プレフィルドシリンジ
【課題】高い安全性を実現しつつ、注射に要する手間が軽減されたプレフィルドシリンジを提供すること。
【解決手段】バイアルに取り付けられるプレフィルドシリンジの針ユニット1は、両端針の略円柱状の保持部材10と、3本の柱状部111により保持部材10を把持するホルダ部材11と、3本の柱状部121により保持部材10を把持すると共に、バイアルに対する取付部125を有するホルダ部材12と、を含み、柱状部111、121が周方向に互い違いに配置される状態において軸方向に縮小可能である一方、柱状部111、121の先端面が他方のホルダ部材の柱状部の先端面と対面する状態において軸方向に縮小不可能であり、軸方向に縮小されたときに注射針100Aを突出させると共に、穿孔針100Bをバイアルの内部に突出させる。
【解決手段】バイアルに取り付けられるプレフィルドシリンジの針ユニット1は、両端針の略円柱状の保持部材10と、3本の柱状部111により保持部材10を把持するホルダ部材11と、3本の柱状部121により保持部材10を把持すると共に、バイアルに対する取付部125を有するホルダ部材12と、を含み、柱状部111、121が周方向に互い違いに配置される状態において軸方向に縮小可能である一方、柱状部111、121の先端面が他方のホルダ部材の柱状部の先端面と対面する状態において軸方向に縮小不可能であり、軸方向に縮小されたときに注射針100Aを突出させると共に、穿孔針100Bをバイアルの内部に突出させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液が充填された使い捨てのプレフィルドシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、病院等の医療現場では、治療等に用いる薬液が予め充填されたプレフィルドシリンジが活用されている。一般的なシリンジを利用してアンプルやバイアル入りの薬液を注射する場合には、注射行為に先だってシリンジで薬液を吸引する操作が必須になる。一方、プレフィルドシリンジを用いる場合には、このような吸引操作を省略できるため、注射行為の作業負担を軽減できる。プレフィルドシリンジの利用は、薬液の取り違えによる誤投与や、液量の間違いによる過剰投与などの医療事故を未然に防止するために有効である。また、アンプル等からシリンジに薬液を移し換えるときの異物の混入や細菌汚染等、注射行為におけるリスクを軽減できる。
【0003】
プレフィルドシリンジとしては、一般的なシリンジと似通った形態のプレフィルドシリンジ(例えば、特許文献1参照。)のほか、薬液が充填された容器に対して針ユニットを取り付けたような形態のプレフィルドシリンジ(例えば、特許文献2参照。)等がある。前者のプレフィルドシリンジは、薬液を充填済みの円筒状のバレルと、バレルの開口端側を前進可能な状態で封止するガスケットと、キャップにより栓をされたバレル先端側の注射針接続部と、を備えている。後者のプレフィルドシリンジでは、薬液容器の開口部を前進可能な状態で封止するガスケットに対して、針ユニットが押し込み可能な状態で取り付けられている。
【0004】
前者のプレフィルドシリンジでは、バレルの先端のキャップを取り外して注射針を取り付ければ、通常の注射器と同様の操作により注射行為を実行できる。後者のプレフィルドシリンジでは、薬液容器に針ユニットを取り付けることで薬液を注射可能な状態を設定でき、さらに針ユニットを押し込むことでガスケットを前進させて薬液を注射できる。
【0005】
しかしながら、上記従来のプレフィルドシリンジでは、次のような問題がある。すなわち、注射するに当たって、注射針を取り付けたり、針ユニットを薬液容器に取り付ける作業等が必要であり、注射に要する手間が十分に軽減されてなく、安全性の確保も十分ではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−307237号公報
【特許文献2】特開2002−172166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、高い安全性を実現しつつ、注射に要する手間が軽減されたプレフィルドシリンジを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、薬液が充填された有底筒状の薬液容器と、
前記薬液容器の筒方向に当たる軸方向に移動可能な状態で該薬液容器の開口部を封止する封止部材と、
前記封止部材を前記薬液容器に押し込み可能な状態で、該封止部材に取り付けられる針収容部と、を備え、
該針収容部は、軸方向の一方の端部から注射針を突出させると共に、他方の端部から穿孔針を突出させる略円柱状の保持部材と、
有底の第1の中空部を有し、該中空部の底側から開口方向に当たる軸方向に延設されていると共に前記保持部材の外周側面に外接する少なくとも2本以上の柱状部により軸方向に沿って該保持部材を把持可能な第1のスライダ部が設けられた第1のホルダ部材と、
有底の第2の中空部を有し、該中空部の底側から開口方向に当たる軸方向に延設されていると共に前記保持部材の外周側面に外接する少なくとも2本以上の柱状部により該保持部材を把持可能な第2のスライダ部、及び底側の端部に前記封止部材に対する取付部が設けられた第2のホルダ部材と、を含み、
前記第1及び第2のホルダ部材は、前記保持部材を把持する前記第1及び第2のスライダ部の柱状部が軸方向において他方のスライダ部の柱状部と互いに重複していない状態において、前記保持部材の回りに相対的に回転可能であると共に、
前記各スライダ部の柱状部が前記保持部材の周りに互い違いに配置される状態において、何れか一方のホルダ部材の中空部に他方のホルダ部材が挿入されていくことで軸方向に縮小可能である一方、前記各スライダ部の柱状部の先端面が他方のスライダ部の柱状部の先端面と対面する状態において軸方向に縮小不可能であり、
前記保持部材を保持する前記第1及び第2のホルダ部材を軸方向に縮小したとき、前記封止部材を貫通して前記薬液容器の内部に前記穿孔針が突出し、前記注射針が外部に突出するように構成されているプレフィルドシリンジにある(請求項1)。
【0009】
本発明のプレフィルドシリンジでは、前記第1及び第2のホルダ部材の相対回転位置に応じて前記針収容部が軸方向に縮小可能な状態と、縮小不可能な状態と、を切り換えできる。軸方向に縮小不可能な状態では、一方のホルダ部材の前記柱状部の先端面が他方のホルダ部材の前記柱状部の先端面と対面する状態となり、軸方向の縮小が確実性高く規制される。この状態であれば、前記注射針が外部に向けて不用意に突出することがないため、針刺し事故の発生を確実性高く回避できる。
【0010】
注射を実施するに当たっては、一方のホルダ部材を他方のホルダ部材に押し込むようにして前記針収容部を軸方向に縮小すれば、前記薬液容器側の後端から前記穿孔針を突出させると共に、その先端側から前記注射針を外部に突出させることができる。前記穿孔針は前記封止部材を貫いて前記薬液容器の内部に到達する。この状態で、前記針収容部全体を前記薬液容器に押し込めば、前記薬液容器の内部で前記封止部材を前進させ、その前進に応じて前記注射針から薬液を注射できる。
【0011】
注射行為を終えて前記プレフィルドシリンジを廃棄する際には、例えば、前記第1及び第2のホルダ部材を軸方向に伸張させることにより注射を終えた注射針を収容可能である。さらに、前記第1及び第2のホルダ部材を相対回転させて、一方のホルダ部材の前記柱状部の先端面が他方のホルダ部材の前記柱状部の先端面と対面する状態を設定すれば、軸方向に縮小不可能な状態を再設定できる。このような状態を再設定すれば、その後の取り扱いの中で、前記注射針が不用意に突出するおそれを確実性高く抑制できる。
【0012】
以上のように本発明のプレフィルドシリンジは、高い安全性を実現しつつ、注射に要する手間が低減された優れた製品である。
【0013】
本発明のプレフィルドシリンジにおける第1及び第2のスライダ部の柱状部の本数は、2本、3本、4本等、様々な本数を設定できる。
本発明の好適な一態様のプレフィルドシリンジは、前記第1及び前記第2のスライダ部に外挿された状態で、前記保持部材の周りの前記第1及び第2のホルダ部材の相対的な回転を規制する略円筒状の外挿スリーブを有する(請求項2)。
上記第1及び第2のホルダ部材の相対的な回転を規制すれば、例えば、軸方向に縮小不可能に設定された上記注射針カートリッジが不用意に縮小可能な状態に移行するおそれを抑制できる。縮小可能な状態への不用意な移行を防止できれば、針刺し事故等を確実性高く回避できる。
【0014】
本発明の好適な一態様のプレフィルドシリンジにおいては、前記針収容部は、製品状態において軸方向に縮小不可能な状態にあると共に、使用に際して前記第1及び第2のホルダ部材を前記保持部材を中心として相対的に回転させることで軸方向に縮小可能な状態となり、かつ、
使用後において前記第1及び第2のスライダ部の柱状部が軸方向において他方のスライダ部の柱状部と互いに重複しない位置まで上記第1及び第2のホルダ部材を軸方向に伸張させた後、前記第1及び第2のホルダ部材を相対的に回転させることで軸方向に縮小不可能な状態を再設定可能であり、
前記外挿スリーブは、製品状態においては前記保持部材を中心とした前記第1及び第2のホルダ部材の相対的な回転を許容し、かつ、使用後において前記針収容部が軸方向に縮小可能な状態から軸方向に縮小不可能な状態が再設定されたとき、前記第1及び第2のホルダ部材の相対的な回転を規制する(請求項3)。
【0015】
この場合には、注射が終わって前記軸方向に縮小不可能な状態を設定した後、前記第1及び第2のホルダ部材の相対回転を規制できる。この相対回転を規制できれば、前記第1及び第2のホルダ部材が軸方向に縮小可能な状態へ逆行するおそれを確実に回避できる。注射後のプレフィルドシリンジについて、針刺し事故等を未然に回避でき、その安全性を高く確保できる。
【0016】
本発明の好適な一態様のプレフィルドシリンジでは、前記外挿スリーブは、前記第1及び第2のホルダ部材の軸方向の最大の伸張長さを規制する(請求項4)。
この外挿スリーブを前記第1及び第2のスライダ部に外挿しておけば、前記第1及び第2のホルダ部材を軸方向に伸張させ過ぎて、一方のホルダ部材が他方から抜け落てしまうおそれを少なくできる。これにより、前記注射針等を備えた前記保持部材が外部に露出するおそれを未然に回避できる。
【0017】
本発明の好適な一態様のプリフィルドシリンジでは、前記第1のホルダ部材は、前記第2のホルダ部材を前記第1の中空部に内挿可能であると共に、注射行為に際して使用者が指掛け可能な指掛け部が外周側に設けられており、
前記薬液容器の底面、及び前記指掛け部に指を掛けて注射可能である(請求項5)。
【0018】
