説明

プレキャスト階段部材

【課題】天然石等を表面形成部材として用いることによって、優れた外観を与えることができるとともに、簡易な工程で容易に製造することができ、表面形成部材とそれ以外の基礎部分とが分離することがなく、しかも、軽量なプレキャスト階段部材を提供する。
【解決手段】プレキャスト階段部材1は、踏み面、段鼻および蹴上げ面を含む表側の部分を形成するための表面形成部分(踏み面形成部材2、段鼻形成部材3、蹴上げ面形成部材4)と、該表面形成部分の裏側に積層して形成されるセメント質硬化体部分5とからなる。セメント質硬化体部分5は、セメントと、ポゾラン質微粉末と、該ポゾラン質微粉末よりも大きな粒径を有する無機粉末(ただし、セメントを除く。)と、金属繊維、有機質繊維および炭素繊維から選ばれる一種以上の繊維と、細骨材と、減水剤と、水を含む組成物の硬化体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段の一段を形成するためのプレキャスト階段部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、セメント質硬化体からなるプレキャスト部材によって、階段を構築する技術が、種々提案されている。
例えば、既存の階段の踏段部分から前方に増設する形で新たな踏段部分を形成するための、セメント系硬化体からなるプレキャスト階段部材であって、前記セメント系硬化体が、セメントと、ポゾラン質微粉末と、該ポゾラン質微粉末よりも大きな粒径を有する無機粉末(ただし、セメントを除く。)と、細骨材と、減水剤と、水を含むことを特徴とするプレキャスト階段部材が提案されている(特許文献1)。
このプレキャスト階段部材は、特定の材料を含むセメント系硬化体の成形品であるため、優れた外観、強度及び耐久性を発揮することができる。
【0003】
また、天然石(本石)とコンクリートとからなる階段ブロックが、種々提案されている。
例えば、踏面本石と蹴込み本石を垂直に組み立て、裏面をコンクリートにて固着してなる本石一体L型階段ブロックが提案されている(特許文献2)。
この階段ブロックは、その製造過程において、踏面本石の裏面と蹴込み面本石の裏面に接着剤を塗布した後に、石粉を振りつけることによって、これら本石とコンクリートとの接着を強化したものである。
【0004】
また、階段ブロックを構成するコンクリートの中に補強筋を埋設して、階段ブロック全体の強度を増強する技術が知られている。
例えば、特定の面状発熱体と、該面状発熱体の上面側又は下面側に配される補強筋とを、コンクリートからなる平板状部に埋設してなる、階段ブロック等のコンクリート製品が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−183272号公報
【特許文献2】特開平5−10010号公報
【特許文献3】特開平9−298085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1には、特定の材料を用いることによって、優れた外観、強度及び耐久性が得られることが記載されている。しかし、天然石等からなる表面形成部分と、前記の特定の材料を組み合わせて、プレキャスト階段部材を作製することは、特許文献1に記載されていない。
上述の特許文献2には、踏み面等を形成する本石の裏面に、コンクリートを固着してなる階段ブロックが記載されている。しかし、本石とコンクリートの接着のために接着剤及び石粉を必要とし、接着作業の手間がかかるという問題がある。また、接着剤の接着力が弱い場合、階段ブロックの敷設後に、本石とコンクリートが分離するおそれがある。
上述の特許文献3には、補強筋を用いて、階段ブロックの強度を増大させることが記載されている。しかし、補強筋の使用は、階段ブロックの製造工程を複雑にし、かつ、軽量化を困難にするなどの問題がある。
【0007】
本発明は、天然石等を表面形成部材として用いることによって、優れた外観を与えることができるとともに、簡易な工程で容易に製造することができ、表面形成部材とそれ以外の部分(基礎部分)とが分離することがなく、しかも、軽量なプレキャスト階段部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、踏み面等を含む表側の部分を形成するための表面形成部分と、該表面形成部分の裏側に積層して形成される特定の材料からなるセメント質硬化体部分とからなるプレキャスト階段部材によれば、前記の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1] 階段の一段を形成するためのプレキャスト階段部材であって、踏み面、段鼻および蹴上げ面を含む表側の部分を形成するための表面形成部分と、該表面形成部分の裏側に積層して形成されるセメント質硬化体部分とからなり、上記セメント質硬化体部分が、セメントと、ポゾラン質微粉末と、該ポゾラン質微粉末よりも大きな粒径を有する無機粉末(ただし、セメントを除く。)と、金属繊維、有機質繊維および炭素繊維から選ばれる一種以上の繊維と、細骨材と、減水剤と、水を含む組成物の硬化体であることを特徴とするプレキャスト階段部材。
[2] 上記セメント質硬化体部分が、平均粒度1mm以下の繊維状粒子又は薄片状粒子を含む、前記[1]に記載のプレキャスト階段部材。
