説明

プリント基板の穴明け装置

【目的】 1つの穴明け装置で複数種の穴明けを可能にする。
【構成】 3つの穴明け手段P,Q,RがZ軸モータ21により独立して上下可能であるとともに、これらの穴明け手段P,Q,Rが保持される下ベース8が、X軸モータ9,Y軸モータ15によりX,Y方向に移動可能である。これを用いプリント基板に加工する場合、加工装置本体のテーブル上のプリント基板の位置決め用マークを撮像し、画像処理装置によってマーク中心を求めこれを穴明け位置とする。この穴明け位置には、穴明けユニットUの複数の穴明け手段のうちのQがXY方向に位置合わせされるとともに、Z軸方向に上昇され穴明けされる。その他の穴(回路素子用穴など)は、数値制御により移動された他の穴明け手段P,Rによって明けられる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プリント基板の穴明け装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】プリント基板には、例えば図5に示すように回路素子実装用の小穴s…が多数設けられているが、通常これらの小穴はプレスの打ち抜き加工によって明けられている。プレス加工による穴明けは、予め設けてあるガイド穴gを基準として別工程で回路素子用穴sが明けられることになる。すなわち、プリント基板の穴明け加工は、一般に初めガイド穴をドリルで明け、次にプレス加工によって回路素子用の穴を明ける2段階に分けて行われており、2種類の穴明け装置を必要としている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術では、第1に2つの工程でそれぞれガイド穴の穴明け用として、それぞれドリルを備えた穴明け装置と、回路素子用穴の穴明け用として打ち抜きによる穴明け装置との2装置が必要とされるため、設備あるいは場所などの面で不経済である。第2に異なる種類の穴を別工程で明けるため、それだけ工数が増える問題がある。さらにガイド穴とプリント基板に印刷されている回路パターンとの間に誤差があると、次工程で行われる回路素子用の穴明け位置の精度が低下する問題がある。第3にプレス加工によって同時に多数の穴を明ける場合には、小ピッチ大径の穴では、隣合う穴同士の間が破断してしまう問題がある。さらに第4にプレス加工では、穴の径や位置が異なる度に別の金型を用意しなければならないので、多種少量生産には向かない問題もある。
【0004】そこで本発明の目的は、ガイド穴と回路素子用の穴とを同一装置によって高精度かつ低コストで穴明け加工が可能なプリント基板の穴明け装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明のプリント基板の穴明け装置は、プリント基板を把持してテーブル上の所望位置に移動可能に設けてある把持手段と、プリント基板に付された位置決め用マークを撮像可能に設けてある撮像手段と、撮像手段により撮像した画像を画像処理してプリント基板の穴明け位置を求める画像処理装置と、それぞれ独立して穴明け動作可能な複数の穴明け手段を備えた穴明けユニットと、この穴明けユニットを移動させ、複数の穴明け手段のうちのいずれかを選択的に穴明け位置に対向するように配置する移動手段とを備えている。
【0006】穴明け手段は、好ましくは、径の異なる穴を明けることが可能な穴明け手段が採用される。
【0007】
【実施例】以下本発明の一実施例について図面を参照して説明する。図4は、本発明の実施例の全体の構成を示しており、加工装置本体Mの左側にワーク供給装置K、右側にワーク排出装置Hが設けてある。加工装置本体Mは、基礎E上に据え付けられたフレームFと、その上方に支持された操作部Oとからなる。フレームFの上面に設けてあるテーブルB上には、ワークであるプリント基板Wを把持して移動させる把持手段Cが設けてある。フレームF内には、後述する複数の穴明け手段P,Q,Rを有する穴明けユニットUと、この穴明けユニットUを移動させるXYテーブル機構を含む移動手段Gとが収納してある。