前記指掛け部は、前記第1のホルダ部材の外周面の2カ所に対向配置することも良い。例えば、前記指掛け部に人差し指と中指を掛け、前記薬液容器の底面に親指を掛けて、一般的な注射器とほぼ同様の操作で注射できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例における、製品状態のプレフィルドシリンジを示す斜視図。
【図2】実施例における、注射状態のプレフィルドシリンジを示す斜視図。
【図3】実施例における、ガスケットで密封されたバイアルの断面構造を示す断面図。
【図4】実施例における、製品状態の針ユニットの組み付け構造を示す斜視図。
【図5】実施例における、製品状態の針ユニットを示す斜視図。
【図6】実施例における、製品状態の針ユニットの組み付け構造を示す斜視図。
【図7】実施例における、外挿スリーブを示す図。
【図8】実施例における、外挿スリーブの断面構造を示す断面図。
【図9】実施例における、針ユニットの動作を示す説明図。
【図10】実施例における、注射状態の針ユニットの組み付け構造を示す斜視図。
【図11】実施例における、軸方向に縮小可能な状態の針ユニットを示す斜視図。
【図12】実施例における、注射状態の針ユニットを示す斜視図。
【図13】参考例における、製品状態における第1のプレフィルドシリンジを示す断面図。
【図14】参考例における、注射状態における第1のプレフィルドシリンジを示す断面図。
【図15】参考例における、注射の準備が完了した状態の第2のプレフィルドシリンジを示す断面図。
【図16】参考例における、注射状態における第2のプレフィルドシリンジを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例)
本例は、使い捨てのプレフィルドシリンジ1A(薬液充填済み注射器)に関する例である。この内容について、図1〜図12を用いて説明する。
本例のプレフィルドシリンジ1Aは、図1〜図3のごとく、薬液が充填された有底筒状のバイアル2(薬液容器)と、薬液を押し出すためにバイアル2の筒方向に移動可能な状態で開口部を封止するガスケット25(封止部材)と、ガスケット25をバイアル2に押し込み可能な状態でガスケット25に取り付けられる針ユニット1(針収容部)と、を備えている。製品状態のプレフィルドシリンジ1Aは、全長約60mmで、指掛け部15を除く最大径が約15mmである。
【0021】
製品状態のプレフィルドシリンジ1Aは、全体をポリプロピレンよりなるフィルム(図示略)によって覆われて滅菌状態が維持されている。なお、外装フィルムとしては、ポリプロピレン製のもののほか、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレートなど、様々な材質のフィルムを採用可能である。
【0022】
バイアル2は、図1〜図3のごとく、薬液を充填するための有底略円筒状の容器である。バイアル2は、内挿されたガスケット25により密封され、開口端にはガスケット25の脱落を防止する抜止め部23が取り付けられている。この抜止め部23は、バイアル2の本体部21の内径よりも小径の開口部230を備えている。
【0023】
ガスケット25は、図3のごとく、バイアル2(本体部21)に内挿されるブチルゴム又はエストラマー製の略円柱状の部材である。ガスケット25の外周面には、全周に渡って凸状に突出するリブ255が軸方向の3箇所に設けられている。このガスケット25は、バイアル2の底側に向かって前進するピストンとして機能する。
【0024】
バイアル2に内挿されたときに外部に面するガスケット25の端面には、内周ネジが設けられた有底の取付孔250が開口している。この取付孔250は、針ユニット1を螺入して取り付けるための孔である。ガスケット25の他方の端面の中心には、有底の小径孔252が設けられている。この小径孔252は、薄い隔壁251を残して取付孔250と対向するように穿孔されている。
【0025】
針ユニット1は、図1、図2、図4〜図6のごとく、注射針100A及び穿孔針100Bが両端に突出する略円柱状の保持部材10と、この保持部材10を収容する第1及び第2のホルダ部材11、12と、保持部材10の外周側に外挿配置された状態で第1及び第2のホルダ部材11、12に収容される外挿スリーブ13と、により構成されている。なお、図4及び図5では、外挿スリーブ13を省略して図示し、図6では、保持部材10を省略して図示している。
【0026】
針ユニット1では、保持部材10を介して第1及び第2のホルダ部材11、12が同軸で連結されている。針ユニット1は、先端側の第1のホルダ部材11に第2のホルダ部材12が内挿されて収容される構造により軸方向に縮小可能となっている。バイアル2を取り付けた針ユニット1を軸方向に縮小させると、ガスケット25を介して穿孔針100Bをバイアル2の内部に突出させると共に、注射針100Aを外部に突出させることが可能である(図2参照。)。この状態で、針ユニット1をバイアル2に押し込めば、ガスケット25の前進に応じて注射針100Aから薬液を注射可能である。
【0027】
保持部材10は、図4のごとく、ポリカーボネードよりなる略円柱状の部材である。保持部材10では、その中心軸に沿ってステンレス管が貫通配置されている。このステンレス管は、保持部材10の軸方向の両端に突出し、注射針100A、穿孔針100Bを形成している。一方の注射針100Aは、注射部位である人体の皮膚等に刺される針先であり、他方の穿孔針100Bは、ガスケット25(図3)の隔壁251を貫通する針先である。
【0028】
なお、注射針100A、穿孔針100Bの材質としては、ステンレスのほか、樹脂材料を採用することもできる。樹脂よりなる注射針100A等の場合には、使用後の廃棄処分等が一層、容易になる。さらに、生分解性プラスチック等により注射針100A等を形成すれば、廃棄処理等が容易になる。
【0029】
本例の保持部材10は、図4のごとく、端面10U及び10Vにより挟まれた小径部105を軸方向の中間に有している。軸方向における小径部105の両側には、略同一直径の第1軸部10A及び第2軸部10Bが形成されている。この保持部材10は、第1軸部10Aが第1のホルダ部材11側に位置し、第2軸部10Bが第2のホルダ部材12側に位置するように組み付けられる。
【0030】
第1軸部10Aの外周面には、図4のごとく、周方向における略等間隔6箇所の位置に外周側に突出する畝部10Pが設けられている。各畝部10Pは、軸方向に沿って延設されている。第1軸部10Aの外周面では、周方向において隣り合う畝部10Pに挟まれた領域が6面形成されている。そのうちの1面おきの3面には、軸方向に沿う進退溝10Mが同じ仕様で設けられている。
【0031】
第2軸部10Bの外周面には、図4のごとく、周方向における略等間隔3箇所の位置に外周側に突出する畝部10Rが設けられている。各畝部10Rは、軸方向に沿って延設されている。第2軸部10Bの外周面では、周方向において隣り合う畝部10Rに挟まれた領域が3面形成されている。この3面は、それぞれ、周方向約120度に渡って形成されている。さらに、第2軸部10Bの外周面には、周方向における略等間隔3箇所の位置に軸方向に沿う溝状の進退溝10Nが設けられている。第2軸部10Bの進退溝10Nは、第1軸部10Aの進退溝10Mから約60度ずつずれて位置している。
【0032】
第1のホルダ部材11は、図4〜図6のごとく、有底略円筒状をなし、外周側に張り出すように対向配置された一対の指掛け部15を開口端に設けたポリカーボネード製の部材である。このホルダ部材11は、底側がプレフィルドシリンジ1Aの先端側に位置する状態で組み付けられる。ホルダ部材11の底側の端部は、テーパー状の末窄まりの外形状を呈し、その先端面には、注射針100Aを突出させる突出孔118が穿孔されている。このホルダ部材11の内部空間である第1の中空部11Hの内径は、バイアル2を挿入可能な程度にその外径と略同一に形成されている。
【0033】
第1の中空部11Hには、保持部材10を把持可能な第1のスライダ部110が設けられている。このスライダ部110は、中空部11Hの底側から軸方向(開口方向)に延設された3本の柱状部111により構成されている。3本の柱状部111は、全て同じ仕様となっており、ホルダ部材11の軸芯を中心とした周方向における等間隔の3カ所に設けられている。3本の柱状部111は、断面略円形状の内周空間を形成している。スライダ部110は、保持部材10の外周側面に柱状部111が外接する状態でその内周空間に保持部材10を把持する。
【0034】
第2のホルダ部材12は、図3〜図6のごとく、有底略円筒状をなし、小径の取付部125が底側の端面に立設されたポリカーボネード製の部材である。このホルダ部材12は、バイアル2の開口部230よりも小径に形成されている。取付部125は、ガスケット25の取付孔250に螺入可能なようにその外周面にネジ山を有している。取付部125は、その立設面に当たるホルダ部材12の端面がガスケット25に密着するまで螺入される。
【0035】
第2のホルダ部材12の内部空間である第2の中空部12Hの内径は、外挿スリーブ13を内挿可能な程度に設定されている。第2の中空部12Hには、保持部材10を把持可能な第2のスライダ部120が設けられている。このスライダ部120は、中空部12Hの底側から軸方向(開口方向)に延設された3本の柱状部121により構成されている。3本の柱状部121は、全て、前記第1のホルダ部材11の柱状部111と同じ仕様であり、柱状部111と同様に周方向における等間隔の3カ所に設けられている。3本の柱状部121は、断面略円形状の内周空間を形成している。スライダ部120は、保持部材10の外周側面に柱状部121が外接する状態でその内周空間に保持部材10を把持する。
【0036】
柱状部111及び柱状部121の断面形状は、周方向に互い違いに組み合わされたとき、重複することなく互いに隙間を補完することでほぼ完全な円環が形成され得る形状となっている。柱状部111、121が周方向に互い違いに配置された状態では、柱状部111、121が櫛歯状に噛み合う状態で軸方向にホルダ部材11、12を縮小可能である。
【0037】
柱状部111、121は、図4〜図6のごとく、外周面に3種類の溝111A〜C、121A〜Cを有し、先端の内周面に凸部111T、121Tを有している。
内周側に突出する凸部111T及び121Tは、柱状部111、121の内周面に1箇所ずつ形成されている。各ホルダ部材11、12の3カ所の凸部111T、121Tの突出面が形成する内径は、保持部材10の小径部105の外径とほぼ等しくなっている。第1のホルダ部材11側の凸部111Tは、保持部材10に対してホルダ部材11が軸方向に進退する際、第2軸部10Bの進退溝10Nを進退する。第2のホルダ部材12側の凸部121Tは、保持部材10に対してホルダ部材12が軸方向に進退する際、第1軸部10Aの進退溝10Mを進退する。
【0038】
進退溝111A、121Aは、図4〜図6のごとく、柱状部111、121の外周面において、周方向における略中央に軸方向に沿って延設された溝である。この進退溝111A、121Aは、柱状部111、121の根元の手前から始まって、先端の手前まで形成されている。
