説明

プラスチック眼鏡レンズ孔開け方法

【課題】 プラスチックレンズ孔開け加工時に、欠けや割れもしくは切削面の微小な傷の発生を防止するレンズ孔開け加工方法を提供する
【解決手段】 プラスチック眼鏡用レンズにドリルで孔開け加工する際、水溶性の潤滑剤を加熱溶融又は水溶液としてドリルに含浸させた状態で、もしくは滑剤組成物をレンズの上に配置して孔開け加工することにより、欠けや割れもしくは切削面の微小な傷の発生を抑え、外観不良もしくはフレーム取り付け後にネジ孔周辺に微小な傷を基点とする割れが発生するなどの不具合を防止する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック眼鏡レンズをツーポイントフレームに取り付ける為の、ドリルによるレンズ孔開け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ツーポイントフレームは、眼鏡レンズの外周を覆う枠が無いもので、左右のレンズを連結するブリッジと左右のつるとで構成されている。この、ツーポイントフレームを眼鏡レンズにネジ止めする為に、1枚のレンズには少なくとも2箇所のネジ孔を開ける必要がある。
【0003】
ツーポイント用のレンズには、強度の関係で一般的にプラスチックレンズが使用されているが、プラスチック材料でもドリルでネジ孔を開ける際、局所的な応力が与えられる為、加工条件によっては、孔開け時に欠けや割れが発生したり、欠けや割れに至らないまでも切削面に微小な傷が発生したりと、外観不良もしくはフレーム取り付け後にネジ孔周辺に微小な傷を基点とする割れが発生するなどの不具合が生じる場合があった。
プラスチックレンズの孔開けでは、従来、穴加工位置の精度が問題となってきた。その対応策として、穴位置を明示した透明シートを適応する方法(特許文献1)や孔開けを簡便するために固定治具(特許文献2)の提案がされており、改善が図れてきた。しかしながら、孔加工時に発生する割れや割れにつながる可能性のある内壁の微小なクラックに対する対策が十分でなく、改善する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−72501号公報
【特許文献2】特開2002−303834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般の孔開け加工では、孔品質を向上させるために、潤滑油を滴下しながら加工する方法が知られているが、加工後に油の洗浄を要するなどの要因により、プラスチックレンズの加工に採用することが困難となっている。本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであり、その目的はプラスチックレンズ孔開け加工時に、欠けや割れもしくは切削面の微小な傷の発生を防止するレンズ孔開け加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成する為に鋭意検討した結果、ツーポイントフレーム用のプラスチック眼鏡用レンズにドリルで孔開け加工する際、水溶性の潤滑剤の存在下で加工することで、上記の課題を解決できることを見出した。存在のさせ方としては、水溶性潤滑剤を加熱溶融又は水溶液としてドリルに含浸させた状態で、もしくは滑剤組成物をレンズの上に配置して孔開け加工することが挙げられる。また、水溶性潤滑剤に水溶性ポリマーを混合すると好ましい。
【発明の効果】
【0007】
プラスチックレンズの孔開け時に水溶性の潤滑剤の存在下、具体的には水溶性の潤滑剤を加熱溶融又は水溶液としてドリルに滑剤を含浸させたり、滑剤組成物をレンズの上に配置して加工することにより、割れや欠けをふせぐとともに孔品質が向上され、将来的に前記の不具合の要因となるマイクロクラックを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に関わるプラスチック眼鏡レンズ孔開け加工方法を具体的に説明する。
レンズ孔開け加工において孔品質を向上させるためには、基材とドリルの摩擦を低減する効果や切り粉の排出を促進する効果をもつ潤滑剤を、ドリルに含浸させたり、レンズ上に配置することが有効である。しかし、洗浄の簡便さを考慮すると、潤滑剤は水溶性であることが望ましく、水溶性のワックスが好適である。具体的には数平均分子量(Mn)200〜9,000のポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンのモノエーテル、ポリオキシエチレンのエステル、ポリオキシエチレンソルビタンのモノエステル、ポリグリセリンモノステアレート及びポリオキシエチレンプロピレンブロック共重合体からなる群から選択された1種或いは2種以上を混合して用いる事が可能である。具体的には、数平均分子量(Mn)200〜9,000のポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどで例示されるポリオキシエチレンのモノエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレン牛脂脂肪酸エステルなどで例示されるポリオキシエチレンのエステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどで例示されるポリオキシエチレンソルビタンのモノエステル;ヘキサグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノステアレートなどで例示されるポリグリセリンモノステアレート;ポリオキシエチレンプロピレンブロック共重合体などが挙げられる。これら水溶性潤滑剤は1種或いは2種以上を混合して用いる事も可能である。
【0009】
