説明

ブロー成形方法と金型

【課題】
解決すべき課題は、ブロー成形用金型のキャビティー面とバリ逃がし面との連絡部にハサミの刃のように互いにずらして位置づけられた少なくとも1組以上の食切り剪断刃を設けるような方法ではパリソンをせん断するだけで食切り刃によってパリソンを潰していないので、ピンチオフ強度が保持できないという点である。
【解決手段】
熱可塑性樹脂のブロー成形方法であって、分割金型によるパリソンの型締めの際に、食切り刃によってパリソンを押し潰すと共に、押切り刃によってパリソンを押切って引きちぎり、製品部とバリ部とを分離することにより前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型内でバリを切断するブロー成形方法と金型に関する。
【背景技術】
【0002】
型内でバリを切断するブロー成形金型に関する従来技術としては特許文献1に開示されているような、キャビティー面とバリ逃がし面との連絡部にハサミの刃のように互いにずらして位置づけられた少なくとも1組以上の食切り剪断刃を設けるというものがある。
【0003】
しかし、特許文献1に開示されているのはパリソンをせん断することだけで、食切り刃によってパリソンを潰していないので、ピンチオフ強度が保持できないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−224683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、特許文献1に開示されている方法ではパリソンをせん断するだけで食切り刃によってパリソンを潰していないので、ピンチオフ強度が保持できないという点である。本発明は上記の点を解決するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を果たすため本発明は、熱可塑性樹脂のブロー成形方法であって、分割金型によるパリソンの型締めの際に、食切り刃によってパリソンを押し潰すと共に、押切り刃によってパリソンを押切って引きちぎり、製品部とバリ部とを分離することを最も主要な特徴とする。
【0007】
また、ブロー成形用金型であってキャビティー面とバリ逃がし面との連絡部にパリソンを食切るための食切り刃と、パリソンを押切るために食切り刃に隣接して設けられた押切り刃とを有することを第2の主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、食切り刃によってパリソンを押し潰すのでピンチオフの強度を高く保持できると同時に、押切り刃によってパリソンを押切って引きちぎって製品部とバリ部とを金型内で分離でき、成形後に製品部とバリ部を人力等によって分離する手間を要しないのでコストダウンできるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る型締め完了直前のブロー成形用分割金型の部分断面図
【図2】本発明に係る型締め完了直後のブロー成形用分割金型の部分断面図
【図3】本発明に係る離型直後の製品部とバリ部の部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
ブロー成形において、ピンチオフの強度を高く保持すると同時に、製品部とバリ部を金型内で分離するという目的を、分割金型によるパリソンの型締めの際に、食切り刃によってパリソンを押し潰すと共に、押切り刃によってパリソンを押切って引きちぎり、製品部とバリ部とを分離することによって、経済性を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0011】
本発明の構成と作用を発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。
ブロー成形用の分割金型1,1’内に半溶融状態にあるポリプロピレン等の熱可塑性樹脂のパリソン10を垂下させ該分割金型を型締めする。
【0012】
図1は、本発明の1実施例を示す型締め完了直前の該分割金型1,1’の食切り刃2,2’、及び該食切り刃2,2’に隣接して設けられた押切り刃6,6’の部分断面図である。
【0013】
ここで「押切り刃」とはパリソンを刃と刃で挟みながら、鋏のように刃と刃をほぼ平行に摺り合わせてパリソンを摺り切って引きちぎるために設定された刃を指す。
尚、図1のように該食切り刃2’と該押切り刃6’は刃の上面と側面として一枚の刃体に兼ね備えられていてもよいし、別々の刃として構成されていてもよい。
【0014】
図1において、7,7’は製品のキャビティー面、8,8’はバリ逃がし面、10は該パリソンである。
即ち、パリソンを食切るための該食切り刃2,2’が該キャビティー面7,7’と該バリ逃がし面8,8’との連絡部に、そしてパリソンを押切るための該押切り刃6,6’が該食切り刃2,2’に隣接して設けられている。
【0015】
尚、該パリソン10に適用される熱可塑性樹脂としてはポリプロピレンに限らず、ポリエチレンや他のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリスチレン、ゴム改質ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィン系エラストマー等、ブロー成形が可能な樹脂であれば何でも良い。また、該熱可塑性樹脂にガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、硫酸カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末等を混錬させた複合材であってもよい。
【0016】
図2は、型締め完了直後の該分割金型1,1’の部分断面図である。
型締めにより該食切り刃2,2’は該パリソン10を押しつぶし、該押切り刃6,6’は該パリソン10を引きちぎって製品部10aとバリ部10bに分離させる。
【0017】
その後該パリソン10の該製品部10a内に圧縮空気を吹き込んでブローアップし、離型してブロー成形を完了させる。
【0018】
図3は離型した直後の該製品部10a、及び該バリ部10bの部分断面図である。
5は該食切り刃2,2’によって押し潰された該パリソン10の薄肉部5である。
【0019】
図3に示すように、該バリ部10bは該押切り刃6,6’によって該製品部10aから引きちぎられて別体となっている。
9は引きちぎられた跡を示す仮想の線である
【0020】
以上実施例に述べたように本発明によれば、ブロー成形において分割金型によるパリソンの型締めの際に、食切り刃によってパリソンを押し潰すと共に、押切り刃によってパリソンを押切って引きちぎり、製品部とバリ部とを分離させたため、ピンチオフの強度を高くできると同時に製品部とバリ部とを金型内で分離でき、成形後に製品部とバリ部を人力等によって分離する手間を要しないのでコストダウンできるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、バリを生成するすべてのブロー成形に利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1,1’ 分割金型
2,2’ 食切り刃
5 薄肉部
6,6’ 押切り刃
7,7’ キャビティー面
8,8’ バリ逃がし面
9 引きちぎられた跡を示す仮想の線
10 パリソン
10a 製品部
10b バリ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂のブロー成形方法であって、分割金型によるパリソンの型締めの際に、食切り刃によってパリソンを押し潰すと共に、押切り刃によってパリソンを押切って引きちぎり、製品部とバリ部とを分離することを特徴とするブロー成形方法
【請求項2】
ブロー成形用金型であって、キャビティー面とバリ逃がし面との連絡部にパリソンを食切るための食切り刃と、パリソンを押切るために食切り刃に隣接して設けられた押切り刃とを有することを特徴とするブロー成形用金型

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−111839(P2013−111839A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259675(P2011−259675)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(503233130)株式会社アイテック (96)
【Fターム(参考)】