説明

ブレ−ドおよびその製造方法

【課題】 例えばダイシングブレ−ドに好適で、スロット部における切削油等の冷却流体の流れを整え、スロット部に発生する冷却流体の動圧を高めてブレ−ドを安定して支持し、ブレ−ドの振動や回転音の発生を抑制するとともに、スロット部の剛性を向上し、応力の発生やチッピングの発生を抑制して、ワ−クの高品質な加工を図るとともに、これを合理的かつ容易に製造できる、ブレ−ドおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】
砥粒4を被覆したブレ−ド本体1の切削側周面に複数のスロット部6を設けたブレ−ドであること。
前記スロット部6を平滑な溝状に形成したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばダイシングブレ−ドに好適で、スロット部における切削油等の冷却流体の流れを整え、スロット部に発生する冷却流体の動圧を高めてブレ−ドを安定して支持し、ブレ−ドの振動や回転音の発生を抑制するとともに、スロット部の剛性を向上し、応力の発生やチッピングの発生を抑制して、ワ−クの高品質な加工を図るとともに、これを合理的かつ容易に製造できる、ブレ−ドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬質石材やFRP(繊維強化プラスティック)、CFRP(炭素繊維強化プラスティック)、半導体ウエハ−の切断用ブレ−ドとして、円板形のブレ−ドの外周に孔状の複数のスロットを設け、該スロットの表裏両面と端面に外側ダイヤモンド砥粒層を設け、その内側の表裏両面に内側ダイヤモンド砥粒層を環状に設け、この内外側の砥粒層の間に砥粒を被覆しない環状の周溝を設け、切屑の排出を促す一方、前記内外側の砥粒層の砥粒を電気化学的手法によって被着させた電着ブレ−ドがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記電着ブレ−ドは、高速回転下のワ−ク切削時に切削油等の冷却流体が注入され、該冷却流体がスロットに流入して動圧を発生するが、スロットが孔状に形成されているため、冷却流体の円滑な流れが阻害され、冷却流体が流出するスロットの円周方向の端部とワ−クとの間の動圧が低下して、ブレ−ドの支持の安定性が低下し、ブレ−ドの振動や回転音が発生するとともに、スロット部の剛性が低下して、応力やチッピングが発生しワ−クの高品質な加工が困難になる上に、スロットないしブレ−ドの製作が難しいという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するものとして、外周部のスロットをなくして円板状にブレ−ドを形成し、その外周部の表裏両面と端面に第1の砥粒層を設け、該砥粒層の内側に第1の砥粒層と砥粒径を異にする第2の砥粒層を設け、これら第1および第2の砥粒層の間に、スロットに相当する砥粒を被覆しない環状溝を設けるとともに、第1の砥粒層の砥粒径を第2の砥粒層の粒径よりも大径にして、第2の砥粒層側に逃げを設け、切削抵抗の低減と発熱を抑制するとともに、切屑の排出性を向上するようにした電着ブレ−ドがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、この従来の電着ブレ−ドは、環状溝が円周方向の全域で連通しているため、環状溝で発生した冷却流体の動圧が低く、ブレ−ドの支持の安定性が低下し、ブレ−ドの振動や回転音が発生するとともに、スロット部の剛性が低下して、応力やチッピングが発生しワ−クの高品質な加工が困難になる上に、電着ブレ−ドの製造に二種類の砥粒を要し、その電着作業が煩雑で手間が掛かるという、問題があった。
【0006】
前記問題を解決するものとして、円板形のブレ−ドを三層構造に形成し、その中央に砥粒を金属結合剤で結合したメタルボンド層を設け、その両側に砥粒を樹脂結合剤で結合したレジンボンド層を設け、前記各層の砥粒の粒径と硬度を互いに相違させる一方、両側のレジンボンド層の円周方向に複数の段差部を形成し、この段差部を半径方向内側の取付穴に連通させたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかし、前記ブレ−ドの段差部は取付穴に連通し、また段差部に砥粒が表出して、冷却流体の円滑な流れが阻害されるため、段差部で発生した冷却流体の動圧が低く、ブレ−ドの支持の安定性が低下し、ブレ−ドの振動や回転音が発生するとともに、スロット部の剛性が低く、応力やチッピングが発生してワ−クの高品質な加工が困難になるという問題があった。
しかも、前記ブレ−ドはメタルボンド層とレジンボンド層とを重合して構成し、その製造に二種類の砥粒と結合剤を要するとともに、各砥粒と結合剤を別々に型込めし、これらを加圧しながら加熱して製作するため、製造が煩雑で手間が掛かるとともに、段差部に砥粒が表出するため、段差部による切屑の排出性が低下し、発熱や切削効率の低下を来たす等の問題があった。
【0008】