上記潤滑剤は、単独でドリル孔開け時にレンズ表面もしくはドリルに、もしくはレンズ表面およびドリルの両者に直接または溶融させたり水溶液にして、塗布して潤滑剤が固化または乾燥後に使用しても良い。しかし、ベタツキが有るなど作業性に劣る為、水溶性ポリマーに添加して使用することが好まれる。水溶性ポリマーとしては、数平均分子量(Mn)10,000以上のポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラメチレングリコール、ポリエーテルエステル、特殊ポリアミドなどが例示され、融点又は軟化点が30〜150℃、特に40〜100℃の範囲のものが好適なものとして選択される。融点又は軟化点が30℃未満の場合はベタツキの原因となる可能性があり、望ましくない。150℃を超えると、溶融して発現する滑剤としての効果を妨げてしまうので好ましくない。また、上記水溶性ポリマーは1種或いは2種以上を混合して用いる事も可能である。
【0010】
具体的な水溶性ポリマーの一例であるポリエーテルエステルとは、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンオキサイドやこれらの共重合物で例示されるグリコール類又はエチレンオキサイド類の重合物と、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、セバシン等、及びそれらのジメチルエステル、ジエチルエステル等、ピロメリット酸無水物等で例示される多価カルボン酸、その無水物、又はそのエステルとを反応させて得られる水溶性のポリマーが挙げられる。
【0011】
水溶性潤滑剤を水溶性ポリマーに添加してベタツキを抑えた固形物として使用する場合には、水溶性潤滑剤80〜10重量%と水溶性ポリマー20〜90重量%との混合物として用いる事が出来る。水溶性潤滑剤が多すぎるとシート状とすることが困難となり、少なすぎると潤滑性が不足してくるので好ましくない。また、各種添加剤も使用可能であり、非水溶性滑剤、各種充填剤、染料・着色顔料等が目的に合わせて用いられる。
【0012】
プラスチック眼鏡レンズ孔開け時には、水溶性潤滑剤と水溶性ポリマーの混合物を加熱もしくは水に溶解し、プラスチック眼鏡レンズ表面もしくはドリルビット表面に固定する方法が可能である。更に、水溶性潤滑剤80〜10重量%と水溶性ポリマー20〜90重量%との混合物をシートとしても扱う事が可能であり、厚さ0.01〜5mm、好ましくは0.02〜0.5mmのシートを製造し、これを水溶性潤滑剤シートとして用いることもできる。このシートが厚すぎると作業性が低下してしまい、薄すぎると所望の効果を得ることができない。
【0013】
水溶性潤滑剤シートの製造法は特に限定されないが、ロール、ニーダー、その他の混練手段を使用して適宜、加温或いは加熱して均一な混合物としこれを押し出し、プレス加工、ロールを使用して厚さ0.01〜5mmのシート状とし、プラスチック眼鏡レンズの表面即ちドリルビット側に配置し、孔開け加工に使用する。プラスチック眼鏡レンズの表面への固定方法としては、予め水溶性潤滑剤シートに接着層を備えた透明フィルム上に固定し、接着層を介してプラスッチック眼鏡レンズに固定する方法などが取る事が出来る。
【0014】
プラスチック眼鏡レンズとしては、熱硬化性樹脂もしくは熱可塑性樹脂が通常使用される。熱硬化性樹脂としては、ビニル化合物、アリル化合物、(メタ)アクリル化合物などの不飽和化合物をラジカル重合した樹脂、水酸基またはメルカプト基を有する化合物とイソ(チオ)シアネート基を有する化合物の重付加により得られるポリ(チオ)ウレタン系樹脂、エピスルフィド化合物を重合して得られるポリスルフィド樹脂等が上げられるが、特によく用いられているのは、アリル化合物をラジカル重合した樹脂、チオウレタン系樹脂およびポリスルフィド樹脂である。
【0015】
熱可塑性樹脂としては、非晶性ポリオレフィン樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂等が上げられるが、特によく用いられているのは、ポリメタクリル酸エステル系樹脂およびポリカーボネート系樹脂である。
【0016】
ポリメタクリル酸エステル系樹脂としては、透明性が高く、アッベ数が高く且つ表面硬度が高い等の理由でポリメチルメタアクリレート(PMMA)が一般的に眼鏡レンズよく使用されている。
【0017】
ポリカーボネート系樹脂は、透明性が高く、耐衝撃性が強い等の理由から眼鏡レンズに使用されている。ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物もしくは脂肪族ジヒドロキシ化合物をカーボネート結合で高分子化した樹脂が挙げられる。ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物もしくは脂肪族ジヒドロキシ化合物から選択される1種もしくは2種以上のジヒドロキシ化合物を原料とするポリカーボネート樹脂であり、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトポリマー等のいずれの構造でも良く、また異なる構造のポリマーもしくは異なる分子量のポリマーの混合物であっても良い。
【0018】
芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)―3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のビスフェノール類;4、4’ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のビフェノール類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン等が挙げられる。
【0019】
