説明

プレッツェル及びその製造方法

【課題】本発明の目的は従来よりも、味の濃いプレッツェル製品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】添加する調味原料の一部を焼成前プレッツェル生地の表面に上掛け用調味料として、塗布することにより、従来に比較して味の濃いプレッツェル及びその製造方法を実現することができた。また、本発明により得られたプレッツェルは、従来品に比較して調味料を増加させることなく、味の濃いプレッツェルを提供することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、味が強く感じられるプレッツェル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製菓、製パン業界において焼成後に風味付けの目的で食品の表面にシーズニングをスプレーオイルにより固着させる方法が用いられてきた。プレッツェル製品の味付けにおいてもドウに食塩、糖類、その他調味料を練りこんで焼成した生地に、シーズニングを上掛けするものが一般的であった。
【0003】
一方、消費者の味の嗜好は多様化してきており、従来よりもさらに濃い味のプレッツェルを求める声も大きくなってきていた。
【0004】
しかし、従来のプレッツェルの製造方法では、焼成後、上掛けによりプレッツェルに添加できるシーズニングの量は限られており、上掛けの調味料により味の強さを大きく変化させることは比較的困難であった。
【0005】
これまでにフレーク状の油脂加工品を表面に付着させる方法(特許文献1)や、微粉末化した調味料を噴霧する方法(特許文献2)が提案されているが、プレッツェルのような細長い形状のものには大きなフレーク状のものは付着しにくく、またアルカリ処理したプレッツェルは表面に艶があり固く、シーズニングパウダーが滑り落ち、大量に付着しにくいといった問題があった。
また、上掛けのシーズニングの代わりに、ドウに練りこむ原料を増加させても、上掛けの原料を増加させるのに比較して味の変化を感じにくいうえ、製品中の塩分が多くなってしまうという問題があった。
【特許文献1】特許2562530号
【特許文献2】特許2793652号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は従来よりも、味の濃いプレッツェル製品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は以下の物及び製造方法を提供する。
項1.上掛け用調味料と練り込み生地用調味料の重量比が、10:90〜40:60である、棒状プレッツェル。
項2.上掛け用調味料が液体状である、請求項1記載の棒状プレッツェル。
項3.上掛け用調味料を棒状の焼成前生地に塗布した後、焼成する、棒状プレッツェルの製造方法。
項4.(1)練り込み生地中に調味料全体の60〜90重量%を添加し、成形して、焼成前生地を作製し、
(2)前記、焼成前生地の表面に、液状の上掛け用調味料を調味料全体の10〜40重量%添加して焼成する、項3記載の棒状プレッツェルの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、従来品に比較して塩分その他調味料を増加させることなく、味の濃いプレッツェルを提供することができた。また、従来の製造方法に比較して、シーズニングパウダーなどで製造ラインを汚すことなく、味の濃いプレッツェルを製造する方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明においてプレッツェルとは、ドウをアルカリ処理した後焼成することによって得られる菓子をいう。ドウとは原料が混合されて得られる塊状の生地のことをいい、通常ビスケット生地である。ビスケット生地とは基本的に小麦粉等の穀粉100部に水20〜50部を加え混合したものを指す。ビスケット生地は必要に応じて糖類、食用油脂、食塩、澱粉、乳製品、卵製品、イースト、酵素、膨脹剤、食塩以外の調味料、その他食品添加物等の原材料を含んでもよい。ドウを薄く圧延する場合にはビスケット生地に対してプロテアーゼ等の酵素を用いたり、食用油脂を配合するなどして、伸展性のある生地を得ることが好ましい。
