説明

プラスチックボトル容器

【課題】
プラスチックボトル容器の小容量化を図るにあたり、減圧吸収性能を確保しつつ、不均一な変形を抑制することができるとともに、成形後の型開きに支障が生じることなく、安定して成形することができる形状を備えたプラスチックボトル容器を提供する。
【解決手段】
同一円周上に配設された複数の柱部8の間に減圧吸収パネル6を形成して、柱部8と減圧吸収パネル6とを径方向において対向させ、容器1の最大外径がφのとき、水平断面において、減圧吸収パネル6の両端を通る容器外方に凸の曲率半径φ×3/4の円弧R1と互いに中点で接する曲率半径φの容器外方に凸の円弧R3、減圧吸収パネル6の両端を通る容器内方に凸の曲率半径φの円弧R2と互いに中点で接する曲率半径φ×3/2の容器内方に凸の円弧R4、及び容器中心と減圧吸収パネル6の両端とを結ぶ直線L1,L2により囲まれる範囲に減圧吸収パネル6を位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧吸収性能を確保しつつ、不均一な変形を抑制することができるプラスチックボトル容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コーラ、サイダーなどの炭酸飲料、果汁飲料、ミネラルウォーター、コーヒー飲料、各種お茶類などの飲料用のボトル容器として、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂を、ブロー成形などによって所定形状に成形してなるプラスチックボトル容器が、一般に広く使用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
この種のプラスチックボトル容器は、近年、急速に普及、浸透するようになってきており、その広範な普及に伴って、プラスチックボトル容器を使用した商品も多様化してきている。このような状況下において、容量2000mlを超える大容量のものから、容量200ml程度の小容量のものまで、内容物に応じて種々の容量のプラスチックボトル容器が求められるようになってきた。
【0004】
【特許文献1】特開2003−63516号公報
【特許文献2】特開2001−206331号公報
【特許文献3】特表平11−513639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のプラスチックボトル容器には、通常、内容物を充填、密封した後の容器内が減圧状態になるため、内圧減少にともなう容器の形状変化を防止するための減圧吸収構造を備えている。
【0006】
ここで、このような減圧吸収構造を備えた容器の一例として、特許文献1には、筒形状をなす胴部に、弾性変形する減圧吸収部を周方向に複数配列した合成樹脂製容器が開示されている。また、特許文献2には、ボトル胴部の断面を八角形とし、角部に形成された円弧壁面の間に減圧吸収面を配設したプラスチックボトルが開示されており、特許文献3には、容器内の内圧の変化に反応する奇数個の離隔配置されたパネルを本体に備えたボトル型のプラスチック容器が開示されている。
【0007】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、例えば、容量200ml程度の小容量のプラスチックボトル容器に、これらの減圧吸収構造をそのまま適用するには不都合があり、未だ改善の余地が残されているという知見を得るに至った。
【0008】
すなわち、プラスチックボトル容器の小容量化を図ろうとすると、減圧吸収パネル(減圧吸収部)の面積も小さくなってしまうため、十分な減圧吸収性能が得られ難い。さらに、容器の容積が小さくなると、内容物を充填、密封した後のヘッドスペース(内容物が満たされていない部分)の体積が相対的に大きくなり、これに伴って、容器内が減圧される程度も大きくなってしまう。
このため、小容量のプラスチックボトルにあっては、減圧吸収量が不足する傾向が強く、特に、特許文献1や、特許文献2に開示されたような、胴部の周方向に六面又は八面の減圧吸収パネルを備えたプラスチックボトル容器にあっては、減圧吸収量が不足することにより、個々の減圧吸収パネルに無理な変形が強いられると、全ての減圧吸収パネルが均等に変形せずに、その水平断面が、楕円状、おむすび状などの不均一な形状に変形し易いという不都合があった。このような不均一な変形は、商品価値を著しく損ねてしまうため好ましくない。