[3] 上記セメント質硬化体部分が補強筋を含まない、前記[1]又は[2]に記載のプレキャスト階段部材。
[4] 上記表面形成部分が、前方側から後方側に向かって、蹴上げ面、段鼻および踏み面の順にこれら各面を形成しており、上記表面形成部分の裏側のセメント質硬化体部分が、前方側である段鼻の近傍から後方に向かって、15〜40mmの均一な厚みに形成され、かつ、後方側の端部の近傍にて、厚みが5〜15mm大きくなって、外部の土台に固定するための固定手段を挿入するための空洞部分を有する、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のプレキャスト階段部材。
[5] 上記表面形成部分が、前方側から後方側に向かって、段鼻、踏み面および蹴上げ面の順にこれら各面を形成しており、上記表面形成部分の裏側のセメント質硬化体部分が、段鼻の後方側の面から後方に向かって15〜40mmの均一な厚みに形成される水平部分と、蹴上げ面の裏側の上端から下方に向かって15〜40mmの均一な厚みに形成される鉛直部分とからなり、かつ、これら水平部分と鉛直部分が交わる部分の外表面に、これら水平部分と鉛直部分の各面と連続した面を形成するように配設された、外部の土台に固定するための固定用部材を有する、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のプレキャスト階段部材。
[6] 上記表面形成部分が、その裏面に凹凸または溝を有する、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のプレキャスト階段部材。
[7] 上記表面形成部分が、天然石、人造石、セラミックス、コンクリート、合成樹脂、または木材からなる、前記[1]〜[6]のいずれかに記載のプレキャスト階段部材。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプレキャスト階段部材は、階段の完成時に外観を形成する表面形成部材として、天然石、人造石(擬石)等を用いることができるので、セメント質硬化体のみからなる場合に比べて、優れた外観を与えることができる。
また、本発明のプレキャスト階段部材は、表面形成部材の裏面側に、特定の材料からなるセメント質硬化体部分を有するので、表面形成部材の裏面に凹凸等を形成させることによって、表面形成部材とセメント質硬化体部分との付着力を容易かつ十分に高めることができ、表面形成部材とセメント質硬化体部分との分離を防止することができる。すなわち、本発明で用いるセメント質硬化体部分は、ポゾラン質微粉末、及び、該ポゾラン質微粉末よりも大きな粒径を有する無機粉末(ただし、セメントを除く。)等を含み、硬化前に大きな流動性を有しかつ硬化後に大きな強度を発現するため、表面形成部材の裏面に形成された凹凸等の中に入り込むことによって、大きな付着力を与えることができる。
【0011】
また、本発明のプレキャスト階段部材は、上述のように表面形成部材の裏面に凹凸等を形成させることによって、接着剤等の接着手段の使用を省くことができ、また、補強筋を省略しうる場合もあるので、簡易な工程で容易に製造することができる。
さらに、本発明のプレキャスト階段部材は、表面形成部材の裏面側に、特定の材料からなるセメント質硬化体部分を有するので、薄肉化が可能で、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のプレキャスト階段部材の一例を示す側面図である。
【図2】図1に示すプレキャスト階段部材の平面図である。
【図3】本発明のプレキャスト階段部材の他の例を示す側面図である。
【図4】図3に示すプレキャスト階段部材の平面図である。
【図5】図1及び図3に示すプレキャスト階段部材を用いて構築した階段を示す断面図である。
【図6】本発明のプレキャスト階段部材の他の例を示す側面図である。
【図7】本発明のプレキャスト階段部材の他の例を示す側面図である。
【図8】図6に示すプレキャスト階段部材を用いて構築した階段を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明のプレキャスト階段部材を説明する。
図1中、プレキャスト階段部材1は、図5に示すように、最上段を除く階段の中間部分を構成するためのものである。
プレキャスト階段部材1は、踏み面、段鼻および蹴上げ面を含む表側の部分を形成するための表面形成部分(踏み面形成部材2、段鼻形成部材3、蹴上げ面形成部材4)と、該表面形成部分の裏側に積層して形成されるセメント質硬化体部分5とからなる。
踏み面形成部材2等からなる表面形成部材の材質としては、天然石、人造石(擬石)、セラミックス、コンクリート、合成樹脂、木材等が挙げられる。
このうち、セラミックスの形態としては、タイル等が挙げられる。
踏み面形成部材2は、図1及び図2に示すように、矩形の板状に形成されている。
踏み面形成部材2の上面は、階段の踏み面を形成し、通常、平坦な面に形成される。
【0014】
踏み面形成部材2の裏面(下面)には、踏み面形成部材2の長手方向(階段の幅方向)に延びる複数の溝6が形成されている。溝6は、踏み面形成部材2とセメント質硬化体部分5との付着力を高めるためのものである。溝6の大きさは、好ましくは、付着力の観点から、深さ1〜3mm、幅3〜5mmである。踏み面形成部材2に形成される溝6の数は、付着力及び製造効率の観点から、好ましくは2〜8、より好ましくは3〜6である。