【0008】次に図1〜3を参照して穴明け手段P,Q,R及び移動手段Gについて説明する。図1は、後述の上ベースを除去したテーブルBの平面の状態を示すもので、XYテーブル機構を含む移動手段G及び穴明け手段P,Q,Rが装着してある。
【0009】移動手段Gは、同図の横方向(X方向)に平行に設けられた1対のX軸ガイド2,2と、これらのX軸ガイドと直交するように設けられた1対のY軸ガイド3,3及びX軸ガイドに沿って移動可能に設けられたXYガイドナット4…及びX軸ボールねじ機構5とY軸ボールねじ機構6を備えている。
【0010】X軸ガイド2は上側が上ベース7(図2,3参照)に固着しており、この上ベースはテーブルBの下面に固着してあるため、加工装置本体M(図4参照)内で不動状態を保っている。Y軸ガイド3は、XYガイド4の下側に設けられたガイド溝部に嵌合して、X軸ガイド2と直交する方向に相対的に摺動可能である。Y軸ガイド3の下側は、後述の穴明けユニットUを装着した下ベース8に固着している(図2,3参照)。このためこの穴明けユニットUは、Y軸ガイドと一体となって図1R>1の縦方向(Y方向)に移動可能であるとともに、XYガイドナット4がX軸ガイド2に沿ってX方向に移動するのに対応してX方向に移動可能である。
【0011】X軸ボールねじ機構5は、図1,2に示すように、本体ベース1及びモータ取付け部材9aを介して上ベース7に固着されたX軸モータ9と、このX軸モータの駆動軸の先端に、カップリング10を介して連結してあるX軸ボールねじ11と、このX軸ボールねじに嵌合されたX軸ナット12とによって構成してある。このX軸ナット12には、X軸移動板13が固着してあり、X軸ナット12及びX軸移動板13はX軸モータ9(X軸ボールねじ11)の回転によりX方向に移動可能である。X軸移動板13は、前述したXY軸ガイドナット4,4に固着してあるので、X軸モータ9の回転によって下ベース8を介して穴明けユニットUがX方向に移動可能である。
【0012】Y軸ボールねじ機構6は、図1,3に示すように、下ベース8に取付け部材14を介して固着されたY軸モータ15と、Y軸モータの駆動軸の先端にカップリング(図示略)を介して連結してあるY軸ボールねじ16と、このY軸ボールねじに嵌合しているY軸ナット17とによって構成してある。Y軸ナット17にはY軸移動板18が固着してあり、Y軸移動板18はXYガイドナット4に固着されている。XYガイドナット4はX軸ガイド2に嵌合し、このX軸ガイド2は上ベース7(図2,3参照)に固着してあるので、XYガイドナット4はY軸方向に移動できない。相対的に、Y軸モータ15,取付け部材14および下ベース8の方が、Y軸モータ15(Y軸ボールねじ16)の回転によって一体的にY方向に移動可能である。従って、穴明け手段P,Q,Rは下ベース8に固着されているので、Y軸方向に移動可能である。
【0013】このとき、下ベース8と一体になって移動するY軸ガイド3,3は、XY軸ガイドナット4…の溝部に沿ってY方向に摺動する。このXY軸ガイドナット4がX軸モータ9によってX方向に移動すると、Y方向に移動するとともに、X軸モータ9によってX方向にも同時移動可能である。なおモータ9,15はサーボモータなのでXY方向の位置制御は可能である。
【0014】図1,2に示すように、穴明けユニットUは独立して穴明け動作可能な穴明け手段P,Q,Rを備えている。図2,3に示すように、3基の穴明け手段P,Q,Rはそれぞれ垂下ベース19を介して下ベース8の下側に装着してある。各垂下ベース19の下端部裏側(図3右側)には、取付け部材20を介してZ軸モータ21が垂直に設けてある。Z軸モータ21の駆動軸の先端には、カップリング22を介してZ軸ボールねじ23が設けてある。Z軸ボールねじ23は、上下端をベアリングによって垂直に支持されている。
【0015】各垂下ベース19の前側(図4左側)には、1対のZ軸ガイド24,24が設けてあり、これらのZ軸ガイドにはZ軸ガイドナット25,25が上下方向(Z方向)に摺動自在に嵌合している。Z軸ガイドナット25,25には、スピンドルホルダ26が固着してあり、さらにこのスピンドルホルダにはエアスピンドル27が装着してある。エアスピンドル27の上端の出力軸には、コレットチャック28aを介してドリル28が取り付けてある。