【0009】
一方、特許文献3では、容器の本体に、奇数個のパネル(減圧吸収パネル)を離隔配置することにより、容器の不定形の歪みの問題をなくすことができるとしているものの、減圧強度において未だ不十分であり、比較的低い圧力で容器が潰れてしまうという問題があった。
また、奇数個のパネルを備えた容器を、左右(又は、上下)一対の二つの分割型からなる金型を用いて成形しようとすると、金型のパーティングライン上にパネルが位置するため、容器と金型とが干渉し、型開きの際に、容器が変形したり、傷ついたりするなどして、製品歩留まりが低下するおそれがあるが、特許文献3では、このような問題については何ら考慮されていない。型開きに支障が生じないように、三つ以上の分割型を組み合わせることも考えられるが、これだと型構造が複雑になってしまうため好ましくない。
【0010】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題を解決するために提案されたものであり、プラスチックボトル容器の小容量化を図るにあたり、減圧吸収性能を確保しつつ、不均一な変形を抑制することができるとともに、成形後の型開きに支障が生じることなく、安定して成形することができる形状を備えたプラスチックボトル容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るプラスチックボトル容器は、口部、胴部、及び底部を備えたプラスチックボトル容器であって、前記胴部が、同一円周上に配設された複数の柱部の間に形成された減圧吸収パネルを備え、前記柱部と、前記減圧吸収パネルとが、径方向において対向するとともに、前記減圧吸収パネルの少なくとも一つが、前記柱部を結ぶ円周よりも容器内方であって、容器の最大外径φに対して、曲率半径がφ×3/4であり、かつ、水平断面における減圧吸収パネルの両端を通る容器外方に凸の円弧R1と互いに中点で接する、曲率半径がφの容器外方に凸の円弧R3、曲率半径がφであり、かつ、水平断面における減圧吸収パネルの両端を通る容器内方に凸の円弧R2と互いに中点で接する、曲率半径がφ×3/2の容器内方に凸の円弧R4、及び、容器中心と水平断面における減圧吸収パネルの両端とを結ぶ直線L1,L2により囲まれる範囲に位置する構成としてある。
【0012】
このような構成とすることにより、減圧吸収性能を向上させることができるとともに、容器の不均一な変形を抑制することができる。さらに、少なくとも金型のパーティングライン上に位置する減圧吸収パネルを、上記の範囲内で型開きに干渉しないように形成することで、減圧吸収性能に優れたプラスチックボトル容器を安定して成形することができる。
【0013】
また、本発明に係るプラスチックボトル容器は、水平断面における前記減圧吸収パネルの両端を結ぶ線の垂直二等分線上に、前記柱部が位置する構成とすることができる。
このような構成とすることにより、容器の不均一な変形をより有効に回避することができる。
【0014】
また、本発明に係るプラスチックボトル容器は、五面の減圧吸収パネルを備えている構成とすることができる。
このような構成とすることにより、丸形ボトルとしての容器形態を損なうことなく、減圧吸収性能の向上と、容器の不均一な変形の抑制を実現することができる。
【0015】
また、本発明に係るプラスチックボトル容器は、前記減圧吸収パネルの少なくとも一つに対し、前記柱部を二つ対向させた構成とすることができる。
このような構成とすることにより、容器の不均一な変形をより効果的に抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係るプラスチックボトル容器は、水平断面における柱部の中心角を、6°以上とすることができる。
このような構成とすることにより、柱部の構造部位としての機能を確保しつつ、減圧吸収パネルの減圧吸収性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のような本発明によれば、高い減圧吸収性能を備えるとともに、不均一な変形を抑制することができ、また、成形後の型開きに支障が生じることなく、安定した成形が可能なプラスチックボトル容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るプラスチックボトル容器の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