本発明においては、溝6に代えて、凹凸を形成させてもよい。凹凸としては、例えば、踏み面形成部材2の裏面の平坦な面に対して、多数の立方体状の凹部を形成させたものや、踏み面形成部材2の裏面の平坦な面に対して、多数の立方体状の凸部を形成させたもの等が挙げられる。
【0015】
段鼻形成部材3は、図1及び図2に示すように、断面が略矩形である長尺の棒状に形成されている。
図示しないが、段鼻形成部材3の上面に、歩行者の滑り止めのために、段鼻形成部材3の長手方向(階段の幅方向)に延びる1つ以上の溝を形成させてもよい。
段鼻形成部材3の裏面(下面)には、上述の溝6と同様の目的で、段鼻形成部材3の長手方向(階段の幅方向)に延びる溝7が形成されている。溝7の好ましい大きさは、上述の溝6と同様である。溝7の数は、好ましくは1〜2である。
溝7に代えて、凹凸を形成させてもよい。凹凸の例は、溝6に代えての凹凸の上述の例と同様である。
図示しないが、段鼻形成部材3と踏み面形成部材2との当接面には、凹凸構造を設けることができる。例えば、踏み面形成部材2に複数の凹部を形成させ、かつ、この凹部に嵌合しうる凸部を段鼻形成部材3に形成させることができる。このような凹凸構造を設けることによって、プレキャスト階段部材1全体の強度を高めることができる。
【0016】
蹴上げ面形成部材4は、図1及び図2に示すように、矩形の板状に形成されている。
蹴上げ面形成部材4の外側(前方側)の面は、階段の蹴上げ面を形成し、通常、平坦な面に形成される。
蹴上げ面形成部材4の裏面(内側の面)には、上述の溝6と同様の目的で、蹴上げ面形成部材の長手方向(階段の幅方向)に延びる溝8が形成されている。溝8の好ましい大きさは、上述の溝6と同様である。溝8の数は、付着力及び製造効率の観点から、好ましくは2〜8、より好ましくは3〜6である。
溝8に代えて、凹凸を形成させてもよい。凹凸の例は、溝6に代えての凹凸の上述の例と同様である。
図示しないが、蹴上げ面形成部材4と段鼻形成部材3との当接面には、凹凸構造を設けることができる。該凹凸構造の例は、段鼻形成部材3と踏み面形成部材2との当接面における上述の凹凸構造の例と同様である。
【0017】
セメント質硬化体部分5は、段鼻形成部材3の近傍から後方に向かって、好ましくは15〜40mm、より好ましくは15〜35mm、さらに好ましくは15〜30mm、特に好ましくは15〜25mmの均一な厚みに形成され、かつ、後方側の端部の近傍にて、厚みが好ましくは5〜15mm、より好ましくは10〜15mm大きくなって、外部の土台に固定するための固定手段(例えば、ボルト)を側方から挿入するための空洞部分9を有する。
なお、ここでの「後方側の端部の近傍における厚み」とは、踏み面形成部材2の裏面(下面)を基準とした厚みをいう。
空洞部分9の近傍のセメント質硬化体部分5の部分は、踏み面形成部材2の後方側の延長部分を含むように形成されており、図5に示すように、後方に隣接する他のプレキャスト階段部材の蹴上げ面形成部材及びその裏面のセメント質硬化体部分の下端を載置することができる。したがって、セメント質硬化体部分5は、階段の外観を構成しない。
【0018】
段鼻形成部材3の近傍におけるセメント質硬化体部分5の形状は、好ましくは、図1に示すように、内側の面が湾曲するように形成される。
段鼻形成部材3の近傍から下方に向かうセメント質硬化体部分5の厚みは、最下端における寸法として、好ましくは15〜40mm、より好ましくは15〜35mm、さらに好ましくは15〜30mm、特に好ましくは15〜25mmである。
本発明においては、特定の材料を用いて、セメント質硬化体部分5を形成しているので、セメント質硬化体部分5の厚みを上述の好ましい数値範囲のように小さく定めても、プレキャスト階段部材1について、大きな強度を確保することができる。
【0019】
次に、階段の最上段を構成するためのプレキャスト階段部材11について説明する。
図3中、プレキャスト階段部材11は、踏み面、段鼻および蹴上げ面を含む表側の部分を形成するための表面形成部分(踏み面形成部材12、段鼻形成部材13、蹴上げ面形成部材14)と、該表面形成部分の裏側に積層して形成されるセメント質硬化体部分15とからなる。なお、表面形成部分は、前方側から後方側に向かって、蹴上げ面、段鼻および踏み面の順にこれら各面を形成している。
段鼻形成部材13および蹴上げ面形成部材14の詳細は、図1に示す段鼻形成部材3および蹴上げ面形成部材4と同様である。
踏み面形成部材12は、プレキャスト階段部材11の後方側の端部まで形成されている点を除いて、踏み面形成部材2と同様である。踏み面形成部材12は、図3に示すように、プレキャスト階段部材11の後方側の端部の近傍領域のみが、それ以外の部分に比べて、厚みが5〜15mm小さくなるように形成されている。
【0020】
セメント質硬化体部分15は、プレキャスト階段部材11の後方側の端部の近傍領域を除いて、図1のセメント質硬化体部分5と同様である。すなわち、セメント質硬化体部分15は、段鼻形成部材13の近傍から後方に向かって、均一な厚みに形成され、かつ、後方側の端部の近傍にて、厚みが好ましくは5〜15mm、より好ましくは10〜15mm大きくなって、外部の土台に固定するための固定手段(例えば、ボルト)を下方から挿入するための空洞部分19を有する。なお、ここでの「後方側の端部の近傍における厚み」とは、踏み面形成部材12の裏面(下面)を基準とした厚みをいう。