前記問題を解決するものとして、その製作時に電着槽内に収容した電解液にダイヤモンド砥粒を混入し、前記電解液に電解金属と電着基盤を収容し、これらに所定電圧を印加して、電着基盤にダイヤモンド砥粒と電解金属の母体金属とからなる電着層を形成する一方、電着層を所定厚形成後、電着基盤を電解液から取り出し、該電着基盤を水酸化ナトリウムにより溶解してブレ−ドを形成後、該ブレ−ドの外周面を適宜マスキングし、その表出部をDLC(ダイヤモンド状カ−ボン)コ−テング装置を介してDLCをコ−テングした電鋳ブレ−ドがある(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
しかし、前記電鋳ブレ−ドは、ブレ−ドの外周面の複数箇所にDLCをコ−テングし、コ−テング以外の部分が凹状を呈し、これが半径方向内側の取付穴に連通するため、DLCコ−テング間で発生した冷却流体の動圧が低く、ブレ−ドの支持の安定性が低下し、ブレ−ドの振動や回転音が発生するとともに、応力やチッピングが発生してワ−クの高品質な加工が困難になる一方、その製作に高価なDLCコ−テング装置を要し、設備費が嵩むとともに、電着層形成後に電着基盤を溶解するため、製作分の電着基盤と溶解液を要する等して量産性に欠け、また製造工程が煩雑で手間が掛かる、という問題があった。
【0010】
【特許文献1】特開平10−128673号公報
【特許文献2】特許第3380646号公報
【特許文献3】特開2002−210664号公報
【特許文献4】特開2000−144477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題を解決し、例えばダイシングブレ−ドに好適で、スロット部における切削油等の冷却流体の流れを整え、スロット部に発生する冷却流体の動圧を高めてブレ−ドを安定して支持し、ブレ−ドの振動や回転音の発生を抑制するとともに、スロット部の剛性を向上し、応力の発生やチッピングの発生を抑制して、ワ−クの高品質な加工を図るとともに、これを合理的かつ容易に製造できる、ブレ−ドおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、砥粒を被覆したブレ−ド本体の切削側周面に複数のスロット部を設けたブレ−ドにおいて、前記スロット部を平滑な溝状に形成し、孔状のスロット部に比べ剛性を向上するとともに、スロット部における切削油等の冷却流体の流れを整え、スロット部に発生する冷却流体の動圧を高めてブレ−ドを安定して支持し、ブレ−ドの振動や回転音の発生を抑制するとともに、応力の発生やチッピングの発生を抑制して、ワ−クの高品質な加工を図るとともに、これを合理的かつ容易に製造できるようにしている。
請求項2の発明は、前記スロット部をブレ−ド本体の円周方向に溝成形し、ワ−クの切削時に供給される切削油等の冷却流体の流れに沿わせて、冷却流体の層流状の流れを促し、冷却流体の圧力損失を防止して、スロット部に発生する冷却流体の動圧を高めるようにしている。
請求項3の発明は、前記スロット部の円周方向の深さを、中間部よりも端部側を浅く形成し、スロット部における冷却流体の層流状の流れを促し、スロット部に発生する冷却流体の動圧を高めるとともに、スロット部の空隙を小スペ−ス化し、一様な深さのスロット部に比べ動圧を効率良く高めるようにしている。
【0013】
請求項4の発明は、前記スロット部の半径方向の深さのうち、切削部側を最も深く形成し、切り込み時の良好な切れ味を得られるとともに、切削進行後の切削の負担を軽減するようにしている。
請求項5の発明は、前記スロット部の円周方向の断面形状を、湾曲面状に形成し、スロット部の剛性を向上するとともに、スロット部における冷却流体の流れを層流状に整え、スロット部に発生する冷却流体の動圧の圧力損失を防止し、ブレ−ドを安定して支持するようにしている。
請求項6の発明は、前記スロット部の半径方向の断面形状を、テ−パ状に形成し、スロット部の溝成形の容易化と切屑の円滑な排出を図るようにしている。
請求項7の発明は、前記スロット部の切削部側の湾曲面形状を、その半径方向の他側の湾曲面形状よりも曲率半径を小さく形成し、スロット部の切削部側における冷却流体の層流状の流れを促し、冷却流体の動圧の圧力損失を防止するようにしている。
【0014】
請求項8の発明は、前記スロット部に金属薄膜を被覆し、該スロット部の平滑性を向上して、スロット部における冷却流体の流れを整え、かつ冷却流体の動圧の圧力損失を防止するとともに、切屑を円滑に排出し得るようにしている。
請求項9の発明は、前記ブレ−ド本体を帯板若しくは無端状の帯板または線材で形成し、バンドソ−またはワイヤソ−に適用し得るようにしている。
請求項10の発明は、前記ブレ−ド本体を金属若しくは非金属板または金属皮膜で形成し、製作条件や使用条件に応じて、ブレ−ド本体に多様な材質または形態を採用し得るようにしている。
【0015】
請求項11の発明は、砥粒を含有した電解液に砥粒マスクを被着したブレ−ド本体を浸漬し、該ブレ−ド本体の電着面に砥粒を沈積し、これを析出金属で固着するブレ−ドの製造方法において、前記ブレ−ド本体の電着面に、電解液を透過し砥粒を透過しない絶縁性の砥粒マスクを被着し、前記砥粒マスクによるブレ−ド本体のマスク部に、平滑な溝状の複数のスロット部を形成し、砥粒マスクによって砥粒の沈積の有無によるスロット部の形成と、該スロット部に対する金属薄膜の被覆とを同時に実現し、製作の合理化を図るようにしている。
請求項12の発明は、前記スロット部に金属薄膜を被覆し、該被覆をスロット部の形成と同時に行ない、製作の合理化を図るようにしている。