ここで、図1は、本発明に係るプラスチックボトル容器の一実施形態の概略を示す正面図である。
【0019】
図1に示す容器1は、一般に、丸形ボトルと称される容器形状を有しており、口部2、胴部3、及び底部4を備えている。胴部3は、ほぼ同一径の円筒状に形成された筒状部32と、筒状部32の上端から絞り込まれて口部2に連続する肩部31とからなっている。
【0020】
肩部31と筒状部32との境界には、容器1の周方向に沿って横ビード5aが形成されている。また、胴部3(筒状部32)と底部4との境界にも、容器1の周方向に沿って横ビード5bが形成されている。この肩部31と筒状部32との境に形成された横ビード5aに沿う筒状部32側には、リブ部7aが形成され、胴部3と底部4との境に形成された横ビード5bに沿う胴部3(筒状部32)側にも、リブ部7bが形成されている。
【0021】
筒状部32には、高さ方向に沿って延在し、その上下両端部が、それぞれリブ部7a,7bに接続され、柱状の構造部位として機能する柱部8が、図2に示すように、同一円周(図中、二点破線で示す)上に配設されるように、周方向に沿って、ほぼ等間隔に形成されるとともに、リブ部7a,7bと柱部8とによって、減圧吸収パネル6が画成されている。
ここで、図2は、図1のA−A断面を示すが、作図上、容器1(筒状部32)の外面側の外形線のみを示し、内面側は省略してある。また、高さ方向とは、口部2を上にして容器1を水平面に置いたときに、水平面に直交する方向に沿った方向をいうものとする。
【0022】
減圧吸収パネル6は、容器1の内圧が減少したときに、容器1の内方に緩やかに変形して圧力の減少を吸収するものであり、本実施形態では、隣接する柱部8の間に形成される減圧吸収パネル6が、柱部8を結ぶ円周よりも容器1の内方に位置するようにしている。このようにすることで、容器1の内圧が減少したときに、減圧吸収パネル6が、容器1の内方に向かって変形し易くなり、減圧時に容器1内に作用する負荷をより軽減することができるため、容器1の減圧強度を向上させることが可能となる。
【0023】
また、図示する例では、容器1の周方向に沿って、五面の減圧吸収パネル6が形成されているが、これは、容器1の径方向において、減圧吸収パネル6と、柱部8とを対向させて、減圧時における個々の減圧吸収パネル6の変形量に偏りが生じ難くなるようにして、容器1の不均一な変形を抑制するためである。
したがって、減圧吸収パネル6と、柱部8とが、径方向において対向する位置関係にありさえすれば、減圧吸収パネル6の面数は、五面に限らず、三面又は七面などとしてもよい。しかし、減圧吸収性能を向上させつつ、丸形ボトルとしての容器形態が損なわれないようにするために、減圧吸収パネル6の面数は、五面とするのが特に好ましい。
【0024】
また、容器1の不均一な変形を抑制するにあたり、減圧吸収パネル6と、柱部8との位置関係は、水平断面における減圧吸収パネル6の両端を結ぶ線の垂直二等分線上に、柱部8(特に、柱部8の中央部)が位置するようにするのが好ましいが、本実施形態では、このように、減圧吸収パネル6と、柱部8とを一対一で対向させる態様に限らず、図3に示すように、一つの減圧吸収パネル6に対して、二つの柱部8を対向させた態様にて変形実施することによって、容器1の不均一な変形をより効果的に抑制することもできる。
ここで、図3は、このような変形例において図1のA−A断面に相当する部位を示しており、図2と同様に、容器の内面側は省略してある。また、減圧吸収パネル6と、柱部8との境界は、便宜上、柱部8が、柱部8の外面を結ぶ円周上から容器内方に外れる部位をいうものとする。したがって、水平断面における減圧吸収パネル6の両端を結ぶ線は、換言すれば、減圧吸収パネル6を間に挟んで隣接する柱部8の当該減圧吸収パネル6側の端部どうしを結ぶ線となる。
【0025】
図3に示す変形例では、三つの減圧吸収パネル6が、周方向に沿ってほぼ等間隔に形成されており、一つの減圧吸収パネル6に対して二つの柱部8が対向している。そして、この二つの柱部8の間には、減圧吸収パネル6aが形成されている。減圧吸収パネル6に対向する二つの柱部8の間に形成される減圧吸収パネル6aの幅W2は、対向する減圧吸収パネル6の幅W1よりも小さくする必要があるが、具体的には、減圧吸収パネル6aの幅W2は、減圧吸収パネル6の幅W1の1/2以下となるようにするのが好ましい。また、互いに対向する減圧吸収パネル6と、減圧吸収パネル6aとは、減圧吸収パネル6の両端を結ぶ線の垂直二等分線と、減圧吸収パネル6aの両端を結ぶ線の垂直二等分線とが一致するように、両者の位置関係を設定するのが好ましい。