【0021】
図5に示す階段は、プレキャスト階段部材1、11を用いて構築した階段の一例である。
図5中、階段は、階段基礎構造体20と、階段基礎構造体20に固定された支持部材21と、支持部材21の上に固定された固定用部材(断面がL字型の部材;以下、L字型部材という。)22と、固定具(ボルト、ナット)23と、支持部材21の上に載置されかつL字型部材22に固定されたプレキャスト階段部材1と、固定具(ボルト、ナット)24と、支持部材25と、支持部材25に固定された支持部材26と、固定具(ボルト、ナット)27と、支持部材26に固定されたプレキャスト階段部材11と、固定具(ボルト、ナット)28を含む。
【0022】
本発明のプレキャスト階段部材は、図6または図7に示す形態を有することもできる。
図6中、プレキャスト階段部材31は、踏み面、段鼻および蹴上げ面を含む表側の部分を形成するための表面形成部分(踏み面形成部材32、段鼻形成部材33、蹴上げ面形成部材34)と、該表面形成部分の裏側に積層して形成されるセメント質硬化体部分35と、固定用部材(断面がL字型の部材;以下、L字型部材という。)36とからなる。
なお、表面形成部分は、前方側から後方側に向かって、段鼻、踏み面および蹴上げ面の順にこれら各面を形成している。また、図示しないが、踏み面形成部材32、段鼻形成部材33、蹴上げ面形成部材34の各々には、セメント質硬化体部分35との付着力を高めるために、図1に示す溝6、7、8と同様の溝が形成されている。
表面形成部分の裏側のセメント質硬化体部分は、段鼻形成部材33の後方側の面から後方に向かって均一な厚みに形成される水平部分と、蹴上げ面の裏側の上端から下方に向かって均一な厚みに形成される鉛直部分とからなる。これら水平部分および鉛直部分の厚みは、各々、好ましくは15〜40mm、より好ましくは15〜35mm、さらに好ましくは15〜30mm、特に好ましくは15〜25mmである。
また、これら水平部分と鉛直部分が交わる部分の外表面に、これら水平部分と鉛直部分の各面と連続した面を形成するように、外部の土台に固定するための固定用部材(断面がL字型の板状の部材;以下、L字型部材という。)36が配設されている。
【0023】
図6に示すものに代えて、図7に示すものを用いることもできる。図7中、プレキャスト階段部材41は、踏み面、段鼻および蹴上げ面を含む表側の部分を形成するための表面形成部分(踏み面形成部材42、段鼻形成部材43、蹴上げ面形成部材44)と、該表面形成部分の裏側に積層して形成されるセメント質硬化体部分45と、固定用部材(L字型部材)46とからなる。なお、プレキャスト階段部材41は、踏み面形成部材42および蹴上げ面形成部材44以外は、プレキャスト階段部材31と同じ構造を有する。
図8に示す階段は、プレキャスト階段部材31を用いて構築した階段の一例である。
図8中、階段は、階段基礎構造体37と、階段基礎構造体37に溶接等で固着された支持部材38と、支持部材38とL字型部材36を溶接等で固着することによって、支持部材38の上に固着されたプレキャスト階段部材31と、最上段を構成する平板状の部材(例えば、板状に加工した天然石)39とを含む。
【0024】
次に、本発明のプレキャスト階段部材のセメント質硬化体部分を形成するための材料について説明する。
セメント質硬化体部分は、セメントと、ポゾラン質微粉末と、該ポゾラン質微粉末よりも大きな粒径を有する無機粉末(ただし、セメントを除く。)と、金属繊維、有機質繊維および炭素繊維から選ばれる一種以上の繊維と、細骨材と、減水剤と、水を含む組成物の硬化体である。なお、該組成物の材料としては、前記の各材料に加えて、平均粒度1mm以下の繊維状粒子又は薄片状粒子等をさらに配合してもよい。
本発明で用いられるセメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント等が挙げられる。
本発明において、硬化体の早期強度を向上させようとする場合には、早強ポルトランドセメントを使用することが好ましく、混練物の作業性を向上させようとする場合には、中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントを使用することが好ましい。
セメントのブレーン比表面積は、好ましくは2,500〜5,000cm2/g、より好ましくは3,000〜4,500cm2/gである。該値が2,500cm2/g未満では、水和反応が不活発になって、硬化後の強度発現性の低下等が生じうる。該値が5,000cm2/gを超えると、セメントの粉砕に時間がかかるばかりか、所定の流動性を得るための水量が増大し、硬化後の強度発現性の低下等が生じうる。
【0025】
本発明で用いられるポゾラン質微粉末としては、例えば、シリカフューム、シリカダスト、フライアッシュ、スラグ、火山灰、シリカゾル、沈降シリカ等が挙げられる。
一般に、シリカフュームやシリカダストは、BET比表面積が5〜25m2/gであり、粉砕等を行なう必要がないので、本発明で好ましく用いられる。
ポゾラン質微粉末のBET比表面積は、好ましくは5〜25m2/g、より好ましくは5〜15m2/gである。該値が5m2/g未満では、硬化後の強度発現性の低下等が生じうる。該値が25m2/gを超えると、所定の流動性を得るための水量が多くなるため、硬化後の強度発現性の低下等が生じうる。