脂肪族ジヒドロキシ化合物の例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,5−ジヒドロキシ−2,2,4,4−テトラメチルペンタン、1,6−ジヒドロキシ−2,2,5,5−テトラメチルヘキサン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1−メチル−1−エチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジエチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、1,4−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[2.2.2]オクタン、1,3−ジヒドロキシメチル−アダマンタン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンおよびその誘導体等が上げられる。
【0020】
これらのうちで、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下BPAと記す)が一般的に良く用いられる。
【0021】
ポリカーボネート樹脂は、一般のポリカーボネート樹脂の製造方法として公知の方法で製造することができ、ホスゲンをカーボネート源とする界面法もしくは炭酸ジエステルをカーボネート源とするエステル交換法等の方法により製造することができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何らの制限を受けるものではない。
【0023】
試験片の製造は以下の条件で行った。
[成形]
(1) 射出成形:熱可塑性樹脂は日本製鋼所株式会社製、射出成形機J75E−Pを用いて、ASTM D−638の試験片(幅12.7mm、厚さ3.2mmの引っ張り試験片)と、3mm厚の円盤状試験片を成形した。
(2) 注型成形:熱硬化性樹脂は、2枚のガラス板とガスケットから構成されるモールドに注入し、ASTM D−638の試験片(幅12.7mm、厚さ3.2mmの引っ張り試験片)と、3mm厚の円盤状試験片を成形した。
[孔あけ加工]
ドリル孔開け加工: 日立工機株式会社製、ベンチドリル DE−4300を用い、2880rpmで加工した。引っ張り試験片には、中央部に2mmφのドリルビットで孔開け加工を行なった。円盤状試験片には、1.0mmφのドリルビットで孔開け加工を行い、さらに孔の中心線を含むようにダイヤモンドカッターで切断し、孔が半円状になるように切りだした。
【0024】
また、実施例において物性値は以下の方法で測定した。
(1) 引っ張り強度測定:中央部に2mmφの孔をあけたASTM D−638の試験片を23℃、50%RHの環境下で、20mm/minの引っ張り速度にて引っ張り強度を測定し、孔内壁の微小な傷に起因するクラックによる引張強度の変化を確認した。
(2) 平滑度測定:1.0mmφの孔をあけて断面を切断した円盤状試験片の孔内壁に沿って、東京精密製 サーフコム3000Aにより孔内壁の表面粗さを測定した。
【0025】
実施例1
メチルメタアクリレートを主成分とするポリメチルメタクリレート樹脂(三菱レーヨン株式会社製、アクリペット、VH−001)を原料として、引張試験片、3mm厚の円盤状試験片を射出成形した。引っ張り試験片の中央部、円盤状試験片の上部に数平均分子量600のポリエチレングリコールを潤滑剤として塗布し、塗布した上からドリルで孔を開け、試験片の引張強度及び平滑度を測定した。評価結果を表1に示した。
【0026】
実施例2
ビスフェノール−Aを芳香族ジヒドロキシ化合物とする一般市販のポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアプラスチックス製、ユーピロンS−3000R)を原料とし、試験片を成形した。ポリエチレングリコール・ジメチルテレフタレート重縮合物(商品名:パオゲンPP−15、第一工業製薬株式会社製)50重量部、ポリオキシエチレンモノステアレート(商品名:ノニオンS−40、日本油脂株式会社製)50重量部をニーダーを使用し、温度150℃の窒素雰囲気中で混錬した後、押出機にて、厚さ0.2mmの潤滑性シートを作成した。このシートを8×8mm角に切断し、試験片上の孔加工部位に置き、90℃の乾燥機で成形品上に固定した。シートおよび試験片を貫通させる形で孔を開け、試験片の引張強度及び平滑度を測定した。評価結果を表1に示した。
【0027】
実施例3
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BPZ)6038.1kg(22.5モル)、1,4−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(TCDDM)4416.5g(22.5モル)、ジフェニルカーボネート10832.5g(47.25モル)、炭酸水素ナトリウム0.0113g(1.35*10−4モル)を、撹拌機および留出装置付きの50リットル反応釜に入れ、窒素雰囲気下200℃に加熱し、30分間撹拌した。その後、減圧度を150mmHgに調整すると同時に、240℃まで昇温し副生するフェノールを留去しながらエステル交換反応を行った。ほぼフェノールの留出が終了した時点で真空度をさらに上げ、1mmHg以下の条件でさらに2時間撹拌を行い、反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み常圧に戻し、生成ポリカーボネートを取り出した。この共重合体のBPZから誘導される構成単位とTCDDMから誘導される構成単位のモル比は、50:50であり、Mw=58,300の樹脂が得られた。合成したポリカーボネート樹脂100重量部に対して、触媒失活剤として、p−トルエンスルホン酸n−ブチル0.0007重量部、酸化防止剤としてトリス(2、4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(旭電化工業株式会社製商品名A−2112)0.05重量部を2軸押出機(バレル温度240℃)で混練してポリカーボネート樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を実施例2と全く同様に試験片を成形し評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0028】
