酸Na、グルコン酸NaもしくはHEC(ヒドロキシエチルセルロース、和光純薬製)を添加し、溶液全体が澄明になるまで攪拌した。溶解を確認後、NaOHでpHを5.3〜6.9 に調整し、精製水で100mLにメスアップし、本発明の組成物(実施例15〜23)とした。
【0029】
表3に各組成物の組成と調製後の組成物の外観を示した。
本発明の組成物はいずれも無色澄明であり、ブリンゾラミドが完全に溶解していた。
【0030】
【表3】

【0031】
1.0g のブリンゾラミドと2.0gのクエン酸、2.0gのPEG4000及び0.5gのHCO-60に80mLの精製水を添加し、溶解するまで攪拌した。溶解を確認後、NaOHでpHを5.3〜5.5に調整した。ここに所定量のレボフロキサシン、アシタザノラスト、リン酸ベタメタゾンもしくはラタノプロストを添加し、溶解するまで攪拌した。溶解を確認後、NaOHもしくはHClでpHを5.4に調製後し、精製水で100mLにメスアップし、ブリンゾラミドと各種薬剤を含む本発明の組成物(実施例24〜27)とした。
【0032】
表4に各組成物の組成と調製後の組成物の外観を示した。
本発明の組成物はいずれも無色澄明であり、ブリンゾラミドと各種薬剤が完全に溶解していた。
【0033】
【表4】

【0034】
所定量のSM-4に、85℃に加熱した30mLの精製水を添加し攪拌することで分散させた。均一に分散したことを確認後、攪拌しながら氷冷した。全体が澄明になったことを確認後、室温に戻るまで放置した。
これとは別に所定量のクエン酸、PEG4000、HCO-60、NaCl、マンニトール及びクロロブタノールに、60mLの精製水を添加し、50℃に加温し、溶解するまで攪拌した。溶解を確認後、室温に戻るまで放置した。ここに所定量のブリンゾラミドと処方によっては先に調製したSM-4水溶液を添加し、すべての成分が溶解し、均一になったことを確認後、NaOHでpHを5.3〜5.4に調整し、精製水で100mLにメスアップし、本発明の組成物(実施例28〜31)とした。さらにこれらの組成物を孔径0.22μmのメンブランフィルターでろ過して、ガラス製バイアルに5mL充てんした。密封後、充填した液を5℃、25℃及び40℃で3ヶ月もしくは1年間保存し、保存後の組成物の外観を観察した。
【0035】
表5に各組成物の組成と、調製直後及び保存後の組成物の外観を示した。
本発明の組成物はいずれも無色澄明であり、各種条件下で保存しても長期間にわたり再結晶化などは起こらず安定であった。
【0036】
【表5】

【0037】
実施例32(注射剤)
2gのブリンゾラミド、3gのクエン酸、40gのPEG4000、5gのHCO-60と7gのNaClに、700mLの精製水を添加し、溶解するまで攪拌した。溶解を確認後、NaOHでpHを5.3〜5.4に調整し、精製水で1Lにメスアップした。これを孔径0.22μmのメンブランフィルターでろ過して、ガラス製アンプルに5mL充てんし、溶封し、注射剤とした。
【0038】
実施例33(点眼剤)
5gのSM-4に、85℃に加熱した300mLの精製水を添加し攪拌することで分散させた。均一に分散したことを確認後、攪拌しながら氷冷した。全体が澄明になったことを確認後、室温に戻るまで放置した。
これとは別に2gのクエン酸、40gのPEG4000、5gのHCO-60、39gのマンニトールと5gのクロロブタノールに、500mLの精製水を添加し、50℃に加温し、溶解するまで攪拌した。溶解を確認後、室温に戻るまで放置した。ここに2gのブリンゾラミドと先に調製したSM-4水溶液を加え、すべての成分が溶解し、均一になったことを確認後、NaOHでpHを5.3〜5.4に調整し、精製水で1Lにメスアップした。これを孔径0.22μmのメンブランフィルターでろ過して、プラスチック製点眼ボトルに5mL充てんし、密封し、点眼剤とした。
【産業上の利用可能性】
【0039】
ブリンゾラミドが完全に溶解した水性組成物を提供することにより、従来の懸濁性点眼液で発生するような点眼時の霧視を軽減すると予測され、患者負担が減り、より使いやすくなると期待される。
また、懸濁性点眼液の製造には複雑な装置が必要であったが、本組成物は完全に溶解しており、製造が複雑でないため、生産コストの低減及び無菌性の確保が容易になることを期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ブリンゾラミドと、
(B)多価カルボン酸もしくはその薬学的に許容される塩、酸性糖もしくはその薬学的に許容される塩、及びムコ多糖もしくはその薬学的に許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、水性組成物。
【請求項2】
(B)多価カルボン酸がクエン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
(B)酸性糖がグルクロン酸、ガラクツロン酸、ラクトビオン酸、ソルビン酸及びグルコン酸から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の水性組成物。
【請求項4】
(B)ムコ多糖がヒアルロン酸である請求項1に記載の水性組成物。
【請求項5】
(C)多価アルコール、界面活性剤、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の水性組成物。
【請求項6】
(C)多価アルコールがポリエチレングリコール、グリセリン及びプロピレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項5に記載の水性組成物。
【請求項7】
(C)界面活性剤がポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリソルベートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項5に記載の水性組成物。
【請求項8】
(C)セルロース誘導体が、メチルセルロース、ヒプロメロース及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項5に記載の水性組成物。
【請求項9】
(D)追加薬剤を含む請求項1または5に記載の水性組成物。
【請求項10】
(D)追加薬剤が抗感染剤、抗アレルギー薬、抗炎症剤、緑内障治療薬、角膜障害及びドライアイ治療剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項8に記載の水性組成物。
【請求項11】
注射剤または点眼剤の形態にある請求項9に記載の水性組成物。

【公開番号】特開2010−37327(P2010−37327A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144810(P2009−144810)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000100492)わかもと製薬株式会社 (22)
【Fターム(参考)】