ポゾラン質微粉末の配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部である。該量が5〜50質量部の範囲外では、混練物の作業性の低下や、自己収縮の増大や、硬化後の強度発現性の低下等が生じうる。
【0026】
本発明で用いられる無機粉末は、ポゾラン質微粉末よりも大きな粒径を有する無機粉末(ただし、セメントを除く。)である。
無機粉末を配合することによって、混練物の流動性や、硬化後の強度及び耐久性を向上させることができる。
無機粉末としては、例えば、スラグ、石灰石粉末、長石類、ムライト類、アルミナ粉末、石英粉末、フライアッシュ、火山灰、シリカゾル、炭化物粉末、窒化物粉末等が挙げられる。中でも、スラグ、石灰石粉末及び石英粉末は、コストや硬化後の品質安定性の観点から好ましく用いられる。
【0027】
無機粉末のブレーン比表面積は、(a)3,000〜30,000cm2/g、好ましくは4,500〜20,000cm2/gであること、及び、(b)セメントのブレーン比表面積よりも大きな値であること(2種以上の無機粉末を含む場合には、その少なくとも1種が、セメントよりも大きなブレーン比表面積を有すること)、の2つの条件を兼ね備えることが、好ましい。
無機粉末のブレーン比表面積が3,000cm2/g未満では、混練物の作業性の低下や、硬化後の強度発現性の低下等が生じうる。無機粉末のブレーン比表面積が30,000cm2/gを超えると、粉砕に手間がかかり、材料が入手し難くなったり、混練物の作業性が低下する等の欠点が生じうる。
無機粉末がセメントよりも大きなブレーン比表面積を有することによって、無機粉末が、セメントとポゾラン質微粉末の間隙を埋めるような大きさの粒度を有することになり、混練物の作業性や、硬化後の強度発現性及び耐久性を向上させることができる。
無機粉末とセメントとのブレーン比表面積の差は、混練物の作業性や、硬化後の強度発現性及び耐久性の観点から、好ましくは1,000cm2/g以上、より好ましくは2,000cm2/g以上である。
無機粉末の配合量は、混練物の作業性や、自己収縮性や、硬化後の強度発現性及び耐久性等の観点から、セメント100質量部に対して、好ましくは5〜55質量部、より好ましくは10〜55質量部である。
【0028】
本発明においては、無機粉末として、粒度の異なる2種の無機粉末(小さな粒度を有する無機粉末A、及び大きな粒度を有する無機粉末B)を併用することができる。
この場合、無機粉末A及び無機粉末Bは、同じ種類の粉末(例えば、石灰石粉末)を使用してもよいし、異なる種類の粉末(例えば、石灰石粉末及び石英粉末)を使用してもよい。
無機粉末Aのブレーン比表面積は、好ましくは5,000〜30,000cm2/g、より好ましくは6,000〜20,000cm2/gである。無機粉末Aは、セメントよりも大きなブレーン比表面積を有することが好ましい。
無機粉末Aのブレーン比表面積が5,000cm2/g未満では、セメント及び無機粉末Bに対するブレーン比表面積の差が小さくなり、2種の無機粉末を併用することによる効果が小さくなるばかりか、2種の無機粉末を用いているために、材料の準備に手間がかかるので好ましくない。無機粉末Aのブレーン比表面積が30,000cm2/gを超えると、粉砕に手間がかかり、材料が入手し難くなったり、混練物の作業性が低下する等の欠点が生じうる。
【0029】
無機粉末Aが、セメント及び無機粉末Bよりも大きなブレーン比表面積を有することによって、無機粉末Aが、セメント及び無機粉末Bと、ポゾラン質微粉末との間隙を埋めるような大きさの粒度を有することになり、混練物の作業性や、硬化後の強度発現性及び耐久性をより向上させることができる。
無機粉末Aと、セメント及び無機粉末Bとの間のブレーン比表面積の差(換言すれば、無機粉末Aと、セメントと無機粉末Bのうちブレーン比表面積の大きい方とのブレーン比表面積の差)は、混練物の作業性や、硬化後の強度発現性及び耐久性を向上させる観点から、好ましくは1,000cm2/g以上、より好ましくは2,000cm2/g以上である。
【0030】
無機粉末Bのブレーン比表面積は、好ましくは2,500〜5,000cm2/gである。該値が2,500cm2/g未満では、混練物の作業性の低下や、硬化後の強度発現性の低下等が生じうる。該値が5,000cm2/gを超えると、ブレーン比表面積の値が無機粉末Aに近づくため、2種の無機粉末を併用することによる効果が小さくなるばかりか、2種の無機粉末を用いているために、材料の準備に手間がかかるので好ましくない。
セメントと無機粉末Bの間のブレーン比表面積の差は、好ましくは100cm2/g以上、より好ましくは200cm2/g以上である。該差が100cm2/g以上であることによって、混練物を構成する粒子の充填性を高めて、混練物の作業性や、硬化後の強度発現性及び耐久性を向上させることができる。
【0031】
無機粉末Aの配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは5〜45質量部である。無機粉末Bの配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは1〜40質量部、より好ましくは5〜35質量部である。無機粉末A及び無機粉末Bの配合量が前記の数値範囲外では、これら2種の無機粉末を併用することによる効果が小さくなるばかりか、2種の無機粉末を用いているために、材料の準備に手間がかかるので好ましくない。