【0026】
なお、上記以外の構成は、図1及び図2に示す例と同様であるため、図3に示す変形例の他の構成についての詳細な説明は省略する。
【0027】
このように、本実施形態では、減圧吸収パネル6と、柱部8とが、径方向において対向する位置に形成されているため、容器1を、左右(又は上下)一対の二つの分割型からなる金型を用いて形成しようとすると、金型のパーティングラインPLが、減圧吸収パネル6上に位置することとなり、減圧吸収パネル6の形状が金型と干渉して、型開きに支障が生じるおそれがある。また、金型との干渉を避けて、減圧吸収パネル6を容器1の外方に凸の形状にすると、十分な減圧吸収性能が得られ難くなってしまう。
よって、本実施形態において、減圧吸収パネル6は、その減圧吸収性能のみならず、型開きをする際の金型との干渉を考慮して、その形状を定める必要がある。
【0028】
このため、本実施形態にあっては、少なくともパーティングラインPL上に位置する減圧吸収パネル6が、図2に示すように、容器1(筒状部32)の最大外径φに対して、曲率半径がφ×3/4であり、かつ、水平断面における減圧吸収パネル6の両端を通る容器1の外方に凸の円弧R1と互いに中点で接する、曲率半径がφの容器外方に凸の円弧R3、曲率半径がφであり、かつ、水平断面における減圧吸収パネル6の両端を通る容器1の内方に凸の円弧R2と互いに中点で接する、曲率半径がφ×3/2の容器内方に凸の円弧R4、及び、容器中心と水平断面における減圧パネルの両端とを結ぶ直線L1,L2により囲まれる範囲(図中、斜線で示す範囲)に位置するようにしている。より好適には、円弧R1,R2で囲まれる範囲に、少なくともパーティングラインPL上に位置する減圧吸収パネル6を位置させるのがよい。
減圧吸収パネル6を、型開きが良好になされるようにしつつ、このような範囲に位置するようにすれば、減圧吸収パネル6の減圧吸収性能を向上させることができる。
【0029】
なお、容器1の不均一な変形を有効に避けるためには、図示するように、全ての減圧吸収パネル6を等しく形成するのが好ましい。また、厳密にいうと、容器1(筒状部32)の肉厚によっては、減圧吸収パネル6が上記範囲からはみだす部分が存在することもあるが、本発明では、減圧吸収パネル6の外面側の外形線が、上記範囲に位置していればよい。また、便宜上、減圧吸収パネル6と、柱部8との境界を、柱部8が、柱部8の外面を結ぶ円周上から容器内方に外れる部位をいうのは、前述した通りである。したがって、減圧吸収パネル6の両端を通る円弧R1,R2は、柱部8の外面が上記円周上から容器内方に外れた部位を通ることになる。
【0030】
また、減圧吸収パネル6の減圧吸収性能を向上させる上で、減圧吸収パネル6の面積を確保することも重要となってくる。このため、本実施形態では、減圧吸収パネル6を画成する柱部8の大きさ(筒状部32の側面に占める割合)を、柱部8の構造部位としての機能を確保しつつ、減圧吸収パネル6の面積ができるだけ大きくなるように、これらのバランスを考慮して設定するのが好ましい。
【0031】
具体的には、水平断面における柱部8の中心角(水平断面において、柱部8の周方向両端と、容器1の中心とを結ぶ二辺のなす角度)θが、6°以上となるようにするのが好ましい。柱部8の中心角θが6°に満たないと、柱部8の柱状の構造部位としての機能が十分に発揮されなくなり、容器1の減圧強度が不十分となってしまう。また、中心角θは、20°以下であるのが好ましい。柱部8の中心角θが20°を超えると、筒状部32の側面に占める柱部8の面積が大きくなり、これによって、減圧吸収パネル6の面積が相対的に小さくなるため、十分な減圧吸収性能が得られなくなってしまう。
なお、図2に示す例では、柱部8の中心角θを10°としてある。
【0032】
