説明

ブローチ盤

【課題】ワークの加工面をブローチの軸線に対し常に直角に保つようにしたブローチ盤を提供する。
【解決手段】上受金19は円周方向にスプリング20により支持されている。上受金19には下受金15の球面18側に開口する有底の開口部21が形成されており、該開口部21には円周方向に複数個の鋼球22を回動自在に保持するリテーナ23が装着されている。リテーナ23は段付円筒形状を有し、大径部には鋼球22を収納すると共に、小径部は下受金15に遊挿され、該小径部の下面はボルト24により押え板25に係合している。これにより、リテーナ23は下受金15に接触して上下方向の動きが規制され、かつ鋼球22の動きが円滑になるように保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローチに対して被加工物を相対移動させたりあるいは被加工物に対して該ブローチを相対移動させさることにより、被加工物の内面または外面を所定の形状に加工するブローチ盤に関する。
【背景技術】
【0002】
図3及び図4に従来のブローチ盤40の一例を示す。図3及び図4において、参照符号41はワークWを載せる移動テーブルを示し、この移動テーブル41の面に垂直に縦方向にブローチ42を挿通し、該ブローチ42の下端をプルヘッド43に固定する。
参照符号44は縦方向(図3で上下方向)に起立した二本の案内レールを示し、これらの案内レール44の内側に摺動板45の左右の案内溝を嵌合する。摺動板45と移動テーブル41の左右を二枚のL字状のフック46により一体的に連結し、案内44の中間に配置した縦方向(図3で上下方向)の油圧シリンダ47の一端を摺動板45の下面に連結する。
【0003】
このブローチ盤40では、油圧シリンダ47を伸長して摺動板45が案内レール44に
沿って上昇する。これにより、移動テーブル41が縦方向のブローチ42に沿って上昇し、移動テーブル41上のワークWよりブローチ42が引き抜かれ、ワークWの内面または外面が所定の形状に切削される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−306116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では移動テーブル41に置かれたワークWは内面を加工する際に予め前穴加工されており、ブローチ42は前穴加工されたワークWの内面の部位に倣って所定の形状に加工される。このため、ブローチ42の軸線に対し直角を保つべきワークWの加工基準面に対する穴の傾き(倒れ)は高精度に確保されないと、ブローチ加工の精度が劣化するという欠点があった。
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、ワークの加工面(内面)をブローチの軸線に対し常に直角に保つことにより、前記問題を解決したブローチ盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために請求項1記載の発明は、ブローチを縦方向に起立してその下端にプルヘッド部を固定すると共に、ワークを載置すべきテーブルに前記ブローチを挿通して前記ワークを加工するブローチ盤において、
前記テーブルに挿着された前記プルヘッド部のスリーブに固着した下受金と、
前記下受金に対向して設けられた上受金と、
前記下受金の前記上受金に対向する面に形成され前記ブローチの軸心を中心として下に凸に形成された球面と、
前記上受金に装着されたリテーナ部材を介して上受金に回動自在に保持され前記球面に接触する鋼球と、
を備え、
前記ブローチにより前記ワークを加工する際、前記球面と前記鋼球からなる球面機構によりワークがブローチの軸心に倣って加工されることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明において、前記下受金に形成された球面は上に凸であること特徴する。
請求項3記載の発明において、前記上受金の前記下受金に対向する面に形成され前記ブローチの軸心を中心として上に凸に形成された球面を有することを特徴とする。
請求項4記載の発明において、前記上受金に形成された球面は上に凸であることを特徴する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、テーブルに挿着されたプルヘッド部のスリーブに固着された下受金と、前記下受金に対向して設けられた上受金と、前記下受金の前記上受金に対向する面に形成され前記ブローチの軸心を中心として形成された球面と、前記上受金に装着されたリテーナを介して上受金に回動自在に保持され前記球面に接触する鋼球とを備えるので、ブローチにより前記ワークを加工する際、前記球面と前記鋼球とよりなる球面機構によりワークが常にブローチの軸心に倣って加工されるので、高精度のブローチ加工をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係るブローチ盤の概略構造を示す正面図である。
【図2】本発明の第二の実施の形態に係るブローチ盤の概略構造を示す正面図である。
【図3】従来のブローチ盤の概略構造を示す側面図である。
【図4】図3の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るブローチ盤につき好適の実施の形態を挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第一の実施の形態に係るブローチ盤10の概略構造を示す正面図である。図1において、二点鎖線はプルヘッド部11の要部を示すもので、該プルヘッド部11を構成するラム12に挿着されプルヘッド部11を嵌着するスリーブ14の上面には、ボルスタ13が設けられている。ボルスタ13の上面にボルト16により下受金15の下面の固着がされている。下受金15の上面は下に凹でブローチ17の軸心を中心とする半径Rを軌跡とする球面18が形成されている。
【0011】
参照符号19は下受金15に対向して該下受金15の上面に位置する上受金を示すもので、上受金19は円周方向に複数個(図1では2個のみ表示する)のスプリング20により下受金15に支持されており無負荷時の水平を保つものである。
上受金19には下受金15の球面18側に開口する有底の開口部21が形成されており、
該開口部21には円周方向に複数個(図1では2個のみ表示する)の鋼球22を回動自在に保持するリテーナ(リテーナ部材)23が装着されている。リテーナ23は縦断面T字状を形成した段付円筒形状を有し、大径部には鋼球22を収納すると共に、小径部は下受金15に遊挿され、該小径部の下面はボルト24により押え板25に係合している。これにより、リテーナ23は下受金15に接触して上下方向の動きが規制され、かつ鋼球22の動きが円滑になるように保持されている。なお、参照符号26は、ワークWを上受金19に固定する位置決めピンを示すもので、円周方向に複数個(図1では2個のみ表示する)等配に設けられている。
【0012】
よって、下受金15の上面と上受金19の下面が互いに係合する接触面には、下受面に形成した球面18と該球面18に回動自在に保持される鋼球22が設けられているので、
上受金19は下受金15に対してブローチ17に軸心を中心として球面接触の状態に保持される。
これにより、ワークWが上受金19に取り付けられてブローチ17により該ブローチ17の前加工穴27が切削されて所定の形状に形成される際、ワークWの前加工穴27は球面移動によりブローチ17の軸心に倣って変位するようになる。よって、ワークWの前加工穴27の軸心はブローチ17の軸心に倣って切削加工されるので、ブローチ17によるワークWの加工精度を高度に確保することができる。
なお、図1の第一の実施の形態に係るブローチ盤10において、下受金15に形成した球面18は上に凸に形成してもよい。
【0013】
図2は本発明の第二の実施の形態に係るブローチ盤30の概略構造を示す正面図で、図2中、図1の構成要素と同一の構成要素については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図2のブローチ盤30の特徴は、上受金19の下面に上に凸になる球面31を設け、ワークWが薄肉による加工時の変形を防止するため該ワークWをホルダー33に装着して、ボルト32により上受金19に取り付けたことを特徴とする。参照符号34は下受金15の上面と上受金19の下面との間に設けられたばね部材で、ホルダー33がブローチ17の軸心に対して水平に保持できるように機能している。
図2に示すブローチ盤30では下受金15及び上受金19を互いにボルト部材20により固定せず、上受金19はばね部材34により位置決めされているので、下受金19上を自由に動くことができるようになっている。
なお、ブローチ盤30において、上受金19の下面に形成した球面31は下に凸に形成してよい。
【符号の説明】
【0014】
10、30 ブローチ盤 11 プルヘッド部
12 ラム 13 ボルスタ(テーブル)
14 スリーブ 15 下受金
17 ブローチ 18 球面
19 上受金イド 22 開口部
23 リテーナ 25 押え板
27 前加工穴