無機粉末Aと無機粉末Bの合計量は、セメント100質量部に対して、好ましくは5〜55質量部、より好ましくは10〜50質量部である。
【0032】
本発明においては、硬化後の靭性を高める観点から、混練物に平均粒度が1mm以下の繊維状粒子または薄片状粒子を配合することが好ましい。ここで、粒子の粒度とは、その最大寸法の大きさ(特に、繊維状粒子ではその長さ)である。
繊維状粒子としては、例えば、ウォラストナイト、ボーキサイト、ムライト等が挙げられる。繊維状粒子としては、硬化後の靭性を高める観点から、長さ/直径の比で表される針状度が3以上のものを用いることが好ましい。
薄片状粒子としては、例えば、マイカフレーク、タルクフレーク、バーミキュライトフレーク、アルミナフレーク等が挙げられる。
繊維状粒子及び薄片状粒子の配合量(これらの粒子を併用する場合は、合計量)は、混練物の作業性や、硬化後の強度発現性、耐久性及び靭性等の観点から、セメント100質量部に対して、好ましくは35質量部以下、より好ましくは5〜25質量部である。
【0033】
本発明においては、硬化後の曲げ強度や破壊強度等を大幅に高める観点から、前記の各材料に加えて、金属繊維、有機繊維及び炭素繊維の中から選ばれる1種以上が配合される。
金属繊維は、硬化後の曲げ強度等を大幅に高める観点から、配合される。
金属繊維としては、例えば、鋼繊維、ステンレス繊維、アモルファス繊維等が挙げられる。中でも、鋼繊維は、大きな強度を有し、入手し易く、低コストであることから、好ましく用いられる。
金属繊維の寸法は、混練物中における金属繊維の材料分離の防止や、硬化後の曲げ強度の向上等の観点から、直径が0.01〜1mmで、長さが2〜30mmであることが好ましく、直径が0.05〜0.5mmで、長さが5〜25mmであることがより好ましい。また、金属繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)は、好ましくは20〜200、より好ましくは40〜150である。
【0034】
金属繊維の形状は、直線状よりも、何らかの物理的付着力を付与する形状(例えば、螺旋状や波形)が好ましい。螺旋状等の形状にすれば、金属繊維とマトリックスとが引き抜けながら応力を担保するため、曲げ強度が向上する。
金属繊維の好適な例としては、例えば、直径が0.5mm以下、引張強度が1〜3.5GPaの鋼繊維からなるものが挙げられる。該鋼繊維は、120MPaの圧縮強度を有するセメント系硬化体のマトリックスに対する界面付着強度(付着面の単位面積当たりの最大引張力)が3MPa以上であることが好ましい。該鋼繊維は、波形または螺旋状の形状に加工することができる。また、該鋼繊維の周面上に、マトリックスに対する運動(長手方向の滑り)に抵抗するための溝または突起を付けることもできる。また、該鋼繊維の表面に、該鋼繊維のヤング係数よりも小さなヤング係数を有する金属層(例えば、亜鉛、錫、銅、アルミニウム等から選ばれる1種以上からなるもの)を設けたものとしてもよい。
金属繊維の配合量は、混練物中の体積百分率で、好ましくは4%以下、より好ましくは0.5〜3%、特に好ましくは1〜3%である。該配合量が4%を超えると、流動性等を確保するために単位水量が増大するうえ、配合量をさらに増やしても金属繊維による補強効果が頭打ちになるため経済的でなく、また、混練時にいわゆるファイバーボールを生じやすくなるため、好ましくない。
【0035】
有機繊維及び炭素繊維は、硬化後の破壊強度等を高める観点から、配合される。
有機繊維としては、例えば、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維等が挙げられる。中でも、ビニロン繊維及びポリプロピレン繊維は、コストや入手し易さの観点から好ましく用いられる。
炭素繊維としては、例えば、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。
有機繊維及び炭素繊維の寸法は、混練物中におけるこれらの繊維の材料分離の防止や、硬化後の破壊強度の向上等の観点から、直径が0.005〜1mmで、長さが2〜30mmであることが好ましく、直径が0.01〜0.5mmで、長さが5〜25mmであることがより好ましい。有機繊維及び炭素繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)は、好ましくは20〜200、より好ましくは30〜150である。
有機繊維及び炭素繊維の配合量は、混練物中の体積百分率で、好ましくは10%以下、より好ましくは1〜9%、特に好ましくは2〜8%である。該量が10%を超えると、流動性を確保するために単位水量が増大するうえ、配合量をさらに増やしてもこれらの繊維による強度向上の効果が頭打ちになるため経済的でなく、また、混練時にいわゆるファイバーボールを生じやすくなるため、好ましくない。
【0036】
細骨材としては、例えば、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂又はこれらの混合物等を使用することができる。