【0010】
本発明において、調味料とは、蔗糖、食塩、化学調味料、酸味料等の結晶状調味料や、エキス類、果汁、野菜類、肉類、魚介類、香辛料、乳製品等の粉末状の呈味原料があげられる。
【0011】
上掛け用調味料とは、風味付けに用いる原料で蔗糖、蜂蜜等の甘味糖類、チーズパウダー等の乳製品粉末、リンゴ、イチゴ等の各種フルーツパウダー、野菜類、肉類、魚介類、香辛料を水に溶解、または分散させたもの、その他、乳化液状のドレッシング、チョコレート類など液体状としたものをいう。上掛け用調味料が粉末、塊状の場合、ドウに完全に付着させることが難しく、また剥がれやすくなる。さらに調味料が付着しているところと付着していないところで風味の差が大きく、味がぼやけ濃さが感じられなくなる。その点液体状の場合、呈味原料がドウ表面全面にしかも均一に付着させることができ、味の濃さも十分に感じることができるようになる。
【0012】
練り込み生地用調味料とは、ドウを調整する工程においてドウに練り込む調味料をいい、粉糖、食塩、化学調味料、酸味料等の結晶状調味料や、エキス類、しょうゆ、果汁、野菜、肉、魚、香辛料、乳製品等の呈味原料があげられる。これら呈味原料の形態は生、乾燥品、液体、ペースト、粉末、塊状等任意の形態であってよい。
【0013】
プレッツェルの製造は、ドウを調製する工程、ドウを成型して麺状にする工程、上掛け用調味料を上面に塗布する工程、アルカリ液中にドウの下面を浸漬させる工程、表面処理されたドウを焼成してプレッツェルを得る工程から成る。
【0014】
表1のドウ配合の原料を当該分野で公知の方法によって混合することによってドウを調製する。混合には縦型、横型等の形状は問わず、通常のパン、菓子の製造過程で用いるミキサーが使用できる。原料が実質的に均一に混合されるのであればどのような混合方法を用いてもよい。原料の混合順序に特に制限は無い。
【0015】
こうして得られたドウを任意の方法で、任意の形状に成型する。具体的にはドウをシート状に成型し、その後麺状にカットする。
次に、得られた麺状のドウに対して上掛け用調味料を塗布する。塗布は上面のみに行う。
次いで上面に塗布した麺状のドウをアルカリ液に浸漬させる。浸漬は上面の上掛け用調味料が塗布されていない下面部分にのみ行う。
上面の上掛け用調味料と下面のアルカリ液は混ざることで風味の強さが緩和される為、別々に処理することが必要である。
【0016】
表面処理された麺状のドウは当該分野で公知の任意の焼成条件、及び任意の方法で焼成される。焼成のためには例えば固定オーブン、連続オーブン、ダイレクトオーブン、熱風循環オーブン等いずれも使用可能である。成型済み生地は必要に応じてスチールベルト、ヘビーメッシュ、ライトメッシュ等を任意に用いて焼成され得る。
【実施例】
【0017】
以下の実施例、比較例において、ドウの配合、上掛け調味料の配合は下表の通りとした。また、以下の実施例、比較例において配合は重量部とする。


【0018】
(実施例1)
表1のドウ配合に示す通り小麦粉、野菜パウダーを横型ミキサーで粉体混合し均一化した。これに、野菜ペースト、砂糖、イースト、水を加え、さらにマーガリン、バターを加え、グルテンがでるまで混合し、ドウを得た。このドウを30℃、湿度85%のホイロで2時間発酵させた後、シート状に成型、麺状にカットした。カット後、上掛け調味料(表2の配合の乳化液状ドレッシング)を成型ドウ115部に対して2部を上面にのみ均一に塗布した。このドウを炭酸ナトリウム5重量%水溶液に液体原料が塗布されていない下面のみ浸漬させ、表面処理した成型済みドウを得た。この表面処理した成型済みドウを125mm毎に切断した後、バッチ式オーブンにて200℃で10分間焼成し、プレッツェルを得た。
得られたプレッツェルの官能評価を行ったところ、ほどよい酸味が加わり、味の濃さが感じられた。
【0019】
(実施例2)
