説明

プリント配線板の製造方法

【課題】 小径のビア用開口内の樹脂残渣を除去し、接続信頼性の高いビア導体を形成できる環境調和型の多層プリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】 2炭素間の2重結合およびフルオロアルキルエーテル基を有するフルオロビニルエーテル系のガスを混合したプロセスガスを用いて、電子密度の高い大気圧プラズマ処理を行なうと、ビア導体用の開口の底の樹脂残渣を化学的反応により除去するFラジカル、CFラジカル、CF2ラジカル、CF3ラジカルが、低い混合比で潤沢に得られ化学的除去が効率的に進み、プラズマ中の粒子による物理的除去との相乗効果によりビアの樹脂残渣が除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層間絶縁層にレーザでビア導体用の開口を形成することと、その開口内をフルオロビニルエーテル系のガスを含むプロセスガスでプラズマ処理することを含むプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は大気圧近傍の圧力下でバイアホールの底面及び側壁をプラズマ処理することを開示している。特許文献1では、プラズマ生成用のガスの例として、アルゴンとCF4などのフッ素系ガスからなる混合ガスが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−186598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配線密度の高密度化の要望に伴い、ビア導体の径が小さいプリント配線板が望まれている。
しかしながら、図10のイメージ図が示すようにビア導体の小径化に伴い、基板の不良率が増加することが推定されている。
その原因の一つとして、ビア導体用の開口内の樹脂残渣が考えられる。ビア導体用の開口の径が小さいほど過マンガン酸溶液によるウエットデスミア処理では、ビア導体用の開口内に処理液が入り込まなかったり、開口内に気泡が形成され開口の底の樹脂残渣を除去することが困難となる。それは導通不良を引き起こすと推定される。
【0005】
また、層間絶縁層の低CTE化のため、層間絶縁層内の無機フィラーの含有量が増加している。そのため、レーザでの開口形成が阻害され、ビア導体用の開口の底にシリカ粒子などの無機粒子を含む樹脂残渣の量が多くなると推定されている。導通不良が引き起こされると考えられる。
【0006】
従来技術1はプラズマ生成用のガスの例として、CF4を挙げている。CF4は高い地球温暖化係数(GWP)を有するので、CF4を含むガスでプラズマ処理することは環境に悪影響を与えると推察される。プラズマ生成用のガス内のCF4濃度を高くすることは、人体や環境に悪影響を与えると推察される。例えば、ガス暴露による健康被害等や地球温暖化が予想される。
【0007】
本発明の目的は、小径のビア導体を介する導通用の開口を有する内の樹脂残渣を除去し、接続信頼性の高いビア導体を形成できる多層プリント配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、導体回路上に層間絶縁層を形成することと前記導体回路上であって前記層間絶縁層にレーザでビア導体用の開口を形成することと2炭素原子間の2重結合とフルオロアルキルエーテル基を有するフルオロビニルエーテル系のガスを含むプロセスガスで前記開口内をプラズマ処理することと前記層間絶縁層上の上層導体回路を形成することと前記開口内にビア導体を形成することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図。
【図2】実施形態のプラズマ照射装置の構成を示すブロック図。
【図3】波長領域250〜290nmの間での発光スペクトルを測定した結果を示すグラフ。
【図4】波長領域250〜290nmの間での発光スペクトルを測定した結果を示すグラフ。
【図5】デスミヤ処理を示すSEM写真及び二値化結果。
【図6】デスミヤ処理を示すSEM写真及び二値化結果。
【図7】C3F6O、CF4の化学構造式が示されている。
【図8】C3F6O、C5F10Oの化学構造式が示されている。
【図9】C4F8O、C5F8O、C6F10Oの化学構造式が示されている。
【図10】ビア導体用の開口の径と基板の不良率との関係を示すグラフ。
【図11】ビア導体用の開口を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.銅張り積層板の準備
銅張積層板(日立化成社製 品番:MCL−E679F)が出発材料として準備された(図1(A))。