テーパ溝111B、121Bは、ホルダ部11、12の開口側から奥側を見込む見込み方向に基づき、進退溝111A、121Aに対して左回転側に形成された溝である。テーパ溝111B、121Bは、周方向に沿って延設されていると共に、上記見込み方向に基づく左回転側に次第に深くなり、柱状部111、121の側面に開口している。
【0039】
テーパ溝111C、121Cは、柱状部111、121の先端部分において、進退溝111A、121Aの未形成部分に軸方向に沿って設けられた溝である。その周方向の位置は、進退溝111A、121Aと一致している。テーパ溝111C、121Cは、軸方向先端側に向けて次第に深くなり、柱状部111、121の先端面に開口している。
【0040】
外挿スリーブ13は、図6〜図8のごとく、スライダ部110、120に外挿された状態でホルダ部材11、12の内部に収容されるポリカーボネード製の略円筒状の部材である。外挿スリーブ13では、軸方向の中間部130を中心として、第1のホルダ部材11側に組み込まれる第1形成部131、及び第2のホルダ部材12側に組み込まれる第2形成部132が設けられている。第1形成部131及び第2形成部132には、周方向略等間隔で6片ずつのロック片133が設けられている。各ロック片133は、中間部130側が付け根となるよう、第1形成部131あるいは第2形成部132の外周壁がコの字状に切り込まれて形成された部分である。第1形成部131のロック片133と、第2形成部132のロック片133とは、周方向における形成位置が略一致している。
【0041】
全てのロック片133は、図7及び図8のごとく、その先端側に、内側に向けて突出するカギ状部134を有している(図8のA−A断面を参照。)。カギ状部134は、中間部130に向けて次第に突出高さが高くなる略くさび状の断面形状を呈している。
【0042】
第1形成部131と第2形成部132とでは、図8のごとく、このカギ状部134の形状及び構成が相違している。第1形成部131のカギ状部134としては、2種類のカギ状部がある。第1のカギ状部134Aは、同図中のB−B断面図のごとく、内側に向かう突出高さが周方向に略一定のカギ状部である。第2のカギ状部134Bは、同図のごとく、内側に向かう突出高さが周方向に略一定の部分134pと、突出高さが周方向に次第に低くなる傾斜部134tと、を含むカギ状部である。第1形成部131における第2のカギ状部134Bでは、同図のB−B断面における左回転側に傾斜部134tが配置されている。
【0043】
第2形成部132のカギ状部134Cは、図8のごとく、全て同じ仕様になっている。カギ状部134Cは、同図中のC−C断面図に図示するごとく、内側に向かう突出高さが略一定の部分134pと、突出高さが周方向に次第に低くなる傾斜部134tと、を含むカギ状部である。第2形成部132における各カギ状部134Cでは、第1形成部131の第2のカギ状部134Bと同様、同図のC−C断面における左回転側に傾斜部134tが配置されている。なお、外挿スリーブ13に対してホルダ部材11、12を組み付ける際には、カギ状部134は、ホルダ部材11、12に設けられたテーパ溝111C、121C(図6参照。)を利用して軸方向に乗り上げ、進退溝111A、121Aに収容される。
【0044】
以上のような部品構成の本例のプレフィルドシリンジ1A(製品状態)では、第2のホルダ部材12の取付部125がガスケット25に螺入されてバイアル2に固定された状態(図1参照。)にある。第1のホルダ部材11は、凸部111Tが小径部105に外接する状態で保持部材10を把持している。第2のホルダ部材12は、凸部121Tが小径部105に外接する状態で保持部材10を把持している。第1のホルダ部材11と第2のホルダ部材12とは、保持部材10を介して同軸で連結されている。このとき、第1のホルダ部材11と第2のホルダ部材12とは、互いのスライダ部110、120(柱状部111、121)が軸方向において重複しない状態で保持部材10を介して連結されている(図5参照。)。また、第1及び第2のホルダ部材11、12のスライダ部110、120の外周には、外挿スリーブ13が配置されている(図6参照。)。
【0045】
製品状態のスライダ部110、120、外挿スリーブ13及び保持部材10は、図9中の最上段のA、Dのごとく、組み合わせられている。なお、同図中左側のA〜Cは、第1のホルダ部材11のテーパ溝111Bを含む断面をプレフィルドシリンジ1Aの先端側から見込む断面図である。同図中右側のD〜Fは、第2のホルダ部材12のテーパ溝121Bを含む断面をプレフィルドシリンジ1Aの先端側から見込む断面図である。A〜Cでは、外周側から、外挿スリーブ13の第1形成部131、ホルダ部材11のスライダ部110、保持部材10の第1軸部10Aの各断面が図示されている。D〜Fでは、外周側から、外挿スリーブ13の第2形成部132、ホルダ部材12のスライダ部120、保持部材10の第2軸部10Bの各断面が図示されている。
【0046】
図9中のA、Dのごとく、製品状態のプレフィルドシリンジ1Aでは、第1のホルダ部材11の柱状部111と、第2のホルダ部材12の柱状部121と、の周方向位置が略一致している(図5参照。)。この状態では、柱状部111の先端面と、柱状部121の先端面と、が対面して軸方向に縮小不可能な状態となっている。保持部材10は、第1及び第2のホルダ部材11、12の内部に完全に収容され、先端側の注射針100A、バイアル2側の穿孔針100Bが収納された状態にある(図1参照。)。
【0047】
第1のホルダ部材11の各柱状部111は、図9中のAのごとく、保持部材10の第1軸部10Aの外周面のうち、畝部10Pによって周方向に区画された6面のうち、進退溝10Mが形成されていない外周面に外接している。第1のホルダ部材11は、周方向6箇所の畝部10Pにより、保持部材10との相対回転が規制されている。柱状部111の進退溝111Aには、外挿スリーブ13の第2のカギ状部134B(第1形成部131)が収容されている。上記のごとく、この第2のカギ状部134Bには、同図中、左回転側に傾斜部134tが形成されている。
【0048】
一方、第2のホルダ部材12の各柱状部121は、図9中のDのごとく、保持部材10の第2軸部10Bの外周面のうち、畝部10Rによって区画された3面の外周面にそれぞれ外接している。周方向120度に渡る外周面に対して、第2のホルダ部材12が同図中、右回転側に回転し切ったような状態となっている。柱状部121の外周面の進退溝121Aには、外挿スリーブ13のカギ状部134C(第2形成部132)が収容されている。上記のごとく、このカギ状部134Cには、同図中、左回転側に傾斜部134tが形成されている。
【0049】
次に、本例のプレフィルドシリンジ1Aの使用について説明する。使用に際しては、第1のホルダ部材11及び保持部材10に対して、第2のホルダ部材12を図9中、左回転方向に約60度回転させる。第2のホルダ部材12の柱状部121の周方向の幅は、いずれも周方向約60度である。一方、図9中のDのごとく、柱状部121が外接する保持部材10の第2軸部10Bでは、周方向における略等間隔の3箇所の位置に畝部10Rが設けられ、外周面が周方向約120度ずつに区分されている。保持部材10の第2軸部10Bに柱状部121が外接する状態の第2のホルダ部材12は、保持部材10に対して約60度の範囲で相対回転可能である。一方、第2のホルダ部材12が左回転したとき、進退溝121Aとカギ状部134Cとの係合構造により外挿スリーブ13が従動して左回転する。
【0050】
一方、第1のスライダ部110の進退溝111Aに係合する第2のカギ状部134Bでは、図9Aのごとく、左回転側に傾斜部134tが形成されている。また、柱状部111では、周方向のテーパ溝111Bが右回転側に形成されている。上記のごとく第2のホルダ部材12の左回転に従動して外挿スリーブ13が左回転する際、図9A、Bのごとく、傾斜部134tを利用して第2のカギ状部134Bが進退溝111Aを脱出でき、テーパ溝111Bの斜面状の底面を利用して第1のカギ状部134Aが進退溝111Aに乗り入れる。
【0051】
このように第2のホルダ部材12が外挿スリーブ13と共に左回転すると、図9B、Eの注射状態が実現され得る。この注射状態では、第1のホルダ部材11の柱状部111と、第2のホルダ部材12の柱状部121との周方向位置が互い違いになっている。このように柱状部111、121が互い違いに配置された状態であれば、針ユニット1が軸方向に縮小可能である(図10、図11参照。)。
【0052】
例えば、指掛け部15に人差し指と中指を掛けると共にバイアル2の底面210に親指を当てて軸方向に縮小させると、まず、針ユニット1が軸方向に縮小する(図2参照。)。針ユニット1が軸方向に縮小し、注射針100A及び穿孔針100Bを含めた保持部材10の全長よりも軸方向の長さが短くなると、第2のホルダ部材12の取付部125側から穿孔針100Bが突出すると共に、第1のホルダ部材11の先端側から注射針100Aが突出する。穿孔針100Bは、ガスケット25(図3参照。)の隔壁251を貫通し、その先端がバイアル2の内部に達する。針ユニット1を軸方向に最も縮小させたとき、注射針100A及び穿孔針100Bが突出し切った状態となる。針ユニット1をバイアル2の底側に向けて押し込むことによりさらにプレフィルドシリンジ1Aを軸方向に縮小させれば、ガスケット25の前進に応じて薬液を注射可能である。
【0053】
注射状態のプレフィルドシリンジ1Aでは、図9Bのごとく、第1のスライダ部110の進退溝111Aには、外挿スリーブ13(第1形成部131)の第1のカギ状部134Aが収容されている。また、同図Eのごとく、畝部10Rによって区画された周方向120度に渡る外周面に対して、第2のホルダ部材12が左回転側に回転し切った状態となっている。なお、同図DからEに至る過程では、第2のホルダ部材12の左回転に外挿スリーブ13が従動するため、第2のスライダ部120の進退溝121Aに収容されるカギ状部134Cの入れ替えは生じない。使用後の取り扱いにおいて、このカギ状部134Cに設けられた左回転側の傾斜部134tが極めて重要な作用効果を実現する。
【0054】
次に、本例のプレフィルドシリンジ1Aの使用後の処理について説明する。注射が終わった後、針ユニット1からバイアル2を引き抜くことで、プレフィルドシリンジ1Aを軸方向に伸張させる。ガスケット25については、バイアル2の内部で軸方向に後退する際の摺動抵抗が大きいため、上記のような引き抜きに応じて、まず、針ユニット1が軸方向に伸張する。針ユニット1の伸張は、第1のスライダ部110の進退溝111Aの終端にカギ状部134Aが達すると共に、第2のスライダ部120の進退溝121Aの終端にカギ状部134Cが達するまで、が限度となる。
【0055】