【0016】
請求項13の発明は、前記スロット部をブレ−ド本体の円周方向に溝成形し、スロット部を更に溝成形して、スロット部における冷却流体の層流状の流れを促すとともに、直線状の溝成形に比べ溝成形の容易化を図るようにしている。
請求項14の発明は、前記スロット部の円周方向の断面形状を湾曲面状に形成し、スロット部を円周方向に矩形断面に溝成形する場合に比べ、スロット部の剛性の低下を防止するようにしている。
請求項15の発明は、前記スロット部の切削部側を、その半径方向の他側よりも深く溝成形し、全域を同じ深さに成形する場合に比べ、スロット部の剛性の低下を防止するようにしている。
【0017】
請求項16の発明は、砥粒を含有した電解液に砥粒マスクを被着した金属製の母型材を浸漬し、該母型材の電着面に砥粒を沈積し、これを析出金属で固着後、母型材から剥離するブレ−ドの製造方法において、前記母型材の電着面の所定位置をマスク部材で絶縁し、前記母型材の電着面に電解液を透過し砥粒を透過しない絶縁性の砥粒マスクを被着し、前記砥粒マスクによる母型材のマスク部に、金属皮膜を被覆した平滑な溝状の複数のスロット部を形成し、該スロット部と砥粒の固着部とを母型材から物理的または化学的に剥離し、簡単な方法によってスロット部を有するブレ−ドを容易に製作し得るとともに、ブレ−ドの剥離法を製作条件に応じて選択し得るようにしている。
【0018】
請求項17の発明は、前記母型材の電着面を電着金属の密着性を抑制可能に構成し、スロット部と砥粒の固着部とを母型材から物理的に剥離可能にし、ブレ−ドの物理的な剥離を実現可能にしている。
請求項18の発明は、前記母型材の少なくとも電着面に、不動態皮膜または窒化皮膜若しくは酸化皮膜を生成した金属を配置し、ブレ−ドの物理的な剥離の実現を具体化にしている。
請求項19の発明は、前記スロット部と砥粒の固着部とを母型材から物理的に剥離後、該母型材を再利用し、母型材を化学剤で溶解する方法に比べて、母型材の合理的な利用を図るようにしている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明は、スロット部を平滑な溝状に形成したから、孔状のスロット部に比べ剛性を向上できるとともに、スロット部における切削油等の冷却流体の流れを整え、スロット部に発生する冷却流体の動圧の圧力損失を防止して、ブレ−ドを安定して支持し、ブレ−ドの振動や回転音の発生を抑制するとともに、応力の発生やチッピングの発生を抑制して、ワ−クの高品質な加工を図るとともに、これを合理的かつ容易に製造できる効果がある。
請求項2の発明は、前記スロット部をブレ−ド本体の円周方向に溝成形したから、ワ−クの切削時に供給される切削油等の冷却流体の流れに沿わせて、冷却流体の層流状の流れを促し、冷却流体の圧力損失を防止して、スロット部に発生する冷却流体の動圧を高めることができる。
請求項3の発明は、前記スロット部の円周方向の深さを、中間部よりも端部側を浅く形成したから、スロット部における冷却流体の層流状の流れを促し、スロット部に発生する冷却流体の動圧を高めるとともに、スロット部の空隙を小スペ−ス化し、一様な深さのスロット部に比べ動圧を効率良く高めることができる。
【0020】
請求項4の発明は、前記スロット部の半径方向の深さのうち、切削部側を最も深く形成したから、切り込み時の良好な切れ味を得られるとともに、切削進行後の切削の負担を軽減することができる。
請求項5の発明は、前記スロット部の円周方向の断面形状を、湾曲面状に形成したから、スロット部の剛性を向上できるとともに、スロット部における冷却流体の流れを層流状に整え、スロット部に発生する冷却流体の動圧の圧力損失を防止して、ブレ−ドを安定して支持することができる。
請求項6の発明は、前記スロット部の半径方向の断面形状を、テ−パ状に形成したから、スロット部の溝成形の容易化と切屑の円滑な排出を図ることができる。
請求項7の発明は、前記スロット部の切削部側の湾曲面形状を、その半径方向の他側の湾曲面形状よりも曲率半径を小さく形成したから、スロット部の切削部側における冷却流体の層流状の流れを促し、冷却流体の動圧の圧力損失を防止することができる。
【0021】
請求項8の発明は、前記スロット部に金属薄膜を被覆したから、該スロット部の平滑性を向上することができ、スロット部における冷却流体の流れを整え、かつ冷却流体の動圧の圧力損失を防止できるとともに、切屑を円滑に排出することができる。
請求項9の発明は、前記ブレ−ド本体を帯板若しくは無端状の帯板または線材で形成したから、バンドソ−またはワイヤソ−に適用し得る効果がある。
請求項10の発明は、前記ブレ−ド本体を金属若しくは非金属板または金属皮膜で形成したから、製作条件や使用条件に応じて、ブレ−ド本体に多様な材質または形態を採用することができる。
【0022】
請求項11の発明は、ブレ−ド本体の電着面に、電解液を透過し砥粒を透過しない絶縁性の砥粒マスクを被着し、前記砥粒マスクによるブレ−ド本体のマスク部に、平滑な溝状の複数のスロット部を形成するから、砥粒マスクによって砥粒の沈積の有無によるスロット部の形成と、該スロット部に対する金属薄膜の被覆とを同時に実現でき、製作の合理化を図ることができる。