【0011】
2.導体回路の形成
銅箔から導体回路34が形成される。導体回路34上に粗面34αが形成される(図1(B))。
【0012】
3.層間絶縁層の形成
導体回路34と基板32上に樹脂フィルム50が積層され硬化される(図1(C))。樹脂フィルムは、シリカ等の無機粒子を含んでいる。後述する層間絶縁層は30から80wt%の無機粒子を含む。層間絶縁層の熱膨張係数が小さくなる。また、層間絶縁層にクラックが入りがたい。今回は、樹脂フィルムとして、味の素ファインテック社製のABF-GX13(品番)を用いた。
【0013】
4.ビア導体用の開口の形成
レーザにより、樹脂フィルムのビア導体用の開口51が形成される(図1(D)。レーザとして、炭酸ガス、YAG、UV等が用いられる。ビア導体用の開口の径は、30〜100μmである。
【0014】
今回のビア導体用の開口の径は50μmである。開口の径は層間絶縁層表面の径である。ビア導体用の開口の底に残渣53が残っている。
層間絶縁層中のシリカ粒子の含有量(wt%)が30%以上であると、ビア導体用の開口の底に残る樹脂やシリカ粒子の量が多くなると推察される。しかしながら、後述する実施形態のプロセスガスによれば、プラズマ中のラジカルの密度が高いため、ビア導体用の開口の底がクリーニングされる。従って、実施形態のプラズマ処理はシリカ粒子を30%以上含む層間絶縁層に用いられることが好ましい。シリカ粒子を30%以上含む層間絶縁層に50μm以下の開口径を有するビア導体用の開口が形成されるとクリーニングが困難になるが、実施形態のプラズマ処理によれば、開口の底がクリーニングされる。
【0015】
5.切断
開口51を有する基板30は5.0cm□の個片基板300に切断された。
【0016】
6.デスミア処理
図2は実施形態のプラズマ照射装置10を示す。プラズマ照射装置10は、60Hz非平衡大気圧プラズマである。気圧は760Torrであり、60Hzの交流電圧がネオントランスにより約10kVまで昇圧され、その電圧が対抗する2つの電極間に印加される。プラズマ照射装置10に反応性ガスを含むボンベ80とアルゴンガスが充填されたボンベ84が、それぞれマスフローコントローラ82、86を介して接続される。マスフローコントローラ82、86によりガスの混合比率を調整するためのガス流量は1sccm単位で適時変更される。プラズマ照射装置10は、ガス導入部12,ガス拡散部16、冷却器22に支持された電極20A、20Kを有する放電部16を備える。反応性ガスとアルゴンガスを含むプロセスガスが放電部16下に送られ、プラズマ26が発生させられる。個辺300は、XYテーブル28上に置かれ、開口内は一定時間のプラズマによるデスミア処理が行われる。開口内がクリーニングされる(図1(E))。
【0017】
プラズマ処理は、生産性の観点などから大気圧下で行われることが好ましい。導体回路上であって開口の底に存在する残渣を大気圧プラズマにより、環境負荷の小さいガスで除去することができる。大気圧プラズマなので、この処理を連続で処理することができる。例えば、プリント配線板の搬送速度は1mm/secである。残渣の厚みは略0.1μmから3μmである。実施形態によれば、開口の底に残存しているシリカなどのフィラー成分もプラズマ処理で同時に除去される。そのため、プラズマ処理後のフィラー(粒子)除去工程が不要である。低コストで信頼性の高い微小径のビア導体が形成される。実施形態のデスミア処理(ビア導体用の開口のクリーニング)は、横方向の樹脂へのエッチングの影響(サイドエッチングの影響)が小さいため、ビア導体用の開口の形状の変形が起こりがたい。図11(A)に示される形状の開口が形成されない。ビア導体用の開口の形状は導体回路に向って徐々に細くなる(図11(B))。ビア導体が形成されやすい。ビア導体にクラックが入りがたい。また、ビア導体と導体回路間の接続信頼性が高くなる。
【0018】
しかしながら、真空下あるいは減圧下でのプラズマ処理も可能である。これは、実施形態のプロセスガスにより、真空下あるいは低圧下でも同じ活性種による反応で、ビア導体用の開口の底の残渣が除去されクリーニングされると考えられるからである。
【0019】
ビア導体用の開口が大気圧プラズマで処理されるとき、バイアスの印加は不要である。バイアスの印加を行うこともできる。ビア導体用の開口の底に存在する樹脂残渣を除去することができる。