本実施形態において、減圧吸収パネル6の具体的形状としては、図示するような矩形状のものに限らず、楕円形状、トラック形状など、その他の高さ方向に縦長の形状のものが適用できる。また、減圧吸収パネル6は、単なる平面として構成するのではなく、減圧吸収パネル6による減圧吸収量をより多くしたり、減圧強度をより高めたりするなどの目的で、減圧吸収パネル6の中央に、図示するような凸部を形成するなど、型開きに不具合を生じない範囲において、適宜の凹凸形状を備えさせることができる。
なお、前述した変形例における減圧パネル6aも同様である。
【0033】
以上説明したような本実施形態に係るプラスチックボトル容器は、例えば、公知の射出成形や押出成形により製造された、有底筒状のプリフォームを二軸延伸ブロー成形するなどして製造することができる。
また、容器を構成する熱可塑性樹脂は、延伸ブロー成形が可能であれば、任意の樹脂を使用することができる。
【0034】
具体的には、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンイソフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリカーボネート,ポリアリレート、ポリ乳酸又はこれらの共重合体などの熱可塑性ポリエステル、これらの樹脂あるいは他の樹脂とブレンドされたものが好適であり、特に、ポリエチレンテレフタレートなどのエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルが好適に使用される。また、アクリロニトリル樹脂,ポリプロピレン,プロピレン−エチレン共重合体,ポリエチレンなども使用することができる。
これらの樹脂には、成形品の品質を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば、着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、帯電防止剤などを配合することもできる。
【0035】
エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルは、エステル反復単位の大部分(例えば、70モル%以上)をエチレンテレフタレート単位が占め、ガラス転移点(Tg)が50〜90℃、融点(Tm)が200〜275℃の範囲にあるものが好適である。
エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が耐圧性、耐熱性、耐熱圧性などの点で特に優れているが、エチレンテレフタレート単位以外にイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、又はシクロヘキサンジカルボン酸などの二塩基酸や、プロピレングリコールなどのジオールを少量含む共重合ポリエステルも使用することができる。
【0036】
また、本実施形態に係るプラスチックボトル容器は、単層(一層)の熱可塑性ポリエステル層で構成される場合の他、二層以上の熱可塑性ポリエステル層により構成することもできる。さらに、二層以上の熱可塑性ポリエステル層からなる内層及び外層の間に封入される中間層を備えることができ、中間層をバリヤー層や、酸素吸収層とすることができる。このように、バリヤー層や、酸素吸収層を備えることにより、容器内への外部からの酸素の透過を抑制し、容器内の内容物の外部からの酸素による変質を防止することができる。
ここで、酸素吸収層としては、酸素を吸収して酸素の透過を防ぐものであれば任意のものを使用することができるが、酸化可能有機成分及び遷移金属触媒の組合せ、あるいは実質的に酸化しないガスバリヤー性樹脂,酸化可能有機成分及び遷移金属触媒の組み合わせを使用することが好適である。
【実施例】
【0037】
次に、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート(PET)を射出成形機に供給して、外径が約25mm、高さが約80mm、平均肉厚が約4mmのプリフォームを製造した。このプリフォームをガラス転移点(Tg)以上の約100℃に加熱し、約150℃に加熱された、左右一対の二分割タイプの金型内にセットして、約3MPaの圧力でブローエアを供給して二軸延伸ブロー成形を行い、図1及び図2に示すような、容積約200mlのプラスチックボトル容器を得た。
このとき、図2に示すように、金型のパーティングラインPLを、減圧吸収パネル6上に位置させたが、型開きの際に容器と金型とが干渉することなく、成形された容器を金型から取り出すことができ、金型から取り出された容器には、変形や、傷つきなどの不具合が認められなかった。