さらに、プレフィルドシリンジ1Aを軸方向に伸張させれば、バイアル2の内部でガスケット25を後退させることも可能である。このようなガスケット25の後退は、ガスケット25が抜止め部23に達したときが限度となる。
このようにプレフィルドシリンジ1Aの軸方向の伸張は、スライダ部110、120の進退溝111A、121Aの終端にカギ状部134A、134Cが到達すると共に、ガスケット25が抜止め部23に達したときが限度となり、物理的な破壊を生じない限り、それ以上の伸張は不可能になる(第1の伸張規制機構)。なお、針ユニット1の軸方向の伸張は、柱状部111、121に設けられた凸部111T、121Tと、保持部材10の端面10U、10Vと、の、係合によっても規制され(第2の伸張規制機構)、これによりホルダ部材11、12の分離が確実性高く回避されている。
【0056】
上記のようにバイアル2を針ユニット1側から引き抜いてカギ状部134A、Cがそれぞれ進退溝111A、121Aの終端に到達した状態で、第2のホルダ部材12を再度、図9中、右回転方向に60度回転させる。ここで、上記のごとく、第1のスライダ部110の進退溝111Aに収容されるカギ状部は、傾斜部134tを持たない第1のカギ状部134Aである(同図B)。この第1のカギ状部134Aは、第1のホルダ部材11との間に相対回転力が生じても、進退溝111Aから脱出できないカギ状部である。それ故、同図Bの状態は、第1のホルダ部材11と外挿スリーブ13との相対回転が規制された状態となる。
【0057】
一方、図9Eのごとく、第2のスライダ部120の進退溝121Aに収容されるカギ状部134Cは、左回転側に傾斜部134tが形成されている。それ故、第2のホルダ部材12を右回転させた場合には、傾斜部134tを利用してカギ状部134Cが進退溝121Aから脱出可能である。外挿スリーブ13に対して第2のホルダ部材12が相対的に右回転すると、第2のスライダ部120が新たなカギ状部134Cに接近する。このカギ状部134Cもまた、左回転側に傾斜部134tを有しているため、この傾斜部134tを利用してスライダ部120の進退溝121Aに乗り入れ可能である。したがって、図9Eの状態で第2のホルダ部材12を右回転させたときには、外挿スリーブ13を従動させずに、第2のホルダ部材12のみを右回転させることができる。
【0058】
このように、図9B、Eの注射状態を起点として、第2のホルダ部材12を同図中、右回転させると、同図C、Fの廃棄状態が得られる。この廃棄状態では、第1のホルダ部材11の柱状部111と、第2のホルダ部材12の柱状部121との周方向位置が略一致している。すなわち、この状態は、柱状部111の先端面と、柱状部121の先端面と、が対面して軸方向に縮小不可能な状態である。
【0059】
図9Cのごとく、第1のスライダ部110の進退溝111Aには、傾斜部134tを持たない第1のカギ状部134Aが収容されている。それ故、この状態では、第1のホルダ部材11に対して外挿スリーブ13が相対的に回転不可能である。さらに、第1軸部10Aの外周には、6箇所の畝部10Pが形成されているため、保持部材10に対して第1のホルダ部材11が相対的に回転することも不可能である。
【0060】
さらに、図9Fのごとく、第2のスライダ部120の進退溝121Aに、左回転側に傾斜部134tを備えたカギ状部134Cが収容されている。第2のホルダ部材12は、進退溝121Aとカギ状部134Cとの係合により同図中、左回転が規制され、柱状部121が右回転側に接触する畝部10Rにより同図中、右回転が規制される。そのため、第2のホルダ部材12は、保持部材10に対して相対回転不可能である。
【0061】
このように、使用後に第2のホルダ部材12を右回転させて図9C、Fの状態に移行させた場合には、外挿スリーブ13を含めて構成される回転規制機構の作用により、第1のホルダ部材11と第2のホルダ部材12とを相対的に回転不可能な状態を設定できる。
【0062】
さらに、図9Cの状態では、第1軸部10Aの進退溝10Mの周方向位置と、第1のホルダ部材11の凸部111Tとの周方向位置とが異なっている。それ故、小径部105と第1軸部10Aとの端面10Uに凸部111Tが係合して、保持部材10からの第1のホルダ部材11の軸方向の引き抜きが規制される。同様に、図9Fの状態では、第2軸部10Bの進退溝10Nの周方向位置と、第2のホルダ部材12の凸部121Tとの周方向位置とが異なっている。それ故、小径部105と第2軸部10Bとの端面10Vに凸部121Tが係合して、保持部材10からの第2のホルダ部材12の軸方向の引き抜きが規制される。
【0063】
以上のように構成された本例のプレフィルドシリンジ1Aは、非常にコンパクト、かつ、安全性の高いプレフィルドシリンジである。このプレフィルドシリンジ1Aは、注射に要する手間が非常に少なく、かつ、注射が済んだ後、安全性の高い廃棄状態をワンタッチで設定できる優れた製品である。
【0064】
なお、針ユニット1の材質としては、本例のポリカーボネードのほか、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートなど、様々な材質を採用することができる。さらに、生分解性プラスチックにより保持部材10あるいはホルダ部材11、12を形成することも良い。この場合には、プレフィルドシリンジ1Aの廃棄処分を一層、容易にできる。
【0065】
(参考例)
本例は、実施例と同様のバイアル9を利用した他のプレフィルドシリンジ8Aを示す参考例である。図13及び図14は、第1の参考例を示し、図15及び図16は、第2の参考例を示している。
【0066】
第1の参考例を示す図13は、製品状態のプレフィルドシリンジ8Aを示している。このプレフィルドシリンジ8Aでは、ガスケット95に対して針ユニット8が螺入されている一方、両者間に配設された略U字状を呈するスペーサ部材950によって不完全な螺入状態となっている。この参考例の針ユニット8は、実施例の針ユニット1とは相違し、軸方向の長さが不変である。
【0067】
注射に際して、図14のごとく、スペーサ部材950を取り外した後、ガスケット95に対して針ユニット8を完全に螺入する。その後、先端に取り付けられた針キャップ80を取り外せば、注射可能となる。
【0068】
第2の参考例を示す図15は、第1の参考例と同様の図示しないスペーサ部材を取り外して針ユニット8をガスケット95に螺入した後の状態を図示している。この状態では、針カバー81が先端側に付勢されて注射針800Aが収納された状態となっている。針カバー81に設けられた一対の指掛け部85と、バイアル9の底面と、に指をかけて軸方向に縮小させれば、図16のごとく、先端側から注射針800Aを突出させることができる。さらに、プレフィルドシリンジ8Aを軸方向に縮小させれば、突出した注射針800Aから薬液を注射可能である。
【0069】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形あるいは変更した技術を包含している。
【符号の説明】
【0070】
1 針ユニット(針収容部)
1A プレフィルドシリンジ
10 保持部材
11、12 ホルダ部材
11H、12H 中空部
100A 注射針
100B 穿孔針
110、120 スライダ部
111、121 柱状部
125 取付部
13 外挿スリーブ
134 カギ状部
15 指掛け部
2 バイアル(薬液容器)
210 底面
230 開口部
25 ガスケット(封止部材)
250 取付孔
251 隔壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液が充填された使い捨てのプレフィルドシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、病院等の医療現場では、治療等に用いる薬液が予め充填されたプレフィルドシリンジが活用されている。一般的なシリンジを利用してアンプルやバイアル入りの薬液を注射する場合には、注射行為に先だってシリンジで薬液を吸引する操作が必須になる。一方、プレフィルドシリンジを用いる場合には、このような吸引操作を省略できるため、注射行為の作業負担を軽減できる。プレフィルドシリンジの利用は、薬液の取り違えによる誤投与や、液量の間違いによる過剰投与などの医療事故を未然に防止するために有効である。また、アンプル等からシリンジに薬液を移し換えるときの異物の混入や細菌汚染等、注射行為におけるリスクを軽減できる。
【0003】
プレフィルドシリンジとしては、一般的なシリンジと似通った形態のプレフィルドシリンジ(例えば、特許文献1参照。)のほか、薬液が充填された容器に対して針ユニットを取り付けたような形態のプレフィルドシリンジ(例えば、特許文献2参照。)等がある。前者のプレフィルドシリンジは、薬液を充填済みの円筒状のバレルと、バレルの開口端側を前進可能な状態で封止するガスケットと、キャップにより栓をされたバレル先端側の注射針接続部と、を備えている。後者のプレフィルドシリンジでは、薬液容器の開口部を前進可能な状態で封止するガスケットに対して、針ユニットが押し込み可能な状態で取り付けられている。
【0004】
前者のプレフィルドシリンジでは、バレルの先端のキャップを取り外して注射針を取り付ければ、通常の注射器と同様の操作により注射行為を実行できる。後者のプレフィルドシリンジでは、薬液容器に針ユニットを取り付けることで薬液を注射可能な状態を設定でき、さらに針ユニットを押し込むことでガスケットを前進させて薬液を注射できる。
【0005】
しかしながら、上記従来のプレフィルドシリンジでは、次のような問題がある。すなわち、注射するに当たって、注射針を取り付けたり、針ユニットを薬液容器に取り付ける作業等が必要であり、注射に要する手間が十分に軽減されてなく、安全性の確保も十分ではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−307237号公報
【特許文献2】特開2002−172166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、高い安全性を実現しつつ、注射に要する手間が軽減されたプレフィルドシリンジを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、薬液が充填された有底筒状の薬液容器と、
前記薬液容器の筒方向に当たる軸方向に移動可能な状態で該薬液容器の開口部を封止する封止部材と、
前記封止部材を前記薬液容器に押し込み可能な状態で、該封止部材に取り付けられる針収容部と、を備え、
該針収容部は、軸方向の一方の端部から注射針を突出させると共に、他方の端部から穿孔針を突出させる略円柱状の保持部材と、
有底の第1の中空部を有し、該中空部の底側から開口方向に当たる軸方向に延設されていると共に前記保持部材の外周側面に外接する少なくとも2本以上の柱状部により軸方向に沿って該保持部材を把持可能な第1のスライダ部が設けられた第1のホルダ部材と、