反応性ガスは2炭素間の2重結合およびフルオロアルキルエーテル基を有するフルオロビニルエーテル系のガスである。反応性ガスとして、C3F6O(トリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル)、C5F10O(ペルフルオロプロピルビニルエーテル)などが挙げられる(図8)。これら以外の例として、図9に構造式や物質名が示されている。これらのガスに含まれるフルオロアルキルエーテル基の結合エネルギーは非常に小さい。その値は従来技術で用いられているCF4のCとFの結合エネルギーの約1/10から約1/20である。また2炭素間の2重結合を有する場合、ラジカルが高速に反応するため、ラジカルとガス分子の反応が促進さると考えられる。
また、大気圧プラズマの場合、特に電子密度が高いため、結合エネルギーの小さいガス分子の解離が、容易かつ頻繁に起こると考えられる。
【0020】
そのため、2炭素間の2重結合とフルオロアルキルエーテル基を有するフルオロビニルエーテル系のガス(反応性ガス)からプラズマにより残渣を除去するための活性種(Fラジカル(F・)、CF2ラジカル(CF2・)、CF3ラジカル(CF3・)、CF3Oラジカル(CF3O・)など)が大量に生成されると推察される。また、大気圧中の酸素や、プロセスガスに混合する酸素により、プラズマ中で酸素ラジカルが生成される。それらの活性種とビア導体用の開口内の樹脂残渣が反応することで、樹脂残渣が除去されると推察される。そして、実施形態では活性種の生成効率が高いと考えられるので、実施形態は従来技術より樹脂残渣を確実に除去することができると考えられる。以下に、反応性ガスにトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテルが用いられる時、予想される反応式が示されている。
【0021】
(フルオロビニルエーテル系のガスの解離)
C3F6O → F3C2・ +CF3O・
(樹脂成分の除去)
CxHyOz(樹脂) + O・ → CO2 + H2O
CxHyOz(樹脂) + (CF3O・)n → CO2 + H2O+CF4
(シリカ粒子の除去)
SiO2 → Si + 2O
Si + 2O + 2CF2・→ SiF4 + 2CO
Si + 2O + CF3・ + F・→ SiF4 + CO2
Si + 2O +4F・ → SiF4 +O2
【0022】
以上の反応で樹脂残渣やシリカ粒子はガスとしてビア導体用の開口の底から除去されると推察される。ビア導体用の開口から導体回路が露出すると考えられる。
【0023】
またプラズマ処理をすると、ビア導体用の開口以外の層間絶縁層表面が改質され濡れ性が向上する。また、ビア導体用の開口内も清浄されるので、ビア導体がめっきで形成される場合、開口内にめっき液が入りやすい。特に、ビア導体用の開口の底がクリーニングされる。開口の径(層間絶縁層上の径)が50μm以下でもビア導体にボイドが入りがたい。開口の底の樹脂残渣が除去されるので、導体回路上にビア導体が形成される。ビア導体と導体回路間に樹脂残渣が存在しないので、ビア導体の径(層間絶縁層上の径)が50μm以下でも、ビア導体と導体回路間の接続信頼性が向上する。ビア導体と導体回路間に樹脂残渣が残っていないので、樹脂残渣を起因とするビア導体と導体回路間の剥がれが起こりがたい。プリント配線板の接続信頼性が確保されやすいと想定される。
【0024】
プロセスガスは、さらに、酸素を含んでもよい。その量(vol%)は0.1%から2%である。プロセスガスが酸素を含むと酸素ラジカルでビア導体用の開口内の樹脂残渣が除去されると推察される。プロセスガスが酸素を含まない場合でも、大気中の酸素からプラズマにより酸素ラジカルが生成されるが、プロセスガスに酸素を含むと酸素ラジカル密度が上がるため、樹脂残渣の効率が向上すると考えられる。
【0025】
なお、発光強度はラジカル密度の指標となるため、プラズマ照射装置10は付属品としてプラズマ中の発光スペクトルを測定するための分光器(Andor社製 品番:SR−500−B10)90を有しても良い。該分光器にプラズマ中の発光を感知するレンズ92が取り付けられている。CF2ラジカルおよびCF3ラジカルの発光スペクトルは、波長領域200nm〜290nmで観測されることが知られている。分光器90を用いて、上述したマスフローコントローラ82、86によりガスの混合比率が調整される。例えば、プロセスガスがアルゴンのみの場合の発光強度に対して、CF2ラジカルおよびCF3ラジカルの発光強度が3倍以上になるようにガスの混合比率が調整される。即ち、発光強度が低いときには、プロセスガス中の反応性ガスの混合比が高められ、所定閾値よりも発光強度が高いときには、反応性ガスの混合比が下げられる。
【0026】
7.ビア導体、導体回路の形成