【0016】スピンドルホルダ26には、Z軸移動板29が固着しており、このZ軸移動板はZ軸ボールねじ23に螺合したZ軸ナット30に固着してある。したがって各穴明け手段P,Q,RはそれぞれZ軸モータ21の回転によってスピンドルホルダ26がZ軸ガイド24,24に沿って昇降し、ドリル28を昇降させてそれぞれ独立して穴明け動作可能である。図2の例では、穴明け手段Qが穴明け動作可能な状態になっている。
【0017】各穴明け手段P,Q,Rには、それぞれ切粉受け33が設けてあり、各切粉受けに落下した切粉はダクト33aを通って図示しない切粉回収ボックスに回収可能である。
【0018】ここで図4に基づいて、加工装置本体Mのその他の要素について説明すると、フレームF上に支持された操作部Oの下部には、TVカメラ34が取付けてあり、テーブル上に移動して来たワーク(図示せず。)に付された穴明けの位置決め用マークを撮像可能である。また操作部Oの下部にはTVカメラ34と同軸上にクランパ35が設けてあり、図示しない昇降手段によってワークをテーブルB上に押え付け可能である。
【0019】操作部Oの正面にはTVカメラ用モニター36が設けてあり、さらにその右側方には、各種のスイッチ等を配設してある操作パネル37が設けてある。なお、TVカメラによって撮像された画像は、操作部O内に備え付けれられた画像処理装置(図示せず)によって画像処理され、撮像した位置決め用マークの中心位置を決定可能である。フレームFの右方には、図示しないパーソナルコンピュータのキーボード39が設けてあり、各種の穴明け条件を入力可能である。これらの入力内容はパソコンモニター40に表示可能である。
【0020】テーブルB上には、ワーク把持手段Cが設けてある。このワーク把持手段Cはチャック爪41を備え、テーブルB上を任意の位置に移動可能なXYロボット(図示略)に取り付けられており、ワークWをテーブル上で任意の位置に移動可能である。
【0021】加工装置本体Mの上流側(図4左側)には、エア吸着式のチャック42を備えたワーク供給装置Kが設けてある。ワーク供給装置Kの端部には、ワークWをXY方向に向きを整えるプリント基板ガイド43が設けてある。またワーク供給装置Kの下方には、供給側リフターコンベア44がリフター46上に設けてある。また、リフター46はフレームF内に昇降手段(図示せず。)を持っている。一方、リフターコンベア44の後方には搬送コンベア45が設置されており、ワークであるプリント基板Wが積層状に供給される。供給されたワークWは、上層面をテーブルBの高さとほぼ同一の高さに調整され、エア式チャック42による取り出しを容易にしてある。
【0022】加工装置本体Mの下流側(図1右側)には、ワーク排出装置Hが設けてある。ワーク排出装置Hは、テーブルBの右端部に設けた排出装置(図示略)と排出側リフターコンベア47とからなる。排出側リフターコンベア47はリフター49上に設けてある。また、リフター49はフレームF内に昇降手段(図示せず。)を持っており、加工装置本体Mから排出されたワークWの積層高さに対応して昇降可能である。一方、リフターコンベア47の後方には搬送コンベアが設置されており、ワークであるプリント基板Wを積層状に排出する。
【0023】
【本実施例の操作法及び動作】予め、ワークであるプリント基板Wの基準穴明け位置に、位置決め用マークを印刷しておく(図5参照)。これらのプリント基板Wを搬送コンベア45にセットして、操作パネル37(図3参照)のスタートボタンを押す。搭載してあるパソコンのキーボード39からプリント基板Wの種類を入力し、その内容をパソコンモニター40に表示させる。入力データはフロッピーディスクドライブ(図示略)によってフロッピーディスクへ保存(読込も可能)しておく。
【0024】積み重なっているプリント基板Wが供給側リフターコンベア44に送られ、一番上に位置するプリント基板Wがパスラインの高さまで上昇し、そこでプリント基板は、プリント基板ガイド43によってXY位置が調整される。多数のプリント基板Wをリフターコンベア44上に積層した状態で、ワーク供給装置Kの下方へ移動させる。