有底の第2の中空部を有し、該中空部の底側から開口方向に当たる軸方向に延設されていると共に前記保持部材の外周側面に外接する少なくとも2本以上の柱状部により該保持部材を把持可能な第2のスライダ部、及び底側の端部に前記封止部材に対する取付部が設けられた第2のホルダ部材と、を含み、
前記第1及び第2のホルダ部材は、前記保持部材を把持する前記第1及び第2のスライダ部の柱状部が軸方向において他方のスライダ部の柱状部と互いに重複していない状態において、前記保持部材の回りに相対的に回転可能であると共に、
前記各スライダ部の柱状部が前記保持部材の周りに互い違いに配置される状態において、何れか一方のホルダ部材の中空部に他方のホルダ部材が挿入されていくことで軸方向に縮小可能である一方、前記各スライダ部の柱状部の先端面が他方のスライダ部の柱状部の先端面と対面する状態において軸方向に縮小不可能であり、
前記保持部材を保持する前記第1及び第2のホルダ部材を軸方向に縮小したとき、前記封止部材を貫通して前記薬液容器の内部に前記穿孔針が突出し、前記注射針が外部に突出するように構成されているプレフィルドシリンジにある(請求項1)。
【0009】
本発明のプレフィルドシリンジでは、前記第1及び第2のホルダ部材の相対回転位置に応じて前記針収容部が軸方向に縮小可能な状態と、縮小不可能な状態と、を切り換えできる。軸方向に縮小不可能な状態では、一方のホルダ部材の前記柱状部の先端面が他方のホルダ部材の前記柱状部の先端面と対面する状態となり、軸方向の縮小が確実性高く規制される。この状態であれば、前記注射針が外部に向けて不用意に突出することがないため、針刺し事故の発生を確実性高く回避できる。
【0010】
注射を実施するに当たっては、一方のホルダ部材を他方のホルダ部材に押し込むようにして前記針収容部を軸方向に縮小すれば、前記薬液容器側の後端から前記穿孔針を突出させると共に、その先端側から前記注射針を外部に突出させることができる。前記穿孔針は前記封止部材を貫いて前記薬液容器の内部に到達する。この状態で、前記針収容部全体を前記薬液容器に押し込めば、前記薬液容器の内部で前記封止部材を前進させ、その前進に応じて前記注射針から薬液を注射できる。
【0011】
注射行為を終えて前記プレフィルドシリンジを廃棄する際には、例えば、前記第1及び第2のホルダ部材を軸方向に伸張させることにより注射を終えた注射針を収容可能である。さらに、前記第1及び第2のホルダ部材を相対回転させて、一方のホルダ部材の前記柱状部の先端面が他方のホルダ部材の前記柱状部の先端面と対面する状態を設定すれば、軸方向に縮小不可能な状態を再設定できる。このような状態を再設定すれば、その後の取り扱いの中で、前記注射針が不用意に突出するおそれを確実性高く抑制できる。
【0012】
以上のように本発明のプレフィルドシリンジは、高い安全性を実現しつつ、注射に要する手間が低減された優れた製品である。
【0013】
本発明のプレフィルドシリンジにおける第1及び第2のスライダ部の柱状部の本数は、2本、3本、4本等、様々な本数を設定できる。
本発明の好適な一態様のプレフィルドシリンジは、前記第1及び前記第2のスライダ部に外挿された状態で、前記保持部材の周りの前記第1及び第2のホルダ部材の相対的な回転を規制する略円筒状の外挿スリーブを有する(請求項2)。
上記第1及び第2のホルダ部材の相対的な回転を規制すれば、例えば、軸方向に縮小不可能に設定された上記注射針カートリッジが不用意に縮小可能な状態に移行するおそれを抑制できる。縮小可能な状態への不用意な移行を防止できれば、針刺し事故等を確実性高く回避できる。
【0014】
本発明の好適な一態様のプレフィルドシリンジにおいては、前記針収容部は、製品状態において軸方向に縮小不可能な状態にあると共に、使用に際して前記第1及び第2のホルダ部材を前記保持部材を中心として相対的に回転させることで軸方向に縮小可能な状態となり、かつ、
使用後において前記第1及び第2のスライダ部の柱状部が軸方向において他方のスライダ部の柱状部と互いに重複しない位置まで上記第1及び第2のホルダ部材を軸方向に伸張させた後、前記第1及び第2のホルダ部材を相対的に回転させることで軸方向に縮小不可能な状態を再設定可能であり、
前記外挿スリーブは、製品状態においては前記保持部材を中心とした前記第1及び第2のホルダ部材の相対的な回転を許容し、かつ、使用後において前記針収容部が軸方向に縮小可能な状態から軸方向に縮小不可能な状態が再設定されたとき、前記第1及び第2のホルダ部材の相対的な回転を規制する(請求項3)。
【0015】
この場合には、注射が終わって前記軸方向に縮小不可能な状態を設定した後、前記第1及び第2のホルダ部材の相対回転を規制できる。この相対回転を規制できれば、前記第1及び第2のホルダ部材が軸方向に縮小可能な状態へ逆行するおそれを確実に回避できる。注射後のプレフィルドシリンジについて、針刺し事故等を未然に回避でき、その安全性を高く確保できる。
【0016】
本発明の好適な一態様のプレフィルドシリンジでは、前記外挿スリーブは、前記第1及び第2のホルダ部材の軸方向の最大の伸張長さを規制する(請求項4)。
この外挿スリーブを前記第1及び第2のスライダ部に外挿しておけば、前記第1及び第2のホルダ部材を軸方向に伸張させ過ぎて、一方のホルダ部材が他方から抜け落てしまうおそれを少なくできる。これにより、前記注射針等を備えた前記保持部材が外部に露出するおそれを未然に回避できる。
【0017】
本発明の好適な一態様のプリフィルドシリンジでは、前記第1のホルダ部材は、前記第2のホルダ部材を前記第1の中空部に内挿可能であると共に、注射行為に際して使用者が指掛け可能な指掛け部が外周側に設けられており、
前記薬液容器の底面、及び前記指掛け部に指を掛けて注射可能である(請求項5)。
【0018】
前記指掛け部は、前記第1のホルダ部材の外周面の2カ所に対向配置することも良い。例えば、前記指掛け部に人差し指と中指を掛け、前記薬液容器の底面に親指を掛けて、一般的な注射器とほぼ同様の操作で注射できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例における、製品状態のプレフィルドシリンジを示す斜視図。
【図2】実施例における、注射状態のプレフィルドシリンジを示す斜視図。
【図3】実施例における、ガスケットで密封されたバイアルの断面構造を示す断面図。
【図4】実施例における、製品状態の針ユニットの組み付け構造を示す斜視図。
【図5】実施例における、製品状態の針ユニットを示す斜視図。
【図6】実施例における、製品状態の針ユニットの組み付け構造を示す斜視図。
【図7】実施例における、外挿スリーブを示す図。
【図8】実施例における、外挿スリーブの断面構造を示す断面図。
【図9】実施例における、針ユニットの動作を示す説明図。
【図10】実施例における、注射状態の針ユニットの組み付け構造を示す斜視図。
【図11】実施例における、軸方向に縮小可能な状態の針ユニットを示す斜視図。
【図12】実施例における、注射状態の針ユニットを示す斜視図。
【図13】参考例における、製品状態における第1のプレフィルドシリンジを示す断面図。
【図14】参考例における、注射状態における第1のプレフィルドシリンジを示す断面図。
【図15】参考例における、注射の準備が完了した状態の第2のプレフィルドシリンジを示す断面図。
【図16】参考例における、注射状態における第2のプレフィルドシリンジを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例)
本例は、使い捨てのプレフィルドシリンジ1A(薬液充填済み注射器)に関する例である。この内容について、図1〜図12を用いて説明する。
本例のプレフィルドシリンジ1Aは、図1〜図3のごとく、薬液が充填された有底筒状のバイアル2(薬液容器)と、薬液を押し出すためにバイアル2の筒方向に移動可能な状態で開口部を封止するガスケット25(封止部材)と、ガスケット25をバイアル2に押し込み可能な状態でガスケット25に取り付けられる針ユニット1(針収容部)と、を備えている。製品状態のプレフィルドシリンジ1Aは、全長約60mmで、指掛け部15を除く最大径が約15mmである。
【0021】
製品状態のプレフィルドシリンジ1Aは、全体をポリプロピレンよりなるフィルム(図示略)によって覆われて滅菌状態が維持されている。なお、外装フィルムとしては、ポリプロピレン製のもののほか、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレートなど、様々な材質のフィルムを採用可能である。
【0022】
バイアル2は、図1〜図3のごとく、薬液を充填するための有底略円筒状の容器である。バイアル2は、内挿されたガスケット25により密封され、開口端にはガスケット25の脱落を防止する抜止め部23が取り付けられている。この抜止め部23は、バイアル2の本体部21の内径よりも小径の開口部230を備えている。
【0023】
ガスケット25は、図3のごとく、バイアル2(本体部21)に内挿されるブチルゴム又はエストラマー製の略円柱状の部材である。ガスケット25の外周面には、全周に渡って凸状に突出するリブ255が軸方向の3箇所に設けられている。このガスケット25は、バイアル2の底側に向かって前進するピストンとして機能する。
【0024】
バイアル2に内挿されたときに外部に面するガスケット25の端面には、内周ネジが設けられた有底の取付孔250が開口している。この取付孔250は、針ユニット1を螺入して取り付けるための孔である。ガスケット25の他方の端面の中心には、有底の小径孔252が設けられている。この小径孔252は、薄い隔壁251を残して取付孔250と対向するように穿孔されている。
【0025】
針ユニット1は、図1、図2、図4〜図6のごとく、注射針100A及び穿孔針100Bが両端に突出する略円柱状の保持部材10と、この保持部材10を収容する第1及び第2のホルダ部材11、12と、保持部材10の外周側に外挿配置された状態で第1及び第2のホルダ部材11、12に収容される外挿スリーブ13と、により構成されている。なお、図4及び図5では、外挿スリーブ13を省略して図示し、図6では、保持部材10を省略して図示している。
【0026】
針ユニット1では、保持部材10を介して第1及び第2のホルダ部材11、12が同軸で連結されている。針ユニット1は、先端側の第1のホルダ部材11に第2のホルダ部材12が内挿されて収容される構造により軸方向に縮小可能となっている。バイアル2を取り付けた針ユニット1を軸方向に縮小させると、ガスケット25を介して穿孔針100Bをバイアル2の内部に突出させると共に、注射針100Aを外部に突出させることが可能である(図2参照。)。この状態で、針ユニット1をバイアル2に押し込めば、ガスケット25の前進に応じて注射針100Aから薬液を注射可能である。
【0027】