表1の配合を用いて実施例1と同様にドウを成型、麺状にカット後、上掛け調味料(表2の配合の乳化液状ドレッシング)を成型ドウ115部に対して4部を上面にのみ均一に塗布した。その後実施例1と同様の方法によりプレッツェルを得た。
得られたプレッツェルの官能評価を行ったところ、ドレッシングのすっきりとした酸味が感じられ、練りこみの調味料とのバランスも取れていた。
【0020】
(実施例3)
表1の配合を用いて実施例1と同様にドウを成型、麺状にカット後、上掛け調味料(表2の配合の乳化液状ドレッシング)を成型ドウ115部に対して6部を上面にのみ均一に塗布した。その後実施例1と同様の方法によりプレッツェルを得た。
得られたプレッツェルの官能評価を行ったところ、味は濃厚であるが、厭味も感じられず、酸味、塩味も適度で味のバランスが取れていた。
【0021】
(実施例4)
表1の配合を用いて実施例1と同様にドウを成型、麺状にカット後、上掛け調味料(表2の配合の乳化液状ドレッシング)を成型ドウ115部に対して8部を上面にのみ均一に塗布した。その後実施例1と同様の方法によりプレッツェルを得た。
得られたプレッツェルの官能評価を行ったところ、噛みだしの風味が強く、後を引くえぐみもなく、濃厚の味が感じられた。
【0022】
(比較例1)
表1の配合を用いて実施例1と同様にドウを成型、麺状にカット後、炭酸ナトリウム5重量%水溶液にドウ全体を浸漬させ、表面処理した成型済みドウを得た。その後実施例1と同様にしてプレッツェルを得た。
得られたプレッツェルの官能評価を行ったところ、後口に残る旨みは感じられるものの、噛みだしの風味が弱く、やや物足りなさを感じた。
【0023】
(比較例2)
表1の配合を用いて実施例1と同様にドウを成型、麺状にカット後、上掛け調味料(表2の配合の乳化液状ドレッシング)を成型ドウ115部に対して10部を上面にのみ均一に塗布した。その後実施例1と同様の方法によりプレッツェルを得た。
得られたプレッツェルの官能評価を行ったところ、塩味、酸味ともかなり強く、全体的なバランスも悪く、後を引くえぐみが感じられるようになった。
【0024】
(比較例3)
表1の配合を用いて実施例1と同様にドウを成型、麺状にカット後、粉末の上掛け調味料(ドレッシングパウダー)を成型ドウ115部に対して3部(固形分換算で乳化液状ドレッシングを5.2部塗布するのと同等の量)を上面にのみ均一に掛けた。その後実施例1と同様の方法によりプレッツェルを得た。
得られたプレッツェルの官能評価を行ったところ、ドレッシングパウダーの多くが剥がれ落ちるため、風味が弱く、また焼成によりドレッシングパウダーが焦げ、苦味も感じられた。
【0025】
実施例1、2、3、4および比較例1、2、3のプレッツェルを試食、官能評価を実施し、表3にまとめた。ここでの評価は7名の官能パネラーにより行った。
味の濃さについては5点満点で数値が高いほど味が濃い。総合評価は4段階(◎:非常に良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る)で総合的に味のバランスを評価した。

【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のプレッツェル及びその製造方法により、消費者の味の濃さの多様性に対応できる製品を提供することが可能となった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上掛け用調味料と練り込み生地用調味料の重量比が、10:90〜40:60である、棒状プレッツェル。
【請求項2】
上掛け用調味料が液体状である、請求項1記載の棒状プレッツェル。
【請求項3】
上掛け用調味料を棒状の焼成前生地に塗布した後、焼成する、棒状プレッツェルの製造方法。
【請求項4】
(1)練り込み生地中に調味料全体の60〜90重量%を添加し、成形して、焼成前生地
を作製し、
(2)前記、焼成前生地の表面に、液状の上掛け用調味料を調味料全体の10〜40重量%添加して焼成する、
請求項3記載の棒状プレッツェルの製造方法。