実施例4
ジエチレングリコールビス(アリルカーボーネート)100重量部、ジイソプロピルパーオキシカーボーネート3重量部を混合し均一とした後、真空下で脱気処理し、0.5μmのPTFE製のメンブランフィルターでろ過した。次いで、この組成物を2枚のガラス板とガスケットから構成されるモールドに注入し、40℃から85℃まで20時間かけて徐々に昇温し、85℃で1時間加熱し、重合硬化させた。モールドから離型した後、120℃で1時間アニールして引っ張り試験片及び円盤状試験片を作製した。ポリエチレングリコール・ジメチルテレフタレート重縮合物(商品名:パオゲンP−15、第一工業製薬株式会社製)20重量部、ポリエチレンオキサイド(商品名:アルコックスR−150、明成化学株式会社製)10重量部、ポリオキシエチレンプロピレンブロック共重合体(商品名:プロノン208、日本油脂株式会社製)70重量部をニーダーを使用し、温度150℃の窒素雰囲気中で混錬した後、押出機にて、厚さ0.2mmの潤滑性シートを作成した。このシートを8×8mm角に切断し、試験片孔加工部位に置き、90℃の乾燥機で成形品上に固定した。実施例2と同様にドリルで、シートおよび試験片を貫通させる形で孔をあけ、試験片の引張強度及び平滑度を測定した。評価結果を表1に示した。
【0029】
実施例5
ビス(2,3−エピチオプロピル)スルフィド100重量部、ジ(メルカプトエチル)スルフィド5重量部、N,N−ジエチルアミノエタノール0.5重量部を混合し均一とした後、真空下で脱気処理し、0.5μmのPTFE製のメンブランフィルターでろ過した。次いで、この組成物を2枚のガラス板とガスケットから構成されるモールドに注入し、30℃で10時間加熱し、次いで30℃から100℃まで10時間かけて100℃まで一定速度昇温させ、最後に100℃で2時間加熱し、重合硬化させた。室温まで放冷した後、モールドから離型した後、110℃で1時間アニールして試験片を作製した。得られた試験片を、実施例4と全く同様に評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0030】
比較例1
実施例1で行った試験を、潤滑剤を用いずに孔開け加工を行った以外は、全く同様に操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0031】
比較例2
実施例2で行った試験を、潤滑性シートを用いずに孔開け加工を行った以外は、全く同様に操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0032】
比較例3
実施例3で行った試験を、潤滑性シートを用いずに孔開け加工を行った以外は、全く同様に操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0033】
比較例4
実施例4で行った試験を、潤滑性シートを用いずに孔開け加工を行った以外は、全く同様に操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0034】
比較例5
実施例5で行った試験を、潤滑性シートを用いずに孔開け加工を行った以外は、全く同様に操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0035】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂もしくは熱硬化性樹脂を基材とするプラスチック眼鏡レンズをドリルによって孔開け加工する際、水溶性潤滑剤の存在下で孔開け加工する事を特徴とするドリル孔開け加工方法。
【請求項2】
プラスチック眼鏡レンズの孔開け加工部に、水溶性潤滑剤を塗布またはシート状にして貼り付けることで水溶性潤滑剤を存在させることを特徴とする、請求項1記載のドリル孔あけ加工方法。
【請求項3】
水溶性潤滑剤が、数平均分子量(Mn)200〜9,000のポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンのモノエーテル、ポリオキシエチレンのエステル、ポリオキシエチレンソルビタンのモノエステル、ポリグリセリンモノステアレート及びポリオキシエチレンプロピレンブロック共重合体からなる群から選択された1種或いは2種以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のドリル孔開け加工方法。
【請求項4】
水溶性潤滑剤に水溶性ポリマーを混合して使用することを特徴とする請求項1または2に記載のドリル孔開け加工方法。
【請求項5】
水溶性ポリマーの軟化点または融点が30~150℃である事を特徴とする請求項4記載のドリル孔開け加工方法。
【請求項6】
水溶性ポリマーが、数平均分子量(Mn)10,000以上のポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラメチレングリコールおよびポリエーテルエステルからなる群から選択された1種或いは2種以上であることを特徴とする、請求項4記載のドリル孔開け加工方法。

【公開番号】特開2012−148370(P2012−148370A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8831(P2011−8831)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】