【0038】
ここで、得られた容器1の寸法は、高さHが約150mm、肩部31の高さ方向の長さ(口部2直下から横ビード5aの中心線Cまでの長さ)hが約28mm、筒状部32の高さ方向の長さ(横ビード5aの中心線Cと横ビード5bの中心線Cの間の長さ)hが約75mm、底部4の高さ方向の長さ(横ビード5bの中心線Cから容器1の底面までの長さ)hが約12mmであった。
また、胴部3(筒状部32)の最大径φは約54mm、胴部3(筒状部32)の平均肉厚は約0.6mm、水平断面における柱部8の中心角θは10°であった。
【0039】
このようにして得られた容器1内に、口部2の上端まで水を満たし、容器1が不均一に変形、又は潰れてしまうまで口部2から減圧吸引した。このときの減圧強度(容器1内に作用する負荷)と、水の吸引量(減圧吸収量に相当)との関係を示すグラフを図10に示す。
なお、以下の実施例2〜3、比較例1〜4において得られた容器についても同様の測定をし、その結果を図10に併せて示した。
【0040】
[実施例2]
容器の水平断面形状を、図4に示すようにした以外は、実施例1と同様にして、容積約200mlのボトル容器を得た。本実施例は、実施例1に対して、減圧吸収パネル6を円弧R1寄りに形成したものであり、柱部8の中心角θは、実施例1と同様に10°とした。
ここで、図4は、本実施例で得られた容器において、図1のA−A断面に相当する部位を示しており、図2と同様に、容器の内面側は省略してある。
【0041】
[実施例3]
容器の水平断面形状を、図5に示すようにした以外は、実施例1と同様にして、容積約200mlのボトル容器を得た。本実施例は、実施例1に対して、減圧吸収パネル6を円弧R2寄りに形成したものであり、柱部8の中心角θは、実施例1と同様に10°とした。
ここで、図5は、本実施例で得られた容器において、図1のA−A断面に相当する部位を示しており、図2と同様に、容器の内面側は省略してある。
【0042】
[比較例1]
容器の水平断面形状を、図6に示すようにした以外は、実施例1と同様にして、容積約200mlのボトル容器を得た。本比較例は、減圧吸収パネル6を六面としたものであり、柱部8の中心角θは、実施例1と同様に10°とした。
ここで、図6は、本比較例で得られた容器において、図1のA−A断面に相当する部位を示しており、図2と同様に、容器の内面側は省略してある。
【0043】
[比較例2]
容器の水平断面形状を、図7に示すようにした以外は、実施例1と同様にして、容積約200mlのボトル容器を得た。本比較例は、実施例1と同様の減圧吸収パネル6を備えているが、柱部8の中心角θを実施例1と異ならせて4°とした。
ここで、図7は、本比較例で得られた容器において、図1のA−A断面に相当する部位を示しており、図2と同様に、容器の内面側は省略してある。
【0044】
[比較例3]
容器の水平断面形状を、図8に示すようにした以外は、実施例1と同様にして、容積約200mlのボトル容器を得た。本比較例は、比較例1と同様の減圧吸収パネル6を備えているが、柱部8の中心角θを比較例1と異ならせて4°とした。
ここで、図8は、本比較例で得られた容器において、図1のA−A断面に相当する部位を示しており、図2と同様に、容器の内面側は省略してある。
【0045】
[比較例4]
容器の水平断面形状を、図9に示すようにした以外は、実施例1と同様にして、容積約200mlのボトル容器を得た。本比較例は、円弧R2よりも容器外方側に位置する部分を含むように、減圧吸収パネル6を形成したものであり、柱部8の中心角θは、実施例1と同様に10°とした。
ここで、図9は、本比較例で得られた容器において、図1のA−A断面に相当する部位を示しており、図2と同様に、容器の内面側は省略してある。
【0046】
図10に示すように、実施例1〜3のものは、高い減圧強度を示すとともに、減圧吸収量も大きく、良好な結果が得られた。また、実施例2,3においても、実施例1と同様に、金型から取り出すに際して、容器には変形や、傷つきが認められなかった。
一方、比較例1,3,4のものは、減圧強度が低く、減圧吸収量も小さかった。また、比較例2のものは、比較例1,3,4に比べて、比較的高い減圧強度を示すものの、柱部8の構造部位としての機能が劣るため、実施例1〜3のものが示す減圧強度には及ばなかった。また、比較例4では、複数成形した容器のなかに、型開きの際に金型と干渉して生じたと思われる傷が認められるものが散見された。