請求項12の発明は、前記スロット部に金属薄膜を被覆するから、該被覆をスロット部の形成と同時に行ない、製作の合理化を図ることができる。
【0023】
請求項13の発明は、前記スロット部をブレ−ド本体の円周方向に溝成形するから、スロット部を更に溝成形して、スロット部における冷却流体の層流状の流れを促すことができるとともに、直線状の溝成形に比べ溝成形の容易化を図ることができる。
請求項14の発明は、前記スロット部の円周方向の断面形状を湾曲面状に形成するから、スロット部を円周方向に矩形断面に溝成形する場合に比べ、スロット部の剛性の低下を防止することができる。
請求項15の発明は、前記スロット部の切削部側を、その半径方向の他側よりも深く溝成形するから、全域を同じ深さに成形する場合に比べ、スロット部の剛性の低下を防止することができる。
【0024】
請求項16の発明は、母型材の電着面の所定位置をマスク部材で絶縁し、前記母型材の電着面に電解液を透過し砥粒を透過しない絶縁性の砥粒マスクを被着し、前記砥粒マスクによる母型材のマスク部に、金属皮膜を被覆した平滑な溝状の複数のスロット部を形成し、該スロット部と砥粒の固着部とを母型材から物理的または化学的に剥離するから、簡単な方法によってスロット部を有するブレ−ドを容易に製作し得るとともに、ブレ−ドの剥離法を製作条件に応じて選択し得る効果がある。
【0025】
請求項17の発明は、前記母型材の電着面を電着金属の密着性を抑制可能に構成し、スロット部と砥粒の固着部とを母型材から物理的に剥離可能にするから、ブレ−ドの物理的な剥離を実現することができる。
請求項18の発明は、前記母型材の少なくとも電着面に、不動態皮膜または窒化皮膜若しくは酸化皮膜を生成した金属を配置するから、ブレ−ドの物理的な剥離の実現を具体化することができる。
請求項19の発明は、前記スロット部と砥粒の固着部とを母型材から物理的に剥離後、該母型材を再利用するから、母型材を化学剤で溶解する方法に比べて、母型材の合理的な利用を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明をダイシングに好適なブレ−ドとその製造方法に適用した図示の実施形態について説明すると、図1乃至図14において1はニッケルまたはニッケル合金製の円板状のブレ−ド本体で、厚さ0.04〜0.2mm、外径40〜110mmに形成され、その中央に取付け孔2が形成されている。
この場合、ブレ−ド本体1をセラミックス等の非金属で構成することも可能であり、その場合は電着部に予め金属皮膜を形成して置く。
【0027】
前記ブレ−ド本体1の電着面である表裏両面および外端面に砥粒層3が形成され、該砥粒層3は固着工程と肉盛工程の二段階複合めっきによって形成され、その製作に際しては、先ず3〜30μmのダイヤモンドまたはCBN(立方晶窒化ホウ素)の砥粒4を、めっき液(電解液)5に分散して撹拌し、これをブレ−ド本体1に沈積かつ固着する。
【0028】
次に、前記砥粒4を固着したブレ−ド本体1を、砥粒4が分散していないめっき液(図示略)に収容してめっきし、前記固定した砥粒4間に金属イオンを析出して肉盛し、砥粒4の脱落を防止する。
この場合、砥粒径が10μm以下の場合は、前記固着工程だけで砥粒4の脱落を防止し得るから、前述の肉盛工程を省略し得る。
【0029】
前記ブレ−ド本体1の表裏両側面に砥粒4の電着を阻止ないし回避し、したがって砥粒層3ないし砥粒4分、溝状または凹状の複数のスロット部6が間隔を置いて形成され、その正面形状は図1のように略矩形または地紙形状に形成されている。
【0030】
前記スロット部6は、例えば後述の放電加工によって更に溝成形され、実施形態では溝の断面形状として緩やかな湾曲面に形成され、その湾曲面は図3乃至図7に示すように、円周方向の中央を中心に溝深さが円周方向に沿って緩やかに減少する湾曲面に形成されている。
【0031】
前記半径方向の湾曲面の断面形状は、半径方向内側の方が外側のものよりも緩やかに湾曲形成され、その溝深さd〜dは図7のように、半径方向の外側に次第に深く形成され(d>d>d)、最外側位置の溝深さdを30μmに形成している。
この場合、スロット部6の半径方向の溝は、前述のようにテ−パ状に形成されているが、半径方向の全域に亘って同じ深さに形成しても良く、そのようにすることで溝成形が容易になる。
【0032】
前記ブレ−ド本体1の外周部の両面に、スロット部6に対する砥粒4の沈積防止手段として、ブレ−ド本体1より大径のリング状の砥粒マスク7,7が取り付けられている。
前記砥粒マスク7は、めっき液5を透過し砥粒4を透過しない、つまり砥粒4の沈積を阻止しめっき可能な、フェルトまたはスポンジまたはろ布等の薄肉の絶縁部材で形成されている。
【0033】
前記砥粒マスク7の内周部で前記スロット部6と対応位置に、前記スロット部6と略同形の複数のマスクピ−ス8が内側に突設され、これらのマスクピ−ス8は砥粒4の沈積時に、ブレ−ド本体1の上下に配置した砥粒マスク7において、同相位置に配置されている
【0034】
前記ブレ−ド本体1に対する砥粒4の沈積は、電着装置9で製造され、該装置9はブレ−ド本体1を収容可能な浴槽10と、該浴槽10に収容しためっき液5および砥粒4と、砥粒4とめっき液5を循環供給可能な循環パイプ11および循環ポンプ12と、前記めっき液5に浸漬した電極板13と、ファンまたはスタ−ラ等の撹拌装置(図示略)を備え、該電極板13に電源装置14から正電圧を印加可能にしている。