保持部材10は、図4のごとく、ポリカーボネードよりなる略円柱状の部材である。保持部材10では、その中心軸に沿ってステンレス管が貫通配置されている。このステンレス管は、保持部材10の軸方向の両端に突出し、注射針100A、穿孔針100Bを形成している。一方の注射針100Aは、注射部位である人体の皮膚等に刺される針先であり、他方の穿孔針100Bは、ガスケット25(図3)の隔壁251を貫通する針先である。
【0028】
なお、注射針100A、穿孔針100Bの材質としては、ステンレスのほか、樹脂材料を採用することもできる。樹脂よりなる注射針100A等の場合には、使用後の廃棄処分等が一層、容易になる。さらに、生分解性プラスチック等により注射針100A等を形成すれば、廃棄処理等が容易になる。
【0029】
本例の保持部材10は、図4のごとく、端面10U及び10Vにより挟まれた小径部105を軸方向の中間に有している。軸方向における小径部105の両側には、略同一直径の第1軸部10A及び第2軸部10Bが形成されている。この保持部材10は、第1軸部10Aが第1のホルダ部材11側に位置し、第2軸部10Bが第2のホルダ部材12側に位置するように組み付けられる。
【0030】
第1軸部10Aの外周面には、図4のごとく、周方向における略等間隔6箇所の位置に外周側に突出する畝部10Pが設けられている。各畝部10Pは、軸方向に沿って延設されている。第1軸部10Aの外周面では、周方向において隣り合う畝部10Pに挟まれた領域が6面形成されている。そのうちの1面おきの3面には、軸方向に沿う進退溝10Mが同じ仕様で設けられている。
【0031】
第2軸部10Bの外周面には、図4のごとく、周方向における略等間隔3箇所の位置に外周側に突出する畝部10Rが設けられている。各畝部10Rは、軸方向に沿って延設されている。第2軸部10Bの外周面では、周方向において隣り合う畝部10Rに挟まれた領域が3面形成されている。この3面は、それぞれ、周方向約120度に渡って形成されている。さらに、第2軸部10Bの外周面には、周方向における略等間隔3箇所の位置に軸方向に沿う溝状の進退溝10Nが設けられている。第2軸部10Bの進退溝10Nは、第1軸部10Aの進退溝10Mから約60度ずつずれて位置している。
【0032】
第1のホルダ部材11は、図4〜図6のごとく、有底略円筒状をなし、外周側に張り出すように対向配置された一対の指掛け部15を開口端に設けたポリカーボネード製の部材である。このホルダ部材11は、底側がプレフィルドシリンジ1Aの先端側に位置する状態で組み付けられる。ホルダ部材11の底側の端部は、テーパー状の末窄まりの外形状を呈し、その先端面には、注射針100Aを突出させる突出孔118が穿孔されている。このホルダ部材11の内部空間である第1の中空部11Hの内径は、バイアル2を挿入可能な程度にその外径と略同一に形成されている。
【0033】
第1の中空部11Hには、保持部材10を把持可能な第1のスライダ部110が設けられている。このスライダ部110は、中空部11Hの底側から軸方向(開口方向)に延設された3本の柱状部111により構成されている。3本の柱状部111は、全て同じ仕様となっており、ホルダ部材11の軸芯を中心とした周方向における等間隔の3カ所に設けられている。3本の柱状部111は、断面略円形状の内周空間を形成している。スライダ部110は、保持部材10の外周側面に柱状部111が外接する状態でその内周空間に保持部材10を把持する。
【0034】
第2のホルダ部材12は、図3〜図6のごとく、有底略円筒状をなし、小径の取付部125が底側の端面に立設されたポリカーボネード製の部材である。このホルダ部材12は、バイアル2の開口部230よりも小径に形成されている。取付部125は、ガスケット25の取付孔250に螺入可能なようにその外周面にネジ山を有している。取付部125は、その立設面に当たるホルダ部材12の端面がガスケット25に密着するまで螺入される。
【0035】
第2のホルダ部材12の内部空間である第2の中空部12Hの内径は、外挿スリーブ13を内挿可能な程度に設定されている。第2の中空部12Hには、保持部材10を把持可能な第2のスライダ部120が設けられている。このスライダ部120は、中空部12Hの底側から軸方向(開口方向)に延設された3本の柱状部121により構成されている。3本の柱状部121は、全て、前記第1のホルダ部材11の柱状部111と同じ仕様であり、柱状部111と同様に周方向における等間隔の3カ所に設けられている。3本の柱状部121は、断面略円形状の内周空間を形成している。スライダ部120は、保持部材10の外周側面に柱状部121が外接する状態でその内周空間に保持部材10を把持する。
【0036】
柱状部111及び柱状部121の断面形状は、周方向に互い違いに組み合わされたとき、重複することなく互いに隙間を補完することでほぼ完全な円環が形成され得る形状となっている。柱状部111、121が周方向に互い違いに配置された状態では、柱状部111、121が櫛歯状に噛み合う状態で軸方向にホルダ部材11、12を縮小可能である。
【0037】
柱状部111、121は、図4〜図6のごとく、外周面に3種類の溝111A〜C、121A〜Cを有し、先端の内周面に凸部111T、121Tを有している。
内周側に突出する凸部111T及び121Tは、柱状部111、121の内周面に1箇所ずつ形成されている。各ホルダ部材11、12の3カ所の凸部111T、121Tの突出面が形成する内径は、保持部材10の小径部105の外径とほぼ等しくなっている。第1のホルダ部材11側の凸部111Tは、保持部材10に対してホルダ部材11が軸方向に進退する際、第2軸部10Bの進退溝10Nを進退する。第2のホルダ部材12側の凸部121Tは、保持部材10に対してホルダ部材12が軸方向に進退する際、第1軸部10Aの進退溝10Mを進退する。
【0038】
進退溝111A、121Aは、図4〜図6のごとく、柱状部111、121の外周面において、周方向における略中央に軸方向に沿って延設された溝である。この進退溝111A、121Aは、柱状部111、121の根元の手前から始まって、先端の手前まで形成されている。
テーパ溝111B、121Bは、ホルダ部11、12の開口側から奥側を見込む見込み方向に基づき、進退溝111A、121Aに対して左回転側に形成された溝である。テーパ溝111B、121Bは、周方向に沿って延設されていると共に、上記見込み方向に基づく左回転側に次第に深くなり、柱状部111、121の側面に開口している。
【0039】
テーパ溝111C、121Cは、柱状部111、121の先端部分において、進退溝111A、121Aの未形成部分に軸方向に沿って設けられた溝である。その周方向の位置は、進退溝111A、121Aと一致している。テーパ溝111C、121Cは、軸方向先端側に向けて次第に深くなり、柱状部111、121の先端面に開口している。
【0040】
外挿スリーブ13は、図6〜図8のごとく、スライダ部110、120に外挿された状態でホルダ部材11、12の内部に収容されるポリカーボネード製の略円筒状の部材である。外挿スリーブ13では、軸方向の中間部130を中心として、第1のホルダ部材11側に組み込まれる第1形成部131、及び第2のホルダ部材12側に組み込まれる第2形成部132が設けられている。第1形成部131及び第2形成部132には、周方向略等間隔で6片ずつのロック片133が設けられている。各ロック片133は、中間部130側が付け根となるよう、第1形成部131あるいは第2形成部132の外周壁がコの字状に切り込まれて形成された部分である。第1形成部131のロック片133と、第2形成部132のロック片133とは、周方向における形成位置が略一致している。
【0041】
全てのロック片133は、図7及び図8のごとく、その先端側に、内側に向けて突出するカギ状部134を有している(図8のA−A断面を参照。)。カギ状部134は、中間部130に向けて次第に突出高さが高くなる略くさび状の断面形状を呈している。
【0042】
第1形成部131と第2形成部132とでは、図8のごとく、このカギ状部134の形状及び構成が相違している。第1形成部131のカギ状部134としては、2種類のカギ状部がある。第1のカギ状部134Aは、同図中のB−B断面図のごとく、内側に向かう突出高さが周方向に略一定のカギ状部である。第2のカギ状部134Bは、同図のごとく、内側に向かう突出高さが周方向に略一定の部分134pと、突出高さが周方向に次第に低くなる傾斜部134tと、を含むカギ状部である。第1形成部131における第2のカギ状部134Bでは、同図のB−B断面における左回転側に傾斜部134tが配置されている。
【0043】
第2形成部132のカギ状部134Cは、図8のごとく、全て同じ仕様になっている。カギ状部134Cは、同図中のC−C断面図に図示するごとく、内側に向かう突出高さが略一定の部分134pと、突出高さが周方向に次第に低くなる傾斜部134tと、を含むカギ状部である。第2形成部132における各カギ状部134Cでは、第1形成部131の第2のカギ状部134Bと同様、同図のC−C断面における左回転側に傾斜部134tが配置されている。なお、外挿スリーブ13に対してホルダ部材11、12を組み付ける際には、カギ状部134は、ホルダ部材11、12に設けられたテーパ溝111C、121C(図6参照。)を利用して軸方向に乗り上げ、進退溝111A、121Aに収容される。
【0044】
以上のような部品構成の本例のプレフィルドシリンジ1A(製品状態)では、第2のホルダ部材12の取付部125がガスケット25に螺入されてバイアル2に固定された状態(図1参照。)にある。第1のホルダ部材11は、凸部111Tが小径部105に外接する状態で保持部材10を把持している。第2のホルダ部材12は、凸部121Tが小径部105に外接する状態で保持部材10を把持している。第1のホルダ部材11と第2のホルダ部材12とは、保持部材10を介して同軸で連結されている。このとき、第1のホルダ部材11と第2のホルダ部材12とは、互いのスライダ部110、120(柱状部111、121)が軸方向において重複しない状態で保持部材10を介して連結されている(図5参照。)。また、第1及び第2のホルダ部材11、12のスライダ部110、120の外周には、外挿スリーブ13が配置されている(図6参照。)。
【0045】
製品状態のスライダ部110、120、外挿スリーブ13及び保持部材10は、図9中の最上段のA、Dのごとく、組み合わせられている。なお、同図中左側のA〜Cは、第1のホルダ部材11のテーパ溝111Bを含む断面をプレフィルドシリンジ1Aの先端側から見込む断面図である。同図中右側のD〜Fは、第2のホルダ部材12のテーパ溝121Bを含む断面をプレフィルドシリンジ1Aの先端側から見込む断面図である。A〜Cでは、外周側から、外挿スリーブ13の第1形成部131、ホルダ部材11のスライダ部110、保持部材10の第1軸部10Aの各断面が図示されている。D〜Fでは、外周側から、外挿スリーブ13の第2形成部132、ホルダ部材12のスライダ部120、保持部材10の第2軸部10Bの各断面が図示されている。