【0047】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0048】
また、本発明は、容積500〜2000ml程度の比較的大容量のプラスチックボトル容器についても適用できるが、容積500ml以下、特に、50〜400ml程度の比較的小容量のプラスチックボトル容器に、特に好適である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上説明したように、本発明に係るプラスチックボトル器は、各種の内容物を充填、密封するためのボトル容器として、特に内容物を高温で充填する耐熱ボトル容器として、広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係るプラスチックボトル容器の一実施形態の概略を示す正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明に係るプラスチックボトル容器の一実施形態の変形例における図1のA−A断面に相当する部位を示す断面図である。
【図4】図1のA−A断面に相当する実施例2の水平断面を示す断面図である。
【図5】図1のA−A断面に相当する実施例3の水平断面を示す断面図である。
【図6】図1のA−A断面に相当する比較例1の水平断面を示す断面図である。
【図7】図1のA−A断面に相当する比較例2の水平断面を示す断面図である。
【図8】図1のA−A断面に相当する比較例4の水平断面を示す断面図である。
【図9】図1のA−A断面に相当する比較例5の水平断面を示す断面図である。
【図10】実施例1〜3、比較例1〜4により得られた容器の減圧強度と減圧吸収量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
1 容器
2 口部
3 胴部
31 肩部
32 筒状部
4 底部
6 減圧吸収パネル
8 柱部
R1 減圧吸収パネルの両端を通る容器外方に凸の円弧
R2 減圧吸収パネルの両端を通る容器内方に凸の円弧
φ 容器の最大外径
θ 柱部の中心角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、胴部、及び底部を備えたプラスチックボトル容器であって、
前記胴部が、同一円周上に配設された複数の柱部の間に形成された減圧吸収パネルを備え、
前記柱部と、前記減圧吸収パネルとが、径方向において対向するとともに、
前記減圧吸収パネルの少なくとも一つが、
前記柱部を結ぶ円周よりも容器内方であって、
容器の最大外径φに対して、曲率半径がφ×3/4であり、かつ、水平断面における減圧吸収パネルの両端を通る容器外方に凸の円弧R1と互いに中点で接する、曲率半径がφの容器外方に凸の円弧R3、
曲率半径がφであり、かつ、水平断面における減圧吸収パネルの両端を通る容器内方に凸の円弧R2と互いに中点で接する、曲率半径がφ×3/2の容器内方に凸の円弧R4、
及び、容器中心と水平断面における減圧吸収パネルの両端とを結ぶ直線L1,L2
により囲まれる範囲に位置することを特徴とするプラスチックボトル容器。
【請求項2】
水平断面における前記減圧吸収パネルの両端を結ぶ線の垂直二等分線上に、前記柱部が位置する請求項1に記載のプラスチックボトル容器。
【請求項3】
五面の減圧吸収パネルを備えている請求項1〜2のいずれか1項に記載のプラスチックボトル容器。
【請求項4】
前記減圧吸収パネルの少なくとも一つに対し、前記柱部を二つ対向させた請求項1に記載のプラスチックボトル容器。
【請求項5】
水平断面における柱部の中心角が、6°以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラスチックボトル容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−240728(P2006−240728A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63121(P2005−63121)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】