【0035】
前記砥粒4の沈積時は、ブレ−ド本体1の表裏両面に砥粒マスク7が被着され、該砥粒マスク7のマスク部を除くブレ−ド本体1の表裏両面と、外周部端面に砥粒4を沈積し、かつこれをめっき皮膜で固着可能にしている。
この場合、前述のような外部電源を要する電解めっきの代わりに、外部電源を要しない無電解めっきによって、砥粒4を沈積することも可能である。
【0036】
その際、砥粒マスク7のマスクピ−ス8でマスクした、スロット部6の形成位置であるマスク部15には、砥粒4の沈積が阻止され、当該部は図12および図13のように砥粒層3ないし砥粒4が存在しない分、凹状に形成され、かつその表面にブレ−ド本体1の平坦な金属皮膜部が表出している。
【0037】
前記砥粒4の沈積後、ブレ−ド本体1のマスク部15の断面形状を湾曲面状に成形し、この湾曲成形手段として実施形態では放電加工を用いている。
すなわち、前記ブレ−ド本体1のマスク部15上に高電圧を印加可能な電極棒16を移動可能に配置し、前記マスク部15の断面形状を所定の湾曲面に習わせて、精密に溝加工可能にしている。
【0038】
なお、この実施形態ではスロット部6の断面形状を円周方向の中央部を中心に対称な湾曲面に形成しているが、円周方向に非対称な湾曲面であっても良く、また湾曲面の代わりに、スロット部6の円周方向の中央を中心に、その溝深さが円周方向に漸減するテ−パ状、または漸減でなく円周方向の一端、つまり切削油等冷却流体の流出側の端部の溝深さが、円周方向の中央の溝深さよりも浅いければ良い。
【0039】
このように構成した本発明のブレ−ドを製造する場合は、ニッケルまたはニッケル合金製の円板状のブレ−ド本体1と、例えばろ布製のブレ−ド本体1より大径の絶縁性の砥粒マスク7とを製作し、該マスク7をブレ−ド本体1の表裏両面に同相位置に配置し、これらを浴槽10内の底部に適宜手段で水平に設置する。
【0040】
次に、前記浴槽10内に、例えばニッケルめっき液5を収容し、該めっき液5に前記設置した砥粒マスク7とブレ−ド本体1を浸漬する。
そして、前記めっき液5に所定粒度のダイヤモンドまたはCBNの砥粒4を分散し、これを撹拌装置で撹拌するとともに、循環ポンプ12を駆動して砥粒4とめっき液5を浴槽10に循環供給する。
【0041】
このような状況の下で、前記めっき液5に電極板13を投入し、該電極板13とブレ−ド本体1に通電すると、正極側の電極板13から金属イオンが放出され、これがめっき液5に拡散して陰極側のブレ−ド本体1側へ移動し、該本体1の電着面全域と、外周部端面に析出する。この状況は図8のようである。
その際、砥粒マスク7は絶縁部材で構成されているから、該砥粒マスク7に金属イオンは析出しない。
【0042】
また、前記めっき液5に拡散した砥粒4が、砥粒マスク7のマスク部を除くブレ−ド本体1の電着面に沈積し、該砥粒4が前記析出した金属イオンを介して固着され、砥粒4と金属皮膜とが層状に堆積して砥粒層3を形成する。
その際、前記マスク部15にはめっき液5が浸透して金属イオンが析出するが、砥粒4は沈積しない。
【0043】
この場合、前記砥粒4が10μm以上のときは、砥粒4の固着力が弱く脱落する惧れがあるから、その脱落防止手段として、前記砥粒4を固着したブレ−ド本体1を、砥粒4が分散していない別のめっき液(図示略)に収容してめっきし、前記固定した砥粒4間に金属イオンを析出して肉盛すれば、砥粒4の脱落を防止し得る。
【0044】
このようにしてブレ−ド本体1の表面に、所定厚の砥粒層3が形成されたところで、通電を停止し、マクキングしたブレ−ド本体1を浴槽10から取り出し、砥粒マスク7を取り外せば、ブレ−ド本体1に対する砥粒4の沈積ないし固着が終了する。
この状況は図11乃至図13のようで、マスク部15を除くブレ−ド本体1の表裏両面と、外周部端面に砥粒層3が形成され、マスク部15には砥粒4が沈積されず、めっき皮膜だけが形成されている。したがって、マスク部15は、周囲の砥粒層3ないし砥粒4の表面に比べ、溝状ないし凹状に形成されている。
【0045】
この後、砥粒4を固着した前記ブレ−ド本体1を溝成形工程へ移動する。
実施形態では、前記溝成形手段として放電加工を用い、前記ブレ−ド本体1を放電加工機へ移動し、そのマスク部15上に電極棒16を移動可能に設置し、前記電極棒16を所定の溝断面形状に習わせて移動し、当該部を溶融して精密に溝加工する。
この場合、マスク部15は前述のように平坦なブレ−ド本体1に薄膜のめっき皮膜が形成され、砥粒層3ないし砥粒4が存在しないから、それだけ放電加工を容易かつ精密に行なえる。
【0046】
前記溝加工として実施形態では、その断面形状を円周方向に緩やかな湾曲面に形成している。
その湾曲面の断面形状は図3乃至図7に示すように、円周方向の中央を中心に、円周方向に沿って溝深さが減少する緩やかな湾曲面に形成され、その湾曲面の形状は、半径方向内側の方が外側のものよりも緩やかに湾曲形成され、かつその溝深さd〜dは、図7のように半径方向の外側に次第に深く形成されていて(d>d>d)、最外側位置の溝深さdを30μmに形成している。
そして、前記ブレ−ド本体1の各マスク部15を溝加工したところで、本発明の一連のブレ−ド製造作業が終了する。