【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブローチを縦方向に起立してその下端にプルヘッド部を固定すると共に、ワークを載置すべきテーブルに前記ブローチを挿通して前記ワークを加工するブローチ盤において、
前記テーブルに挿着された前記プルヘッド部のスリーブに固着した下受金と、
前記下受金に対向して設けられた上受金と、
前記下受金の前記上受金に対向する面に形成され前記ブローチの軸心を中心として下に凸に形成された球面と、
前記上受金に装着されたリテーナ部材を介して上受金に回動自在に保持され前記球面に接触する鋼球と、
を備え、
前記ブローチにより前記ワークを加工する際、前記球面と前記鋼球からなる球面機構によりワークがブローチの軸心に倣って加工されることを特徴とするブローチ盤。
【請求項2】
請求項1記載のブローチ盤において、
前記下受金に形成された球面は上に凸であること特徴するブローチ盤。
【請求項3】
請求項1記載のブローチ盤において、
前記上受金の前記下受金に対向する面に形成され前記ブローチの軸心を中心として上に凸に形成された球面を有することを特徴とするブローチ盤。
【請求項4】
請求項3記載のブローチ盤において、
前記上受金に形成された球面は上に凸であることを特徴するブローチ盤。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−73096(P2011−73096A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226879(P2009−226879)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)