【0046】
図9中のA、Dのごとく、製品状態のプレフィルドシリンジ1Aでは、第1のホルダ部材11の柱状部111と、第2のホルダ部材12の柱状部121と、の周方向位置が略一致している(図5参照。)。この状態では、柱状部111の先端面と、柱状部121の先端面と、が対面して軸方向に縮小不可能な状態となっている。保持部材10は、第1及び第2のホルダ部材11、12の内部に完全に収容され、先端側の注射針100A、バイアル2側の穿孔針100Bが収納された状態にある(図1参照。)。
【0047】
第1のホルダ部材11の各柱状部111は、図9中のAのごとく、保持部材10の第1軸部10Aの外周面のうち、畝部10Pによって周方向に区画された6面のうち、進退溝10Mが形成されていない外周面に外接している。第1のホルダ部材11は、周方向6箇所の畝部10Pにより、保持部材10との相対回転が規制されている。柱状部111の進退溝111Aには、外挿スリーブ13の第2のカギ状部134B(第1形成部131)が収容されている。上記のごとく、この第2のカギ状部134Bには、同図中、左回転側に傾斜部134tが形成されている。
【0048】
一方、第2のホルダ部材12の各柱状部121は、図9中のDのごとく、保持部材10の第2軸部10Bの外周面のうち、畝部10Rによって区画された3面の外周面にそれぞれ外接している。周方向120度に渡る外周面に対して、第2のホルダ部材12が同図中、右回転側に回転し切ったような状態となっている。柱状部121の外周面の進退溝121Aには、外挿スリーブ13のカギ状部134C(第2形成部132)が収容されている。上記のごとく、このカギ状部134Cには、同図中、左回転側に傾斜部134tが形成されている。
【0049】
次に、本例のプレフィルドシリンジ1Aの使用について説明する。使用に際しては、第1のホルダ部材11及び保持部材10に対して、第2のホルダ部材12を図9中、左回転方向に約60度回転させる。第2のホルダ部材12の柱状部121の周方向の幅は、いずれも周方向約60度である。一方、図9中のDのごとく、柱状部121が外接する保持部材10の第2軸部10Bでは、周方向における略等間隔の3箇所の位置に畝部10Rが設けられ、外周面が周方向約120度ずつに区分されている。保持部材10の第2軸部10Bに柱状部121が外接する状態の第2のホルダ部材12は、保持部材10に対して約60度の範囲で相対回転可能である。一方、第2のホルダ部材12が左回転したとき、進退溝121Aとカギ状部134Cとの係合構造により外挿スリーブ13が従動して左回転する。
【0050】
一方、第1のスライダ部110の進退溝111Aに係合する第2のカギ状部134Bでは、図9Aのごとく、左回転側に傾斜部134tが形成されている。また、柱状部111では、周方向のテーパ溝111Bが右回転側に形成されている。上記のごとく第2のホルダ部材12の左回転に従動して外挿スリーブ13が左回転する際、図9A、Bのごとく、傾斜部134tを利用して第2のカギ状部134Bが進退溝111Aを脱出でき、テーパ溝111Bの斜面状の底面を利用して第1のカギ状部134Aが進退溝111Aに乗り入れる。
【0051】
このように第2のホルダ部材12が外挿スリーブ13と共に左回転すると、図9B、Eの注射状態が実現され得る。この注射状態では、第1のホルダ部材11の柱状部111と、第2のホルダ部材12の柱状部121との周方向位置が互い違いになっている。このように柱状部111、121が互い違いに配置された状態であれば、針ユニット1が軸方向に縮小可能である(図10、図11参照。)。
【0052】
例えば、指掛け部15に人差し指と中指を掛けると共にバイアル2の底面210に親指を当てて軸方向に縮小させると、まず、針ユニット1が軸方向に縮小する(図2参照。)。針ユニット1が軸方向に縮小し、注射針100A及び穿孔針100Bを含めた保持部材10の全長よりも軸方向の長さが短くなると、第2のホルダ部材12の取付部125側から穿孔針100Bが突出すると共に、第1のホルダ部材11の先端側から注射針100Aが突出する。穿孔針100Bは、ガスケット25(図3参照。)の隔壁251を貫通し、その先端がバイアル2の内部に達する。針ユニット1を軸方向に最も縮小させたとき、注射針100A及び穿孔針100Bが突出し切った状態となる。針ユニット1をバイアル2の底側に向けて押し込むことによりさらにプレフィルドシリンジ1Aを軸方向に縮小させれば、ガスケット25の前進に応じて薬液を注射可能である。
【0053】
注射状態のプレフィルドシリンジ1Aでは、図9Bのごとく、第1のスライダ部110の進退溝111Aには、外挿スリーブ13(第1形成部131)の第1のカギ状部134Aが収容されている。また、同図Eのごとく、畝部10Rによって区画された周方向120度に渡る外周面に対して、第2のホルダ部材12が左回転側に回転し切った状態となっている。なお、同図DからEに至る過程では、第2のホルダ部材12の左回転に外挿スリーブ13が従動するため、第2のスライダ部120の進退溝121Aに収容されるカギ状部134Cの入れ替えは生じない。使用後の取り扱いにおいて、このカギ状部134Cに設けられた左回転側の傾斜部134tが極めて重要な作用効果を実現する。
【0054】
次に、本例のプレフィルドシリンジ1Aの使用後の処理について説明する。注射が終わった後、針ユニット1からバイアル2を引き抜くことで、プレフィルドシリンジ1Aを軸方向に伸張させる。ガスケット25については、バイアル2の内部で軸方向に後退する際の摺動抵抗が大きいため、上記のような引き抜きに応じて、まず、針ユニット1が軸方向に伸張する。針ユニット1の伸張は、第1のスライダ部110の進退溝111Aの終端にカギ状部134Aが達すると共に、第2のスライダ部120の進退溝121Aの終端にカギ状部134Cが達するまで、が限度となる。
【0055】
さらに、プレフィルドシリンジ1Aを軸方向に伸張させれば、バイアル2の内部でガスケット25を後退させることも可能である。このようなガスケット25の後退は、ガスケット25が抜止め部23に達したときが限度となる。
このようにプレフィルドシリンジ1Aの軸方向の伸張は、スライダ部110、120の進退溝111A、121Aの終端にカギ状部134A、134Cが到達すると共に、ガスケット25が抜止め部23に達したときが限度となり、物理的な破壊を生じない限り、それ以上の伸張は不可能になる(第1の伸張規制機構)。なお、針ユニット1の軸方向の伸張は、柱状部111、121に設けられた凸部111T、121Tと、保持部材10の端面10U、10Vと、の、係合によっても規制され(第2の伸張規制機構)、これによりホルダ部材11、12の分離が確実性高く回避されている。
【0056】
上記のようにバイアル2を針ユニット1側から引き抜いてカギ状部134A、Cがそれぞれ進退溝111A、121Aの終端に到達した状態で、第2のホルダ部材12を再度、図9中、右回転方向に60度回転させる。ここで、上記のごとく、第1のスライダ部110の進退溝111Aに収容されるカギ状部は、傾斜部134tを持たない第1のカギ状部134Aである(同図B)。この第1のカギ状部134Aは、第1のホルダ部材11との間に相対回転力が生じても、進退溝111Aから脱出できないカギ状部である。それ故、同図Bの状態は、第1のホルダ部材11と外挿スリーブ13との相対回転が規制された状態となる。
【0057】
一方、図9Eのごとく、第2のスライダ部120の進退溝121Aに収容されるカギ状部134Cは、左回転側に傾斜部134tが形成されている。それ故、第2のホルダ部材12を右回転させた場合には、傾斜部134tを利用してカギ状部134Cが進退溝121Aから脱出可能である。外挿スリーブ13に対して第2のホルダ部材12が相対的に右回転すると、第2のスライダ部120が新たなカギ状部134Cに接近する。このカギ状部134Cもまた、左回転側に傾斜部134tを有しているため、この傾斜部134tを利用してスライダ部120の進退溝121Aに乗り入れ可能である。したがって、図9Eの状態で第2のホルダ部材12を右回転させたときには、外挿スリーブ13を従動させずに、第2のホルダ部材12のみを右回転させることができる。
【0058】
このように、図9B、Eの注射状態を起点として、第2のホルダ部材12を同図中、右回転させると、同図C、Fの廃棄状態が得られる。この廃棄状態では、第1のホルダ部材11の柱状部111と、第2のホルダ部材12の柱状部121との周方向位置が略一致している。すなわち、この状態は、柱状部111の先端面と、柱状部121の先端面と、が対面して軸方向に縮小不可能な状態である。
【0059】
図9Cのごとく、第1のスライダ部110の進退溝111Aには、傾斜部134tを持たない第1のカギ状部134Aが収容されている。それ故、この状態では、第1のホルダ部材11に対して外挿スリーブ13が相対的に回転不可能である。さらに、第1軸部10Aの外周には、6箇所の畝部10Pが形成されているため、保持部材10に対して第1のホルダ部材11が相対的に回転することも不可能である。
【0060】
さらに、図9Fのごとく、第2のスライダ部120の進退溝121Aに、左回転側に傾斜部134tを備えたカギ状部134Cが収容されている。第2のホルダ部材12は、進退溝121Aとカギ状部134Cとの係合により同図中、左回転が規制され、柱状部121が右回転側に接触する畝部10Rにより同図中、右回転が規制される。そのため、第2のホルダ部材12は、保持部材10に対して相対回転不可能である。
【0061】
このように、使用後に第2のホルダ部材12を右回転させて図9C、Fの状態に移行させた場合には、外挿スリーブ13を含めて構成される回転規制機構の作用により、第1のホルダ部材11と第2のホルダ部材12とを相対的に回転不可能な状態を設定できる。
【0062】
さらに、図9Cの状態では、第1軸部10Aの進退溝10Mの周方向位置と、第1のホルダ部材11の凸部111Tとの周方向位置とが異なっている。それ故、小径部105と第1軸部10Aとの端面10Uに凸部111Tが係合して、保持部材10からの第1のホルダ部材11の軸方向の引き抜きが規制される。同様に、図9Fの状態では、第2軸部10Bの進退溝10Nの周方向位置と、第2のホルダ部材12の凸部121Tとの周方向位置とが異なっている。それ故、小径部105と第2軸部10Bとの端面10Vに凸部121Tが係合して、保持部材10からの第2のホルダ部材12の軸方向の引き抜きが規制される。
【0063】
以上のように構成された本例のプレフィルドシリンジ1Aは、非常にコンパクト、かつ、安全性の高いプレフィルドシリンジである。このプレフィルドシリンジ1Aは、注射に要する手間が非常に少なく、かつ、注射が済んだ後、安全性の高い廃棄状態をワンタッチで設定できる優れた製品である。
【0064】