【0047】
このように本発明のブレ−ドは、従来の孔状のスロットに相当するスロット部6を電着工程で形成し、その溝状の平坦面を更に凹状湾曲面に溝成形しているから、孔状に形成したり、略コ字形断面に形成する従来のスロット部に比べて、スロット部の剛性ないし機械的強度が強化される。
また、本発明のブレ−ドは、成形型や機械加工を要せず、また単一の砥粒4を一様に被着しているから、異種また異径の砥粒4を要するものや、ブレ−ドの断面を異形に形成し、これを加圧成形する従来のものに比べて、構成が簡単で容易に製作できる。
【0048】
こうして製作したブレ−ドを用いて、ウエハ−等の硬質のワ−ク(図示略)を切断する場合は、取付け孔2にスピンドル(図示略)を挿入し、前記ブレ−ドの前後をフランジ(図示略)で挟持し、これらをスピンドルの螺軸端にねじ込んだナット(図示略)を介して固定する。
この後、スピンドル(図示略)を回転してブレ−ドを回転すると、ブレ−ド外周部の両側面と外端面の砥粒層3ないし砥粒4がワ−クに接触して切断され、また凹状のスロット部6が間欠的にワ−クに接触して、良好な切れ味が得られる。
【0049】
前記ワ−クの切削に伴なって切屑が生成され、この切屑はスロット部6の溝方向、つまり半径方向内側へ移動し、つまり外周部の深溝側から内側の浅溝側へ移動して排出される
この場合、スロット部6は溝状ないし湾曲面に形成されているから、平坦なスロット部を移動する場合に比べて、切屑の移動に一定の指向性が与えられ、その飛散を防止する。しかも、スロット部6の湾曲面には砥粒4が存在せず、平滑に形成されているから、切屑の移動が促進され切削効率が向上して、ブレ−ドとワ−クの発熱を抑制する。
【0050】
また、前記ワ−クの切削に伴なって、ブレ−ドに切削油等の冷却流体が供給され、該冷却流体はブレ−ド本体1の円周方向に移動するから、前記冷却流体がスロット部6に流入しても、円周方向の流れが乱されることなくスロット部6に沿って移動し、スロット部6のブレ−ドの回転方向と反対側端部から排出される。
その際、前記冷却流体はスロット部6で動圧を発生し、その動圧は冷却流体がスロット部6と同動する間、その動圧をスロット部6に作用してブレ−ドを支持し、ブレ−ドの振動の発生ないし振動と回転音の発生を抑制する。
【0051】
この場合、前記冷却流体はスロット部6の湾曲面に沿って、略層流状態を維持して円滑かつ整然と移動し、しかも湾曲面が平滑に形成されているから、該湾曲面における流体摩擦やエネルギ−損失が抑制され、また乱流の発生がなく、前記動圧の低下を防止する。
【0052】
しかも、前記スロット部6の断面形状は、円周方向に湾曲形成されているから、これが矩形断面ないし平坦な底面の場合に比べて、スロット部6の空隙面積ないし空隙体積が小さくなり、その分動圧を高められるから、スロット部6が一種の動圧軸受けを呈してブレ−ドを安定して支持し、ブレ−ドの振動や回転音の発生を阻止する。
このため、ワ−クの振動や応力の発生が抑制され、チッピングの発生が阻止されて、ワ−クの高品質な加工が実現可能になる。
【0053】
図15乃至図20は本発明の他の実施形態を示し、前述の構成と対応する部分に同一の符号を用いている。
このうち、図15および図16は本発明の第2の実施形態を示し、この実施形態は、スロット部6をブレ−ドの外周部に形成する代わりに、ワ−クを挿入可能な挿通孔17の内周面に間隔を置いて形成し、内周型ブレ−ドに対応可能にしている。
【0054】
図17は本発明の第3の実施形態を示し、この実施形態は本発明をバンドソ−に適用したもので、ブレ−ド本体1を薄厚帯状のバネ鋼またはステンレス鋼で構成し、該本体1の両端部を溶接して無端状に形成している。
そして、ブレ−ド本体1の表裏両面に砥粒層3を電着し、幅方向の一側または両側にマスク部材7を取り付けて、複数のスロット部6を間隔を置いて形成し、切屑の排出を促し発熱を防止するとともに、バンドソ−の薄厚化と切削能率の向上を図り、ワ−クの応力の発生を防止してチッピングの発生を抑制し、ワ−クを高品質に加工し得るようにしている
【0055】
図18は本発明の第4の実施形態を示し、この実施形態は本発明をワイヤソ−に適用したもので、ブレ−ド本体1をピアノ線等で構成し、該本体1の周囲に砥粒層3とスロット部6とを交互に環状またはスパイラル状に形成している。
このようにすることで、切屑の排出を促し発熱を防止するとともに、ワイヤソ−の小径化と切削能率の向上を図り、ワ−クの応力の発生を防止してチッピングの発生を抑制し、ワ−クを高品質に加工し得るようにしている。
【0056】
なお、図1乃至図16に示す各実施形態において、ブレ−ド本体1をニッケルまたはニッケル合金製の代わりに、アルミニウム等によって構成し、該ブレ−ド本体1に所定厚の砥粒層3とスロット部6とを形成したところで、ブレ−ド本体1をめっき液5から取り出し、これを水酸化ナトリウム溶液に浸漬して溶解し、薄膜の電着または電鋳ブレ−ドを製作することも可能である。
【0057】
このような電着または電鋳ブレ−ドは非常に薄厚(約0.02mm)で、切削時に砥粒層3がワ−クに間欠的に接触して切れ味が良く、またスロット部6の微小な段差によって、従来の孔状のスロットに比べ切削抵抗や振動、回転音や発熱が低下し、また切屑が円滑に排出されて、ワ−クの応力の発生やチッピングの発生を抑制し、ワ−クの高品質な加工を実現し得るから、半導体ウエハ−等のダイシングソ−に好適である。