本発明においては、混練物の流動性や、硬化後の強度発現性及び耐久性等の観点から、最大粒径が2mm以下の細骨材を使用することが好ましく、最大粒径が1.5mm以下の細骨材を使用することがより好ましい。
細骨材の配合量は、混練物の作業性や、硬化後の強度発現性及び耐久性等の観点から、セメント100質量部に対して、好ましくは50〜250質量部、より好ましくは80〜200質量部である。
【0037】
減水剤としては、例えば、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系等の減水剤、AE減水剤、高性能減水剤または高性能AE減水剤を使用することができる。これらのうち、減水効果の大きな高性能減水剤または高性能AE減水剤を使用することが好ましく、特に、ポリカルボン酸系の高性能減水剤または高性能AE減水剤を使用することがより好ましい。
減水剤の配合量は、セメント100質量部に対して、固形分換算で好ましくは0.1〜4質量部、より好ましくは0.1〜1質量部である。該配合量が0.1質量部未満では、混練が困難になったり、混練物の作業性が極端に低下することがある。該配合量が4質量部を超えると、材料分離や著しい凝結遅延が生じたり、硬化後の強度発現性が低下することがある。
なお、減水剤は、液状と粉末状のいずれでも使用することができる。
水量は、セメント100質量部に対して、好ましくは10〜35質量部、より好ましくは12〜30質量部である。該量が10質量部未満では、混練が困難になるとともに、混練物の作業性が極端に低下する等の欠点が生じうる。該量が30質量部を超えると、硬化後の強度発現性が低下する傾向がある。
【0038】
前記の各材料の混練方法は、特に限定されるものではなく、例えば、(1)水、減水剤以外の材料を予め混合して、プレミックス材を調製しておき、該プレミックス材、水及び減水剤をミキサに投入し、混練する方法、(2)粉末状の減水剤を用意し、水以外の材料を予め混合して、プレミックス材を調製しておき、該プレミックス材及び水をミキサに投入し、混練する方法、(3)各材料を各々個別にミキサに投入し、混練する方法、等が挙げられる。
混練に用いるミキサは、通常のコンクリートの混練に用いられるどのタイプのものでもよく、例えば、揺動型ミキサ、パンタイプミキサ、二軸練りミキサ等が挙げられる。
本発明で用いられる混練物及びその硬化体の物性は、次のとおりである。
本発明で用いられる混練物は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において15回の落下運動を行なわないで測定したフロー値(以下、「0打フロー値」と称する。)が、230mm以上であり、流動性に優れるものである。そのため、混練物を型枠内に投入して成形する作業等を容易に行なうことができる。
前記混練物が硬化してなる硬化体は、100N/mm2以上の圧縮強度と、20N/mm2以上の曲げ強度を発現するうえ、構造的に極めて緻密に形成されているので、機械的強度や耐久性の低下が生じ難いものである。
【0039】
本発明のプレキャスト階段部材は、型枠内に、表面形成部分を構成する部材(例えば、踏み面形成部材、段鼻形成部材および蹴上げ面形成部材)を敷設した後、上述のセメントを含む混練物を投入して成形し、養生することによって、製造することができる。なお、養生方法は、特に限定されるものではなく、例えば、気中養生、湿空養生、水中養生、加熱促進養生(例えば、蒸気養生、オートクレーブ養生)等の慣用手段またはこれらを組み合わせたものを採用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を説明する。
[使用材料]
以下に示す材料を使用した。
(1)セメント;低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント社製;ブレーン比表面積:3,200cm2/g)
(2)ポゾラン質微粉末;シリカフューム(BET比表面積:10m2/g)
(3)無機粉末A;石英粉末A(ブレーン比表面積:7,500cm2/g)
(4)無機粉末B;石英粉末B(ブレーン比表面積:4,000cm2/g)
(5)繊維状粒子;ウォラストナイト(平均長さ:0.3mm、長さ/直径の比:4)
(6)金属繊維;鋼繊維(直径:0.2mm、長さ:13mm)
(7)細骨材;珪砂(最大粒径:0.6mm)
(8)減水剤;ポリカルボン酸系高性能減水剤
(9)水;水道水
【0041】
[実施例1]
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム31質量部、石英粉末A39質量部、鋼繊維2体積%(混練物A中の割合)、珪砂120質量部、高性能減水剤1.0質量部(固形分換算)、水22質量部を二軸ミキサに投入し混練して、混練物Aを調製した。
混練物Aの0打フロー値は、260mmであった。
混練物Aを型枠(φ50×100mm)に流し込み、20℃で48時間静置後、90℃で48時間蒸気養生し、硬化体(3本)とした。これらの硬化体(3本)の圧縮強度の平均値は、210N/mm2であった。
混練物Aを型枠(4×4×16cm)に流し込み、20℃で48時間静置後、90℃で48時間蒸気養生し、硬化体(3本)とした。これらの硬化体(3本)の曲げ強度の平均値は、40N/mm2であった。
【0042】