層間絶縁層50上及びビア導体用の開口51内に、無電解めっき処理により無電解めっき膜52が形成される(図1(F))。所定パターンのめっきレジスト54が形成される(図1(G))。電解めっき処理によりレジスト非形成部に電解めっき膜56が設けられる(図1(H))。レジストが剥離され、電解めっき膜56間の無電解めっき膜が除去され、導体回路58とビア導体60が完成する(図1(I))。
【0027】
(試験内容と試験結果)
反応性ガスとして、C3F6O(トリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル)とCF4(四塩フッ化メタン)が用いられ、
実施例のガスはC3F6Oであり、比較例のガスはCF4である。
プロセスガスはアルゴンと酸素と反応性ガスの混合ガスであり、プロセスガス中の反応性ガスの混合割合(vol%)は以下の通りである。
【0028】
実施例の混合割合は1.5%、2%であり、比較例の混合割合は1.5%、2%、10%である。酸素の混合割合は0.5vol%である。
その他の条件は以下に示されている。
圧力条件:大気圧条件下
アルゴン流量:5.0slm
プラズマ照射口との基板距離:10mm
処理時間:1min
【0029】
これらの条件で、各個片基板はプラズマ処理された。その後、ビア導体用の開口はSEM(日立ハイテクノロジー社製 品番:S-4800)で撮像された。それらのSEM画像は二値化処理を施され、プラズマ処理後の開口の底の残渣の度合いの評価が行われた(図5)。残渣は樹脂とシリカ粒子を含んでいる。二値化画像では開口の底が表されている。残渣が存在している部分は黒で表示され、残渣が除去されている部分は白で表示されている。残存率は、(ビア導体用の開口の底に残存する樹脂の面積)/ビア導体用の開口の底の面積)×100で示される。開口デスミア処理前のビア導体用の開口の底の樹脂の残存率は、100%であり、二値化画像では全面が黒で表示される。開口の底から樹脂が除去されると、二値化画像では白で表示される。開口の底全面の残渣が、過マンガン酸処理により十分に除去されている場合の残存率は0.2%である。プラズマ処理後の残存率が0.2%以下となれば開口の底の残渣が十分にクリーニングされたと判断した(図6)。反応性ガスの混合比が同じ場合、実施例は比較例より開口の底の残渣が少ない。実施例は比較例より反応性ガスの少ない混合比で開口の底をクリーニングすることができる。
【0030】
また、プラズマ中のラジカルの発光強度が発光分光計測により分光器(Andor社製 品番:SR−500−B10)で測定された。
波長領域250〜290nmの間での発光強度の結果が図3,図4に示されている。CF2ラジカル(CF2・)とCF3ラジカル(CF3・)の発光スペクトルは波長領域250nmから290nmに存在している。プロセスガスがCF4を含む場合の発光強度が図3に示されている。プロセスガスがC3F6Oを含む場合の発光強度が図4に示されている。図3の結果と図4の結果が比較されると、C3F6Oの混合比がCF4の混合比より少なくても同等の発光強度が得られている。例えば、プロセスガス中のCF4の濃度が10vol%の場合の発光強度とプロセスガス中のC3F6Oの濃度が2vol%の場合の発光強度が概ね同じである。
この結果から、2炭素間の2重結合とフルオロアルキルエーテル基を有するフルオロビニルエーテル系のガスはCF4ガスよりCF2ラジカルやCF3ラジカルなどの活性種を生成しやすいと推察される。このため、フルオロビニルエーテル系のガスが比較的低濃度であっても、樹脂残渣が除去されると考えられる。実施形態の反応性ガスはCF4より残渣除去の効率がよいと考えられる。そのため、フルオロビニルエーテル系のガスの使用量が抑えられるのでプロセスが廉価になる。また、実施形態は人体や環境に与える影響を小さくすることができるという利点を有する。
【0031】
図3と図4の違いの1つの理由として、前述のフルオロビニルエーテル系のガスは、頻繁に解離しやいので、1分子あたりから生成されるフッ素系ラジカル (CF2ラジカル、CF3ラジカル、Fラジカルなど)の量が多いことが考えられる。実施形態では、プラズマ中のラジカルの密度が高いと考えられる。そのため、プロセスガス中のフルオロビニルエーテル系のガスの量を少なくすることが出来ると考えられる。フルオロビニルエーテル系のガス以外にプロセスガスはO2、Ar、He、N2の少なくとも1種を含むことが望ましい。また、実施形態のフルオロビニルエーテル系のガスの地球温暖化係数が小さい(例えばGWP100以下)。このガスと放電ガス(例えばアルゴン)で形成されるプロセスガスを用い大気圧プラズマでビア導体用の開口内をクリーニングする。ビア導体用の開口内や開口の底はプラズマで処理される。プロセスガス中の反応性ガスの量は(vol%)0.5%から5%である。