【0058】
図19および図20は本発明の第5の実施形態を示し、この実施形態は別の電着または電鋳ブレ−ド18(以下、単にブレ−ド18と呼ぶ)と、その製造方法を示している。
前記ブレ−ド18の構成は、その厚さが超薄厚以外は図1と実質的に同一で、その製造に際して、ブレ−ド18よりも若干大径のブロック状の母型材19を要する。
【0059】
前記母型材19の電着面を形成する平坦面の外周部に、環状のマスク部材20を密着して配置(接着または塗布)し、またその中心部に円形のマスク部材21を密着して配置(接着または塗布)し、更に母型材19の側周面にも同様なマスク部材を配置する。
前記マスク部材20,21は絶縁性を有し、このうちマスク部材20の内径をブレ−ド18の外径と略同径に形成し、マスク部材21を前記取付け孔2またはワ−ク挿入孔17と同径に形成する。
【0060】
前記母型材19にマスク部材20,21を配置し、該母型材19上に前記砥粒マスク7を収容し、該マスク7をマスク部材20の内側に位置付けて保持し、これを浴槽10内に水平に収容する。
この後、前記浴槽10にめっき液5を収容し、該めっき液5に前記母型材19を浸漬して、これに負電圧を印加する。
【0061】
この状況は図8と実質的に同一で、めっき液5が砥粒マスク7を除く母型材19の表面に接触し、また砥粒マスク7からめっき液5が浸透してマスク部に接触し、これらの電着面に金属イオンが析出する。
この場合、マスク部材20,21は絶縁部材で構成され、金属イオンが析出しないから、マスク部材20,21に沈積した砥粒4はめっき皮膜で固着されず、容易に脱落ないし剥離する。
【0062】
こうして、めっき液5と砥粒4を撹拌しながら循環し、砥粒マスク7を除く母型材19の上面に砥粒4を沈積させ、このうちマスク部材20,21を除く上面に沈積した砥粒4を、前記析出金属で固着して砥粒層3を形成する。
この場合、砥粒マスク7は絶縁性を有するため、マスクピ−ス8の直下の母型材19には砥粒4が沈積されず、めっき皮膜のみが形成され、平坦なスロット部6が形成される。
【0063】
そして、母型材19に所定厚の砥粒層3と、スロット部6を形成したところで、通電を停止し、浴槽10から母型材19を取り出し、母型材19から前記砥粒マスク7を取り外して、砥粒層3とスロット部6とを母型材19から物理的に剥離し、薄膜状の電着ないし電鋳ブレ−ドを得る。この場合、金属皮膜がブレ−ド本体1に相当する。
【0064】
その際、例えば母型材19の表面を不動態皮膜を生成したステンレス鋼で構成し、該母型材19の電着面にニッケルめっき等をすれば、前記不動態皮膜がめっきの密着性を抑制するため、前記めっき皮膜を母型材19から容易に剥離でき、製作したブレ−ドの損傷を防止し得る。
したがって、例えばアルミニウム材で母型材19を構成し、これを薬液で溶解して電着ないし電鋳ブレ−ドを形成する方法に比べ、薬液の使用を省略して母型材19の再利用を図れ、ブレ−ドを合理的かつ安価に製作できる利点がある。
【0065】
また、母型材19をステンレス鋼の代わりに鉄鋼やその他の金属で構成し、その表面を表面酸化または表面窒化法、若しくは蒸着やスパッタ等の適宜手段で表面改質し、金属表面にTiN等の窒化皮膜やTiO等の酸化皮膜を生成し、これらの窒化皮膜や酸化皮膜にニッケル等のめっきをすれば、前記窒化皮膜等がめっきの密着性を抑制するため、前記めっき皮膜を母型材18から物理的に容易に剥離できる。
【0066】
なお、前述の実施形態において、マスク部15に放電加工等の溝加工をすることなく、平坦な素面状態で使用することも可能であり、そのようにすることで前記加工の省略分、ブレ−ドを容易かつ安価に製作できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
このように本発明のブレ−ドおよびその製造方法は、スロット部における切削油等の冷却流体の流れを整え、スロット部に発生する冷却流体の動圧を高めてブレ−ドを安定して支持し、ブレ−ドの振動や回転音の発生を抑制するとともに、スロット部の剛性を向上し、応力の発生やチッピングの発生を抑制して、ワ−クの高品質な加工を図るとともに、これを合理的かつ容易に製造できるから、例えばダイシングブレ−ドに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明を外周刃型の円板形ブレ−ドに適用した正面図である。
【図2】図2の側面図である。
【図3】図1のスロット部を拡大して示す正面図である。
【図4】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図4のB−B線に沿う断面図である。
【図6】図4のC−C線に沿う断面図である。
【0069】
【図7】図4のD−D線に沿う断面図である。
【図8】本発明によるブレ−ドの製作状態を示す説明図で、浴槽に収容しためっき液にブレ−ド本体を浸漬し、該ブレ−ド本体に砥粒を沈積している状況を示している。
【図9】本発明に適用した砥粒マスクとブレ−ド本体との取り付け状況を示す平面図である。
【図10】図9のE−E線に沿う断面図である。