【0025】次にワーク供給装置Kのエア式チャック42によって、プリント基板Wを1枚ずつ取り出し、これをテーブルB上に待機している把持手段Cに供給する。把持手段Cはプリント基板Wをチャック爪41で把持して、XYロボットによってテーブルB上を移動させ、位置決め用マークをTVカメラ34の撮像領域に合わせる。ここでクランパ35が下降して、プリント基板WをテーブルB上に押え付ける。次にTVカメラ34によって基準穴マークを撮像し、ここで撮像された画像を画像処理装置によって処理することにより基準穴マークの中心位置を計測して求められる。
【0026】位置決め用マークの中心位置が定まると、図1,2における移動手段Gにより3つの穴明け手段P,Q,Rのうちの所定のもの、例えば穴明け手段Pのドリル28の中心をこの中心位置に微調整し、続いてZ軸モータ21が回転してこの穴明け手段Pを上昇させるとともに、エアスピンドル27が回転してドリル28によって基準穴gが穴明けされる。基準穴gの穴明けが終わると、この穴明け手段Pは原位置に下降し,他の穴明け手段、例えばQが上昇し、基準穴を原点として数値制御された位置に、回路素子用穴s…を次々と明ける(図5R>5参照)。回路素子用穴の穴径が異なる場合には、第3の穴明け手段Rによってさらに異なる径の穴が明けられる。すべての回路素子用穴の径が同一である場合には、第3の穴明け手段Rは予備として待機させておく。
【0027】穴明けが終了したプリント基板Wは,XYロボット機構によってテーブルB上を右方に移動させられ、排出装置Hへ排出される。ワーク排出装置Hに排出されたワークWは、リフターコンベア47上に積層され、所定の高さになるとコンベアで収納ボックスに運ばれて収納される。
【0028】本実施例では、穴明け手段の数を3として説明してあるが、この数は2以上であればよく、また並べ方も一列でもマトリックス状などであってもよい。またドリルの径についても異径でも同径でもよく、プリント基板の穴明けの条件に応じて任意に変更可能である。
【0029】
【発明の効果】本発明は、従来別工程で行われていた基準穴の穴明けと、回路素子用穴の穴明けとを同一装置及び同一工程で行うものであるため、工程が短縮し、かつ穴明け設備も単一でよくなるので設備上及び設置面積上有利となり、プリント基板の穴明けコストの低減に寄与する。また、従来技術のように回路素子の穴をプレス加工によって穴明けする場合には、大径穴を近接して明けると穴間で基板を破損するおそれがあったが、本発明ではドリルで穴明けするものであるため、破損のおそれがない。さらに複数の穴明け手段を備えているため、自動工具交換が可能となり、工具交換の手間が省け、長時間連続運転が可能になるなどの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】穴明けユニットおよび移動手段の平面図である。
【図2】穴明けユニットおよび移動手段の一部切欠断面の正面図である。
【図3】穴明けユニットおよび移動手段の一部切欠断面の側面図である。
【図4】本発明の穴明け装置全体の概要を示す正面図である。
【図5】穴明けされたプリント基板の例を示す平面図である。
【符号の説明】
W プリント基板
B テーブル
G 移動手段
U 穴明けユニット
P,Q,R 穴明け手段
34 撮像手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 テーブル上のプリント基板に予め付された位置決め用マークを撮像可能に設けてある撮像手段と、上記撮像手段により撮像した画像を画像処理して上記プリント基板の穴明け位置を求める画像処理装置と、それぞれ独立して穴明け動作可能な複数の穴明け手段を備えた穴明けユニットと、上記穴明けユニットを移動させ、上記複数の穴明け手段のうちのいずれかを選択的に上記穴明け位置に対向するように配置する移動手段とを備えていることを特徴とするプリント基板の穴明け装置。
【請求項2】 請求項1において、上記穴明け手段は、径の異なる穴を明けることが可能な穴明け手段を含むものであることを特徴とするプリント基板の穴明け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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