型枠内に、図1に示す表面形成部分を構成する各部材(踏み面形成部材、段鼻形成部材および及び蹴上げ面形成部材)を敷設した後、混練物Aを投入し、次いで、20℃で48時間静置後、90℃で48時間蒸気養生し、図1に示すプレキャスト階段部材1(幅:385mm、高さ:160mm、図中の符号Aで示す厚さ:25mm、図中の符号Bで示す厚さ:15mm、図中の符号Cで示す厚さ:50mm、蹴上げ面形成部材の厚さ:20mm、蹴上げ面形成部材の下端におけるセメント質硬化体部分の厚さ:20mm)を作製した。
同様にして、図3に示すプレキャスト階段部材11(幅:385mm、高さ:160mm、図中の符号C’で示す厚さ:50mm)を作製した。
プレキャスト階段部材1、11を用いて、図5に示す階段を構築した。この階段は、実用に供し得る十分な強度を有していた。
【0043】
[実施例2]
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム31質量部、石英粉末A26質量部、石英粉末B13質量部、鋼繊維2体積%(混練物B中の割合)、ウォラストナイト20質量部、珪砂120質量部、高性能減水剤1.0質量部(固形分換算)、水22質量部を二軸ミキサに投入し混練して、混練物Bを調製した。
混練物Bについて実施例1と同様に物性を測定したところ、混練物の0打フロー値は285mm、硬化体の圧縮強度は215N/mm2、硬化体の曲げ強度は40N/mm2であった。
混練物Aに代えて混練物Bを用いた以外は実施例1と同様にして、階段を構築した。この階段は、実用に供し得る十分な強度を有していた。
【符号の説明】
【0044】
1,11,31,41 プレキャスト階段部材
2,12,32,42 踏み面形成部材
3,13,33,43 段鼻形成部材
4,14,34,44 蹴上げ面形成部材
5,15,35,45 セメント質硬化体部分
6,7,8,16,17,18 溝
9,19 空洞部分
20,37 階段基礎構造体
21,25,26,38 支持部材
22,36,46 固定用部材(L字型部材)
23,24,27,28 固定具
39 平板状の部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段の一段を形成するためのプレキャスト階段部材であって、
踏み面、段鼻および蹴上げ面を含む表側の部分を形成するための表面形成部分と、該表面形成部分の裏側に積層して形成されるセメント質硬化体部分とからなり、
上記セメント質硬化体部分が、セメントと、ポゾラン質微粉末と、該ポゾラン質微粉末よりも大きな粒径を有する無機粉末(ただし、セメントを除く。)と、金属繊維、有機質繊維および炭素繊維から選ばれる一種以上の繊維と、細骨材と、減水剤と、水を含む組成物の硬化体であることを特徴とするプレキャスト階段部材。
【請求項2】
上記セメント質硬化体部分が、平均粒度1mm以下の繊維状粒子又は薄片状粒子を含む、請求項1に記載のプレキャスト階段部材。
【請求項3】
上記セメント質硬化体部分が補強筋を含まない、請求項1又は2に記載のプレキャスト階段部材。
【請求項4】
上記表面形成部分が、前方側から後方側に向かって、蹴上げ面、段鼻および踏み面の順にこれら各面を形成しており、
上記表面形成部分の裏側のセメント質硬化体部分が、前方側である段鼻の近傍から後方に向かって、15〜40mmの均一な厚みに形成され、かつ、後方側の端部の近傍にて、厚みが5〜15mm大きくなって、外部の土台に固定するための固定手段を挿入するための空洞部分を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレキャスト階段部材。
【請求項5】
上記表面形成部分が、前方側から後方側に向かって、段鼻、踏み面および蹴上げ面の順にこれら各面を形成しており、
上記表面形成部分の裏側のセメント質硬化体部分が、段鼻の後方側の面から後方に向かって15〜40mmの均一な厚みに形成される水平部分と、蹴上げ面の裏側の上端から下方に向かって15〜40mmの均一な厚みに形成される鉛直部分とからなり、かつ、これら水平部分と鉛直部分が交わる部分の外表面に、これら水平部分と鉛直部分の各面と連続した面を形成するように配設された、外部の土台に固定するための固定用部材を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレキャスト階段部材。
【請求項6】
上記表面形成部分が、その裏面に凹凸または溝を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプレキャスト階段部材。
【請求項7】
上記表面形成部分が、天然石、人造石、セラミックス、コンクリート、合成樹脂、または木材からなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプレキャスト階段部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−219493(P2012−219493A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85401(P2011−85401)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(300082335)太平洋プレコン工業株式会社 (14)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】