【図11】本発明によるブレ−ドの製作途中を示す正面図で、ブレ−ド本体に砥粒を沈積しめっき皮膜で固着した状況を示している。
【図12】図4のF−F線に沿う断面図である。
【0070】
【図13】図4のG−G線に沿う断面図である。
【図14】本発明によるブレ−ドの製作途中を示す正面図で、スロット部を放電加工して溝加工している状況を示している。
【図15】本発明を内周刃型の円板形ブレ−ドに適用した第2の実施形態を示す正面図である。
【図16】図15のH−H線に沿う断面図である。
【図17】本発明をバンドソ−に適用した第3の実施形態を示す正面図である。
【図18】本発明をワイヤソ−に適用した第4の実施形態を示す正面図である。
【0071】
【図19】本発明を電着若しくは電鋳ブレ−ドに適用した第5の実施形態を示す斜視図である。
【図20】前記第5の実施形態の電着若しくは電鋳ブレ−ドの製造途中の状況を示す斜視図で、母型材の電着面に砥粒マスクを取り付ける状況を分解して示している。
【符号の説明】
【0072】
1 ブレ−ド本体
3 砥粒層
4 砥粒
6 スロット部
【0073】
7 砥粒マスク
18 電着若しくは電鋳ブレ−ド
19 母型材
20,21 マスク部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒を被覆したブレ−ド本体の切削側周面に複数のスロット部を設けたブレ−ドにおいて、前記スロット部を平滑な溝状に形成しことを特徴とするブレ−ド。
【請求項2】
前記スロット部をブレ−ド本体の円周方向に溝成形した請求項1記載のブレ−ド。
【請求項3】
前記スロット部の円周方向の深さのうち、中間部よりも端部側を浅く形成した請求項2記載のブレ−ド。
【請求項4】
前記スロット部の半径方向の深さを、切削部側を最も深く形成した請求項1または請求項2記載のブレ−ド。
【請求項5】
前記スロット部の円周方向の断面形状を、湾曲面状に形成した請求項3記載のブレ−ド
【請求項6】
前記スロット部の半径方向の断面形状を、テ−パ状に形成した請求項4記載のブレ−ド
【請求項7】
前記スロット部の切削部側の湾曲面形状を、その半径方向の他側の湾曲面形状よりも曲率半径を小さく形成した請求項3または請求項4記載のブレ−ド。
【請求項8】
前記スロット部に金属薄膜を被覆した請求項1記載のブレ−ド。
【請求項9】
前記ブレ−ド本体を帯板若しくは無端状の帯板または線材で形成した請求項1記載のブレ−ド。
【請求項10】
前記ブレ−ド本体を金属若しくは非金属板または金属皮膜で形成した請求項1記載のブレ−ド。
【請求項11】
砥粒を含有した電解液に砥粒マスクを被着したブレ−ド本体を浸漬し、該ブレ−ド本体の電着面に砥粒を沈積し、これを析出金属で固着するブレ−ドの製造方法において、前記ブレ−ド本体の電着面に、電解液を透過し砥粒を透過しない絶縁性の砥粒マスクを被着し、前記砥粒マスクによるブレ−ド本体のマスク部に、平滑な溝状の複数のスロット部を形成することを特徴とするブレ−ドの製造方法。
【請求項12】
前記スロット部に金属薄膜を被覆する請求項11記載のブレ−ドの製造方法。
【請求項13】
前記スロット部をブレ−ド本体の円周方向に溝成形する請求項11記載のブレ−ドの製造方法。
【請求項14】
前記スロット部の円周方向の断面形状を湾曲面状に形成する請求項13記載のブレ−ドの製造方法。
【請求項15】
前記スロット部の切削部側を、その半径方向の他側よりも深く溝成形する請求項13記載のブレ−ドの製造方法。
【請求項16】
砥粒を含有した電解液に砥粒マスクを被着した金属製の母型材を浸漬し、該母型材の電着面に砥粒を沈積し、これを析出金属で固着後、母型材から剥離するブレ−ドの製造方法において、前記母型材の電着面の所定位置をマスク部材で絶縁し、前記母型材の電着面に電解液を透過し砥粒を透過しない絶縁性の砥粒マスクを被着し、前記砥粒マスクによる母型材のマスク部に、金属皮膜を被覆した平滑な溝状の複数のスロット部を形成し、該スロット部と砥粒の固着部とを母型材から物理的または化学的に剥離することを特徴とするブレ−ドの製造方法。
【請求項17】
前記母型材の電着面を電着金属の密着性を抑制可能に構成し、スロット部と砥粒の固着部とを母型材から物理的に剥離可能にする請求項16記載のブレ−ドの製造方法。
【請求項18】
前記母型材の少なくとも電着面に、不動態皮膜または窒化皮膜若しくは酸化皮膜を生成した金属を配置する請求項17記載のブレ−ドの製造方法。
【請求項19】
前記スロット部と砥粒の固着部とを母型材から物理的に剥離後、該母型材を再利用する請求項17または請求項18記載のブレ−ドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−334714(P2006−334714A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161795(P2005−161795)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年3月1日 社団法人精密工学会発行の「2005年度 精密工学会春季大会 学術講演会講演論文集」に発表
【出願人】(300086953)三光製作株式会社 (1)
【出願人】(000209278)
【Fターム(参考)】