【0032】
実施形態の反応性ガスと比較例の反応性ガスの比較から、実施形態では、プラズマ中のラジカル密度が高いと考えられる。そのため、実施形態は比較例より残渣とラジカルとの化学反応の頻度が高いと考えられる。
【0033】
従って、実施形態では、反応性ガスの濃度が低くても、残渣が除去されると考えられる。そのため、実施形態では、大気圧下でプラズマ(例えば60Hz 非平衡大気圧プラズマ)処理することが好適な例である。設備コストが安くなる。低コストかつ環境負荷の小さいデスミア処理が可能となる。
【0034】
反応性ガスの濃度が低いと、人体や環境への影響が抑えられる。また、プロセスコストが抑えられる。そのため、実施形態は安全に廉価で高機能、高密度なプリント配線板を製造するためのプロセスに適している。
【0035】
また、C3F6Oの地球温暖化係数(HGWP)は0.01以下であるのに対して、CF4の地球温暖化係数(HGWP)は7.1である。更に、濃度が1/5以下で使用できるので、C3F6Oは地球環境に優しい。
プラズマやラジカルがビア導体用の開口の底に衝突することで、残渣の除去を援助するかもしれない。その場合、ビア導体用の開口の底は確実に洗浄される。
実施形態は大気圧で反応性ガスは酸素を含んでいるので酸素ラジカルが潤沢に得られ、樹脂残渣の除去に好適であると考えられる。
実施形態によれば、ビア導体用の開口の底に樹脂もしくはフィラー等の残存が減少するので、ビア導体の形成が阻害されない。そのため、接続信頼性が向上する。よって、実施形態のプラズマ処理は、高機能であって高密度なプリント配線板を得るための有用な技術である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
上述した実施形態では、レーザで形成した開口内の残渣除去が述べられている。しかしながら、本発明の実施形態は露光・現像処理により形成した開口のクリーニングに用いられることができる。
【符号の説明】
【0037】
10 プラズマ照射装置
30 多層プリント配線板
32 基板
34 導体回路
50 層間絶縁層
51 ビア
58 導体回路
60 ビア導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体回路上に層間絶縁層を形成することと;
前記導体回路上であって前記層間絶縁層にレーザでビア導体用の開口を形成することと;
2炭素原子間の2重結合とフルオロアルキルエーテル基を有するフルオロビニルエーテル系のガスを含むプロセスガスで前記開口内をプラズマ処理することと;
前記層間絶縁層上の上層導体回路を形成することと;
前記開口内にビア導体を形成することと;を含むプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
請求項1のプリント配線板の製造方法において、前記プラズマ処理することは前記開口の底面をクリーニングすることを含む。
【請求項3】
請求項1のプリント配線板の製造方法において、前記プロセスガスは、さらに、O2、Ar、He、N2のいずれかのガスを含む。
【請求項4】
請求項1のプリント配線板の製造方法において、前記フルオロビニルエーテル系ガスは、C3F6O(トリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル)、又は、C5F10O(ペルフルオロプロピルビニルエーテル)のいずれかである。
【請求項5】
請求項1のプリント配線板の製造方法において、前記プラズマ処理することは大気圧条件下で行われる。
【請求項6】
請求項1のプリント配線板の製造方法において、前記層間絶縁層は、シリカフィラーを含み、該シリカフィラーの配合比が30%以上である。
【請求項7】
請求項1のプリント配線板の製造方法において、前記ビア導体の径は50μm以下である。
【請求項8】
請求項1のプリント配線板の製造方法において、前記プラズマ処理することは、波長領域200nm〜290nmにおけるCF2ラジカルまたはCF3ラジカルの発光強度を発光分光法でモニターすることを含む。
【請求項9】
請求項8のプリント配線板の製造方法において、前記発光強度はアルゴンガスのみと
比較して3倍以上である。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−58698(P2013−58698A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197477(P2011−197477)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】