なお、針ユニット1の材質としては、本例のポリカーボネードのほか、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートなど、様々な材質を採用することができる。さらに、生分解性プラスチックにより保持部材10あるいはホルダ部材11、12を形成することも良い。この場合には、プレフィルドシリンジ1Aの廃棄処分を一層、容易にできる。
【0065】
(参考例)
本例は、実施例と同様のバイアル9を利用した他のプレフィルドシリンジ8Aを示す参考例である。図13及び図14は、第1の参考例を示し、図15及び図16は、第2の参考例を示している。
【0066】
第1の参考例を示す図13は、製品状態のプレフィルドシリンジ8Aを示している。このプレフィルドシリンジ8Aでは、ガスケット95に対して針ユニット8が螺入されている一方、両者間に配設された略U字状を呈するスペーサ部材950によって不完全な螺入状態となっている。この参考例の針ユニット8は、実施例の針ユニット1とは相違し、軸方向の長さが不変である。
【0067】
注射に際して、図14のごとく、スペーサ部材950を取り外した後、ガスケット95に対して針ユニット8を完全に螺入する。その後、先端に取り付けられた針キャップ80を取り外せば、注射可能となる。
【0068】
第2の参考例を示す図15は、第1の参考例と同様の図示しないスペーサ部材を取り外して針ユニット8をガスケット95に螺入した後の状態を図示している。この状態では、針カバー81が先端側に付勢されて注射針800Aが収納された状態となっている。針カバー81に設けられた一対の指掛け部85と、バイアル9の底面と、に指をかけて軸方向に縮小させれば、図16のごとく、先端側から注射針800Aを突出させることができる。さらに、プレフィルドシリンジ8Aを軸方向に縮小させれば、突出した注射針800Aから薬液を注射可能である。
【0069】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形あるいは変更した技術を包含している。
【符号の説明】
【0070】
1 針ユニット(針収容部)
1A プレフィルドシリンジ
10 保持部材
11、12 ホルダ部材
11H、12H 中空部
100A 注射針
100B 穿孔針
110、120 スライダ部
111、121 柱状部
125 取付部
13 外挿スリーブ
134 カギ状部
15 指掛け部
2 バイアル(薬液容器)
210 底面
230 開口部
25 ガスケット(封止部材)
250 取付孔
251 隔壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が充填された有底筒状の薬液容器と、
前記薬液容器の筒方向に当たる軸方向に移動可能な状態で該薬液容器の開口部を封止する封止部材と、
前記封止部材を前記薬液容器に押し込み可能な状態で、該封止部材に取り付けられる針収容部と、を備え、
該針収容部は、軸方向の一方の端部から注射針を突出させると共に、他方の端部から穿孔針を突出させる略円柱状の保持部材と、
有底の第1の中空部を有し、該中空部の底側から開口方向に当たる軸方向に延設されていると共に前記保持部材の外周側面に外接する少なくとも2本以上の柱状部により軸方向に沿って該保持部材を把持可能な第1のスライダ部が設けられた第1のホルダ部材と、
有底の第2の中空部を有し、該中空部の底側から開口方向に当たる軸方向に延設されていると共に前記保持部材の外周側面に外接する少なくとも2本以上の柱状部により該保持部材を把持可能な第2のスライダ部、及び底側の端部に前記封止部材に対する取付部が設けられた第2のホルダ部材と、を含み、
前記第1及び第2のホルダ部材は、前記保持部材を把持する前記第1及び第2のスライダ部の柱状部が軸方向において他方のスライダ部の柱状部と互いに重複していない状態において、前記保持部材の回りに相対的に回転可能であると共に、
前記各スライダ部の柱状部が前記保持部材の周りに互い違いに配置される状態において、何れか一方のホルダ部材の中空部に他方のホルダ部材が挿入されていくことで軸方向に縮小可能である一方、前記各スライダ部の柱状部の先端面が他方のスライダ部の柱状部の先端面と対面する状態において軸方向に縮小不可能であり、
前記保持部材を保持する前記第1及び第2のホルダ部材を軸方向に縮小したとき、前記封止部材を貫通して前記薬液容器の内部に前記穿孔針が突出し、前記注射針が外部に突出するように構成されているプレフィルドシリンジ。
【請求項2】
請求項1において、前記第1及び前記第2のスライダ部に外挿された状態で、前記保持部材の周りの前記第1及び第2のホルダ部材の相対的な回転を規制する略円筒状の外挿スリーブを有するプレフィルドシリンジ。
【請求項3】
請求項2において、前記針収容部は、製品状態において軸方向に縮小不可能な状態にあると共に、使用に際して前記第1及び第2のホルダ部材を前記保持部材を中心として相対的に回転させることで軸方向に縮小可能な状態となり、かつ、
使用後において前記第1及び第2のスライダ部の柱状部が軸方向において他方のスライダ部の柱状部と互いに重複しない位置まで上記第1及び第2のホルダ部材を軸方向に伸張させた後、前記第1及び第2のホルダ部材を相対的に回転させることで軸方向に縮小不可能な状態を再設定可能なように構成されており、
前記外挿スリーブは、製品状態においては前記保持部材を中心とした前記第1及び第2のホルダ部材の相対的な回転を許容し、かつ、使用後において前記針収容部が軸方向に縮小可能な状態から軸方向に縮小不可能な状態が再設定されたとき、前記第1及び第2のホルダ部材の相対的な回転を規制するように構成されているプレフィルドシリンジ。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記外挿スリーブは、前記第1及び第2のホルダ部材の軸方向の最大の伸張長さを規制するように構成されているプレフィルドシリンジ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、前記第1のホルダ部材は、前記第2のホルダ部材を前記第1の中空部に内挿可能であると共に、注射行為に際して使用者が指掛け可能な指掛け部が外周側に設けられており、
前記薬液容器の底面、及び前記指掛け部に指を掛けて注射可能なプレフィルドシリンジ。
【請求項1】
薬液が充填された有底筒状の薬液容器と、
前記薬液容器の筒方向に当たる軸方向に移動可能な状態で該薬液容器の開口部を封止する封止部材と、
前記封止部材を前記薬液容器に押し込み可能な状態で、該封止部材に取り付けられる針収容部と、を備え、
該針収容部は、軸方向の一方の端部から注射針を突出させると共に、他方の端部から穿孔針を突出させる略円柱状の保持部材と、
有底の第1の中空部を有し、該中空部の底側から開口方向に当たる軸方向に延設されていると共に前記保持部材の外周側面に外接する少なくとも2本以上の柱状部により軸方向に沿って該保持部材を把持可能な第1のスライダ部が設けられた第1のホルダ部材と、
有底の第2の中空部を有し、該中空部の底側から開口方向に当たる軸方向に延設されていると共に前記保持部材の外周側面に外接する少なくとも2本以上の柱状部により該保持部材を把持可能な第2のスライダ部、及び底側の端部に前記封止部材に対する取付部が設けられた第2のホルダ部材と、を含み、
前記第1及び第2のホルダ部材は、前記保持部材を把持する前記第1及び第2のスライダ部の柱状部が軸方向において他方のスライダ部の柱状部と互いに重複していない状態において、前記保持部材の回りに相対的に回転可能であると共に、
前記各スライダ部の柱状部が前記保持部材の周りに互い違いに配置される状態において、何れか一方のホルダ部材の中空部に他方のホルダ部材が挿入されていくことで軸方向に縮小可能である一方、前記各スライダ部の柱状部の先端面が他方のスライダ部の柱状部の先端面と対面する状態において軸方向に縮小不可能であり、
前記保持部材を保持する前記第1及び第2のホルダ部材を軸方向に縮小したとき、前記封止部材を貫通して前記薬液容器の内部に前記穿孔針が突出し、前記注射針が外部に突出するように構成されているプレフィルドシリンジ。
【請求項2】
請求項1において、前記第1及び前記第2のスライダ部に外挿された状態で、前記保持部材の周りの前記第1及び第2のホルダ部材の相対的な回転を規制する略円筒状の外挿スリーブを有するプレフィルドシリンジ。
【請求項3】
請求項2において、前記針収容部は、製品状態において軸方向に縮小不可能な状態にあると共に、使用に際して前記第1及び第2のホルダ部材を前記保持部材を中心として相対的に回転させることで軸方向に縮小可能な状態となり、かつ、
使用後において前記第1及び第2のスライダ部の柱状部が軸方向において他方のスライダ部の柱状部と互いに重複しない位置まで上記第1及び第2のホルダ部材を軸方向に伸張させた後、前記第1及び第2のホルダ部材を相対的に回転させることで軸方向に縮小不可能な状態を再設定可能なように構成されており、
前記外挿スリーブは、製品状態においては前記保持部材を中心とした前記第1及び第2のホルダ部材の相対的な回転を許容し、かつ、使用後において前記針収容部が軸方向に縮小可能な状態から軸方向に縮小不可能な状態が再設定されたとき、前記第1及び第2のホルダ部材の相対的な回転を規制するように構成されているプレフィルドシリンジ。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記外挿スリーブは、前記第1及び第2のホルダ部材の軸方向の最大の伸張長さを規制するように構成されているプレフィルドシリンジ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、前記第1のホルダ部材は、前記第2のホルダ部材を前記第1の中空部に内挿可能であると共に、注射行為に際して使用者が指掛け可能な指掛け部が外周側に設けられており、
前記薬液容器の底面、及び前記指掛け部に指を掛けて注射可能なプレフィルドシリンジ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−519(P2013−519A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137621(P2011−137621)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000132194)株式会社スズケン (12)
【出願人】(000206185)大成化工株式会社 (83)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000132194)株式会社スズケン (12)
【出願人】(000206185)大成化工株式会社 (83)
【Fターム(参考)】
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